説明

ロボットハンドの歪み検出方法および自動交換システム

【課題】 ロボットハンドの歪みの有無を検出する安価なロボットハンドの歪み検出方法の提供と設定値以上の歪みを検出した時には予備のロボットハンドに自動交換するロボットハンドの自動交換システムの提供。
【解決手段】 材料をXY平面に平行に保持する材料保持手段を備えたロボットハンド13をロボット11に着脱交換自在に設け、定盤1表面にローカル座標(x,y,z)を設定し、前記ロボットハンドに4個の距離測定センサを設け、加工前に前記ローカル座標による歪み測定用プログラムによりロボットハンドを定盤上に位置決めし、前記4個の距離測定センサにより定盤表面との距離を測定し、この距離測定センサのそれぞれの測定値と、移動位置における定盤の表面との間の距離とを比較して平行度を求めてロボットハンドの歪みを求め、歪みが設定値以上の場合には予備のロボットハンドに自動交換することを特徴とするロボットハンドの自動交換システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットハンドの歪み検出方法および自動交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の薄型基板を搬送するロボットにおいて各種基板に適合するハンドを自動交換するロボットハンドの自動交換システムがある(例えば特許文献1)。
【0003】
また、ロボット腕部材の位置決め方法については、ロボット腕部材の可動範囲内に、互い直交する3平面(XY平面、YZ平面、ZX平面)で構成された基準体を配置し、この基準体の3平面に平行に対面する3個の平面(xy平面,yz平面,zx平面)で構成される測定ヘッドをロボットの腕部材に設け、この測定ヘッドの各平面にそれぞれに1個、2個および3個(合計6個)の測定ヘッドを設け、前記基準体の3平面とロボットの測定ヘッドとの間の距離を測定して、ロボット腕部材の位置精度および姿勢精度を測定する方法が開示されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−151592号公報
【特許文献2】特公平04−069725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1のロボットハンドの自動交換システムは、従来、手動で行っていたハンドの交換作業を自動化したものであり、ロボット側の固定側ハンドに着脱交換自在の交換ハンドをハンドストッカに複数個を配設しておき、ハンド交換の必要時にロボット側の固定側ハンドをハンドストッカの必要な交換ハンドに位置決めしてハンドを着脱するものである。
【0006】
しかしながら、この自動交換システムにおいては交換されるハンドの歪みまたは変形があるか否かは関係なく着脱交換作業が行われるため、ハンドに歪みがある場合には、加工位置への位置合わせが狂ってしまい不良品が発生する原因となる。
【0007】
また、特許文献2に記載のロボット腕部材の位置精度および姿勢精度の測定方法では、互い直交する3平面(XY平面、YZ平面、ZX平面)で構成された基準体が必要であり、またこの基準体の3平面に対面する3平面(xy平面,yz平面,zx平面)で構成される測定ヘッドをロボット腕部材に設ける必要がある。
【0008】
さらに、このロボット腕部材の測定ヘッドには合計6個もの距離測定器が必要でありその製作コストが高くなる。
【0009】
本発明は上述の如き問題を解決するためになされたものであり、本発明の課題は、ロボットを使用した加工作業前に、ロボットハンドに歪みが在るか否かを検出する製作コストの安いロボットハンドの歪み検出方法を提供することである。
【0010】
また、加工作業前にロボットハンドに歪みが在るか否かを測定し、設定値以上の歪みを検出した場合には、予備のロボットハンドに自動交換してから加工を行うロボットハンドの自動交換システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決する手段として請求項1に記載のロボットハンドの歪み検出方法は、加工用プログラムにより指定される3次元空間座標(X,Y,Z)に位置決め制御されるロボットにおいて、該ロボットに材料をX、Y平面に平行に保持可能な複数の材料保持手段を備えたロボットハンドを着脱交換自在に設け、前記材料を載置する材料置台に前記X、Y平面に平行な定盤を設け、該定盤の表面にローカル座標(x,y,z)を設定し、前記ロボットハンドの前記材料保持手段の材料保持面に前記定盤表面に平行な4個の距離測定センサを設け、前記加工用プログラムとは別個の歪み測定用のプログラムにより、前記ロボットハンドを前記定盤上に設定したローカル座標(x,y,z)において指定した位置に移動位置決めし、前記4個の距離測定センサによりロボットハンドと前記定盤表面との間の距離を測定し、この4個の距離測定センサのそれぞれの測定値と、前記指定した移動位置における定盤の表面との間の距離とを比較演算して平行度を求めてロボットハンドの歪みを検出することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載のロボットハンドの自動交換システムは、加工用プログラムにより指定される3次元空間座標(X,Y,Z)に位置決め制御されるロボットにおいて、該ロボットに材料をX、Y平面に平行に保持可能な複数の材料保持手段を備えたロボットハンドを着脱交換自在に設け、前記材料を載置する材料置台に前記X、Y平面に平行な定盤を設け、該定盤の表面にローカル座標(x,y,z)を設定し、前記ロボットハンドの前記材料保持手段の材料保持面に前記定盤に平行に4個の距離測定センサを設け、前記加工用のプログラムによる加工前に、前記加工用プログラムとは別個の歪み測定用のプログラムにより、前記ロボットハンドを前記定盤上に設定したローカル座標(x,y,z)において指定した位置に移動位置決めし、前記4個の距離測定センサによりロボットハンドと前記定盤表面との間の距離を測定し、この4個の距離測定センサのそれぞれの測定値と、前記指定した移動位置における定盤の表面との間の距離とを比較演算して平行度を求めてロボットハンドの歪みを求め、この歪みが設定値以上の場合には予備のロボットハンドを載置した予備ハンド脱着位置へ移動して装着中のロボットハンドを予備のロボットハンドに自動交換してから加工用プログラムによる加工を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本願発明のロボットハンドの歪み検出方法および自動交換システムによれば、ロボットハンドの歪みの検出方法が容易であり、かつ従来のロボットハンドの歪みの検出方法に比して少ない測定ヘッドにより歪みを検出することができるのでコストがを低減することができる。
【0014】
また、加工作業前にロボットハンドに歪みが在るか否かを検出し、設定値以上の歪みを検出した場合には予備のロボットハンドに自動交換してから加工を行うので、ロボットハンドの歪みが原因で不良品が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明に係るロボットハンドの歪み検出方法および自動交換システムにおけるロボット11と材料置台3の相対的配置の説明図。
【図2】本願発明に係るロボットハンド13とロボット11との着脱状況の説明図。
【図3】本願発明に係るロボット側のクイック着脱機構の説明図。
【図4】本願発明に係るロボットハンド13側の着脱機構の説明図。
【図5】本願発明に係るロボットハンド13の説明図。
【図6】本願発明に係る予備ハンド置き台37の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。
【0017】
図1は、定盤1を備えた材料置台3を示した図である。この材料置台3には、材料置台3の表面に設定したローカル座標(x,y,z)におけるx軸方向とy軸方向に材料5を整列するためのy軸ストッパ7と、複数のx軸ストッパ9とが設けてある。
【0018】
なお、前記ローカル座標(x,y,z)の原点O(0,0,0)は、前記定盤1の表面において、y軸ストッパ7の材料当接面を通る直線と、x軸ストッパ9の材料当接面を通る直線との交点を原点Oに設定してある。
【0019】
前記材料置台3の側面には、材料5を搬送する関節形のロボット11が配置してあり、このロボット11のアーム先端部には、材料5を把持するロボットハンド13が着脱可能に装着してある。
【0020】
上述のロボット11のロボットハンド13は、ロボット制御装置(図示省略)にインストールされた加工用プログラムにより指定される3次元空間座標(X,Y,Z)へ位置決め自在に設けてある。
【0021】
また、図2に示すように前記ロボット11のアーム先端部には、上述のロボットハンド13の上面に一体的に設けたクイック着脱機構23に係脱自在のクイック着脱機構15が設けてある。
【0022】
図3に示すように、ロボット側のクイック着脱機構15の下面には円筒状の係合凸部17が設けてある。この係合凸部17の円筒部の周囲の複数箇所にはアクチュエータ19により作動する作動機構(図示省略)により出没する係合爪21が設けてある。
【0023】
図4に示すように、前記ハンド側クイック着脱機構23には、前記ロボット側クイック着脱機構15の係合凸部17が嵌合する係合穴25が設けてあり、この係合穴25に前記係合爪21が係合する係合穴(図示省略)が設けてある。
【0024】
また、クイック着脱機構23の上面には、着脱機構15の下面に設けた位置決め穴(図示省略)に係合する2本の位置決めピン27が設けてある。
【0025】
上記構成のクイック着脱機構23とクイック着脱機構15において、この両者を係合させるときには、ロボット側のクイック着脱機構15の位置決め穴(図示省略)にハンド側クイック着脱機構23の2本の位置決めピン27を係合させると共に、クイック着脱機構15の係合凸部17をハンド側クイック着脱機構23における係合穴25に対して嵌合させる。
【0026】
クイック着脱機構23とクイック着脱機構15との嵌合状態においては、前記係合爪21がハンド側クイック着脱機構23の係合穴(図示省略)に係合してロックされた状態となり、クイック着脱機構23とクイック着脱機構15とはロックされた状態となる。
【0027】
クイック着脱機構23とクイック着脱機構15とのロック状態を解除させる場合には、ロボット側のクイック着脱機構15のアクチュエータ19を作動させることにより、ロック状態を解除が解除された状態となり、ロボットハンド13がロボット11のアーム先端部から離脱可能となる。
【0028】
図2に示すように、ロボットハンド13の前記クイック着脱機構23の下部には、クイック着脱機構23の中心を通り、左右方向(図6において左右方向)に延伸する主梁部材29が一体的に固定してある。
【0029】
この主梁部材29の左右の両端部と前記クイック着脱機構23の左側の近傍位置との3箇所に、主梁部材29の長手方向(図6においては左右方向)に対して直交する方向にに延伸する3本の短い端部アーム部材31(l、r)と内側アーム部材31iとが設けてある。
【0030】
前記端部アーム部材31(l、r)と内側アーム部材31iのそれぞれには、材料または製品の平板部分を吸着して保持する、例えば、真空吸着パッド、または電磁マグネット等からなる複数の材料保持手段33が設けてある。
【0031】
また、図5に示すように、端部アーム部材31lと、31rのそれぞれの両端部には、前記測定端面が平行になるように2個の距離測定センサ35が設けてある。すなわち、ロボットハンド13全体では合計4個の距離測定センサ35が設けてある。
【0032】
上記構成のロボットハンド13をロボット11のクイック着脱機構15に装着した際には、前記主梁部材29が前記定盤1に設定したローカル座標(x,y,z)におけるy軸方向に平行に、かつ端部アーム部材31(l、r)と内側アーム部材31iがx軸方向に平行になるように位置決めされるように設けてある。
【0033】
なお、前記ローカル座標(x,y,z)の原点O(0,0,0)は、前記定盤1の表面において、y軸ストッパ7の材料当接面を通る直線と、x軸ストッパ9の材料当接面を通る直線との交点を原点Oに設定してある。
【0034】
図6に示すように、前記定盤1を備えた材料置台3の近傍に位置する前記関節形のロボット11の作動領域内には、予備のロボットハンド13を置いておく予備ハンド置き台37が配置してある。
【0035】
予備ハンド置き台37には、前記ロボットハンド13の主梁部材29の前記端部アーム部材31(l、r)の内側近傍を溝部39で支持する一対の主梁支持台41(a,b)と、前記クイック着脱機構23の下部に位置する主梁部材29の下面に設けた位置決め部材43に係合する係止部材45とからなる2個の予備ハンド保持部47a、47bが設けてある。
【0036】
上記構成において、ロボットハンド13の歪みを測定する場合には、加工用プログラムとは別個の歪み測定用のプログラムにより、前記ロボットハンド13を前記定盤1の上に設定したローカル座標(x,y,z)において指定した位置に移動位置決めし、前記4個の距離測定センサ35によりロボットハンド13と前記定盤1の表面との間の距離を測定し、この4個の距離測定センサ35の測定値と、前記指定した移動位置における定盤1の表面との間の距離とを比較演算して平行度を求めてロボットハンド13の歪みを検出する。
【0037】
ロボットハンド13の歪みの測定値が設定値以上の場合には、予備ハンド置き台37上へロボットハンド13を移動させ、予備ハンド置き台37の空の予備ハンド保持部47bの係止部材45に現在装着しているロボットハンド13の位置決め部材43を係合させると共に、主梁部材29を主梁支持台41(a,b)の溝部39に挿入し、ロボットハンド13側のクイック着脱機構15とハンド側のクイック着脱機構23とのロック状態を解除して、ロボットハンド13を予備ハンド保持部47bに載置する。
【0038】
次いで、予備ハンド保持部47aに載置されている予備のロボットハンド13をロボット11のクイック着脱機構15に装着してから加工用プログラムによる加工を開始する。
【符号の説明】
【0039】
1 定盤
3 材料置台
5 材料
7 y軸ストッパ
9 x軸ストッパ
11 ロボット
13 ロボットハンド
15 クイック着脱機構
17 係合凸部
19 アクチュエータ
21 係合爪
23 クイック着脱機構
25 係合穴
27 位置決めピン
29 主梁部材
31(l、r) 端部アーム部材
33 材料保持手段
35 距離測定センサ
37 予備ハンド置き台
39 溝部
41(a,b) 主梁支持台
43 位置決め部材
45 係止部材
47(a,b) 予備ハンド保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工用プログラムにより指定される3次元空間座標(X,Y,Z)に位置決め制御されるロボットにおいて、該ロボットに材料をX、Y平面に平行に保持可能な複数の材料保持手段を備えたロボットハンドを着脱交換自在に設け、前記材料を載置する材料置台に前記X、Y平面に平行な定盤を設け、該定盤の表面にローカル座標(x,y,z)を設定し、前記ロボットハンドの前記材料保持手段の材料保持面に前記定盤表面に平行な4個の距離測定センサを設け、前記加工用プログラムとは別個の歪み測定用のプログラムにより、前記ロボットハンドを前記定盤上に設定したローカル座標(x,y,z)において指定した位置に移動位置決めし、前記4個の距離測定センサによりロボットハンドと前記定盤表面との間の距離を測定し、この4個の距離測定センサのそれぞれの測定値と、前記指定した移動位置における定盤の表面との間の距離とを比較演算して平行度を求めてロボットハンドの歪みを検出することを特徴とするロボットハンドの歪み検出方法。
【請求項2】
加工用プログラムにより指定される3次元空間座標(X,Y,Z)に位置決め制御されるロボットにおいて、該ロボットに材料をX、Y平面に平行に保持可能な複数の材料保持手段を備えたロボットハンドを着脱交換自在に設け、前記材料を載置する材料置台に前記X、Y平面に平行な定盤を設け、該定盤の表面にローカル座標(x,y,z)を設定し、前記ロボットハンドの前記材料保持手段の材料保持面に前記定盤に平行に4個の距離測定センサを設け、前記加工用のプログラムによる加工前に、前記加工用プログラムとは別個の歪み測定用のプログラムにより、前記ロボットハンドを前記定盤上に設定したローカル座標(x,y,z)において指定した位置に移動位置決めし、前記4個の距離測定センサによりロボットハンドと前記定盤表面との間の距離を測定し、この4個の距離測定センサのそれぞれの測定値と、前記指定した移動位置における定盤の表面との間の距離とを比較演算して平行度を求めてロボットハンドの歪みを求め、この歪みが設定値以上の場合には予備のロボットハンドを載置した予備ハンド脱着位置へ移動して装着中のロボットハンドを予備のロボットハンドに自動交換してから加工用プログラムによる加工を行うことを特徴とするロボットハンドの自動交換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−188437(P2010−188437A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32334(P2009−32334)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】