説明

ロボット制御装置

【課題】従来のロボット制御装置は、効果的に制御装置内部の循環およびモータへ電流を駆動する駆動回路の冷却ができないため、ファンモータの寿命の短縮、モータへ電流を駆動する駆動回路等の電気部品、特に熱に弱い電界コンデンサの不良の要因となる等の課題があった。
【解決手段】電源を整流後電圧を平滑する平滑コンデンサ108と、平滑され蓄積された電気エネルギーによりロボットのサーボモータ114に電流を供給し駆動する駆動回路103と、駆動回路103の冷却をおこなうファンモータを備えたロボット制御装置100において、平滑コンデンサ108に蓄えられた電気エネルギーにより、ファンモータを駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気流により装置内部の熱の循環および冷却を行うファンモータを制御するロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット制御装置については設置場所の削減等で小型化の要請があるが、小型化を行うとロボット制御装置内で発生する熱の発散面積が減少するため強制冷却を行わねばならない。そこで以下に従来のロボット制御装置の冷却について説明する。
【0003】
図3は第1の従来例を示すロボット制御装置のブロック図である。
図において、ロボット制御装置300は、交流を直流に変換する図示しない突入電流抑制回路を含む駆動装置用電源回路101、制御部等ロボットの制御のための電源102、サーボモータ114に電流を供給し駆動する駆動回路103、駆動回路103へ制御信号を出力する駆動制御回路104、制御部105、ロボット制御装置300の電源スイッチ106、駆動電源用電磁接触器107、駆動装置用電源回路101で直流化された電圧を整流し、電気エネルギーを蓄積する平滑コンデンサ108、モータ減速時の回生電力の放出および平滑コンデンサ108の電気エネルギーを強制的に解放(放電)する回生・強制解放回路109、DC/DCコンバータ110、回生・強制解放制御部111、ロボット制御装置300の扉スイッチ112、ACファン301で構成されている。
このロボット制御装置300は、電源スイッチ106を入れると、ACファン301が回転しロボット制御装置300内部の熱の循環および駆動回路103の冷却を行い、電源スイッチ106を切ると、ACファン301が停止しロボット制御装置300内部の熱の循環および駆動回路103の冷却を停止する。
【0004】
図4は第2の従来例を示すロボット制御装置のブロック図である。図において、図3と同一の符号は同じ物を表すので説明を割愛する。
図において、ロボット制御装置400は、駆動電源用電磁接触器107の後にACファン301が接続されており、サーボモータ114へ通電中はACファン301が回転しロボット制御装置400内部の熱の循環および駆動回路103の冷却を行い、駆動電源用電磁接触器107を切ると、サーボモータ114への通電を停止すると共に、ACファン301が停止しロボット制御装置400内部の熱の循環および駆動回路103の冷却を停止する。
【0005】
図5は第3の従来例を示すロボット制御装置のブロック図である。図において、図3と同一の符号は同じ物を表すので説明を割愛する。
図において、ロボット制御装置500は、温度センサ501によりロボット制御装置500内部の温度を監視し、ロボット制御装置500内部の温度が上がればACファン301が回転し、ロボット制御装置500内部の熱の循環および駆動回路103の冷却を行い、ロボット制御装置500内部の温度が下がればACファン301が停止し制御装置内部の熱の循環および駆動回路103の冷却を停止する。
【0006】
また、第4の従来例のロボット制御装置として、制御部の電圧または電流指令値によりファンモータのオンオフ、または回転数を制御する事を特徴とするものがあり、特許文献1に開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−117393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記第1の従来例のロボット制御装置300は、ACファン301を制御装置の電源スイッチ106で入切するため、ロボット制御装置300の内部温度がそれ程上がっておらず、熱の循環および駆動回路103の冷却が必要ない場合でもACファン301を停止することができない。このため、ACファン301の寿命を縮めたり、不経済であったりするという問題があった。
【0009】
また、上記第2の従来例のロボット制御装置400は、ACファン301を駆動電源用電磁接触器107で入切することで、サーボモータ114への通電に連動してACファン301を入切する構成としたもので、ロボット制御装置300に比べて駆動回路103、駆動制御回路104で発生する熱を効率よく冷却することが可能である。しかし、ロボット制御装置400は、サーボモータ114が停止するとACファン301も同時に停止するため、効果的に熱の循環および駆動回路103の冷却ができず駆動回路103、駆動制御回路104等の電気部品、特に熱に弱い電界コンデンサへの悪影響の要因となるという問題があった。
【0010】
また、上記第3の従来例のロボット制御装置500は、温度センサ501でロボット制御装置500の内部温度を監視し、監視した温度によりACファン301を入切する構成としたもので、上記第1および第2の従来例の問題点を解決し、効果的にロボット制御装置500内部の熱の循環および駆動回路103の冷却が可能である。しかし、ロボット制御装置は、時流の要請で小型化、低価格化が望まれる傾向にあり、極力不要なセンサや回路は追加したくないという問題や、盤内温度は一律でないためセンサ設置場所によっては効果が少ないという問題があった。
【0011】
更に、上記第4の従来例のロボット制御装置は、制御部の電圧または電流指令値によりファンモータのオンオフ、または回転数を制御する事を特徴とするもので、ファンモータの寿命の延長とロボット制御装置内の温度上昇による電気部品の故障の発生を排除することが可能であるが、制御部の電圧または電流指令値によりファンモータのオンオフ、または回転数を制御するための回路を追加しなければならないという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、複雑な回路を付加することなく、簡単な構成で効果的な熱の循環および冷却を行うことができるロボット制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、ロボットの駆動のため、電源を整流後平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサで平滑され蓄積された電気エネルギーにより前記ロボットのサーボモータに電流を供給し駆動する駆動回路と、前記駆動回路の冷却を行うファンモータを備えたロボット制御装置において、前記平滑コンデンサに蓄えられた電気エネルギーにより、前記ファンモータを駆動することを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、前記平滑コンデンサの両端電圧を電圧変換し、前記ファンモータに供給することを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、前記平滑コンデンサの両端電圧を電圧変換し、継電器を駆動し、該継電器の接点を介し電源を前記ファンモータに供給することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、請求項2および請求項3に記載の発明によると、サーボモータへ通電中はファンモータが回転し気流によるロボット制御装置内の熱の循環および駆動回路の冷却をすることができる。さらに、サーボモータへの通電を停止した場合も平滑コンデンサに蓄えられた電気エネルギーによりファンモータが回転するため、ロボット制御装置内部の温度が十分に下がるまで熱の循環および駆動回路の冷却をすることができると共にサーボモータへの通電を停止した後に蓄積された電気エネルギーの解放を兼ねることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の第1実施例を示すロボット制御装置のブロック図である。
図1のロボット制御装置100は、交流を直流に変換する図示しない突入電流抑制回路を含む駆動装置用電源回路101、制御部等ロボットの制御のための電源102、サーボモータ114に電流を供給し駆動する駆動回路103、駆動回路103へ制御信号を出力する駆動制御回路104、制御部105、ロボット制御装置100の電源スイッチ106、駆動電源用電磁接触器107、駆動装置用電源回路101で直流化された電圧を整流し、電気エネルギーを蓄積する平滑コンデンサ108、サーボモータ減速時の回生電力の放出および平滑コンデンサ108の電気エネルギーを強制的に解放(放電)する回生・強制解放回路109、DC/DCコンバータ110、回生・強制解放制御部111、ロボット制御装置100の扉スイッチ112、DCファン115で構成されている。
このロボット制御装置100は、電源スイッチ106を入れると、制御部等ロボットの制御のための電源102、制御部105に通電される。制御部105からの指令で駆動電源用電磁接触器107が入ると、駆動装置用電源回路101、平滑コンデンサ108、駆動回路103を経てサーボモータ114へ通電される。これと同時にDCファン115へDC/DCコンバータ110を経て電気が供給され、ロボット制御装置100内部の熱の循環および駆動回路103の冷却を開始する。
次に、制御部105からの指令で駆動電源用電磁接触器107を切ると、瞬時にサーボモータ114への通電は停止するが、平滑コンデンサ108には電気エネルギーが蓄えられているため、DCファン115はすぐには停止せず、駆動装置用電源回路101の電圧が所定の値に低下するまで回転して冷却は継続する。
【0016】
本発明が特許文献1と異なる部分は、制御部からの電圧または電流指令値によりファンモータのオンオフまたは回転数を制御するのではなく、平滑コンデンサに蓄えられた電気エネルギーによりファンモータを駆動するという部分である。
なお、ロボット制御装置100内の保守作業のために作業員が扉を開けると、扉スイッチ112がこれを検知し、回生・強制解放制御部111が回生・強制解放回路109へ強制解放指令を出し、平滑コンデンサ108に蓄積されている電気エネルギーを強制解放するので、作業員が平滑コンデンサ108およびその近傍に接触しても感電事故となることはない。
【0017】
以上のように、平滑コンデンサ108に蓄えられた電気エネルギーによりDCファン115を駆動することで、特殊な回路を追加することなく、サーボモータ114が停止した後でも駆動回路103または駆動制御回路104で発生した熱を効果的に循環および冷却することが可能となる。また、サーボモータ114が停止した後は、DCファン115へ外部から電気を供給する必要がないため経済的にも優れている。また、仮に停電が発生したとしても、蓄積されているエネルギーでDCファン115を駆動して冷却を継続するので、ロボット制御装置内の電気部品等への熱による悪影響を削減することができる。
【実施例2】
【0018】
図2は、本発明の第2実施例を示すロボット制御装置のブロック図である。
図2のロボット制御装置200は、交流を直流に変換する図示しない突入電流抑制回路を含む駆動装置用電源回路101、制御部等ロボットの制御のための電源102、サーボモータ114に電流を供給し駆動する駆動回路103、駆動回路103へ制御信号を出力する駆動制御回路104、制御部105、ロボット制御装置200の電源スイッチ106、駆動電源用電磁接触器107、駆動装置用電源回路101で直流化された電圧を整流し、電気エネルギーを蓄積する平滑コンデンサ108、サーボモータ減速時の回生電力の放出および平滑コンデンサ108の電気エネルギーを強制的に解放(放電)する回生・強制解放回路109、DC/DCコンバータ110、回生・強制解放制御部111、ロボット制御装置200の扉スイッチ112、継電器201、ACファン202で構成されている。
このロボット制御装置200は、電源スイッチ106を入れると、制御部等ロボットの制御のための電源102、制御部105に通電される。制御部105からの指令で駆動電源用電磁接触器107が入ると、駆動装置用電源回路101、平滑コンデンサ108、駆動回路103を経てサーボモータ114へ通電される。これと同時にDC/DCコンバータ110により継電器201が動作してACファン202が回転し、ロボット制御装置200内部の熱の循環およびモータへ電流を駆動する駆動回路103の冷却を開始する。次に、制御部105からの指令で駆動電源用電磁接触器107を切ると、瞬時にサーボモータ114への通電は停止するが、平滑コンデンサ108には電気エネルギーが蓄えられているため、ACファン202はすぐには停止せず、駆動装置用電源回路101の電圧が所定の値になるまで回転する。
【0019】
以上のように、平滑コンデンサ108に蓄えられた電気エネルギーにより継電器201を駆動し、ACファン115を回転することで、特殊な回路を追加することなく、サーボモータ114が停止した後でも駆動回路103または駆動制御回路104で発生した熱を効果的に循環および冷却することが可能となる。なお、この実施例を用いれば、平滑コンデンサ108に蓄えられた電気エネルギーにより継電器201を駆動すればよいため、複数のファンを回転させたり、容量の大きなファンを回転させたり、ファン以外の機器を駆動させたりすることができるため、状況に応じたさまざまな構成をとることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、平滑コンデンサに蓄えられた電気エネルギーでファンモータを駆動し、気流によるロボット制御装置内部の熱の循環および駆動回路の冷却を目的としたが、同様の構成をとることで、平滑コンデンサに蓄えられた電気エネルギーでロボットの周辺機器を駆動する等の用途にも適用できる。また、本発明は、ロボット制御装置の冷却について述べたが、平滑コンデンサが使用されている他の装置についても応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施例を示すロボット制御装置のブロック図
【図2】本発明の第2実施例を示すロボット制御装置のブロック図
【図3】第1の従来例を示すロボット制御装置のブロック図
【図4】第2の従来例を示すロボット制御装置のブロック図
【図5】第3の従来例を示すロボット制御装置のブロック図
【符号の説明】
【0022】
100 ロボット制御装置
101 駆動装置用電源回路
102 ロボットの制御のための電源
103 駆動回路
104 駆動制御回路
105 制御部
106 制御装置の電源スイッチ
107 駆動電源用電磁接触器
108 平滑コンデンサ
109 回生・強制解放回路
110 DC/DCコンバータ
111 回生・強制解放制御部
112 ロボット制御装置の扉スイッチ
113 主電源
114 サーボモータ
115 DCファン
200 ロボット制御装置
201 継電器
202 ACファン
300 ロボット制御装置
301 ACファン
400 ロボット制御装置
500 ロボット制御装置
501 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの駆動のため、電源を整流後平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサで平滑され蓄積された電気エネルギーにより前記ロボットのサーボモータに電流を供給し駆動する駆動回路と、前記駆動回路の冷却を行うファンモータを備えたロボット制御装置において、
前記平滑コンデンサに蓄えられた電気エネルギーにより、前記ファンモータを駆動することを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
前記平滑コンデンサの両端電圧を電圧変換し、前記ファンモータに供給することを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記平滑コンデンサの両端電圧を電圧変換し、継電器を駆動し、該継電器の接点を介し電源を前記ファンモータに供給することを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−280076(P2006−280076A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94298(P2005−94298)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】