説明

レート検出装置およびこのレート検出装置を搭載した飛しょう体

【課題】レートセンサが保持具に取り付けられる際に、レートセンサの検出軸の方向が、所要の方向に向いていない場合にも、検出軸周りの角速度を高精度に検出でき、生産性を向上させることのできるレート検出装置を提供すること。
【解決手段】レート検出装置10は、検出軸Xのレートを検出するレートセンサ13と、検出軸傾き補正部14およびレート算出部15を具備する。検出軸傾き補正部14は、検出軸X上に配置したレートセンサ13の傾きを所要の行列式αにより求めたレートセンサ傾きであるレートセンサ傾きベクトルを、実測検出値に乗算して補正値α3を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛しょう体に搭載され、この飛しょう体の角速度を検出するレートセンサを用いたレート検出装置およびこのレート検出装置を搭載した飛しょう体に係わるもので、特に飛しょう体に搭載して用いるに適するレート検出装置およびこのレート検出装置を用いるに適する飛しょう体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レートセンサには、一般的に機械式、流体式、光学式等があり、また機械式には、回転型、振動型等がある。このレートセンサを用いたレート検出装置は、飛しょう体または地上を走行する車両等の移動体に搭載され、検出された角速度を用いて、飛しょう体または地上を走行する車両等の移動体の姿勢制御等の目的に供される。
【0003】
レート検出装置は、飛しょう体に搭載する場合、一般的に3軸(ピッチ軸、ヨー軸およびロール軸)に対して、各軸周りの角速度を検出できるようになっている。
【0004】
レート検出装置を飛しょう体または地上を走行する車両等の移動体に搭載した場合には、移動体の発生する振動を受けることになり、これに対応し得たレートセンサを用いる必要がある。
【0005】
車両に適用された種々のレート検出装置の中には、例えばレートセンサによりヨーレートおよびピッチレートを検出し、特に車両のピッチ方向への傾斜角を算出することでヨーレートの補正をなし、車両の姿勢安定性を図ったものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図4に示す従来のヨーレート検出装置は、車両本体(図示せず)に車両用ナビゲーションシステムの1つとして、ジャイロセンサ1と、加速度センサ2と、測距部3と、傾斜角算出部4および角速度補正部5とを備えている。
【0007】
ジャイロセンサ1は、車両に対して水平に取り付けられ、車両のヨー方向への角速度が検出されるようになっている。加速度センサ2は、自身の検出軸が車両の進行方向への加速度を検出するように設けられる。測距部3は、図示しない車速パルス発生装置から車速パルスを取得して車両の移動距離Dを算出するようになっている。傾斜角算出部4は、ジャイロセンサ1の出力値(角速度)rと、加速度センサ2の出力値gと、測距部3で算出された移動距離Dを使って、水平面に対するピッチ方向への車両の傾斜角度を、ピッチ角θとして算出できるようになっている。
【0008】
また、角速度補正部5は、ジャイロセンサから、車両のヨー方向周りの出力値rを受け取る。更に角速度補正部5は、傾斜角算出部4で算出されたピッチ角θを使って、受け取った出力値rを、鉛直軸周りの出力値r´に補正することができるようになっている。
【0009】
走行による車両の加速度の他に、重力加速度が働く。さらに、旋回時、車両には遠心加速度も働く。そして、傾斜角算出部4で車両の進行方向への加速度を求め、ピッチ角θを算出する。次に、角速度補正部5は、出力値r´に基づく補正値が得られる。この補正値に基づく補正の結果、車両がピッチ方向に傾斜する面上を走行中でも、常に鉛直軸周りの正確な出力値r´が得られるようになっている。従って、常に車両の正確な方位が得られるようになっている。
【特許文献1】特開2005−140627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、レート検出装置は、被取付体、例えば飛しょう体の機体軸に対して、レートセンサの検出軸が微小に傾いて取り付けられてしまう。この状況下では、飛しょう体が機体軸に垂直な他の軸周りに回転した場合に、レートセンサが機体軸の回転(角速度)として誤検出してしまい、姿勢制御を誤ってしまう可能性がある。特に、レート検出装置を飛しょう体に採用した場合には、レート検出装置の構成品およびレート検出装置が搭載される飛しょう体構成品の機械精度および組立精度を上げることで対処していたが、この場合レートセンサ検出軸と飛しょう体機体軸との平行度を所望の範囲内に収めるため、構成品のコスト増およびレート検出装置の組立調整工数増となり、レート検出装置の生産性低下を伴っていた。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、レートセンサが保持具に取り付けられる際に、レートセンサの検出軸の方向が、所要の方向に向いていない場合にでも、検出軸周りの角速度を高精度に検出でき、生産性を向上させることのできるレート検出装置を提供することを主な目的とする。
【0012】
また、本発明の他の目的は、レートセンサの検出軸が、飛しょう体方向の機体軸に対して平行に設置されていない場合にも、飛しょう体の進行方向の角速度を高精度に検出でき、生産性を向上させることのできるレート検出装置を搭載した飛しょう体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によれば、検出軸のレートを検出するレートセンサと、検出軸傾き補正部およびレート算出部を具備したレート検出装置であって、前記検出軸傾き補正部は、各軸に配置したレートセンサの傾きであるレートセンサ傾きベクトルを、実測検出値に乗算して補正値が得られるようにしたことを特徴とするレート検出装置を提供する。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明によれば、3軸の方向を検出軸として形成するX軸、Y軸およびZ軸上にレート(角速度)を検出するレートセンサを備えたレート検出装置を搭載した飛しょう体であって、前記レート検出装置は、各軸のレートを検出するレートセンサと、検出軸傾き補正部およびレート算出部を備え、前記検出軸傾き補正部は、各軸に配置したレートセンサの傾きであるレートセンサ傾きベクトルを、実測検出値に乗算して補正値が得られるようにしたことを特徴とするレート検出装置を搭載した飛しょう体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレート検出装置によれば、レートセンサの検出軸が飛しょう体の機体軸に対して厳密に平行でなくてもよく、この傾きを予め測定し、得られた検出角速度をレートセンサ傾きベクトルにより補正することにより、飛しょう体の機体軸周りの正確な角速度を得ることが可能となる。従って、レート検出装置の構成品およびレート検出装置が搭載される飛しょう体構成品の機械精度および組立精度を緩和することができ、レート検出装置の生産性を向上させることができる。
【0016】
また、3軸の方向を検出軸として形成するX軸、Y軸およびZ軸上にレート(角速度)を検出するレートセンサを備えたレート検出装置を搭載した飛しょう体であって、演算処理装置を利用して検出軸傾き補正値を得るようにしたことにより、レートセンサ検出軸と飛しょう体機体軸との平行度を所望の範囲内に収める必要がなく、構成品のコスト低減やレート検出装置の組立調整工数低減化が図れ、レート検出装置の生産性を向上することができるレート検出装置を搭載した飛しょう体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係わるレート検出装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明のレート検出装置のレートセンサを飛しょう体の筒状胴体部に内設した状態を示す要部断面図である。
【0019】
図1に示すレート検出装置10は、飛しょう体の、例えば筒状胴体11の内部に設けられ、レートセンサの検出軸が、飛しょう体のロール軸、すなわち飛しょう体の進行方向と平行となるように板状の保持具12に設けられる。
【0020】
また、ロール軸に対し他の2軸である図示しないピッチ軸およびヨー軸にも設けられるが、同様構成であるのでヨー軸である抽出軸Xのレートを検出する1つのレート検出装置10について説明する。
【0021】
レート検出装置10のレートセンサ13を保持するために保持具12が設けられる。この保持具12は、飛しょう体の進行方向に面部12aが面するように配設される。この保持具12の面部12aにレート検出装置10が取り付けられることにより、レートセンサ13が飛しょう体の機体軸に沿う進行方向に向かって設けられ、所要のレート(角速度)が検出可能になっている。
【0022】
図2は、レート検出装置10の実施形態を示すブロック図である。
【0023】
レート検出装置10は、図2に示すように、レートセンサ13、検出軸傾き補正部14およびレート算出部15を備えている。検出軸傾き補正部14およびレート算出部15は、図示しない、例えばターゲット捕捉手段の演算制御部に設けたり、あるいは独自に設けられる検出軸傾き補正部14の演算制御部に設けるようにしてもよい。
【0024】
レート検出装置10のレートセンサ13は、図1に示すように、保持具12の飛しょう体の進行方向側の面部12a側に取り付けられる。検出軸傾き補正部14更にはレート算出部15を独自に設ける場合には、保持具12の残余の面上に別個に取り付けてもよい。
【0025】
検出軸傾き補正部14は、レート検出装置10が予め筒状胴体11に取り付けられた状態で、ロール軸レートの特性を、図3に示す行列式αにより、補正値α3を求める。すなわち、図3に示す行列式αは、係数群α1と、レートセンサの実測検出値α2とを乗算することにより補正値α3を求めることができる。
【0026】
この図3に示す補正値α3の求め方について更に詳述する。図3は、レート検出装置10の検出軸傾き補正部14における補正値計算を示す。
【0027】
係数群α1は、レート検出装置10のレートセンサの、飛しょう体機体軸に対する検出軸の傾き特性を係数とした行列である。実測検出値α2は、ロール軸、ピッチ軸およびヨー軸各々のレートセンサの検出値である。
【0028】
従って、補正値α3は、係数群α1に実測検出値α2を乗算することにより得られる値であって、固有のレート検出装置10の保持具12の面部12aが機体軸に対して、保持具12の面部12aの平面方向が、図1のY´に示すように機体軸に直交する方向から僅かにずれていた場合、更には、保持具12の面部12aが精度よく機体軸に直交する方向に向かって取り付けられているが、レートセンサ13の向きが正しく取り付けられていなかった場合であっても、上記の補正値α3をあるべき姿として、飛翔体の実際の角速度により、真に検出されるべき値として求めることができる。
【0029】
また、検出軸傾き補正部14は、記憶部14aおよび演算処理部14bが設けられる。記憶部14aは、レートセンサ13の傾きであるレートセンサ傾きベクトルを係数群α1に置き換えパラメータとして記憶する。
【0030】
実測検出値α2は、レート検出装置10を飛しょう体に搭載した状態でのレートセンサ検出値である。
【0031】
演算処理部14bは、係数群α1を実測検出値α2に乗算し補正値α3を得るための演算処理機能を有する。レート算出部15は、検出軸傾き補正部14で求めた補正値α3を、レート値Rとして変換する。
【0032】
次に、レート検出装置10の作用を、飛しょう体のヨー方向である検出軸Xの方向にレートセンサ13の正面方向が、例えば図1において、X´軸の方向に設置された場合について説明する。
【0033】
レート検出装置10が設置された飛しょう体は、飛しょうするに先だって、先ずレート検出装置10の複数の所要部位の特性を示す係数群α1を求める。この所要部位の特性については、レート検出装置10の性能をチェックするについて、複数の部位における、例えば性能の保持に欠かせないチェックポイントデータを得る。
【0034】
次に、飛しょう体の飛行中においてレート検出装置10を作動させると、レートセンサ13が作動して、飛しょう体の回転に基づく角速度に応じた所定の検出値α2である電圧を起成して、検出軸傾き補正部14へ出力する。次に、検出軸傾き補正部14が電圧α2を受けることにより、レート検出装置10の記憶部14aから係数群α1を呼び出し、演算処理部14bで、レートセンサ13の補正値α3である所定の電圧を生起してレート算出部15に出力する。この補正値α3を入力したレート算出部15で、補正値α3をレート値Rに変換され、飛しょう体の制御装置側へ出力される。
【0035】
飛しょう体の姿勢制御装置は、当該飛しょう体の進行方向である機体軸(検出軸X方向)の正確なレートに応じた飛しょう体の姿勢制御を行うことができる。
【0036】
従って、レート検出装置10が飛しょう体に設置された状態で、レート検出装置10の保持具12の表面12aが機体軸に対して、例え正面を向いていなくても、更には、保持具12の表面12a上にレートセンサ13が正しく取り付けられていなかったとしても、飛しょう体の進行方向におけるロール軸周りの飛しょう体の角速度を正確に得ることができるので、飛しょう体の姿勢制御に用いることができる。
【0037】
なお、上述したレート検出装置10は、飛しょう体の進行方向であるロール軸方向に設置した場合を説明したが、ピッチ軸方向およびヨー軸方向にもレート検出装置10と同様のレート検出装置10が設置される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のレート検出装置のレートセンサを飛しょう体の筒状胴体部に内設した状態を示す要部断面図。
【図2】本発明のレート検出装置の実施形態を示すブロック図。
【図3】本発明のレート検出装置の検出軸傾き補正部における補正値計算を示す図。
【図4】従来のレート検出装置の全体構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0039】
10 レート検出装置
11 筒状胴体
12 保持具
12a,12b 面部
13 レートセンサ
14 検出軸傾き補正部
14a 記憶部
14b 演算処理部
15 レート算出部
α 行列式
α1 係数群(行列)
α2 実測検出値(電圧)
α3 補正値(電圧)
R レート値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出軸のレートを検出するレートセンサと、検出軸傾き補正部およびレート算出部を具備したレート検出装置であって、
前記検出軸傾き補正部は、各軸に配置したレートセンサの傾きであるレートセンサ傾きベクトルを、実測検出値に乗算して補正値が得られるようにしたことを特徴とするレート検出装置。
【請求項2】
前記検出軸傾き補正部は、前記検出軸に配置したレートセンサの傾きであるレートセンサ傾きベクトルを、パラメータとして記憶する記憶部および演算処理装置を備え、
前記演算処理装置は、前記記憶部に記憶されたパラメータにより実測検出値を演算し、補正値を得るようにしたことを特徴とする請求項1記載のレート検出装置。
【請求項3】
3軸の方向を検出軸として形成するX軸、Y軸およびZ軸上にレート(角速度)を検出するレートセンサを備えたレート検出装置を搭載した飛しょう体であって、
前記レート検出装置は、各軸のレートを検出するレートセンサと、検出軸傾き補正部およびレート算出部を備え、
前記検出軸傾き補正部は、各軸に配置したレートセンサの傾きであるレートセンサ傾きベクトルを、実測検出値に乗算して補正値が得られるようにしたことを特徴とするレート検出装置を搭載した飛しょう体。
【請求項4】
前記検出軸傾き補正部は、前記検出軸に配置したレートセンサの傾きであるレートセンサ傾きベクトルを、パラメータとして記憶する記憶部および演算処理装置を備え、
前記演算処理装置は、前記記憶部に記憶されたパラメータにより実測検出値を演算し、補正値を得るようにしたことを特徴とする請求項3記載のレート検出装置を搭載した飛しょう体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−8632(P2009−8632A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172663(P2007−172663)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】