説明

ロチゴチンの鼻腔内用処方

本発明は、好ましくは、粘度が0.5−1.5mm/sの緩衝水溶液の形態の、ロチゴチンの医薬上許容される酸付加塩と、α−シクロデキストリンとを含む液体鼻腔内用医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明はロチゴチン(rotigotine)の医薬上許容される塩を含有する鼻腔内用医薬処方に関する。かかる鼻腔内用処方は、ロチゴチンの投与が有益である疾患の治療、特にパーキンソン病および他のドパミン関連障害の治療に有用である。
【0002】
(従来技術)
アポモルヒネまたはロチゴチンなどのドパミンD2アゴニストは、原則として、パーキンソン病およびドパミン濃度の上昇が有益である他の疾患、例えば、下肢静止不能症候群(RLS)の治療に用いうることが知られている。しかしながら、これらドパミンアゴニストの多くが有する極めて高い初回通過効果および多くのパーキンソン患者がこれらの薬物に対してある種の薬物耐性を生み出すという問題のため、制御された量の薬物を投与しうることで安全かつ効果的な医薬処方を開発することは、決して取るに足らないことではない。
【0003】
ロチゴチン(5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル−[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフタレノール、時にN−0923とも称される)およびその医薬上許容される塩は、以前は、主として経皮デリバリーシステムの形態にて患者に投与されていた(WO94/07468、WO99/49852、EP−A−1256339を参照のこと)。しかしながら、この薬物を鼻腔内投与しようとする試みが少なくとも一回はあった(Swartら、Pharmaceutical Science 1995、1:437−440)。Swartらは、ロチゴチン塩酸塩のポリエチレングリコール(PEG)400と水の1:1混合物中溶液を雄のアルビノ・ウィスターラットに投与した。彼らは、ラットにおける経口投与と比較して、口腔投与、経鼻投与または経直腸投与の後に、ロチゴチンの改良された生物学的利用能を観察したが、他の親油性薬物について記載されている結果と比較した場合に、経鼻投与についての生物学的利用能は「少々失望させるもの」であった。Swartらは、その観察した生物学的利用能の相対的な低さは、鼻粘膜における薬物の吸収の低さまたは迅速な代謝的変換により説明できると示唆した。これらの著者らはさらに、1995年現在で、ロチゴチンの鼻粘膜の繊毛作用に対する影響について入手可能な情報は何もないと言っている。彼らの見解では、経鼻薬物治療は上皮細胞を変化させるか、または破壊させる可能性さえあり、回復には薬物に応じて2〜3時間から2〜3ヶ月を要する(Van Donkら、Rhinology 18:93−104)。
【0004】
この予想以上に失望させる報告を考慮した場合、1995年から本願発明がなされるまでの数年の間においてロチゴチンを経鼻投与しようとする試みがなされなかったことはおそらく意外でも何でもない。ロチゴチンの鼻粘膜の繊毛作用に対する影響についての情報はその状況において今日まで基本的に変わらないままである。
【0005】
US−A−2003−0124191は、粘膜を介する投与を意図とする粉末形の医薬組成物を開示する。とりわけ、ロチゴチンを含む多種の活性成分をこの処方の有効成分として用いてもよく、さらに湿潤剤、結合剤、希釈剤、浸透促進剤および他の成分を含有してもよい。この明示されている浸透促進剤は、とりわけ、シクロデキストリンを包含する。この出願に記載されている投与形路は多重(multifold)であり、口腔粘膜、鼻粘膜、膣粘膜を介する投与および舌下投与を含む。しかしながら、この出典はロチゴチンの鼻腔内用処方を具体的に開示するものではなく、そのような鼻腔内用処方の要件および必須/適当な成分について何ら教示するものではない。
【0006】
アポモルヒネはロチゴチンの特定の機能的特徴を共有するが、構造的には異なる、薬物である。ロチゴチンと同様に、アポモルヒネはドパミンアゴニストであり、したがってパーキンソン病を含む、種々のドパミン関連障害の治療に用いられる。アポモルヒネの経鼻投与も試験された。例えば、WO94/22445はアポモルヒネ、モルヒネおよびジヒドロエルゴタミンの鼻腔内投与用の医薬組成物を記載する。これらの薬物は多糖類または高級糖アルコールと組み合わせて用いることができる。
【0007】
J.Duarteらは、J.Pharmacol.Technol. 11:226−228(1995)にて、パーキンソン病における鼻腔内でのアポモルヒネの態様を記載する。この報告によれば、アポモルヒネの鼻腔内投与は皮下投与に代わる十分かつ効果的な代替品である一方で、他方では、一人の患者が化学実験の間に鼻前庭炎(「厄介な鼻炎」)を発症したと言っている。この患者はアポモルヒネ療法を続けることができたが、この実験に患者は四人しか関与していないという事実を考慮した場合、この治療形態の一般的な適合性に関する疑問は残ったままである。かかる副作用について極めて類似する報告が、Ned Tijdschr Geneeskd 1992;136、nr14、p.702に掲載されている。この出典の著者は、アポモルヒネがハプテンとして鼻粘膜の蛋白に結合し、かくしてアレルギー反応を惹起しうるのではないかと考えている。すなわち、アポモルヒネの場合であっても、安全(非アレルギー)かつ効果的な鼻腔内薬物処理の知見についての問題は満足のいく程度まで解決されているとは考えられない。
【0008】
最近になって、アポモルヒネの液体鼻腔内処方を用いる同じ知見が、再度、Djupeslandらにより、PFO Magazine、6月/7月 2002にて確認された。これらの著者は液体鼻腔内用アポモルヒネの投与はパーキンソン病にて効果のあることが明らかにされたが、鼻のクラスティング、炎症および感染の形態の局所的な副作用が明らかであったと言っている。加えて、アポモルヒネは溶液中にて急速な酸化に付されることも判明した。これらの問題を解決するのに、鼻−粉末法が開発された。
【0009】
(発明の目的)
本発明の最も重要な目的は、安定しており、安全で、かつ効果的なロチゴチン塩の液体鼻腔内用処方を開発することである。所望の安定性の態様として、許容される酸化安定性および良好な温度安定性が挙げられる。処方安定性の態様として、とりわけ、場合によっては、たとえエタノールまたは塩化ベンズアルコニウムなどの刺激性のある保存剤を必要に応じて添加しうるとしても、かかる保存剤を回避する可能性を維持しながら微生物の汚染を検出できないことが挙げられる。しかしながら、本発明の好ましい態様において、該鼻腔内用処方はどのような保存剤も含まずに、なおも抗菌活性を保持している。安全性のさらなる態様として、鼻粘膜の刺激の低さおよび鼻前庭炎の回避が挙げられる。処方の効能の態様として、パーキンソン病に罹患しているヒト患者に、(a)ロチゴチンにおいて少なくとも100pg/mlのオーダーの血漿中濃度、および(b)パーキンソン病の徴候においてプラセボ治療と比較してパーキンソン病格付けの統一評点(Unified Parkinson's Disease Rating Scale;UPDRS)にて少なくとも2の単位の測定しうる改良、を付与するのに十分な量を投与してもよいことが挙げられる。本明細書の内容において、「プラセボ治療」とは、同一の物性の組成物の鼻腔内用組成物を用いての治療をいうが、有効成分が排除されているところの治療をいう。
【0010】
(発明の要約)
意外にも、上記した目的が、ロチゴチンの医薬上許容される酸付加塩とα−シクロデキストリンとを含む液体鼻腔内用医薬処方を用いて達成されうることが見出された。ロチゴチンの最も好ましい医薬上許容される酸付加塩は塩酸塩である。使用可能なさらなる医薬上許容される酸付加塩として、ウロトレート(urotrate)、酒石酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、硫酸塩およびメタンスルホン酸塩が挙げられる。本発明に係る鼻腔内用処方の付加的な好ましい態様として、添付した特許請求の範囲に記載されている態様および以下の詳細な記載に挙げられている態様がある。
【0011】
(発明の詳細な記載)
本発明の好ましい態様によれば、液体鼻腔内用処方は、さらに緩衝塩、例えば、リン酸塩または酢酸塩を含有し、それ自体は緩衝水溶液として存在してもよい。好ましい実施形態において、鼻腔内用処方はバッファ系としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含有する。
【0012】
本発明に係る鼻腔内用処方はさらに増粘物質を含有することが好ましい。増粘物質としてグリセロールおよびカルボキシメチルセルロース(CMC)が特に有用であるが、本発明はそれらに限定するものではない。グリセロールはまた、鼻粘膜に対して潤滑作用を有するため、かかる物質が特に好ましい。本発明の鼻腔内用処方の粘性は、好ましくは、0.8と1.5mm2/sの間とすべきであり、最も好ましくは、約1.2mm2/sとすべきである。粘度は、DIN51562、パート1に従って動粘度を測定するためのボールを浮かせて水平にした(suspending ball-level)Ubbelohde毛細管粘度計により測定することができる。その上、処方中のグリセロールは、意外にも、新たに解体されたウシから由来の鼻粘膜を用いるインビトロでの透過アッセイにより明らかにされるように、鼻粘膜を介してのロチゴチンの吸収を増加させるのに役立つ。
【0013】
本発明の処方のpH値は、好ましくは、4.5ないし6.5の範囲とすべきであり、より好ましくは約5.8±0.3とすべきである。5.8のpH値が、インビトロ透過アッセイで明らかにされるように、最適の薬物吸収をもたらす。意外にも、処方における6.5より高いpH値ならびに4.5より低いpH値は、新たに解体されたウシから由来の鼻粘膜組織を介するロチゴチンの吸収にて有意に低い結果をもたらした。鼻腔内用処方のpH値は、その調製の間または後に、医薬上許容される酸または塩基を用いて調整できる。この目的には、クエン酸を用いることが最も好ましい。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、鼻腔内用処方は、さらなる吸収促進剤、保存剤および/または酸化防止剤を含有しない。かかる物質は、通常、多くの市販されている鼻腔内用製剤に使用されるが、本発明の処方は、それらが無くても、安全性および有効性を犠牲にすることなく、目的を達成することができ、場合によってはかかる物質を削除することで安全性および有効性が改善される。
【0015】
それでもなお、本発明のあまり好ましくない実施形態によれば、鼻腔内用処方がさらなる吸収促進剤を含有することも可能である。かかる促進剤は、界面活性剤および/または乳化剤、特にツウィーン(TWEEN)80(登録商標)またはクレモホール(cremophor)RH40(登録商標)などの非イオン性界面活性剤より適宜選択されうる。酸化防止剤として、該処方は、例えば、アスコルビン酸塩またはソルビン酸塩を含有してもよい。該処方に用いる必要はないが、用いてもよい既知の保存剤として、塩化ベンズアルコニウムなどの抗菌物質が挙げられる。本発明の処方の特に有利かつ意外な特徴の一つが、かかる抗菌性保存剤を必要としないことであり、かくしてさらなる態様において、本発明は、上記したように、保存剤不含の鼻腔内用処方に関する。塩化ベンズアルコニウムなどの保存剤を含まないことは、この物質が有意な繊毛毒性を示すため、付加的な利点を提供する。本発明者らにより行われた実験は、本発明による保存剤不含の処方であっても、微生物汚染を示さず、欧州薬局方、第4版の局所処方の基準を満たすことを示す。
【0016】
α−シクロデキストリンが本発明の特に重要な成分である。本発明者らは、予期せぬことに、α−シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンと比較した時でさえ、鼻腔内用処方の貯蔵安定性を著しく増加させることを見出した。その上、α−シクロデキストリンはβ−シクロデキストリンよりもロチゴチン塩酸塩に対してずっと良好な溶解促進作用を有するようである。α−シクロデキストリンの溶液中濃度は0.5g/mlより高い必要はなく、0.001−0.1g/mlの範囲にあることが好ましく、0.05と0.1g/mlの間にあることがより好ましく、0.05−0.085g/mlであることが最も好ましい。
【0017】
多くの他の物質のうち、シクロデキストリンその物は、以前に鼻用薬物デリバリー材料として提案されている。例えば、Merkusら、Advanced Drug Delivery Reviews 36(1999)41−57を参照のこと。しかしながら、Merkusの報文はロチゴチンを具体的に扱うものではなく、全体として、むしろβ−シクロデキストリン、特にメチル化β−シクロデキストリンを優先しているようである。その論文はさらには、大きな種間差およびラット実験の結果をヒトに盲目的に移すことに対する注意に言及するものである。
【0018】
本発明の好ましい態様の鼻腔内用処方は緩衝水溶液中に1−6mg/mlのロチゴチン−HClを含有してもよい。本発明のさらに独立した態様によれば、該鼻腔内用処方は溶液中に0.03と0.1g/mlのα−シクロデキストリンを含有する。
本発明の特に好ましい鼻腔内用処方は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの水性緩衝液中に、2−5mg/mlのロチゴチン−HClと、0.05−0.1g/mlのα−シクロデキストリンと、2.2−3容量%のグリセロールとからなる。
【0019】
(実施例)
以下の実施例は本発明を説明するものであり、本発明を限定するものではない。特記しない限り、すべての部および%は容量を基礎とするものである。
【0020】
実施例1
以下に示す本発明の鼻腔内用処方を調製した:
2.5g/L ロチゴチン−HCl
85g/L α−シクロデキストリン
8g/L NaCl
0.2g/L KCl
1.44g/L NaHPOx2H
0.2g/L KHPO
31.2g/L グリセロール(水中87%溶液)
最終容量まで適量 水
pH調整量 クエン酸
溶液のpH:5.8
【0021】
610mlの水をクエン酸でpH3に調整し、α−シクロデキストリン、グリセロールおよびロチゴチン塩酸塩を添加して、各々、85mg/ml、2.6容量%および2.5mg/mlの濃度とした。その後、250mlの4xPBS緩衝溶液(標準PBS緩衝溶液の4倍の濃度を有する、すなわち、水中にて32g/lのNaCl、0.8g/lのKCl、5.76g/lのNaHPOx2HOおよび0.8g/lのKHPOの濃度を有する)を添加し、つづいてpHが5.8に達するまで1Mクエン酸を滴下した。水を加えて1000mlの最終容量とした。
得られた溶液を0.22μmのPESフィルターを介して濾過した。該溶液を、ヒトを含む、哺乳動物への鼻腔内投与の容易である、適当な医薬容器、例えば、8ml容量の暗色バイアルに入れてもよい。
【0022】
実施例2
ロチゴチン−HClの室温(20℃)での水溶液における(最大)溶解度は、β−シクロデキストリンを用いた場合には、ロチゴチンの溶解度において有意な増加は無いにも拘わらず、α−シクロデキストリン(α−CD)を用いることで有意に改善されうる。2種の各々のCDの最大溶解度に近いシクロデキストリンの濃度である、0.1g/mLのα−CD溶液には5.03mg/mLのロチゴチン−HClを溶かすことができるが、0.015g/mLのβ−CD溶液には1.57mg/mLを溶かすことができるにすぎない。
【0023】
濃度は定組成HPLC分析により測定される。HPLCカラムLiChroCART 75x4mm、Superspher60RP−selectB5μm(メルク)、カラム温度:30℃、移動相:水/アセトニトリル/メタンスルホン酸(65/35/0.05 v/v/v)、流速:2mL/分、注入容量:50μl、検出:220nm、保持時間:約1.5分。既知の濃度を有する外部標準溶液を用いることで濃度を測定した。
【0024】
結果を以下の表1に示す:
【表1】

n.d.=利用可能なデータなし
*=(0.05および0.1の場合)試験した溶液中のβ−CDの最大溶解度を上回る
【0025】
ロチゴチン塩酸塩の溶解度が0.1g/mlのα−シクロデキストリン(α−CD)を添加することで5倍増加し、それに対してβ−CDの最大溶解度向上効果が本当に中程度にすぎない(因子1.6)ことは全く驚くべきことである。ロチゴチン塩基は、実際には、水溶液およびα−またはβ−シクロデキストリン含有の水溶液の両方に不溶である。したがって、本発明の全体としての有益な効果はα−シクロデキストリンを用いることでのみ得ることができる。この効果は意外であり、ロチゴチンに関して利用可能なデータを基礎として予測できるものではない。
【0026】
実施例3
可能性のあるロチゴチン塩酸塩の鼻用処方の貯蔵安定性を評価するために、以下の処方を調製した:
【0027】
処方サンプルA(比較例)
2.5g/L ロチゴチン−HCl
0.5%(v/v) ツィーン80
8g/L NaCl
0.2g/L KCl
1.44g/L NaHPOx2H
0.2g/L KHPO
最終容量まで適量 水
pH調整量 クエン酸、pH 5.8
【0028】
470mlの水をクエン酸でpH3に調整し、ツィーン80およびロチゴチン塩酸塩を添加して、各々、0.5容量%および2.5mg/mlの濃度とした。その後、200mlの4xPBS緩衝溶液を添加し、つづいてpHが5.8に達するまで1Mクエン酸を滴下した。水を加えて800mlの最終容量とした。
【0029】
処方サンプルB(発明の処方)
2.5g/L ロチゴチン−HCl
85g/L α−シクロデキストリン
8g/L NaCl
0.2g/L KCl
1.44g/L NaHPOx2H
0.2g/L KHPO
最終容量まで適量 水
pH調整量 クエン酸、pH 5.8
【0030】
470mlの水をクエン酸でpH3に調整し、α−シクロデキストリンおよびロチゴチン塩酸塩を添加して、各々、85mg/mlおよび2.5mg/mlの濃度とした。その後、200mlの4xPBS緩衝溶液を添加し、つづいてpHが5.8に達するまで1Mクエン酸を滴下した。水を加えて800mlの最終容量とした。
【0031】
勾配HPLC分析法を用いて経時的にロチゴチンの濃度を測定することでその安定性を測定した。HPLCカラム:Licrosher100CN、5μm、125x4.6mm(Bidhoff)、プレカラムフィルター:2μm、移動相A:水/メタンスルホン酸(1000/0.5(v/v))、移動相B:アセトニトリル/メタンスルホン酸(1000/0.5(v/v))、流速:1.0mL/分、勾配のプロフィール:0分(95%A/5%B);2分(95%A/5%B);35分(40%A/60B);38分(40%A/60%B);39分(95%A/5%B)、初期圧:約90バール、注入容量:80μl、検出波長:220nmおよび272nm、保持時間:約18分。面積が>0.05%のクロマトグラムにおけるすべてのピークを35分の保持時間まで積分し、薬物の純度を計算した。相対純度を用いてロチゴチン塩酸塩の減成を計算する。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

* これらの値は出発値と所定の条件での実際の試験値との間のロチゴチン吸収における損失を反映する。
** 純度の明らかな増加は分析方法の測定精度により説明しうる。その結果はt=0での出発値に対する相対的なもので純度における有意な変化はなかったものとして解釈されるべきである。
【0033】
表2から、α−シクロデキストリン(サンプルB)がツィーン80の処方(サンプルA)と比較してロチゴチン塩酸塩の安定性を著しく増大させたことは明らかである。α−シクロデキストリンの安定性の効果はまた、ロチゴチン水溶液における比較試験から明らかとなる。60℃で8週間貯蔵した後、α−シクロデキストリンを含む1.6mg/mlのロチゴチン溶液は−0.07mg/mlのロチゴチン濃度の減少を示したのに対して、α−シクロデキストリン不含の1.9mg/mlのロチゴチン溶液は−0.22mg/mlの減少を示した。
【0034】
2.5g/L ロチゴチン−HCl
50g/L α−シクロデキストリン
4g/L NaCl
0.1g/L KCl
0.72g/L NaHPOx2H
0.1g/L KHPO
31.2g/L グリセロール(水中87%溶液)
【0035】
470mlの水をクエン酸でpH3に調整し、α−シクロデキストリン、グリセロールおよびロチゴチン塩酸塩を添加して、各々、50mg/mlおよび2.5mg/mlの濃度とした。
その後、200mlの2xPBS緩衝溶液を添加し、つづいてpHが5.8に達するまで1Mクエン酸を滴下した。水を加えて800mlの最終容量とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロチゴチンの医薬上許容される酸付加塩とα−シクロデキストリンとを含む液体鼻腔内用医薬処方。
【請求項2】
さらにバッファ系を含有する点で特徴付けられる、請求項1記載の鼻腔内用処方。
【請求項3】
バッファ系がリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である点で特徴付けられる、請求項2記載の鼻腔内用処方。
【請求項4】
0.5−1.5mm/sの粘度が得られるように、さらに増粘物質を含有する点において特徴付けられる、上記した請求項のいずれかに記載の鼻腔内用処方。
【請求項5】
増粘物質がグリセロールである点において特徴付けられる、請求項4記載の鼻腔内用処方。
【請求項6】
5−6.5の範囲にあるpH値を有する点において特徴付けられる、上記した請求項のいずれかに記載の鼻腔内用処方。
【請求項7】
さらにpH値の調節のための医薬上許容される酸を含有する点において特徴付けられる、上記した請求項のいずれかに記載の鼻腔内用処方。
【請求項8】
医薬上許容される酸がクエン酸である点において特徴付けられる、請求項7記載の鼻腔内用処方。
【請求項9】
処方が溶解度強化剤を含有しない点において特徴付けられる、上記した請求項のいずれかに記載の鼻腔内用処方。
【請求項10】
いずれの保存剤も含有しない点において特徴付けられる、上記した請求項のいずれかに記載の鼻腔内用処方。
【請求項11】
いずれの酸化防止剤も含有しない点において特徴付けられる、上記した請求項のいずれかに記載の鼻腔内用処方。
【請求項12】
さらに非イオン性界面活性剤から選択される吸収促進剤を含有する点において特徴付けられる、上記した請求項のいずれかに記載の鼻腔内用処方。
【請求項13】
吸収促進剤がツウィーン80またはクレモホールRH40である点において特徴付けられる、請求項の12記載の鼻腔内用処方。
【請求項14】
ロチゴチンの医薬上許容される酸付加塩がロチゴチン塩酸塩である点において特徴付けられる、上記した請求項のいずれかに記載の鼻腔内用処方。
【請求項15】
緩衝水溶液中に1−6mg/mlのロチゴチン−HClを含有する点において特徴付けられる、上記した請求項のいずれかに記載の鼻腔内用処方。
【請求項16】
溶液中に0.03と0.1g/mlの間のα−シクロデキストリンを含有する点において特徴付けられる、上記した請求項のいずれかに記載の鼻腔内用処方。
【請求項17】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に2−5mg/mlのロチゴチン−HCl、0.05−0.1g/mlのα−シクロデキストリンおよび2.2−3%のグリセロールからなる点において特徴付けられる、上記した請求項のいずれかに記載の鼻腔内用処方。
【請求項18】
pH値を5と6.5の間に調節するのにさらにクエン酸を含有する点において特徴付けられる、請求項17記載の鼻腔内用処方。

【公表番号】特表2006−526004(P2006−526004A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508291(P2006−508291)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014626
【国際公開番号】WO2005/063236
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(591071997)シュバルツ ファルマ アクチェンゲゼルシャフト (39)
【氏名又は名称原語表記】SCHWARZ PHARMA AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Alfred−Nobel−Strasse 10, D−40789 Monheim, Germany
【Fターム(参考)】