説明

ロールオーババルブ

【課題】ロールオーババルブを搭載した車両が転倒状態から回復した際に、ロールオーババルブを通過して流出する液体燃料の量を低減することが可能なロールオーババルブを提供すること。
【解決手段】ロールオーババルブ1のハウジング2は、閉塞キャップ60と一体となって燃料タンク8内に配設されている。車両が転倒状態となったときには、ハウジング2内の弁体30が、燃料タンク8内の満タン液面レベル8dよりも上方のセパレータ70内から下方に延びる排出経路を閉塞する。この際に、液体燃料が流入するロールオーババルブ1の弁体30よりも上流側の排出経路は、車両正立時の上下方向に延びる燃料タンク8内の比較的短い部分に限定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば二輪車等の車両の燃料タンクの内部から燃料タンクの外部へ燃料蒸気を排出するための排出経路に配設されて、車両転倒時等に燃料蒸気の排出経路を遮断するロールオーババルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二輪車等の車両の燃料タンクとキャニスタとを繋ぐ配管部材により形成される燃料蒸気の排出経路中に設けられ、車両転倒時等に燃料蒸気の排出経路を弁体が遮断するロールオーババルブが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−13809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のロールオーババルブでは、ロールオーババルブの弁体よりも上流側(燃料タンク側)の配管部材が比較的長く、車両転倒時にロールオーババルブよりも上流側の配管部材内に比較的多量の液体燃料が浸入する。そして、車両が転倒状態から正立状態に回復した際には、ロールオーババルブよりも上流側の配管部材内の比較的多量の液体燃料が、開弁したロールオーババルブを通過し、ロールオーババルブよりも下流側(キャニスタ側)へ流出してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、ロールオーババルブを搭載した車両が転倒状態から回復した際に、ロールオーババルブを通過して流出する液体燃料の量を低減することが可能なロールオーババルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
車両に搭載された燃料タンクの下面部に形成された開口を閉塞する閉塞部材と、
閉塞部材に対して固定されて少なくとも一部が燃料タンク内に位置するように設けられ、内部に、車両の正立状態における燃料タンク内の満タン液面レベルよりも上方から下方に延びて燃料タンクの内部から外部へ燃料蒸気を排出する排出経路が形成されたハウジングと、
ハウジング内に設けられ、車両が転倒した際にはハウジングの内面に形成された弁座に着座して排出経路を遮断し、車両が転倒状態から回復した際には弁座から離れて排出経路を開放する弁体と、を備えることを特徴としている。
【0007】
これによると、ロールオーババルブの弁体は、少なくとも一部が燃料タンク内に位置するように閉塞部材に対して固定されたハウジング内に配設されている。そして、車両が転倒状態となったときには、弁体が燃料タンク内の満タン液面レベルよりも上方から下方に延びる排出経路を閉塞して、燃料タンクの内部から外部への液体燃料の流出を禁止する。この際に、液体燃料が流入するロールオーババルブの弁体よりも上流側の排出経路は、燃料タンク内の満タン液面レベルよりも上方から下方に延びる、略燃料タンク内の部分に限られる。
【0008】
したがって、弁体よりも上流側の排出経路が比較的短く、車両転倒時に排出経路に浸入する液体燃料を比較的少量とすることができる。これにより、車両が転倒状態から正立状態に回復した際に、開弁したロールオーババルブを通過して下流側へ流出する液体燃料を比較的少量とすることができる。このようにして、ロールオーババルブを搭載した車両が転倒状態から回復した際に、ロールオーババルブを通過して流出する液体燃料の量を低減することが可能となる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、閉塞部材とハウジングとが一体成形されていることを特徴としている。これによると、ハウジングを閉塞部材に対して固定し燃料タンク内に配置する構成を簡素化することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、車両正立状態における燃料タンク内の満タン液面レベルよりも上方に配設されたケース体を有して、ケース体の内部に侵入した燃料を液体燃料と燃料蒸気とに気液分離するセパレータを備え、排出経路の燃料タンク内の上端開口はケース体内に開口しており、セパレータで分離された燃料蒸気がケース体内から排出経路に流入することを特徴としている。
【0011】
これによると、車両正立状態時には、セパレータのケース体内で燃料蒸気を液体燃料から分離して、ケース体内に開口する上端開口から排出経路に流入させることができる。したがって、車両正立状態時に排出経路に液体燃料が流入することを抑止することができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明では、ハウジングとケース体とが一体成形されていることを特徴としている。これによると、ハウジングとケース体とを一体化してセパレータを備える構成を簡素化することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明では、排出経路を介して燃料タンク外に排出される燃料蒸気を捕捉する捕捉部材と、捕捉部材を内部に収容する容器体と、を有するキャニスタを備えることを特徴としている。これによると、燃料タンクの内部から外部へ排出される燃料蒸気を捕捉部材で捕捉して、燃料蒸気が大気中等へ放出されることを抑止することができる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明では、容器体が閉塞部材に固定されていることを特徴としている。これによると、閉塞部材にキャニスタを一体化した構成を簡素化することができる。
【0015】
また、請求項7に記載の発明では、
ハウジングは、筒状部を有し、筒状部の軸線方向が車両の上下方向となるように車両に対して固定されて、筒状部内を車両の上方側である軸線方向の一方から車両の下方側である軸線方向の他方へ燃料蒸気が流通するようになっており、
ハウジングの筒状部内に設けられ、筒状部の軸線方向に変位可能なウェイト部材と、ハウジング内に設けられ、ウェイト部材を軸線方向の前記一方へ向かって付勢するウェイト部材付勢手段と、を備えており、
弁体は、ハウジングの筒状部内に設けられ、鉛直方向に対する筒状部の軸線方向の傾斜角度が変化した際にはウェイト部材の自重の軸線方向成分とウェイト部材付勢手段の付勢力とに基づいて軸線方向に変位し、軸線方向の前記一方へ最大変位したときにハウジングの内面に形成された弁座に着座して排出経路を遮断するようになっており、
ウェイト部材は、弁体とは別体であり、弁体よりも重く、
弁体は、軸線方向の前記一方を向いた第1面部を有し、ウェイト部材は、弁体の第1面部よりも軸線方向の前記一方側において軸線方向の前記他方を向いた第2面部を有しており、弁体がハウジングの弁座から離れているときには、弁体の第1面部がウェイト部材の第2面部に係止していることを特徴としている。
【0016】
これによると、弁体がハウジングの弁座から離れているときには、筒状部の軸線方向の前記一方、すなわち弁座方向を向いた弁体の第1面部が、筒状部の軸線方向の前記他方、すなわち反弁座方向を向いたウェイト部材の第2面部に係止している。したがって、燃料タンク内に大きな負圧が発生してハウジングの筒状部内に軸線方向の前記他方から前記一方へ向かう空気の上昇流が発生したとしても、ウェイト部材は弁体よりも重量が大きく、弁体の第1面部がウェイト部材の第2面部に係止しているので、弁体は浮き上がり難い。このようにして、弁体の第1面部とウェイト部材の第2面部との係止構造という比較的簡素な構造で、燃料タンク内に大きな負圧が発生した場合であっても弁体の弁座への貼り付きを防止することできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態におけるロールオーババルブ1を備えるタンク装着モジュール100の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】ロールオーババルブ1を拡大図示した縦断面図である。
【図3】(a)は、弁体30が弁座15に着座した時点の状態を示すロールオーババルブ1の縦断面図であり、(b)は、ウェイト40が天井部12に接した時点の状態を示すロールオーババルブ1の縦断面図である。
【図4】他の実施形態におけるロールオーババルブ1を備えるタンク装着モジュールの概略構成を示す縦断面図である。
【図5】他の実施形態におけるロールオーババルブ1を備えるタンク装着モジュールの概略構成を示す縦断面図である。
【図6】他の実施形態におけるロールオーババルブ1を備えるタンク装着モジュールの概略構成を示す縦断面図である。
【図7】他の実施形態におけるロールオーババルブ1を備えるタンク装着モジュールの概略構成を示す縦断面図である。
【図8】他の実施形態におけるロールオーババルブ1を備えるタンク装着モジュールの概略構成を示す縦断面図である。
【図9】他の実施形態におけるロールオーババルブ1を備えるタンク装着モジュールの概略構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態におけるロールオーババルブ1を備えるタンク装着モジュール100の概略構成を示す縦断面図であり、図2は、ロールオーババルブ1を拡大図示した縦断面図である。
【0020】
図1に示すように、タンク装着モジュール100は、例えば二輪車等の車両に搭載された燃料タンク8に装着されるものである。タンク装着モジュール100は、燃料タンク8の底面部(下面部)8bに形成された開口8cに取付けられる閉塞キャップ60を備えている。そして、この閉塞キャップ60に、ロールオーババルブ1、セパレータ70、キャニスタ80、燃料ポンプ91、プレッシャレギュレータ92、サクションフィルタ93等が組みつけられてタンク装着モジュール100を構成している。
【0021】
閉塞キャップ60は、開口8cを閉塞する閉塞部材に相当する。閉塞キャップ60は、例えば樹脂製であって、開口8cよりも若干大きめに形成された平板状をなしており、外周縁部には開口8cの内周面に沿って上方に立設された環状壁部61を有している。
【0022】
環状壁部61よりも外周側において、閉塞キャップ60の上面にはシール部材であるOリング68が配設されている。閉塞キャップ60の外周縁部を下面から覆う環状部材69が燃料タンク8に結合されて、閉塞キャップ60と燃料タンク8の底面部8bとの間でOリング68が圧縮され、シール構造を形成している。
【0023】
閉塞キャップ60の環状壁部61よりも内側の部位には、図示左方から順に、ロールオーババルブ1のハウジング2のキャップ20、貫通配管部63、係止部62が一体成形されている。
【0024】
燃料タンク8内の天井面部8a近傍の満タン液面レベル(車両が正立した状態のおける満タン液面の位置)8dよりも上方に、セパレータ70が配設されている。セパレータ70は、例えば樹脂製のケース体をなしており、下方の全域が開口した有底筒状(天井を有する筒状)の本体部71と、本体部71の下方の開口を閉塞する底面部とが、例えば溶融接合されて形成されている。
【0025】
本体部71には、側面部に通気穴71aが貫通形成されている。また、底面部72には、液抜き穴72aおよびチューブ73を挿設するための挿設孔72bが貫通形成されている。車両の振動等により通気穴71aや液抜き穴72aからセパレータ70内に浸入した燃料は、セパレータ70内で気液分離され、液体燃料は液抜き穴72aから燃料タンク8内へ還流するようになっている。
【0026】
セパレータ70の底面部72には、燃料ポンプ91を内部に収容する略円筒形状の収容部74と、収容部74の上端から略コの字形状に延びる燃料通路を形成するパイプ部75とが一体成形されている。収容部74の下端近傍には、前述の閉塞キャップ60に設けられた係止部62の爪部が係止するための係止開口部が形成されている。燃料ポンプ91を収容部74の内部に収容して、係止部62の爪部を収容部74の係止開口部に係止すると、燃料ポンプ91が閉塞キャップ60に対して位置決めされるようになっている。
【0027】
燃料ポンプ91は、例えばインペラを電動駆動して液体燃料を下方から上方へ向かって圧送するものである。燃料ポンプ91の下方には、図示裏面側に燃料吸込口が形成されている。この燃料吸込口には、吸入燃料中の異物を捕捉するためのサクションフィルタ93が装着されている。
【0028】
収容部74の上端に接続するパイプ部75は、内部を燃料ポンプ91が吐出した液体燃料が流通するものであって、図示右方には、パイプ部75内の燃料圧力を調整するプレッシャレギュレータ92が装着されている。プレッシャレギュレータ92は、パイプ部75内の圧力が所定圧以上となると開弁して、パイプ部75内の液体燃料の一部を燃料タンク8内へ還流することで、パイプ部75内の燃料圧力を調整する。パイプ部75の図示左方の下流端部と、閉塞キャップ60に形成された略L字形状の貫通配管部63の上方端部とは、例えば樹脂製のチューブ75aにより接続されている。貫通配管部63の下方端部には、車両の内燃機関に燃料を供給するための燃料配管部材が接続可能となっている。
【0029】
燃料ポンプ91が駆動すると、燃料タンク8内の液体燃料がサクションフィルタ93を通過して圧送され、パイプ部75内、チューブ75a内、貫通配管部63内を経由して、図示を省略した内燃機関に供給される。この際、内燃機関に供給される液体燃料の圧力は、パイプ部75に装着されたプレッシャレギュレータ92により所定圧に調整される。
【0030】
ロールオーババルブ1は、ケース10と閉塞キャップ60に一体成形されたキャップ20とからなるハウジング2内に、弁体30、ウェイト40およびスプリング50を収容して構成されている。ハウジング2の上端には、上方に向かって延び、その上端部がセパレータ70内の上部に位置する例えば樹脂製のチューブ73が接続している。チューブ73の上端部は、例えばC型のクリップ71bによって、セパレータ70内における位置決め固定がなされている。
【0031】
チューブ73内とロールオーババルブ1のハウジング2内は、燃料タンク8内の満タン液面レベル8dよりも上方から下方に延びて燃料タンク8の内部から外部へ燃料蒸気を排出するための排出経路である。ロールオーババルブ1の弁体30は、車両が転倒した際にはハウジング2の内面に形成された弁座15に着座して排出経路を遮断し、車両が転倒状態から回復した際には弁座15から離れて排出経路を開放するようになっている。ロールオーババルブ1の構造および作動については後で詳述する。
【0032】
チューブ73およびチューブ75aは、いずれも、例えば可撓性を有するPA11(ポリアミド11樹脂)製とすることができる。また、例えば可撓性を有するFKM(フッ素ゴム)製やPVC入りNBR(塩化ビニル樹脂をブレンドしたアクリロニトリルブタジエンゴム)製のチューブ(ホース)を採用してもかまわない。
【0033】
閉塞キャップ60の下面には、ロールオーババルブ1の下方となる位置にキャニスタ80が配設されている。キャニスタ80は、例えば樹脂製の有底筒状の容器体81と、容器体81内に充填された例えばチャコールからなる吸着材82とにより構成されている。容器体81は、例えば溶融接合等により閉塞キャップ60に接合されて固定されている。
【0034】
容器体81内は、ロールオーババルブ1のハウジング2内と連通しており、ハウジング2内を通過した燃料蒸気を吸着材82が吸着するようになっている。吸着材82は、燃料蒸気を捕捉する捕捉部材に相当する。容器体81には、例えば車両の内燃機関の吸気側に繋がる連通配管と、吸着材82が吸着した燃料を脱離する際に容器体81内へパージエアを導入するための通気配管とが設けられている。
【0035】
図2に示すように、ロールオーババルブ1は、ハウジング2、ハウジング2内に設けられた弁体30、ウェイト40、スプリング50、を備えている。ハウジング2は、例えば樹脂製であり、筒状部である円筒部11を有するケース10と、円筒部11の下方開口端部に装着されたキャップ20とにより構成されている。
【0036】
ケース10は、軸線が上下方向に延びる円筒部11と、円筒部11の上方端を塞ぐように設けられた天井部12と、天井部12から上方に向かって立設された、円筒部11と軸線を同一とするパイプ部13と、天井部12から下方に向かって立設された、円筒部11と軸線を同一とする円筒部12aとが一体成形されている。
【0037】
ケース10の天井部12の下面から円筒部11の軸線方向に延びる円筒部12aの下端部近傍には、円筒部12a内の通路空間が下端面に向かって徐々に広がるテーパ面が形成されており、このテーパ面が弁座15となっている。弁座15は、燃料タンク8内に位置している。
【0038】
ケース10の円筒部11は、内方に向かって立設され上下方向に延びる3つ以上のリブ16を有している。
【0039】
キャップ20は、閉塞キャップ60の上面側に閉塞キャップ60と一体的に形成された円盤状の平板部21と、平板部21の外周側縁部から上方に立設した嵌合円筒部22と、嵌合円筒部22よりも中心側において平板部21から上方に立設された、嵌合円筒部22と軸線を同一とする円筒部24とが一体成形されている。
【0040】
嵌合円筒部22は、ケース10の円筒部11の下方縁部の内側に嵌合する円筒部であり、円筒部11の下方縁部の内面と嵌合円筒部22の外面とをスナップフィット構造により係止して、ケース10とキャップ20とが結合されている。
【0041】
円筒部11の下方縁部の内面と嵌合円筒部22の外面とは、圧接しながら溶着を行って、ケース10とキャップ20とが接合されているものであってもよい。また、ケース10とキャップ20との接合は、溶着によらず、接着によるものであってもよいし、クリップ等の締結部材での締結によるものであってもよい。円筒部24には、周方向において複数箇所に切欠き部が形成されている。
【0042】
上方端に天井部12が設けられ、下方端にキャップ20の平板部21が設けられたケース10の円筒部11の内側には、円筒部11の軸線方向に変位可能な弁体30およびウェイト40が配設されている。
【0043】
弁体30は、例えば樹脂製であり、円筒部11の軸線方向に直交する方向に拡がる円盤部32と、円盤部32の外周部から下方に延びる円筒部33と、円盤部32の中央部から上方に突出したニードル部31とが一体成形されている。ニードル部31は、略円錐台形状部の先端に半球状部を設けた形状をなしており、半球状部の外周面が弁座15への着座領域となっている。
【0044】
弁体30のニードル部31、円盤部32、および円筒部33は、軸線が同一となるように配設されている。本実施形態では、弁体30の円盤部32の上面のうち外周側の縁部(具体的には縁部のうち周方向の一部)が、円筒部11軸線方向の上方を向いた第1面部に相当する係止面36となっている。
【0045】
弁体30の上方側に配設されたウェイト部材に相当するウェイト40は、例えば金属製であり、弁体30とは別体であるとともに、弁体30に比較して重量が大きくなっている。
【0046】
ウェイト40は、上下方向(円筒部11の軸線方向)に延びる円筒形状をなしている。ウェイト40の外径および内径はそれぞれ軸線方向において均一となっており、軸線方向のいずれの位置においてもドーナツ型の同一断面形状を有する円筒体である。
【0047】
ウェイト40の内径は、弁体30のニードル部31の外径より大きいばかりでなく、ケース10の円筒部12aの外径よりも大きくなっており、ウェイト40の内周面と円筒部12aの外周面とは離れている。
【0048】
本実施形態では、ウェイト40の下端面が、円筒部11軸線方向の下方を向いた第2面部に相当する係止面46となっている。したがって、弁体30とウェイト40とが係止するときには、軸線方向に対峙する係止面36と係止面46とが係止するようになっている。
【0049】
弁体30の円盤部32には、上下方向に貫通する貫通孔38が設けられている。弁体30の円盤部32に設けた貫通孔38は、ウェイト40の係止面46と重ならない領域に、すなわち、軸線方向から見たときにウェイト40の内周面より内側となる部位に、1つもしくは複数形成されている。複数の貫通孔38が形成される場合には、周方向において均等に配設されている。
【0050】
本実施形態では、ウェイト部材付勢手段と弁体付勢手段とは共通の付勢手段であるコイル状のスプリング50からなり、弁体30の円筒部33の内側に配設されている。スプリング50は、外径が、円筒部33の内径とほぼ同一と(若干小さく)なっている。そして、スプリング50の上端は、弁体30の円盤部32の下面に常時接しており、スプリング50の下端は、キャップ20の平板部21の上面のうち嵌合円筒部22と円筒部24との間の部位に接しており、スプリング50は常時圧縮状態で用いられている。
【0051】
したがって、スプリング50は、弁体30を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢するとともに、弁体30が弁座15から離れており係止面36と係止面46とが接しているときには、弁体30の円盤部32を介してウェイト40を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢する。
【0052】
円筒部11の内面に設けられた複数のリブ16は、ウェイト40の円筒部11軸線方向への変位を案内するように形成されている。ウェイト40が変位する際には、円筒部11の内面の一部であるリブ16の内方先端面にウェイト40の外周面が摺接して、ウェイト40を円筒部11の軸線方向に案内するようになっている。
【0053】
なお、弁体30が変位する際にも、円筒部11の内面の一部であるリブ16の内方先端面に弁体30の円筒部33の外周面が摺接して、弁体30を円筒部11の軸線方向に案内するようになっている。
【0054】
ここで、ケース10の天井部12が(具体的には天井部12の下面が)、本実施形態における変位規制部に相当する。
【0055】
上述した構成のロールオーババルブ1は、図2で図示した姿勢で車両に搭載され、車両が正立状態にあり転倒等により傾斜していない場合、すなわち、円筒部11の軸線方向が鉛直方向に対して傾斜していないときには、ウェイト40の自重がスプリング50の付勢力(ウェイト40を上方に押す荷重)に打ち勝ってスプリング50を圧縮し、ウェイト40はハウジング2内の最下部(変位可能な最下方位置)に位置する。弁体30はスプリング50によって上方に向かって付勢されているが、弁体30の係止面36とウェイト40の係止面46とが係止して弁体30の上方への変位が禁止され、弁体30は弁座15から離れて開弁状態を形成している。
【0056】
これにより、燃料タンク8内部の満タン液面レベル8dよりも上方にあるセパレータ70内の空間から燃料タンク8の外部へ、チューブ73内、パイプ部13内、円筒部12a内、ウェイト40の内側空間の下方部分、貫通孔38、円筒部33内、円筒部24内、容器体81内が、燃料蒸気の排出経路となる。したがって、燃料タンク8内から燃料蒸気が排出される場合には、ハウジング2内では、円筒部11内を車両の上方側である軸線方向の一方から車両の下方側である軸線方向の他方へ燃料蒸気が流通する。
【0057】
図2からも明らかなように、この排出経路は、ハウジング2内において比較的軸線近傍にあり、燃料蒸気をほぼ直線的に流通することができる。なお、円筒部11内のリブ16間も、貫通孔38と並列な排出経路とすることが可能である。
【0058】
図2に示す状態から車両が転倒等により傾斜していくと、すなわち、円筒部11の軸線方向が鉛直方向に対して傾斜していくと、ウェイト40の自重(厳密には、ウェイト40、弁体30の自重の総和)の円筒部11軸線方向成分が徐々に減少し、スプリング50の付勢力によって弁体30およびウェイト40が図2図示上方へ変位していく。弁体30の係止面36とウェイト40の係止面46との係止関係が維持されているので、弁体30はウェイト40とともに変位する。
【0059】
車両が傾斜を続け傾斜角度が所定角度に到達すると、図3(a)に示すように、弁体30が図示上方へ最大変位して弁体30が弁座15に着座し閉弁状態を形成する。これにより、燃料タンク8の内部から外部への排出通路が遮断され、燃料タンク8内からの液体燃料の排出が防止される。このとき、ウェイト40の上面は、ケース10の天井部12から離れている。
【0060】
車両に更に衝撃等が加わった場合、図3(b)に示すように、弁体30は弁座15に着座したまま変位を停止し、ウェイト40は、スプリング50による付勢はなくなるが、ウェイト40の上端面が天井部12の下面に当接するまで慣性力により変位を続ける。図3(a)に示す状態から図3(b)に示す状態の間では、弁体30の係止面36とウェイト40の係止面46とは離れ、弁体30とウェイト40とはいずれの部位でも接していない。すなわち、弁体30とウェイト40とが相対的に変位しているときには、弁体30とウェイト40とは接触していない。
【0061】
車両の傾斜が回復していくと、ウェイト40の自重(厳密には、ウェイト40、弁体30の自重の総和)の円筒部11軸線方向成分が徐々に増大して、スプリング50の付勢力に打ち勝ってスプリング50を圧縮させ、弁体30は弁座15から離れて図2に示す状態に戻る。
【0062】
上述の構成および作動によれば、ロールオーババルブ1のハウジング2は、閉塞キャップ60と一体となって燃料タンク8内に配設されている。そして、車両が転倒状態となったときには、ハウジング2内の弁体30が、燃料タンク8内の満タン液面レベル8dよりも上方のセパレータ70内から下方に延びる排出経路を閉塞する。この際に、液体燃料が流入するロールオーババルブ1の弁体30よりも上流側の排出経路は、車両正立時の上下方向に延びる燃料タンク8内の比較的短い部分に限られる。
【0063】
したがって、車両転倒時に排出経路に浸入する液体燃料を比較的少量とすることができ、車両が転倒状態から正立状態に回復した際に、開弁したロールオーババルブ1を通過して下流側のキャニスタ80内へ流出する液体燃料を比較的少量とすることができる。このようにして、ロールオーババルブ1を搭載した車両が転倒状態から正立状態へ回復した際に、ロールオーババルブ1を通過して流出する液体燃料の量を低減することができる。その結果、キャニスタ80の劣化を抑制することができる。
【0064】
また、閉塞キャップ60とハウジング2のキャップ20とを一体成形しているので、部品点数を削減できるとともに、ハウジング2を閉塞キャップ60に対して固定し燃料タンク8内の所定位置に配置する構成を簡素化することができる。
【0065】
また、車両正立状態における燃料タンク8内の満タン液面レベル8dよりも上方に配設されたセパレータ70で燃料を液体燃料と燃料蒸気とに気液分離し、セパレータ70内に開口する上流端から排出経路へ燃料蒸気を流入させることができる。したがって、車両正立状態時に排出経路に液体燃料が流入することを抑止することができる。
【0066】
また、セパレータ70の底面部72は、閉塞キャップ60に係止する収容部74等と一体成形されている。したがって、部品点数を削減できるとともに、セパレータ70を閉塞キャップ60に対して固定し燃料タンク8内の所定位置に配置する構成を簡素化することができる。
【0067】
また、キャニスタ80の容器体81は、閉塞キャップ60に固定されている。したがって、キャニスタ80を閉塞キャップ60に固定し燃料タンク8に対して所定位置に配置する構成を簡素化することができる。さらに、ロールオーババルブ1とキャニスタ80とを繋ぐ配管部材を省くことが可能である。
【0068】
タンク装着モジュール100は、燃料タンク8の底面部8bの開口8cに取り付けられる閉塞キャップ60に、内燃機関への燃料供給システム(すなわち、サクションフィルタ93、燃料ポンプ91、プレッシャレギュレータ92、パイプ部75、チューブ75a、貫通配管部63等)、および、燃料タンク8外への燃料蒸気排出システム(すなわち、セパレータ70、チューブ73、ロールオーババルブ1、キャニスタ80等)が一体化されている。
【0069】
したがって、部費点数を削減したり各部品を簡素化したりして、部品コストの低減が容易であるとともに、燃料タンク8への組み付けが容易であり、組み付け工数を低減することも可能である。
【0070】
例えば、従来、セパレータや燃料タンク内でセパレータ内から延びる燃料蒸気の排出配管が鉄等の金属製である場合には、セパレータやタンク内配管を、直接もしくはステー等を介して燃料タンクへ溶接していた。ところが、本実施形態によれば、溶接等の複雑な工程は不要となり、取り付け工数を容易に低減することができる。
【0071】
また、ロールオーババルブ1の弁体30は、車両非傾斜時の上方である円筒部11軸線方向の一方を向いた係止面36を有し、弁体30より重いウェイト40は、弁体30の係止面36よりも円筒部11軸線方向の上方側において下方である円筒部11軸線方向の他方を向いた係止面46を有しており、車両が傾斜角度が所定角度以下である場合には、弁体30が弁座15から離れており、弁体30の係止面36がウェイト40の係止面46に係止している。
【0072】
したがって、燃料タンク8が急激に冷却される等して燃料タンク8内に大きな負圧が発生し、ハウジング2の円筒部11内に下方から上方へ向かう空気の上昇流が発生したとしても、ウェイト40は弁体30よりも重量が大きく、弁体30の係止面36がウェイト40の係止面46に係止しているので、弁体30は浮き上がり難い。このようにして、弁体30の係止面36とウェイト40の係止面46との係止構造という比較的簡素な構造で、燃料タンク8内に大きな負圧が発生した場合であっても、弁体30の弁座15への貼り付きを防止することできる。
【0073】
車両が転倒等により傾斜を続け傾斜角度が所定角度に到達すると、図3(a)に示すように、弁体30が車両非傾斜時の車両上方へ最大変位して弁体30が弁座15に着座し閉弁状態を形成する。これにより、燃料タンク8の内部から外部への排出通路が遮断され、燃料タンク8内からの液体燃料の排出が防止される。このとき、ウェイト40の上面は天井部12の下面から離れている。
【0074】
車両に更に衝撃等が加わった場合、図3(b)に示すように、弁体30は弁座15に着座したまま変位を停止し、ウェイト40は上面が天井部12の下面に当接するまで変位を続ける。図3(a)に示す状態から図3(b)に示す状態の間では、弁体30の係止面36とウェイト40の係止面46とは離れ、弁体30とウェイト40とはいずれの部位でも接していない。すなわち、弁体30とウェイト40とが相対的に変位しているときには、弁体30とウェイト40とは接触していない。
【0075】
また、ハウジング2は、変位規制部である天井部12を有しており、天井部12にウェイト40が当接してウェイト40の車両非傾斜時の上方である軸線方向の一方への変位を軸線方向の所定位置で規制する。弁体30およびウェイト40が車両上方側である閉弁方向に変位したときには、図3(a)に示すように、弁体30が弁座15に着座した時点では、ウェイト40の上面は天井部12の下面から離れており変位を規制されていない。弁体30着座後も、弁体30の係止面36とウェイト40の係止面46とが離れて、図3(b)に示すように、天井部12の下面に当接するまでウェイト40が変位を続けることが可能である。この間、弁体30は、スプリング50により弁座15への着座状態を維持する。
【0076】
したがって、弁体30が弁座15に着座するときに、弁体30よりも重量が大きいウェイト40による衝撃荷重が弁体30と弁座15との着座部に加わることを防止できる。これにより、弁体30と弁座15との着座部の形状が変形する等して閉弁時のシール性能が低下することを抑制できる。
【0077】
このような、弁体30着座時のウェイト40による衝撃の回避の構成は、図2に示した状態において、弁体30の着座領域と弁座15との軸線方向距離をA、ウェイト40上面と天井部12の下面との軸線方向距離をCとしたときに、A<Cの関係を満たすように各種寸法関係を設定することで達成される。
【0078】
また、弁体30は、円筒部11の軸線方向に変位する際には、ケース10の内面であるリブ16の内方先端部に摺接して軸線方向に案内され、ウェイト40も、円筒部11の軸線方向に変位する際には、ケース10の内面であるリブ16の内方先端部に摺接して軸線方向に案内される。そして、弁体30が弁座15から離れているときには、弁体30とウェイト40とは係止面36と係止面46とが係止する係止部のみで接しており、弁体30が弁座15に着座し弁体30とウェイト40とが相対的に変位しているときには、弁体30とウェイト40とは接触していない。したがって、弁体30とウェイト40とが相対的に変位しているときに、ウェイト40が弁体30に荷重を印加することはなく、閉弁時のシール性能が低下することを確実に抑制できる。
【0079】
また、スプリング50は、弁体30を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢するとともに、弁体30が弁座15から離れており係止面36と係止面46とが接しているときには、弁体30の円盤部32を介してウェイト40を円筒部11軸線方向の上方へ向かって付勢する共通の付勢手段となっている。したがって、スプリングの数を低減することが可能である。
【0080】
また、ウェイト40の内径は、円筒部12aの外径および弁体30のニードル部31の外径のいずれよりも大きくなっている。したがって、本実施形態のロールオーババルブ1を組み立てる際には、ケース10の円筒部11のキャップ装着口からケース10内にウェイト40、弁体30、スプリング50を順に挿設した後、ケース10に対してキャップ20を装着するという一方向組付けを行うことが可能である。
【0081】
また、弁体30には、円盤部32に貫通孔38が設けられている。弁体30には、弁座15に着座する着座領域およびウェイト40との係止領域以外の部位に、円筒部11の軸線方向に貫通する貫通孔38が形成されている。したがって、燃料タンク8内に大きな負圧が発生してハウジング2の円筒部11内に空気の上昇流が発生したとしても、弁体30の貫通孔38に空気を流通させることができ上昇流による上方への付勢力は小さいので、弁体30は極めて浮き上がり難い。
【0082】
このとき、車両非傾斜時の燃料蒸気の排出経路が空気導入経路となるが、弁体30の貫通孔38を軸線方向から見たときにウェイト40の内周面より内側となる部位に形成すること等により、空気導入経路を、ハウジング2内において比較的軸線近傍として、空気をほぼ直線的に上昇させることができる。したがって、上昇空気流によって、弁体30およびウェイト40が一層浮き上がり難く、弁体30の弁座15への貼り付きを確実に防止することできる。
【0083】
さらに、車両転倒等による傾斜状態で閉弁され排出を抑止されてチューブ73内やパイプ部13内に滞留していた比較的少量の液体燃料が、車両転倒等の傾斜状態からの復帰にともなって円筒部11内に流入したときに、弁体30に貫通孔38が形成されていることで容易に下方に流出させて外部へ排出することができる。
【0084】
このとき、車両非傾斜時の燃料蒸気の排出経路が液体燃料排出経路となるが、弁体30の貫通孔38を軸線方向から見たときにウェイト40の内周面より内側となる部位に形成すること等により、液体燃料排出経路を、ハウジング2内において比較的軸線近傍として、液体燃料をほぼ直線的に下方に流通することができる。したがって、液体燃料の排出が極めて容易であり、燃料蒸気の通気系を早期に回復することができる。
【0085】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0086】
上記実施形態では、タンク装着モジュール100はセパレータ70を備えていたが、これに限定されるものではない。例えば、図4に示すように、セパレータ70を設けないものであってもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、ロールオーババルブ1のパイプ部13に接続したチューブ73が、セパレータ70内まで延設されていたが、これに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、セパレータ70の底面部72に上下方向に貫通する貫通パイプ部72cを一体成形し、貫通パイプ部72cの下端部とロールオーババルブ1のパイプ部13とをチューブ73で接続するものであってもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、キャニスタ80を閉塞キャップ60に固定して一体化していたが、これに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、キャニスタ80を閉塞キャップ60とは別体とし、閉塞キャップ60に一体成形したロールオーババルブ1のキャップ20に、平板部21から下方に向かって立設され、嵌合円筒部22と軸線を同一とするパイプ部23を設ける。そして、このパイプ部23とキャニスタ80とを、例えばチューブ73と同一材質のチューブやホースで接続するものであってもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、ロールオーババルブ1のハウジング2を閉塞キャップ60と一体成形していたが、これに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、ロールオーババルブ1のハウジング2のケース10を、セパレータ70と一体成形したものであってもよい。上記実施形態のようにロールオーババルブ1のハウジング2を閉塞キャップ60に直接固定するのではなく、ハウジング2を閉塞キャップ60に対して他部材を介して(間接的に)固定するものであってもよい。また、ロールオーババルブ1のハウジング2の一部を閉塞キャップ60と一体成形し、ハウジング2の残部をセパレータ70と一体成形するものであってもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、ロールオーババルブ1のハウジング2のうち、キャップ20を閉塞キャップ60と一体成形していたが、これに限定されるものではない。例えば、図8に示すように、ロールオーババルブ1のハウジング2のうち、ケース10を閉塞キャップ60と一体成形したものであってもよい。上記実施形態で示したように、ロールオーババルブ1のハウジング2は、全てが燃料タンク8内に配設されるものに限定されず、図8に例示するように、ハウジング2の一部が燃料タンク8(図1参照)内に配設されるものであってもよい。ハウジング2の一部を燃料タンク8内に配設する場合にも、車両転倒時に排出経路へ浸入する液体燃料を少量とするために、弁体30が着座する弁座15は、燃料タンク8内に(燃料タンク8の底面部8bよりも上方に)位置することが好ましい。
【0091】
また、上記実施形態では、ロールオーババルブ1のパイプ部13に接続したチューブ73が、セパレータ70内まで延設されていたが、これに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、ロールオーババルブ1のパイプ部13をセパレータ70内まで延設するものであってもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、ロールオーババルブ1を通過した燃料蒸気を捕捉するためのキャニスタ80を設けていたが、キャニスタ80を設けないものであってもかまわない。また、燃料ポンプ91等の内燃機関への燃料供給システムを備えないものであってもかまわない。
【0093】
また、上記実施形態では、車両非傾斜時(車両正立時)においてロールオーババルブ1の円筒部11が鉛直方向に延びるように車両搭載されていたが、これに限定されるものではない。例えば、車両非傾斜時において円筒部11が鉛直方向から若干傾斜する方向に延びるように搭載されていてもかまわない。
【0094】
また、上記実施形態では、ロールオーババルブ1の筒状部は円筒部11であったが、これに限定されるものではない。例えば、横断面が楕円形状の筒状部であってもかまわない。
【0095】
また、上記実施形態では、ロールオーババルブ1のハウジング2は、ケース10とキャップ20とにより構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、3つ以上の部材を組み合わせてハウジングを構成してもかまわない。
【0096】
また、上記実施形態では、ロールオーババルブ1を備えるタンク装着モジュール100が搭載される車両は二輪車であったが、これに限定されるものではない。車両は、例えば芝刈り機であってもよいし、三輪もしくは四輪のバギー車両(小型の全地形対応車)であってもかまわない。
【符号の説明】
【0097】
1 ロールオーババルブ
2 ハウジング
8 燃料タンク
8b 底面部(下面部)
8c 開口
8d 満タン液面レベル
10 ケース(ハウジングの一部)
11 円筒部(筒状部)
15 弁座
20 キャップ(ハウジングの一部)
30 弁体
36 係止面(第1面部)
40 ウェイト(ウェイト部材)
46 係止面(第2面部)
50 スプリング(ウェイト部材付勢手段)
60 閉塞キャップ(閉塞部材)
70 セパレータ(ケース体)
80 キャニスタ
81 容器体
82 吸着材(捕捉部材)
100 タンク装着モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された燃料タンクの下面部に形成された開口を閉塞する閉塞部材と、
前記閉塞部材に対して固定されて少なくとも一部が前記燃料タンク内に位置するように設けられ、内部に、前記車両の正立状態における前記燃料タンク内の満タン液面レベルよりも上方から下方に延びて前記燃料タンクの内部から外部へ燃料蒸気を排出する排出経路が形成されたハウジングと、
ハウジング内に設けられ、前記車両が転倒した際には前記ハウジングの内面に形成された弁座に着座して前記排出経路を遮断し、前記車両が転倒状態から回復した際には前記弁座から離れて前記排出経路を開放する弁体と、を備えることを特徴とするロールオーババルブ。
【請求項2】
前記閉塞部材と前記ハウジングとが一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載のロールオーババルブ。
【請求項3】
前記燃料タンク内の前記満タン液面レベルよりも上方に配設されたケース体を有して、前記ケース体の内部に侵入した燃料を液体燃料と燃料蒸気とに気液分離するセパレータを備え、
前記排出経路の前記燃料タンク内の上端開口は前記ケース体内に開口しており、前記セパレータで分離された燃料蒸気が前記ケース体内から前記排出経路に流入することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロールオーババルブ。
【請求項4】
前記ハウジングと前記ケース体とが一体成形されていることを特徴とする請求項3に記載のロールオーババルブ。
【請求項5】
前記排出経路を介して前記燃料タンク外に排出される燃料蒸気を捕捉する捕捉部材と、前記捕捉部材を内部に収容する容器体と、を有するキャニスタを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載のロールオーババルブ。
【請求項6】
前記容器体が前記閉塞部材に固定されていることを特徴とする請求項5に記載のロールオーババルブ。
【請求項7】
前記ハウジングは、筒状部を有し、前記筒状部の軸線方向が前記車両の上下方向となるように前記車両に対して固定されて、前記筒状部内を前記車両の上方側である前記軸線方向の一方から前記車両の下方側である前記軸線方向の他方へ前記燃料蒸気が流通するようになっており、
前記筒状部内に設けられ、前記軸線方向に変位可能なウェイト部材と、前記ハウジング内に設けられ、前記ウェイト部材を前記軸線方向の前記一方へ向かって付勢するウェイト部材付勢手段と、を備えており、
前記弁体は、前記筒状部内に設けられ、鉛直方向に対する前記軸線方向の傾斜角度が変化した際には前記ウェイト部材の自重の前記軸線方向成分と前記ウェイト部材付勢手段の付勢力とに基づいて前記軸線方向に変位し、前記軸線方向の前記一方へ最大変位したときに前記ハウジングの内面に形成された弁座に着座して前記排出経路を遮断するようになっており、
前記ウェイト部材は、前記弁体とは別体であり、前記弁体よりも重く、
前記弁体は、前記軸線方向の前記一方を向いた第1面部を有し、前記ウェイト部材は、前記第1面部よりも前記軸線方向の前記一方側において前記軸線方向の前記他方を向いた第2面部を有しており、前記弁体が前記弁座から離れているときには前記第1面部が前記第2面部に係止していることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載のロールオーババルブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−180791(P2012−180791A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44270(P2011−44270)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】