説明

ロボットハンド及びその製造方法

【課題】 高温下で使用することができるロボットハンド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 ロボットハンド1は、冷媒を流通させるための貫通溝5が延在する板状部材3と、貫通溝15を覆うように板状部材3の一方の主面3aに配置されたFRP成形体2と、貫通溝15を覆うように板状部材3の他方の主面3bに配置されたFRP成形体4と、を備えている。このロボットハンド1においては、板状部材3及びFRP成形体2,4によって冷媒が流通する流路が形成される。従って、その流路に冷媒を流通させることにより、炉に対してガラス基板を搬入及び搬出するなど、高温下で使用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットに適用されるロボットハンド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶ディスプレイ(LCD)の製造工程においてガラス基板を搬送するための産業用ロボットに適用されるロボットハンド及びその製造方法が種々提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−292591号公報
【特許文献2】特開2002−292592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようなロボットハンドには、炉に対してガラス基板を搬入及び搬出するなど、高温(例えば300℃)下での使用が要求される場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、高温下で使用することができるロボットハンド及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るロボットハンドは、冷媒を流通させるための貫通溝が延在する板状部材と、貫通溝を覆うように板状部材の一方の主面に配置された第1の繊維強化プラスチック成形体と、貫通溝を覆うように板状部材の他方の主面に配置された第2の繊維強化プラスチック成形体と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このロボットハンドでは、板状部材、第1の繊維強化プラスチック成形体及び第2の繊維強化プラスチック成形体によって、冷媒が流通する流路が形成される。従って、その流路に冷媒を流通させることにより、第1の繊維強化プラスチック成形体及び第2の繊維強化プラスチック成形体が効率良く且つ確実に冷却されるので、高温下で使用することが可能となる。なお、貫通溝とは、板状部材の厚さ方向を深さ方向とする溝であって、板状部材の一方の主面と他方の主面とに開口する溝をいう。
【0008】
本発明に係るロボットハンドにおいては、貫通溝の始端及び終端は、板状部材の所定の部分に位置しており、第1の繊維強化プラスチック成形体又は第2の繊維強化プラスチック成形体において貫通溝の始端に対応する位置には、冷媒を導入させるための導入口が形成され、第1の繊維強化プラスチック成形体又は第2の繊維強化プラスチック成形体において貫通溝の終端に対応する位置には、冷媒を導出させるための導出口が形成されていることが好ましい。この構成によれば、板状部材の全体に渡るように貫通溝を延在させつつ、冷媒の導入及び導出をスペース的に効率良く行うことが可能となる。
【0009】
本発明に係るロボットハンドにおいては、第1の繊維強化プラスチック成形体及び第2の繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方は、繊維強化プラスチックからなる内側層及び外側層、並びに内側層と外側層との間に配置された制振弾性層を有することが好ましい。この場合、制振弾性層によって、振動減衰時間の短縮化等、振動減衰特性の向上を図ることができる。しかも、繊維強化プラスチックからなる内側層と外側層とに制振弾性層が挟まれているので、制振弾性層の適用に起因した剛性の低下を防止することができる。従って、この構成によれば、剛性の確保及び振動減衰特性の向上を図ることが可能となる。なお、制振弾性層は、繊維強化プラスチックに比べ、柔軟な材料であることが好ましく、特にゴム、エラストマー等の弾性材料からなる層である。
【0010】
また、本発明に係るロボットハンドの製造方法は、冷媒を流通させるための貫通溝が延在する板状部材を用意する工程と、フィルム状の接着剤を介して板状部材の一方の主面に第1の繊維強化プラスチック成形体を固定し、第1の繊維強化プラスチック成形体によって貫通溝を覆うと共に、フィルム状の接着剤を介して板状部材の他方の主面に第2の繊維強化プラスチック成形体を固定し、第2の繊維強化プラスチック成形体によって貫通溝を覆う工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
このロボットハンドの製造方法では、貫通溝が延在する板状部材の一方の主面及び他方の主面に対し、それぞれ対応するように第1の繊維強化プラスチック成形体及び第2の繊維強化プラスチック成形体がフィルム状の接着剤を介して固定される。そのため、板状部材に予め形成された貫通溝が接着剤によって埋まるのを防止することができる。なお、フィルム状の接着剤として、例えば、3M社製、Scotch-weld Structural Adhesive Film、品番AF−163、AF−191等を使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温下で使用することができるロボットハンド及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るロボットハンドの第1実施形態の斜視図である。
【図2】図1のロボットハンドの分解斜視図である。
【図3】図1のロボットハンドの製造方法の一工程を示す斜視図である。
【図4】図3の次工程を示す斜視図である。
【図5】図1のロボットハンドの他の実施形態の分解斜視図である。
【図6】本発明に係るロボットハンドの第2実施形態の斜視図である。
【図7】図6のロボットハンドの分解斜視図である。
【図8】図6のロボットハンドの他の実施形態の分解斜視図である。
【図9】本発明に係るロボットハンドの他の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0015】
図1及び2に示されるように、ロボットハンド1は、芯材として、長方形状の断面を有する筒状のFRP成形体(第1の繊維強化プラスチック成形体)2を備えている。FRP成形体2の各側面上には、長方形板状の板状部材3がフィルム状の接着剤を介して固定されており、各板状部材3上には、表面材として、長方形板状のFRP成形体(第2の繊維強化プラスチック成形体)4が固定されている。このロボットハンド1は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)の製造工程においてガラス基板を搬送するための産業用ロボットに適用される。なお、FRP成形体2,4は、GFRP(glass fiber reinforced plastics)やCFRP(carbon fiber reinforced plastics)等の繊維強化プラスチックからなる。また、板状部材3は、GFRPやCFRP等の繊維強化プラスチック、エポキシやビニルエステル等の樹脂、或いはアルミニウム等の金属等からなる。
【0016】
ロボットハンド1の材料としてCFRPを使用する場合には、炭素繊維を一方向に引き揃えながらエポキシ樹脂を含浸させて製造した炭素繊維一方向プリプレグ、例えば、E6026E−26N(新日本石油株式会社製、CF:日本グラファイトファイバー製ピッチ系高弾性率CF、XN−60、マトリックス樹脂:エポキシ樹脂、CF質量:260g/m2、樹脂含有量:27.5質量%)、E8026C−25N(新日本石油株式会社製、CF:日本グラファイトファイバー製ピッチ系高弾性率CF、XN−80、マトリックス樹脂:エポキシ樹脂、CF質量:250g/m2、樹脂含有量:32.0質量%)、Y24N33C269(新日本石油株式会社製、CF:東レ製PAN系CF、T700S、マトリックス樹脂:エポキシ樹脂、CF質量:270g/m2、樹脂含有量:33.0質量%)等を使用することができる。一方向炭素繊維プリプレグは、CFの配向方向において高い弾性率が得られることから、そのCFの配向方向がロボットハンド1の長手方向と一致するように積層することが望ましい。
【0017】
また、炭素繊維を平織り状に製織したものにエポキシ樹脂を含浸させて製造した炭素繊維平織りプリプレグ、例えば、FMP61−2026A(新日本石油株式会社製、CF:東レ製PAN系CF、T300、マトリックス樹脂:エポキシ樹脂、CF質量:200g/m2、樹脂含有量:40.0質量%)等を使用することができる。炭素繊維平織りプリプレグは、CFが0°及び90°の2方向に配向されているため、ロボットハンド1に機械加工を施す場合にCFがささくれ立つ現象を防止する効果を有する。このことから、炭素繊維平織りプリプレグをロボットハンド1の表面に積層することにより、穴あけやザグリ等の機械加工によるバリの発生を防ぐことができる。
【0018】
各板状部材3には、冷却水や冷却ガス等の冷媒を流通させるための貫通溝5が延在している。貫通溝5は、板状部材3の厚さ方向を深さ方向とする溝であって、板状部材3の一方の主面3aと他方の主面3bとに開口している。貫通溝5の始端5a及び終端5bは、板状部材3の基端部分(所定の部分)3cに位置している。貫通溝5は、始端5aから板状部材3の長手方向に沿って延在し、板状部材3の先端部分3dにおいて曲線状に折り返して板状部材3の長手方向に沿って延在し、終端5bに至っている。
【0019】
FRP成形体4において貫通溝5の始端5aに対応する位置には、冷媒を導入させるための導入口6が形成されている。また、FRP成形体4において貫通溝5の終端5bに対応する位置には、冷媒を導出させるための導出口7が形成されている。
【0020】
以上のように構成されたロボットハンド1においては、FRP成形体2が貫通溝5の一方の開口を覆うように板状部材3の一方の主面3aに配置され、FRP成形体4が貫通溝5の他方の開口を覆うように板状部材3の他方の主面3bに配置されることになる。そして、板状部材3及びFRP成形体2,4によって冷媒が流通する流路が形成され、導入口6から導出口7へとその流路に対し冷媒が循環させられる。
【0021】
次に、上述したロボットハンド1の製造方法について説明する。まず、ウォータジェット加工やNC加工等によって貫通溝5が形成された板状部材3を用意する。その一方で、アルミニウムやMCナイロンからなる芯金にプリプレグを巻き付けて積層することにより、FRP成形体2となるプリプレグ積層体を得る。また、プリプレグを板状に積層した後、冷媒の導入口6及び導出口7を形成することにより、FRP成形体4となるプリプレグ積層体を得る。
【0022】
続いて、図3に示されるように、FRP成形体2となるプリプレグ積層体の各側面上に、フィルム状の接着剤を介して板状部材3を固定する。これにより、フィルム状の接着剤を介して板状部材3の一方の主面3aにFRP成形体2が固定され、FRP成形体2によって貫通溝5の一方の開口が覆われることになる。更に、図4に示されるように、各板状部材3上に、フィルム状の接着剤を介してFRP成形体4となるプリプレグ積層体を固定する。これにより、フィルム状の接着剤を介して板状部材3の他方の主面3bにFRP成形体4が固定され、FRP成形体4によって貫通溝5の他方の開口が覆われることになる。このように、貫通溝5が形成された板状部材3に対するFRP成形体2,4の固定にフィルム状の接着剤を用いることで、貫通溝5内に接着剤が流れ出して貫通溝5が接着剤によって埋まるのを防止することができる。更に、FRP成形体4を配置した後、前述の炭素繊維平織りプリプレグを最外部に巻きつけることもできる。このことにより、穴あけやザグリ等の機械加工によるバリの発生を防ぐことが可能になる。
【0023】
続いて、オートクレーブ法等によって熱硬化させた後に芯金を抜き取ることにより、ロボットハンド1を得る。このロボットハンド1は、上述したように、例えばガラス基板を搬送するための産業用ロボットに適用され、その産業用ロボットにおいては、冷媒の導入口6及び導出口7に冷媒ラインが接続されて、ロボットハンド1に冷媒が循環させられる。
【0024】
以上説明したように、ロボットハンド1においては、板状部材3及びFRP成形体2,4によって冷媒が流通する流路が形成される。従って、その流路に冷媒を流通させることにより、FRP成形体2,4が効率良く且つ確実に冷却されるので、炉に対してガラス基板を搬入及び搬出するなど、高温(例えば300℃)下で使用することが可能となる。
【0025】
また、ロボットハンド1においては、貫通溝5の始端5a及び終端5bが板状部材3の基端部分3cに位置しており、FRP成形体4において貫通溝5の始端5aに対応する位置に導入口6が形成され、FRP成形体4において貫通溝5の終端5bに対応する位置に導出口7が形成されている。これにより、基端部分3cから先端部分3dに至る板状部材3の全体に渡るように貫通溝5を延在させつつ、冷媒の導入及び導出をスペース的に効率良く行うことが可能となる。
【0026】
なお、図5に示されるように、FRP成形体4は、繊維強化プラスチックからなる内側層41及び外側層42、並びに内側層41と外側層42との間に配置された制振弾性層43を有するように構成されてもよい。この場合、制振弾性層43によって、振動減衰時間の短縮化等、振動減衰特性の向上を図ることができる。しかも、繊維強化プラスチックからなる内側層41と外側層42とに制振弾性層43が挟まれているので、制振弾性層43の適用に起因した剛性の低下を防止することができる。従って、この構成によれば、剛性の確保及び振動減衰特性の向上を図ることが可能となる。なお、制振弾性層43は、繊維強化プラスチックに比べ、柔軟な材料であることが好ましく、特にゴム、エラストマー等の弾性材料からなる層である。制振弾性層の貯蔵弾性率としては、0.1〜500MPa、好ましくは0.1〜100MPa、更に好ましくは0.1〜50MPaであることが望ましい。また、制振弾性層としては、炭素繊維プリプレグからCFRPへの転換を熱硬化により行うことから、その際の熱に対しても安定な材料を使用することが好ましい。更に、制振弾性層は、CFRPのマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂材との接着性に優れた材料であることが好ましい。このような観点から、柔軟性樹脂材料としては、好ましくはスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)等のゴムや、柔軟鎖を持つポリマーであるゴム、エラストマー等を添加することにより、弾性率を低くしたエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等、繊維強化プラスチックに比べ柔軟な材料からなる。
[第2実施形態]
【0027】
図6及び7に示されるように、ロボットハンド10は、芯材として、V字形板状のFRP成形体(第1の繊維強化プラスチック成形体)12を備えている。FRP成形体12上には、V字形板状の板状部材13がフィルム状の接着剤を介して固定されており、板状部材13上には、表面材として、V字形板状のFRP成形体(第2の繊維強化プラスチック成形体)14が固定されている。このロボットハンド10は、例えば半導体デバイスの製造工程においてシリコンウェハ等の半導体基板を搬送するための産業用ロボットに適用される。なお、FRP成形体12,14は、GFRPやCFRP等の繊維強化プラスチックからなる。また、板状部材13は、GFRPやCFRP等の繊維強化プラスチック、エポキシやビニルエステル等の樹脂、或いはアルミニウム等の金属等からなる。
【0028】
FRP成形体12,14の材料としては、前述の炭素繊維一方向プリプレグや炭素繊維平織りプリプレグを使用することができる。FRP成形体12,14を製造する場合の好ましい積層構成として、表面及び裏面の両最外部には、炭素繊維平織りプリプレグを配置することにより、機械加工時のバリ発生を防止することができると共に、平織りプリプレグの間には、CFの配向方向がロボットハンド10の長手方向と一致するように炭素繊維一方向プリプレグを積層することにより、高い弾性率も得ることができる構造が好ましい。また、FRP成形体12,14は、炭素繊維一方向プリプレグのみを使用して製造することもできるが、その際には、CFの配向方向をロボットハンド10の長手方向と一致させた層に加えて、その長手方向と90°の方向にもCFが配向するように、一方向プリプレグを積層することが好ましい。
【0029】
板状部材13には、冷却水や冷却ガス等の冷媒を流通させるための貫通溝15が延在している。貫通溝15は、板状部材13の厚さ方向を深さ方向とする溝であって、板状部材13の一方の主面13aと他方の主面13bとに開口している。貫通溝15の始端15a及び終端15bは、板状部材13の基端部分(所定の部分)13cに位置している。貫通溝15は、始端15aから板状部材13の一方の爪部分13dに至り、その爪部分13dにおいて曲線状に折り返して板状部材3の他方の爪部分13eに至り、その爪部分13eにおいて曲線状に折り返して終端15bに至っている。
【0030】
FRP成形体14において貫通溝15の始端15aに対応する位置には、冷媒を導入させるための導入口16が形成されている。また、FRP成形体14において貫通溝15の終端15bに対応する位置には、冷媒を導出させるための導出口17が形成されている。
【0031】
以上のように構成されたロボットハンド10においては、FRP成形体12が貫通溝15の一方の開口を覆うように板状部材13の一方の主面13aに配置され、FRP成形体14が貫通溝15の他方の開口を覆うように板状部材13の他方の主面13bに配置されることになる。そして、板状部材13及びFRP成形体12,14によって冷媒が流通する流路が形成され、導入口16から導出口17へとその流路に対し冷媒が循環させられる。
【0032】
次に、上述したロボットハンド10の製造方法について説明する。まず、ウォータジェット加工やNC加工等によって貫通溝15が形成された板状部材13を用意する。その一方で、プリプレグを板状に積層することにより、FRP成形体12となるプリプレグ積層体を得る。また、プリプレグを板状に積層した後、冷媒の導入口16及び導出口17を形成することにより、FRP成形体14となるプリプレグ積層体を得る。
【0033】
続いて、FRP成形体12となるプリプレグ積層体上に、フィルム状の接着剤を介して板状部材13を固定する。これにより、フィルム状の接着剤を介して板状部材13の一方の主面13aにFRP成形体12が固定され、FRP成形体12によって貫通溝15の一方の開口が覆われることになる。更に、板状部材13上に、フィルム状の接着剤を介してFRP成形体14となるプリプレグ積層体を固定する。これにより、フィルム状の接着剤を介して板状部材13の他方の主面13bにFRP成形体14が固定され、FRP成形体14によって貫通溝15の他方の開口が覆われることになる。このように、貫通溝15が形成された板状部材13に対するFRP成形体12,14の固定にフィルム状の接着剤を用いることで、貫通溝15内に接着剤が流れ出して貫通溝15が接着剤によって埋まるのを防止することができる。
【0034】
続いて、オートクレーブ法等によって熱硬化させることにより、ロボットハンド10を得る。このロボットハンド10は、上述したように、例えば半導体基板を搬送するための産業用ロボットに適用され、その産業用ロボットにおいては、冷媒の導入口16及び導出口17に冷媒ラインが接続されて、ロボットハンド10に冷媒が循環させられる。
【0035】
以上説明したように、ロボットハンド10においては、板状部材13及びFRP成形体12,14によって冷媒が流通する流路が形成される。従って、その流路に冷媒を流通させることにより、FRP成形体12,14が効率良く且つ確実に冷却されるので、半導体基板を搬送するに際して高温下で使用することが可能となる。
【0036】
また、ロボットハンド10においては、貫通溝15の始端15a及び終端15bが板状部材13の基端部分13cに位置しており、FRP成形体14において貫通溝15の始端15aに対応する位置に導入口16が形成され、FRP成形体14において貫通溝15の終端15bに対応する位置に導出口17が形成されている。これにより、基端部分13cから爪部分13d,13eに至る板状部材13の全体に渡るように貫通溝15を延在させつつ、冷媒の導入及び導出をスペース的に効率良く行うことが可能となる。
【0037】
なお、図8に示されるように、FRP成形体14は、繊維強化プラスチックからなる内側層141及び外側層142、並びに内側層141と外側層142との間に配置された制振弾性層143を有するように構成されてもよい。この場合、制振弾性層143によって、振動減衰時間の短縮化等、振動減衰特性の向上を図ることができる。しかも、繊維強化プラスチックからなる内側層141と外側層142とに制振弾性層143が挟まれているので、制振弾性層143の適用に起因した剛性の低下を防止することができる。従って、この構成によれば、剛性の確保及び振動減衰特性の向上を図ることが可能となる。なお、制振弾性層143は、上述した制振弾性層43と同様の材料からなる。
【0038】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、FRP成形体2(12)において貫通溝5(15)の始端5a(15a)に対応する位置に、導入口6(16)が形成されてもよいし、FRP成形体2(12)において貫通溝5(15)の終端5b(15b)に対応する位置に、導出口7(17)が形成されてもよい。
【0039】
また、FRP成形体2(12)が、繊維強化プラスチックからなる内側層及び外側層、並びに内側層と外側層との間に配置された制振弾性層を有するように構成されてもよいし、FRP成形体2,4(12,14)の両方が、繊維強化プラスチックからなる内側層及び外側層、並びに内側層と外側層との間に配置された制振弾性層を有するように構成されてもよい。なお、芯材となるFRP成形体2,12は、樹脂によって形成される場合もある。
【0040】
また、図9に示されるように、ロボットハンド1は、円筒状(すなわち、断面円形の中空パイプ状)に構成されていてもよい。この場合、螺旋状に貫通溝5を形成したり(図9(a))、長手方向に沿って延在するように貫通溝5を形成したり(図9(b))することができる。一例として、螺旋状に貫通溝5を形成するときには、貫通溝5の始端5aを板状部材3の基端部分に位置させて導入口6をFRP成形体4に形成し、貫通溝5の終端5bを板状部材3の先端部分に位置させて導出口7をFRP成形体2に形成し、冷媒を帰還させるための冷媒ラインをロボットハンド1の内部に敷設すればよい。また、長手方向に沿って延在するように貫通溝5を形成するときには、板状部材3の先端部分において曲線状に折り返すことで、貫通溝5の始端5a及び終端5bを板状部材3の基端部分に位置させて導入口6及び導出口7をFRP成形体4に形成すればよい。なお、これらの貫通溝5は、複数本形成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1,10…ロボットハンド、2,12…FRP成形体(第1の繊維強化プラスチック成形体)、3,13…板状部材、3a,13a…一方の主面、3b,13b…他方の主面、3c,13c…基端部分(所定の部分)、4,14…FRP成形体(第2の繊維強化プラスチック成形体)、5,15…貫通溝、5a,15a…始端、5b,15b…終端、6,16…導入口、7,17…導出口、41,141…内側層、42,142…外側層、43,143…制振弾性層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を流通させるための貫通溝が延在する板状部材と、
前記貫通溝を覆うように前記板状部材の一方の主面に配置された第1の繊維強化プラスチック成形体と、
前記貫通溝を覆うように前記板状部材の他方の主面に配置された第2の繊維強化プラスチック成形体と、を備えることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記貫通溝の始端及び終端は、前記板状部材の所定の部分に位置しており、
前記第1の繊維強化プラスチック成形体又は前記第2の繊維強化プラスチック成形体において前記貫通溝の前記始端に対応する位置には、前記冷媒を導入させるための導入口が形成され、
前記第1の繊維強化プラスチック成形体又は前記第2の繊維強化プラスチック成形体において前記貫通溝の前記終端に対応する位置には、前記冷媒を導出させるための導出口が形成されていることを特徴とする請求項1記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記第1の繊維強化プラスチック成形体及び前記第2の繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方は、繊維強化プラスチックからなる内側層及び外側層、並びに前記内側層と前記外側層との間に配置された制振弾性層を有することを特徴とする請求項1又は2記載のロボットハンド。
【請求項4】
冷媒を流通させるための貫通溝が延在する板状部材を用意する工程と、
フィルム状の接着剤を介して前記板状部材の一方の主面に第1の繊維強化プラスチック成形体を固定し、前記第1の繊維強化プラスチック成形体によって前記貫通溝を覆うと共に、フィルム状の接着剤を介して前記板状部材の他方の主面に第2の繊維強化プラスチック成形体を固定し、前記第2の繊維強化プラスチック成形体によって前記貫通溝を覆う工程と、を備えることを特徴とするロボットハンドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−110682(P2011−110682A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271427(P2009−271427)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】