説明

ロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置

【課題】トレー等の停止位置に誤差が生じても、その所定位置荷を正確に位置決めして直接移載し得るようにする。
【解決手段】移載装置12を、トレー6の回走方向に往復移動可能とし、トレー6の両側部に設けた1対のガイド手段28に、移載装置12の昇降時においてその両側端の1対のガイドローラ22を摺接させ、移載装置12を側方に移動させることにより、予め定めた位置に位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーラックにおけるトレーの所定位置に、移載装置により荷を位置決めして出し入れするようにしたロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーラックは、基枠に上下多段に配設された駆動スプロケットと従動スプロケットに、無端チェーンを掛け回し、この無端チェーンに取り付けた複数のトレーに荷を載置して保管するものである。
【0003】
トレーに荷を出し入れする移載装置としては、例えば特許文献1及び該特許文献に従来技術として開示されているような荷押し出し装置があり、これにより押し出された荷は、他の入出庫コンベアやマストにより昇降する荷台等に移載される。
【0004】
【特許文献1】実開平6−27726号公報(図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されている荷押し出し式の移載装置は荷がダンボール箱等の定形をなすもの、すなわちトレーに対し荷が安定して載置され、しかも位置決めを正確に行う必要のないものに限って用いられる。
【0006】
従って、例えば自動車用エンジンのシリンダブロック等、荷が不定形で不安定なものをトレーに移載する際には、専用のパレットに荷を位置決めして載置し、パレットごと、トレーに移載する方式が用いられ、パレットの製造コストが増大するとともに、トレーも大型となるため、荷の保管効率も悪いという問題がある。
【0007】
この問題を解決するために、本願の出願人は、上記シリンダブロック等の不定形な荷を、専用のパレットを用いることなく、トレーに直接移載することを案出した。すなわち、シリンダブロック等には、エンジン部品取付用の取り付け孔が多数設けられており、これらの下方に開口している複数の取付孔に、トレー及び移載装置に突設した複数のピンを下方より嵌合すれば、パレットを省略して、移載装置により荷を直接トレーに移載することができる。
【0008】
しかし、トレーの回走方向の停止位置や、マストを昇降する移載装置の回走方向の停止位置は、若干の誤差が生じることがあり、このような誤差が生じると、ピンが荷の取付孔に嵌合されなくなるという問題の発生する恐れがあった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、トレー等の停止位置に誤差が生じても、その所定位置に荷を正確に位置決めして直接移載し得るようにし、専用のパレットを省略することができるようにしたロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置は、
ロータリーラックにおける所定位置で停止したトレーに向かって、床面に立設したマストを昇降する移載装置を往復移動させ、前記トレーに荷を出し入れする際のロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置であって、
前記移載装置を、その往復移動と直行する前記トレーの回走方向にも往復移動可能とし、前記トレーの回走方向の両端部に、前記移載装置の回走方向の両側端が摺接可能な位置決め用ガイド手段を対向状に設け、前記移載装置の昇降時において、その両側端が前記ガイド手段に摺接することにより、前記移載装置を前記トレーに対し予め定めた位置まで側方に移動させて位置決めするようにしたことを特徴としている。
この特徴によれば、トレーや移載装置の停止位置に誤差が生じても、移載装置の昇降時においてトレーに設けたガイド手段により、予め定めた位置に位置決めされるので、たとえ荷が不定形をなすものでも、移載装置により、トレーの所定位置に直接荷を移載したり、トレーから移載装置に正しく位置決めして移載したりすることができる。
従がって、専用のパレットに荷を予め位置決めして載置する必要はないので、パレットを省略することができ、その製造コストを大幅に削減し得るとともに、トレーを大型とする必要が無いので、荷の保管効率が向上する。
【0011】
本発明の請求項2に記載のロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置は、請求項1に記載の位置決め装置であって、
トレーの回走方向の両端側に、上面に荷を載置可能な1対の荷載置台を、該1対の荷載置台間において移載装置が昇降し得るように立設し、両荷載置台の対向面にガイド手段としての1対のガイド板を設けたことを特徴としている。
この特徴によれば、移載装置をトレーの荷載置台との間を昇降させるだけで、移載装置が1対のガイド板により位置決めされると同時に、荷を、トレーの荷載置台の上面の所定位置に移載したり、トレーから移載装置に位置決めして移載することができる。
【0012】
本発明の請求項3に記載のロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置は、請求項2に記載の位置決め装置であって、
1対のガイド板が、対向面間の寸法が移載装置の幅よりも大きい上方に拡開する上部傾斜ガイド面と、同じく下方に拡開する下部傾斜ガイド面と、これら上部と下部の傾斜ガイド面と連続する、対向面間の寸法が移載装置の幅とほぼ等しい垂直ガイド面とを備えるものとしたことを特徴としている。
この特徴によれば、移載装置をトレーの上方より下降させると、ガイド板の上部傾斜ガイド面を通過して垂直ガイド面に至る間に自動的に位置決めされ、また同じくトレーの下端部より上昇させると、下部傾斜ガイド面を通過して垂直ガイド面に至る間に自動的に位置決めされるので、複雑な構造のガイド手段を設ける必要はない。
また、上部と下部の傾斜ガイド面及び垂直ガイド面は連続しているので、荷移載装置が円滑に昇降するようになる。
【0013】
本発明の請求項4に記載のロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の位置決め装置であって、
移載装置の両側端に、ガイド手段に沿って転動する1対のガイドローラを設けたことを特徴としている。
この特徴によれば、移載装置が昇降する際の摺動抵抗が小さくなるので、移載装置が円滑に昇降するとともに、位置決めも容易となる。
【0014】
本発明の請求項5に記載のロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の位置決め装置であって、
荷が、下面に複数の孔を有するものにおいて、トレー及び移載装置の上面に、位置決め時において前記孔の複数のものに嵌合可能な荷支持ピンを突設したことを特徴としている。
この特徴によれば、トレー及び移載装置に荷が位置決めされて移載された際、荷の下面の孔に荷支持ピンが嵌合するので、荷が位置ずれするのが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明を適用したロータリーラックの概略平面図で、ロータリーラック1は、平面視長円形の基枠2の両側端に配設された上下複数段の駆動スプロケット3と従動スプロケット4に、無端チェーン5を掛け回し、この無端チェーン5に内側端部を取り付けた複数のトレー6を、環状の内レール7と外レール8の上面に沿って回走させ、所定位置で停止させてトレー6に荷を出し入れするものである。
【0018】
ロータリーラック1における荷の移載位置と近接する床面には、荷台9を昇降可能に支持するマスト10が立設されている。荷台9上には、トレー6の荷を移載して、入出庫ステーション11に出庫したり、入出庫ステーション11で移載した荷を、トレー6に入庫したりするための移載装置12が設けられている。
【0019】
図2は、移載装置12の平面図、図3は、同じく側面図、図4は、同じく正面図を示すもので、移載装置12は、荷台9の上面に固定された基台13上を、図示しない公知の往復駆動手段により、トレー6の回走方向(以下、左右方向という)と直交する前後方向(図2の矢印A方向)に往復移動可能な主移動台14と、この上面に左右方向に移動可能に設けられた横移動台15とを備えている。
【0020】
すなわち、横移動台15は、主移動台14の上面に、互いの対向面に設けられた前後1対のLMガイド16、16を介して、左右方向(図2の矢印B方面)に移動可能に設けられている。
【0021】
横移動台15の上面における中央部の前後部と、左右両側部とには、それぞれ前後2個ずつの荷の転倒防部材17が立設されている。また、横移動台15の上面における後端部を除いた左右両側部には、ほぼ方形をなす3枚ずつの荷指示板18が固着され、各荷支持板18には、円錐状の荷支持ピン19が固着されている。
【0022】
横移動台15の前端の両側部に固着された左右方向を向くブラケット20、20には、前後方向を向く枢軸21により、1対の位置決め用ガイドローラ22、22が枢着されている。
【0023】
図5は、トレー6の平面図、図6は、図5のVI−VI線に沿う縦断正面図を示すもので、トレー6は、前後に車輪23が取り付けられた、方形をなす基板24と、その前後の側端と左右両端より起立する荷載置台25、25とを備え、荷載置台25における左右寸法を大とした前後両端部の上面板25aの上面には、荷支持板26が固着されている。トレー6における左右の荷載置台25同士の間は、上記移載装置12の挿入空間となっている。
【0024】
左側後部の荷支持板26の上面には、円錐状の2個の荷支持ピン27、27が、また右側の前後の荷支持板26には、1個ずつの荷支持ピン27、27が、それぞれ固着されている。
【0025】
左右の荷載置台25における前部側の上面板25a、25aの対向端部下面と、基板24の上面との間には、位置決め用の1対のガイド板28、28の上下両端が、互いに対向するように固着されている。図6に示すように両ガイド板28は、上端部の、互いに逆八字状をなすように上方に拡開する上部傾斜ガイド面28aと、その下端と連続する垂直ガイド面28bと、この垂直ガイド面28bの下端から、互いに八字状をなすように下方に拡開する下部傾斜ガイド面28cとを有している。
【0026】
上記左右の垂直ガイド面28bの対向面間の寸法は、移載装置12の横移動台15に設けた左右のガイドローラ22、22の外面間の寸法とほぼ等しくしてあり、その部分にガイドローラ22が摺接することにより、トレー6と横移動台15とが左右方向に正確に位置決めされる。
【0027】
次に、図7及び図8を参照して、移載装置12によりトレー6への荷の移載方法について説明する。なお、荷29は、例えば、自動車用エンジンのシリンダブロックであり、その下面に形成されている部品取付用の複数の取付孔30の配置と対応するように、上記横移動台15及びトレー6の荷支持ピン19、27のいちが予め設定されている。
【0028】
図7に示すように、荷の移載位置で停止したトレー6に荷29を移載する際は、入出庫ステーション等において、移載装置12に、横移動台15の荷支持ピン19により荷29を支持して移載した後、マスト10の荷台9を、移載装置12における横移動台15のガイドローラ22がトレー6よりも上方に位置するまで上昇させる。
【0029】
次いで、移載装置12の主移動台14を、トレー6に向かって、トレー6の各荷支持ピン27と、それに対応する荷29の取付孔30との平面視における左右方向を向く中心線が前後にほぼ整合する位置まで移動させる。
【0030】
次いで、荷台9と共に移載装置12を徐々に下降させる。すると、1点鎖線で示すように、横移動台15の左右のガイドローラ22、22がトレー6のガイド板28、28に案内されて下降する。この際に、もし、トレー6や移載装置12の停止位置が左右方向にずれていると、左右のガイドローラ22が両ガイド板28の上部傾斜ガイド面28aを通過する際に、横移動台15が左右いずれか一方に移動し、それに載置した荷29の左右方向の位置ずれが修正される。
【0031】
これにより、トレー6の荷支持ピン27と荷29の取付孔30との中心がほぼ整合し、荷29をトレー6の所定位置に正確に移載することができる。
【0032】
一方、トレー6に載置した荷29を出庫する際は、図8に示すように、移載装置12を、トレー6における左右の荷載置台25間の下方に、横移動台15の各荷支持ピン19と、それに対応する荷29の取付孔30との平面視における左右方向を向く中心線が、前後にほぼ整合する位置まで移動させる。
【0033】
次いで、荷台9と共に移載装置12を上昇させると、1点鎖線で示すように、横移動台15の左右のガイドローラ22が、左右のガイド板28の下部傾斜ガイド面28cに沿って上昇することにより、上記と同様、横移動台15は左右いずれか一方に移動し、そのトレー6に対しての左右方向の位置ずれが修正される。
【0034】
これにより、横移動台15の荷支持ピン19と荷29の取付孔30との中心がほぼ整合し、移載装置12の所定位置に荷を正確に移載することができる。
【0035】
以上説明したように、トレー6や移載装置12が左右方向に位置ずれしていても、横移動台15の1対のガイドローラ22が、1対のガイド板28の上下の傾斜ガイド面28a、28cを通過する際に、位置ずれが修正され、荷をトレー6や移載装置12の所定位置に正確に位置決めして移載することができる。
【0036】
従って、上記シリンダブロックのような不定形をなす荷29であっても、その取付孔30と、トレー6及び移載装置12に移載することができ、荷29を位置決めして載置する専用のパレットを用いる必要がなくなる。
【0037】
その結果、パレットの製造コストが大幅に削減されるだけでなく、トレー6も大型とする必要がないので、荷の保管効率が向上する。
【0038】
なお、上記実施形態においては、荷29に設けられた取付孔30と、トレー6及び移載装置12の荷支持ピン19、27とが整合するように位置決めして、荷を所定位置に移載する例を説明したが、取付孔のない荷を、トレー6や移載装置12の所定位置に正確に位置決めして移載する際にも適用することができる。
【0039】
上記実施例形態では、横移動台15にガイドローラ22を設けているが、これに代えて、摩擦抵抗の小さな合成樹脂等のガイド部材を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を適用したロータリーラックの概略平面図である。
【図2】移載装置の平面図である。
【図3】同じく側面図である。
【図4】同じく正面図である。
【図5】トレーの平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う縦断正面図である。
【図7】トレーに荷を移載するときの正面図である。
【図8】トレーから移載装置に荷を移載するときの正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ロータリーラック
2 基枠
3 駆動スプロケット
4 従動スプロケット
5 無端チェーン
6 トレー
7 内レール
8 外レール
9 荷台
10 マスト
11 入出庫ステーション
12 移載装置
13 基台
14 主移動台
15 横移動台
16 LMガイド
17 転倒防止部材
18 荷支持板
19 荷支持ピン
20 プラケット
21 枢軸
22 ガイドローラ
23 車輪
24 基板
25 上面板
26 荷支持板
27 荷支持ピン
28 ガイド板
28a 上部傾斜ガイド面
28b 垂直ガイド面
28c 下部傾斜ガイド面
29 荷
30 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーラックにおける所定位置で停止したトレーに向かって、床面に立設したマストを昇降する移載装置を往復移動させ、前記トレーに荷を出し入れする際のロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置であって、
前記移載装置を、その往復移動と直行する前記トレーの回走方向にも往復移動可能とし、前記トレーの回走方向の両端部に、前記移載装置の回走方向の両側端が摺接可能な位置決め用ガイド手段を対向状に設け、前記移載装置の昇降時において、その両側端が前記ガイド手段に摺接することにより、前記移載装置を前記トレーに対し予め定めた位置まで側方に移動させて位置決めするようにしたことを特徴とするロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置。
【請求項2】
トレーの回走方向の両端側に、上面に荷を載置可能な1対の荷載置台を、該1対の荷載置台間において移載装置が昇降し得るように立設し、両荷載置台の対向面にガイド手段としての1対のガイド板を設けた請求項1に記載のロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置。
【請求項3】
1対のガイド板が、対向面間の寸法が移載装置の幅よりも大きい上方に拡開する上部傾斜ガイド面と、同じく下方に拡開する下部傾斜ガイド面と、これら上部と下部の傾斜ガイド面と連続する、対向面間の寸法が移載装置の幅とほぼ等しい垂直ガイド面とを備えるものとした請求項2に記載のロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置。
【請求項4】
移載装置の両側端に、ガイド手段に沿って転動する1対のガイドローラを設けた請求項1ないし3のいずれかに記載のロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置。
【請求項5】
荷が、下面に複数の孔を有するものにおいて、トレー及び移載装置の上面に、位置決め時において前記孔の複数のものに嵌合可能な荷支持ピンを突設した請求項1ないし4のいずれかに記載のロータリーラックにおける荷移載時の位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−81214(P2008−81214A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260092(P2006−260092)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】