説明

ロータリ制御弁

【課題】3方向切替型ロータリ制御弁による油圧制御を高精度化する。
【解決手段】アウターロータ61の油路口75a、75bをインナーロータ62の隔壁ピン83で塞いだ状態からインナーロータ62を回転させると、油路口75a、75bと隔壁ピン83との位置がずれて圧油送出ポートBにインナーロータ62の制御溝部81b1、81b3が対する。圧油ポートPからの圧油が位置ずれによる開口から供給され、連結溝84から制御溝部81b1、81b2に供給され、油路口75bからアクチュエータのAポートへと供給される。フィードバックが掛かる構成としておけば、アウターロータ61が追従回転し、両ロータ62、61の回転角度が一致した時、油路口75bが隔壁ピン83により塞がれてアクチュエータへの圧油供給も停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧等の液圧や空圧等の流体圧制御に用いるロータリ制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロータリ制御弁は、例えば特許文献1に示すように、インナーロータを所定角度回転させると、アウターロータの油路口と隔壁ピンがずれ、圧油は圧油ポート、圧油用油路口、切換用環状溝、連結溝、制御用環状溝、連結用油路口、圧油送出ポート用環状溝を経て圧油送出ポートから油圧アクチュエータの駆動に供され、戻りの圧油は、圧油戻りポート、圧油戻りポート用環状溝、連結用油路口、制御用環状溝、連結溝、切換用環状溝、タンク用油路口を経てタンクポートから排出され、アウターロータが油圧アクチュエータの作動量に応じたフィードバックが係るようにしておけば、インナーロータの回転駆動制御によりアクチュエータが高精度に駆動制御できるというものが広く知られている。
【0003】
図1は、特許文献1に開示されている油圧制御用のロータリ制御弁の一例の組立断面図、図2はアウターロータとインナーロータを示す分解斜視図、図3は図1中のS−S線に沿うアウターロータとインナーロータの組立断面図である。
【0004】
このロータリ制御弁はケーシング10内にアウターロータ11を回転自在にして嵌合し、さらにアウターロータ11内にインナーロータ12を回転自在に嵌合して構成したものである。アウターロータ11とインナーロータ12は、それぞれ支持軸13、14を備えており、ケーシング10にボルト止めするカバー15、15から外側へ突出させてあり、またカバー15の内側に設けたベアリング16、16により支持してある。
【0005】
ケーシング10は、その内部に中空円筒部17を有し、圧油ポートP、タンクポートT、圧油戻りポートA及び圧油送出ポートBを形成してある。圧油ポートPとタンクポートTは軸線方向の中央側に位置し、圧油戻りポートAと圧油送出ポートBは圧油ポートPとタンクポートTをはさむようにして軸方向端部側に位置させてある。
【0006】
アウターロータ11は、胴部18と蓋部19とを組み合わせて有底の中空円筒形状としたものであり、ケーシング10の中空円筒部17の内周面に外周面を摺接させて嵌合している。図4で展開図として詳細に示すように、アウターロータ11の胴部18にはケーシング10の各ポートP、T、A、Bと対応する位置に四本の環状溝20〜23が設けてある。また圧油ポート用環状溝20とタンクポート用環状溝21の間で同一円周上に位置させて、それぞれ一対の圧油用油路口24、24及びタンク用油路口25、25が設けてある。これら油路口24、25は内周面へ貫通し、また連結溝26・・・により圧油用油路口24を圧油ポート用環状溝20へ、タンク用油路口25をタンクポート用環状溝21へ連通させている。さらに圧油戻りポート用環状溝22と圧油送出ポート用環状溝23には内周面へ貫通する複数の連結用油路口27が形成してある。
【0007】
図5で展開図として詳細に示すように、インナーロータ12は圧油用油路口24及びタンク用油路口25に対応する位置に設けた切換用環状溝28と、圧油戻りポート用環状溝22と圧油送出ポート用環状溝23に対応する位置に設けた制御用環状溝29、30とを有し、切換用環状溝28は、表面がランド部を形成する四つの隔壁ピン31・・・により四分割してある。そして切換用環状溝28の分割された部分である制御溝部28a、28b、28c、28dとは、連結溝32により交互に制御用環状溝29、30に連結される。また図6に示すように、隔壁ピン31の直径W1は切換用環状溝28の幅W2よりも大きく、かつ図1と図3に示すようにアウターロータ11の圧油用油路口24及びタンク用油路口25の開口径と等しくしてあり、アウターロータ11とインナーロータ12との相対回転角度差によって図7に示すように角度差に比例する面積の開口部分Xが生じるようになっている。隔壁ピン31は、例えば丸棒材を切換用環状溝28に打ち込み、頂部表面をインナーロータ12の表面に沿うように円筒研磨して形成してある。
【0008】
次にこの従来のロータリ制御弁の動作を説明する。なお以下ではケーシング10の圧油戻りポートAと圧油送出ポートBを、油圧シリンダや油圧モータなどの油圧アクチュエータに連結し、インナーロータ12の支持軸14を例えばパルスモータや油圧モータなどの駆動源に連結し、さらにアウターロータ11の支持軸13を油圧アクチュエータの作動量に応じて回転させるように、即ちフィードバックが掛かるようにした状態として説明する。
【0009】
まずアウターロータ11の圧油用油路口24及びタンク用油路口25の内周面側をインナーロータ12の隔壁ピン31により塞いだ状態を初期状態とし、駆動源を回転駆動してインナーロータ12を所定角度回転させる。すると圧油用油路口24及びタンク用油路口25と隔壁ピン31との位置がずれて、アウターロータ11の圧油用油路口24及びタンク用油路口25がインナーロータ12の制御溝部28a、28b、28c、28dに対して開口する。するとケーシング10の圧油ポートPを介して供給されている圧油は、アウターロータ11の圧油ポート用環状溝20、連結溝26、圧油用油路口24を通り、インナーロータ12の切換用環状溝28内、具体的には制御溝部28a〜28dのうちの圧油用油路口24が開口している2つの制御溝部に入り、連結溝32を通って制御用環状溝30に入り、さらに連結用油路口27を介してアウターロータ11の圧油送出ポート用環状溝23へ入り、圧油送出ポートBから油圧アクチュエータに供給され、油圧アクチュエータを駆動する。
【0010】
同時に、油圧アクチュエータからの戻りの圧油は圧油戻りポートAから圧油戻りポート用環状溝22、連結用油路口27、制御用環状溝29、連結溝32を介して切換用環状溝28内、具体的には制御溝部28a〜28dの内、タンク用油路口25が開口している2つの制御溝部に入り、タンク用油路口25を通り、タンクポートTを介して図示せぬタンクへ排出される。
【0011】
このとき、駆動源によるインナーロータ12の駆動量と油圧アクチュエータの作動量とをほぼリニアの関係にすることができる。例えば駆動源としてパルスモータを1パルス分だけ回転させると、インナーロータ12がその1パルス対応分の角度だけ回転し、圧油用油路口24、タンク用油路口25が切換用環状溝28に対してインナーロータ12の回転角に比例して開口する。上述のように開口部分Xの面積はインナーロータ12の回動量に応じて近似的にリニアに変化するものであり、またアウターロータ11がインナーロータ12の回転に追従し、隔壁ピン31が所定の遅れをもって開口部分Xを塞いで圧油の供給、排出を停止させる方向に動くため、油圧アクチュエータはパルスモータにより1パルス対応分だけ回転駆動されることになる。
【0012】
【特許文献1】特開平5−256304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら上述した従来のロータリ制御弁にあっては、圧油用油路口24、タンク用油路口25の位置が近接してしまい、そのためにスプール弁に比べて許容圧力が低くなり、圧油のリークが生じ、圧油用油路口24、タンク用油路口25間の開度に比例させて制御することが難しく、流体圧や空圧の制御性が低くなるため実用化が難しかった。
【0014】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなしたもので、高圧流体の制御に使用できるロータリ制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るロータリ制御弁は上記目的を達成するために、内部に中空円筒部を有するケーシングと、該ケーシング内に摺接嵌合する中空円筒形のアウターロータと、該アウターロータ内に摺接嵌合する円筒形のインナーロータとからなり、上記ケーシングは、圧油ポートと、上記圧油ポートを挟んで位置する圧油送出、圧油戻り用の一対の圧油出入ポートと、これらポートを挟んで位置する一対のタンクポートとを備え、上記アウターロータは、それぞれ円筒内周を一周するように、円筒軸方向で上記圧油ポートと対応する位置に設けた圧油ポート用環状溝、円筒軸方向で上記一対のタンクポートと対応する位置に設けたタンクポート用環状溝、及び円筒軸方向で上記一対の圧油出入ポートと対応する位置に設けた圧油出入ポート用環状溝を備えるとともに、上記各環状溝は、外周面へ貫通して上記ケーシングの対応するポートに連結するための複数の連結用油路口を有し、上記インナーロータは、それぞれ円筒外周を一周するように、円筒軸方向で上記圧油ポート用環状溝と対応する位置に設けた圧油ポート制御用環状溝、上記一対のタンクポート用環状溝と対応する位置に設けたタンクポート制御用環状溝、上記圧油出入用環状溝と対応する位置に設けた圧油出入制御用環状溝、上記圧油ポート制御用環状溝と一の上記圧油出入制御用環状溝、上記圧油ポート制御用環状溝と他の上記圧油出入制御用環状溝の間をそれぞれ連結する一対の内側連結溝、及び一の上記圧油出入制御用環状溝と上記タンクポート制御用環状溝の間及び他の上記圧油出入制御用環状溝と上記タンクポート制御用環状溝の間をそれぞれ連結する一対の外側連結溝を備え、上記圧油出入制御用環状溝のそれぞれに、上記各制御用環状溝内で上記圧油出入用環状溝と対応させて上記圧油出入用環状溝の上記連結用油路口の開口形状と同一形状の複数のランド部を外周方向で対応する位置に複数個ずつ配して上記圧油出入制御用環状溝をそれぞれ複数に分断してなり、上記内、外側連結溝は、上記圧油出入制御用環状溝の上記ランド部により分断された箇所に一つずつ対応させて交互に設け、
上記アウターロータと上記インナーロータとの相対回転による上記ランド部の位置の移動によって、上記アウターロータの上記連結用油路口が、上記アウターロータと上記インナーロータの相対回転角度差に比例して開口可能としてなることを特徴とする。
【0016】
請求項2に係るものは、請求項1のロータリ制御弁において、上記複数のランド部に4個ずつ配して上記圧油出入制御用環状溝をそれぞれ四半周ずつに分断し、上記内、外側連結溝は、上記圧油出入制御用環状溝の上記ランド部により四半周ずつ分断してなることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係るものは、請求項1または2のロータリ制御弁において、上記交互に設けた上記内、外側連結溝のうち上記環状溝と上記制御用環状溝のうち同一の上記環状溝と上記制御用環状溝に連ならないものの位置を円筒軸方向で一致させてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るロータリ制御弁は以上説明してきたように、内部に中空円筒部を有するケーシングと、該ケーシング内に摺接嵌合する中空円筒形のアウターロータと、該アウターロータ内に摺接嵌合する円筒形のインナーロータとからなるものとしたので、ロータリ制御弁であってもスプール弁と同等に許容圧力を高めることができ、また切換用環状溝内で圧油用油路口及びタンク用油路口と対応させて配した同面積の隔壁部により両油路口の開口面積変化を制御するようにしたので、高精度制御が実現できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
図8は本発明の一実施例に係るロータリ制御弁の組立断面図、図9はアウターロータとインナーロータを示す分解斜視図、図10(A1、C2)はそれぞれ図8中のT−T線に沿うアウターロータとインナーロータの組立状態及び動作状態の断面図、図10(A2、C1)は同P−P線に沿う同断面図、図10(B1)は同B−B線、図10(B2)は同A−A線に沿う同断面図である。
【0021】
本実施例のロータリ制御弁は、図1に示す従来のロータリ制御弁と同じく、ケーシング60内にアウターロータ61を回転自在にして嵌合し、さらにアウターロータ61内にインナーロータ62を回転自在に嵌合して構成したものである。アウターロータ61とインナーロータ62は、それぞれ支持軸63、64を備えており、ケーシング60にボルト止めするカバー65、65から外側へ突出させてあり、またカバー65の内側に設けたベアリング66、66により支持してある。
【0022】
ケーシング60は、その内部に中空円筒部67を有し、圧油ポートP、一対のタンクポートT、圧油出入ポートA、Bを形成してある。圧油ポートPは軸線方向の略中央に位置し、圧油出入ポートA、Bは圧油ポートPをはさむように位置させてあり、これらを外側からはさむように一対のタンクポートT、Tが設けてある。なお、ケーシング60の外形状は円筒形状でなくともよい。
【0023】
アウターロータ61は、胴部68と一対の蓋部69とを組み合わせて中空円筒形状としたものであり、ケーシング60の中空円筒部67の内周面に外周面を摺接させて嵌合している。
【0024】
図11(A)で詳細に示すように、アウターロータ61の胴部68にはケーシング60の各ポートP、A、B、T、Tと対応する位置に五本の環状溝70、71a、71b、及び72、72が設けてある。また各環状溝には内周面の軸線に沿って位置させて、それぞれ一対または二対の油路口74、75a、75b、76が設けてある。これら油路口74、75a、75b、76は、それぞれアウターロータ61の周壁内面を貫通している。
【0025】
図11(B)で詳細に示すように、インナーロータ62はアウターロータ61の環状溝70〜72と対応する位置に設けた制御用環状溝80、81a、81b、82、82を有し、圧油出入ポートA、Bに対応するアウターロータ61の環状溝71a、71bに対応する制御用環状溝81a、81bを例えば四つの隔壁ピン83・・・により四分割してある。そして切換用環状溝81a、81bの分割された部分である制御溝部81a1〜81a4、81b1〜81b4は、それぞれ連結溝84により交互に制御用環状溝29、30に連結させてある。なお、隔壁ピン83の直径W1と環状溝71a、71bの幅W2の関係は、図3に示した従来例のアウターロータ11の圧油用油路口24及びタンク用油路口25の開口径の関係と同様としてあり、アウターロータ61とインナーロータ62との相対回転角度差によって、やはり図7と同様に角度差に比例して変化する面積の開口部分Xが生じるようになっている。隔壁ピン83は、従来の例と同様に、例えば丸棒材を環状溝に打ち込み、それぞれ頂部表面をインナーロータ62の表面に沿うように円筒研磨してランド部を複数形成するが、その他の手段によってもよいことはもちろんである。なお内、外側連結溝84のうち同一の制御用環状溝80、81a、81b、82、82に連ならないものの位置は、アウターロータ61やインナーロータ62の円筒軸方向で一致させてある。
【0026】
次に本実施例に係るロータリ制御弁の動作を説明する。なお以下では図12に示すケーシング60の圧油出入ポートA、Bを、油圧シリンダや油圧モータなどの油圧アクチュエータ100に連結し、インナーロータ62の支持軸64を例えばパルスモータや油圧モータなどの駆動源となる制御入力モータ110に連結し、さらにアウターロータ61の支持軸63をフィードバック用のタイミングプーリ120に連結し、油圧アクチュエータ100に取り付けたタイミングプーリ130に例えばタイミングベルト140を掛け回し、油圧アクチュエータ100の作動量に応じて回転させるように、即ちフィードバックが掛かるように構成した状態として説明する。
【0027】
全体的な動作を説明すると、
(1)制御入力モータ110により入力ロータとなるインナーロータ62の支持軸64を回転駆動し、図12に示す矢印Inの方向に制御角度を与える。
(2)すると、ロータリ制御弁の圧油出入ポートBが開き、圧油がロータリアクチュエータ100に導かれる。
(3)同時に、ロータリ制御弁の圧油出入ポートAも開き、ロータリアクチュエータ100内の圧油が排出される。
(4)このとき、ロータリアクチュエータ100の出力軸100aが回転し(回転方向を矢印Outで示す)、回転トルクを発生する。
(5)ロータリアクチュエータ100の出力回転はタイミングプーリ130を介して、ロータリ制御弁のアウターロータ61に伝わる。
(6)そして入力ロータ62の回転角度と、アウターロータ61の回転角度が一致した時、ロータリアクチュエータ100の出力軸100aは停止する。
すなわち、常に、入力ロータ62の回転方向にアウターロータ61が追従するように構成することで、ロータリアクチュエータ100を任意の角度で制御することができる。ベルト伝導ではなく歯車伝導の場合は、回転方向が逆になるので、ロータリアクチュエータ100とロータリ制御弁のポート接続は、逆になる。すなわち、アウターロータ61を駆動側、インナーロータ62を被駆動側としてもよい。
【0028】
次に、ロータリ制御弁内の詳細な動作を説明する。
(1)アウターロータ61の油路口75a、75bの内周面側をインナーロータ62の隔壁ピン83により塞いだ状態(図10(B1)、(B2))を初期状態とする。このとき、圧油ポートPからの圧油は、アウターロータ61の油路口74から内部に入り、アウターロータ61の環状溝70とインナーロータ62の制御用環状溝80で形成される環状溝内にロック状態でとどまっている。
(2)この状態から制御入力モータ110を回転駆動してインナーロータ62を所定角度、例えば5度だけ図中反時計方向へ回転させると、油路口75a、75bと隔壁ピン83との位置がずれ、図10(A1、A2)に示すように、圧油出入ポートBの油路口75bがインナーロータ62の制御溝部81b1、81b3に対して開口する。
(3)すると、圧油ポートPからの圧油が油路口75bと隔壁ピン83との位置ずれによる開口から供給され、連結溝84から制御溝部81b1、81b2に供給され、油路口75bからロータリアクチュエータ100のAポートへと供給され、ロータリアクチュエータ100は所定の方向へ回転する。するとタイミングベルト140によるフィードバックによりアウターロータ61も入力ロータ62の回転方向に向かって追従するように回転し、入力ロータ62の回転角度と、アウターロータ61の回転角度が一致した時、油路口75bがインナーロータ62の隔壁ピン83により塞がれ、ロータリアクチュエータ100の出力軸100aが停止し、ロータリアクチュエータ100への圧油の供給も停止する。
(4)一方、前記(2)の状態では同時に圧油出入ポートAの油路口75aがインナーロータ62の制御溝部81a1、81a3に対して開口し、圧油出入ポートAの油路口75aがインナーロータ62の制御溝部81a1、81a3に対して開口する。すると、ロータリアクチュエータ100で仕事をし、排出された圧油が圧油出入ポートAの油路口75aから油路1a内にはいり、連結溝84を介して制御用環状溝72、82に入り、制御用環状溝72の油路口76からタンクポートTを介して図示せぬタンクへ排出され、タンクへと戻る。
(5)制御入力モータ110を回転駆動してインナーロータ62を所定角度、例えば5度だけ図中時計方向へ回転させた場合には、上述した圧油の入り、出は逆になるが同様の作用によりアウターロータ61が入力ロータ62の回転方向に向かって追従するように回転し、入力ロータ62の回転角度と、アウターロータ61の回転角度が一致した時、油路口75bがインナーロータ62の隔壁ピン83により塞がれ、アウターロータ61ロータリアクチュエータ100の出力軸100aが停止し、ロータリアクチュエータ100への圧油の供給も停止する。
【0029】
このとき、駆動源によるインナーロータ62の駆動量と油圧アクチュエータの作動量とをほぼリニアの関係にすることができる。例えば駆動源としてパルスモータを1パルス分だけ回転させると、インナーロータ62がその1パルス対応分の角度だけ回転し、油路口75a、75bが切換用環状溝81a、81bに対してインナーロータ62の回転角に比例して開口する。すなわち開口部分Xの面積がインナーロータ62の回動量に応じて近似的にリニアに変化するものであれば、アウターロータ61がインナーロータ62の回転に追従し、隔壁ピン83が所定の遅れをもって開口部分Xを塞いで圧油の供給、排出を停止させる方向に動くため、油圧アクチュエータはパルスモータにより1パルス対応分だけ回転駆動されることになる。
【0030】
また圧油用油路口、タンク用油路口の位置が近接していない配置にすることが容易にできるため、従来のロータリ弁に比べて軸方向での全長は若干長くはなるが、許容圧力が非常に高くなり、圧油のリークがほとんど生じなくなり、油路口の開度に比例させた制御が大変にやり易くなり、流体圧や空圧の制御性が高まり、したがって実用化が高まる。本願発明者が行った実験では、210Kg/cmという産業機械で要求される圧力でのリーク量も微少なものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来のロータリ制御弁の一例に係るロータリ制御弁の組立断面図
【図2】図1の弁のアウターロータとインナーロータを示す分解斜視図
【図3】図1中のS−S線に沿うアウターロータとインナーロータの組立断面図
【図4】図1の弁のアウターロータの側壁面の展開図
【図5】図1の弁のインナーロータの側壁面の展開図
【図6】図1の弁の切換用環状溝と隔壁ピンとの寸法関係を示す平面図
【図7】図1の弁の隔壁ピンによる油路口の開口制御状態を示す平面図
【図8】本発明の一実施例に係るロータリ制御弁の組立断面図
【図9】アウターロータとインナーロータを示す分解斜視図
【図10】図8中のT−T線、P−P線、B−B線、A−A線に沿うアウターロータとインナーロータの組立状態及び動作状態の断面図
【図11】アウターロータとインナーロータ及びそれらに設けたポートの位置関係を示す図
【図12】本発明の一実施例に係るロータリ制御弁を用いたロータリアクチュエータの駆動例を示す斜視図
【符号の説明】
【0032】
60:ケーシング
61:アウターロータ
62:インナーロータ
63、64:支持軸
65:カバー
66:ベアリング
67:ケーシングの中空円筒部
68:アウターロータの胴部
69:アウターロータの蓋部
70、71a、71b、72:環状溝
21:タンクポート用環状溝
74、75a、75b、76:油路口
80、81a、81b、82、82:制御用環状溝
81a1〜81a4、81b1〜81b4:制御溝部
83:隔壁ピン
84:連結溝
100:油圧アクチュエータ
110:制御入力モータ
120、130:タイミングプーリ
140:タイミングベルト
P:圧油ポート
T:タンクポート
A、B:圧油出入ポート
W1:隔壁ピンの直径
W2:環状溝の幅


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中空円筒部を有するケーシングと、該ケーシング内に摺接嵌合する中空円筒形のアウターロータと、該アウターロータ内に摺接嵌合する円筒形のインナーロータとからなり、
上記ケーシングは、
圧油ポートと、
上記圧油ポートを挟んで位置する圧油送出、圧油戻り用の一対の圧油出入ポートと、
これらポートを挟んで位置する一対のタンクポートとを備え、
上記アウターロータは、それぞれ円筒内周を一周するように、
円筒軸方向で上記圧油ポートと対応する位置に設けた圧油ポート用環状溝、
円筒軸方向で上記一対のタンクポートと対応する位置に設けたタンクポート用環状溝、及び
円筒軸方向で上記一対の圧油出入ポートと対応する位置に設けた圧油出入ポート用環状溝を備えるとともに、
上記各環状溝は、外周面へ貫通して上記ケーシングの対応するポートに連結するための複数の連結用油路口を有し、
上記インナーロータは、それぞれ円筒外周を一周するように、
円筒軸方向で上記圧油ポート用環状溝と対応する位置に設けた圧油ポート制御用環状溝、
上記一対のタンクポート用環状溝と対応する位置に設けたタンクポート制御用環状溝、
上記圧油出入用環状溝と対応する位置に設けた圧油出入制御用環状溝、
上記圧油ポート制御用環状溝と一の上記圧油出入制御用環状溝、上記圧油ポート制御用環状溝と他の上記圧油出入制御用環状溝の間をそれぞれ連結する一対の内側連結溝、及び
一の上記圧油出入制御用環状溝と上記タンクポート制御用環状溝の間及び他の上記圧油出入制御用環状溝と上記タンクポート制御用環状溝の間をそれぞれ連結する一対の外側連結溝を備え、
上記圧油出入制御用環状溝のそれぞれに、上記各制御用環状溝内で上記圧油出入用環状溝と対応させて上記圧油出入用環状溝の上記連結用油路口の開口形状と同一形状の複数のランド部を外周方向で対応する位置に複数個ずつ配して上記圧油出入制御用環状溝をそれぞれ複数に分断してなり、
上記内、外側連結溝は、上記圧油出入制御用環状溝の上記ランド部により分断された箇所に一つずつ対応させて交互に設け、
上記アウターロータと上記インナーロータとの相対回転による上記ランド部の位置の移動によって、上記アウターロータの上記連結用油路口が、上記アウターロータと上記インナーロータの相対回転角度差に比例して開口可能としてなることを特徴とするロータリ制御弁。
【請求項2】
請求項1のロータリ制御弁において、
上記複数のランド部に4個ずつ配して上記圧油出入制御用環状溝をそれぞれ四半周ずつに分断し、
上記内、外側連結溝は、上記圧油出入制御用環状溝の上記ランド部により四半周ずつ分断してなることを特徴とするロータリ制御弁。
【請求項3】
請求項1または2のロータリ制御弁において、
上記交互に設けた上記内、外側連結溝のうち上記環状溝と上記制御用環状溝のうち同一の上記環状溝と上記制御用環状溝に連ならないものの位置を円筒軸方向で一致させてなることを特徴とするロータリ制御弁。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−216164(P2009−216164A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59815(P2008−59815)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(591004951)有限会社高谷エンジニアリング (3)
【Fターム(参考)】