説明

ロボット装置及びその制御方法

【課題】操作性を向上させたロボット装置及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】ロボット装置10は、移動可能な台車部1と、台車部1に回動可能に連結されたロボットアーム2と、ロボットアーム2及び/又は台車部1を操作するための操作情報を入力する操作手段と、操作手段を台車部1に相対移動が可能となるように接続する接続手段と、操作手段の相対位置を検出する位置検出手段と、台車部に設けられ、操作手段からの操作情報と、位置検出手段により検出された操作手段の相対位置とに基づいて、ロボットアーム2及び/又は台車部1の駆動を制御する制御手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車部と、台車部に回動可能に連結されたロボットアームと、ロボットアーム又は台車部を操作するための操作情報を入力する操作手段と、を備えるロボット装置及びその制御方法に関し、より詳細には、操作性を向上させたロボット装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
老人や病人等の被介護者を保持して、ベッド等の別の場所に移乗させるための様々な技術が提案されている。例えば、被介護者を乗せた状態で持ち上げる持ち上げ部と、持ち上げ部を移動させる移動部と、これらの操作指示が入力される操作部と、を備えるロボット装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−252469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、介護者等が、ロボット装置に固定された操作部を操作して、持ち上げ部や移動部などを操作する際、当該装置の右側又は左側で被介護者の保持状態を十分に確認しつつ、操作を行うことがある(図10)。このとき、例えば、室内の狭い場所等でロボット装置の操作を行っている場合、周囲の家具、ベッド等がその操作や視界の妨げになることが想定される。一方、操作部はロボット装置に固定されており、介護者はその操作し難い位置において各操作を強いられるため、操作性が低下するという問題が生じ得る。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、操作性を向上させたロボット装置及びその制御方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、移動可能な台車部と、前記台車部に回動可能に連結されたロボットアームと、前記ロボットアーム及び/又は台車部を操作するための操作情報を入力する操作手段と、前記操作手段を前記台車部に相対移動が可能となるように接続する接続手段と、前記操作手段の相対位置を検出する位置検出手段と、前記台車部に設けられ、前記操作手段からの操作情報と、前記位置検出手段により検出された前記操作手段の相対位置と、に基づいて、前記ロボットアーム及び/又は台車部の駆動を制御する制御手段と、を備える、ことを特徴とするロボット装置である。
【0007】
この一態様において、前記接続手段は、前記操作手段が前記台車部の左右側へ相対移動できるように、前記操作手段と前記台車部とを接続してもよい。
【0008】
また、この一態様において、前記制御手段は、前記操作部が前記台車部の右側にあるときと左側にあるときとで、前記台車部を基準とした前記操作部の操作方向に対する前記ロボットアーム及び/又は台車部の移動方向が同一となるように設定変更を行ってもよい。
【0009】
さらに、この一態様において、前記制御手段は、前記位置検出手段により検出された前記操作手段の相対位置に応じて、前記ロボットアーム又は台車部の動作を制限してもよい。
【0010】
さらにまた、この一態様において、前記制御手段は、(a)前記位置検出手段により検出された前記操作手段の相対位置が前記台車部の左側又は右側である場合、前記ロボットアームに対する操作を有効にし、前記台車部に対する操作を無効にし、(b)前記位置検出手段により検出された前記操作手段の相対位置が前記台車部の中央にある場合、前記ロボットアームに対する操作を無効にし、前記台車部に対する操作を有効にしてもよい。
【0011】
さらにまた、この一態様において、前記接続手段は、前記台車部の中央に立設された支持部と、一端が前記支持部に左右方向へ揺動可能に連結され、他端に前記操作手段が取付けられたハンドルアームと、を有していてもよい。
【0012】
さらにまた、この一態様において、前記接続手段は、前記台車部に左右方向に取付けられ、前記操作手段がその長手方向に沿ってスライドするスライダ部を有していてもよい。
【0013】
さらにまた、この一態様において、前記接続手段は、前記台車部の制御手段と、前記台車部から分離した前記操作手段と、を無線又は有線で接続してもよい。
【0014】
なお、この一態様において、前記台車部の車輪を駆動する車輪駆動部と、前記ロボットアームの関節部を回転駆動するアーム駆動部と、前記ロボットアームの先端に取付けられ、人を保持するための保持具と、を更に備えていてもよい。
【0015】
他方、上記目的を達成するための本発明の一態様は、移動可能な台車部と、前記台車部に回動可能に連結されたロボットアームと、前記ロボットアーム及び/又は台車部を操作するための操作情報を入力する操作手段と、を備えるロボット装置の制御方法であって、 前記操作手段を前記台車部に対して相対移動させたときの前記操作手段の相対位置を検出する工程と、前記入力された操作情報と、前記検出された前記操作手段の相対位置と、に基づいて、前記ロボットアーム及び/又は台車部の駆動を制御する工程と、を含む、ことを特徴とするロボット装置の制御方法であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、操作性を向上させたロボット装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係るロボット装置の概略的な構成を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るロボット装置の概略的な構成を示す上面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るロボット装置のシステム構成の一例を示すブロック図である。
【図4】介護者が操作部を台車部の右側又は左側に移動させて、操作を行う状態の一例を示す図である。
【図5】台車部の右側又は左側にあるときの操作部の操作方向の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1に係るロボット装置の制御処理フローの一例を示すフローチャートである。
【図7】操作部を台車部の中央に移動させた状態の一例を示す図である。
【図8】操作部が台車部のスライダ部上を左右方向へスライドする構成を示す図である。
【図9】制御装置と台車部から分離した操作部とを有線又は無線で接続する構成を示す図である。
【図10】介護者が台車部に固定された操作部を操作する状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係るロボット装置の概略的な構成を示す側面図であり、被介護者を保持具により保持していない状態の一例を示す図である。また、図2は、本発明の実施形態1に係るロボット装置の概略的な構成を示す上面図であり、被介護者を保持具により保持した状態の一例を示す図である。さらに、図3は、本発明の実施形態1に係るロボット装置のシステム構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
本実施形態1に係るロボット装置10は、例えば、介護者等の操作者が操作を行い、被介護者等の人を安全かつ確実に、ベッドと車椅子との間を移乗させ、あるいは、トイレ、診察台等まで移送して移乗させることができる移乗装置として構成されている。ロボット装置10は、移動可能な台車部1と、台車部1に回動可能に連結されたロボットアーム2と、ロボットアーム2の先端に取付けられ、被介護者を保持する保持具3と、台車部1及びロボットアーム2の駆動を制御する制御装置4と、台車部1及びロボットアーム部2に対する操作情報を入力するための操作部5と、を備えている。
【0020】
台車部1は、台車本体11と、台車本体11の前方に回転可能に取付けられた左右一対の補助輪12と、台車本体11の後方に回転可能に取付けられ、台車部1を駆動する左右一対の駆動車輪13と、を有している。補助輪12は、台車本体11の方向転換が可能なように、台車本体11に対して回転可能なように取付けられている。なお、上記台車部1の構成は一例であり、任意の構成が適用可能である。例えば、台車本体11の前方には、一対の補助輪12が夫々取付けられているが、取付けられる補助輪の数及び位置は任意でよい。
【0021】
また、台車部1には、その後方かつ中央に支持部14が立設されており、支持部14の上端にハンドルアーム15の一端が左右方向へ揺動可能に連結されている。さらに、ハンドルアーム15の他端には、操作部5が取付けられている。介護者は、ハンドルアーム15を左右方向へ揺動させることで、操作部5を、操作性が良好となる、台車部1の右側、中央、又は左側へ容易に移動させることができる。
【0022】
ハンドルアーム15には、位置検出手段の一具体例であり、ハンドルアーム15の揺動角度を検出するための角度センサ16が設けられている。また、角度センサ16は、例えば、ロータリーエンコーダやポテンショメータ等を用いることができる。角度センサ16は、制御装置4に接続されており、検出したハンドルアーム15の揺動角度を、角度信号として制御装置4に出力する。
【0023】
なお、ハンドルアーム15の揺動角度は、台車部1に対する操作部5の相対位置を表している。したがって、制御装置4は、角度センサ16により検出されたハンドルアーム15の揺動角度に基づいて、台車部1に対する操作部5の相対位置を認識することができる。
【0024】
操作部5は、操作手段の一具体例であり、介護者等が台車部1やロボットアーム2を操作するための操作情報(操作方向、移動速度等)を入力することができる。また、操作部5は、介護者等が操作可能な、例えば、ジョイスティック(操作レバー)5aやスイッチ等により構成されている。介護者がジョイスティック5aやスイッチ等を操作して操作情報を入力すると、操作部5は、その操作に応じた操作信号を出力する。また、操作部5は、ワイヤ等を介して制御装置4に接続されており、操作部5から出力された操作信号は、制御装置4に入力される。
【0025】
各駆動車輪13には、車輪駆動部の一具体例であり、各駆動車輪13を回転駆動する左右一対の第4モータ34L、34Rが、減速機構等を介して夫々連結されている。各第4モータ34L、34Rは、各駆動車輪13を独立して回転駆動させることができる。したがって、例えば、各第4モータ34L、34Rは、左右の駆動車輪13の回転差を生じさせることで台車部1を任意の方向へ旋回させ、正転又は逆転させることで台車部1を前進又は後進させることができる。このように、ロボット装置10を前進、後進、又は左右旋回させ、任意の位置へ移動させることができる。
【0026】
ロボットアーム2は、例えば、第1アーム部21と、第2アーム部22と、を有する多関節型アームとして構成されている。第1アーム部21の一端は、ヨー軸回りの回転が可能となるように、第1関節部41を介して台車本体11に連結されている。第2アーム部22の一端は、ピッチ軸回りの回転が可能となるように、第2関節部42を介して第1アーム部21の他端に連結されている。また、第2アーム部22の他端には、ピッチ軸及びロール軸回りの回転が可能となるように、保持具3が第3関節部43を介して連結されている。さらに、上記ロボットアーム2の構成は一例であり、任意のアーム構成が適用可能である。例えば、ロボットアーム2を構成する関節部の数は任意でよく、また、可動方向も任意でよい。
【0027】
なお、上記ヨー軸とは、第1アーム部21の回転軸であり、鉛直方向の軸である。また、上記ピッチ軸とは、第2アーム部22及び保持具3を上下方向へ回動させる際の回転軸である。さらに、ロール軸とは、第2アーム部22に対して保持具3を回転させる際の回転軸である。
【0028】
ロボットアーム2の第1乃至第3関節部41、42、43には、アーム駆動部の一具体例であり、ロボットアーム2の第1乃至第3関節部41、42、43を駆動する第1乃至第3モータ31、32、33が夫々設けられている。例えば、第1モータ31は、第1関節部41に内蔵されており、第1アーム部21をヨー軸回りに回転駆動する。また、第2モータ32は、第2関節部42に内蔵されており、第2アーム部22をピッチ軸回りに回転駆動する。さらに、第3モータ33は、第3関節部43に内蔵されており、保持具3をロール軸及びピッチ軸回りに回転駆動する。
【0029】
保持具3は、ロボットアーム2の先端に取付けられており、被介護者を最適に保持することができる。また、保持具3は、被介護者を移乗する際にその負荷が小さく、かつ、保持が容易となるように、例えば、被介護者の胴体を抱きかかえるように保持するように構成されているが、これに限らず、被介護者を適切に保持できれば任意の構成が適用可能である。
【0030】
台車部1には、制御手段の一具体例であり、第1乃至第4モータ31、32、33、34L、34Rの回転駆動を制御する制御装置4が設けられている。また、第1乃至第4モータ31、32、33、34L、34Rは、制御装置4に駆動回路6を介して夫々接続されており、制御装置4からの制御信号に基づいて、回転駆動する。さらに、第1乃至第3関節部41、42、43には、第1乃至第3モータ31、32、33の回転量を検出する、ポテンショメータ等の回転センサ51、52、53が夫々設けられている。各回転センサ51、52、53は、制御装置4に夫々接続されており、検出した第1乃至第3関節部41、42、43の回転角度を、角度信号として制御装置4に対して出力する。
【0031】
制御装置4は、例えば、操作部5からの操作信号と、各回転センサ51、52、53からの角度信号と、に基づいて、第1乃至第3関節部41、42、43の回転角度が操作信号に応じた目標角度となるように、第1乃至第3モータ31、32、33をフィードバック制御して、ロボットアーム2の駆動を制御する。なお、制御装置4は、上述のようにフィードバック制御を行っているが、これに限らず、例えば、状態フィードバック制御、ロバスト制御等の周知の制御を行ってもよい。
【0032】
また、制御装置4は、例えば、制御処理、演算処理等を行うCPU(Central Processing Unit)4aと、CPU4aによって実行される制御プログラム、演算プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)4bと、処理データ等を記憶するRAM(Random Access Memory)4cと、を有する、マイクロコンピュータを中心にハードウェア構成されている。
【0033】
ところで、図10に示すように、介護者が、従来のロボット装置に固定された操作部を操作して、ロボットアームや台車部を操作する際、当該装置の左側又は右側で被介護者に接近してその保持状態を十分に確認しつつ、操作を行うことがある。このとき、例えば、室内の狭い場所等でロボット装置の操作を行っている場合、周囲の家具等がその操作や視界の妨げになる。一方、操作部はロボット装置に固定されているため、介護者はその操作し難い位置において各操作を強いられることとなり、その操作性が低下する虞がある。
【0034】
そこで、本実施形態1に係るロボット装置10において、操作部5は、台車部1の左側又は右側へ相対移動できるように、例えば、台車部1中央の支持部14を中心にして、左右方向へ揺動するハンドルアーム15に取付けられている。これにより、図4に示すように、介護者は、ハンドルアーム15を左側又は右側へ揺動させることで、操作部5を、その操作や視界が良好となる台車部1の左側又は右側へ適宜移動させることができ、操作性を向上させることができる。
【0035】
例えば、介護者は、被介護者に接近し十分に視認できる台車部1の右側又は左側へ、操作部5を移動させることができるため、保持具3のアプローチ状態(保持具3で被介護者を挟んでいない等)、被介護者の着座状況(臀部と着座物間の距離等)、被介護者の保持具3による保持状態(被介護者が保持具3に安全に保持されているか等)、を操作中に十分に確認することができる。
【0036】
また、上述のように、介護者は、被介護者に接近して移乗作業を行うことができるため、移乗中に被介護者が保持具3から転落する可能性がある場合に、その対応を迅速かつ確実に行うことができ、安全性の向上にも繋がる。
【0037】
なお、上述のように、操作部5を相対移動させただけの場合、操作部5を基準にした操作方向と、台車部1を基準にした操作方向と、が相違する。例えば、図5に示すように、操作方向(2)がロボットアーム2の上昇動作とし、操作方向(4)がロボットアーム2の下降動作とすると、操作部5が右側にある場合と左側にある場合とで、台車部1を基準としたときの操作方向が異なり、誤操作の原因となる。
【0038】
そこで、本実施形態1に係るロボット装置10において、制御装置4は、台車部1に対する操作部5の相対位置を示す、角度センサ16からのハンドルアーム15の揺動角度に応じて、操作部5からの操作信号に基づいたロボットアーム2の操作方向を、台車部1を基準に変更する。
【0039】
より具体的には、制御装置4は、角度センサ16からのハンドルアーム15の揺動角度に基づいて、操作部5が台車部1の右側にあると判断すると、ジョイスティック5aの操作方向(1)に応じた操作信号をロボットアーム2の左動作とし、ジョイスティック5aの操作方向(2)に応じた操作信号をロボットアーム2の上昇動作とし、ジョイスティック5aの操作方向(3)に応じた操作信号をロボットアーム2の右動作とし、ジョイスティック5aの操作方向(4)に応じた操作信号をロボットアーム2の下降動作とする。
【0040】
一方、制御装置4は、角度センサ16からのハンドルアーム15の揺動角度に基づいて、操作部5が台車部1の左側にあると判断すると、ジョイスティック5aの操作方向(1)に応じた操作信号をロボットアーム2の上昇動作とし、ジョイスティック5aの操作方向(2)に応じた操作信号をロボットアーム2の右動作とし、ジョイスティック5aの操作方向(3)に応じた操作信号をロボットアーム2の下降動作とし、ジョイスティック5aの操作方向(4)に応じた操作信号をロボットアーム2の左動作とする。
【0041】
このようにして、介護者は、常時、台車部1を基準とした操作方向で操作することができ、操作方向を認識し易いため、誤操作及び作業効率の低下を防止することができる。なお、上記操作方向の設定は一例であり、任意に設定することができる。
【0042】
図6は、本実施形態1に係るロボット装置の制御処理フローの一例を示すフローチャートである。例えば、介護者が操作部5を操作性の良い方向へ揺動させると、制御装置4は、角度センサ16からのハンドルアーム15の揺動角度に基づいて、操作部5が台車部1の右側又は左側にあるかを判断する(ステップS101)。
【0043】
制御装置4は、操作部5が台車部1の右側にあると判断すると、操作方向に応じた操作信号の設定を変更しない(ステップS102)。一方で、制御装置4は、操作部5が台車部1の左側にあると判断すると、操作方向に応じた操作信号の設定を変更する(ステップS103)。
【0044】
なお、この設定変更において、上述したように、操作部5が台車部1の右側にあるときと左側にあるときとで、台車部1を基準にした操作部5のジョイスティック5aの操作方向に対するロボットアーム2の移動方向が同一となるように、設定の変更を行う。また、制御装置4は、操作部5が台車部1の右側にある場合、操作方向に応じた操作信号の設定を変更し、操作部5が台車部1の左側にある場合、操作方向に応じた操作信号の設定を変更しなくてもよい。
【0045】
次に、制御装置4は、操作部5からの操作信号と、各回転センサ51、52、53からの角度信号と、に基づいて、第1乃至第3関節部41、42、43の回転角度が操作信号に応じた目標角度となるように、第1乃至第3モータ31、32、33をフィードバック制御して、ロボットアーム2の駆動を制御する(ステップS104)。
【0046】
以上、本実施形態1に係るロボット装置10において、操作部5は、台車部1の左側又は右側へ相対移動できるように、台車部1中央の支持部14を中心にして、左右方向へ揺動するハンドルアーム15に取付けられている。これにより、介護者は、操作部5を、その操作や視界が良好となる台車部1の左側又は右側へ適宜移動させることができ、操作性を向上させることができる。
【0047】
また、制御装置4は、操作部5が台車部1の右側にあるときと左側にあるときとで、台車部1を基準にした操作部5のジョイスティック5aの操作方向に対するロボットアーム2の移動方向が同一となるように、設定の変更を行う。これにより、介護者は、常時、台車部1を基準とした操作方向で操作することができるため、誤操作及び作業効率の低下を防止することができる。
【0048】
本発明の実施形態2
本発明の実施形態2に係るロボット装置10において、制御装置4は、台車部1に対する操作部5の相対位置を示す、角度センサ16からのハンドルアーム15の揺動角度に応じて、ロボットアーム2及び/又は台車部1の動作を制限してもよい。
【0049】
例えば、図2に示すように、介護者が操作部5を台車部1の左側又は右側へ移動させた場合、介護者は被介護者に接近して、台車部1の側方からその保持状態等を十分に確認してロボットアーム2のみを操作することが推定される。そこで、制御装置4は、角度センサ16からのハンドルアーム15の揺動角度に基づいて、(a)操作部5の相対位置が台車部1の左側又は右側にあると判断した場合、ロボットアーム2に対する操作を有効にし、台車部1に対する操作を無効にする。
【0050】
このとき、介護者が操作部5においてロボットアーム2に対する操作を行った場合、制御装置4は、操作部5からの操作信号に応じて第1乃至第3モータ31、32、33を制御して、そのロボットアーム2の制御を実行する。一方、介護者が操作部5において台車部1に対する操作を行った場合、制御装置4は、操作部5からの操作信号に応じて、台車部1の制御の実行を停止する。
【0051】
また、図7に示すように、介護者が操作部5を台車部1の中央へ移動させた場合、介護者は台車部1を操作し易いその中央で、台車部1のみを操作することが推定される。そこで、制御装置4は、角度センサ16からのハンドルアーム15の揺動角度に基づいて、(b)操作部5の相対位置が台車部1の中央にあると判断した場合、ロボットアーム2に対する操作を無効にし、台車部1に対する操作を有効にする。
【0052】
このとき、介護者が操作部5においてロボットアーム2に対する操作を行った場合、制御装置4は、操作部5からの操作信号に応じて、ロボットアーム2の制御の実行を停止する。一方、介護者が操作部5において台車部1に対する操作を行った場合、制御装置4は、操作部5からの操作信号に応じて第4モータ34L、34Rを制御して、その台車部1の制御を実行する。
【0053】
以上、本実施形態2に係るロボット装置10によれば、操作部5の相対位置に基づいて、介護者の行う適正な操作を推定し、その操作のみを実行可能とすることで、誤操作を低減することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態において、台車部1の左右方向にスライダ部62が取付けられていてもよい(図8)。操作部61は、スライダ部62上をその長手方向に沿って左右方向へスライドすることができる。これにより、介護者は、操作部61を、操作性の良好となる台車部1の右側又は左側へ容易に移動させ、操作を行うことができる。なお、上記操作部5、61の移動機構は一例であり、操作部5、61を台車部1の右側及び左側へ相対移動させることができれば、任意の移動機構が適用可能である。
【0056】
また、上記実施形態において、制御装置4と、台車部1から分離した操作部71と、を配線72又は無線(ブルートゥース、赤外線等)で接続してもよい(図9)。これにより、介護者は、操作部71を、操作性の良好となる台車部1の右側、左側、前側、又は後側へ容易に移動させ、操作を行うことができる。
【0057】
さらに、上記実施形態において、制御装置4は、操作部5が台車部1の右側にあるときと左側にあるときとで、台車部1を基準にした操作部5のジョイスティック5aの操作方向に対する台車部1の移動方向が同一となるように、設定の変更を行ってもよい。
【0058】
より具体的には、制御装置4は、角度センサ16からのハンドルアーム15の揺動角度に基づいて、操作部5が台車部1の右側にあると判断すると、ジョイスティック5aの操作方向(1)に応じた操作信号を台車部1の左旋回とし、ジョイスティック5aの操作方向(2)に応じた操作信号を台車部1の後進とし、ジョイスティック5aの操作方向(3)に応じた操作信号を台車部1の右旋回とし、ジョイスティック5aの操作方向(4)に応じた操作信号を台車部1の前進とする。
【0059】
一方、制御装置4は、角度センサ16からのハンドルアーム15の揺動角度に基づいて、操作部5が台車部1の左側にあると判断すると、ジョイスティック5aの操作方向(1)に応じた操作信号を台車部1の後進とし、ジョイスティック5aの操作方向(2)に応じた操作信号を台車部1の右旋回とし、ジョイスティック5aの操作方向(3)に応じた操作信号を台車部1の前進とし、ジョイスティック5aの操作方向(4)に応じた操作信号を台車部1の左旋回とする。
【0060】
さらにまた、上記実施形態において、制御装置4は、角度センサ16を用いて台車部1に対する操作部5の相対位置を検出しているが、これに限らず、例えば、カメラ、超音波センサ、レーダセンサなどの距離センサ、GPS装置等を用いてもよく、任意の位置検出センサを用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 台車部
2 ロボットアーム
3 保持具
4 制御装置
5 操作部
10 ロボット装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な台車部と、
前記台車部に回動可能に連結されたロボットアームと、
前記ロボットアーム及び/又は台車部を操作するための操作情報を入力する操作手段と、
前記操作手段を前記台車部に相対移動が可能となるように接続する接続手段と、
前記操作手段の相対位置を検出する位置検出手段と、
前記台車部に設けられ、前記操作手段からの操作情報と、前記位置検出手段により検出された前記操作手段の相対位置と、に基づいて、前記ロボットアーム及び/又は台車部の駆動を制御する制御手段と、
を備える、ことを特徴とするロボット装置。
【請求項2】
請求項1記載のロボット装置であって、
前記接続手段は、前記操作手段が前記台車部の左右側へ相対移動できるように、前記操作手段と前記台車部とを接続する、ことを特徴とするロボット装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のロボット装置であって、
前記制御手段は、前記操作部が前記台車部の右側にあるときと左側にあるときとで、前記台車部を基準とした前記操作部の操作方向に対する前記ロボットアーム及び/又は台車部の移動方向が同一となるように設定変更を行う、ことを特徴とするロボット装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載のロボット装置であって、
前記制御手段は、前記位置検出手段により検出された前記操作手段の相対位置に応じて、前記ロボットアーム又は台車部の動作を制限する、ことを特徴とするロボット装置。
【請求項5】
請求項4記載のロボット装置であって、
前記制御手段は、
(a)前記位置検出手段により検出された前記操作手段の相対位置が前記台車部の左側又は右側である場合、前記ロボットアームに対する操作を有効にし、前記台車部に対する操作を無効にし、
(b)前記位置検出手段により検出された前記操作手段の相対位置が前記台車部の中央にある場合、前記ロボットアームに対する操作を無効にし、前記台車部に対する操作を有効にする、ことを特徴とするロボット装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1項記載のロボット装置であって、
前記接続手段は、前記台車部の中央に立設された支持部と、一端が前記支持部に左右方向へ揺動可能に連結され、他端に前記操作手段が取付けられたハンドルアームと、を有する、ことを特徴とするロボット装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のうちいずれか1項記載のロボット装置であって、
前記接続手段は、前記台車部に左右方向に取付けられ、前記操作手段がその長手方向に沿ってスライドするスライダ部を有する、ことを特徴とするロボット装置。
【請求項8】
請求項1乃至5のうちいずれか1項記載のロボット装置であって、
前記接続手段は、前記台車部の制御手段と、前記台車部から分離した前記操作手段と、を無線又は有線で接続する、ことを特徴とするロボット装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちいずれか1項記載のロボット装置であって、
前記台車部の車輪を駆動する車輪駆動部と、
前記ロボットアームの関節部を回転駆動するアーム駆動部と、
前記ロボットアームの先端に取付けられ、人を保持するための保持具と、
を更に備える、ことを特徴とするロボット装置。
【請求項10】
移動可能な台車部と、
前記台車部に回動可能に連結されたロボットアームと、
前記ロボットアーム及び/又は台車部を操作するための操作情報を入力する操作手段と、
を備えるロボット装置の制御方法であって、
前記操作手段を前記台車部に対して相対移動させたときの前記操作手段の相対位置を検出する工程と、
前記入力された操作情報と、前記検出された前記操作手段の相対位置と、に基づいて、前記ロボットアーム及び/又は台車部の駆動を制御する工程と、
を含む、ことを特徴とするロボット装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−104663(P2011−104663A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258857(P2009−258857)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】