ロール金型とその製造方法および光学フィルム
【課題】プリズムパターンを有するフィルム転写成形用のロール金型の切削加工において、工具摩耗による溝加工部の形状精度低下を抑止し、高精度な溝形状を有するプリズムパターンの加工方法を提供する。
【解決手段】プリズムパターンの連続溝を螺旋軌跡によって溝を切削し、螺旋軌跡のピッチを溝ピッチPの2倍以上のピッチによる多条螺旋軌跡によって形成する。前記多条螺旋軌跡にて使用する工具を,1条ごとに異なる工具を用いて切削する。
【解決手段】プリズムパターンの連続溝を螺旋軌跡によって溝を切削し、螺旋軌跡のピッチを溝ピッチPの2倍以上のピッチによる多条螺旋軌跡によって形成する。前記多条螺旋軌跡にて使用する工具を,1条ごとに異なる工具を用いて切削する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロール状の金型表面にプリズムパターンを形成する切削加工方法に関するもので、特にプリズムパターンの溝間ピッチが20μm以下の微細なプリズムパターンをフィルムの表面に転写して光学フィルムを得るフィルム転写成形用のロール金型の切削加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイのバックライトには、光源からの光を視野方向に反射・拡散させてディスプレイを発光させるためのプラスチック製板状部品あるいはフィルム状の部品が用いられる。これらの光学部品は表面に微細なプリズムパターンが形成されており、プリズムパターンによって光源からの光の反射・透過方向を制御してディスプレイの視野方向に光を導くものである。これらの光学部品は透明なプラスチック部品やフィルムなどの樹脂成形品であり、転写原版である金型を製作し、金型より転写成形して樹脂成形品が製造される。
【0003】
樹脂成形品には,V字型の溝部からなるプリズムパターンが形成されている。プリズムパターンは、転写原型である金型表面に切削加工などにより微細なプリズムパターンの反転を形成し、切削した金型を用いて樹脂成形品に転写成形することによって、プリズムパターンが樹脂成形品の表面に形成される。特にフィルム状の光学部品については、生産効率向上のためロール金型を用いて、連続転写成形により製造される。
【0004】
金型表面に形成されるプリズムパターンは、幅寸法が数ミクロン〜数百ミクロンである。また、光が透過する際の損失を低減するため表面はサブミクロンオーダーの表面粗さが必要である。このため金型の加工では、切削工具にダイヤモンドバイトを用いた超精密切削加工が用いられる。ダイヤモンドバイトの刃先形状として先端がV字形をしたダイヤモンドバイトを用いて切削することにより、金型表面に溝形状を形成し、溝形状を繰り返し切削することで所望の面積のプリズムパターンを形成する。ロール金型に上記のような溝部を形成する場合は、ロールを回転させながらダイヤモンドバイトを近接させて金型表面への切込みを行い、溝形状を切削加工する。
【0005】
ロール金型への溝部の加工方法としては、2種類の方法があり、リング状の溝を切削して、それを連ねてプリズムパターンを形成する方法と、螺旋状のねじ切り軌跡にてプリズムパターンを形成する方法がある。リング状の溝を切削する場合には、切削工具にて所定の深さまで切込んだ後、工具を一度金型より遠ざけた後、溝ピッチ分の工具の横移動を与えて、再び所定の深さまで切込みを実施する。これを繰り返して所望の形状を得る。
【0006】
螺旋状の溝部を形成する場合には、ロール金型を回転させながら工具をロール金型の軸方向に移動することによって、螺旋状の溝部がロール金型表面に切削される。ロール金型1回転あたりの軸方向の工具移動量を、溝ピッチ分として切削することによりプリズムパターンが形成できる。ロール金型加工では、加工効率の点から主に後者の螺旋軌跡を用いた切削加工が用いられる。ロール状の金型を被加工材として、ロール金型の表面にプリズムパターンを得る加工装置として、「特許文献1」や「特許文献2」に見られるような装置が開示されている。また、螺旋状の溝部を形成する方法として、超硬材質などの部品への雌ネジ部分の加工方法として「特許文献3」に示す加工法が開示されている。これは,ネジを加工するための砥石を複数個同軸上に配置して1条の螺旋軌跡のネジ部の溝を加工する方法である。
【0007】
また、通常ロール金型のプリズム形成部の材質には、非鉄系の金属材料が用いられる。これは、ダイヤモンドバイトの切削では、鉄系の被削材では摩耗が激しく加工が困難なためである。非鉄系の金属材料を被削材とした例として、円筒状の母材の表面に銅めっき層を形成し、この銅めっき層に溝を切削し、プリズムパターンを形成する方法がある。銅めっきは良好な被削性を示すため、工具摩耗も少なく大面積のロール金型加工が可能である。
【0008】
反面、銅めっきはさびが発生し易く、そのままで使用すると表面にさびによる染みが発生する。金型に発生した染みの部分は、成形したフィルムにおいても観察されて光学フィルムの外観不良となる。そのため、通常は表面保護用のめっき処理がなされる。保護めっき材質としては無電解Ni−Pめっきや硬質クロムめっきが用意される。このような手法として「特許文献3」や「特許文献4」に示す加工プロセスが開示されている。なお、以上のような技術は「非特許文献1」にも開示されている。
【0009】
【特許文献1】特表2002−536702号公報
【特許文献2】特開2004−223836号公報
【特許文献3】特開平6−23627号公報
【特許文献4】特開平11−100683号公報
【特許文献5】特開2003−211457号
【非特許文献1】最新の超精密加工・成形技術と部品化プロセス技術,P19-26,2001,(株)技術情報協会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
金型の被削材として,銅めっき材を用い、切削後に保護めっき処理してフィルム成形に用いる場合が多いが、表面保護めっき処理の際に微細な付着物や切削油剤の残存が要因で保護めっき処理時に染み発生などのめっき欠陥が生じる場合がある。特に、プリズムパターンの溝ピッチが微細となった形状や、溝の角度が小さくなった形状では、加工後の付着物の完全除去が難しく、欠陥発生の可能性が高くなる。
【0011】
この対策としては、錆の発生しない被削材を直接切削して、表面保護処理を不要とする方法がある。被削材としては表面保護めっき材としても用いられる無電解Ni−Pめっきが適しており、加工面積が比較的小さい導光板成形用の平板金型のプリズム加工で用いられている。しかし、無電解Ni−Pめっきは銅めっきと比較して被削性が劣り、硬度が大きい材料であるため、工具摩耗が大きいという問題がある。
【0012】
切削面積の小さい金型ならば,工具摩耗も小さく、切削可能であるが、フィルム成形用のロール金型では直径がφ100mm以上、長さも400mm以上必要であるため、切削面積が大きくなり工具摩耗が大きくなる。また、プリズムパターンの溝角度が小さくなるほど工具刃先の角度も小さくなり、工具摩耗が増加する。また、プリズムパターンの溝ピッチが微細化すると、ロール金型のプリズムパターンに含まれる溝本数が増大するため、切削距離が増加し工具摩耗が大きくなる。工具摩耗が大きく発生すると、溝加工部の形状がくずれてプリズムパターンの形状精度が低下し、成形した光学フィルムの性能が低下する。また、摩耗した工具は切れ刃の被削性能が低下するため、溝加工部でバリの発生が大きくなり、形状精度低下の要因になる。
【0013】
特に本発明が対象とするプリズムパターンの溝ピッチは、20μm以下と微細なため、ロール金型の切削距離は非常に大きくなり、工具摩耗によって溝加工部の形状がくずれ、形状精度が低下する問題がある。また、溝加工部の切削開始側と終了側では、工具摩耗進行により終了側に近づくに従って徐々に溝加工部の形状精度が低下し、金型を転写成形したフィルムにおいて、幅方向に光学特性が低下する問題がある。
また、溝のピッチが微細であることと、溝ピッチはサブミクロンオーダの精度が必要であるため、溝ピッチと同じピッチで複数個の工具を配置することは困難であった。
これらの理由から、微細なプリズムパターンを高精度に形成したロール金型を得ることと、それを用いた光学フィルムの成形が困難となっていた。
【0014】
本発明は、前記問題点を解決し微細なプリズムパターンからなる溝部を高精度に切削加工することにより得られたロール金型を提供し、その金型を用いて高精度な微細なプリズムパターンを有する光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の手段として、溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部が連なったプリズムパターンを表面に有するフィルム製造用のロール金型の製造方法において、プリズムパターンの溝部を切削工具としてダイヤモンドバイトを用いて、工具の螺旋軌跡によるねじ切り方式によって溝を切削し、その際、螺旋軌跡のロール金型1回転あたりの移動量を,プリズムパターンの溝ピッチに対して2倍以上の移動量ピッチによって切削し,これを繰り返すことで、最終的に溝が連続したプリズムパターンを得る。以上の切削工程を用いた多条ねじ切りによってロール金型にプリズムパターンを形成する。
【0016】
目的を達成するための第2の手段として、前記多条ねじ切りにて使用する工具を,1条ごとに工具を交換して切削したことを特徴とする。溝ピッチが小さい場合、第一の手段を用いた場合でも1本の工具では工具摩耗が大きく発生し,溝形状精度が低下する場合がある。本手法を用いることで、プリズムパターン加工における工具1本あたりの切削距離を小さくできる。この結果、微細なプリズムパターンにおいても、形状精度の高い溝形状を得ることが可能となる。
【0017】
目的を達成するための第3の手段として、プリズムパターンの連続溝を螺旋軌跡ではなく、リング状の軌跡にて円周方向に溝部を切削し、プリズムパターンの溝幅の、2倍以上のピッチによりリング状の溝部を切削する方法である。プリズムパターンの溝ピッチに対して2倍以上のピッチを有する第一の溝部を形成し、続いて1ピッチ分ずらして第一の溝部の隣位置より、前記と同じく2倍以上のピッチにて第2の溝部を形成する。これを溝部全てが連続するまで繰り返すことによって、金型全面にプリズムパターンを形成する。また、第2の手段と同様に、第一の溝部の加工と第2の溝部に用いる工具を交換して切削する工具摩耗による影響を小さくできる。
【0018】
目的を達成するための第4の手段として、ロール金型表面に対して、微細な溝部が連なったプリズムパターンを表面に有するフィルム製造用のロール金型において、前記第1および第2に示した手段でプリズムパターンの溝部を形成するか、第3の手段により溝部を形成する手法によって、ロール金型の幅方向に,単位幅のプリズムパターン領域を設定する。単位幅のプリズムパターンを第1,第2または第3の手段による製造方法により形成し,形成した単位幅のプリズムパターンをロール金型の幅方向に複数個並べて配置することにより、金型表面の全面にプリズムパターンを形成する。
【0019】
単位幅のプリズムパターン領域を設定することで、設定した領域内での切削距離が小さくできるため、工具摩耗による形状精度低下の影響を小さくできる。また、領域を金型全体に配置することで、工具摩耗が発生しやすい微細なプリズムパターンをロール金型全面に加工することができるようになり、本ロール金型を用いることで、微細プリズムパターンを転写したフィルムを得ることができる。
【0020】
目的を達成するための第5の手段は、金型表面の微細な溝部からなるプリズムパターンを転写成形によってフィルムの表面にプリズムパターンを形成する光学フィルムの製造方法として、請求項5に記載のロール金型を用いて、ロール金型の表面のプリズムパターンを基材フィルム上に紫外線硬化樹脂を用いて転写成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本手法を用いることで、微細なプリズムパターンの切削加工における工具1本あたりの切削距離を小さくできる。この結果、工具摩耗による影響を小さくでき、プリズムパターンにおいて、形状精度に優れた溝形状を得ることが可能となる。その結果、形状精度の低下が少ないプリズムパターンをロール金型に切削することができ、形状精度の優れたロール金型を得ることができる。また、単位幅のプリズムパターン領域を設定することで、工具摩耗が発生しやすい微細なプリズムパターンをロール金型全面に加工することができるようになり、本ロール金型を用いることで、高精度な溝部からなる微細プリズムパターンをフィルムに転写成形することで、光利用効率に優れた光学フィルムの入手が可能となる。
【0022】
本発明によれば、20μm以下のような、非常にピッチの小さいプリズムシートを形成することが出来る。このようなピッチの小さいプリズムシートを使用すると、光の屈折効果によってバックライトを正面に集めるのみでなく、プリズムの回折効果によって光を正面に集める効果も発生するので、より明るい画面を形成することが出来る。
【0023】
また、本発明によれば、プリズムシートの溝形状を非対称に形成することが出来るので、バックライトの光源の位置に対応して、より効率的に光を正面に集めることが出来るので、より明るい画像を形成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明の実施形態に基づいて、図面を参照して具体的に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1に、本発明方法が対称とする光学フィルム製造用のロール金型を示す。図1において(a)はロール金型の外観図を、(b)は(a)における領域Aの断面図を示している。1はロール金型であり、1aは金型に形成されたプリズムパターンである。プリズムパターン1aは、円周方向に多数の溝部から形成されている。プリズムパターン1aは(b)図に示す如く、ピッチP、深さdからなるV字型の溝部1bが連続した形状となっている。
【0026】
ロール金型にプリズムパターン1aを形成する方法として、切削加工により溝部を形成する方法がある。図2に、従来方法による切削加工の模式図を示す。図2において、2は切削工具として用いるダイヤモンドバイトである。光学フィルムを対象としたロール金型の場合、切削加工面の鏡面性が必要となるため、切削工具には加工精度と鋭い切れ刃形状が得られるダイヤモンドバイトが用いられる。ダイヤモンドバイト2の先端部には、ダイヤモンドチップ2aが取付けられている。
【0027】
また、ロール金型の表面には、銅めっきや無電解ニッケル・燐めっきが施され、めっき面をダイヤモンドバイト2により切削することで、溝部を得る。ここで銅めっきは、被削性に優れ、工具摩耗も少ないが、表面が腐食しやすいため、加工後に保護めっきが必要となる。保護めっき処理をすると加工部に保護めっきの厚さ分溝部の形状が変化するため、形状精度に優れた溝部を必要とする際には、無電解ニッケル・燐めっきを用いる。無電解ニッケル・燐めっきは、耐食性にすぐれる反面、銅めっきに比べて硬度が高く工具が磨耗しやすい性質があり、工具摩耗は切削距離に応じて増大する。
【0028】
従来方法において、ロール金型1への溝加工方法としては、ダイヤモンドバイト2によりZ方向に溝部1bの深さdに切込みを行い、ロール金型を回転させると同時にX軸方向にダイヤモンドバイト2を移動させることにより、1回転あたりの送りピッチがPである螺旋軌跡3が生成され、ロール金型1の表面に溝部1bが形成される。この動作をX軸方向に連続して行うことにより、図1に示すプリズムパターン1aを有するロール金型が切削できる。しかし、ピッチPが小さくなると、1回転あたりの送り量が細かくなり、ロール金型1のプリズムパターン1aを切削する際の切削距離が増加する。
【0029】
例えば、ピッチPを20μmとした場合、ロール金型の直径がφ150mm、X軸方向の長さを400mmとした場合、螺旋軌跡3での切削距離は150×π×400÷0.02で算出され、約9.5kmとなる。切削距離が大きくなると、先に述べたとおり、ダイヤモンドバイトの切れ刃部分では、工具摩耗が発生する。図3に工具摩耗の形態を示す。
【0030】
図3(a)はダイヤモンドバイト2の全体図であり、(b)図はダイヤモンドチップ2aをD方向から見た図を、(c)図はダイヤモンドチップ2aをE方向から見た図を示す。切削距離が大きくなると(b)、(c)図の斜線で示した箇所に摩耗が発生し、摩耗が過大になると、斜線部分で微小な欠けであるチッピングの発生や、切れ刃先端部の欠損が発生し、切削した溝部において表面粗さが低下し、溝形状の精度低下となる問題があった。予備実験において、溝角度が45°程度の溝加工では切削距離が5km以上となると刃先の工具摩耗により溝形状の崩れが発生することを確認している。つまり、溝角度が45度のように小さいと、ピッチに対して溝の深さが大きくなるので、刃先にかかる負担が過酷になる。
【0031】
次に、前記問題を解決するための本発明方式の実施例について述べる。図4は、本発明方式による図1に示すロール金型1のプリズムパターン1aの形成方法の実施例を示す。図4(a)図において、ダイヤモンドバイト2を用い、プリズムパターン1aの3倍のピッチ(3×P)を有する螺旋軌跡により、ロール金型1の表面に溝部4aを切削する。続いて、図4(b)に示すように、溝部4aに対してダイヤモンドバイト2をX軸方向にピッチP分だけ移動した位置より、プリズムパターン1aの3倍のピッチ(3×P)を有する螺旋軌跡により、ロール金型1の表面に溝部4bを切削する。
【0032】
これにより、ロール金型には、溝部4aと溝部4bが連続した溝部が形成される。続いて、図4(c)で示すように、溝部4bに対してダイヤモンドバイト2をX軸方向にピッチP分だけ移動した位置より、プリズムパターン1aの3倍のピッチ(3×P)を有する螺旋軌跡により、ロール金型1の表面に溝部4cを切削する。これにより、ロール金型には、溝部4aと溝部4bと溝部4cが連続した溝部が形成され、溝部4cと溝部4aが連続することにより、溝ピッチPにて連続するプリズムパターン1aが形成される。
【0033】
本発明方式では、溝部4a、4b、4cを切削する際の切削距離は、図2で示す従来の切削方式に対して1/3となり、工具摩耗を小さくできる。工具であるダイヤモンドバイト1本にて切削加工する場合、図2の従来手法では、工具が徐々に磨耗するため、幅方向の大きい部分では、摩耗により形状精度が低下した溝形状となるが、本発明方式では、摩耗が小さい状態で、ロール金型1の幅方向全体に溝部4aを形成し、続いて、溝部4bを幅方向全体に、更に溝部4cを幅方向全体に形成することで、工具摩耗進行による溝部の形状精度低下の影響を幅方向全体に均一化できる。これにより、成形したフィルムでの光学特性(輝度分布など)がフィルムの幅方向で均一化される効果が得られる。
【0034】
図11はこのようにして形成されたプリズムパンターンを持つロール金型1によって形成されたプリズムシート50の溝の例である。図11において、溝4aは第1回目の切削による溝であり、溝4bは第2回目の切削による溝であり、溝4cは第3回目の切削による溝である。図11に示すように、第1回目の切削で形成された溝4aの両側には第2回目の切削による溝4bあるいは第3回目の切削による溝4cが存在している。
【0035】
すなわち、第1回目の切削によって形成された溝4aの両側にはそれよりも浅い溝4bおよび4cが存在している。これを言い換えると次のようになる。すなわち、溝ピッチをPとし、溝の深さをdとしたとき、溝4aにおけるd/Pはその両側の溝のd/Pよりも大きいことになる。
【0036】
図12は切削を2回に分けておこなった場合の、プリズムパンターンを持つロール金型1によって形成されたプリズムシート50の溝の例である。図12において、溝4aは第1回目の切削による溝であり、溝4bは第2回目の切削による溝である。図12に示すように、第1回目の切削で形成された溝4aの両側には第2回目の切削による溝4bが存在している。
【0037】
すなわち、この場合も、第1回目の切削によって形成された溝4aの両側にはそれよりも浅い溝4bが存在している。したがって、この場合も、溝ピッチをPとし、溝の深さをdとしたとき、溝4aにおけるd/Pはその両側の溝のd/Pよりも大きいことになる。
【0038】
また、溝部4a、4b、4cを切削する際に工具を交換することで、工具1本当たりの切削距離を低減できるため、工具摩耗による溝部の形状精度の低下が少ない溝を得ることが可能となる。溝部の形状精度の低下を小さくすることで、成形した光学フィルムの光学特性を向上でき、優れた光学フィルムを成形可能なロール金型1を得ることができる。
【0039】
溝部4a、4b、4cを切削する際に工具を交換すると、図11または図12に示すような、隣り合う溝間で切削バイトの刃先の磨耗による影響でd/Pが周期的に変化することは無い。しかし、切削バイトの刃先の形状等によるプリズムパターンの溝形状が変化することはある。すなわち、ロール金型に溝を形成する際、切削バイトの刃先が異なると、ロール金型に形成された溝の微視的な傷等が異なる。このような傷はプリズムシート50に転写される。図13はこのようにして形成されたロール金型1によって形成されたプリズムシート50の溝形状の例である。
【0040】
図13(a)において、プリズムパンターンの溝の側壁に形成された、実線51あるいは破線52は傷を表す。第1回目の切削で用いたバイトの刃先による傷を実線で表し、第2回目の切削で用いたバイトの刃先による傷を破線で表す。実線51あるいは破線52は、単に傷の種類が異なるというだけで、どちらの傷が大きいというものではない。図13(b)は図13(a)のA−A断面であり、溝の側壁に形成された傷の例を示す。図13(b)に示すよに、傷の種類として、例えば、傷の深さdd、傷のピッチpp等形状で表すことが出来る。
【0041】
傷の深さは例えば、5nm〜10nm程度である。バイトの刃先が異なれば、形成される傷の深さdd、あるいはピッチppが異なることになる。そして、本実施例を用いた場合は、プリズムパンターンの溝の側壁には、同じ種類の傷が周期的に現れることになる。図13(a)の例では、2ピッチ毎に同じ種類の傷が現れることになる。
【0042】
なお、本実施例の説明では、溝部4a,4b、4cの切削加工は、Z軸方向に1回の切込みにて切削する方法にて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、1つの溝部をZ軸方向に複数回の切込みにて切削する場合でも可能である。通常、溝深さが大きい場合には複数回に分けて切込みを実施する。この際は、溝部4a,4b、4cの順にZ軸方向に第一の切込みにて切削加工し、続いてZ軸方向に第2の切込みにて同様の切削を実施し、所望の溝深さdまでZ軸方向に切込みを実施することで、目的のプリズムパターン1aが得られる。
【0043】
Z軸方向に切込みを複数回実施して切削する場合、Z軸方向に切込みするごとに工具を交換しても良いが、仕上げ工程であるZ軸方向の最終切込み工程にて、溝部4a,4b、4cを切削する際に工具交換を実施することにより、使用する工具本数を少なくでき、かつ形状精度の高い溝部を得ることができる。また、本発明は溝部4a,4b、4cの加工順序を規定するものではなく、切削する際の順序を入れ替えても良い。
【0044】
ここで、本実施例では、切削する溝部のピッチをプリズムパターンの溝部ピッチPの3倍としたが、本発明法はこれに限るものではなく、切削距離に応じて、ピッチの倍数を増減することで対応が可能である。例えば、切削距離が少ない場合には、2倍のピッチで加工し、切削距離が多い場合には4倍以上のピッチにて加工する。
【0045】
図8に本発明方式における、ロール金型1を回転駆動させて切削加工するためのロール金型加工機20を示す。図8(a)は加工機20をY方向より見た図を示しており、切削工具であるダイヤモンドバイト2は、図示していない加工機のZ軸に取付けされ、ロール金型1への接近や切込み移動が可能である。ロール金型加工機20において、22はロール金型を滑らかに回転させるためのベアリング支持部であり、超精密切削を行うためベアリング支持部22は空気静圧式や油静圧式のベアリングを用いる。24はロール金型1を回転駆動するためのモータであり、カップリング21とベアリング支持部22を介して回転力をロール金型1に伝達する。ロール金型1の回転と、ダイヤモンドバイト2のZ軸方向の移動により、ロール金型1に溝部を切削加工する。図8(b)は、ロール金型加工機20をX方向より見た図であり、図7(a)においてダイヤモンドバイト2が位置するX軸位置でのF−F‘断面を示したものである。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明方式における第2の実施例について説明する。図5は、本発明方式による図1に示すロール金型1のプリズムパターン1aの形成方法の実施例を示す。図4では、切削工具による切削軌跡は、プリズムパターン1aのピッチPの3倍による螺旋軌跡としたが、図5においては、螺旋軌跡ではなくリング状の軌跡で実施する。
【0047】
図5に示すリング状の軌跡での切削加工では、ロール金型1の回転中にダイヤモンドバイト2のX軸方向の移動は実施せず、Z軸方向にのみダイヤモンドバイト2を移動し切込みを行う。目的の切込みが実施された後、ダイヤモンドバイト2をロール金型1より離し、プリズムパターン1aのピッチPの3倍の移動量でX軸方向にダイヤモンドバイト2の移動を実施した後、再度切込みを実施する。これを繰り返すことにより、リング状の軌跡にて溝部6aを得る。続いて、プリズムパターン1aの溝ピッチP分だけダイヤモンドバイト2をX軸方向に移動し、前記6aの溝部と同様な手順で溝部6b、6cをリング状の軌跡にて切削する。これにより、リング状の溝部で形成されたプリズムパターン1aを得ることができる。
【0048】
このようにして形成されたロール金型1によって形成されたプリズムシート50の溝形状は図11あるいは図12のような形状となる。図11あるいは図12については、実施例1において説明にしたので、ここでは省略する。
【0049】
溝部6a,6b、6cの切削加工に際し、それぞれの溝部を工具交換して切削することにより、工具摩耗による溝形状精度の低下を低減し、形状精度に優れたプリズムパターン1aを得ることができる。このように、工具を交換する場合であっても、プリズムパンターンの溝に形成される微小な傷等は、工具によって異なるので、異なる種類の傷が、ロール金型に周期的に形成される。したがって、プリズムシート50の溝には、図13に示すように、異なる種類の傷が周期的に現れることになる。図13の説明は実施例1で行ったので、ここでは省略する。
【0050】
また、切込みを複数回実施する場合も実施例1と同様な手順にて可能である。複数回切込みを実施する場合には、最終切込み工程にて工具交換を実施することで、切削加工に使用する工具の本数を低減することが可能である。
【0051】
以下本発明方式を用いた具体的な実施例について述べる。直径130mm長さ400mmのロール金型に対し、ピッチ5μm、深さ5.5μm、V溝の角度が45°の寸法仕様である微細プリズムパターンを有するロール金型の切削加工を実施した。ロール金型4の表面にはダイヤモンドバイトによる切削加工に適しためっき材料である無電解ニッケル・燐めっきを100ミクロン施し、めっき部分をダイヤモンドバイトで切削した。切削工具は溝形状と同じ先端がV字型の単結晶ダイヤモンドバイトである。
【0052】
まず、図2で示す従来方式による、溝ピッチと同じ螺旋軌跡でロール表面に切削加工を実施した。加工の結果、幅方向が大きくなるに従って外観の変化が見られた。加工部をSEM観察した結果、工具摩耗による溝形状の変形が発生していることがわかった。工具を観察した結果、先端が細くなるように摩耗しており、バイトの先端角度が変化していた。成形した転写フィルムにおいて、光学特性を調べた結果、幅方向が大きくなるに従って目的の輝度分布特性が得られず、プリズムパターンが目的通りできていないことを確認した。
【0053】
そこで、本発明方式による切削方式により、ロール金型の切削を実施した。切削工具の軌跡は螺旋軌跡である。溝部の螺旋ピッチは溝ピッチの3倍の15μmとした。従って切削に用いた工具の本数は3本である。本発明方式による切削加工の結果、若干の工具摩耗はみられたが、溝形状の形状変化は少なかった。本ロール金型から成形した転写フィルムにおいて光学特性を調べた結果、設計した形状とほぼ等しい輝度分布特性を得た。
【実施例3】
【0054】
図6は本発明方式において切削したロール金型を示している。図6(a)は金型全体図を、(b)図は領域Bの断面拡大図を示す。図6のロール金型において、表面にプリズムパターン5aが複数配置されている。これは、プリズムパターン1aのピッチが更に微細化した際に、切削距離の増加に伴う工具摩耗増大による溝部の形状精度の低下を抑止する手法を示している。プリズムパターン5aの切削方法に関しては、前記実施例1,2にまたは実施例3示した手法にて形成する。
【0055】
形成したプリズムパターン5aを、目的のロール金型1の加工幅を満たす個数分だけ配置することで、ロール金型1の幅方向全体にプリズムパターン1aと同じ形状のプリズムパターンを得る。図6の場合(b)図に示したようにプリズムパターン5aの間に、平坦部5bを設けている。図6に示したロール金型1から成形したフィルムの用途としては、プリズムパターン5aの幅寸法に裁断して使用されるフィルムを想定しており、平坦部5bを形成することにより、フィルム成形後の裁断位置の特定を容易にしている。
【0056】
また、連続したプリズムパターン1aが必要な場合には、図7に示す形状にすることで対応が可能である。図7において(a)図は金型全体図を、(b)図は領域Dの断面拡大図を示す。切削加工する際の工具の座標設定により、プリズムパターン5aの溝部を連続させている。(b)図の断面図に示したとおり、プリズムパターン5aの両端部の溝部をオーバラップするようにして、境界部5cを形成している。なお、(a)図において説明の都合上、境界部5cの部分を太線で示しているが、実際には、加工機の座標設定の分解能が0.01μmと高いため、境界部5cを目視で判別できない程度に加工することが可能である。
【実施例4】
【0057】
図9は、本発明方式による切削加工方法により得られたロール金型1よりフィルム部材30を成形する状態を示している。ロール金型1には切削加工によるプリズムパターン1aが形成されている。フィルム部材30には表面に未硬化の樹脂材料が塗布してあり、ロール金型4に対しフィルム部材30を押し付けるようにしてプリズムパターン1aを未硬化の樹脂材料が塗布されたフィルム部材30に転写成形する。
【0058】
ロール金型1を回転させ、かつフィルム部材30をロール金型4に押し付けながら矢印方向に移動することでロール金型1のプリズムパターン1aを、フィルム部材30に凹凸形成部30dが形成される。また、フィルム部材の表面に紫外線硬化樹脂を塗布し、転写成形のプリズムパターンが転写される部分に紫外線をあてながら成形することで、転写と樹脂の硬化が同時にでき、効率よいフィルムの製造が可能となる。
【実施例5】
【0059】
図10は、本発明方式による切削加工方法により得られたロール金型1よりフィルム部材30を成形するロール転写成形部を示している。塗工用ダイ44、支持ロール45、ロール金型1、押しロール42、剥離ロール43を備える。本機構部により基材フィルム30aに紫線硬化樹脂を塗工、成形、硬化し、フィルム30を成形する。基材フィルム30aはロール状に巻かれた素材より供給され、またフィルム30は図示していない巻き取り部によってロール状に巻き取られる。
【0060】
塗工用ダイ44には、紫外線硬化樹脂が供給され開口部から紫外線硬化樹脂を吐出する。支持ロール45は外周面が金属であり、塗工用ダイ44と対面する位置に配置されている。塗工用ダイ44と支持ロール45は基材フィルム30aへの紫外線効果樹脂の塗工部を構成している。基材フィルム30aは塗工用ダイ44と支持ロール45との間を通過し、支持ロール45により搬送される。塗工用ダイ44は搬送される基材フィルム30a上に未硬化の紫外線硬化樹脂層30bを形成する。
【0061】
ロール金型1には外周面に紫外線硬化樹脂を成形すべきプリズムパターン1aが形成されている。押しロール42は外周面がロール金型1の外周面と向き合う位置に配置されている。これにより、押しロール42は基材フィルム30aの搬送方向を変更し、ロール金型1に巻き付けるとともに、基材フィルム30aをロール金型1に対して押圧し、未硬化の紫外線硬化樹脂層30bをプリズムパターン1aに押し込む。
【0062】
剥離ロール43はロール金型1に巻き付いて搬送されていた基材フィルム30aの搬送方向を変更し、ロール金型1から剥離する位置に配置されている。また、押しロール42と剥離ロール43との間にロール金型1の外周面に対向して紫外線照射装置41が配置されている。紫外線照射装置41はロール金型1に巻き付いている基材フィルム30aの裏面側から紫外線を照射する。
【0063】
これにより未硬化の紫外線硬化樹脂層30bはプリズムパターン1aを充填した状態のまま硬化し、硬化した紫外線硬化樹脂層30cに変化する。硬化した紫外線硬化樹脂層30cが付着した基材フィルム30aは剥離ロール43まで走行する途中でロール金型1から剥離する。これにより基材フィルム30a状に紫外線硬化樹脂層30cが形成されたフィルム部材30を得ることができる。
【実施例6】
【0064】
図14は本発明によって形成されたプリズムシート50の他の例である。本実施例のプリズムシート50に形成された溝は対称ではなく、図14に示すように、片側の側壁角度θ1と他の側の側壁角度θ2を有している。このようなプリズムシートはバックライトからの入射光が指向性を持ってプリズムシートに入射する場合に、画面正面により効果的に光を集光する場合に効果がある。
【0065】
このようなプリズムシート50をロール金型1で形成する場合、バイトの刃先は非対称となるが、特に、図14に示すθ1側において、刃先に加わるストレスは過酷になり、この部分で刃先の磨耗が進行する。したがって、図14に示すような、非対称な溝を持つプリズムシートを形成するためのロール金型の製作には、本発明は特に効果がある。
【0066】
図14に示すような、溝形状を有するプリズムシート50の場合であっても、本発明を使用した場合は、図11、図12、あるいは、図13に示すような溝形状の特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】プリズムパターンを有するロール金型の斜視図である。
【図2】従来方式によるプリズムパターン切削方式の説明図である。
【図3】ダイヤモンドバイトの外観図と刃先の摩耗部を示した図である。
【図4】本発明方式における螺旋軌跡によるプリズムパターン切削方式の説明図である。
【図5】本発明方式におけるリング状の軌跡によるプリズムパターン切削方式の説明図である。
【図6】複数のプリズムパターンを有するロール金型の斜視図である。
【図7】複数のプリズムパターンが連続したロール金型の斜視図である。
【図8】切削加工装置の外観図である。
【図9】フィルム部材の成形状態を示した斜視図である。
【図10】フィルム部材の転写成形部を示した図である。
【図11】プリズムシートの溝部の1例を示す拡大図である。
【図12】プリズムシートの溝部他の例の拡大図である。
【図13】プリズムシートの溝部さらに他の例の拡大図である。
【図14】プリズムシートの他の例である。
【符号の説明】
【0068】
1…ロール金型、1a…プリズムパターン断面、1b…溝部、2…ダイヤモンドバイト、
2a…ダイヤモンドチップ、3…溝ピッチPでの螺旋軌跡、
4a…3倍の溝ピッチによる第一の螺旋軌跡、4b…3倍の溝ピッチによる第二の螺旋軌跡、4c…3倍の溝ピッチによる第三の螺旋軌跡、5a…単位幅のプリズムパターン、5b…単位幅のプリズムパターン間の平坦部、5c…単位幅のプリズムパターン間の境界部、6a…3倍の溝ピッチによる第一のリング状の切削軌跡、6b…3倍の溝ピッチによる第二のリング状の切削軌跡、6c…3倍の溝ピッチによる第三のリング状の切削軌跡、20…ロール金型加工機、
21…カップリング、22…ベアリング支持部、23…ロール加工機ベース、24…モータ、30…フィルム部材、30a…基材フィルム、30b…未硬化の紫外線硬化樹脂層、30c…硬化後の紫外線硬化樹脂層、30d…フィルム上に転写されたプリズムパターン、41…紫外線照射機構部、42…押しロール、43…剥離ロール、44…塗工用ダイ、45…支持ロール、50…プリズムシート、51…プリズムシートの傷、52…プリズムシートの傷。
【技術分野】
【0001】
本発明はロール状の金型表面にプリズムパターンを形成する切削加工方法に関するもので、特にプリズムパターンの溝間ピッチが20μm以下の微細なプリズムパターンをフィルムの表面に転写して光学フィルムを得るフィルム転写成形用のロール金型の切削加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイのバックライトには、光源からの光を視野方向に反射・拡散させてディスプレイを発光させるためのプラスチック製板状部品あるいはフィルム状の部品が用いられる。これらの光学部品は表面に微細なプリズムパターンが形成されており、プリズムパターンによって光源からの光の反射・透過方向を制御してディスプレイの視野方向に光を導くものである。これらの光学部品は透明なプラスチック部品やフィルムなどの樹脂成形品であり、転写原版である金型を製作し、金型より転写成形して樹脂成形品が製造される。
【0003】
樹脂成形品には,V字型の溝部からなるプリズムパターンが形成されている。プリズムパターンは、転写原型である金型表面に切削加工などにより微細なプリズムパターンの反転を形成し、切削した金型を用いて樹脂成形品に転写成形することによって、プリズムパターンが樹脂成形品の表面に形成される。特にフィルム状の光学部品については、生産効率向上のためロール金型を用いて、連続転写成形により製造される。
【0004】
金型表面に形成されるプリズムパターンは、幅寸法が数ミクロン〜数百ミクロンである。また、光が透過する際の損失を低減するため表面はサブミクロンオーダーの表面粗さが必要である。このため金型の加工では、切削工具にダイヤモンドバイトを用いた超精密切削加工が用いられる。ダイヤモンドバイトの刃先形状として先端がV字形をしたダイヤモンドバイトを用いて切削することにより、金型表面に溝形状を形成し、溝形状を繰り返し切削することで所望の面積のプリズムパターンを形成する。ロール金型に上記のような溝部を形成する場合は、ロールを回転させながらダイヤモンドバイトを近接させて金型表面への切込みを行い、溝形状を切削加工する。
【0005】
ロール金型への溝部の加工方法としては、2種類の方法があり、リング状の溝を切削して、それを連ねてプリズムパターンを形成する方法と、螺旋状のねじ切り軌跡にてプリズムパターンを形成する方法がある。リング状の溝を切削する場合には、切削工具にて所定の深さまで切込んだ後、工具を一度金型より遠ざけた後、溝ピッチ分の工具の横移動を与えて、再び所定の深さまで切込みを実施する。これを繰り返して所望の形状を得る。
【0006】
螺旋状の溝部を形成する場合には、ロール金型を回転させながら工具をロール金型の軸方向に移動することによって、螺旋状の溝部がロール金型表面に切削される。ロール金型1回転あたりの軸方向の工具移動量を、溝ピッチ分として切削することによりプリズムパターンが形成できる。ロール金型加工では、加工効率の点から主に後者の螺旋軌跡を用いた切削加工が用いられる。ロール状の金型を被加工材として、ロール金型の表面にプリズムパターンを得る加工装置として、「特許文献1」や「特許文献2」に見られるような装置が開示されている。また、螺旋状の溝部を形成する方法として、超硬材質などの部品への雌ネジ部分の加工方法として「特許文献3」に示す加工法が開示されている。これは,ネジを加工するための砥石を複数個同軸上に配置して1条の螺旋軌跡のネジ部の溝を加工する方法である。
【0007】
また、通常ロール金型のプリズム形成部の材質には、非鉄系の金属材料が用いられる。これは、ダイヤモンドバイトの切削では、鉄系の被削材では摩耗が激しく加工が困難なためである。非鉄系の金属材料を被削材とした例として、円筒状の母材の表面に銅めっき層を形成し、この銅めっき層に溝を切削し、プリズムパターンを形成する方法がある。銅めっきは良好な被削性を示すため、工具摩耗も少なく大面積のロール金型加工が可能である。
【0008】
反面、銅めっきはさびが発生し易く、そのままで使用すると表面にさびによる染みが発生する。金型に発生した染みの部分は、成形したフィルムにおいても観察されて光学フィルムの外観不良となる。そのため、通常は表面保護用のめっき処理がなされる。保護めっき材質としては無電解Ni−Pめっきや硬質クロムめっきが用意される。このような手法として「特許文献3」や「特許文献4」に示す加工プロセスが開示されている。なお、以上のような技術は「非特許文献1」にも開示されている。
【0009】
【特許文献1】特表2002−536702号公報
【特許文献2】特開2004−223836号公報
【特許文献3】特開平6−23627号公報
【特許文献4】特開平11−100683号公報
【特許文献5】特開2003−211457号
【非特許文献1】最新の超精密加工・成形技術と部品化プロセス技術,P19-26,2001,(株)技術情報協会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
金型の被削材として,銅めっき材を用い、切削後に保護めっき処理してフィルム成形に用いる場合が多いが、表面保護めっき処理の際に微細な付着物や切削油剤の残存が要因で保護めっき処理時に染み発生などのめっき欠陥が生じる場合がある。特に、プリズムパターンの溝ピッチが微細となった形状や、溝の角度が小さくなった形状では、加工後の付着物の完全除去が難しく、欠陥発生の可能性が高くなる。
【0011】
この対策としては、錆の発生しない被削材を直接切削して、表面保護処理を不要とする方法がある。被削材としては表面保護めっき材としても用いられる無電解Ni−Pめっきが適しており、加工面積が比較的小さい導光板成形用の平板金型のプリズム加工で用いられている。しかし、無電解Ni−Pめっきは銅めっきと比較して被削性が劣り、硬度が大きい材料であるため、工具摩耗が大きいという問題がある。
【0012】
切削面積の小さい金型ならば,工具摩耗も小さく、切削可能であるが、フィルム成形用のロール金型では直径がφ100mm以上、長さも400mm以上必要であるため、切削面積が大きくなり工具摩耗が大きくなる。また、プリズムパターンの溝角度が小さくなるほど工具刃先の角度も小さくなり、工具摩耗が増加する。また、プリズムパターンの溝ピッチが微細化すると、ロール金型のプリズムパターンに含まれる溝本数が増大するため、切削距離が増加し工具摩耗が大きくなる。工具摩耗が大きく発生すると、溝加工部の形状がくずれてプリズムパターンの形状精度が低下し、成形した光学フィルムの性能が低下する。また、摩耗した工具は切れ刃の被削性能が低下するため、溝加工部でバリの発生が大きくなり、形状精度低下の要因になる。
【0013】
特に本発明が対象とするプリズムパターンの溝ピッチは、20μm以下と微細なため、ロール金型の切削距離は非常に大きくなり、工具摩耗によって溝加工部の形状がくずれ、形状精度が低下する問題がある。また、溝加工部の切削開始側と終了側では、工具摩耗進行により終了側に近づくに従って徐々に溝加工部の形状精度が低下し、金型を転写成形したフィルムにおいて、幅方向に光学特性が低下する問題がある。
また、溝のピッチが微細であることと、溝ピッチはサブミクロンオーダの精度が必要であるため、溝ピッチと同じピッチで複数個の工具を配置することは困難であった。
これらの理由から、微細なプリズムパターンを高精度に形成したロール金型を得ることと、それを用いた光学フィルムの成形が困難となっていた。
【0014】
本発明は、前記問題点を解決し微細なプリズムパターンからなる溝部を高精度に切削加工することにより得られたロール金型を提供し、その金型を用いて高精度な微細なプリズムパターンを有する光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の手段として、溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部が連なったプリズムパターンを表面に有するフィルム製造用のロール金型の製造方法において、プリズムパターンの溝部を切削工具としてダイヤモンドバイトを用いて、工具の螺旋軌跡によるねじ切り方式によって溝を切削し、その際、螺旋軌跡のロール金型1回転あたりの移動量を,プリズムパターンの溝ピッチに対して2倍以上の移動量ピッチによって切削し,これを繰り返すことで、最終的に溝が連続したプリズムパターンを得る。以上の切削工程を用いた多条ねじ切りによってロール金型にプリズムパターンを形成する。
【0016】
目的を達成するための第2の手段として、前記多条ねじ切りにて使用する工具を,1条ごとに工具を交換して切削したことを特徴とする。溝ピッチが小さい場合、第一の手段を用いた場合でも1本の工具では工具摩耗が大きく発生し,溝形状精度が低下する場合がある。本手法を用いることで、プリズムパターン加工における工具1本あたりの切削距離を小さくできる。この結果、微細なプリズムパターンにおいても、形状精度の高い溝形状を得ることが可能となる。
【0017】
目的を達成するための第3の手段として、プリズムパターンの連続溝を螺旋軌跡ではなく、リング状の軌跡にて円周方向に溝部を切削し、プリズムパターンの溝幅の、2倍以上のピッチによりリング状の溝部を切削する方法である。プリズムパターンの溝ピッチに対して2倍以上のピッチを有する第一の溝部を形成し、続いて1ピッチ分ずらして第一の溝部の隣位置より、前記と同じく2倍以上のピッチにて第2の溝部を形成する。これを溝部全てが連続するまで繰り返すことによって、金型全面にプリズムパターンを形成する。また、第2の手段と同様に、第一の溝部の加工と第2の溝部に用いる工具を交換して切削する工具摩耗による影響を小さくできる。
【0018】
目的を達成するための第4の手段として、ロール金型表面に対して、微細な溝部が連なったプリズムパターンを表面に有するフィルム製造用のロール金型において、前記第1および第2に示した手段でプリズムパターンの溝部を形成するか、第3の手段により溝部を形成する手法によって、ロール金型の幅方向に,単位幅のプリズムパターン領域を設定する。単位幅のプリズムパターンを第1,第2または第3の手段による製造方法により形成し,形成した単位幅のプリズムパターンをロール金型の幅方向に複数個並べて配置することにより、金型表面の全面にプリズムパターンを形成する。
【0019】
単位幅のプリズムパターン領域を設定することで、設定した領域内での切削距離が小さくできるため、工具摩耗による形状精度低下の影響を小さくできる。また、領域を金型全体に配置することで、工具摩耗が発生しやすい微細なプリズムパターンをロール金型全面に加工することができるようになり、本ロール金型を用いることで、微細プリズムパターンを転写したフィルムを得ることができる。
【0020】
目的を達成するための第5の手段は、金型表面の微細な溝部からなるプリズムパターンを転写成形によってフィルムの表面にプリズムパターンを形成する光学フィルムの製造方法として、請求項5に記載のロール金型を用いて、ロール金型の表面のプリズムパターンを基材フィルム上に紫外線硬化樹脂を用いて転写成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本手法を用いることで、微細なプリズムパターンの切削加工における工具1本あたりの切削距離を小さくできる。この結果、工具摩耗による影響を小さくでき、プリズムパターンにおいて、形状精度に優れた溝形状を得ることが可能となる。その結果、形状精度の低下が少ないプリズムパターンをロール金型に切削することができ、形状精度の優れたロール金型を得ることができる。また、単位幅のプリズムパターン領域を設定することで、工具摩耗が発生しやすい微細なプリズムパターンをロール金型全面に加工することができるようになり、本ロール金型を用いることで、高精度な溝部からなる微細プリズムパターンをフィルムに転写成形することで、光利用効率に優れた光学フィルムの入手が可能となる。
【0022】
本発明によれば、20μm以下のような、非常にピッチの小さいプリズムシートを形成することが出来る。このようなピッチの小さいプリズムシートを使用すると、光の屈折効果によってバックライトを正面に集めるのみでなく、プリズムの回折効果によって光を正面に集める効果も発生するので、より明るい画面を形成することが出来る。
【0023】
また、本発明によれば、プリズムシートの溝形状を非対称に形成することが出来るので、バックライトの光源の位置に対応して、より効率的に光を正面に集めることが出来るので、より明るい画像を形成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明の実施形態に基づいて、図面を参照して具体的に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1に、本発明方法が対称とする光学フィルム製造用のロール金型を示す。図1において(a)はロール金型の外観図を、(b)は(a)における領域Aの断面図を示している。1はロール金型であり、1aは金型に形成されたプリズムパターンである。プリズムパターン1aは、円周方向に多数の溝部から形成されている。プリズムパターン1aは(b)図に示す如く、ピッチP、深さdからなるV字型の溝部1bが連続した形状となっている。
【0026】
ロール金型にプリズムパターン1aを形成する方法として、切削加工により溝部を形成する方法がある。図2に、従来方法による切削加工の模式図を示す。図2において、2は切削工具として用いるダイヤモンドバイトである。光学フィルムを対象としたロール金型の場合、切削加工面の鏡面性が必要となるため、切削工具には加工精度と鋭い切れ刃形状が得られるダイヤモンドバイトが用いられる。ダイヤモンドバイト2の先端部には、ダイヤモンドチップ2aが取付けられている。
【0027】
また、ロール金型の表面には、銅めっきや無電解ニッケル・燐めっきが施され、めっき面をダイヤモンドバイト2により切削することで、溝部を得る。ここで銅めっきは、被削性に優れ、工具摩耗も少ないが、表面が腐食しやすいため、加工後に保護めっきが必要となる。保護めっき処理をすると加工部に保護めっきの厚さ分溝部の形状が変化するため、形状精度に優れた溝部を必要とする際には、無電解ニッケル・燐めっきを用いる。無電解ニッケル・燐めっきは、耐食性にすぐれる反面、銅めっきに比べて硬度が高く工具が磨耗しやすい性質があり、工具摩耗は切削距離に応じて増大する。
【0028】
従来方法において、ロール金型1への溝加工方法としては、ダイヤモンドバイト2によりZ方向に溝部1bの深さdに切込みを行い、ロール金型を回転させると同時にX軸方向にダイヤモンドバイト2を移動させることにより、1回転あたりの送りピッチがPである螺旋軌跡3が生成され、ロール金型1の表面に溝部1bが形成される。この動作をX軸方向に連続して行うことにより、図1に示すプリズムパターン1aを有するロール金型が切削できる。しかし、ピッチPが小さくなると、1回転あたりの送り量が細かくなり、ロール金型1のプリズムパターン1aを切削する際の切削距離が増加する。
【0029】
例えば、ピッチPを20μmとした場合、ロール金型の直径がφ150mm、X軸方向の長さを400mmとした場合、螺旋軌跡3での切削距離は150×π×400÷0.02で算出され、約9.5kmとなる。切削距離が大きくなると、先に述べたとおり、ダイヤモンドバイトの切れ刃部分では、工具摩耗が発生する。図3に工具摩耗の形態を示す。
【0030】
図3(a)はダイヤモンドバイト2の全体図であり、(b)図はダイヤモンドチップ2aをD方向から見た図を、(c)図はダイヤモンドチップ2aをE方向から見た図を示す。切削距離が大きくなると(b)、(c)図の斜線で示した箇所に摩耗が発生し、摩耗が過大になると、斜線部分で微小な欠けであるチッピングの発生や、切れ刃先端部の欠損が発生し、切削した溝部において表面粗さが低下し、溝形状の精度低下となる問題があった。予備実験において、溝角度が45°程度の溝加工では切削距離が5km以上となると刃先の工具摩耗により溝形状の崩れが発生することを確認している。つまり、溝角度が45度のように小さいと、ピッチに対して溝の深さが大きくなるので、刃先にかかる負担が過酷になる。
【0031】
次に、前記問題を解決するための本発明方式の実施例について述べる。図4は、本発明方式による図1に示すロール金型1のプリズムパターン1aの形成方法の実施例を示す。図4(a)図において、ダイヤモンドバイト2を用い、プリズムパターン1aの3倍のピッチ(3×P)を有する螺旋軌跡により、ロール金型1の表面に溝部4aを切削する。続いて、図4(b)に示すように、溝部4aに対してダイヤモンドバイト2をX軸方向にピッチP分だけ移動した位置より、プリズムパターン1aの3倍のピッチ(3×P)を有する螺旋軌跡により、ロール金型1の表面に溝部4bを切削する。
【0032】
これにより、ロール金型には、溝部4aと溝部4bが連続した溝部が形成される。続いて、図4(c)で示すように、溝部4bに対してダイヤモンドバイト2をX軸方向にピッチP分だけ移動した位置より、プリズムパターン1aの3倍のピッチ(3×P)を有する螺旋軌跡により、ロール金型1の表面に溝部4cを切削する。これにより、ロール金型には、溝部4aと溝部4bと溝部4cが連続した溝部が形成され、溝部4cと溝部4aが連続することにより、溝ピッチPにて連続するプリズムパターン1aが形成される。
【0033】
本発明方式では、溝部4a、4b、4cを切削する際の切削距離は、図2で示す従来の切削方式に対して1/3となり、工具摩耗を小さくできる。工具であるダイヤモンドバイト1本にて切削加工する場合、図2の従来手法では、工具が徐々に磨耗するため、幅方向の大きい部分では、摩耗により形状精度が低下した溝形状となるが、本発明方式では、摩耗が小さい状態で、ロール金型1の幅方向全体に溝部4aを形成し、続いて、溝部4bを幅方向全体に、更に溝部4cを幅方向全体に形成することで、工具摩耗進行による溝部の形状精度低下の影響を幅方向全体に均一化できる。これにより、成形したフィルムでの光学特性(輝度分布など)がフィルムの幅方向で均一化される効果が得られる。
【0034】
図11はこのようにして形成されたプリズムパンターンを持つロール金型1によって形成されたプリズムシート50の溝の例である。図11において、溝4aは第1回目の切削による溝であり、溝4bは第2回目の切削による溝であり、溝4cは第3回目の切削による溝である。図11に示すように、第1回目の切削で形成された溝4aの両側には第2回目の切削による溝4bあるいは第3回目の切削による溝4cが存在している。
【0035】
すなわち、第1回目の切削によって形成された溝4aの両側にはそれよりも浅い溝4bおよび4cが存在している。これを言い換えると次のようになる。すなわち、溝ピッチをPとし、溝の深さをdとしたとき、溝4aにおけるd/Pはその両側の溝のd/Pよりも大きいことになる。
【0036】
図12は切削を2回に分けておこなった場合の、プリズムパンターンを持つロール金型1によって形成されたプリズムシート50の溝の例である。図12において、溝4aは第1回目の切削による溝であり、溝4bは第2回目の切削による溝である。図12に示すように、第1回目の切削で形成された溝4aの両側には第2回目の切削による溝4bが存在している。
【0037】
すなわち、この場合も、第1回目の切削によって形成された溝4aの両側にはそれよりも浅い溝4bが存在している。したがって、この場合も、溝ピッチをPとし、溝の深さをdとしたとき、溝4aにおけるd/Pはその両側の溝のd/Pよりも大きいことになる。
【0038】
また、溝部4a、4b、4cを切削する際に工具を交換することで、工具1本当たりの切削距離を低減できるため、工具摩耗による溝部の形状精度の低下が少ない溝を得ることが可能となる。溝部の形状精度の低下を小さくすることで、成形した光学フィルムの光学特性を向上でき、優れた光学フィルムを成形可能なロール金型1を得ることができる。
【0039】
溝部4a、4b、4cを切削する際に工具を交換すると、図11または図12に示すような、隣り合う溝間で切削バイトの刃先の磨耗による影響でd/Pが周期的に変化することは無い。しかし、切削バイトの刃先の形状等によるプリズムパターンの溝形状が変化することはある。すなわち、ロール金型に溝を形成する際、切削バイトの刃先が異なると、ロール金型に形成された溝の微視的な傷等が異なる。このような傷はプリズムシート50に転写される。図13はこのようにして形成されたロール金型1によって形成されたプリズムシート50の溝形状の例である。
【0040】
図13(a)において、プリズムパンターンの溝の側壁に形成された、実線51あるいは破線52は傷を表す。第1回目の切削で用いたバイトの刃先による傷を実線で表し、第2回目の切削で用いたバイトの刃先による傷を破線で表す。実線51あるいは破線52は、単に傷の種類が異なるというだけで、どちらの傷が大きいというものではない。図13(b)は図13(a)のA−A断面であり、溝の側壁に形成された傷の例を示す。図13(b)に示すよに、傷の種類として、例えば、傷の深さdd、傷のピッチpp等形状で表すことが出来る。
【0041】
傷の深さは例えば、5nm〜10nm程度である。バイトの刃先が異なれば、形成される傷の深さdd、あるいはピッチppが異なることになる。そして、本実施例を用いた場合は、プリズムパンターンの溝の側壁には、同じ種類の傷が周期的に現れることになる。図13(a)の例では、2ピッチ毎に同じ種類の傷が現れることになる。
【0042】
なお、本実施例の説明では、溝部4a,4b、4cの切削加工は、Z軸方向に1回の切込みにて切削する方法にて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、1つの溝部をZ軸方向に複数回の切込みにて切削する場合でも可能である。通常、溝深さが大きい場合には複数回に分けて切込みを実施する。この際は、溝部4a,4b、4cの順にZ軸方向に第一の切込みにて切削加工し、続いてZ軸方向に第2の切込みにて同様の切削を実施し、所望の溝深さdまでZ軸方向に切込みを実施することで、目的のプリズムパターン1aが得られる。
【0043】
Z軸方向に切込みを複数回実施して切削する場合、Z軸方向に切込みするごとに工具を交換しても良いが、仕上げ工程であるZ軸方向の最終切込み工程にて、溝部4a,4b、4cを切削する際に工具交換を実施することにより、使用する工具本数を少なくでき、かつ形状精度の高い溝部を得ることができる。また、本発明は溝部4a,4b、4cの加工順序を規定するものではなく、切削する際の順序を入れ替えても良い。
【0044】
ここで、本実施例では、切削する溝部のピッチをプリズムパターンの溝部ピッチPの3倍としたが、本発明法はこれに限るものではなく、切削距離に応じて、ピッチの倍数を増減することで対応が可能である。例えば、切削距離が少ない場合には、2倍のピッチで加工し、切削距離が多い場合には4倍以上のピッチにて加工する。
【0045】
図8に本発明方式における、ロール金型1を回転駆動させて切削加工するためのロール金型加工機20を示す。図8(a)は加工機20をY方向より見た図を示しており、切削工具であるダイヤモンドバイト2は、図示していない加工機のZ軸に取付けされ、ロール金型1への接近や切込み移動が可能である。ロール金型加工機20において、22はロール金型を滑らかに回転させるためのベアリング支持部であり、超精密切削を行うためベアリング支持部22は空気静圧式や油静圧式のベアリングを用いる。24はロール金型1を回転駆動するためのモータであり、カップリング21とベアリング支持部22を介して回転力をロール金型1に伝達する。ロール金型1の回転と、ダイヤモンドバイト2のZ軸方向の移動により、ロール金型1に溝部を切削加工する。図8(b)は、ロール金型加工機20をX方向より見た図であり、図7(a)においてダイヤモンドバイト2が位置するX軸位置でのF−F‘断面を示したものである。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明方式における第2の実施例について説明する。図5は、本発明方式による図1に示すロール金型1のプリズムパターン1aの形成方法の実施例を示す。図4では、切削工具による切削軌跡は、プリズムパターン1aのピッチPの3倍による螺旋軌跡としたが、図5においては、螺旋軌跡ではなくリング状の軌跡で実施する。
【0047】
図5に示すリング状の軌跡での切削加工では、ロール金型1の回転中にダイヤモンドバイト2のX軸方向の移動は実施せず、Z軸方向にのみダイヤモンドバイト2を移動し切込みを行う。目的の切込みが実施された後、ダイヤモンドバイト2をロール金型1より離し、プリズムパターン1aのピッチPの3倍の移動量でX軸方向にダイヤモンドバイト2の移動を実施した後、再度切込みを実施する。これを繰り返すことにより、リング状の軌跡にて溝部6aを得る。続いて、プリズムパターン1aの溝ピッチP分だけダイヤモンドバイト2をX軸方向に移動し、前記6aの溝部と同様な手順で溝部6b、6cをリング状の軌跡にて切削する。これにより、リング状の溝部で形成されたプリズムパターン1aを得ることができる。
【0048】
このようにして形成されたロール金型1によって形成されたプリズムシート50の溝形状は図11あるいは図12のような形状となる。図11あるいは図12については、実施例1において説明にしたので、ここでは省略する。
【0049】
溝部6a,6b、6cの切削加工に際し、それぞれの溝部を工具交換して切削することにより、工具摩耗による溝形状精度の低下を低減し、形状精度に優れたプリズムパターン1aを得ることができる。このように、工具を交換する場合であっても、プリズムパンターンの溝に形成される微小な傷等は、工具によって異なるので、異なる種類の傷が、ロール金型に周期的に形成される。したがって、プリズムシート50の溝には、図13に示すように、異なる種類の傷が周期的に現れることになる。図13の説明は実施例1で行ったので、ここでは省略する。
【0050】
また、切込みを複数回実施する場合も実施例1と同様な手順にて可能である。複数回切込みを実施する場合には、最終切込み工程にて工具交換を実施することで、切削加工に使用する工具の本数を低減することが可能である。
【0051】
以下本発明方式を用いた具体的な実施例について述べる。直径130mm長さ400mmのロール金型に対し、ピッチ5μm、深さ5.5μm、V溝の角度が45°の寸法仕様である微細プリズムパターンを有するロール金型の切削加工を実施した。ロール金型4の表面にはダイヤモンドバイトによる切削加工に適しためっき材料である無電解ニッケル・燐めっきを100ミクロン施し、めっき部分をダイヤモンドバイトで切削した。切削工具は溝形状と同じ先端がV字型の単結晶ダイヤモンドバイトである。
【0052】
まず、図2で示す従来方式による、溝ピッチと同じ螺旋軌跡でロール表面に切削加工を実施した。加工の結果、幅方向が大きくなるに従って外観の変化が見られた。加工部をSEM観察した結果、工具摩耗による溝形状の変形が発生していることがわかった。工具を観察した結果、先端が細くなるように摩耗しており、バイトの先端角度が変化していた。成形した転写フィルムにおいて、光学特性を調べた結果、幅方向が大きくなるに従って目的の輝度分布特性が得られず、プリズムパターンが目的通りできていないことを確認した。
【0053】
そこで、本発明方式による切削方式により、ロール金型の切削を実施した。切削工具の軌跡は螺旋軌跡である。溝部の螺旋ピッチは溝ピッチの3倍の15μmとした。従って切削に用いた工具の本数は3本である。本発明方式による切削加工の結果、若干の工具摩耗はみられたが、溝形状の形状変化は少なかった。本ロール金型から成形した転写フィルムにおいて光学特性を調べた結果、設計した形状とほぼ等しい輝度分布特性を得た。
【実施例3】
【0054】
図6は本発明方式において切削したロール金型を示している。図6(a)は金型全体図を、(b)図は領域Bの断面拡大図を示す。図6のロール金型において、表面にプリズムパターン5aが複数配置されている。これは、プリズムパターン1aのピッチが更に微細化した際に、切削距離の増加に伴う工具摩耗増大による溝部の形状精度の低下を抑止する手法を示している。プリズムパターン5aの切削方法に関しては、前記実施例1,2にまたは実施例3示した手法にて形成する。
【0055】
形成したプリズムパターン5aを、目的のロール金型1の加工幅を満たす個数分だけ配置することで、ロール金型1の幅方向全体にプリズムパターン1aと同じ形状のプリズムパターンを得る。図6の場合(b)図に示したようにプリズムパターン5aの間に、平坦部5bを設けている。図6に示したロール金型1から成形したフィルムの用途としては、プリズムパターン5aの幅寸法に裁断して使用されるフィルムを想定しており、平坦部5bを形成することにより、フィルム成形後の裁断位置の特定を容易にしている。
【0056】
また、連続したプリズムパターン1aが必要な場合には、図7に示す形状にすることで対応が可能である。図7において(a)図は金型全体図を、(b)図は領域Dの断面拡大図を示す。切削加工する際の工具の座標設定により、プリズムパターン5aの溝部を連続させている。(b)図の断面図に示したとおり、プリズムパターン5aの両端部の溝部をオーバラップするようにして、境界部5cを形成している。なお、(a)図において説明の都合上、境界部5cの部分を太線で示しているが、実際には、加工機の座標設定の分解能が0.01μmと高いため、境界部5cを目視で判別できない程度に加工することが可能である。
【実施例4】
【0057】
図9は、本発明方式による切削加工方法により得られたロール金型1よりフィルム部材30を成形する状態を示している。ロール金型1には切削加工によるプリズムパターン1aが形成されている。フィルム部材30には表面に未硬化の樹脂材料が塗布してあり、ロール金型4に対しフィルム部材30を押し付けるようにしてプリズムパターン1aを未硬化の樹脂材料が塗布されたフィルム部材30に転写成形する。
【0058】
ロール金型1を回転させ、かつフィルム部材30をロール金型4に押し付けながら矢印方向に移動することでロール金型1のプリズムパターン1aを、フィルム部材30に凹凸形成部30dが形成される。また、フィルム部材の表面に紫外線硬化樹脂を塗布し、転写成形のプリズムパターンが転写される部分に紫外線をあてながら成形することで、転写と樹脂の硬化が同時にでき、効率よいフィルムの製造が可能となる。
【実施例5】
【0059】
図10は、本発明方式による切削加工方法により得られたロール金型1よりフィルム部材30を成形するロール転写成形部を示している。塗工用ダイ44、支持ロール45、ロール金型1、押しロール42、剥離ロール43を備える。本機構部により基材フィルム30aに紫線硬化樹脂を塗工、成形、硬化し、フィルム30を成形する。基材フィルム30aはロール状に巻かれた素材より供給され、またフィルム30は図示していない巻き取り部によってロール状に巻き取られる。
【0060】
塗工用ダイ44には、紫外線硬化樹脂が供給され開口部から紫外線硬化樹脂を吐出する。支持ロール45は外周面が金属であり、塗工用ダイ44と対面する位置に配置されている。塗工用ダイ44と支持ロール45は基材フィルム30aへの紫外線効果樹脂の塗工部を構成している。基材フィルム30aは塗工用ダイ44と支持ロール45との間を通過し、支持ロール45により搬送される。塗工用ダイ44は搬送される基材フィルム30a上に未硬化の紫外線硬化樹脂層30bを形成する。
【0061】
ロール金型1には外周面に紫外線硬化樹脂を成形すべきプリズムパターン1aが形成されている。押しロール42は外周面がロール金型1の外周面と向き合う位置に配置されている。これにより、押しロール42は基材フィルム30aの搬送方向を変更し、ロール金型1に巻き付けるとともに、基材フィルム30aをロール金型1に対して押圧し、未硬化の紫外線硬化樹脂層30bをプリズムパターン1aに押し込む。
【0062】
剥離ロール43はロール金型1に巻き付いて搬送されていた基材フィルム30aの搬送方向を変更し、ロール金型1から剥離する位置に配置されている。また、押しロール42と剥離ロール43との間にロール金型1の外周面に対向して紫外線照射装置41が配置されている。紫外線照射装置41はロール金型1に巻き付いている基材フィルム30aの裏面側から紫外線を照射する。
【0063】
これにより未硬化の紫外線硬化樹脂層30bはプリズムパターン1aを充填した状態のまま硬化し、硬化した紫外線硬化樹脂層30cに変化する。硬化した紫外線硬化樹脂層30cが付着した基材フィルム30aは剥離ロール43まで走行する途中でロール金型1から剥離する。これにより基材フィルム30a状に紫外線硬化樹脂層30cが形成されたフィルム部材30を得ることができる。
【実施例6】
【0064】
図14は本発明によって形成されたプリズムシート50の他の例である。本実施例のプリズムシート50に形成された溝は対称ではなく、図14に示すように、片側の側壁角度θ1と他の側の側壁角度θ2を有している。このようなプリズムシートはバックライトからの入射光が指向性を持ってプリズムシートに入射する場合に、画面正面により効果的に光を集光する場合に効果がある。
【0065】
このようなプリズムシート50をロール金型1で形成する場合、バイトの刃先は非対称となるが、特に、図14に示すθ1側において、刃先に加わるストレスは過酷になり、この部分で刃先の磨耗が進行する。したがって、図14に示すような、非対称な溝を持つプリズムシートを形成するためのロール金型の製作には、本発明は特に効果がある。
【0066】
図14に示すような、溝形状を有するプリズムシート50の場合であっても、本発明を使用した場合は、図11、図12、あるいは、図13に示すような溝形状の特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】プリズムパターンを有するロール金型の斜視図である。
【図2】従来方式によるプリズムパターン切削方式の説明図である。
【図3】ダイヤモンドバイトの外観図と刃先の摩耗部を示した図である。
【図4】本発明方式における螺旋軌跡によるプリズムパターン切削方式の説明図である。
【図5】本発明方式におけるリング状の軌跡によるプリズムパターン切削方式の説明図である。
【図6】複数のプリズムパターンを有するロール金型の斜視図である。
【図7】複数のプリズムパターンが連続したロール金型の斜視図である。
【図8】切削加工装置の外観図である。
【図9】フィルム部材の成形状態を示した斜視図である。
【図10】フィルム部材の転写成形部を示した図である。
【図11】プリズムシートの溝部の1例を示す拡大図である。
【図12】プリズムシートの溝部他の例の拡大図である。
【図13】プリズムシートの溝部さらに他の例の拡大図である。
【図14】プリズムシートの他の例である。
【符号の説明】
【0068】
1…ロール金型、1a…プリズムパターン断面、1b…溝部、2…ダイヤモンドバイト、
2a…ダイヤモンドチップ、3…溝ピッチPでの螺旋軌跡、
4a…3倍の溝ピッチによる第一の螺旋軌跡、4b…3倍の溝ピッチによる第二の螺旋軌跡、4c…3倍の溝ピッチによる第三の螺旋軌跡、5a…単位幅のプリズムパターン、5b…単位幅のプリズムパターン間の平坦部、5c…単位幅のプリズムパターン間の境界部、6a…3倍の溝ピッチによる第一のリング状の切削軌跡、6b…3倍の溝ピッチによる第二のリング状の切削軌跡、6c…3倍の溝ピッチによる第三のリング状の切削軌跡、20…ロール金型加工機、
21…カップリング、22…ベアリング支持部、23…ロール加工機ベース、24…モータ、30…フィルム部材、30a…基材フィルム、30b…未硬化の紫外線硬化樹脂層、30c…硬化後の紫外線硬化樹脂層、30d…フィルム上に転写されたプリズムパターン、41…紫外線照射機構部、42…押しロール、43…剥離ロール、44…塗工用ダイ、45…支持ロール、50…プリズムシート、51…プリズムシートの傷、52…プリズムシートの傷。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部を有するプリズムパターンが表面に形成された、光学フィルム製造用のロール金型の製造方法において、
前記プリズムパターンの溝部は、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチのねじ切り方式によって切削される螺旋軌跡を有する第1の溝を形成する工程と、
前記第1の溝とは前記溝間ピッチだけ離間して、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチのねじ切り方式によって切削される螺旋軌跡を有する第2の溝を形成する工程とを有する光学フィルム製造用のロール金型の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のロール金型の製造方法であって、
前記第1の溝を形成するバイトと前記第2の溝を形成するバイトは別なバイトであることを特徴とするロール金型の製造方法。
【請求項3】
溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部を有するプリズムパターンが表面に形成された、光学フィルム製造用のロール金型の製造方法において、
前記プリズムパターンの溝部は、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチにより、リング状の切削軌跡にて円周方向に溝部を切削して第1の複数の溝部を形成する工程と、
前記第1の溝部と前記溝間ピッチ離れた位置に前記溝間ピッチの2倍以上のピッチにより、リング状の切削軌跡にて円周方向に溝部を切削した第2の複数の溝部を形成する工程とを有することを特徴とする光学フィルムを製造するためのロール金型の製造方法
【請求項4】
溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部を有するプリズムパターンが表面に形成された、第1の領域および第2の領域を有する、光学フィルム製造用のロール金型であって、
前記第1の領域および前記第2の領域では、前記プリズムパターンの溝部は、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチのねじ切り方式によって切削される螺旋軌跡を有する第1の溝を有し、
前記第1の溝とは前記溝間ピッチだけ離間して、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチのねじ切り方式によって切削される螺旋軌跡を有する第2の溝を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域は隣接していることを特徴とする光学フィルム製造用のロール金型。
【請求項5】
前記第1の領域と前記第2の領域は前記溝間ピッチ以上の平坦部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の光学フィルム製造用のロール金型。
【請求項6】
溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部を有するプリズムパターンが表面に形成された、第1の領域および第2の領域を有する、光学フィルム製造用のロール金型であって、
前記第1の領域および前記第2の領域では、
前記プリズムパターンの溝部は、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチにより、リング状の切削軌跡にて円周方向に溝部を切削した第1の複数の溝部と、
前記第1の溝部と前記溝間ピッチ離れた位置に前記溝間ピッチの2倍以上のピッチにより、リング状の切削軌跡にて円周方向に溝部を切削した第2の複数の溝部を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域は隣接していることを特徴とする光学フィルム製造用のロール金型。
【請求項7】
前記第1の領域と前記第2の領域は前記溝間ピッチ以上の平坦部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の光学フィルム製造用のロール金型。
【請求項8】
フィルム基材上に未硬化の樹脂が塗付され、前記未硬化の樹脂に対してロール金型を押し付けることによって、ロール金型に形成されたパターンを転写してプリズムパンターンを形成し、その後前記樹脂を硬化する光学フィルムの製造方法であって、
前記ロール金型には、溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部を有するプリズムパターンが表面に形成され、
前記プリズムパターンの溝部は、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチのねじ切り方式によって切削される螺旋軌跡を有する第1の溝と、
前記第1の溝とは前記溝間ピッチだけ離間して、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチのねじ切り方式によって切削される螺旋軌跡を有する第2の溝を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂は紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項8に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
フィルム基材上に未硬化の樹脂が塗付され、前記未硬化の樹脂に対してロール金型を押し付けることによって、ロール金型に形成されたパターンを転写してプリズムパンターンを形成し、その後前記樹脂を硬化する光学フィルムの製造方法であって、
前記ロール金型には、溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部を有するプリズムパターンが表面に形成され、
前記プリズムパターンの溝部は、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチにより、リング状の切削軌跡にて円周方向に溝部を切削して第1の複数の溝部と、
前記第1の溝部と前記溝間ピッチ離れた位置に前記溝間ピッチの2倍以上のピッチにより、リング状の切削軌跡にて円周方向に溝部を切削した第2の複数の溝部を有することを特徴とする光学フィルム製造方法
【請求項11】
前記樹脂は紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項10に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
略V字型の溝を持つプリズムパンターンを有する光学フィルムであって、
前記V字型の溝の深さdとピッチPを持ち、特定の前記V字型のd/Pの値は、前記特定のV字型の両側に存在する前記V字型の溝のd/Pの値よりも大きいことを特徴とする光学フィルム。
【請求項13】
前記d/Pの値が大きいV字型の溝が周期的に存在していることを特徴とする請求項12に記載の光学フィルム。
【請求項14】
前記光学フィルムはフィルム基材とその上に塗布された紫外線硬化樹脂とから形成され、前記V字型の溝は前記紫外線硬化樹脂に形成されていることを特徴とする請求項12に記載の光学フィルム。
【請求項15】
略V字型の溝を持つプリズムパンターンを有する光学フィルムであって、
前記V字型の溝の側壁には微小傷パターンが形成され、前記V字型溝には、同様なパターンを有する前記微小傷パターンが周期的に存在していることを特徴とする光学フィルム。
【請求項16】
前記周期は2周期であることを特徴とする請求項15に記載の光学フィルム。
【請求項17】
前記周期は3周期であることを特徴とする請求項15に記載の光学フィルム。
【請求項18】
前記光学フィルムはフィルム基材とその上に塗布された紫外線硬化樹脂とから形成され、前記V字型の溝は前記紫外線硬化樹脂に形成されていることを特徴とする請求項15に記載の光学フィルム。
【請求項1】
溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部を有するプリズムパターンが表面に形成された、光学フィルム製造用のロール金型の製造方法において、
前記プリズムパターンの溝部は、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチのねじ切り方式によって切削される螺旋軌跡を有する第1の溝を形成する工程と、
前記第1の溝とは前記溝間ピッチだけ離間して、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチのねじ切り方式によって切削される螺旋軌跡を有する第2の溝を形成する工程とを有する光学フィルム製造用のロール金型の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のロール金型の製造方法であって、
前記第1の溝を形成するバイトと前記第2の溝を形成するバイトは別なバイトであることを特徴とするロール金型の製造方法。
【請求項3】
溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部を有するプリズムパターンが表面に形成された、光学フィルム製造用のロール金型の製造方法において、
前記プリズムパターンの溝部は、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチにより、リング状の切削軌跡にて円周方向に溝部を切削して第1の複数の溝部を形成する工程と、
前記第1の溝部と前記溝間ピッチ離れた位置に前記溝間ピッチの2倍以上のピッチにより、リング状の切削軌跡にて円周方向に溝部を切削した第2の複数の溝部を形成する工程とを有することを特徴とする光学フィルムを製造するためのロール金型の製造方法
【請求項4】
溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部を有するプリズムパターンが表面に形成された、第1の領域および第2の領域を有する、光学フィルム製造用のロール金型であって、
前記第1の領域および前記第2の領域では、前記プリズムパターンの溝部は、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチのねじ切り方式によって切削される螺旋軌跡を有する第1の溝を有し、
前記第1の溝とは前記溝間ピッチだけ離間して、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチのねじ切り方式によって切削される螺旋軌跡を有する第2の溝を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域は隣接していることを特徴とする光学フィルム製造用のロール金型。
【請求項5】
前記第1の領域と前記第2の領域は前記溝間ピッチ以上の平坦部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の光学フィルム製造用のロール金型。
【請求項6】
溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部を有するプリズムパターンが表面に形成された、第1の領域および第2の領域を有する、光学フィルム製造用のロール金型であって、
前記第1の領域および前記第2の領域では、
前記プリズムパターンの溝部は、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチにより、リング状の切削軌跡にて円周方向に溝部を切削した第1の複数の溝部と、
前記第1の溝部と前記溝間ピッチ離れた位置に前記溝間ピッチの2倍以上のピッチにより、リング状の切削軌跡にて円周方向に溝部を切削した第2の複数の溝部を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域は隣接していることを特徴とする光学フィルム製造用のロール金型。
【請求項7】
前記第1の領域と前記第2の領域は前記溝間ピッチ以上の平坦部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の光学フィルム製造用のロール金型。
【請求項8】
フィルム基材上に未硬化の樹脂が塗付され、前記未硬化の樹脂に対してロール金型を押し付けることによって、ロール金型に形成されたパターンを転写してプリズムパンターンを形成し、その後前記樹脂を硬化する光学フィルムの製造方法であって、
前記ロール金型には、溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部を有するプリズムパターンが表面に形成され、
前記プリズムパターンの溝部は、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチのねじ切り方式によって切削される螺旋軌跡を有する第1の溝と、
前記第1の溝とは前記溝間ピッチだけ離間して、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチのねじ切り方式によって切削される螺旋軌跡を有する第2の溝を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂は紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項8に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
フィルム基材上に未硬化の樹脂が塗付され、前記未硬化の樹脂に対してロール金型を押し付けることによって、ロール金型に形成されたパターンを転写してプリズムパンターンを形成し、その後前記樹脂を硬化する光学フィルムの製造方法であって、
前記ロール金型には、溝間のピッチが20μm以下の微細な溝部を有するプリズムパターンが表面に形成され、
前記プリズムパターンの溝部は、前記溝間ピッチの2倍以上のピッチにより、リング状の切削軌跡にて円周方向に溝部を切削して第1の複数の溝部と、
前記第1の溝部と前記溝間ピッチ離れた位置に前記溝間ピッチの2倍以上のピッチにより、リング状の切削軌跡にて円周方向に溝部を切削した第2の複数の溝部を有することを特徴とする光学フィルム製造方法
【請求項11】
前記樹脂は紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項10に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
略V字型の溝を持つプリズムパンターンを有する光学フィルムであって、
前記V字型の溝の深さdとピッチPを持ち、特定の前記V字型のd/Pの値は、前記特定のV字型の両側に存在する前記V字型の溝のd/Pの値よりも大きいことを特徴とする光学フィルム。
【請求項13】
前記d/Pの値が大きいV字型の溝が周期的に存在していることを特徴とする請求項12に記載の光学フィルム。
【請求項14】
前記光学フィルムはフィルム基材とその上に塗布された紫外線硬化樹脂とから形成され、前記V字型の溝は前記紫外線硬化樹脂に形成されていることを特徴とする請求項12に記載の光学フィルム。
【請求項15】
略V字型の溝を持つプリズムパンターンを有する光学フィルムであって、
前記V字型の溝の側壁には微小傷パターンが形成され、前記V字型溝には、同様なパターンを有する前記微小傷パターンが周期的に存在していることを特徴とする光学フィルム。
【請求項16】
前記周期は2周期であることを特徴とする請求項15に記載の光学フィルム。
【請求項17】
前記周期は3周期であることを特徴とする請求項15に記載の光学フィルム。
【請求項18】
前記光学フィルムはフィルム基材とその上に塗布された紫外線硬化樹脂とから形成され、前記V字型の溝は前記紫外線硬化樹脂に形成されていることを特徴とする請求項15に記載の光学フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−160898(P2009−160898A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2982(P2008−2982)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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