説明

ロータリーキルン

【課題】 メンテナンスがしやすく、かつキルン本体内部を還元性雰囲気に安定して維持することのできるロータリーキルンを提供する。
【解決手段】 ロータリーキルン2にキルン本体10内部の静圧を測定する静圧センサ22を備える一方、キルン本体10の端部に備えられる入口フード部14にはキルン本体10の外周面に沿って環状のシール材固定片19を突設し、その先端部に外気侵入防止用のシールプレート21を備える。また、これらキルン本体10外周面とシール材固定片19とシールプレート21とで形成される隙間空間25内の静圧を測定する静圧センサ26と、隙間空間25内の空気を排気する排気手段27とを備え、隙間空間25内の静圧がキルン本体10内部の静圧よりも低い状態に保たれるように前記排気手段27にて隙間空間25内の空気を排気するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種材料の加熱乾燥や焼却、或いは焼成処理等に用いられるロータリーキルンに関し、特にキルン内部を還元性雰囲気に維持しながら焼却等の処理を可能とするロータリーキルンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用を目的として、例えば、廃プリント基板を回収・処理して基板中に含まれている金、銀、銅、白金等の有価金属が回収されるようになってきている。廃プリント基板には、紙基材やガラス繊維基材等を熱硬化性のフェノール樹脂やエポキシ樹脂等で固めた基盤上に金や銅等のプリント配線が施されていると共に、金、銀、銅、白金、その他様々な有価金属を含むICやコンデンサ等が多数取り付けられている。これらの各種有価金属を分離・回収する方法として、例えば、還元性雰囲気下でかつ500〜1000℃の温度雰囲気下で乾留処理し、不要な樹脂成分は気化させて除去する一方、残った残留物を大気に接触しても急激に酸化されない程度の温度にまで冷却し、この冷却物を粉砕後、有価金属とガラス等の基材構成物とに分別する方法がある。
【0003】
上記のような乾留処理をロータリーキルンを使用して行うとき、特に、被処理物をキルン本体内で直接加熱して処理する直接加熱方式を採用する場合、回転するキルン本体とフード部との摺動面を密封し、外気がキルン内に侵入するのを阻止しなければ還元性雰囲気が維持されず、被処理物の加熱処理が安定した状態で行えない。
【0004】
そこで、ロータリーキルンのキルン本体の摺動面の密封部材として、グランドパッキンを設けたものが一般的に用いられているが、引用文献1(特開2001−324272号公報)では、グランドパッキンは偏摩耗を起こして密封性および耐久性に問題があるとし、また、シール部材を多段階状に設けて密封面の距離を長くしてシール効果を高めるものもあるが、定期的にシール部材を交換する保守作業に時間がかかる問題があるとし、グランドパッキン等からなるシール部をキルン本体に巻回して摺動可能に設けて密封する主シール部を形成し、更に主シール部の外側にシート状のパッキン材を弾性体を介してキルン本体の外周面に弾性的に押圧せしめて摺動可能に囲繞する補助シール部材を設けて密封してなる密封構造を提案している。
【0005】
また、引用文献2(特公昭59−53963号公報)では、キルン本体内を還元性雰囲気に維持する必要がないアスファルトプラントのドライヤではあるが、キルン内部に圧力センサを配設し、該キルンの内部圧力を一定にするように圧力センサに基づいて排風機の排風量を可変制御することで、キルン本体内に送り込まれる燃焼ガス量を過不足なく排風機で吸引排気することで過剰の冷却空気を吸引することを阻止する技術が記載されている。この種のアスファルトプラントのドライヤではキルン本体の摺動面の密封部材として、摩耗の少ない例えば金属製のシールプレートをドライヤの外周面に当接させて外気の侵入を抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−324272号公報
【特許文献2】特公昭59−53963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1のようにキルン本体とフード部との摺動面の密封にグランドパッキン等からなるシール部材を使用すると、シール部材の摩耗は避けられず、定期的にシール部材を交換することを要して煩わしい。また、引用文献2のようにキルン本体内の内部圧力を一定に制御することによって外気の侵入を阻止する方法では摩耗部がなくてメンテナンス面では好ましいが、キルン本体の摺動面から燃焼ガスが漏洩するのを避けるためにキルン内の内部圧力を大気圧より低く設定するために、シールプレートの隙間からどうしても外気を吸引してしまい、キルン本体内を還元性雰囲気にすることが難しい。
【0008】
本発明は上記の点に鑑み、メンテナンスがしやすく、かつキルン本体内部を還元性雰囲気に安定して維持することのできるロータリーキルンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載のロータリーキルンでは、回転自在に傾斜支持した円筒状のキルン本体の両端部をフード部に嵌合し、一端部のフード部には熱風供給用のバーナを備えると共に、他端部のフード部には排気煙道を連結し、該排気煙道末端には排ガスを吸引排気する排風機を備えたロータリーキルンにおいて、前記フード部にはキルン本体の外周面に沿って環状のシール材固定片を突設し、該シール材固定片の先端部にはキルン本体の摺動面と当接して外気の侵入を遮断するシール材を取り付けると共に、キルン本体外周面とシール材固定片とシール材とで形成される隙間空間内の空気を所定の吸引力で排気する排気手段を備えると共に、前記隙間空間内の静圧を検出する静圧センサと、キルン本体内部の静圧を検出する静圧センサを備え、前記静圧センサにて検出する隙間空間内の静圧値がキルン本体内部の静圧値よりも低い所定値に維持されるように前記排気手段の排風量を可変制御するように構成したことを特徴としている。
【0010】
また、請求項2記載のロータリーキルンでは、前記静圧センサにて検出するキルン本体内部の静圧値が所定圧となるように静圧センサの検出値に基づいて排風機の排風量を可変制御するように構成したことを特徴としている。
【0011】
また、請求項3記載のロータリーキルンでは、前記隙間空間内に侵入する外気の流速を減衰可能なようにキルン本体の外周面とシール材固定片との隙間をラビリンス構造としたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項4記載のロータリーキルンでは、前記排気手段にて隙間空間より排気した空気をキルン本体下流の排気煙道に導入させるように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る請求項1記載のロータリーキルンによれば、回転自在に傾斜支持した円筒状のキルン本体の両端部をフード部に嵌合し、一端部のフード部には熱風供給用のバーナを備えると共に、他端部のフード部には排気煙道を連結し、該排気煙道末端には排ガスを吸引排気する排風機を備えたロータリーキルンにおいて、前記フード部にはキルン本体の外周面に沿って環状のシール材固定片を突設し、該シール材固定片の先端部にはキルン本体の摺動面と当接して外気の侵入を遮断するシール材を取り付けると共に、キルン本体外周面とシール材固定片とシール材とで形成される隙間空間内の空気を所定の吸引力で排気する排気手段を備えると共に、前記隙間空間内の静圧を検出する静圧センサと、キルン本体内部の静圧を検出する静圧センサを備え、前記静圧センサにて検出する隙間空間内の静圧値がキルン本体内部の静圧値よりも低い所定値に維持されるように前記排気手段の排風量を可変制御したので、キルン本体とシール材の隙間からキルン本体内に侵入する外気を排気手段にて強制的に排気させてキルン本体内への侵入を阻止でき、キルン本体内部を還元性雰囲気に安定して維持することができると共に、シール材の定期的な交換もほぼ不要でメンテナンスも容易である。
【0014】
また、請求項2記載のロータリーキルンによれば、前記静圧センサにて検出するキルン本体内部の静圧値が所定圧となるように静圧センサの検出値に基づいて排風機の排風量を可変制御するように構成したので、キルン本体内部の静圧値を大気圧と略同等に設定すればキルン本体内への外気吸引力を極力小さくでき、これによってキルン本体外周面とシール材固定片とシール材とで形成される隙間空間の静圧値も大気圧に比べて若干低い値に設定でき、排気手段による強制排気量及び変動量も少なくて好ましいものとなる。
【0015】
また、請求項3記載のロータリーキルンによれば、前記隙間空間内に侵入する外気の流速を減衰可能なようにキルン本体の外周面とシール材固定片との隙間をラビリンス構造としたので、キルン本体内に侵入しようとする外気量を抑えることができ、より効果的にキルン本体内部を還元性雰囲気に安定して維持することができる。
【0016】
また、請求項4記載のロータリーキルンによれば、前記排気手段にて隙間空間より排気した空気をキルン本体下流の排気煙道に導入させるように構成したので、排気手段にて排気する外気や排ガスを既設の設備を利用して安価に処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るロータリーキルンを備えた焼却施設の一実施例を示す概略説明図である。
【図2】図1のロータリーキルンの一部切り欠き拡大図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ロータリーキルンは、回転自在に傾斜支持した円筒状のキルン本体の両端部をフード部に嵌合し、一端部のフード部には熱風供給用のバーナを備えると共に、他端部のフード部には排気煙道を連結し、該排気煙道末端には排ガスを吸引排気する排風機を備えている。そして、前記フード部にはキルン本体の外周面に沿って環状のシール材固定片を突設し、該シール材固定片の先端部にはキルン本体の摺動面と当接して外気の侵入を遮断するシール材を取り付けている。
【0019】
また、前記キルン本体外周面とシール材固定片とシール材とで形成される隙間空間には排気ダクトを連結し、該排気ダクト下流に備えた排気手段による排風量をダンパーの開度調整等により可変制御可能とし、前記隙間空間から所定量のエアーを吸引排気できるようにしている。そして、前記隙間空間の静圧を検出する静圧センサと、キルン本体内部の静圧を検出する静圧センサを備え、両静圧センサにより検出する静圧値を制御器に取り込み、前記静圧センサにて検出する隙間空間内の静圧値がキルン本体内部の静圧値よりも低い所定値、例えば、約−10〜−20mmAq程度の低い値に維持されるように排気手段の排風量を可変制御するように構成している。
【0020】
また、前記静圧センサにて検出するキルン本体内部の静圧値を取り込む制御器は、取り込んだ静圧値と予め設定した静圧設定値と比較して、その差値量に基づいて排風機の排風量を可変制御し、キルン本体内部の静圧値を常に設定値に維持する構成としておくと好ましい。なお、キルン本体内部の静圧設定値は、大気圧と略同等となるように設定することが好ましく、大気圧比で−数mmAq〜−数十mmAq程度とし、キルン本体から外部への燃焼ガスの吹き出しもなく、かつキルン本体内への外気吸引力を極力小さくできる適宜の値に設定される。
【0021】
また、前記隙間空間内に侵入しようとする外気の流速を減衰させて侵入量を抑制可能なようにキルン本体の外周面とシール材固定片との隙間をラビリンス構造としていると共に、前記排気手段にて隙間空間より排気される空気はキルン本体下流の排気煙道に導入させる構成としており、キルン本体から導出される排ガスと合流させて一緒に集塵処理等を行うことで装置の簡素化を図るようにしている。
【0022】
そして、前記ロータリーキルンにて、例えば廃プリント基板等の処理物を焼却処理して有価金属等の有価物を回収するときには、処理物の供給量に応じて適宜の燃焼量にてバーナを運転しつつ、スクリューコンベヤやプッシャー等の供給手段にて処理物である廃プリント基板等を所定量ずつキルン本体内に供給し、所定温度、例えばプリント基板中の不要な樹脂成分等が燃焼・気化して除去され、後に残る有用物である有価金属を好適に回収可能となる約550℃程度に維持しながら焼却処理していく。
【0023】
このとき、静圧センサによって検出されるキルン本体外周面とシール材固定片とシール材とで形成される隙間空間内の静圧値と、キルン本体内部の静圧値は制御器に逐次取り込まれ、制御器では前記隙間空間内の静圧値がキルン本体内部の静圧値よりも低い、例えば、約−10〜−20mmAq程度の低い値に維持されるように排気手段の排風量を可変制御する。これによって、前記隙間空間内の空気は排気ダクトを介してキルン本体下流の排気煙道へと導かれることとなり、キルン本体の摺動面と当接するシール材の隙間から侵入する外気も排気ダクト側へと吸引排気され、外気がキルン本体内に侵入することはない。なお、キルン本体内の燃焼ガスの一部も排気ダクトを介して吸引排気されることとなる。
【0024】
なお、キルン本体内部の静圧を大気圧比で、例えば−3〜−4mmAq程度に維持するように排風機の排風量を可変制御すると、キルン本体から外部への燃焼ガスの吹き出しもなく、かつキルン本体内への外気吸引力を極力小さくでき、これによってキルン本体外周面とシール材固定片とシール材とで形成される隙間空間の静圧値も大気圧に比べて若干低い値に設定でき、排気手段による強制排気量及び変動量も少なくなって好ましい。また、キルン本体の外周面とシール材固定片との隙間をラビリンス構造としておけば、前記隙間空間内に侵入する外気の流速を減衰できて侵入しようとする外気量を抑えることができる。
【0025】
このように、キルン本体とシール材の隙間からキルン内に侵入する外気を排気手段にて強制的に排気させてキルン本体内への侵入を阻止するようにしたので、キルン本体内部を還元性雰囲気に安定して維持することができ、これによって、キルン本体内への外気の侵入により燃焼温度が極端に上昇して設定温度である550℃を大幅に超えてしまい、有価金属と基材中のガラス繊維等とが溶融混合を生じて分離回収が困難な状態になったり、或いは回収した有価金属が酸化してしまったりして回収率の低下を招くことも阻止でき、有価金属等の有価物を効率よくかつ好適に回収することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0027】
図中の1は、例えば、廃プリント基板等の処理物を所定温度にて焼却処理し、後に残る残渣から有価金属等の有価物を回収する焼却施設であって、該焼却施設1には、廃プリント基板等の処理物を還元性雰囲気下で焼却処理可能なロータリーキルン2を備えている一方、該ロータリーキルン2の下流側には出口フード部3を備え、該出口フード部3には排気煙道4を連結し、該排気煙道4の途中に介在させた排風機5にて排ガスを吸引してキルン内を通過する高温ガス流を維持していると共に、排ガス中に含まれる可燃性ガスや未燃分等を完全燃焼させて燃焼分解させる二次燃焼炉6、排ガスを急冷してダイオキシン類の再合成を防ぐ冷却塔7、及びバグフィルタ等の集塵機8を順次経由させて末端の煙突9より大気中に放出する構成としている。
【0028】
前記ロータリーキルン2は、円筒状のキルン本体10を機台11上に回転自在に、かつ適宜角度(例えば、約2度前後)にて傾斜支持し、駆動装置(図示せず)とインバータ(図示せず)にて適宜速度で回転可能としている。前記キルン本体10は、円筒状に形成した鋼板12の内周面に、例えば耐火レンガやセラミックス等の耐熱性のキャスター13を周設し、後述するバーナ15より供給される高温の熱風から保護すると共に蓄熱している。
【0029】
キルン本体10の端部にはフード部を備えており、廃プリント基板等の処理物Rの供給側である入口フード部14には、熱風供給用のバーナ15と、処理物供給手段であるスクリューコンベヤ16や供給ホッパ17を備えている一方、処理物排出側である出口フード部3には、焼却処理を経て有価金属等を主体とした処理物R´を排出する排出部18と、排ガス導出用の排気煙道4とを備えている。なお、これら入口フード部14や出口フード部3の内周面にも、キルン本体10と同様に耐熱性のキャスター13を貼着している。
【0030】
入口フード部14や出口フード部3には、その内部に嵌合されるキルン本体10の外周面に沿って環状のシール材固定片19、20を突設していると共に、該シール材固定片19、20の先端部には外気侵入防止用のシール材として、例えば金属製のシールプレート21の基端部を固着している一方、該シールプレート21の遊端部をキルン本体10の外周面に押し当てるようにして当接させており、キルン本体10の回転を妨げることなく、キルン本体10外周面と、入口フード部14及び出口フード部3との各隙間をシールしてキルン内への外気の侵入を抑えるように図っている。
【0031】
また、入口フード部14には、キルン本体10内部の静圧を検出する静圧センサ22を備えていると共に、該静圧センサ22にて検出される静圧値を取り込み、この取り込んだ静圧値に基づいて排気煙道4下流に備えた風量調整用ダンパー23の開度を調整制御する制御器24を備えている。
【0032】
前記制御について詳説すると、キルン本体10の外周面と、入口フード部14の隙間等からキルン内の燃焼ガスGの外部への漏出又は外気Aの吸い込みすぎのないように、静圧センサ22にてキルン本体10内部の静圧を検出しつつ、その検出値に基づいてダンパー23の開度を適宜調整して下流の排風機5による吸引力を調整し、キルン本体10内部の静圧を大気圧と略同等(若干負圧が好ましく、例えば、大気圧比で約−数mmAq〜−数十mmAq程度)の状態に維持させるように制御している。なお、排風機5をインバータ制御とし、ダンパー23開度に代えて排風機5の回転数制御により吸引力を制御し、上記のようにキルン本体10内部の静圧を調整するようにしてもよい。
【0033】
また、キルン本体10外周面と、入口フード部14のシール材固定片19と、シールプレート21とで形成される略閉塞された隙間空間25には、隙間空間25内部の静圧を検出する静圧センサ26と、隙間空間25内の空気A´を所定の吸引力で排気する排気手段27とを備えている。
【0034】
前記排気手段27は、排気ダクト28の一端部を前記隙間空間25に連結している一方、他端部を出口フード部3下流の排気煙道4に連結していると共に、排気ダクト28の途中には風量調整用ダンパー29を備えて成り、前記制御器24にて静圧センサ26で検出される隙間空間25内の静圧値を取り込み、その静圧値と前記静圧センサ22から取り込まれるキルン内の静圧値とに基づいてダンパー29の開度を適宜調整して吸引力を調整している。このとき、隙間空間25内の静圧が、大気圧よりも若干負圧、例えば−3〜−4mmAq程度に維持されるキルン内部の静圧よりも更に若干低い状態(例えば、キルン内静圧比で約−10〜−20mmAq程度)に保たれるように制御し、隙間空間25内の空気A´を強制排気して下流の排気煙道4に導入させるようにしている。
【0035】
上記のように制御することにより、静圧が大気圧よりも低く維持されるキルン本体10内部には前記隙間空間25等から少なからず絶えず外気Aが侵入しようとするものの、隙間空間25内の静圧はキルン本体10内部よりも更に低く保たれるように排気ダクト28にて若干強く吸引しているため、隙間空間25内に侵入する外気Aはキルン内部側には向かわずに排気ダクト28より強制的に排気され、それによってキルン本体10内への外気Aの侵入を極力阻止でき、キルン本体10内部を還元性雰囲気に安定して維持することが可能となる。
【0036】
また、前記隙間空間25内に侵入しようとする外気Aの流速を十分に減衰可能なように、キルン本体10の外周面と入口フード部14のシール材固定片19との隙間を、図3に示すように、外気衝突用の邪魔板30を千鳥状に配してラビリンス構造としている。なお、キルン本体10外周面と出口フード部3のシール材固定片20との隙間においても、同様に邪魔板30を千鳥状に配してラビリンス構造としており、キルン本体10内への余分な外気Aの侵入を極力阻止するように図っている。また、前記排気手段27によれば、キルン本体10内に侵入しようとする外気Aと共にキルン本体10内の燃焼ガスGの一部も吸引排気されることになるが、排気されるこれらの混合空気A´をキルン下流の排気煙道4に導入させ、キルン本体10から導出される燃焼ガスGと合流させて一緒に集塵処理等を行えるようにしており、別途集塵装置等を必要とせず装置の簡素化を図りながら好適に処理可能としている。
【0037】
そして、上記ロータリーキルン2を有する焼却施設1にて、例えば廃プリント基板等の処理物Rを還元性雰囲気下で焼却処理して有価金属等の有価物R´を回収するときには、先ず、処理物Rの供給量に応じ、有価金属を好適な状態で回収可能な約550℃程度にて焼却処理できるように適宜の燃焼量にてバーナ15を運転しつつ、そのときのキルン本体10内部の静圧値に基づいてダンパー23開度を適宜調整し、キルン本体10内の静圧を大気圧よりも若干負圧(例えば、大気圧比で−3〜−4mmAq程度)に維持するように制御する。
【0038】
また、キルン本体10の外周面と、入口フード部14のシール材固定片19との隙間空間25に連結した排気ダクト28のダンパー29開度を調整し、隙間空間25内の静圧がキルン本体10内部の静圧よりも更に若干低くなるように(例えば、キルン内静圧比で約−10〜−20mmAq程度)制御し、隙間空間25からキルン内部に侵入しようとする外気Aをラビリンス構造によって流速を抑制しながら排気ダクト28より強制排気させて侵入を阻止し、キルン本体10内部の空気を極力絶って還元性雰囲気に維持させる。
【0039】
そして、上記運転状態にて供給ホッパ17内の廃プリント基板等の処理物Rをスクリューコンベヤ16にてキルン本体10に順次送り出して供給する。キルン本体10内に供給した処理物Rは、キルン内を流下する間、還元性雰囲気下でバーナ15からの熱風に晒され、予め設定した約550℃程度にて安定して焼却処理され、廃プリント基板等の処理物R中に含まれる不要な樹脂成分等は燃焼・気化して除去され、下流の排出部18から有価物R´が排出される。
【0040】
このように、ロータリーキルン2において、キルン本体10内部の空気を極力絶った状態、即ち還元性雰囲気下で焼却等の処理をすることが要求される場合でも、キルン本体とフードとの隙間から侵入しようとする外気を強制排気させることにより、キルン内部への外気の侵入を極力阻止でき、それによってキルン内部を還元性雰囲気に安定して維持することができ、好適な状態にて焼却等の処理が可能となる。
【0041】
また、本実施例においては、キルン内部を還元性雰囲気に維持しながら処理物を焼却処理する場合について記載したが、例えば、処理物を焼成処理する場合や、加熱乾燥処理する場合にあっても、本実施例と同様の構成を採用することで、キルン内部への余分な外気の侵入を阻止することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…焼却施設 2…ロータリーキルン
3…出口フード部(フード部) 4…排気煙道
5…排風機 10…キルン本体
14…入口フード部(フード部) 15…バーナ
19、20…シール材固定片 21…シールプレート(シール材)
22…静圧センサ 23…ダンパー
24…制御器 25…隙間空間
26…静圧センサ 27…排気手段
28…排気ダクト(排気手段) 29…ダンパー(排気手段)
30…邪魔板
A…外気 G…燃焼ガス
A´…隙間空間内空気
R…処理物 R´…有価物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に傾斜支持した円筒状のキルン本体の両端部をフード部に嵌合し、一端部のフード部には熱風供給用のバーナを備えると共に、他端部のフード部には排気煙道を連結し、該排気煙道末端には排ガスを吸引排気する排風機を備えたロータリーキルンにおいて、前記フード部にはキルン本体の外周面に沿って環状のシール材固定片を突設し、該シール材固定片の先端部にはキルン本体の摺動面と当接して外気の侵入を遮断するシール材を取り付けると共に、キルン本体外周面とシール材固定片とシール材とで形成される隙間空間内の空気を所定の吸引力で排気する排気手段を備えると共に、前記隙間空間内の静圧を検出する静圧センサと、キルン本体内部の静圧を検出する静圧センサを備え、前記静圧センサにて検出する隙間空間内の静圧値がキルン本体内部の静圧値よりも低い所定値に維持されるように前記排気手段の排風量を可変制御するように構成したことを特徴とするロータリーキルン。
【請求項2】
前記静圧センサにて検出するキルン本体内部の静圧値が所定圧となるように静圧センサの検出値に基づいて排風機の排風量を可変制御するように構成したことを特徴とする請求項1記載のロータリーキルン。
【請求項3】
前記隙間空間内に侵入する外気の流速を減衰可能なようにキルン本体の外周面とシール材固定片との隙間をラビリンス構造としたことを特徴とする請求項1又は2記載のロータリーキルン。
【請求項4】
前記排気手段にて隙間空間より排気した空気をキルン本体下流の排気煙道に導入させるように構成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のロータリーキルン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−117639(P2011−117639A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273972(P2009−273972)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【Fターム(参考)】