説明

ロータリ除雪車におけるハイブリッドシステムの冷却機構

【課題】簡易な構成で効率よくハイブリッドシステム全体を冷却することが可能であり、また、ハイブリッドシステムの構成機器の自由な配置位置を確保しながらも、設置環境をできるだけ損ねない冷却機構を提供する。
【解決手段】少なくともエンジンと、ラジエタファンを備えたラジエタと、当該エンジン及びラジエタが配置される機関室と、電力を動力源の一部として用いるハイブリッドシステムとを備えて成るロータリ除雪車のハイブリッドシステムを冷却するための冷却機構であって、機関室の下方面側が完全に塞がれる一方で、機関室を覆う機関室カバーの一方の側面にはラジエタグリルが設けられ、前記ラジエタグリルが配置される一方の側面とは対向する機関室カバー側面には外気取り入れ口が設けられ、ラジエタファンにより外気取り入れ口から機関室に取り込まれた外気が、ラジエタグリルを介して機関室外部に排出される冷却機構で解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源の一部として電力を使用するハイブリッドシステムを搭載するロータリ除雪車における、当該ハイブリッドシステムの冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、オーガ、ブロワ及びシュートなどを車両に搭載しているロータリ除雪車がよく知られている。この種の従来公知のロータリ除雪車においては、オーガの回転作用によって堆積した雪を切り崩し、さらに、この切り崩された雪をブロワにより吸引・集積して、筒状のシュートを介して放出することで、道路などから雪を排除する構成を一般的に有している。その一方で、昨今、エンジンなどの動力源の少なくとも一部として電力を使用するハイブリッドシステムが注目を集めている。この種のハイブリッドシステムは、車両などを動作させるための動力源の一部に電力を使用することから、環境負荷を低減できるものであり、環境問題を重要視する自動車産業界において種々様々な車両に搭載されるようになってきている。そのため、このようなハイブリッドシステムは、本願で取り上げるようなロータリ除雪車の動力システムとしても採用されることが提案されるようになってきた。
【0003】
このように、車両の移動用の動力源の一部としてはもとより、先に記述したオーガや、ブロワなどの機構部の動力源の一部としても電力を使用するためのハイブリッドシステムをロータリ除雪車に採用する場合、このハイブリッドシステムを用いて、例えば、車両を移動させたり、オーガを駆動させたり、あるいは、ブロワに吸引させるなどの各種機構部の動作を実施しようとすると、大電流を消費することが必要不可欠であり、このハイブリッドシステムの各種構成機器(例えば、電動モータ、発電機、インバーター、昇圧チョッパーなど)の温度、特に、大容量の電池の温度が高温となるため、これらハイブリッドシステムの構成機器を効率よく冷却するための冷却機構が要求されることになる。
【0004】
ここで、本発明が適用されるようなロータリ除雪車は、道路などに堆積した積雪を除去するための車両であるため、除雪車が走行することを予定される道路には本来的に雪が存在していたり、あるいは、雪が解けた水が存在しているなど、過酷な道路条件乃至使用条件で用いられることが前提であり、ハイブリッドシステムを搭載した場合には、このハイブリッドシステムへ道路からの水が掛かることは、電装部品への水の侵入の観点から極力回避乃至防止したいとの要望が本質的に存在している。
【0005】
そこで、ハイブリッドシステムの電装部品へ水が掛かることを回避するために、ハイブリッドシステム自体を密封構造にすることが考えられるが、しかしながら、このように密封構造でハイブリッドシステムを構成してしまうと、電池や、これに付随するハイブリッドシステムの各種機器の温度が高温になってしまうという先に記述した問題点が特に顕著になってしまう結果、電池を含めたハイブリッドシステムの各種機器を効率良く冷却することがさらに要求されることになる。
【0006】
この解決策の一つとして、密封されたハイブリッドシステムの冷却のために、専用の冷却器乃至冷却機構を設けることが最も簡易的で直接的な対応策であるものの、この場合、ロータリ除雪車のコストが大きく上昇してしまうことが避けられないという問題が発生する。また、ロータリ除雪車本体の重量が増加してしまい、ハイブリッドシステムを搭載したにも拘らず環境負荷への貢献度が減少してしまうことも懸念される。したがって、ハイブリッドシステムを密封構造とし、さらに専用の冷却器などを備える構成を採用することは現実的には難しい。そこで、これらの問題点を回避するため、車両に搭載されたエンジンなどを冷却するために元々車両の機関室に装備されているラジエタが有するラジエタファンによる外気取り込み作用を、ハイブリッドシステムの冷却用にも使用できないかが検討された。
【0007】
しかしながら、従来公知の除雪車では、エンジンなどが配置される機関室の下方面側が解放されていて、さらに、当該除雪車の進行方向でみて機関室後方側にラジエタグリルを装備していて、ラジエタ用のラジエタファンを用いて、除雪車の機関室における下方面側から外部空気を取り込み、除雪車の後方に設けたラジエタグリルから冷却用に取り込まれた外気を排出するという構成が採用されている。このような従来構成の場合、エンジンなどが配置される機関室の下方面側から、特にラジエタファンの機関室内部における配置位置の直近下部近傍から冷却用の外部空気を吸引することになり、この冷却用の外気がラジエタグリルから直ぐに機関室の外部に排出されてしまうので、当該ラジエタファンによっては機関室全体にわたる外気の空気流が発生しないため、ラジエタ内部を通過するエンジン用の冷却水などは外気によって冷却可能であっても、機関室全体の冷却効果は期待することができない。したがって、機関室に配置されることになるハイブリッドシステムの冷却効果が期待できないという問題があった。また、機関室の下方面側から冷却用の外気を吸引することになるため、道路上に存在する雪や、これが解けた水などがラジエタファンの作用によって外気と共に機関室内部に吸い込まれてしまい、ハイブリッドシステムにこれら雪や水が掛かってしまうことが考えられる。したがって、このような従来公知の構成のままでは、ロータリ除雪車に搭載されるハイブリッドシステムの冷却機構として採用することができないという問題があった。
【0008】
なお、特許文献1に開示される発明では、ハイブリッド式の建設機械におけるバッテリを冷却するための冷却構造乃至冷却機構が開示されており、この特許文献1では、乗員が搭乗するキャビン内を冷却するための空調装置からの冷熱を利用して、バッテリを冷却する構成を開示している。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されるような構成では、乗員が搭乗するキャビンにバッテリを隣接して配置させる必要があるため、バッテリ配置位置が限定されてしまうことから、ハイブリッドシステムを構成する構成機器の配置に制約が生じてしまうという問題がある。また、特許文献1の構成ではバッテリだけしか冷却することができず、その他のハイブリッドシステムを構成する要素、例えば、電動モータや発電機、さらには、インバーターや昇圧チョッパーなどの冷却に関しては何ら考慮されていないため、ハイブリッドシステム全体を冷却することができないという問題がある。さらにまた、キャビンを冷却するための空調装置を利用していることから、この空調装置は比較的高価な冷媒式の冷却装置を利用することが前提であり、キャビンに加えてバッテリまでも冷却させようとすると、高性能な、ひいてはさらに高価な冷媒式の空調装置を用意する必要があり、コスト的に不利であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、コストを大幅に上昇させずに簡易な構成で効率よくハイブリッドシステム全体を冷却することが可能なロータリ除雪車におけるハイブリッドシステム冷却機構であって、さらに、ハイブリッドシステムを構成する構成機器の自由な配置位置を確保しながらも、当該ハイブリッドシステムの設置環境をできるだけ損ねることのない冷却機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明では、
少なくともエンジンと、ラジエタファンを備えたラジエタと、当該エンジン及びラジエタが配置される機関室とを備えて成り、さらに、電力を動力源の一部として用いるために、前記機関室に配置されるハイブリッドシステムを備えて成るロータリ除雪車における、前記ハイブリッドシステムを冷却するための冷却機構であって、
前記機関室の下方面側が、開口をなくすことで塞がれる一方で、前記機関室を覆う機関室カバーの一方の側面には、前記ラジエタファンが取り込んだ外気を機関室外部に排出するためのラジエタグリルが設けられ、
前記ラジエタグリルが配置される一方の側面とは対向する機関室カバー側面には、外気取り入れ口が設けられ、
前記ラジエタファンにより前記外気取り入れ口から前記機関室に取り込まれた外気が、前記ラジエタグリルを介して、前記機関室外部に排出されることを特徴とするハイブリッドシステムの冷却機構を提案する。
【0012】
さらに、本発明において、前記ラジエタグリルが設けられる側面が、ロータリ除雪車の進行方向で見た機関室カバー後方の側面である一方で、前記外気取り入れ口が設けられる側面が、ロータリ除雪車の進行方向で見た機関室カバー前方の側面であると好適である。
【0013】
さらにまた、本発明において、前記ハイブリッドシステムの電池が配置される電池室を密閉構造にして、当該電池室を前記機関室の外部に設けると共に、
当該電池室に機関室内の空気を取り込むための導風ダクトと、前記導風ダクトを介して取り込まれた空気を当該電池室から排出する排出口とを設け、
当該排出口が前記ラジエタファンの送風方向で見た当該ラジエタファン配置位置よりも後方で、且つ、当該ラジエタファンによる排出空気の空気流の流れが存在する位置に配置されると好適である。
【0014】
さらにまた、本発明において、前記導風ダクトに、前記電池室へ機関室内の空気を取り込むための導風ファンが設けられていると好適である。
【0015】
さらにまた、本発明において、前記導風ファンがファン風量を調整可能に構成されていると好適である。
【0016】
さらにまた、本発明において、前記外気取り入れ口が、外部からの水の浸入を防ぐ侵入防止構造を備えていると好適であり、さらに、前記外気取り入れ口には、フィルターが配置されていると好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の冷却機構によれば、少なくともエンジンと、ラジエタファンを備えたラジエタと、当該エンジン及びラジエタが配置される機関室とを備えて成り、さらには、電力を動力源の一部として用いるために、前記機関室に配置されるハイブリッドシステムを備えて成るロータリ除雪車において、前記機関室の下方面側は、開口をなくすことで塞がれる一方で、前記機関室を覆う機関室カバーの一方の側面には、前記ラジエタファンが取り込んだ外気を機関室外部に排出するためのラジエタグリルが設けられ、さらに、前記ラジエタグリルが配置される一方の側面とは対向する機関室カバー側面には、外気取り入れ口が設けられ、前記ラジエタファンにより前記外気取り入れ口から前記機関室に取り込まれた外気が、前記ラジエタグリルを介して、前記機関室外部に排出されるように構成されているので、元来ロータリ除雪車に設けられているラジエタのラジエタファンの作用により、機関室内部を略全体にわたり外気が通り抜けるようになり、当該機関室内に配置されるハイブリッドシステムの冷却用に、ラジエタファンにより取り込まれた外気の空気流を使用することが可能となる結果、特別な冷却器や冷却機構を設ける必要がなくなるので、コストを大幅に上昇させずに、簡易な構成でハイブリッドシステム全体を冷却することが可能となる。また、ハイブリッドシステムが配置される機関室内部全体が冷却されることになる結果、ハイブリッドシステムを構成する構成機器(例えば、電池、電動モータ、発電機、インバーター、昇圧チョッパーなど)を冷却するための配置位置上の制約がほぼなくなり、自由な配置位置を確保できるため、これら構成機器の配置に関する設計上の制約も改善されることになる。さらに、機関室の下方面側が塞がれているので、ハイブリッドシステムに道路からの水が掛かることが無くなり、このように冷却機構を構成したとしても、ハイブリッドシステムの機関室内における設置環境を損ねることがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のハイブリッドシステム冷却機構が採用されるロータリ除雪車の一実施例の概略側面図である。
【図2】図1に示されたロータリ除雪車を左斜め後方の上側から眺めた概略斜視図である。
【図3】本発明のハイブリッドシステム冷却機構を説明するための斜視図であり、外気取り入れ口を残して機関室のカバーが外された状態のロータリ除雪車を、左斜め後方の上側から眺めた概略斜視図である。
【図4】本発明のハイブリッドシステム冷却機構を説明するための斜視図であり、外気取り入れ口を残して機関室のカバーが外された状態のロータリ除雪車を、右斜め後方の上側から眺めた概略斜視図である。
【図5】本発明の外気取り入れ口の一実施例を説明するための概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
まず、本発明のハイブリッドシステム冷却機構が採用されるロータリ除雪車の一実施例を示した概略側面図である図1と、当該図1に示されたロータリ除雪車を左斜め後方の上側から眺めた概略斜視図である図2とを用いて、本発明にかかるロータリ除雪車100の概略構成を説明する。なお、本発明にかかるロータリ除雪車100は、動力源の一部として電力を使用するためのハイブリッドシステムが搭載されており、当該ハイブリッドシステムの冷却機構以外は、当業者にはよく知られているため、全体的な構成は概略で説明する。
【0020】
図1及び図2において、参照符号100はロータリ除雪車全体を示しており、当該ロータリ除雪車100は、主として、機関室10を備えた道路用の走行車両2と、該走行車両2の前方に設けられた除雪装置3とで構成されている。また、この除雪装置3には、当該除雪装置3の左右方向に沿って集雪用のオーガ5が設けられており、このオーガ5と走行車両2との間で、前記除雪装置3に設けられ該オーガ5により集められた雪を所定の方向に排雪するブロアやシュートを備えた排雪装置6が設けられている。なお、前記オーガ5は、概略で描かれていることから詳細には示されていないが、例えば、ヘリカルリボン形状を有しており、前記除雪装置3の左右のオーガ支持部材の間で回転可能に支持されている。さらに、走行車両2には、搭乗者が乗るためのキャビン7が備えられている。
【0021】
ここに図示したようなロータリ除雪車100では、オーガ5の回転作用によって堆積した雪を切り崩し、さらに、この切り崩された雪をブロワにより吸引・集積して、筒状のシュートを介して放出することで、道路などから雪を排除するように構成されている。
【0022】
次いで、図3及び4に示されるように、走行車両2の機関室10には、ロータリ除雪車100の進行方向で見て中央部から後方側よりにエンジン11が搭載されており、このエンジン11に用いられる冷却水などを冷却するためのラジエタ12が、エンジン11よりもさらに後方側に配置されている。なお、図3及び図4は、本発明のハイブリッドシステム冷却機構を説明するための概略斜視図であり、図3は、後述する外気取り入れ口18を残して、機関室の上部及び側面を覆う機関室カバー20を取り外した状態のロータリ除雪車100を左斜め後方の上側から眺めた概略斜視図である一方で、図4は、右斜め後方の上側から眺めた概略斜視図である。さらに、図4は、後述する導風ダクト30及び導風ファン31を見やすくするために、機関室内部の一部機器(例えば、発電制御用のインバータ27、駆動制御用のインバータ28、昇圧チョッパー29など)をも外した状態を図示している。また、ラジエタ12などが配置される機関室10の最後方側における機関室カバー20には、ラジエタグリル22が設けられている(図2参照)。さらにまた、ラジエタ12は、当該ラジエタ12内部を流れる冷却水などを冷却するための外気を機関室10の外部から当該機関室10へ取り込み、ラジエタ12に供給乃至吹き付けるためのラジエタファン14を有しており、当該ラジエタファン14は、例えば、通常公知の如く羽根車として構成されていて、車両進行方向で見た場合のラジエタ12の前方乃至直前に設けられている。図中では、ラジエタファン14付近に他の構成機器が配置されていたり、ファンカバーなどが存在するため、当該ラジエタファン14は、ファンカバーだけを代表して描いた。なお、図示した例のように、外気取入れ口18を機関室カバー20とは別体で配置し、当該機関室カバー20の対応する位置に外気取り入れ口18が嵌挿される開口を設けることで、外気取入れ口18を機関室カバー20の一側面に設けても良いし、外気取入れ口18を機関室カバー20の一側面を加工することで、機関室カバー20と一体的に設けることもできる。
【0023】
さらにまた、本発明にかかるロータリ除雪車100は、電力を動力源の一部として用いるためのハイブリッドシステムが搭載されており、当該ハイブリッドシステムは、通常公知のハイブリッドシステムと同様の構成機器を有している。図示した例では、例えば、ハイブリッドシステムの電池としてのニッケル水素バッテリ25と、ハイブリッドシステムのブレーカー26と、発電制御用のインバータ27と、駆動制御用のインバータ28と、電池25に蓄えられた電力の電圧を昇圧するための昇圧チョッパー29と、発電機24となどが、ロータリ除雪車100の機関室10内部に配置されているのが見て取れる。なお、ここに図示した例では、電池25は、機関室10の外部に設けられているが、設計によっては、この電池25を機関室10の内部に配置することも可能であり、この点についても後述する。
【0024】
このような各種機器を有するハイブリッドシステムがロータリ除雪車100の機関室10に搭載された場合に、従来技術のようにロータリ除雪車100の機関室10下方面側が解放されていると、ラジエタファン14が回転駆動することで機関室内部に取り込まれる冷却用の外気は、当該機関室10の下方面側から、特に、ラジエタファン14が配置されている直近下部近傍の下方面側から、機関室10内部に取り込まれ、ラジエタ12及びラジエタグリル22を介して、ロータリ除雪車100の外部に直ちに排出されてしまうことになる。したがって、機関室10内部における前方側の雰囲気空気は、殆どラジエタファン14により取り込まれた外気により置換されないため、当該機関室10の内部、特に機関室内部の前方側に配置されているハイブリッドシステムの各種構成機器は、ラジエタファン14により取り込まれた外気による空気流によっては冷却されることがない。すなわち、高温となるハイブリッドシステムの各種構成機器は、それらの配置位置における雰囲気温度に対する自身の放熱作用でしか冷却されないことになり、これら各種構成機器の冷却効率が非常に悪いことになる。さらに、このような機関室10の下方面側から外気を取り入れる構成では、機関室10内部に道路からの雪やこれが解けた水などが浸入してしまうことになるため、水を非常に嫌う電装部品にまで、当該侵入してきた水がかかることが考えられ、ハイブリッドシステムの動作に悪影響を及ぼしてしまうことが懸念される。
【0025】
そこで、本発明では、例えば機関室10の下部面側に隔壁などの壁面を設けることで、当該機関室10の下方面側から機関室内部へ続く開口を全てなくし、機関室10の下方面側を完全に塞ぐことでこれら問題点に対処することを考え出した。この場合に、機関室10内部の空気全体を、ラジエタファン14の作用により取り込まれる外気によって効率良く置換するために、ラジエタファン14が取り込んだ外気を排出するためのラジエタグリル22が配置されている機関室カバー20の側面乃至壁面に対して、対向する側面に外気取り入れ口18を設けている。このように構成しておけば、元来ロータリ除雪車100に設けられているラジエタ12のラジエタファン14の回転作用により機関室10内部に取り込まれる外気の空気流が、機関室内部略全体にわたり通り抜けるようになるため、当該機関室10内部に配置されるハイブリッドシステムの各種構成機器(例えば、電池25、ハイブリッドシステムのブレーカー26、発電制御用のインバータ27、駆動制御用のインバータ28、昇圧チョッパー29、発電機24など)を冷却するために、外気による空気流を利用することが可能になるため、特別な冷却器や冷却機構を設ける必要がなく、安価で且つ簡易な構成でハイブリッドシステム全体を冷却することが可能となる。
【0026】
また、このような構成であれば、機関室10の内部全体が、ラジエタファン14により取り込まれる外気の空気流により冷却されるようになるため、ハイブリッドシステムの各種機器を、例えばラジエタファン14近傍に配置するなどの冷却用配置構成を検討乃至工夫する必要が減少し、これら機器を機関室10の内部であれば、任意の位置に、すなわち自由に配置できるようになる。さらに、機関室10の下方面側は、完全に塞がれているので、道路から水や雪が機関室10内部に侵入することがなくなり、その結果、ハイブリッドシステムへ道路からの水が掛かる問題をも同時に解消することができるようになる。したがって、このように冷却機構を構成したとしても、ハイブリッドシステムの設置環境を損ねることがないだけでなく、従来技術から比較してむしろ改善させることが可能になる。
【0027】
なお、ここに図示した例では、ラジエタグリル22は、ロータリ除雪車100の進行方向で見た機関室カバー20の後方の側面に設けられている一方で、外気取入れ口18は、ロータリ除雪車100の進行方向で見た機関室カバー20前方の側面に設けられている。このように構成した場合には、ラジエタファン14の回転作用による空気流の取り込みだけでなく、ロータリ除雪車100の進行方向への動作に伴って発生する進行方向からの外気の空気流をも、機関室10内部に取り込むことができるため、より効率よくハイブリッドシステムを冷却することが可能になるため好適である。
【0028】
ここで、図3及び図4に図示されている実施例では、電池25が配置される電池室40を密閉構造とし、この電池室40を機関室10の外部に設けている。これは、ロータリ除雪車100の動力源の一部として電力を使用するためのハイブリッドシステムにおいては、電池25が蓄電するべき電力が非常に大きくなることから、この電池25が配置される電池室40が大型化することへの対応によるものである。すなわち、大容量であることから大型化した電池25を収納する電池室40のロータリー除雪車100における配置位置を検討する場合に、当該大型の電池室40を機関室10内部に配置しようとすると、機関室10内部におけるその他の構成要素の配置位置に対する制約が大きくなるため、設計条件によっては、機関室10の外部に電池室40を配置することが求められる可能性があることへの対応策を示したものである。したがって、本発明では、ここに図示した例に限られず、電池室40を機関室10内部に配置することもできる。なお、このようにハイブリッドシステムの構成要素における電池室40だけを機関室10の外部に設ける場合には、雪やこれが解けた水などが電池25に直接掛かることを防止するために、電池室40は密閉構造とする必要が生じる。しかしながら、電池25は、何回も充放電を繰り返すために、特に高温になることが予想される部品であり、そのため、電池室40を密閉構造とすると、効率よく電池室内部を冷却しなければならない。
【0029】
そこで、本発明では、この電池室40に機関室10内部の空気を取り込むための導風ダクト30と、当該電池室40から前記導風ダクト30を介して取り込まれた空気を電池室から排出する排出口(図示せず)とを設け、当該排出口がラジエタファン14の送風方向で見た当該ラジエタファン配置位置よりも後方で、且つ、当該ラジエタファン14による排出空気の空気流の流れが存在する位置に配置乃至開口されるように構成した。なお、ここで言う、ラジエタファン14の送風方向で見た当該ラジエタファン配置位置よりも後方とは、ラジエタファン14が取り込む空気の流れが、当該ラジエタファン14を通過して、ラジエタファン14の後方へ流れていく送風方向で見た場合における、ラジエタファン14の配置位置よりも後方の位置を意味しており、また、ラジエタファン14による排出空気の空気流の流れが存在する位置とは、ラジエタファン14の作用により取り込まれた空気流が排出口の配置位置乃至開口位置で未だラジエタファン14の作用による流れ方向を維持していることを意味している。したがって、この排出口は、例えば、ラジエタファン14とラジエタグリル22との間に配置乃至開口されていてもよく、あるいは、ラジエタグリル22の直後に配置乃至開口されていてもよい。このように構成すると、ラジエタファン14の風量は比較的に大きいために、排出口の上方で未だこのラジエタファン14の送風作用による風量が維持されている場合には、電池室内部の空気を引き出す乃至吸い出す効果が発生するため、電池室内部の空気を、導風ダクト30を介して機関室10の内部空気により置換することができる。これを言い換えれば、前記した排出口は、ラジエタファン14の排出空気の空気流の作用により、密閉された電池室40内部の空気を吸い出すことが可能である位置に配置乃至開口されていればよい。
【0030】
なお、機関室内部の空気が導風ダクト30を介してより容易に電池室内へ流れやすくするために、導風ダクト30の開口方向を、ラジエタファン14により発生する空気流の流れ方向に向かって開口するように構成するのが好適である。このように構成すれば、ラジエタファン14によって発生した機関室10内部における空気流がそのまま導風ダクト30に流れ込むため、電池室40内部の空気がラジエタファン14の空気流の作用により吸い出される効果に加え、導風ダクト30から流れ込む空気により電池室40内の空気を押し出す効果が発生し、より容易に電池室40内部の空気を置換できるので、電池室40をより効率よく冷却することが可能になる。
【0031】
また、図示されるように、導風ダクト30に、電池室40へ機関室10内の空気を取り込むための導風ファン31を設けることもできる。このように導風ファン31を設けておけば、確実に機関室10内の空気を電池室に導入することが可能になるため好適である。さらにまた、この導風ファン31のファン風量を調整可能に構成しておけば、導風ダクト30を介して流れ込む機関室10内部の空気量を調整できるので、電池室40内部の温度を適正温度に制御することが可能となるため好適である。なお、この場合には、電池室40内部に温度センサなどを設けて、当該温度センサによりモニタされた温度に応じて、導風ファン31の風量を調整することができる。風量調整に関しては、通常公知のように、例えば、導風ファン31に給電される電圧や電源周波数などを調整することで、ファン回転数を制御することが考えられる。
【0032】
ところで、これまでも記述してきたように、ハイブリッドシステムに水がかかると、電装部品へ水が浸入する恐れが高くなることから、機関室10内部に水を侵入させることは極力回避させたいとの要望が大きい。そのため、外気取り入れ口18には、外部からの水の浸入を防ぐ侵入防止構造を備えさせて、例えば、雪やあるいは雨などが降ったとしても、当該外気取り入れ口18から雪や水が容易に浸入しないように、あるいは、侵入したとしてもその侵入量が極力小さくなるようにすると好適である。この外部からの水の浸入を防ぐための侵入防止構造は、例えば図5に示されるようなラビリンス構造53でありえる。図5に示されるラビリンス構造53は、断面略T字状の板体54を、上下方向に連続して段違いに配置することによって、この連続して段違いに配置された板体54から取り込まれる外気が、当該板体54の断面に沿った屈曲した空気流(図中の矢印を参照)となるように配置されているものであり、このように断面略T字状の板体54を段違いに連続配置することで、気体である外気は、連続配置された板体54の間を屈曲して流れることが可能である一方で、取り込まれる外気に含まれる雪や雨は、この板体54に衝突することで、機関室10内部へ容易には侵入できないという構成を採用している。なお、この図5に示したラビリンス構造53は、侵入防止構造の一例を示したものであり、外気取り入れ口18から雪や水を容易には浸入させないように、あるいは、侵入したとしてもその侵入量が極力小さくなるように構成された構造であれば、その他の通常公知の侵入防止構造を採用することができる。
【0033】
また、外気取入れ口18には、その全面にわたって外部からの異物(例えば、ゴミや埃)の侵入を防ぐためのフィルタ55を装備させても良い。このフィルタ55を先に記述した侵入防止構造と併せて設置すれば、フィルタ55によっても水の浸入を防止できるという効果が期待できるため好適である。
【0034】
これまで本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明してきたが、本発明は、図示した例に限られない。例えば、図示した例では、ラジエタ12が機関室10の最後方側に設けられ、ラジエタグリル22が、ロータリ除雪車100の進行方向で見た機関室カバー20の後方の側面に設けられている一方で、外気取入れ口18が設けられる機関室カバー20の側面が、ロータリ除雪車100の進行方向で見た機関室カバー前方の側面である例を示したが、これに代えて、ロータリ除雪車100の、進行方向に対して水平方向で見た左右方向(すなわち、車両の幅方向)の機関室10内部のいずれか側方にラジエタ12を配置すると共に、ラジエタ12が配置された側の、機関室カバー20左右側面いずれかにラジエタグリル22を設け、このラジエタグリル22が設けられた機関室カバー20の対向するいずれかの左右方向側面に外気取り入れ口18を設けることもできる。このように構成しても、ラジエタファン14が取り込んだ外気が機関室10内部全体にわたり左右方向から流れるので、本発明の目的を達成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、ハイブリッドシステムを搭載したロータリ除雪車におけるハイブリッドシステム冷却機構に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 機関室
12 ラジエタ
14 ラジエタファン
18 外気取り入れ口
20 機関室カバー
22 ラジエタグリル
24 発電機
25 電池
26 ハイブリッドシステム用ブレーカー
27 発電制御用インバータ
28 駆動制御用インバータ
29 昇圧チョッパー
30 導風ダクト
31 導風ファン
40 電池室
100 ロータリ除雪車
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特許第3649147号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともエンジンと、ラジエタファンを備えたラジエタと、当該エンジン及びラジエタが配置される機関室とを備えて成り、さらに、電力を動力源の一部として用いるために、前記機関室に配置されるハイブリッドシステムを備えて成るロータリ除雪車における、前記ハイブリッドシステムを冷却するための冷却機構であって、
前記機関室の下方面側が、開口をなくすことで塞がれる一方で、前記機関室を覆う機関室カバーの一方の側面には、前記ラジエタファンが取り込んだ外気を機関室外部に排出するためのラジエタグリルが設けられ、
前記ラジエタグリルが配置される一方の側面とは対向する機関室カバー側面には、外気取り入れ口が設けられ、
前記ラジエタファンにより前記外気取り入れ口から前記機関室に取り込まれた外気が、前記ラジエタグリルを介して、前記機関室外部に排出されることを特徴とするハイブリッドシステムの冷却機構。
【請求項2】
前記ラジエタグリルが設けられる側面が、ロータリ除雪車の進行方向で見た機関室カバー後方の側面である一方で、前記外気取り入れ口が設けられる側面が、ロータリ除雪車の進行方向で見た機関室カバー前方の側面であることを特徴とする請求項1に記載の冷却機構。
【請求項3】
前記ハイブリッドシステムの電池が配置される電池室を密閉構造にして、当該電池室を前記機関室の外部に設けると共に、
当該電池室に機関室内の空気を取り込むための導風ダクトと、前記導風ダクトを介して取り込まれた空気を当該電池室から排出する排出口とを設け、
当該排出口が前記ラジエタファンの送風方向で見た当該ラジエタファン配置位置よりも後方で、且つ、当該ラジエタファンによる排出空気の空気流の流れが存在する位置に配置されることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の冷却機構。
【請求項4】
前記導風ダクトに、前記電池室へ機関室内の空気を取り込むための導風ファンが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の冷却機構。
【請求項5】
前記導風ファンがファン風量を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の冷却機構。
【請求項6】
前記外気取り入れ口が、外部からの水の浸入を防ぐ侵入防止構造を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の冷却機構。
【請求項7】
前記外気取り入れ口には、フィルターが配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の冷却機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−144140(P2012−144140A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3831(P2011−3831)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(591117631)株式会社日本除雪機製作所 (18)
【Fターム(参考)】