説明

ローラ、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】ローラ表面の改善し、感光体の削れ粉やトナー、外添剤などの付着を軽減し、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られるローラ及び該ローラを具備するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供する。
【解決手段】導電性基体の外周上に、弾性層と、該弾性層上に、単一又は複数の層からなる被覆層とを有するローラにおいて、前記被覆層の表面における粗さ曲線のスキューネスRsk(JISB0601)が、負であることを特徴とするローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に使用されるローラ、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真法としては多数の方法が知られているが、一般には、まず電子写真感光体を帯電後、種々の像露光手段により電子写真感光体上に電気的潜像を形成する。次いで、前記潜像をトナーで現像を行って可視像とし、必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写した後、熱・圧力等により転写材上にトナー画像を定着して複写物を得る。また、転写材上に転写されずに電子写真感光体上に残ったトナー粒子は、クリーニング工程により電子写真感光体上より除去される。
【0003】
近年、電子写真感光体の帯電装置として、接触帯電装置が実用化されている。接触帯電装置は、従来から用いられているコロナ帯電装置と比較して、電子写真感光体の帯電に伴うオゾンの発生を抑制でき、また帯電に必要な消費電力を低減させることができる。そして、特に帯電部材として帯電ローラを用いたローラ帯電方式は、帯電の安定性という点から好ましく用いられている。
【0004】
ローラ帯電方式は、導電性の弾性ローラを電子写真感光体に加圧当接させ、これに電圧を印加することによって電子写真感光体への帯電を行うものである。
【0005】
ところで、接触帯電装置による帯電は、帯電部材(帯電ローラ)から電子写真感光体への放電によって行われ、ある閾値電圧以上の電圧を帯電ローラに印加することによって電子写真感光体の帯電が開始される。例えば、厚さ25μmの感光層を有する有機感光体(OPC感光体)に対して帯電ローラを加圧当接させた場合には、絶対値で約640V以上の電圧を帯電ローラに印加するとOPC感光体の表面電位が上昇し始める。それ以降は印加電圧に対して傾き1で線形に感光体表面電位が増加する。以後、この閾値電圧を帯電開始電圧Vthと定義する。
【0006】
つまり、電子写真に必要とされる感光体表面電位Vdを得るためには帯電ローラには、Vd+Vthという画像形成自体に必要とされる以上のDC電圧の印加が必要となる。このようにしてDC電圧のみを帯電部材に印加して帯電を行う方法をDC帯電と称する。
【0007】
この他に、ACによる電位のならし効果によって更なる帯電の均一化を図るAC+DC帯電方式が用いられるが、装置の大型化・高コストという問題点もあり、近年は小型化・低コストの実現できうるDC電圧が好まれる。
【0008】
帯電ローラとして、導電性基体の外周上に弾性層を被覆した導電性支持部材上に、導電性シームレスチューブにより表面層を形成した例がある(例えば、特許文献1)。また、導電性の異なる層構成よりなる多層チューブによる例も開示されている(例えば、特許文献2)。単層のチューブで被覆した帯電ローラでは、感光体を接触帯電方式で帯電する場合、抵抗のばらつきや環境による抵抗変化が大きいため、電子写真感光体が均一に帯電されず、鮮明な画像等が得られない。しかし、各層の導電性を変化させた多層チューブで帯電ローラに被覆した場合、各層内での抵抗のばらつきや環境変化による抵抗変化を抑制できる。
【0009】
導電性支持部材をシームレスチューブで被覆する具体的な方法として、導電性支持部材にシームレスチューブを外嵌させる方法がある。具体的には、シームレスチューブの内径を被覆すべき導電性支持部材の外径よりも大きくして、物理的あるいは化学的手段、例えば、熱によりチューブを収縮させ嵌合させる方法がある。また、シームレスチューブ内径を被覆すべき支持部材の外径よりも小さくして、物理的あるいは化学的手段、例えば、空気圧によりチューブを押し広げ嵌合させる方法がある(例えば、特許文献3)。
【0010】
シームレスチューブ製造装置は押出し手段により該シームレスチューブが押し出され、空冷手段、水冷サイジング手段、チューブ引き取り手段の順序で該シームレスチューブを製造する方法が広く知られている。
【0011】
シームレスチューブは一般的に熱可塑性エラストマーをベースとするが、該シームレスチューブを用いた被覆層を有するローラを帯電ローラに用いた場合、特性上軟らかいため、感光体の削れ粉やトナー、外添剤などが付着し、画像不良が生じる場合がある。
【0012】
そこでローラ最表面上に絶縁性の樹脂粒子を存在させ、十点平均粗さRzJIS94を制限し、ローラの表面性を改善することで、感光体の削れ粉やトナー、外添剤などの付着を軽減する方法が知られている(例えば、特許文献4)。
【0013】
しかしながら、一概に十点平均粗さRzJIS94だけでは、表面形状の違いを判断することはできず、仮に同じ十点平均粗さRzJIS94のローラであっても、付着による画像不良の改善が、充分でないものが存在した。
【特許文献1】米国特許第4967231号明細書
【特許文献2】特開平5−96648号公報
【特許文献3】特開平10−228156号公報
【特許文献4】特開2008−070759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、ローラ表面の改善し、感光体の削れ粉やトナー、外添剤などの付着を軽減し、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られるローラを提供することを目的とする。更には、該ローラを具備するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るローラは、導電性基体の外周上に、弾性層と、該弾性層上に、単一又は複数の層からなる被覆層とを有するローラにおいて、前記被覆層の表面における粗さ曲線のスキューネスRsk(JISB0601)が、負であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ローラ表面の改善し、感光体の削れ粉やトナー、外添剤などの付着を軽減し、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られるローラを提供することができる。更には、該ローラを具備するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係るローラは、導電性基体の外周上に、弾性層と、該弾性層上に、単一又は複数の層からなる被覆層とを有するローラにおいて、前記被覆層の表面における粗さ曲線のスキューネスRsk(JISB0601)が、負であることを特徴とする。
【0018】
(ローラ)
本発明におけるローラの実施形態の一例を図1及び図2に示す。図1及び図2に示した本発明のローラは、導電性基体Aの外周上に、弾性層Bと、該弾性層B上に、内層Dと外層(最表面層)Eの2層からなる被覆層Cを有する。最表面層でもある外層Eは、樹脂粒子Fを含み、Rskが負である特徴を有する。なお、図1及び図2では、被覆層Cが2層からなる例を示しているが、被覆層Cは2層に限らず、単一又は複数の層からなってもよい。また、本発明のローラは、弾性層Bの外周上に更に導電層又は抵抗層を有し、その外周上に被覆層Cを有する構成としてもよい。
【0019】
(導電性基体A)
前記導電性基体Aとしては、円柱状や円筒状の形態を有しており、鉄、銅及びステンレス等の金属、カーボン分散樹脂、金属あるいは金属酸化物分散樹脂等の材料から製造されたものを使用することが好ましい。
【0020】
(弾性層B)
前記弾性層Bは、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、EPDMゴム、ポリウレタンゴム、エポキシゴム及びブチルゴム等のゴム又はスポンジや、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレタン、ポリエステル樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂で形成することができる。これらは、1種又は2種以上を併用することができる。これらのゴムや樹脂は、カーボンブラック、金属及び金属酸化物粒子等の導電剤を含有することが好ましい。なお、導電性基体の外周上に弾性層を形成したものを以下導電性支持部材とする。
【0021】
(被覆層C)
被覆層Cを形成する材料としては、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、押し出し可能であれば特に限定されないが、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレン、酢酸ビニル共重合体ゴム、エチレンエチルアクリレート共重合体ゴム、エチレンアクリル酸メチル共重合体ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、その他の共重合ポリアミド等のポリアミド、スチレンエチレンブチル共重合体ゴム、エチレンブチル共重合体ゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン、イソプレンゴム、ポリノルボルネンゴム等の通常のゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体の水添加物(SEBS)等の熱可塑性ゴムなどが挙げられる。導電剤や他の添加剤等との相容性が良好であるものが好ましい。これらは、1種又は2種以上を併用することができる。
【0022】
被覆層Cの最表面層(外層E)は、平均粒子径3μm以上、20μm以下であり、粒度分布における個数%のピーク部分が60%以上である樹脂粒子を含有することが好ましい。
【0023】
前記樹脂粒子の材料としては、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、およびそれら樹脂を架橋した球状のもの等が挙げられる。用いる熱可塑性エラストマーとの相容性が良好であるものが好ましい。これらは、1種又は2種以上を併用することができる。
【0024】
前記樹脂粒子の平均粒子径としては、3μm以上、20μm以下であることが好ましい。平均粒子径が、3μm未満であると、最表面層の表面のRzJIS94が充分ではなく、付着汚れが多発しやすく、平均粒子径が、20μmをこえると、表面が荒れすぎるために感光体を削り、削れ粉が多発するため、画像不良の原因となる場合がある。より好ましくは、5μm以上、14μm以下である。
【0025】
また、前記樹脂粒子の粒度分布における個数%のピーク部分は60%以上であることが好ましい。粒度分布における個数%のピーク部分が、60%未満である場合、表面粗さのムラがあり、正と負のRskが混在する場合がある。より好ましくは、65%以上である。
【0026】
被覆層Cは、導電剤を含有し、導電性を有することが好ましい(以下、導電性被覆層と示す場合有り)。導電剤としては、カーボンブラック、ニッケル、銀、アルミニウム及び銅などの金属微粒子や酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム及びシリカなどを主成分とし、これに原子価の異なる不純物イオンをドーピングした導電性金属酸化物微粒子、炭素繊維などの導電性繊維;ステンレス繊維などの金属繊維等が挙げられる。
【0027】
前記カーボンブラックとしては、特に限定されるものではないが、例えば、好ましいカーボンブラックとして、「ケッチェンブラック」(ライオンアクゾ社製)、「Printex」、「Special Black」(デグサ製)、「Color Black」(デグサ製)、「BLACK PEARLS」(キャボット社製)、「旭カーボン」(旭カーボン社製)、「三菱カーボン」(三菱化学社製)、「デンカブラック」(電気化学工業社製)、「シースト」、「トーカブラック」(東海カーボン社製)等が挙げられる。これらのカーボンブラックは、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
また、前記導電剤にイオン導電剤等を用いて導電性を持たせることも可能であるが、感光体と当接するため、塩が感光体を汚染する場合や、環境変動が大きくなる場合には、イオン導電剤等の配合を控えることが好ましい。
【0029】
前記カーボンブラックの配合量は、特に限定されるものではないが、導電性被覆層Cを形成する材料100質量部に対し、10質量部以上、80質量部以下とすることが好ましく、20質量部以上、70質量部以下とすることがより好ましい。複数の層からなる導電性被覆層Cの場合には、各々の層を形成する材料のカーボンブラックの配合量を、前記範囲の配合量とすることが好ましい。カーボンブラックの配合量を10質量部以上とすると、通電使用時の抵抗上昇を抑え、ローラを帯電ローラとして用いた場合にも、帯電ローラとしての耐久性を向上させることができる。一方、カーボンブラックの配合量を80質量部以下とすると、導電性被覆層Cを形成するためのシームレスチューブの弾性特性が好ましいものとなり、容易に導電性被覆層Cを形成することができる。
【0030】
導電性被覆層Cの抵抗値は、1×106Ω・cm以上1×1011Ω・cm以下とすることが好ましい。
【0031】
被覆層Cを形成する材料には、その他、必要に応じてワックス、無機顔料、導電性充填剤、老化防止剤、可塑剤、補強剤、充填剤などを配合してもよい。
【0032】
(導電性支持部材の作製方法)
導電性支持部材は、導電性基体Aの外周上に、弾性層Bを形成することにより作製することができる。導電性支持部材の作製方法は、特に限定されず、例えば、公知の方法の中から適したものを選択すればよい。具体的には、例えば、次のようにして作製することができる。まず、表面にスチレン系熱可塑性ホットメルト(商品名:「3315E」、スリーボンド(株)製)等の導電性接着剤を塗布した導電性基体Aを用意する。一方、弾性層B形成用の熱可塑性樹脂やゴムにカーボンブラック、金属及び金属酸化物粒子等の導電剤、加硫剤及びその他の添加剤を加え、混練してゴムコンパウンドを調製する。次に、前記ゴムコンパウンドを押出成形機でチューブ状に押し出し、加硫して中心部に孔を有する弾性チューブを作製する。そして、前記表面に導電性接着剤を塗布した導電性基体A上に該弾性チューブを被覆し、続いて加硫した後、不要な弾性チューブ端部をカットして除き、その後、研磨することにより所定の直径の弾性層Bを有する導電性支持部材を作製することができる。
【0033】
(被覆層C(シームレスチューブ)の作製方法)
被覆層Cの形成に使用する前記シームレスチューブの作製方法において、例えば、次のようにして作製することができる。まず熱可塑性エラストマーと、カーボンブラックと、その他の添加剤とを混練し、続いてこれをペレット化する。次に、得られたペレットを押出成形機により所定の圧力で押し出し、シームレスチューブを作製する。複数の層を有するシームレスチューブは、例えば、各々の層を形成するための材料ペレットを、共押出機を用いて同時に押し出して作製すればよい。
【0034】
被覆層Cは、一度シームレスチューブを作製し、該シームレスチューブを導電性支持部材の弾性層上に被覆して形成することにより、従来安定生産が難しいとされた中抵抗領域の導電性を有するローラを安定して生産することができるため好ましい。
【0035】
本発明のローラにおいて、被覆層Cの最表面層は、被覆層Cの最表面層の材料を押出成形機により20MPa以上、40MPa以下の圧力で押出すことにより得られるシームレスチューブを用いて形成されることが好ましい。
【0036】
被覆層Cの最表面層の材料(原料組成物)を押出成形機により押出し、シームレスチューブを作製する際の押出し圧力は、20MPa以上、40MPa以下であることが好ましい。前記範囲内では、原料組成物の押し出し量が安定するため好ましい。より好ましくは、25MPa以上、30MPa以下である。
【0037】
被覆層Cの最表面層の材料(原料組成物)を押出成形機により押出し、シームレスチューブを作製する際の温度は、150℃以上、170℃以下が好ましい。前記範囲内では、原料組成物の押し出し量が安定するため好ましい。より好ましくは、155℃以上、165℃以下である。
【0038】
被覆層Cの最表面層の材料(原料組成物)を押出成形機により押出し、シームレスチューブを作製する際のシームレスチューブの引取速度は、4m/min以上、10m/min以下が好ましい。前記範囲内では、チューブ形状が安定するため好ましい。より好ましくは、5m/min以上、7m/min以下である。
【0039】
本発明のローラにおいて、上記方法により作製されたシームレスチューブにより形成される被覆層Cの最表面層の粗さ曲線のスキューネスRsk(JISB0601)は負である。スキューネスRskが0又は正のとき、感光体の削れ粉やトナー、外添剤などが付着し易いため好ましくない。
【0040】
また、前記被覆層Cの最表面層の十点平均粗さ(JISB0601)は、耐付着性向上の観点から、10μm以上、20μm以下であることが好ましい。
【0041】
図3、4は、同じ十点平均粗さRzJIS94を有すると仮定したときのローラの表面形状の例を示す。このとき、図3、4から分かるように、一概に十点平均粗さRzJIS94だけでは、表面形状の違いを判断することはできないが、粗さ曲線のスキューネスRskを用いると判断できる。
【0042】
ここで、粗さ曲線のスキューネスRskは、基準長さにおけるZ(x)の三乗平均を二乗平均平方根の三乗で割ったものであり、下記式(1)で表される。
【0043】
【数1】

【0044】
式(1)において、Rqは粗さ曲線の二乗平均平方根、lrは基準長さ(評価長さの1/5)である。
【0045】
図3はRskが負の値を示す場合である。ローラ表面の溝の幅が狭く、本発明のローラを電子写真装置の帯電ローラとして用いた場合、電子写真感光体とローラとの接触する部分が少なくなる。このため、両者の間に挟まれることになる電子写真感光体の削れ粉やトナー、外添剤はすり抜ける形となり、耐付着性に有利である。
【0046】
一方、図4はRskが正の値を示す場合である。ローラ表面の溝の幅が広く、本発明のローラを電子写真装置の帯電ローラとして用いた場合、電子写真感光体とローラとの接触する部分が多くなる。このため、両者の間に挟まれることになる電子写真感光体の削れ粉やトナー、外添剤はすり抜けられず、耐付着性に不利である。
【0047】
本発明において、Rskが負であるシームレスチューブを作製する方法は、特に限定されるものではない。例えば、十点平均粗さRzJIS94(JISB0601)が10μm以上、20μm未満となるように、平均粒子径が3μm以上、20μm以下であり、粒度分布における個数%のピーク部分が60%以上である樹脂粒子を含んだ最表面層用の材料ペレットを用いて、シームレスチューブを押出す工程において、押出し圧力を前記範囲内で調整し、表面の樹脂粒子を引きずりRskを負にする方法がある。また、チューブ引取り工程において、引取速度を前記範囲内で調整し、表面の樹脂粒子を引きずりRskを負にする方法が挙げられる。押出し圧力を調整する例としては、押出温度160℃以上とし、チューブを押出す圧力を20MPa以上、40MPa以下或いはワックスを5部以上加えて、チューブを押出す圧力を20MPa以上、40MPa以下にして押し出す方法が挙げられる。押出し圧力が上記以上である場合、チューブ引取速度を調整する例としては、チューブ引取速度を5m/min以上で引取る方法が挙げられる。
【0048】
前記シームレスチューブの厚みは、特に限定されるものではないが、100μm以上、600μm以下とすることが好ましい。
【0049】
前記シームレスチューブの作製の際に用いる押出成形機の一例を図5により説明する。成形に用いるダイス2には、空気導入用の中央通孔3の周囲に内外二重の環状の押出し流路4、5が設けられている。成形に際しては、中央通孔3から空気を吹き込みながら、内側流路4に第1押出し機6から被覆チューブを構成する内層材料を、また外側流路5に第2押出し機7から被覆チューブを構成する外層材料をそれぞれ加圧注入する。内部層1(i)と外部層1(o)を重ね合わせ一体化して押し出して得られたチューブの内部を空気で膨らませながら、その外周に設けた水冷リング8にて冷却する。冷却されたチューブはチューブ引き取り装置9により送られ、所定長さに順次切断し、目的のシームレスチューブを得る。
【0050】
(ローラの作製方法)
次に、前記方法により作製した導電性支持部材の弾性層B上に、前記被覆層C用のシームレスチューブを被覆し、ローラを製造することができる。
【0051】
前記シームレスチューブを前記導電性支持部材の弾性層B上に被覆する方法は、特に限定されない。例えば、中心部の孔が、前記導電性支持部材の弾性層Bの外径より小さいシームレスチューブを準備する。この中心部の孔の内径を、エアー圧等を利用して拡大し、そこに前記導電性支持部材を挿入した後に、エアー圧等を開放して、シームレスチューブの収縮力で導電性支持部材の弾性層Bの周面に密着させて被覆する方法を挙げることができる。また、図3に示すような押出成形機を用いて、シームレスチューブを押し出すと同時に、導電性支持部材をシームレスチューブの内側に送り込み、導電性支持部材とシームレスチューブを一体とする方法を挙げることができる。また、前記シームレスチューブが熱収縮性のシームレスチューブの場合、前記導電性支持部材の弾性層B上に被覆した後に加熱して収縮させ、密着させる方法等を挙げることができる。
【0052】
(プロセスカートリッジ、電子写真装置)
次に、本発明のプロセスカートリッジについて説明する。
【0053】
本発明のプロセスカートリッジは、本発明のローラを具備する。本発明のローラを帯電ローラとして具備するプロセスカートリッジの実施形態の一例を図6に示す。本発明のプロセスカートリッジは、上述したように、本発明のローラを具備することを特徴とするものであり、電子写真感光体、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段等は、特に限定されるものではない。
【0054】
図6に示した実施形態のプロセスカートリッジ21においては、電子写真感光体13は、矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体13は回転過程において、一次帯電手段としての本発明の帯電ローラ11によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受ける。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段(不図示)からの画像露光14を受ける。こうして電子写真感光体13の周面に静電潜像が順次形成される。
【0055】
形成された静電潜像は、次に現像手段15によりトナー現像され、現像されたトナー像は電子写真感光体13と転写手段16との間に電子写真感光体13の回転と同期取りされて不図示の給紙部から給紙された転写材17に、転写手段16によって順次転写される。
【0056】
像転写を受けた転写材17は、電子写真感光体13面から分離されて像定着手段18へ導入されて像定着を受け、複写物(コピー)として装置外へ排出される。
【0057】
像転写後の電子写真感光体13の表面は、クリーニング手段19によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返し像形成に使用される。
【0058】
前記例示では、帯電ローラとして使用した例を示したが、本発明のローラは現像手段15内に設けた現像ローラ、転写手段16内に設けた転写ローラ、現像手段15内に現像ローラに当接して設けられた現像剤規制ローラ等にも使用することができる。
【0059】
本発明の電子写真装置は、図6に示すように本発明のローラを具備するプロセスカートリッジを組み込んだものでもよいし、プロセスカートリッジを有さず、本発明のローラを電子写真装置のローラ部材として備えているものでもよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて説明をするが、本発明は本実施例により限定されるものではない。
【0061】
<画像及び帯電ローラ表面の評価>
実施例で得られたローラを帯電ローラとして、プロセスカートリッジ(商品名:「LBP3400用カートリッジ」、キヤノン(株)製)に組み込んだ。前記プロセスカートリッジをレーザービームプリンター(商品名:「LBP3400」、キヤノン(株)製)に装着し、(23±2℃、55±5%RH)の条件の下で連続1500枚画像出しを行った。得られた画像及び画像出し後の帯電ローラを目視で検査し、下記基準に基づき評価した。
○:帯電ローラへの付着物が少なく、画像不良の発生もない。
△:帯電ローラへの付着物が見られるものの、画像不良の発生がない。
×:帯電ローラへの付着物が見られ、画像不良が発生した。
【0062】
<RzJIS94、Rsk測定>
前記画像出し後の帯電ローラを、「サーフコーダ SEF3500」(商品名、小坂研究所製)を用いて、評価長さ8mm、カットオフ値0.8mm、送り速さ0.5mm/sの条件でRzJIS94とRskを測定した。なお、低域カットオフ値λsは、λsフィルタ(λc/300)で測定した。
【0063】
<平均粒子径及び粒度分布測定>
平均粒子径及び粒度分布は、「Multisizer3」(商品名、ベックマン・コールター株式会社製)を用いて測定した。測定時の電解液としては「ISOTONII」(商品名、ベックマン・コールター株式会社製)、アパチャー口径は100μmを用いた。
【0064】
(弾性層を有するローラ(導電性支持部材)の作製)
[導電性支持部材作製例1](導電性支持部材1の作製)
導電性基体として、鉄材を押出成形により、直径6mmの棒材に押出し、長さ244mmに切断後、ニッケルによるメッキを厚さ約3μm施したものを用意した。次に、弾性層の材料として、下記材料を用意した。
【0065】
エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)(商品名:「EPT4070」、三井化学(株)製) 100部、
カーボンブラック(商品名:「ケッチェンブラックEC」、ライオン(株)製) 16質量部、
パラフィンオイル(ダイアナプロセスオイルPW―380、出光興産社製) 10質量部、
炭酸カルシウム 40質量部、
酸化亜鉛 5質量部、
ステアリン酸 1質量部、
硫黄 1.5質量部、
テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD) 1.5質量部、
2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT) 0.5質量部。
【0066】
前記エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)に前記カーボンブラック、加硫剤及びその他の添加剤を加え、2本ローラで混練分散し、ゴムコンパウンドを得た。得られたゴムコンパウンドを単軸押出機でチューブ状に押し出し、160℃、0.7MPaの水蒸気中で30分間加熱して加硫を行い、直径12.5mm、長さ244mm、中心部に直径4mmの孔を有する弾性チューブを作製した。表面に導電性接着剤を塗布した前記導電性基体上にこの弾性チューブを被覆し、続いて200℃、0.7MPaの水蒸気中で30分間加硫した後、不要な端部のゴムを導電性基体の端面より10mm内側にて両端カットして、不要な弾性チューブ端部を除いた。その後、研磨によって直径11.5mmの弾性層を有する導電性支持部材1を得た。
【0067】
(シームレスチューブの作製)
[チューブ作製例1](チューブ1の作製)
チューブ1の外層(最表面層)を形成するための樹脂材料ペレットを次のようにして準備した。
【0068】
スチレン系の熱可塑性エラストマー(商品名:セプトン8007 クラレ(株)製) 100部、
カーボンブラック(商品名:「Printex90」(デグサ(株)) 30部、
粒度分布調整PMMA樹脂粒子(平均樹脂粒子径12.5μm、粒度分布ピーク68%) 40部、
ステアリン酸カルシウム(カルシウムステアレート日本油脂(株)製) 1部。
【0069】
上記材料を、加圧式ニーダーを用いて20℃〜220℃で溶融混練した後、冷却し、粉砕機で粉砕し、押出温度140℃〜200℃で押出機を用いて造粒しペレットAO1を作製した。
【0070】
次に、チューブ1の内層を形成するための樹脂材料ペレットを次のようにして準備した。
【0071】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー TPU(商品名:「クラミロンU」、(株)クラレ製) 100質量部、
カーボンブラック(商品名:「ケッチェンブラックEC」、ライオン(株)製) 16質量部、
酸化マグネシウム(商品名:「スターマグ」、神島化学(株)製) 10質量部、
ステアリン酸カルシウム(商品名:「カルシウムステアレート」 日本油脂(株)製) 1質量部。
【0072】
前記化合物を添加し、加圧式ニーダーを用いて180℃で15分間混練した後、冷却し、粉砕機で粉砕し、押出温度180℃で押出機を用いて造粒し、ペレットAN1を作製した。
【0073】
次に、前記のペレットAO1及びAN1を用いてチューブ1を作製した。
【0074】
内径φ16.5mmのダイスと外径φ18.5mmのポイントを備えた二層押出機で、押出温度160℃、チューブ引取速度3m/minで押出成型を行った。その後、サイジング、冷却工程を経て、チューブ内径φ11.1mm、最表面層の厚さ100μm、内層の厚さ400μm、長さ25cmのシームレスチューブ(チューブ1)を得た。
【0075】
[チューブ作製例2](チューブ2の作製)
外層材料にワックス(商品名:「ユーメックス2000」、三洋化成工業(株)製)5部配合し、押出温度155℃とした以外は、チューブ作製例1と同様にチューブ2を作製した。
【0076】
[チューブ作製例3](チューブ3の作製)
押出温度155℃、チューブ引取速度5.0m/minとした以外は、チューブ作製例1と同様にチューブ3を作製した。
【0077】
[チューブ作製例4](チューブ4の作製)
粒度分布調整PMMA樹脂粒子(平均樹脂粒子径3.8μm,粒度分布ピーク65%)に変えた以外は、チューブ作製例1と同様にチューブ4を作製した。
【0078】
[チューブ作製例5](チューブ5の作製)
粒度分布調整PMMA樹脂粒子(平均樹脂粒子径18.9μm,粒度分布ピーク72%)に変えた以外は、チューブ作製例1と同様にチューブ5を作製した。
【0079】
[チューブ作製例6](チューブ6の作製)
外層材料にワックス(ユーメックス2000、商品名、三洋化成工業(株)製)2部配合した以外は、チューブ作製例2と同様にチューブ6を作製した。
【0080】
[チューブ作製例7](チューブ7の作製)
押出温度155℃とした以外は、チューブ作製例1と同様にチューブ7を作製した。
【0081】
[チューブ作製例8](チューブ8の作製)
粒度分布調整PMMA樹脂粒子(平均樹脂粒子径12.8μm,粒度分布ピーク43%)に変えた以外は、チューブ作製例1と同様にチューブ8を作製した。
【0082】
[チューブ作製例9](チューブ9の作製)
外層材料に樹脂粒子を添加しなかったこと以外は、チューブ作製例1と同様にチューブ9を作製した。
【0083】
[チューブ作製例10](チューブ10の作製)
粒度分布調整PMMA樹脂粒子(平均樹脂粒子径1.5μm,粒度分布ピーク68%)に変えた以外は、チューブ作製例7と同様にチューブ10を作製した。
【0084】
[チューブ作製例11](チューブ11の作製)
粒度分布調整PMMA樹脂粒子(平均樹脂粒子径25.5μm,粒度分布ピーク62%)に変えた以外は、チューブ作製例7と同様にチューブ11を作製した。
【0085】
(実施例1〜5)
前記チューブ作製例1〜5にて得られたチューブ1〜5の各々を、前記導電性支持部材作製例1にて作製した導電性支持部材1に、チューブ被覆装置(不図示)により嵌め込み、圧密着させ、ローラ1〜5の各々を作製した。
【0086】
(比較例1〜6)
前記チューブ作製例6〜11にて得られたチューブ6〜11の各々を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ローラ6〜11の各々を作製した。前記実施例及び比較例で作製したチューブ及びローラについて前記評価を行った。
【0087】
以上の結果を纏め、表1に示す。
【0088】
表1より、帯電ローラ表面の十点平均粗さRzJIS94の値に関わらず、Rskが負となると、感光体の削れ粉やトナー、外添剤などの付着が軽減することがわかる。また、これより帯電ローラとして用いた場合、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られるローラ及び該ローラを有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することが可能である。
【0089】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明におけるローラの一例の、導電性基体の垂直な面における断面の該略を示す図である。
【図2】本発明におけるローラの一例の、導電性基体の垂直な面における断面の該略を示す図である。
【図3】同じ十点平均粗さRzJIS94を有すると仮定したときのローラの表面形状例(Rskが負である場合)を示す図である。
【図4】同じ十点平均粗さRzJIS94を有すると仮定したときのローラの表面形状例(Rskが正である場合)を示す図である。
【図5】本発明におけるシームレスチューブの被覆に用いる、チューブ押し出し装置の一例の概略構成図である。
【図6】本発明のプロセスカートリッジを装着した電子写真装置の該略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
A 導電性基体
B 弾性層
C 被覆層
D 内層
E 外層(最表面層)
F 樹脂粒子
1(i) 内部層
1(o) 外部層
2 ダイス
3 中央通孔
4 押し出し流路(内側流路)
5 押し出し流路(外側流路)
6 第1押し出機(樹脂圧計付属)
7 第2押し出機(樹脂圧計付属)
8 水冷リング
9 タイミングプーリー(チューブ引き取り装置)
11 帯電ローラ
12 電源
13 感光体
14 画像露光
15 現像手段
16 転写手段
17 転写材
18 像定着手段
19 クリーニング手段
20 レール
21 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体の外周上に、弾性層と、該弾性層上に、単一又は複数の層からなる被覆層とを有するローラにおいて、
前記被覆層の表面における粗さ曲線のスキューネスRsk(JISB0601)が、負であることを特徴とするローラ。
【請求項2】
前記被覆層の表面において、十点平均粗さRzJIS94(JISB0601)が10μm以上、20μm未満であることを特徴とする請求項1に記載のローラ。
【請求項3】
前記被覆層の少なくとも最表面層が、平均粒子径3μm以上、20μm以下であり、粒度分布における個数%のピーク部分が60%以上である樹脂粒子を含有する請求項1又は2に記載のローラ。
【請求項4】
前記被覆層が、単一又は複数の層からなるシームレスチューブを用いて形成されたものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のローラ。
【請求項5】
前記シームレスチューブが、原料組成物を押出成形機により20MPa以上、40MPa以下の圧力で押出すことにより成形されるシームレスチューブであり、
前記押出成形機により成形されるシームレスチューブを引き取る際の引取速度が、5m/min以上、10m/min以下である請求項4に記載のローラ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のローラを具備していることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のローラを具備していることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−48869(P2010−48869A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210547(P2008−210547)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】