説明

ロッド状部材の保持機構

【課題】ロッド状部材の交換作業が容易となるように、ロッド状部材を着脱可能に保持することができるロッド状部材の保持機構を提供する。
【解決手段】ロッド状部材10に取り付けられる保持ブロック11に係止突部12を形成し、この係止突部12が係止される係止段部242と、係止突部12が挿通可能な切り欠き部243とが周縁に沿って隣接して形成された挿通孔241を天面に穿設したハウジング部24、及びベース部21に凹陥状に設けられた収容部22に前記係止段部側へ付勢された状態で収容され、ハウジング部24内に挿通された係止突部12に対して押圧可能に当接する当接部材23とを有する保持部本体20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッド状部材を着脱可能に保持するロッド状部材の保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を、ブロー成形などによってボトル状に成形してなる合成樹脂製容器が、各種飲料品を内容物とする飲料用容器として急速に普及、浸透してきている。このような合成樹脂製容器は、一般には、プリフォームと称される有底筒状の成形中間体を用意して、これを成形型内にセットし、延伸ロッドを用いて縦方向に延伸しつつ、ブローエアーによって横方向にも延伸することにより、所定の容器形状に成形される。
【0003】
このようにしてボトル状の合成樹脂製容器を製造する際には、通常、成形対象となる容器ごとに成形型や延伸ロッドの交換がなされるが、その作業は、迅速かつ的確に行うことが要求される。
また、延伸ロッドには、多くの場合、ブロー成形がなされた後にクーリングブローを施すために、その軸心に沿って冷却エアー供給路が内部に形成されているとともに、延伸ロッドの先端側の所定の位置に冷却エアー噴出孔が穿設されている。そして、延伸ロッドに穿設された冷却エアー噴出孔は、成形される容器の形状ごとに、その軸心周りの配列が異なっており、例えば、角形ボトルを成形する場合は、その四隅に向かって冷却エアーが噴出するように、冷却エアー噴出孔を配列させている。このため、延伸ロッドを取り付ける際には、その軸心周りの位置決めをしつつ、軸心周りの回転が抑止された状態で延伸ロッドが保持されるようにして、冷却エアーが噴出する方向が常に一定となるようにする必要がある。
【0004】
ここで、特許文献1には、延伸ロッドを取り外し可能に取り付けるための装置が開示されており、かかる装置によれば、延伸ロッドを迅速に交換できるとされている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−514570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された装置では、延伸ロッドの軸心周り回転を抑止するために、延伸ロッドに取り付けられた支持部材に開口部を設け、この開口部にロック用の部材を挿通させているが、延伸ロッドをケーシング内に挿通する際には、圧縮ばねなどによって付勢されたロック用の部材を外側にずらしながら作業をしなければならない(特許文献1の[0051]〜[0053]段落参照)。このため、延伸ロッドの取り付け作業や、取り外し作業をするには、重い延伸ロッドを持ちながら、ロック用の部材を操作しなければならず、作業者の負担が懸念される。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、有底筒状のプリフォームを延伸ロッドで縦方向に延伸しつつ、ブローエアーによって横方向にも延伸して所定の容器形状に成形するブロー成形装置に適用することが可能であり、延伸ロッドのようなロッド状部材の交換作業が容易となるように、ロッド状部材を着脱可能に保持することができるロッド状部材の保持機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る延伸ロッド保持機構は、ロッド状部材を着脱可能に保持するための保持機構であって、流体溜まりを備え、前記流体溜まり内に流体が圧入された状態と、前記流体溜まり内の流体圧が開放された状態とを切り換えることによって、前記ロッド状部材が保持された状態と、前記ロッド状部材が着脱可能とされた状態とが切り換えられる構成としてあり、より具体的には、前記ロッド状部材の一方の端部側に、前記ロッド状部材の軸心と交差する方向に突出する係止突部が形成された保持ブロックを取り付けるとともに、前記係止突部が係止される係止段部と、前記係止突部が挿通可能な切り欠き部とが周縁に沿って隣接して形成された挿通孔を天面に穿設したハウジング部と、前記ハウジング部が設けられたベース部と、前記ベース部に凹陥状に設けられた収容部に前記係止段部側へ付勢された状態で収容され、前記ハウジング部内に挿入された前記保持ブロックに対して押圧可能に当接する当接部材とを有し、かつ、前記ベース部と前記当接部材にも同軸状に貫通する挿通孔を穿設して、前記ハウジング部側から前記ロッド状部材を挿通したときに、前記ロッド状部材の他方の端部側が前記ベース部側に突出する保持部本体を備え、前記ハウジング部と前記ベース部の一方又は両方と、前記当接部材との間に前記流体溜まりを形成し、前記流体溜まり内に流体を圧入することによって、前記当接部材を前記係止段部側へ付勢する付勢力に抗して前記当接部材が後退するとともに、前記流体溜まり内の流体圧を開放することによって、前記当接部材を前記係止段部側へ付勢する付勢力により前記当接部材が前進するようにした構成とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のような本発明によれば、流体溜まり内に流体が圧入された状態と、流体溜まり内の流体圧が開放された状態とを切り換えることで、ロッド状部材が保持された状態と、ロッド状部材が着脱可能とされた状態とを切り換えることができ、これによって、ロッド状部材の取り付けや、取り外しの作業が容易となり、作業者への負担を格段に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るロッド状部材の保持機構が適用されるブロー成形装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る延伸ロッド保持機構の実施形態における保持ブロックの一例を示す説明図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】本発明に係る延伸ロッド保持機構の実施形態において、ロッド状部材を保持部本体に保持させる手順を示す説明図である。
【図5】本発明に係る延伸ロッド保持機構の実施形態において、ロッド状部材を保持部本体に保持させる手順を示す説明図である。
【図6】本発明に係る延伸ロッド保持機構の実施形態において、ロッド状部材を保持部本体に保持させる手順を示す説明図である。
【図7】本発明に係る延伸ロッド保持機構の実施形態において、ロッド状部材を保持部本体に保持させる手順を示す説明図である。
【図8】図4(a)のX−X断面図である。
【図9】本発明に係る延伸ロッド保持機構の実施形態における当接部材の一例を示す説明図である。
【図10】本発明に係る延伸ロッド保持機構の実施形態における当接部材の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るロッド状部材の保持機構の実施形態ついて、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
[ブロー成形装置]
まず、本発明に係るロッド状部材の保持機構の実施形態を説明するにあたり、本発明に係るロッド状部材の保持機構が好適に適用されるブロー成形装置の一例について説明する。
【0013】
図1は、当該ブロー成形装置の一例を示す概略図であり、ブロー成形装置100は、延伸ブローユニット部200とブロー成形型ユニット部300とを備えている。
延伸ブローユニット部200には、延伸ロッドユニット210とブローユニット220とが、固定フレーム201に設けられたガイドレール202に沿って、それぞれが独立して昇降可能となるように取り付けられている。そして、ブロー成形に適した所定の温度分布となるように温調されたプリフォームPがブロー成形型ユニット部300に供給されて、当該プリフォームPが、ブロー成形型ユニット部300が備えるブロー成形型310内にセットされると、延伸ロッドユニット210とブローユニット220とが、それぞれ所定のタイミングで下降するようになっている。
【0014】
また、延伸ロッドユニット210には、延伸ロッド10が保持されている。この延伸ロッド10の内部には、その軸心に沿って冷却エアー供給路が形成されている。これとともに、延伸ロッド10の先端側の所定の位置には、例えば、特開2000−343590,特開2007−69403,特開2009−184258等に示されるような冷却エアー噴出孔が穿設されており、延伸ロッド10の基端側は、例えば、特開平7−156259,特開2000−309050等に示されるように、エアー供給源との接続孔をロッド基端の軸心部又は基端寄りの側面に備えている。一方、ブローユニット220はブローノズル221を備えている。このブローノズル221は、延伸ロッドユニット210が保持する延伸ロッド10がブローノズル221の内部を貫通するように、当該延伸ロッド10と同軸に設けられている。
なお、延伸ロッドユニット210に延伸ロッド10を保持するに際しては、本発明に係るロッド状部材の保持機構が適用されるが、これについては後述する。
【0015】
特に図示しないが、このようなブロー成形装置100にあっては、延伸ロッドユニット210が下降すると、延伸ロッド10がプリフォームP内に挿通されて、プリフォームPを縦方向に延伸する。
さらに、延伸ロッドユニット210が下降するのと同時に、又はこれと前後してブローユニット220も下降して、プリフォームPの開口部にブローノズル221が挿入されてプリフォームP内を気密にする。そして、気密にされたプリフォームP内には、ブローユニット220に接続された図示しないブローエアー供給源から供給されてきたブローエアーが、ブローノズル221から吹き込まれるようになっている。
これにより、ブロー成形型310内にセットされたプリフォームPが、延伸ロッド10によって縦方向に延伸されつつ、ブローエアーによって横方向にも延伸されて、所定の容器形状に成形される。
【0016】
その後、延伸ロッドユニット210に接続された図示しない冷却エアー供給源から供給される冷却エアーを、延伸ロッド10の内部に形成された冷却エアー供給路を経て冷却エアー噴出孔から噴出させることによって、成形された容器に対してクーリングブローを施す。クーリングブローが終了すると、延伸ロッドユニット210とブローユニット220とを待機位置まで上昇させるとともに、ブロー成形型310を型開きし、これによって、最終的な容器形状に成形された容器が取り出されるようになっている。
【0017】
[ロッド状部材の保持機構]
次に、本発明に係るロッド状部材の保持機構の実施形態について、上記したブロー成形装置100に適用した例を挙げて説明する。
【0018】
前述したように、延伸ロッドユニット210に延伸ロッド10を保持するに際しては、本発明に係るロッド状部材の保持機構が適用される。これにより、ロッド状部材としての延伸ロッド10が軸心周りに回転してしまうのを抑止しつつ、延伸ロッド10を延伸ロッドユニット210に着脱可能に保持させることが可能となる。
【0019】
本実施形態において、延伸ロッド10の上端側には、図2に示すような円柱状の保持ブロック11が取り付けられている。この保持ブロック11の下端側の対向する側面には、延伸ロッド10の軸心と交差する方向(好ましくは、延伸ロッド10の軸心と直交する方向)に突出する一対の係止突部12が設けられており、一方の係止突部12の先端面には、鉛直方向に沿ってV溝13が刻設されている。
なお、図2は、延伸ロッド10の上端側に取り付けられた保持ブロック11の一例を示す説明図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図、図2(c)は側面図である。
【0020】
また、図3に示すように、延伸ロッドユニット210は、水平に張り出して設けられたベース部21を有している。このベース部21の上面側に凹陥状に設けられた収容部22には、図9に示すような当接部材23が収容されている。そして、当接部材23の上方には、当接部材23を覆うハウジング部24がベース部21に強固に組み付けることによって設けられており、これらによって延伸ロッド10を保持する保持部本体20が形成されている。
なお、図示する例では、ベース部21と別体に形成されたハウジング部24をベース部21に組み付けるようにしているが、ハウジング部24は、ベース部21の一部として、ベース部21と一体に作り込まれたものとして設けるようにすることもできる。
【0021】
ここで、図3は、図1のA−A断面図であり、図3の矢印Bに示す方向から見た保持部本体20の概略を図4(a)に示す。図4(a)に示すように、ハウジング部24の天面には、挿通孔241が穿設されており、この挿通孔241の周縁に沿って係止段部242と切り欠き部243とが隣接して形成されている。また、図9は、当接部材23の一例を示す説明図であり、図9(a)は平面図、図9(b)は、図9(a)の9B−9B断面図、図9(c)は、図9(a)の9C−9C断面図、図9(d)は、図9(a)の9X−9X断面図、図9(e)は、図9(a)の矢印9Yに示す方向からみた側面図である。
【0022】
また、図4(a)のX−X断面を図8に示すが、当接部材23は、付勢手段234によって、係止段部242側、すなわち、収容部22の外方に付勢された状態で収容部22に収容されている。そして、当接部材23の側面に形成された段部235が、ハウジング部24の内周側の下端に当接することによって付勢方向への移動が規制されている。
本実施形態において、当接部材23を収容部22の外方に付勢する付勢手段234は、図示するようなコイルバネに限らず、板バネ、皿バネなど種々の弾性部材を用いることができる。また、図示する例では、四つの付勢手段(コイルバネ)234を均等に配置しているが(図4(a)参照)、付勢手段234を設ける数や、その配置は、当接部材23に付勢力を均等に作用させることができれば特に限定されない。
【0023】
また、図4(b1)及び図4(b2)は、図4(a)の4B−4B断面図であり、当該断面図は、図1のA−A断面に相当する断面を示している(図3参照)。また、図4(c1)及び図4(c2)は、図4(a)の4C−4C断面図である。
図4(c1)及び図4(c2)に示すように、ハウジング部24の側壁の周方向に沿った所定の位置には、内方に付勢されて突出する位置決めピン245が設けられている。この位置決めピン245は、前述した係止突部12の先端面に刻設されたV溝13に係合することによって、延伸ロッド10の軸心周りの位置決めをするためのものであるが、詳細については後述する。
【0024】
また、このような保持部本体20に延伸ロッド10を保持させるにあたり、延伸ロッド10はハウジング部24側から保持部本体20に挿通される(後述する図5参照)。このため、ベース部21と当接部材23のそれぞれには、同軸状に貫通する挿通孔211,231が穿設されている。そして、ハウジング部24側から延伸ロッド10を挿通したときに、延伸ロッド10の他方の端部側がベース部21側に突出して、ブローユニット220が備えるブローノズル221の内部に達するようにしてある(図1参照)。
【0025】
また、本実施形態では、当接部材23の側面に形成された段部235の一部を切り欠いて、ベース部21、当接部材23、及びハウジング部24の三者間に、流体溜まり233を形成している。そして、この流体溜まり233には、ベース部21に形成された流通路212から流体が圧入されるようになっている。
このようにすることで、流体溜まり233内に流体を圧入すると、図4(b2)及び図4(c2)に示すように、当接部材23が、これを収容部22の外方に付勢する付勢力に抗して後退(図中下向きに移動)するようになっている。そして、流体溜まり233内の流体圧を開放することによって、当接部材23が、これを収容部22の外方に付勢する付勢力によって前進(図中上向きに移動)するようになっている。
なお、図4(b1)及び図4(c1)は、延伸ロッド10が保持されていない状態で当接部材23が前進した状態を示している。
【0026】
流体溜まり233に圧入される流体としては、その流体圧によって当接部材23を進退させることができるものであればよく、圧縮空気やオイルなどを利用することができる。
また、流体溜まり233は、ベース部21、当接部材23、及びハウジング部24の三者間に形成する態様に限られない。ベース部21と当接部材23との間、又はハウジング部24と当接部材23との間に形成されるようにしてもよく、流体溜まり233の具体的な形態は、当接部材23が流体圧によって進退可能となりさえすれば特に限定されないが、流体溜まり233を設けるにあたっては、当接部材23に対して流体圧が偏って作用しないようにするのが好ましい。
【0027】
例えば、図10に示すように、当接部材23を周回する環状の側溝236を設けて、このような側溝236を流体溜まり233の一部とすることができる。このようにすると、流体溜まり233に圧入された流体が、速やかに当接部材23の周方向に行き渡りやすくなり、流体圧力が当接部材23に偏って作用しにくくなるようにすることができる。特に図示しないが、このような態様の外に、直接環状形状となる流体溜まりを設けるようにしたり、流体溜まりを複数箇所に設けたりするなどして、当接部材23に対して流体圧が偏って作用し難くなるようにすることも可能である。
ここで、図10は、当接部材23の他の例を示す説明図であり、図10(a)は平面図、図10(b)は、図10(a)の10B−10B断面図、図10(c)は、図10(a)の10C−10C断面図、図10(d)は、図10(a)の10X−10X断面図、図10(e)は、図10(a)の矢印10Yに示す方向からみた側面図である。
【0028】
また、本実施形態において、当接部材23には、ガイドピン232が貫通して取り付けられており、当該ガイドピン232の両端が、当接部材23の進退方向に沿って突出している。
このガイドピン232の作用については後述するが、ガイドピン232の一端は収容部22の底面側に突出し、収容部22の底面には、ガイドピン232が挿通される挿通孔221が穿設されている。一方、ガイドピン232の他端は、収容部22の底面側とは反対側に突出し、ロッド状部材10に取り付けられた保持ブロック11の底面の所定の位置には、ガイドピン232の他端が挿通される挿通孔14が穿設されている(図3参照)。
【0029】
次に、図4〜図7を参照しながら、本実施形態において、延伸ロッド10を保持部本体20に保持させる手順について説明する。
【0030】
延伸ロッド10を保持部本体20に保持させるにあたっては、まず、ベース部21に形成された流通路212から流体溜まり233に流体を圧入し、図4(b2)及び図4(c2)に示すように、当接部材23を後退させておく。
【0031】
次に、図5に示すように、ハウジング部24の天面に穿設された挿通孔241、当接部材23の中央に穿設された挿通孔231、ベース部21に穿設された挿通孔211の順に、延伸ロッド10の下端側を保持部本体20に挿通する。このとき、切り欠き部243を含むハウジング部24の挿通孔241の内周形状は、延伸ロッド10の上端側に取り付けられた保持ブロック11の係止突部12を含む外周形状とほぼ同じ形状となるようにしてあり、係止突部12は、その軸心周りの位置が切り欠き部243と重なったときに、ハウジング部24内に挿通できるようになっている。
なお、図5(a)は、切り欠き部243との位置あわせをして、係止突部12をハウジング部24内に挿通した状態を示しており、図4(a)と同様に、図3の矢印Bに示す方向から見た概略図である。また、図5(b)は、図5(a)の5B−5B断面図であり、図5(c)は、図5(a)の5C−5C断面図である。
【0032】
係止突部12がハウジング部24内に挿通されると、図6に示すように、延伸ロッド10を軸心周りに回転させる。これとともに、係止突部12は、ハウジング部24の内壁面に沿って、ハウジング部24の天面に形成された係止段部242と軸心方向に重なるように移動する。
なお、図6(a1)は、図5(a)と同一の概略図であり、図6(b1)は、図6(a1)の6B−6B断面図、図6(c1)は、図6(a1)の6C−6C断面図である。また、図6(a2)は、図6(a1)に示す状態から延伸ロッド10を軸周りに約90゜回転させた状態を示す概略図であり、図6(b2)は、図6(a2)の6B−6B断面図、図6(c2)は、図6(a2)の6C−6C断面図である。
【0033】
前述したように、ハウジング部24の側壁の周方向に沿った所定の位置には、内方に付勢されて突出する位置決めピン245が設けられている。この位置決めピン245は、ハウジング部24の内壁面に沿って係止突部12が移動する際に、係止突部12の先端面によって、その付勢力に抗して押し戻されて後退するようになっている。そして、延伸ロッド10を軸心周りにさらに回転させて、係止突部12の先端面に刻設されたV溝13が位置決めピン245と対向する位置に達すると、その付勢力によって位置決めピン245が前進して当該V溝13に係合する。これによって、延伸ロッド10の軸心周りの位置決めがなされるようなっており、その位置決め精度を高めることができる。
【0034】
ここで、V溝13を鉛直方向に沿って刻設したのは、延伸ロッド10の軸心周りの位置決めをする際に、軸心方向の遊びを確保して作業性をよくするためである。また、位置決めピン245を設ける位置や、V溝13を刻設する位置は、延伸ロッド10の先端側に穿設された冷却エアー噴出孔の軸心周りの配列から決定される延伸ロッド10の軸周りの固定位置に応じて、適宜設定することができる。
位置決めピン245は、例えば、図示するように、バネなどの付勢手段によって付勢された状態でハウジング部24の側壁に取り付けられて、当該側壁から脱落することなく上記したような進退動作が可能となっていれば、その具体的な形態は特に限定されない。
また、位置決めピン245の先端形状とV溝13の形状は、球面状,円錐状,円錐台状などを加えた形状を適宜組み合わせて変更してもよい。位置決めピンを保持ブロック11側に設け、V溝をハウジング24側に設けるようにしてもよいが、交換する部材がロッド状部材10側に関する部材であることと、作業の利便性から、上述の組み合わせが好適である。
【0035】
また、本実施形態では、延伸ロッド10に取り付けられる保持ブロック11に二つの係止突部12を対向して設けているが、係止突部12を設ける数はこれに限定されない。係止突部12は、一つ又は三つ以上とすることもできる。複数の係止突部12を設ける場合、一つの係止突部12の先端面にのみV溝13を刻設するのが好ましい。このようにすれば、延伸ロッド10の軸心周りの位置決めをするに際し、そのときの回転方向を右回り又は左回りのいずれにしても、最終的に所定の位置に位置決めすることができる。
【0036】
延伸ロッド10の軸心周りの位置決めがなされたら、次に、流体溜まり233内の流体圧を開放する。これにより、付勢手段234によって当接部材23が前進して、延伸ロッド10に取り付けられた保持ブロック11に当接する。
このとき、当接部材23に作用する付勢力は、保持ブロック11に設けられた係止突部12を、ハウジング部24に形成された係止段部242に押し付けるようにして押圧できるように適宜調整される。これにより、図7に示すように、当接部材23と係止段部242との間に係止突部12が挟持され、延伸ロッド10の軸心周りの回転が抑止される。
なお、図7(a)は、図6(a2)に示す状態から当接部材23を前進させた状態を示す概略図であり、図7(b)は、図7(a)の7B−7B断面図、図7(c)は、図7(a)の7C−7C断面図である
【0037】
このようにして延伸ロッド10の軸心周りの回転を抑止するにあたり、前述したように、ガイドピン232の一端を収容部22の底面側に突出させるとともに、収容部22の底面に、当該ガイドピン232の一端が挿通される挿通孔221を穿設しておくのが好ましい。このようにすることで、例えば、延伸ロッド10を軸心周りに回転させようとする大きな外力が加わっても、当接部材23が延伸ロッド10と一緒に回転してしまうのを防止して、より確実に延伸ロッド10の軸心周りの回転を抑止することができる。また、当接部材23の回転を防止することで、流体溜まり233の周方向の位置が流通路212の出口位置から外れるおそれもなくなる。
なお、ガイドピン232の一端を収容部22の底面側に突出させる長さは、当接部材23が進退する際に、ガイドピン232が挿通孔221から外れてしまわないように適宜設定することができる。
【0038】
さらに、図示する例のように、ガイドピン232の他端を収容部22の底面側とは反対側にも突出させ、これとともに、保持ブロック11の底面に、当該ガイドピン232の他端が挿通される挿通孔14を穿設しておくこともできる。このようにすることで、当接部材23と保持ブロック11との軸心周りの相対的な位置ずれを防止して、延伸ロッド10の軸周りの回転をより確実に抑止することができる。
なお、ガイドピン232の他端を突出させる長さは、当接部材23が後退した状態にあるときに、ハウジング部24内に挿通された係止突部12の移動を妨げない程度に適宜設定することができる。
【0039】
また、収容部22の底面に穿設された挿通孔221に、当接部材23から突出するガイドピン232の一端が挿通されるようにするとともに、保持ブロック11の底面に穿設された挿通孔14に、当接部材23から突出するガイドピン232の他端が挿通されるようにすれば、これだけでも延伸ロッド10の軸周りの回転を抑止することが可能である。このような態様は、延伸ロッド10の軸周りの回転を抑止するために十分な付勢力を当接部材23に作用させることができない場合に有効である。
この場合に、当接部材23から収容部22の底面側とその反対側とにそれぞれ別体に設けられたピンを突出させるか、或いは当該ピンを当接部材23と一体に設けて、それぞれに対応して設けられた挿通孔221,14に挿通されるようにしてもよいが、その強度を確保するなどの観点から、図示する例のように、一本のガイドピン232を当接部材23に貫通させて取り付けて、当該ガイドピン232の両端を突出させるようにするのが好ましい。
【0040】
本実施形態にあっては、以上のような手順で延伸ロッド10を保持部本体20に保持させるが、その際、作業者は、前述した特許文献1に開示された装置で必要とされた他の操作を同時にすることなく、流体溜まり233に流体が圧入され、それが維持された状態を確保した後に、延伸ロッド10を両手で持って保持部本体20への挿入又は保持部本体20からの取り外しを行い、次いで、流体溜まり233の流体圧を開放して保持部本体20に固定可能とすることによって、延伸ロッド10の交換作業を行えるので、その取り付け作業や取り外し作業が容易となり、延伸ロッド10の交換作業を迅速かつ的確に行うことができる。
また、延伸ロッド10の軸心周りの位置決めも、延伸ロッド10を軸心周りに回転させて、係止突部12の先端面に刻設されたV溝13に位置決めピン245を係合させるだけでよいので、簡便かつ比較的高精度な位置決めが可能である。
なお、保持部本体20から延伸ロッド10を取り外すには、上記した手順を逆に行えばよい。
【0041】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0042】
例えば、前述した実施形態では、ブロー成形装置に適用した例を挙げたが、本発明に係るロッド状部材の保持機構は、ロッド状とされた部材の軸心周りの回転を抑止しつつ、当該ロッド状部材を着脱可能に保持することが望まれる種々の装置に適用することができる。
【0043】
また、本発明に係るロッド状部材の保持機構をブロー成形装置に適用するにあたり、当該ブロー成形装置は単独で使用されるものに限らず、多数のブロー成形装置をターレットに取り付けて、ターレットの回転に伴って同一円周上を周回しながら、供給されてきたプリフォームを連続的にブロー成形するようにされた装置において、それぞれのブロー成形装置に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明は、ロッド状部材を着脱可能に保持するロッド状部材の保持機構を提供する。
【符号の説明】
【0045】
10 延伸ロッド(ロッド状部材)
11 保持ブロック
12 係止突部
13 V溝
14 挿通孔
20 保持部本体
21 ベース部
211 挿通孔
22 収容部
221 挿通孔
23 当接部材
231 挿通孔
232 ガイドピン
233 流体溜まり
234 付勢手段
24 ハウジング部
241 挿通孔
242 係止段部
243 切り欠き部
245 位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド状部材を着脱可能に保持するための保持機構であって、
流体溜まりを備え、
前記流体溜まり内に流体が圧入された状態と、前記流体溜まり内の流体圧が開放された状態とを切り換えることによって、
前記ロッド状部材が保持された状態と、前記ロッド状部材が着脱可能とされた状態とが切り換えられることを特徴とするロッド状部材の保持機構。
【請求項2】
前記ロッド状部材の一方の端部側に、前記ロッド状部材の軸心と交差する方向に突出する係止突部が形成された保持ブロックを取り付けるとともに、
前記係止突部が係止される係止段部と、前記係止突部が挿通可能な切り欠き部とが周縁に沿って隣接して形成された挿通孔を天面に穿設したハウジング部と、前記ハウジング部が設けられたベース部と、前記ベース部に凹陥状に設けられた収容部に前記係止段部側へ付勢された状態で収容され、前記ハウジング部内に挿入された前記保持ブロックに対して押圧可能に当接する当接部材とを有し、かつ、前記ベース部と前記当接部材にも同軸状に貫通する挿通孔を穿設して、前記ハウジング部側から前記ロッド状部材を挿通したときに、前記ロッド状部材の他方の端部側が前記ベース部側に突出する保持部本体を備え、
前記ハウジング部と前記ベース部の一方又は両方と、前記当接部材との間に前記流体溜まりを形成し、前記流体溜まり内に流体を圧入することによって、前記当接部材を前記係止段部側へ付勢する付勢力に抗して前記当接部材が後退するとともに、前記流体溜まり内の流体圧を開放することによって、前記当接部材を前記係止段部側へ付勢する付勢力により前記当接部材が前進するようにした請求項1に記載のロッド状部材の保持機構。
【請求項3】
前記当接部材の進退方向に沿って前記収容部の底面側に突出するガイドピンを前記当接部材に設けるとともに、前記収容部の底面に、前記ガイドピンが挿通される挿通孔を穿設した請求項2に記載のロッド状部材の保持機構。
【請求項4】
前記当接部材の進退方向に沿って前記収容部の底面側とは反対側に突出するガイドピンを前記当接部材に設けるとともに、前記保持ブロックの所定の位置に、前記ガイドピンが挿通される挿通孔を穿設した請求項2又は3に記載のロッド状部材の保持機構。
【請求項5】
前記当接部材の進退方向に沿って前記当接部材に一本のガイドピンを貫通させて取り付け、
前記ガイドピンの一端を前記収容部の底面側に突出させるとともに、前記収容部の底面に、前記ガイドピンの一端が挿通される挿通孔を穿設し、
前記ガイドピンの他端を前記収容部の底面側とは反対側に突出させるとともに、前記保持ブロックの所定の位置に、前記ガイドピンの他端が挿通される挿通孔を穿設した請求項2に記載のロッド状部材の保持機構。
【請求項6】
前記保持ブロックに設けられた前記係止突部の先端面に、鉛直方向に沿ってV溝を刻設するとともに、
前記ハウジング部の側壁に、内方に付勢されて突出する位置決めピンを設け、
前記ハウジング部内に前記係止突部を挿通し、前記ロッド状部材を軸心周りに回転させて前記ハウジング部の内壁面に沿って前記係止突部を移動させた際に、前記位置決めピンが前記係止突部の先端面によって押し戻されて後退し、次いで、前記V溝に係合することによって前記ロッド状部材の軸心周りの位置決めがなされるようにした請求項2〜5に記載のロッド状部材の保持機構。
【請求項7】
前記保持部本体が、有底筒状に成形されたプリフォームを延伸ブロー成形するブロー成形装置に設けられ、
前記ロッド状部材が、前記プリフォームを縦方向に延伸する延伸ロッドである請求項2〜6に記載のロッド状部材の保持機構。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−143650(P2011−143650A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7120(P2010−7120)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】