説明

レーダ

【課題】高い検知確率と低い誤検知確率を併せ持ち、距離に応じた検出精度と応答性が確保できるようにしたレーダを構成する。
【解決手段】複数の計測タイミングで取得された探知情報のうち同一反射体に起因して生じたものと予測した探知情報を基にして反射体に相当する物標の追尾を行うとともに、追尾中の物標が同一反射体に起因して生じたものと見なされる度合いを表す追尾信頼度(計測タイミングの回数MとそのM回の計測タイミングで取得された探知情報のうち同一反射体に起因して生じたものと見なされる回数N)の条件を複数組設定し、いずれか1つが満足されるとき、その反射体を真物標として検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は物標の探知及び追尾を行うレーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば車載レーダにおいては、自車や他車の安全性を確保するために、単に探知範囲内の複数の反射体について距離や速度を検出するだけでなく、複数の反射体やノイズに起因して生じた探知情報から得られる複数の物標のうち必要な物標を追尾する機能が必要である。このような追尾機能は、基本的に計測周期毎に検出した複数の物標から、追尾すべき物標を検知し、または既に追尾中の物標を抽出する処理を繰り返すことによって、その追尾を継続する機能である。
【0003】
ところが、所定の探知範囲内の反射体に相当する物標を検出して、その追尾を行う際に、受信信号強度の低下やノイズの影響を受けて、車両などの実体があって、追尾が必要な物標(以下これを「真物標」という。)と、それ以外の実体のないノイズ等による物標(以下これを「擬似物標」という。)も追尾(誤追尾)してしまう可能性がある。そこで、このような誤追尾を抑え、物標追尾の信頼性と継続性を高めるために、従来は、計測周期毎に同一位置に物標が検出される確率を求め、その確率が所定のしきい値を超えるとき、その物標が実在する反射体に相当するものと見なす処理を行っている。
【0004】
例えば特許文献1では、M回の検出動作のうちのN回について目標の位置で物標の検出に成功したとき、その物標を真物標と見なすようにしている(以下、この方法を「M中N法」という。)。
【0005】
また、この特許文献1では、距離に応じてM中N法のNの値を変えて、遠距離での検知性能を上げるようにしている。
【0006】
また、特許文献2ではSPRT法とM中N法を距離等によって切り替えるようにしている。
【特許文献1】特開平11−38119号公報
【特許文献2】特開2003−43132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが特許文献1,2のいずれも、検知可能距離を延ばせば検出精度が落ち、検出精度を高めれば検出可能距離が短くなる、という相反的な性質を持っている。
すなわち、M中N法のNの値を低く設定することで、検知性能は改善されるが、その分誤検知が発生する可能性も高まる。また、距離に応じてM中N法のNの値を変える方法では距離に応じて検出精度が決定されてしまうという問題があった。
【0008】
また、特許文献2では、2種類のアルゴリズムを切り替えるために、処理系が複雑になる。しかも、距離や領域に応じて一律に切り変わるため、必ずしも物標の検知状況に適合したアルゴリズムが選択される訳ではない。
【0009】
そこで、この発明の目的は、高い検知確率と低い誤検知確率を併せ持ち、距離に応じた検出精度と応答性が確保できるようにしたレーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)所定探知範囲への電磁波の送信および反射体からの反射波の受信を計測タイミング毎に繰り返し行って、前記反射体の位置情報を含む探知情報を取得する探知情報取得手段と、
前記探知情報取得手段により異なった複数の計測タイミングで取得された前記探知情報のうち、同一反射体に起因して生じたものと予測した探知情報を基にして前記反射体に相当する物標の追尾を行うとともに、該追尾中の物標が前記同一反射体に起因して生じたものと見なされる度合いを表す複数の追尾信頼度を求める追尾信頼度抽出手段と、
前記複数の追尾信頼度のうちいずれか1つが所定値に達する条件を満足したときに、前記反射体を真物標として検知する真物標検知手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
(2)前記複数の追尾信頼度は、前記計測タイミングの回数M回(Mは1以上の整数)と、該M回の計測タイミングで取得された前記探知情報のうち、前記同一反射体に起因して生じたものと見なされるN回(Nは1以上の整数)とで表されるものとする。
【0012】
(3)前記所定値に達する条件のうち1つはM=Nの関係とする。
【0013】
(4)前記複数の追尾信頼度のうちいずれか1つが所定値に達する条件を満足した物標について、当該条件を満足した以降、複数回の計測タイミングで前記探知情報取得手段により取得された前記探知情報に同一反射体に起因して生じたものと予測した探知情報が存在しない状態が所定回数続いた場合に、当該物標が存在しないものと認識する。
【発明の効果】
【0014】
(1)同一反射体に起因して生じたものと予測した探知情報を基にして反射体に相当する物標の追尾を行う際、物標が同一反射体に起因して生じたものと見なされる度合いを表す追尾信頼度をそれぞれ異なる複数の方法で求め、それらの追尾信頼度のうちいずれか1つが所定値に達する条件を満足したとき、その反射体を真物標として検知するようにしたので、高い検知確率と低い誤検知確率を併せ持つことができる。
【0015】
すなわち、単独条件の追尾信頼度で追尾を行う場合と比較すれば、確実に検知できる物標については高い応答速度で追尾できるので高速応答性が実現でき、一方、検知が不確実な物標については応答が遅いが高精度な物標の検知が可能となる。そのため、高い検知確率と低い誤検知確率を併せ持つことができ、衝突予防のための処置(警告・自動制御)をより効果的に行うことができる。
【0016】
例えば、確実に検知できているもののみを抽出するが、高速に応答する(最初の擬似物標検出時からそれを真物標として検知するまでの時間が短い)ことを目的とした追尾信頼度と、応答速度が遅いが、物標によるノイズに埋もれたような信号の抽出を目的とした追尾信頼度と、を組み合わせていずれかの追尾信頼度が所定値に達したときにその反射体を真物標として検知する。このことにより、信号強度の高い近距離の物標は結果的に速やかに検知できる。また、信号強度が低くてノイズに埋もれやすい遠距離の物標であったり、人体等反射強度が小さいが高速移動しない物標(RCS(レーダ断面積)の小さな物標)では、その検知に時間が掛かるが誤検知なく高精度に検知できる。このことは距離に応じて検出精度と応答性が確保できると言い表すこともできる。
【0017】
(2)前記複数の追尾信頼度として、M中N法の値(M,N)で表されるものとすることにより、同一反射体に起因して生じたものと見なされる回数Nをカウントするだけでよいので、追尾信頼度を求めるアルゴリズムが簡単となり、しかも距離ごとにアルゴリズムを切り替える訳でもないので、物標の検知を高速に行うことができる。
【0018】
(3)所定の誤検知確率が満足できる条件でM=Nが最も応答速度が速い条件であるので、前記複数の条件のうち1つをM=Nの関係とすることにより、近距離物標に対する応答速度を高める効果が得られる。
【0019】
(4)前記条件を満足した物標について、その後同一反射体に起因して生じたものと予測した探知情報が存在しない状態が所定回数以上続いた場合に、その物標が存在しなくなったものと認識することによって、物標消失の応答性を高めることがきできる。例えば物標が相対的に急速な加減速を行ったことなどによって、その物標の不検知状態となるような場合に、その物標が残像(虚像)として表示され続けることがなく、素早く消去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の実施形態に係るレーダについて各図を参照して説明する。
図1は車載用レーダおよびそれに接続される各種ユニットなどを含むシステム全体の構成を示すブロック図である。図1において20で示す部分がレーダフロントエンドであり、制御回路1、ミリ波回路2、アンテナ3などから構成している。ここでミリ波回路2は、制御回路1から与えられる変調信号で発振周波数を変調し、送信信号をアンテナ3へ出力する。また、受信信号を中間周波信号(IF信号)として制御回路1へ与える。
【0021】
制御回路1はミリ波回路2に対して変調信号を与えるとともに、ミリ波回路2からのIF信号に基づいて物標の距離と速度を求める。
【0022】
検知処理制御部30は、車速センサ10や、その他の各種センサ11からの信号を入力して、自車の車両状況や自車が走行する道路の環境を検知する。そして、目標物標の情報をACCコントローラ15へ与える。
【0023】
ACCコントローラ15は、制御回路1から与えられた物標の位置および速度の情報と車速センサ10の求めた自車速に基づいて自動クルーズ制御を行う。例えば先行車両との車間距離を常に一定に保つようにエンジンコントロールユニット16およびブレーキコントロールユニット17に対して制御データを与える。また、先行車両等の前方の物標との衝突回避のための制御データを与える。
【0024】
エンジンコントロールユニット16およびブレーキコントロールユニット17は、ACCコントローラ15から与えられた制御データに基づいてエンジンの制御およびブレーキの制御を行う。
【0025】
レーダフロントエンド20は、送信信号の周波数上昇時における送信信号と受信信号との周波数差であるアップビート周波数と、送信信号の周波数下降時における送信信号と受信信号との周波数差であるダウンビート周波数とを基に、レーダから物標までの距離およびレーダに対する物標の相対速度を算出する。
【0026】
さて、図2は、図1に示した制御回路1と検知処理制御部30とにより、計測タイミング毎に行われる一連の処理内容について示している。
【0027】
図2の(A)は、図1に示したレーダフロントエンド20内の制御回路1の処理内容を示すフローチャート、図2の(B)は、検知処理制御部30の処理内容を示すフローチャートである。
【0028】
まず、図2の(A)を基に説明する。
制御回路1は、ミリ波回路2の制御によって、探知範囲に対してミリ波信号を三角波状に周波数変調して送信するとともに送受信ビームの方位を走査する。また、ビート信号の周波数解析を行い、所定の計測タイミング毎にアップビート信号とダウンビート信号の周波数スペクトルに現れる突出部のピーク周波数およびピーク値をそれぞれ抽出する(S1)。
【0029】
また、ビート信号の周波数スペクトル上の突出部の周辺に発生するスプリアス応答の処理を行う。すなわち、スプリアス応答を物標として誤検出しないように、周波数スペクトル上に現れる各突出部について、所定周波数範囲内に存在し、且つ対象とするピーク値より所定レベルC(dB)以上小さな突出部をスプリアス応答と見なして除去する。
【0030】
続いて、アップビート信号とダウンビート信号の周波数スペクトル上に現れる突出部の組み合わせ(ペアリング)を行う(S2)。このペアリングの条件としては、ピークの信号強度、周波数軸方向の突出部の形状および方位方向の突出部の形状の相関度が挙げられる。例えば、予め定めた信号強度差未満であれば、その2つのアップビート信号とダウンビート信号は同一反射体に起因して生じたものと見なす。すなわちペアと見なす。一方、アップビート信号とダウンビート信号の信号強度差が予め定めた信号強度差以上の場合には、両者は異なった物標に起因して生じたものと見なし、ペアとはしない。
【0031】
このペアリングを行った後は、制御回路1は検知処理制御部30に対して各物標の距離・速度に関する情報を出力する(S3)。
【0032】
図2の(B)は検知処理制御部30の処理手順を示すフローチャートである。まず各々の物標について、計測タイミング毎の位置または速度の変化が予測範囲内のものを同一反射体による物標と見なす。この処理が追尾処理である。(S11)。上記計測タイミング毎の変化を観測する対象としては、速度・距離・方位角・受信信号強度(または散乱断面積)などである。
【0033】
その後、物標(すでに真物標として検知されたもの)及び擬似物標(まだ真物標として検知されていない虚像である可能性のあるもの)について追尾信頼度を求める(S12)。この追尾信頼度は計測タイミングの回数MとそのM回のうち同一反射体に起因して今回の計測で真物標もしくは擬似物標が生じたものと見なした回数Nとで表される。
【0034】
その後、複数の(M,N)条件のうちいずれか1つ以上満足するか否かを判定する(S13→S14→S15)。もしいずれかの条件を満足すれば、その擬似物標を真物標として検知する(真物標と見なす。)(S16)。
【0035】
そして、この真物標の探知情報(位置と速度)を、図1に示したACCコントローラ15へ出力する(S18)。
【0036】
また、すでに真物標として検知している各物標について、複数の(M,N)条件のどの条件も満足しない回数をカウントし、その回数が所定回数を超過すれば該当の物標を削除する(S13→S14→S17)。すなわち、その物標は存在しなくなったものと見なす。
【0037】
次に、追尾信頼度について詳述する。
M中N法でM=8、N=4としたとき、物標の不検知確率を1ppm以下に抑えるためには、1回の計測当たりの検知確率Pdは次の式を満足する値に設定する必要がある。
【0038】
【数1】

【0039】
ここでCは組み合わせの数を表すコンビネーション演算子である。
【0040】
上記Pdは97.2%以上である。
【0041】
また、ノイズ等による擬似物標を真物標として誤検知しない確率を1ppm以下とするためには、1回の計測当たりの誤検知確率(ノイズがしきい値を超える確率)Pmとして次の式を満足する値に設定する必要がある。
【0042】
【数2】

【0043】
ここでCは組み合わせの数を表すコンビネーション演算子である。
【0044】
上記Pmは1.10%以下である必要がある。
【0045】
ここで、ノイズレベル、物標からの信号レベルの標準偏差σm,σsをそれぞれ5dBであるとし、それぞれdBのスケールで正規分布に従うと仮定すると、ノイズを物標と誤検知する確率を1ppmに抑えるためには、ノイズレベルの平均値から2.32×σm=11.6dB高いレベルにしきい値を設定することになる。
【0046】
また、真物標を検知しない(以下、「不検知」という。)確率(1−Pd)が1ppm以下になるためには、信号レベルの平均値がしきい値から1.91×σs=9.55dB高い必要があり、物標からの反射信号レベルとノイズレベルとの間に11.6+9.55≒21.2dBのレベル差が必要となる。
【0047】
ここで、例えば上記条件と同じノイズしきい値を設定したときに、M中N法でN=5になる条件で検知確率、誤検知確率が同じになる場合を考える。
【0048】
M中N法でN=5に固定された場合、誤検知確率はMの値を変化させることでコントロールでき、M=18としたとき、1計測当たりの(2)式の関係が成り立つ誤検知確率Pmは1.05%以下となり、M=8、N=4のときとほぼ同等となる。
【0049】
M=18、N=5としたときの(1)式の関係を満足する1回の計測当たりの検知確率Pdを求めると、77.6%以上となる。
【0050】
検知確率77.6%(=非検知確率22.4%)となる場合の標準偏差σを標準正規分布表から求めると、σ≒0.76である。このことは、信号レベルの平均値がしきい値から0.76×σs=3.8dB高いことが必要であることを意味する。したがって物標からの反射信号レベルとノイズレベルとの間に11.6+3.8≒15.4dBのレベル差が必要ということになる。これは、M=8、N=4としたときと比較すると、21.2−15.4=5.8dB低くなっている。受信電力は距離の4乗に比例するので、この関係を最大検知距離の比で表すと、
105.8/(4*10)=1.40 …(3)
となるので、最大検知距離は約1.4倍長くなることになる。
【0051】
同様に、(1)Nの値に応じて1回の計測当たりの誤検知確率が1.0%、トータルの誤検知確率が1.0ppm以下となる条件でMの値を求める。(2)トータルの不検知確率(1−トータルの検知確率)が1.0ppm以下となるような1回当たりの検知確率を求める。(3)求まった1回当たりの検知確率を基に、N=4のときを1とした最大検知距離の比を求める。という手順でそれらを求めた結果を図3に示す。
【0052】
このようにM=8,N=4で所定の検知確率を満足する最大検知距離が仮に100mだった場合、M=3,N=3での最大検知距離は41mということになるが、この距離41m以内では最大でも(この場合は最小も)3回の計測で物標を検知することができることになる。したがって例えば10Hzで(0.1s毎に)計測を行っている場合には0.3sで物標を検知できることになる。
【0053】
所定の誤検知確率が満足できる条件でM=Nとなる条件が最も応答速度が速い条件となるので、この条件を複数の条件の1つに含めることが望ましい。
【0054】
これに対し、M=52,N=7では検知距離が183mということになり、広い検知範囲を実現できる。ただし物標を検知するまで最大52回計測を行う必要があり、10Hzでの計測の場合、検知できるまでに所定の検知確率を満足するのに最大5.2s必要となる。
【0055】
このようにM,Nの値に応じて検知距離及び応答速度に差が生じるので、それぞれ互いに補うために、複数のM,Nの組み合わせを設定し、そのいずれか1つでも満足すれば、その擬似物標を真物標として検知する。
【0056】
図3に示したM,Nの組み合わせの全てを検知条件として用いると、41mまでは0.3s、100mまでは0.4〜0.8s、140mまでは0.5〜1.8s、165mまでは0.6〜3.3s、183mまでは0.7〜5.2sの応答速度で検知できることが保証できる。
【0057】
以上のようにして、信号強度の高いものは高速で検知でき、しきい値ぎりぎりの強度のものは応答が遅いながらも確実な検知が可能となる。
【0058】
なお、M,Nの検知条件を組み合わせると、誤検知確率・不検知確率もそれらの組み合わせで考える必要があり、総合誤検知確率が1ppmより劣化し、また不検知確率も1ppmより減少する。したがって最終的な誤検知確率・不検知確率を所望の値に設定するには、それらを見越してM,Nを設定する必要がある。
【0059】
なお、図2に示した例では、ペアリングを行った後に擬似物標について追尾信頼度を求めたが、ペアリングを行う前の段階で、すなわち周波数スペクトルから抽出したピーク周波数及びピーク値の単位で、追尾信頼度を求める場合にも同様に適用できる。例えば、M回の計測のうち、周波数スペクトル上に現れる突出部のピーク周波数が所定周波数範囲で所定ピーク値範囲に入る回数Nをカウントし、このN値が予め定めた値に達したとき、上記突出部を真物標に起因して生じたものと見なす。
【0060】
また、FM−CW方式のレーダに限らずパルスレーダ等、他の形式のレーダにも同様に適用できる。
【0061】
ところで、物標が探知範囲内に初めて入ったような場合、その物標の検知を行うためには以上に述べた方法が有効であるが、既に追尾していた物標が何らかの理由により追尾できなくなった場合(例えば不検知が続いている間に物標または自車が急激な加減速を行う等によって追尾不能となった場合等)、Mが大きな値の条件では残像として残ることになる。これはすでに存在しない物標を表しているので虚像である。そのため、例えばM=52.N=7の場合に、10Hzで計測している場合、物標が追尾できなくなってから最大5.2−0.7=4.5sも後になってから不検知として判定されることになり、誤った制御や警告が成されるおそれがある。(計測を繰り返した結果によりNの値を随時更新し、過去52回分の探知結果を用いて検知判定に用いるので、物標が存在するものと検知した以降もM回までカウントを行う必要がある。)そこで、図2(B)のステップS15〜S17で示したように、上記M,Nの条件を所定回数以上満足しない場合に、その物標を不検知として判定することとする。
【0062】
例えば、10Hzの計測で残像を2秒とすると、1計測当たりの50%の確率で検知できる物標が不検知とされる可能性は1回の計測当たり
(1−0.50)20=9.5×10-7
となり、1ppm以下に抑えることができる。
【0063】
また、このとき1計測当たりの誤検知確率が1%の場合、52回の計測で20回連続して誤検知と判定される確率が
0.0120×52=5.2×10-39
となり、誤検知出力により残像が出力され続ける可能性は十分に低い。
【0064】
したがってこのような場合には、物標が不検知であると判定しても、誤検知や不検知の発生を十分に抑えることができる。これにより、10Hzの計測の場合には残像時間を2秒にすることができ、誤制御・誤警告の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】レーダの構成を示すブロック図である。
【図2】図1における制御回路及び検知処理制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】(M,N)条件と検知距離の関係等を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
4−アンテナ
20−レーダフロントエンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定探知範囲への電磁波の送信および反射体からの反射波の受信を計測タイミング毎に繰り返し行って、前記反射体の位置情報を含む探知情報を取得する探知情報取得手段と、
前記探知情報取得手段により異なった複数の計測タイミングで取得された前記探知情報のうち、同一反射体に起因して生じたものと予測した探知情報を基にして前記反射体に相当する物標の追尾を行うとともに、該追尾中の物標が前記同一反射体に起因して生じたものと見なされる度合いを表す複数の追尾信頼度を求める追尾信頼度抽出手段と、
前記複数の追尾信頼度のうちいずれか1つが所定値に達する条件を満足したときに、前記反射体を真物標として検知する真物標検知手段を備えたことを特徴とするレーダ。
【請求項2】
前記複数の追尾信頼度は、前記計測タイミングの回数M回(Mは1以上の整数)と、該M回の計測タイミングで取得された前記探知情報のうち、前記同一反射体に起因して生じたものと見なされるN回(Nは1以上の整数)とで表されるものである請求項1に記載のレーダ。
【請求項3】
前記所定値に達する条件のうち1つはM=Nの関係である請求項2に記載のレーダ。
【請求項4】
前記複数の追尾信頼度のうちいずれか1つが所定値に達する条件を満足した物標について、当該条件を満足した以降、複数回の計測タイミングで前記探知情報取得手段により取得された前記探知情報に同一反射体に起因して生じたものと予測した探知情報が存在しない状態が所定回数続いた場合に、当該物標が存在しないものと認識する請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のレーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−26239(P2008−26239A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201177(P2006−201177)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】