説明

ロボットシステム

【課題】複数のロボットを制御するロボットシステムにおいて、意図するロボットに対して操作機により作業者が正確に動作指示を与えることを可能とする。
【解決手段】ロボットシステムは、ロボットRB1,RB2、RB3と、各ロボットの動作を制御するコントローラ10と、ケーブル11,12,13と、手動操作されることでコントローラ10を通じて各ロボットを動作させるティーチングペンダント20と、各ロボットに関する情報を表示するディスプレイ22と、を備える。コントローラ10は、ケーブル11,12,13を通じて電圧が供給される際の電圧降下量に基づいて、コントローラ10に対する各ロボットの距離である対制御装置距離を算出し、各ロボットの互いの位置関係と対制御装置距離とに基づいて、各ロボット及びコントローラ10の配置であるシステム配置を算出し、システム配置をディスプレイ22に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のロボットを制御するロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のロボットを1つのコントローラで制御するロボットシステムがある。こうしたロボットシステムでは、複数のロボットにより協調動作を行ったり、複数のロボットで共通のワーク座標を用いたりすることが容易となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記ロボットシステムでは、作業者が操作機を手動操作して、複数のロボットのうちの1つを動作させようとすると、操作機により動作指示を与えるロボットと、実際に動作するロボットとの対応が不明確となる場合がある。すなわち、コントローラは、振動や埃を避けるためにそれらの発生源となる各ロボットから離れて配置されるとともに、生産ライン等に応じて配置される複数のロボットにおいて、個々のロボットを明確に特定できない場合がある。その場合には、作業者の意図と異なるロボットが動作するおそれがあり、作業の効率が低下するおそれがある。
【0004】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、複数のロボットを制御するロボットシステムにおいて、意図するロボットに対して操作機により作業者が正確に動作指示を与えることを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0006】
第1の手段は、複数のロボットと、前記複数のロボットの動作を制御する制御装置と、前記制御装置と前記複数のロボットとをそれぞれ電気的に接続する配線と、前記制御装置に接続され、手動操作されることで前記制御装置を通じて各ロボットを動作させる操作機と、各ロボットに関する情報を表示する表示装置と、を備えるロボットシステムであって、前記制御装置は、前記配線を通じて電圧が供給される際の電圧降下量に基づいて、前記制御装置に対する各ロボットの距離である対制御装置距離を算出し、前記複数のロボットの互いの位置関係と前記対制御装置距離とに基づいて、前記複数のロボット及び前記制御装置の配置であるシステム配置を算出し、前記システム配置を前記表示装置に表示させることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、複数のロボットと制御装置とが配線によりそれぞれ電気的に接続されており、複数のロボットの動作が制御装置により制御される。一般に、制御装置は、複数のロボットの動作を制御する上で、それらロボットの互いの位置関係の情報を有している。また、作業者が、制御装置に接続された操作機に対して手動操作することにより、制御装置を通じて各ロボットが動作させられる。各ロボットに関する情報は、表示装置により表示される。
【0008】
ここで、一般に制御装置は各ロボットから離れて配置されるとともに、各ロボットは生産ライン等に応じて配置されるため、制御装置と各ロボットとを接続する各配線の長さは互いに異なったものとなる。そして、配線を通じて制御装置と各ロボットとの間で電圧を供給すると、配線の長さに応じた電圧降下が生じる。このため、制御装置は、配線を通じて電圧が供給される際の電圧降下量に基づいて、制御装置に対する各ロボットの距離である対制御装置距離を算出することができる。また、上記のように制御装置は、複数のロボットの互いの位置関係の情報を有している。
【0009】
したがって、制御装置は、複数のロボットの互いの位置関係と上記対制御装置距離とに基づいて、複数のロボット及び制御装置の配置であるシステム配置を算出することができる。そして、このシステム配置が表示装置に表示させられるため、その表示に基づいて作業者は動作させようと意図するロボットを把握することができる。その結果、意図するロボットに対して、操作機により作業者が正確に動作指示を与えることができる。
【0010】
なお、配線を通じて電圧が供給される際の電圧降下量に基づいて、制御装置に対する各ロボットの距離(対制御装置距離)を算出する構成として、電圧降下量に応じて変化する電流の大きさに基づいて対制御装置距離を算出する構成を含むものとする。
【0011】
具体的には、第2の手段にように、前記制御装置は、前記制御装置と各ロボットとにおいて、前記配線へ入力される電圧と前記配線から出力される電圧との差に基づいて、前記制御装置に対する各ロボットの距離である対制御装置距離を算出するといった構成を採用することができる。こうした構成によれば、制御装置と各ロボットとにおいて、配線を通じて電圧を供給する際の電圧降下量を、配線へ入力される電圧と配線から出力される電圧との差として算出することができる。
【0012】
例えば、制御装置からロボットへ電源電圧(信号電圧)が供給される場合において、制御装置から配線へ入力される電圧と配線からロボットへ出力される電圧との差に基づいて、制御装置に対する各ロボットの距離を算出することができる。また、ロボットから制御装置へ信号電圧が供給される場合において、ロボットから配線へ入力される電圧と配線から制御装置へ出力される電圧との差に基づいて、制御装置に対する各ロボットの距離を算出することができる。
【0013】
第3の手段は、複数のロボットと、前記複数のロボットの動作を制御する制御装置と、前記制御装置と前記複数のロボットとをそれぞれ電気的に接続する配線と、前記制御装置に接続され、手動操作されることで前記制御装置を通じて各ロボットを動作させる操作機と、各ロボットに関する情報を表示する表示装置と、を備えるロボットシステムであって、前記制御装置は、前記配線を通じて通信を行う際の応答時間に基づいて、前記制御装置に対する各ロボットの距離である対制御装置距離を算出し、前記複数のロボットの互いの位置関係と前記対制御装置距離とに基づいて、前記複数のロボット及び前記制御装置の配置であるシステム配置を算出し、前記システム配置を前記表示装置に表示させることを特徴とする。
【0014】
ここで、配線を通じて制御装置と各ロボットとの間で通信を行うと、配線の長さに応じて応答時間が変化する。このため、制御装置は、配線を通じて通信が行われる際の応答時間に基づいて、制御装置に対する各ロボットの距離である対制御装置距離を算出することができる。したがって、こうした構成によっても、複数のロボット及び制御装置の配置(システム配置)を算出することができ、システム配置を表示装置に表示させることができる。
【0015】
配線を通じて信号の往復を行う際に、配線の長さに応じて応答時間が変化する量は非常に小さい。このため、高速処理可能な制御装置が用いられていない場合には、応答時間に基づいて制御装置に対する各ロボットの距離(対制御装置距離)を算出する場合に、対制御装置距離の精度が低下するおそれがある。
【0016】
この点、第4の手段では、前記制御装置は、前記応答時間として、前記制御装置と前記複数のロボットとでそれぞれ前記配線を通じて信号の往復を複数回(例えば10万回)行う際の応答時間の合計を算出するといった構成を採用している。このため、配線の長さに応じて応答時間が変化する量を増幅することができ、制御装置に対する各ロボットの距離の精度を向上させることができる。
【0017】
具体的には、第5の手段のように、前記制御装置は、前記応答時間として、前記制御装置と前記複数のロボットとでそれぞれ前記配線を通じて信号の往復を複数回行う際の応答時間の合計を算出し、各ロボットでの応答時間の差が所定時間を超えるまで前記信号の往復を繰り返すといった構成を採用することができる。こうした構成によれば、各ロボットでの応答時間の差が所定時間を超えるまで信号の往復が繰り返されるため、配線の長さに応じた応答時間の変化を適切に算出することができる。
【0018】
第6の手段では、前記制御装置は、前記制御装置から各ロボットまでの距離がそれぞれ前記対制御装置距離に近付くように、1つのロボットを中心として前記複数のロボットの互いの位置関係を回転させて前記システム配置を算出する。
【0019】
上記構成によれば、制御装置により、1つのロボットを中心として、複数のロボットの互いの位置関係が回転させられる。そして、制御装置により、制御装置から各ロボットまでの距離が、それぞれ上記対制御装置距離に近付くようにシステム配置が算出される。したがって、システム配置を容易に算出することができる。
【0020】
具体的には、第7の手段のように、前記制御装置は、前記制御装置から各ロボットまでの距離と前記対制御装置距離との偏差の合計が最も小さくなるように、1つのロボットを中心として前記複数のロボットの互いの位置関係を回転させて前記システム配置を算出するといった構成を採用することができる。ここで、距離の偏差の合計が最も小さい場合には、各ロボットの位置の誤差を小さくしつつ、システム配置全体を現実に最も近付けることができる。なお、偏差の合計として、偏差(差の絶対値)を合計してもよいし、偏差の二乗を合計してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ロボットシステムを示す模式図。
【図2】第1実施形態においてシステム配置を表示する処理の手順を示すフローチャート。
【図3】ケーブル長さと電圧降下量との関係を示すグラフ。
【図4】システム配置を算出する態様を示す図。
【図5】システム配置を表示する態様を示す図。
【図6】第2実施形態においてシステム配置を表示する処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、ワーク等に対して複数のロボットにより作業を行うロボットシステムとして具体化している。
【0023】
図1は、ロボットシステムを示す模式図である。同図に示すように、ロボットシステムは、複数のロボット(ロボットRB1,RB2,RB3)、コントローラ10、ティーチングペンダント20、ケーブル11,12,13,21、及び電源ケーブル15を備えている。
【0024】
ロボットRB1,RB2,RB3は、垂直多関節型のロボットであり、複数の関節を有するアームを備えている。ロボットRB1,RB2,RB3は、生産ラインに応じて適切に配置されている。ロボットRB1,RB2,RB3は、それぞれケーブル11,12,13(配線)によって、コントローラ10に電気的に接続されている。なお、ロボットRB1,RB2,RB3は、垂直多関節型のロボットに限らず、任意の型式のロボットを採用することができる。
【0025】
コントローラ10(制御装置)は、CPU、ROM、RAM、データバッファ、駆動回路、位置検出回路、電圧検出回路等を備えている。ROMは、ロボットRB1,RB2,RB3のシステムプログラムや動作プログラム等を記憶している。RAMは、これらのプログラムを実行する際にパラメータの値等を記憶する。データバッファは、情報を時系列で一時的に記憶する。位置検出回路は、ロボットRB1,RB2,RB3に設けられたエンコーダの検出信号に基づいて、各関節の回転角度を検出する。CPUは、動作プログラムを実行することにより、位置検出回路から入力される位置情報に基づいて、ロボットRB1,RB2,RB3の各関節の回転角度を目標回転角度にフィードバック制御する。また、コントローラ10には、電源ケーブル15が接続されており、電源ケーブル15を通じてコントローラ10へ電源電圧が供給される。電圧検出回路は、電源ケーブル15を通じてコントローラ10へ供給される電源電圧を検出する。
【0026】
上記ケーブル11,12,13は、電源ケーブル及び信号ケーブルを含んでいる。ケーブル11,12,13を通じて、それぞれロボットRB1,RB2,RB3へ電源電圧が供給されるとともに、コントローラ10とロボットRB1,RB2,RB3との間で通信が行われる。コントローラ10は、ケーブル11,12,13を通じて、それぞれロボットRB1,RB2,RB3へ制御信号を送信(信号電圧を供給)し、ロボットRB1,RB2,RB3の動作を制御する。コントローラ10は、ロボットRB1,RB2,RB3の動作を制御する上で、ロボットRB1,RB2,RB3の互いの位置関係の情報を有している。また、ロボットRB1,RB2,RB3は、それぞれ電圧検出回路を有しており、ケーブル11,12,13を通じて供給される電源電圧を検出する。そして、ロボットRB1,RB2,RB3は、検出した電源電圧をコントローラ10へ送信する。
【0027】
ティーチングペンダント20(操作機)は、CPU、RAM及びROMを含むマイクロコンピュータから構成さる制御部、各種の手動操作キー、ディスプレイ22を備えている。ティーチングペンダント20は、ケーブル21によって、コントローラ10に接続されている。作業者は、このペンダント20を手動操作して、ロボットRB1,RB2,RB3の動作プログラムの作成、修正、登録、各種パラメータの設定、またコントローラ10を通じてティーチングされた動作プログラムの実行等をすることができる。詳しくは、ペンダント20により1つのロボットを選択して、選択されたロボットの動作を制御する。
【0028】
ディスプレイ22(表示装置)は、ロボットRB1,RB2,RB3に関する情報を表示する。詳しくは、ディスプレイ22は、上記のように選択されたロボットに関する情報を表示し、選択されていないロボットに関する情報は表示しない。ロボットに関する情報としては、ロボットの型式、ロボットの動作状況、動作コマンド等が表示される。このため、ロボットRB1,RB2,RB3の型式が同一である場合には、作業者がディスプレイ22に表示された情報を見たとしても、どのロボットに関する情報であるか把握することができない。
【0029】
そこで、本実施形態では、コントローラ10は、ロボットRB1,RB2,RB3及びコントローラ10の配置であるシステム配置を、ディスプレイ22に表示させる処理を実行する。図2は、システム配置を表示する処理の手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、ティーチングペンダント20からの要求に応じて、コントローラ10によって実行される。
【0030】
まず、ティーチングペンダント20からの要求により、表示機能が有効になっているか否か判定する(S10)。詳しくは、作業者がペンダント20を通じて、コントローラ10へシステム配置の表示を要求した場合に表示機能が有効となり、要求していない場合には表示機能が無効となる。この判定において、表示機能が有効になっていないと判定した場合には(S10:NO)、この一連の処理を終了する(END)。
【0031】
一方、上記判定において、表示機能が有効になっていると判定した場合には(S10:YES)、コントローラ10にロボットが複数接続されているか否か判定する(S11)。この判定において、コントローラ10にロボットが複数接続されていないと判定した場合には(S11:NO)、この一連の処理を終了する(END)。
【0032】
一方、上記判定において、コントローラ10にロボットが複数接続されていると判定した場合には(S11:YES)、基準電圧及び基準座標を設定する(S12)。詳しくは、コントローラ10の上記電圧検出回路により検出される電源電圧、すなわち電源ケーブル15を通じてコントローラ10へ供給される電源電圧を基準電圧に設定する。また、ロボットシステムを鉛直上方から見た場合に、コントローラ10を原点とした二次元座標を基準座標に設定する。
【0033】
次に、基準電圧と、各ロボットに供給される電圧との差を算出する(S13)。詳しくは、コントローラ10は、ロボットRB1,RB2,RB3に対して、それぞれケーブル11,12,13を通じて供給される電源電圧を電圧検出回路により検出させる。コントローラ10は、それぞれ検出された電源電圧を、ロボットRB1,RB2,RB3からコントローラ10へ送信させる。そして、基準電圧(コントローラ10からケーブル11,12,13へ入力される電圧)と、各ロボットに供給される電圧(ケーブル11,12,13からロボットRB1,RB2,RB3へ出力される電圧)との差、すなわち電圧降下量を算出する。
【0034】
次に、電圧降下量に基づいて、コントローラ10と各ロボットとの距離を算出する(S14)。詳しくは、ケーブル11,12,13の長さと電圧降下量との関係に基づいて、ケーブル11,12,13の長さ、すなわちコントローラ10とロボットRB1,RB2,RB3との各距離を算出する。一般に、生産ライン等においてケーブル11,12,13を無駄に長くすることはないため、ここではケーブル11,12,13の長さをコントローラ10とロボットRB1,RB2,RB3との各距離とみなしている。
【0035】
図3は、ケーブル長さと電圧降下量との関係を示すグラフである。同図に示すように、ケーブル11,12,13が長いほど電圧降下量は大きくなり、詳しくはケーブル11,12,13の長さに比例して電圧降下量は大きくなる。例えば、ケーブル11,12,13の長さが8m長くなると、約1Vの電圧降下が生じる。これは、ケーブル11,12,13の長さに比例して、ケーブル11,12,13の電気抵抗が高くなることによる。したがって、予め実験等により、所定の電源電圧におけるケーブル長さと電圧降下量との関係を求めておくことにより、電圧降下量からケーブル長さを算出することができる。ここでは、ロボットRB1,RB2,RB3において、それぞれのケーブル11,12,13の長さは長さL1,L2,L2と算出される。したがって、コントローラ10とロボットRB1,RB2,RB3との距離(対制御装置距離)は、それぞれ距離L1,L2,L3と算出される。
【0036】
図2に戻り、次に、ロボットRB1,RB2,RB3の互いの位置関係と対制御装置距離とに基づいて、システム配置を算出する(S15)。ここで、コントローラ10は、ロボットRB1,RB2,RB3の互いの位置関係の情報を有しており、ロボットRB1,RB2,RB3の相対位置を把握している。このため、ロボットRB1,RB2,RB3の相対位置の条件と、コントローラ10とロボットRB1,RB2,RB3との距離の条件とを満たすように、システム配置を算出する。具体的には、コントローラ10から各ロボットまでの距離がそれぞれ対制御装置距離に近付くように、ロボットRB1(1つのロボット)を中心として、ロボットRB1,RB2,RB3の互いの位置関係を回転させてシステム配置を算出する。コントローラ10から各ロボットまでの距離をそれぞれ対制御装置距離に近付ける際には、コントローラ10から各ロボットまでの距離と対制御装置距離との偏差の合計が最も小さくなるようにする。
【0037】
図4は、システム配置を算出する態様を示す図である。同図に破線で示すように、ロボットRB1,RB2(RB2a),RB3(RB3a)の互いの位置関係(相対位置)の条件を満たし、且つコントローラ10とロボットRB1との距離の条件とを満たすように、各ロボットを上述した基準座標に配置する。すなわち、ロボットRB1,RB2(RB2a),RB3(RB3a)は破線で示す三角形の相対位置にあり、コントローラ10(原点)からロボットRB1までの距離は距離L1となっている。なお、ロボットRB1は、破線で示すように、原点を中心とした半径L1の円上に配置されている。
【0038】
次に、ロボットRB1,RB2,RB3の相対位置の条件を満たしたまま、ロボットRB1を中心としてロボットRB2(RB2a),RB3(RB3a)を矢印rの方向へ回転させる。そして、コントローラ10とロボットRB2,RB3との距離の条件とを満たすように、ロボットRB2,RB3を基準座標に配置する。すなわち、ロボットRB2,RB3は原点を中心とした半径L2,L3の円上にそれぞれ配置され、コントローラ10(原点)からロボットRB2,RB3までの距離はそれぞれ距離L2,L3となっている。ここで、原点を中心とした半径L2,L3の円上に、ロボットRB2,RB3を正確に配置することができない場合には、コントローラ10からロボットRB2,RB3までの各距離と対制御装置距離との偏差の合計が最も小さくなるようにする。
【0039】
図2に戻り、次に、算出されたシステム配置をティーチングペンダント20のディスプレイ22に表示させる(S16)。詳しくは、図5に示すように、ディスプレイ22に基準座標を設定し、この基準座標上にロボットRB1,RB2,RB3及びコントローラ10を表示させる。
【0040】
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。
【0041】
・コントローラ10はロボットRB1,RB2,RB3から離れて配置されるとともに、ロボットRB1,RB2,RB3は生産ライン等に応じて配置されている。このため、コントローラ10とロボットRB1,RB2,RB3とを接続するケーブル11,12,13の長さは互いに異なっている。そして、ケーブル11,12,13を通じてコントローラ10とロボットRB1,RB2,RB3との間で電圧を供給すると、ケーブル11,12,13の長さに応じた電圧降下がそれぞれ生じる。このため、コントローラ10は、ケーブル11,12,13を通じて電圧が供給される際の電圧降下量に基づいて、コントローラ10に対する各ロボットの距離である対制御装置距離を算出することができる。また、コントローラ10は、ロボットRB1,RB2,RB3の互いの位置関係の情報を有している。
【0042】
したがって、コントローラ10は、ロボットRB1,RB2,RB3の互いの位置関係と上記対制御装置距離とに基づいて、ロボットRB1,RB2,RB3及びコントローラ10の配置であるシステム配置を算出することができる。そして、このシステム配置がディスプレイ22に表示させられるため、その表示に基づいて作業者は動作させようと意図するロボットを把握することができる。その結果、意図するロボットに対して、ティーチングペンダント20により作業者が正確に動作指示を与えることができる。
【0043】
・コントローラ10は、コントローラ10と各ロボットとにおいて、コントローラ10から各ケーブルへ入力される電源電圧と、各ケーブルから各ロボットへ出力される電源電圧との差に基づいて、対制御装置距離を算出している。こうした構成によれば、コントローラ10と各ロボットとにおいて、各ケーブルを通じて電圧を供給する際の電圧降下量を、コントローラ10で検出される電源電圧と、各ロボットで検出される電源電圧との差として算出することができる。
【0044】
・システム配置を算出する際に、ロボットRB1を中心として、ロボットRB1,RB2,RB3の互いの位置関係が回転させられる。そして、コントローラ10から各ロボットまでの距離が、それぞれ対制御装置距離に近付くようにシステム配置が算出される。したがって、簡易な処理によりシステム配置を算出することができる。
【0045】
・コントローラ10は、コントローラ10から各ロボットまでの距離と対制御装置距離との偏差の合計が最も小さくなるように、ロボットRB1を中心としてロボットRB1,RB2,RB3の互いの位置関係を回転させてシステム配置を算出している。ここで、距離の偏差の合計が最も小さい場合には、各ロボットの位置の誤差を小さくしつつ、システム配置全体を現実に最も近付けることができる。
【0046】
なお、上記実施形態を、以下のように変形して実施することもできる。
【0047】
・上記実施形態では、コントローラ10から各ケーブルへ入力される電源電圧と、各ケーブルから各ロボットへ出力される電源電圧との差に基づいて、対制御装置距離を算出している。しかしながら、コントローラ10から各ケーブルへ入力される信号電圧(制御信号)と、各ケーブルから各ロボットへ出力される信号電圧との差に基づいて、対制御装置距離を算出することもできる。また、各ロボットから各ケーブルへ入力される信号電圧(応答信号)と、各ケーブルからコントローラ10へ出力される信号電圧との差に基づいて、対制御装置距離を算出することもできる。
【0048】
・各ケーブルから各ロボットへ出力される電源電圧を、各ロボットに供給される電流から算出することもできる。
【0049】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、図面を参照しつつ説明する。第1実施形態では、ケーブル11,12,13を通じて電圧が供給される際の電圧降下量に基づいて対制御装置距離を算出したが、本実施形態では、ケーブル11,12,13を通じて通信を行う際の応答時間に基づいて対制御装置距離を算出する。ロボットシステムの基本的構成は第1実施形態と同一である。ここでは、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同一の処理については同一のステップ番号を付すことにより説明を省略する。
【0050】
図6は、システム配置を表示する処理の手順を示すフローチャートである。同図に示すように、コントローラ10にロボットが複数接続されていると判定した場合には(S11:YES)、基準座標を設定する(S22)。詳しくは、ロボットシステムを鉛直上方から見た場合に、コントローラ10を原点とした二次元座標を基準座標に設定する。
【0051】
次に、コントローラ10が各ロボットとケーブルを通じて複数回通信を行う際における応答時間の合計の差を算出する(S23)。詳しくは、コントローラ10から各ロボットへ制御信号を送信し、そのロボットから応答信号が返信されるまでの応答時間を算出する。通信が行われる毎に応答時間を加算して、各ロボットにおいて応答時間の合計を算出する。そして、各ロボットでの応答時間の合計の差を算出する。
【0052】
ここで、ケーブル11,12,13を通じてコントローラ10と各ロボットとの間で通信を行うと、ケーブル11,12,13の長さに応じて応答時間が変化する。ただし、ケーブル11,12,13を通じて信号の往復を行う際に、ケーブル11,12,13の長さに応じて応答時間が変化する量は非常に小さい。このため、高速処理可能なコントローラ10が用いられていない場合には、応答時間に基づいてコントローラ10に対する各ロボットの距離(対制御装置距離)を算出する場合に、対制御装置距離の精度が低下するおそれがある。
【0053】
そこで、各ロボット間での応答時間の合計の差が、所定時間を超えたか否か判定する(S24)。詳しくは、各ロボットに対して同じ回数の通信を行った場合に、それらの応答時間の合計の差がいずれかのロボット間で所定時間を超えたか否か判定する。ここで、各ロボット間での応答時間の合計の差が所定時間を超えた場合には、応答時間の合計に基づいてコントローラ10と各ロボットとの距離を算出できる程度まで、応答時間の合計が長くなったとみなすことができる。例えば、コントローラ10と各ロボットとの間で10万回の通信が行われた場合に、応答時間の合計の差が全てのロボット間で所定時間(10s)を超える。この判定において、各ロボット間での応答時間の合計の差が、所定時間を超えていないと判定した場合には(S24:NO)、再度、コントローラ10が各ロボットとケーブルを通じて複数回通信を行う際における応答時間の合計の差を算出する(S23)。すなわち、再度コントローラ10と各ロボットとの間で通信を行って、各ロボットにおいて応答時間の合計を算出する。
【0054】
一方、上記判定において、各ロボット間での応答時間の合計の差が、所定時間を超えたと判定した場合には(S24:YES)、各ロボットでの応答時間の合計に基づいて、コントローラ10と各ロボットとの距離を算出する(S25)。詳しくは、図3に示したケーブル長さと電圧降下量との関係を示すグラフに準じた態様で、ケーブル長さと応答時間の合計との関係を示すグラフを用いる。すなわち、ケーブル11,12,13が長いほど応答時間の合計は長くなり、詳しくはケーブル11,12,13の長さに比例して応答時間の合計は長くなる。したがって、予め実験等により、所定の信号による通信におけるケーブル長さと応答時間の合計との関係を求めておくことにより、応答時間の合計からケーブル長さを算出することができる。そして、ケーブル11,12,13の長さを、それぞれコントローラ10とロボットRB1,RB2,RB3との距離(対制御装置距離)とみなす。
【0055】
そして、図2と同様にして、ロボットRB1,RB2,RB3の互いの位置関係と対制御装置距離とに基づいて、システム配置を算出し(S15)、算出されたシステム配置をティーチングペンダント20のディスプレイ22に表示させる(S16)。
【0056】
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。ここでは、第1実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0057】
・ケーブル11,12,13を通じてコントローラ10と各ロボットとの間で通信を行うと、ケーブル11,12,13の長さに応じて応答時間が変化する。このため、コントローラ10は、ケーブル11,12,13を通じて通信が行われる際の応答時間に基づいて、コントローラ10に対する各ロボットの距離である対制御装置距離を算出することができる。したがって、こうした構成によっても、ロボットRB1,RB2,RB3及びコントローラ10の配置(システム配置)を算出することができ、システム配置をディスプレイ22に表示させることができる。
【0058】
・コントローラ10は、応答時間として、コントローラ10とロボットRB1,RB2,RB3とでそれぞれケーブル11,12,13を通じて信号の往復を複数回行う際の応答時間の合計を算出している。このため、ケーブル11,12,13の長さに応じて応答時間が変化する量を増幅することができ、コントローラ10に対する各ロボットの距離の精度を向上させることができる。
【0059】
・コントローラ10は、各ロボットでの応答時間の合計の差が所定時間を超えるまで信号の往復を繰り返している。こうした構成によれば、各ロボットでの応答時間の合計の差が所定時間を超えるまで信号の往復が繰り返されるため、ケーブル11,12,13の長さに応じた応答時間の変化を適切に算出することができる。
【0060】
なお、上記実施形態を、以下のように変形して実施することもできる。
【0061】
・応答時間に基づいてコントローラ10と各ロボットとの距離を算出する精度を確保することができるのであれば、コントローラ10と各ロボットとの間の通信を、予め定められた一定回数実行するようにしてもよい。
【0062】
・上規実施形態では、ティーチングペンダント20からの要求により、表示機能が有効になっているか否か判定したが、ロボットシステムの起動時に自動的に表示機能を有効にしてもよい。こうした構成によれば、ロボットシステムの起動中にシステム配置を表示させる処理を実行することができるため、ロボットシステムの起動後にコントローラ10と各ロボットとの間で複数回通信を行う処理が終了するまで待つ必要がない。
【0063】
また、第1実施形態及び第2実施形態を、以下のように変形して実施することもできる。
【0064】
・上記各実施形態では、コントローラ10から各ロボットまでの距離をそれぞれ対制御装置距離に近付ける際に、コントローラ10から各ロボットまでの距離と対制御装置距離との偏差の合計が最も小さくなるようにしたが、この偏差の二乗の合計が最も小さくなるようにしてもよい。
【0065】
・図4では、ロボットRB1を中心として、ロボットRB1,RB2,RB3の互いの位置関係を回転させてシステム配置を算出したが、ロボットRB2やロボットRB3を中心として位置関係を回転させてもよい。また、図4に示す処理を、ディスプレイ22に表示して行ってもよいし、ディスプレイ22に表示することなくコントローラ10の内部で行ってもよい。
【0066】
・上記各実施形態では、ティーチングペンダント20のディスプレイ22にシステム配置を表示させるようにしたが、コントローラ10に接続されたモニタ(表示装置)にシステム配置を表示させることもできる。また、コントローラ10に接続されたパーソナルコンピュータ(操作機)を手動操作して、コントローラ10を通じてロボットRB1,RB2,RB3を動作させてもよい。
【符号の説明】
【0067】
RB1,RB2、RB3…ロボット、10…コントローラ(制御装置)、11,12,13…ケーブル(配線)、22…ディスプレイ(表示装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロボットと、
前記複数のロボットの動作を制御する制御装置と、
前記制御装置と前記複数のロボットとをそれぞれ電気的に接続する配線と、
前記制御装置に接続され、手動操作されることで前記制御装置を通じて各ロボットを動作させる操作機と、
各ロボットに関する情報を表示する表示装置と、
を備えるロボットシステムであって、
前記制御装置は、前記配線を通じて電圧が供給される際の電圧降下量に基づいて、前記制御装置に対する各ロボットの距離である対制御装置距離を算出し、前記複数のロボットの互いの位置関係と前記対制御装置距離とに基づいて、前記複数のロボット及び前記制御装置の配置であるシステム配置を算出し、前記システム配置を前記表示装置に表示させることを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記制御装置と各ロボットとにおいて、前記配線へ入力される電圧と前記配線から出力される電圧との差に基づいて、前記制御装置に対する各ロボットの距離である対制御装置距離を算出する請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
複数のロボットと、
前記複数のロボットの動作を制御する制御装置と、
前記制御装置と前記複数のロボットとをそれぞれ電気的に接続する配線と、
前記制御装置に接続され、手動操作されることで前記制御装置を通じて各ロボットを動作させる操作機と、
各ロボットに関する情報を表示する表示装置と、
を備えるロボットシステムであって、
前記制御装置は、前記配線を通じて通信を行う際の応答時間に基づいて、前記制御装置に対する各ロボットの距離である対制御装置距離を算出し、前記複数のロボットの互いの位置関係と前記対制御装置距離とに基づいて、前記複数のロボット及び前記制御装置の配置であるシステム配置を算出し、前記システム配置を前記表示装置に表示させることを特徴とするロボットシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記応答時間として、前記制御装置と前記複数のロボットとでそれぞれ前記配線を通じて信号の往復を複数回行う際の応答時間の合計を算出する請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記応答時間として、前記制御装置と前記複数のロボットとでそれぞれ前記配線を通じて信号の往復を複数回行う際の応答時間の合計を算出し、各ロボットでの応答時間の差が所定時間を超えるまで前記信号の往復を繰り返す請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記制御装置から各ロボットまでの距離がそれぞれ前記対制御装置距離に近付くように、1つのロボットを中心として前記複数のロボットの互いの位置関係を回転させて前記システム配置を算出する請求項1〜5のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記制御装置から各ロボットまでの距離と前記対制御装置距離との偏差の合計が最も小さくなるように、1つのロボットを中心として前記複数のロボットの互いの位置関係を回転させて前記システム配置を算出する請求項6に記載のロボットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52475(P2013−52475A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192507(P2011−192507)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】