説明

ロボフルーツ含有サポニンとその用途

【課題】本発明は、ロボフルーツ抽出物が含む有効成分の特定および概抽出物に含まれる成分の新規用途の開発を課題とする。
【解決手段】本発明によれば、ロボフルーツを水または含水低級アルコールで抽出したサポニン含有抽出物もしくはその濃縮物または該サポニン含有精製画分を有効成分として含み、血糖値上昇抑制、胃粘膜保護またはアレルギー抑制に用いられ得る医薬組成物が提供される。また、該組成物が含有される健康食品が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナス科(Solanaceae)植物であるロベイラ(Solanum lycocarpum)の果実;ロボフルーツが含有するサポニンを有効成分とする組成物に関する。
より具体的には、本発明は、有効成分としてロボフルーツ抽出物および該抽出物に含まれるサポニンの血糖値抑制効果、胃粘膜保護およびアレルギー抑制用組成物ならびにそれらの有効成分を含む健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
我々は日常の食事において、主食あるいは副食として多くの炭水化物(例えばデンプンやショ糖など)を摂取している。摂取された炭水化物は、体内の酵素(例えばα-グルコシダーゼなど)により代謝され、単糖に分解された後、消化管から吸収される。
【0003】
炭水化物の摂取量が増加すると、消化管から吸収され、血液中に移行する単糖の量も増加して高血糖となる。この高血糖が日常的に持続することにより、通常、肥満を経て糖尿病に罹患し、さらに場合によっては、糖尿病の悪化により合併症などの重大な疾病をもたらすことがある。
【0004】
糖尿病による三大合併症として、通常、網膜症、神経障害および腎症があり、成人における失明の大部分が、糖尿病による網膜症に基づくと言われている。また、上記の三大合併症意外にも合併症として脳卒中や動脈硬化などの血管系疾患および高血圧症も知られている。
【0005】
この糖尿病は、近年の食生活の欧米化、すなわち、高カロリー食の摂取および過食ならびに交通手段および交通機関の発達による生活習慣の変化、すなわち運動不足などが原因となり、成人のみならず若年にとっても増加する傾向にあり、現代病としてまた生活習慣病として大きな問題になっている。
【0006】
現在、糖尿病の治療に用いられる医薬品としては、主に、膵インシュリン分泌促進作用を有するスルホニル尿素剤;肝の糖新生の抑制と末梢の筋肉、脂肪組織でのインシュリン感受性の亢進作用を有するビグアナイド系薬剤;消化管粘膜に存在し、デンプンやショ糖からブドウ糖を生成するα-グルコシターゼ(二糖類加水分解酵素)を阻害して血糖値上昇を抑制するα-グルコシダーゼ阻害剤(例えばアカルボースおよびボグリボース)等があり、経口投与用の糖尿病治療剤として広く使用されている。
【0007】
しかしながら、上記の糖尿病治療剤は、一般に合成品であり、近年、胃腸障害、乳酸アシドーシスまたは重篤な肝障害の発生などが報告されており、その使用にあたっては医師の厳格な指導・管理が必要である。一方で、これらの副作用低減を目的とするアルドース還元酵素阻害剤(例えばエパルタット)等も広く使用されている。
【0008】
そこで、最近、副作用が少ない天然素材が注目され、健康食品としても種々上市されており、そのなかに抗糖尿病効果を標榜したものも多数認められるが、有効性に疑問のあるものが多く、具体的に効果が証明されたものがほとんどないのが実情である。
【0009】
ロベイラはナス科植物であり、ブラジルのセラード地帯やサンパウロ州に分布しており、従来、その果実は小鳥、げっ歯類、その他の小型または中型哺乳類の食用源となっている。
該果実は、ブラジルに生息しているロボ狼が好んで食していることからロボフルーツと称されているが、一方で、ブラジルの糖尿病、肥満およびコレステロール値の低下用民間薬としても使用されてきた。
【0010】
上記の作用に関するロボフルーツの活性成分は、ペクチン、ロボフルーツの粘液質およびデンプンを含む多糖であることが報告されている(非特許文献1)。
また、一方で近年、ロボフルーツから抽出したアルカロイド画分が抗炎症作用を有することも報告されている(非特許文献2)。
【0011】
【非特許文献1】Rodrigo Dall'Agnolら、Jouranl of Ethnopharmacology、71 (2000)、第337-341頁
【非特許文献2】G. Vieira Jr.ら、Phytotherapy Research、17、第892-896頁(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明は、ロボフルーツ抽出物が含む有効成分の特定および該抽出物に含まれる成分の新規用途の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、ナス科植物ロベイラの乾燥した果実、乾燥ロボフルーツの水または含水低級アルコール抽出物に含まれる生理活性物質について鋭意研究を行った結果、新規物質を含むサポニンが含有されることを見出した。さらに、本発明者は、該サポニン含有抽出物、該サポニン含有精製画分および該サポニンが、意外にも、血糖値上昇抑制、胃粘膜保護および抗アレルギー作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明によれば、ロボフルーツを水または含水低級アルコールで抽出したサポニン含有抽出物もしくはその濃縮物または該サポニン含有精製画分を有効成分として含む医薬組成物が提供される。
より具体的には、本発明によれば、ロボフルーツが含有する、一般式(I):
【0015】
【化1】

[式中、Rはα-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[α-L-ラムノピラノシル-(1→4)]-D-グルコピラノシル基か、またはα-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[β-D-グルコピラノシル-(1→3)]-D-ガラクピラノシル基であり、Xは水素原子、α-ヒドロキシ基またはβ-ヒドロキシ基である]
で表されるサポニンを有効成分として含む医薬組成物が提供される。
【0016】
さらに、より具体的には、本発明によれば、一般式(II):
【化2】

[式中、Rは、α-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[α-L-ラムノピラノシル-(1→4)]-D-グルコピラノシル基か、またはα-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[β-D-グルコピラノシル-(1→3)]-D-ガラクピラノシル基である]
で表される新規サポニンが提供される。
【0017】
また、上記医薬組成物は、血糖値上昇抑制、胃粘膜保護および抗アレルギー作用を有することが判明したので、これらの作用を意図する医薬組成物ならびに該組成物が添加されてなる健康食品が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロボフルーツを水または含水低級アルコールで抽出したサポニン含有抽出物もしくはその濃縮物または該サポニン含有精製画分を有効成分として含み、安全に使用できる医薬組成物が提供される。また、該組成物が血糖値上昇抑制、胃粘膜保護またはアレルギー抑制に用いられる健康食品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明による、血糖値上昇抑制、胃粘膜保護またはアレルギー抑制に用いることができる医薬組成物は、ロボフルーツに含有されるサポニンを有効成分として含むことを特徴とする。
本発明による医薬組成物は、乾燥ロボフルーツを水または含水低級アルコールで抽出したサポニン含有抽出物もしくはその濃縮物、またはこの濃縮物をカラムクロマトグラフィーやHPLCのような各種従来技術を組合せて精製した該サポニン含有精製画分、あるいは単離した1以上のサポニンを有効成分として含むことができる。
したがって、本発明におけるサポニン含有精製画分とは、1以上のサポニンを含む精製画分も意味する。
【0020】
本発明で抽出溶媒として用いられる含水低級アルコールとしては、炭素数1〜4のアルコール類が挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノールもしくはこれらの混液またはこれらの50容量%程度までの水を含有する水性アルコール等が挙げられるが、特に低級アルコールの含水率は限定されるものではない。なかでも、メタノールまたはエタノールが特に好ましい。
これらの抽出溶媒は、抽出材料に対して、1〜50倍(容量)程度、好ましくは2〜10倍(容量)程度用いられる。
【0021】
なお、抽出は、熱時または室温で行うことができ、抽出温度は、室温と溶媒の沸点の間で任意に設定できる。熱時抽出の場合、例えば、50℃〜抽出溶媒の沸点の温度で、振盪もしくは撹拌下または非振盪下もしくは還流下に、ブラジル産の粉砕または破砕した乾燥ロボフルーツを上記の抽出溶媒に浸漬することによって行うのが適当である。
抽出材料を振盪下に浸漬する場合には、30分間〜5時間程度行うのが適当であり、非振盪下に浸漬する場合には、1時間〜20日間程度行うのが適当である。
また、抽出溶媒の還流下に抽出する場合には、30分〜数時間加熱還流するのが好ましい。
【0022】
さらに、50℃より低い温度で浸漬して抽出することも可能であるが、その場合には、上記の時間よりも長時間浸漬するのが好ましい。抽出操作は、同一材料について1回だけ行ってもよいが、複数回、例えば、2〜5回程度繰り返すのが抽出効率の点から好ましい。
【0023】
抽出後に、固形物をろ別して得られる抽出物は、常法により濃縮して濃縮物(抽出エキス)としてもよい。濃縮は、減圧下に行うのが好ましい。濃縮は抽出液が乾固するまで行ってもよい。
抽出物は、そのまま本発明の組成物を調製するのに用いてもよいが、粉末状または凍結乾燥品等として用いてもよい。これらの固形物とする方法は、当該分野で公知の方法を採用することができる。
【0024】
したがって、本発明における抽出物とは抽出液を意味し、濃縮物とは該抽出液を濃縮した抽出エキス、濃縮乾固物または凍結乾燥物のいずれも意味する。
【0025】
なお、上記の水または含水低級アルコール抽出物およびその濃縮物は、濃縮する前後に精製処理に付すことができる。
精製処理には、当業者に公知のクロマトグラフ法、イオン交換クロマトグラフ法等を単独で、または組み合わせて採用することができる。例えば、クロマトグラフ法としては、順相もしくは逆相担体またはイオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーまたは遠心液体クロマトグラフィー等のいずれか、またはそれらを組み合わせて行う方法が挙げられる。この際の担体、溶出溶媒等の精製条件は、各種クロマトグラフィーおよび使用する担体に対応して適宜選択することができる。
【0026】
本発明者は、ロボフルーツの水または含水低級アルコール抽出物を上記の精製方法を組み合わせて精製し、該アルコール可溶性抽出物の含有成分について検討した。
したがって、本願発明における精製画分とは、抽出エキスを上記の精製方法を単独でまたは組合せて、本発明によるサポニン含有抽出物またはその濃縮物を分離精製し、単離したサポニンもしくはサポニンの混合物またはこれらを含むクロマトグラフィーの溶出画分あるいはその濃縮物のいずれも意味するが、本発明によるサポニン含有抽出物は、精製せずにそのまま用いることもでき、本発明の一部を構成している。
【0027】
本発明者は、乾燥ロボフルーツを水または含水低級アルコールで抽出して抽出物を得、この抽出物を減圧下に濃縮して、濃縮物を得た。
【0028】
ここに得られた濃縮物を、ダイヤイオン(登録商標)HP-20を担体とするクロマトグラフィー、シリカゲルクロマトグラフィー、逆相シリカクロマトグラフィーおよび/またはODSカラムを用いたHPLCによる精製を組合せ、含有成分の単離を行った。
【0029】
その結果、本発明者は、既知サポニン化合物としてソルマルジン(化合物(III))、ソラソニン(化合物(IV))および12-ヒドロキシソラソニン(化合物(VII))を得た。
本発明者は、さらに、ソルマルジンの12-α-ヒドロキシ体(化合物(V))およびソラソニンの12-α-ヒドロキシ体(化合物(VI))を新規サポニン化合物として見出した。
【0030】
すなわち、本発明によれば、次の、一般式(I):
【化3】

[式中、Rはα-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[α-L-ラムノピラノシル-(1→4)]-D-グルコピラノシル基か、またはα-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[β-D-グルコピラノシル-(1→3)]-D-ガラクピラノシル基であり、Xは水素原子、α-ヒドロキシ基またはβ-ヒドロキシ基である]
で表されるサポニンを有効成分とする医薬組成物が提供される。
【0031】
より具体的には、本発明は、式(III):
【化4】

で表される化合物(III)、式(IV):
【0032】
【化5】

で表される化合物(IV)、式(V):
【0033】
【化6】

で表される新規サポニンである化合物(V)、式(VI):
【0034】
【化7】

で表される新規サポニンである化合物(VI)、および式(VII):
【0035】
【化8】

で表される化合物(VII)からなるサポニン群から選択される少なくとも1以上のサポニンを有効成分として含む医薬組成物が提供される。
【0036】
すなわち、本発明者は、上記の化合物(III)〜(VII)の少なくとも一つおよび/または上記の化合物の含有画分が、いずれも血糖値上昇抑制に対して強い活性を有することを見出し、本発明を完成した。
したがって、本発明によれば、ロボフルーツに含まれるサポニンの少なくとも一つを有効成分として含む血糖値上昇抑制用組成物が提供される。
【0037】
また、本発明者は、上記の化合物(III)〜(VII)の少なくとも一つおよび/または上記の化合物の含有画分が、いずれも胃粘膜保護に対して強い活性を有することを見出し、本発明を完成した。
したがって、本発明によれば、ロボフルーツに含まれるサポニンの少なくとも一つを有効成分として含む胃粘膜保護用組成物が提供される。
【0038】
さらに、本発明者は、上記の化合物(III)〜(VII)の少なくとも一つおよび/または上記の化合物の含有画分が、いずれもアレルギー抑制に対して強い活性を有することを見出し、本発明を完成した。
したがって、本発明によれば、ロボフルーツに含まれるサポニンの少なくとも一つを有効成分として含むアレルギー抑制用組成物が提供される。
すなわち、本発明によれば、現代病として代表的な糖尿病、胃障害およびアレルギーなどの予防または治療を意図した医薬組成物が提供される。
その上、本発明によれば、該組成物を含む健康食品が提供される。
【0039】
本発明のロボフルーツを水または含水低級アルコールで抽出したサポニン含有抽出物、その濃縮物または該サポニン含有精製画分は、そのままの状態、または適当な媒体で希釈して、あるいは医薬品の製造分野において公知の方法により、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤または液剤等、種々の医薬品の形態に製剤化して使用することができる。
【0040】
これらの医薬品形態においては、適当な媒体を添加してもよい。そのような媒体としては、医薬的に許容される賦形剤、例えば結合剤(例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガントまたはポリビニルピロリドン)、充填剤(例えば乳糖、砂糖、トウモロコシ澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシン)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはポリエチレングリコール)、崩壊剤(例えば馬鈴薯澱粉)または湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)等が挙げられる。
【0041】
錠剤は、通常の方法でコーティングしてもよい。液体製剤は、例えば水性または油性の懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップまたはエリキシルの形態であってもよく、使用前に水または他の適切な賦形剤で再生する乾燥製品として提供してもよい。
【0042】
こうした液体製剤は、通常の添加剤、例えば懸濁化剤(例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン水添加食用脂)、乳化剤(例えばレシチン、ソルビタンモノオレエートまたはアラビアゴム)、(食用脂を含んでいてもよい)非水性賦形剤(例えばアーモンド油、分画ココヤシ油またはグリセリン、プロピレングリコールまたはエチルアルコールのような油性エステル)、保存剤(例えばp-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピル、またはソルビン酸)、および所望により着色剤または香料等を含んでいてもよい。
【0043】
また、本発明による組成物を有効成分として食品に添加したものを健康食品として利用することができる。
【0044】
健康食品とは、通常の食品よりも積極的な意味で保健、健康維持・増進等を目的とした食品を意味し、例えば、固形、半固形または液体の製品、具体的には、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤または液剤等のほか、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、お茶類、栄養飲料、スープ等の形態が挙げられる。
これらの食品の製造工程において、あるいは最終製品に、上記の抽出物を添加して、健康食品とすることができる。
【0045】
本発明による、ロボフルーツを水または含水低級アルコールで抽出したサポニン含有抽出物もしくはその濃縮物または該サポニン含有精製画分を有効成分として含む医薬組成物の使用量は、年齢、症状等によって異なるが、例えば該抽出物の濃縮乾固物を予防・治療に用いる場合には、成人1回につき0.1〜10g程度、好ましくは0.3〜2g程度使用できる。また、健康食品として使用する場合には、食品の味や外観に悪影響を及ぼさない量、例えば、対象となる食品1kgに対し上記乾固物を、0.1〜10g程度の範囲で用いることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明のロボフルーツの抽出物、化合物(III)〜(VII)の精製法およびそれらの作用に関する実施例を具体的に説明するが、以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何等制限するものではない。
【0047】
なお、実施例では、特に記載がない限り、以下の各種溶媒、クロマトグラフィー用担体およびHPLC用カラムを用いた:
Wistar系雄性ラット:紀和実験動物研究所(和歌山)
Sprague-Dowley系雄性ラット:紀和実験動物研究所(和歌山)
ddYマウス:紀和実験動物研究所(和歌山)
メタノール(MeOH):ナカライテスク社製、特級
エタノール(EtOH):ナカライテスク社製、特級
クロロホルム:ナカライテスク社製、特級
抗DNP IgE抗体:シグマ社Clone SPE-7
ジニトロフェニル化牛血清アルブミン:T. Tadaら、J. Immunol、106、第1002〜1011頁(1971)に記載の方法に従って調製した。
【0048】
カラムクロマトグラフィー用シリカゲル (SiO2):富士シリシア社製、BW-200、150〜350メッシュ
カラムクロマトグラフィー用ODSシリカゲル:富士シリシア社製、Chromatorex ODS DM1020T、100〜200メッシュ。
HPLC用ODSカラム:YMC社製、YMC-Pack ODS-A (250×20mm)
核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定装置:JEOL(JNM-LA 500)
【0049】
また、核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、化学シフトδは百万分の一 (ppm)で表示し、略語はそれぞれ次の意味を有する:s:シングレット; d:ダブレット;dd:ダブルダブレット;t:トリプレット; q:クァルテット;dq:ダブルクァルテット;Ac;アセチル基;Glc:グルコピラノシル基;Rha:ラムノピラノシル基。
【0050】
実施例1
乾燥ロボフルーツ抽出物の調製および該抽出物の精製
例えば、メタノールを用いて、乾燥ロボフルーツ抽出物を調製し、該抽出物を精製した例を表1に示し、以下の手順で行った。
【0051】
【表1】

ブラジル産の乾燥ロボフルーツ(8.7 kg)をMeOH(5 L)で熱時3時間抽出した。抽出液を濾過し、得られた残査に対して、同様の抽出操作を計3回行った。MeOH抽出液を合わせて減圧下溶媒留去し、MeOH抽出エキス(1203 g、収率13.8 %)を得た。得られたMeOH抽出エキスのうち380 gをHP-20 カラムクロマトグラフィー(ダイヤイオン(登録商標)HP-20;3.0 kg、溶出溶媒;H2O → MeOH → アセトン)に付し、各溶出部を減圧下溶媒留去することにより、アセトン溶出部(12.0 g, 0.437 %)、MeOH溶出部(85.0 g, 3.08 %)およびH2O溶出部(275 g, 10.01 %)を得た。
【0052】
得られたMeOH溶出部のうち70.0 gを、順相カラムクロマトグラフィー[シリカゲル;2.1 kg、溶出溶媒;CHCl3 : MeOH:H2O = (40:10:1) → (30:10:1) → (6:4:1) → MeOH]で精製して、フラクション(Fr.) 1 (2.0 g)、Fr. 2 (1.8 g)、Fr. 3 (2.2 g)、Fr. 4 (1.0 g)、Fr. 5 (0.2 g)、Fr. 6 (1.6 g)、Fr. 7 (1.6g)、Fr. 8 (13.0g)、Fr. 9 (18.0 g)、Fr. 10 (28.0 g)およびFr. 11 (2.0 g)の各画分を得た。Fr. 1、Fr. 2 (3.8 g)を、逆相カラムクロマトグラフィー[ODS;100 g、溶出溶媒;MeOH:H2O = (50:50) → (70:30) → (90:10) → MeOH]で精製して、Fr.1-1 (300mg)、Fr.1-2 (500mg)、Fr.1-3 (720mg)、Fr.1-4 (γ-リノレン酸;500mg、0.022%)、Fr.1-5 (1.04 g)、Fr.1-6 (リノール酸;500mg、0.022%) およびFr.1-7 (220 mg)の各画分を得た。
【0053】
次いで、Fr. 8 (2.0g)を逆相カラムクロマトグラフィー[ODS;60 g、溶出溶媒;MeOH:H2O = (50:50) → MeOH]で精製して、Fr.8-1 (0.98g)、Fr.8-2 (化合物(III);1.02g、0.308%)の各画分を得た。
【0054】
また、Fr. 9(2.0g)を逆相カラムクロマトグラフィー[ODS;60 g、溶出溶媒;MeOH:H2O = (30:70) → (50:50) → (70:30) → MeOH]で精製して、Fr.9-1 (980mg)、Fr.9-2 (60mg)、Fr.9-3 (10mg)、Fr.9-4 (化合物(IV);550mg、0.218%)、Fr.9-5 (30mg)、Fr.9-6 (化合物(III);330mg、0.130%)およびFr.9-7 (20 mg)の各画分を得た。さらに、Fr9-5 (30mg)をHPLC [カラム:YMC-Pack ODS-A、移動層;MeOH:H2O = (60:40)、流速:9.0 ml/分]で精製して、化合物(IV) (5 mg、0.0019 %)および新規化合物(V) (5 mg、0.0019 %)を単離した。
【0055】
さらに、Fr. 10(3.0g)を逆相カラムクロマトグラフィー[ODS;60 g、溶出溶媒;MeOH:H2O = (30:70) → (60:40) → MeOH]に付し、Fr.10-1 (1520mg)、Fr.9-2 (220mg)、Fr.10-3 (200mg)、Fr.10-4 (化合物(IV);980mg、0.402%)の各画分を得た。ここで得られたFr10-3 (200mg)をHPLC [カラム:YMC-Pack ODS-A、移動層;MeOH:H2O = (60:40)、流速:9.0 ml/分]を用いて分離精製し、化合物(IV) (91 mg、0.037 %)および新規化合物(V) (15 mg、0.006 %)を単離した。
【0056】
次いで、Fr. 11(2.0g)を逆相カラムクロマトグラフィー[ODS 60 g、溶出溶媒;MeOH:H2O = (10:90) → (30:70) → (50:50) → MeOH]に付し、Fr.11-1 (1100mg)、Fr.11-2 (220mg)、Fr.11-3 (100mg)、Fr.11-4 (130mg)、Fr11-5 (化合物(IV);300mg、0.0133%)、Fr11-6 (160mg)の各画分を得た。さらに、Fr11-4 (130mg) をHPLC [カラム:YMC-Pack ODS-A、溶出溶媒;MeOH:H2O = (30:70)、流速:9.0ml/分]を用いて分離精製し、化合物(VII) (20 mg、0.00098 %)および新規化合物(VI) (12 mg、0.00062 %)を単離した。
【0057】
既知化合物であるリノール酸、γ-リノレン酸、化合物(III)、化合物(IV)および化合物(VII)については、文献値との1H-NMR及び13C-NMRスペクトルデータの比較により同定した。
【0058】
また、前記の新規化合物(V)および(VI)の構造における絶対配置は、炭素-炭素原子間または炭素-水素原子間の相関関係などをHMBC、DQFおよびNOEなどの種々のNMR測定結果に基づき決定した。さらに、配糖体部分を構成する糖は、酸加水分解後にHPLCにより同定した。
【0059】
以下に、新規化合物(V)および(VI)について得られた各種物理データを示す。
化合物(V) (ロベノサイドA)
白色粉末
[α]D29 -112.20° (c = 1.0、ピリジン)
高分解能陽イオンFAB-MS:計算値(C50H82O22)Na (M+Na)+:906.4828
実測値:906.4824
【0060】
IR (KBr、cm-1):3450, 2941, 1626, 1470, 1280, 980
1H-NMR (500 MHz、ピリジン-d5、δ(ppm)):0.82 (3H, d, J = 5.2 Hz, H-27), 0.99 (3H, s, H-18), 1.01 (3H, s, H-19), 1.18 (3H, d, J = 7.2 Hz, H-21), 3.98 (1H, brs, H-12), 5.34 (1H, d, J = 7.3 Hz, H-6), [4.93 (1H, d, J = 7.2 Hz, H-1')], [1.64 (3H, d, J = 6.0 Hz, H3-6''), 5.86 (1H, br s, H-1'') ], および[1.64 (3H, d, J = 6.0 Hz, H3-6'''), 6.40 (1H, br s, H-1''')]
【0061】
13C-NMR (125 MHz、ピリジン-d5、δC(ppm)) :37.4(C-1), 30.2(C-2), 78.1(C-3), 39.0(C-4), 140.9(C-5), 122.0(C-6), 32.4(C-7), 32.0(C-8), 44.5 (C-9), 37.0(C-10), 29.4(C-11), 71.4(C-12), 45.3(C-13), 48.2(C-14), 32.7(C-15), 79.2(C-16), 54.2(C-17), 17.3(C-18), 19.3(C-19), 42.0(C-20), 15.6(C-21), 98.5(C-22), 34.5(C-23), 30.8 (C-24), 31.3(C-25), 47.9(C-26), 19.7(C-27), 100.2(C-1'), 78.0(C-2'), 77.8(C-3'), 78.6(C-4'), 76.9(C-5'), 61.3(C-6'), 103.0(C-1''), 72.6(C-2''), 72.7(C-3''), 73.9(C-4''), 70.4(C-5''), 18.5(C-6''), (102.0(C-1'''), 72.6(C-2'''), 72.8(C-3'''), 74.2(C-4'''), 69.5(C-5'''), 18.7(C-6''')
陰イオンFAB-MS (m/z):882 (M-H)-
陽イオンFAB-MS (m/z):906 (M+Na)+
【0062】
化合物(VI) (ロベノサイドB)
白色粉末
[α]D29 -22.20° (c = 1.0、ピリジン).
高分解能陽イオンFAB-MS:計算値(C50H82O22)Na (M+Na)+:899.4783
実測地:899.4777
【0063】
IR (KBr, cm-1):3450, 2938, 1622, 1458, 1300, 980
1H-NMR (500 MHz、ピリジン-d5、δ(ppm)) :0.82 (3H, d, J = 5.2 Hz, H-27), 0.99 (3H, s, H-18), 1.01 (3H, s, H-19), 1.18 (3H, d, J = 7.2 Hz, H-21), 3.98 (1H, brs, H-12), 5.34 (1H, d, J = 7.3 Hz, H-6), [4.93 (1H, d, J = 7.2 Hz, H-1')], 5.12 (1H, br s, H-1''),および[1.65 (3H, d, J = 6.0 Hz, H3-6'''), 6.20 (1H, br s, H-1''')]
【0064】
13C-NMR (125 MHz、ピリジン-d5、δc(ppm)) :37.5(C-1), 30.2(C-2), 77.7(C-3), 39.0(C-4), 141.2(C-5), 121.9(C-6), 32.5(C-7), 32.1(C-8), 44.5 (C-9), 37.0 (C-10), 29.4(C-11), 71.7(C-12), 45.3 (C-13), 48.2 (C-14), 32.7 (C-15), 78.8 (C-16), 54.2(C-17), 17.3(C-18), 19.3(C-19), 42.0(C-20), 15.5(C-21), 98.2(C-22), 34.5(C-23), 30.8 (C-24), 31.3(C-25), 48.0(C-26), 19.6(C-27), 100.5(C-1'), 76.3(C-2'), 70.3(C-4'), 85.0(C-3'), 75.0(C-5'), 62.5(C-6'), 105.7(C-1''), 75.0(C-2''), 78.5 (C-3''), 71.6(C-4''), 78.3(C-5''), 62.7(C-6''), 102.1(C-1'''), 72.5(C-2'''), 72.8 (C-3'''), 74.2 (C-4'''), 69.4(C-5'''), 18.6(C-6''')
陰イオンFAB-MS (m/z):898 (M-H)-
陽イオンFAB-MS (m/z):922 (M+Na)+
【0065】
乾燥ロボフルーツ含有成分の生理作用
次いで、本発明者は、得られたサポニン含有抽出物、溶出画分および精製画分について、これらの血糖値上昇抑制作用、胃粘膜保護作用および抗アレルギー作用に関して、各種活性試験を行った。
以下の各活性試験について、ラットまたはマウスを用いた試験結果をそれぞれ、以下の表に示す。
なお、各試験に用いたマウスの数を各表中「n」として示している。
【0066】
試験例1
血糖値上昇抑制効果の測定方法
約24時間絶食させたWistar系雄性ラット(体重約130〜140 g)を、コントロール(正常)群、コントロール(糖負荷)群および被験試料投与群として、それぞれの投与試験に用いた。以下の表に示したロボフルーツのMeOHエキスを被験物質として、各規定量をアラビアゴム末の5%水溶液に懸濁させて被験試料とし、各群のラットに経口投与した。被験試料の投与30分後に、ショ糖1.0 g/kgの割合となるように、ショ糖水溶液を各群のラットにそれぞれ経口投与した。
【0067】
なお、コントロール(正常)群には、アラビアゴム末の5%水溶液および水のみを投与した。
また、コントロール(糖負荷)群には、アラビアゴム末の5%水溶液および上記の割合でショ糖を投与した。
ショ糖の投与30、60および120分後に、エーテル麻酔下に、ラットの眼窩静脈より採血し、血液を遠心分離(5000 rpm、10分)して分離した血清を用いて、グルコースオキシダーゼ法(グルコースCIIテストワコー、和光純薬)により血清中のグルコース濃度を測定した結果を以下の表に示す。
【0068】
【表2】

上記の結果から、乾燥ロボフルーツのMeOHエキスが、有意にショ糖負荷ラットの血糖値上昇抑制作用を有することが判明した。
【0069】
本発明者は、さらに前記のMeOH溶出部の各精製画分についても同様の血糖値降下作用を測定したところ、サポニン含有精製画分が、意外にも強力な血糖値上昇抑制効果を有することを見出した。
【0070】
試験例2
そこで、本発明者は、上記と全く同様にして、単離した化合物(III)および化合物(IV)について血糖値上昇抑制作用を測定した結果を、以下の表に示す。
【0071】
【表3】

上記の結果から、乾燥ロボフルーツのMeOHエキスの血糖値上昇抑制作用の有効成分がサポニンであることが判り、特に化合物(III)および化合物(IV)が強力な血糖値上昇抑制作用を示すことが判明した。
【0072】
試験例2
胃粘膜保護作用
次いで、発明者は、前記で得られたサポニン含有抽出物、溶出画分および精製画分について、これらの胃粘膜保護作用、すなわち、エタノール誘発胃粘膜損傷抑制作用およびインドメタシン誘発胃粘膜損傷抑制作用に関して調べた。
【0073】
エタノール誘発胃粘膜損傷抑制効果の測定方法
24時間絶食させたSprague-Dowley系雄性ラット(体重約230〜260 g)を、コントロール(正常)群、および被験試料投与群として、それぞれの投与試験に用いた。
被験試料投与群には、エタノールの経口投与の1時間前に、前記で得られたメタノール溶出画分、アセトン溶出画分およびH2O溶出画分の濃縮物を被験物質とし、各被験物質をアラビアゴム末の5%水溶液に懸濁させて被験試料とし、各群のラットに被験物質100 mg/kg割合となるように経口投与した。
【0074】
なお、コントロール(正常)群には、アラビアゴム末の5%水溶液のみを投与した。
各ラット1匹につき、エタノール1.5 mlを経口投与し、その1時間後に胃を摘出し、1.5%ホルマリンで固定した後、胃を切り開き、胃粘膜に発生した全損傷部の長さの計(mm、損傷長)を測定して得られた結果を、以下の表に示す。
【0075】
【表4】

上記の結果から、MeOH溶出画分はエタノール誘発胃粘膜損傷に対して極めて高い抑制作用を有することが判明した。
【0076】
試験例4
そこで、本発明者は、さらに上記のMeOH溶出画分の各精製画分についても同様の血糖値降下効果を測定したところ、サポニン含有精製画分が、意外にも強力なエタノール誘発胃粘膜損傷抑制作用を有することを見出した。
そこで、本発明者は、上記と全く同様にして、単離した化合物(III)および化合物(IV)についてエタノール誘発胃粘膜損傷抑制作用を測定した結果を、以下の表に示す。
【0077】
【表5】

上記の結果から、化合物(III)および化合物(IV)は優れたエタノール誘発性胃粘膜損傷抑制効果を示すことが判り、特に化合物(III)は、強力なエタノール誘発性胃粘膜損傷抑制作用を有することが判明した。
【0078】
試験例5
そこで、本発明者は、同様に、本発明の組成物のインドメタシン誘発胃粘膜損傷抑制作用についても調べた。
すなわち、24時間絶食させたSprague-Dowley系雄性ラット(体重約230〜260 g)を、コントロール(正常)群、および被験試料投与群として、それぞれの投与試験に用いた。
被験試料投与群には、インドメタシン(20 mg/kg)の経口投与の1時間前に、前記で得られたメタノール溶出画分、アセトン溶出画分およびH2O溶出画分の濃縮物を被験物質とし、各被験物質をアラビアゴム末の5%水溶液に懸濁させて被験試料とし、各群のラットに被験物質100 mg/kg割合となるように経口投与した。
【0079】
なお、コントロール(正常)群には、アラビアゴム末の5%水溶液のみを投与した。
各ラットに、インドメタシン (20 mg/kg)を経口投与し、その4時間後に胃を摘出し、1.5%ホルマリンで固定した後、胃を切り開き、胃粘膜に発生した全損傷部の長さの計(mm、損傷長)を測定して得られた結果を、以下の表に示す。
【0080】
【表6】

上記の結果から、MeOH溶出画分はインドメタシン誘発胃粘膜損傷に対して極めて高い抑制作用を有することが判明した。
【0081】
試験例6
そこで、本発明者は、さらに上記のMeOH溶出画分の各精製画分についても同様の血糖値降下効果を測定したところ、サポニン含有精製画分が、意外にも強力なインドメタシン誘発胃粘膜損傷抑制作用を有することを見出した。
そこで、本発明者は、上記と全く同様にして、単離した化合物(III)および化合物(IV)についてインドメタシン誘発胃粘膜損傷抑制作用を測定した結果を、以下の表に示す。
【0082】
【表7】

上記の結果から、化合物(III)および化合物(IV)は優れたインドメタシン誘発性胃粘膜損傷抑制効果を示すことが判り、特に化合物(III)は、強力なインドメタシン誘発性胃粘膜損傷抑制作用を有することが判明した。
【0083】
試験例7
アレルギー抑制作用
次いで、発明者は、前記で得られたサポニン含有抽出物、溶出画分および精製画分について、これらのアレルギー抑制作用に関して調べた。
【0084】
アレルギー抑制抑制作用の測定方法
ddYマウス(体重約25〜30 g)を、コントロール(正常)群、コントロール(対照)群および被験試料投与群として、それぞれの投与試験に用いた。
すなわち、マウスの両耳のそれぞれに抗DNP IgE抗体(20μg/mlを10μl)を皮内注射した。被験試料投与群のマウスには、投与47時間後に、被験試料を経口投与した。
【0085】
次いで、全マウスに、ジニトロフェニル化した牛血清アルブミン0.25 mgを含む2.0%エバンスブルー溶液0.25 mlを静脈内投与した。その0.5時間後、各マウスの両耳を切除し、1 N KOH水溶液0.5 mlに37℃で一夜溶解した。これに、0.6 N H3PO4溶液およびアセトンの混液(5:13)4.5 mlを加えて、遠心分離(4000 rpm、10分間)し、上清の吸光度(波長620 nm)を測定した。
【0086】
先ず、本発明者は、実施例1で得られたサポニン含有MeOHエキスのアレルギー抑制作用について調べた結果、該エキスは投与量依存性アレルギー抑制効果を有することが判明した。
次いで、本発明者は、上記MeOHエキスのH2O溶出画分とMeOH溶出画分とについて同様に、アレルギー抑制作用について調べた結果、MeOH溶出画分が投与量依存性アレルギー抑制効果を有することが判明した。
【0087】
そこで、本発明者は、さらに、化合物(III)および化合物(IV)について、同様に、アレルギー抑制作用について調べた結果、化合物(III)および化合物(IV)が共に、投与量依存性アレルギー抑制効果を有することが判明した。以上の結果を、以下の表に示す。
【0088】
【表8】

上記の結果から、本発明によるサポニン含有抽出物、もしくはその濃縮物または該サポニン含有精製画分、およびロボフルーツに含有されるサポニンが抗アレルギー作用を有することが判明した。
【0089】
実施例2
当該分野で公知の方法にしたがって、本発明によるサポニン含有濃縮物10重量部を乳糖25重量部と混合し、ゼラチンカプセルに充填し、1カプセル中に抽出物が50 mg含有されるゼラチンカプセル剤を得た。
【0090】
実施例3
実施例1で得られたMeOH溶出画分を実施例2の濃縮物に替えて、実施例2と同様にして、ゼラチンカプセル剤を得た。
【0091】
実施例4
実施例1で得られたFr. 9の画分を実施例2の濃縮物に替えて、実施例2と同様にして、ゼラチンカプセル剤を得た。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、ロボフルーツを水または含水低級アルコールで抽出したサポニン含有抽出物もしくはその濃縮物または該サポニン含有精製画分を有効成分として含み、血糖値上昇抑制、胃粘膜保護またはアレルギー抑制に用いられ得る医薬組成物が提供される。また、該組成物が含有される健康食品が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボフルーツを水または含水低級アルコールで抽出したサポニン含有抽出物もしくはその濃縮物または該サポニン含有精製画分を有効成分として含む医薬組成物。
【請求項2】
一般式(I):
【化1】

[式中、Rはα-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[α-L-ラムノピラノシル-(1→4)]-D-グルコピラノシル基か、またはα-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[β-D-グルコピラノシル-(1→3)]-D-ガラクピラノシル基であり、Xは水素原子、α-ヒドロキシ基またはβ-ヒドロキシ基である]
で表されるサポニンを有効成分として含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ロボフルーツが、ナス科植物ロベイラの果実である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、血糖値上昇抑制に用いられる請求項1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、胃粘膜保護に用いられる請求項1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、アレルギー抑制に用いられる請求項1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の組成物が添加されてなる健康食品。
【請求項8】
一般式:
【化2】

[式中、Rは、α-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[α-L-ラムノピラノシル-(1→4)]-D-グルコピラノシル基か、またはα-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[β-D-グルコピラノシル-(1→3)]-D-ガラクピラノシル基である]
で表されるサポニン。

【公開番号】特開2007−197366(P2007−197366A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17928(P2006−17928)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(501361600)株式会社 日本薬用食品研究所 (8)
【出願人】(505114868)福田龍株式会社 (2)
【Fターム(参考)】