説明

ワイヤハーネス取付方法及びそれを用いた取付装置

【課題】バンドを楽に、常に一定の力で締め付けることができるワイヤハーネス取付装置及びそれを用いた取付方法を提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス35の外周に巻回されるバンド13と、バンド13の巻回状態を保持するバンド保持部12と、バンド13の巻回状態を保持して結束されたワイヤハーネス35を被取付パネル40に固定するパネル固定部25とを備え、ワイヤハーネス35をパネル固定部25を介して被取付パネル40に固定した後、バンド13を増し締めすることにより、ワイヤハーネス35を被取付パネル40に取り付けるワイヤハーネス取付装置において、バンド保持部12に、バンド保持部12との間で相対的に回動自在に設けられ、係止歯14aと噛合する円周状に配列された複数の歯22bを有し、相対的な回転により自由端を増し締め方向に移動させる増し締め手段20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付パネルに配索固定されるワイヤハーネスを保持するために適用されるワイヤハーネス取付装置及びそれを用いた取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワイヤハーネスは、車両走行中にばたついたりしないように、車体パネルに配索固定されている。このワイヤハーネスは、種々の方法で保持されるものであるが、例えば図6に示すワイヤハーネス取付装置50に保持されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このワイヤハーネス取付装置50は、ワイヤハーネスを巻締するバンド52と、バンド52の巻締状態を保持するバンド保持部53と、車体パネルに係合するクリップ55とを備えている。バンド52は、ワイヤハーネス57の外周に巻回され、自由端がバンド保持部53内に挿通され、バンド保持部53内でバンド52が係止されることで、ワイヤハーネス57が保持されるようになっている。
【0004】
また、その他の従来例として、ワイヤハーネスの保持とクリップの固定を同時に行えるようにしたものもある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平11−75314号公報(第2頁、図7)
【特許文献2】特開平8−37384号公報(第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ワイヤハーネス取付装置50では、ワイヤハーネス57の外周にバンド52巻回した後、バンド52の自由端をバンド保持部53内に挿通させ、バンド52の自由端を指などで摘みながら引っ張ることで、バンド52が増し締めされてワイヤハーネス57が保持されるものであるため、自動車部品が密集するなどしてスペースが狭い場所では、作業性が悪く、細幅で滑りやすいバンド52を強く締め付けることができないという問題があった。
【0006】
また、バンド52の締め付け力は作業者による個人差があるため、ワイヤハーネス57が強く締め付けられる場合とそうでない場合とがあり、常に一定の締付力でワイヤハーネス57を保持することができないという問題があった。バンド52の締め付けが不十分であると、車両走行中にワイヤハーネス57がばたついて、異音を発生したり、ワイヤハーネス57が損傷したりする心配があった。
【0007】
本発明は、上記した点に鑑み、バンドを楽に、常に一定の力で確実に締め付けることができるワイヤハーネス取付装置及びそれを用いた取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ワイヤハーネスの外周に巻回される表面に多数の係止歯を有するバンドと、一端が固着された該バンドの自由端を挿入させるバンド挿通孔を有し、該バンド挿通孔内で前記係止歯の一つと係合することにより該バンドの巻回状態を保持するバンド保持部と、前記バンドの巻回状態を保持して結束されたワイヤハーネスを被取付パネルに固定するパネル固定部とを備え、前記ワイヤハーネスを前記パネル固定部を介して前記被取付パネルに固定した後、前記バンドを増し締めすることにより、前記ワイヤハーネスを前記被取付パネルに取り付けるワイヤハーネス取付装置において、前記バンド保持部に、該バンド保持部との間で相対的に回動自在に設けられ、前記係止歯と噛合する円周状に配列された複数の歯を有し、前記相対的な回動により前記自由端を増し締め方向に移動させる増し締め手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ワイヤハーネスにバンドを巻回した後、バンドの自由端をバンド保持部に挿通させて係止することで、バンドの巻回状態が保持され、ワイヤハーネスがワイヤハーネス取付装置に保持される。このワイヤハーネス取付装置は、ワイヤハーネスをルーズな状態で仮保持することができるものであり、ワイヤハーネスが仮保持されることで、ワイヤハーネスとワイヤハーネス取付装置を一括して自動車組立ラインに搬入することが可能となる。仮保持されたワイヤハーネスは、パネル固定部を介して被取付パネルに固定された後、バンド挿通孔内でバンドの外面に形成された係止歯と増し締め手段の複数の歯とを噛合させた状態で相対的に回転させることにより、バンドが増し締めされてワイヤハーネスが動かないように本保持される。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のワイヤハーネス取付装置において、前記バンドが増し締めされた状態で、前記バンド保持部と前記増し締め手段との間にパネル取付部品の周辺部を挟むための隙間が形成されたことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、ワイヤハーネスとパネル取付部品を一括して被取付パネルに取り付けることができる。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のワイヤハーネス取付装置において、前記バンド保持部に係止部が設けられ、前記増し締め手段に該係止部に係合する係合部が設けられたことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、係止部と係合部とが係合することで、相互に回転可能なバンド保持部と増し締め手段とが動かないように固定される。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、ワイヤハーネスを、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス取付装置に取り付けるためのワイヤハーネス取付方法であって、前記ワイヤハーネスに前記バンドを巻回して仮保持し、前記ワイヤハーネスを前記パネル固定部を介して前記被取付パネルに固定した後、前記バンド挿通孔内で前記バンドの外面に形成された前記係止歯に前記増し締め手段の歯を噛合させた状態で相対的に回転させることにより、自由端を増し締め方向に移動させ前記バンドを増し締めすることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、ワイヤハーネスにバンドを巻回した後、バンドの自由端をバンド保持部に挿通させて係止することで、バンドの巻回状態が保持され、ワイヤハーネスがワイヤハーネス取付装置に保持される。仮保持は、ワイヤハーネスがルーズな状態で保持される状態であり、ワイヤハーネスを動かしながらワイヤハーネス取付装置を被取付パネルに固定することができるから、ワイヤハーネスに無理な力が働くことがない。このため、自動車組立ラインに搬入されるワイヤハーネスにワイヤハーネス取付装置を予め組み付けておくことができる。仮保持されたワイヤハーネスは、パネル固定部を介してワイヤハーネス取付装置が被取付パネルに固定された後、バンド挿通孔内でバンドの外面に形成された係止歯に増し締め手段の歯を噛合させた状態で相対的に回転させることにより、バンドが増し締めされてワイヤハーネスが動かないように本保持される。
【発明の効果】
【0016】
以上の如く、請求項1又は4記載の発明によれば、ワイヤハーネスにバンドを巻回して仮保持し、パネル固定部を介して被取付パネルに固定した後、バンド挿通孔内でバンドの外面に形成された係止歯に増し締め手段の歯を噛合させた状態で相対的に回転させることにより、バンドが増し締めされてワイヤハーネスが動かないように本保持される。したがって、仮締め状態にあるバンドは、直接引っ張られるのではなく、増し締め手段により増し締めされるため、バンドを楽に締め付けることができ、しかも常に一定の力で確実に締め付けることができ、取付作業性等を向上することができる。
【0017】
また、請求項2記載の発明によれば、ワイヤハーネスとパネル取付部品を一括して被取付パネルに取り付けることができる。したがって、請求項1記載の効果に加え、パネル取付部品を被取付パネルに取り付ける手間が省け、自動車の組立生産性を向上することができる。
【0018】
また、請求項3記載の発明によれば、係止部と係合部とが係合することで、相互に回転可能なバンド保持部と増し締め手段とが動かないように固定される。したがって、バンドの増し締め状態を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態の具体例を図面を用いて説明する。図1〜図3は、本発明に係るワイヤハーネス取付装置の第1の実施形態を示すものである。本実施形態では、ダッシュパネル(被取付パネル)40にワイヤハーネス取付装置10を取り付ける場合について説明する。
【0020】
本実施形態のワイヤハーネス取付装置10は、ワイヤハーネス35に巻回されるバンド13と、一端が固着されたバンド13の自由端を挿入させ、係止することでバンド13の巻回状態を保持するバンド保持部12と、バンド保持部12に回動自在に設けられ、バンド保持部12内でバンド13の自由端に噛合し、バンド保持部12の回転によりバンド13を増し締めする増し締めレバー(増し締め手段)20と、増し締めレバー20に突設され、ダッシュパネル40に固定されるクリップ(パネル固定部)25とを備えたものである。
【0021】
バンド13は、樹脂成形されたバンド保持部12に延長形成された可撓性を有する帯状の締付部材である。基端(一端)は、バンド保持部12の上側の壁部15aに固着されている。基端に続く自由端は、バンド保持部12に貫通形成されたバンド挿通孔15eに挿入され、所定の位置で係止されるようになっている。ワイヤハーネス35は、バンド13の基端と自由端との間で保持されるようになっている。
【0022】
バンド13表面には、バンド13の長手方向に等ピッチで連続する多数の係止歯14aが形成されている。隣り合う係止歯14aの歯間には、バンド挿通孔15eの孔内面に突設された係止片15dが係合するようになっている。係止片15dにより、バンド13が任意の位置で係止されることにより、ワイヤハーネス35の太さに応じて、バンド13の締付長さが調整されるようになっている。
【0023】
バンド保持部12は、内側に貫通形成されたバンド挿通孔15eを有している。バンド13が挿入される側の開口である導入口は、バンド13が導出される側の開口である導出口よりも間口が狭くなっている。導入口側には、バンド13の外面に形成された係止歯14aに係合し、バンド13の後戻りを阻止する係止片15dが斜め上向きに突設されている。
【0024】
バンド挿通孔15eに挿入されたバンド13の自由端は、係止片15dをその根本側を支点として倒れる方向に撓ませつつ、係止片15dの先端を乗り越えながら順次奥へ挿入される。係止片15dは、挿入されたバンド13の任意の位置で弾性復元し、隣り合う係止歯14aの歯間に係合する。
【0025】
係止片15dによりバンド13が係止された状態から、バンド13が戻る方向(挿入反対方向)に引っ張られると、係止片15dが起こされて歯間に深く食い込むようになる。係止片15dが垂直に起立する手前まで起こされると、係止片15dの先端が歯間の底に当接し、バンド13はそれ以上後戻りしなくなり、バンド13の巻回状態が保持されるようになっている。
【0026】
バンド挿通孔15eの導出口側では、増し締めレバー20が回動自在に結合されている。バンド挿通孔15eに挿入されたバンド13の自由端は、その係止歯14aを増し締めレバー20の結合端に形成された歯22bに噛合させつつ、増し締めレバー20とバンド挿通孔15eの内面との間を挿通されるようになっている。
【0027】
バンド保持部12の下側の壁部15bには、突出部16がワイヤハーネス35の位置する側に延長形成されている。突出部16には、増し締めレバー20の係止爪24に係合する係止孔(係止部)16a(図2)が形成されている。
【0028】
増し締めレバー20は、樹脂成形されたものであり、プレート状の基壁21の一側において垂直に起立し、バンド保持部12に結合された結合部22を有している。基壁21の上面には、バンド保持部12の突出部16に形成された係止孔16aと係合する係止爪24が、結合部22の起立する方向と同一方向に突出して形成されている。係止孔16aと係止爪24とが係合した状態で、基壁21の上面とバンド保持部12の下面が接するようになっている。
【0029】
基壁21の下面には、ワイヤハーネス取付装置10をダッシュパネル40に固定するためのクリップ25と、クリップ25の両側に位置する一対の当接部21c,21cとが形成されている。クリップ25は、支柱部25aと、支柱部25aの先端に一体に連結された一対の係止羽根25b,25bとを有する留め具である。一対の係止羽根25b,25bの一端は、支柱部25aの先端側に連結され、各係止羽根25bは先端から離れるに従い漸次外側に傾斜している。係止羽根25bと支柱部25aの間は、係止羽根25bの撓み空間26とされている。係止羽根25bの他端は、突出部25cを残して切欠き形成されている。
【0030】
クリップ25は、先端側から一対の係止羽根25b,25bを内側に撓ませながらダッシュパネル40の取付孔30aに挿入される。ダッシュパネル40の板面が一対の当接部21cに当接すると、クリップ25がそれ以上挿入されなくなり、撓んだ状態にある一対の係止羽根25b,25bが弾性復元し、係止羽根25bの他端に突設された突出部25cが取付孔30aの孔縁に係合するようになっている。
【0031】
結合部22は、基壁21の一側端部の幅方向中央で垂直に起立形成されている。結合部22の両側面には、バンド保持部12の挿通孔15e内側面に形成された孔部15fに係合する回動軸23が出没自在に突設されている。増し締めレバー20は、回動軸23が挿通孔15e内側面の孔部に位置合わせされ、突出した回動軸23が孔部15fに係合することで、バンド保持部12に回動自在に取り付けられている。
【0032】
結合部22の結合端には、回動軸23を回動中心として円周状に配列された複数の歯22bが等ピッチで設けられている。歯22bの歯形形状は、バンド13に形成された隣り合う係止歯14a間の溝形状に対応する形状に形成されている。隣り合う歯22bの歯間距離であるピッチは、隣り合う係止歯14aの歯間距離に等しく形成されている。これにより、歯22bと係止歯14aとが噛合し、噛合した状態からバンド保持部12が反時計方向Rに回転することで、バンド13の自由端が増し締め方向に移動し、バンド13の増し締めが行われるようになっている。
【0033】
図2には、ワイヤハーネス35の仮保持状態における歯22bと係止歯14aとの噛合状態が示されている。ワイヤハーネス35の仮保持状態では、バンド13がルーズな状態でバンド保持部12の係止片15dに係止されている。歯22bと係止歯14aの噛合状態から、バンド保持部12を反時計方向Rに回転させると、歯22bと係止歯14aの噛み合う位置が漸次ずれることで、バンド13の自由端が導出口側に移動してバンド13が増し締めされるようになっている。係止爪24と係止孔16aとが係合する位置までバンド保持部12を反時計方向Rに回転させると、ワイヤハーネス35がバンド13で巻締され、動かないように本保持されるようになっている(図3)。
【0034】
次に、上述したワイヤハーネス取付装置10を用いたワイヤハーネス取付方法について説明する。図2に示すように、ワイヤハーネス取付装置10のバンド保持部12を開いた状態、すなわち垂直に起立させた状態にして、ワイヤハーネス35の外周にバンド13を巻回し、バンド13の自由端をバンド保持部12の挿通孔15eに挿入させ、バンド挿通孔15eの導入口側で係止片15dによりバンド13を係止し、バンド挿通孔15eの導出口側で自由端の係止歯14aに増し締めレバー20の結合端に形成された歯22bを噛合させ、ワイヤハーネス35を仮保持する。
【0035】
続いて、図3に示すように、増し締めレバー20の裏面から下向きに突設されたクリップ25をダッシュパネル40の取付孔40aに係合させ、ワイヤハーネス35をダッシュパネル40に固定する。この状態からバンド保持部12を反時計方向Rに回転させると、歯22bと係止歯14aの噛み合う位置が漸次ずれてバンド13の自由端がバンド挿通孔15eの導出口側に移動してバンド13が増し締めされ、ワイヤハーネス35が動かないように本保持されるようになっている。
【0036】
本実施形態のワイヤハーネス取付装置10にワイヤハーネス35が仮保持されることで、ワイヤハーネス35とワイヤハーネス取付装置10を自動車組立ラインに一括して搬入することができ、しかもダッシュパネル40にワイヤハーネス35とワイヤハーネス取付装置10を一括して取り付けることが可能となる。殊に、ワイヤハーネス35が複数のワイヤハーネス取付装置10を介してダッシュパネル30に取り付けられる場合においては、自動車組立ラインにおける組立作業時間が大幅に短縮して、自動車の組立生産性が高まるようになっている。
【0037】
仮保持状態のワイヤハーネス35は、バンド保持部12を回転させることにより、バンド13が増し締めされて本保持されるから、スペースの狭い場所であってもバンド13を楽に、常に一定の締め付け力で締め付けることができ、ワイヤハーネス35の取付作業性を向上することができる。
【0038】
次に、図4及び図5に基づいて、本発明に係るワイヤハーネス取付装置の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、カーペット(パネル取付部品)44が敷かれたフロアパネル(被取付パネル)42にワイヤハーネス取付装置10Aを取り付ける場合について説明する。なお、本実施形態と第1の実施形態の共通する構成部分については、同一符号を付して説明を省略することとする。
【0039】
一般に、カーペット44は、運転室のフロアパネル42やルーフパネルや、トランクルームパネルに重ねられた状態で取り付けられるものである。このため、カーペット44が敷かれたフロアパネル42などにワイヤハーネス取付装置10Aを取り付ける場合は、フロアパネル42の取付孔42aとカーペット44の取付孔を位置合わせした状態でワイヤハーネス取付装置10Aを取り付けなければならず、しかもシートの裏側やトランクルームの奥側などでスペースが狭い場合は、無理な姿勢で作業をしなければならず、作業性が悪く、取り付けに時間が掛かるなどの問題があった。
【0040】
本実施形態のワイヤハーネス取付装置10Aは、ワイヤハーネス35とカーペット44保持した状態で、これらをフロアパネル42に一括して取り付けることができるものであって、バンド保持部12と増し締めレバー20との間に、カーペット44の周辺部を挟むための隙間28を形成したものである。
【0041】
フロアパネル42は、自動車の車室内の床を構成し、任意の形状にプレス成形された鋼板である。カーペット44は、フロアパネル42の内側に敷かれている。カーペット44の周辺部には、増し締めレバー20の基壁に突設された係止爪24を挿通させるための孔部44aが設けられている。
【0042】
バンド保持部12と増し締めレバー20との間に形成された隙間28は、カーペット44が両部材の間に密着した状態に挟まれる程度の大きさに形成されている。これにより、ワイヤハーネス取付装置10Aは、カーペット44の周辺部に動かないように固定されるようになっている。なお、パネル取付部品としてカーペット44以外のインナパネルやハーネス用プロテクタなどが取り付けられる場合も同様である。
【0043】
このワイヤハーネス取付装置10Aを用いてフロアパネル42にワイヤハーネス35とカーペット44を取り付けるには、ワイヤハーネス取付装置10Aのバンド保持部12を垂直に起立させた状態にして、ワイヤハーネス35の外周にバンド13を巻回して仮保持し、クリップ25をフロアパネル42の取付孔42aに係合させて、ワイヤハーネス取付装置10Aをフロアパネル42に固定し、カーペット44をバンド保持部12と増し締めレバー20との間に挟み、バンド保持部12を反時計方向Rに回転させ、バンド13を増し締めするとともに、カーペット44をバンド保持部12と増し締めレバー20との間で保持し、フロアパネル42にワイヤハーネス35とカーペット44を取り付ける。
【0044】
以上のように、本実施形態のワイヤハーネス取付装置10Aによれば、バンド保持部12と増し締めレバー20との間に隙間28を形成することにより、カーペット44などのパネル取付部品を挟むことができ、ワイヤハーネス35とともに一括して取り付けることが可能となる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。クリップ25は、増し締めレバー20に設けられているが、バンド保持部12に設けることも可能である。この場合、増し締めレバー20を回転させることにより、仮締め状態のバンド13が増し締めされることとなる。
【0046】
また、第1、2の実施形態では、増し締めレバー20に係止爪24を設け、バンド保持部12に係止孔16aを設けているが、増し締めレバー20に係止孔を設け、バンド保持部12に係止爪を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るワイヤハーネス取付装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すワイヤハーネス取付装置にワイヤハーネスが仮保持された状態を示す断面図である。
【図3】同じくワイヤハーネス取付装置にワイヤハーネスが本保持され、ダッシュパネルに取り付けられた状態を示す断面図である。
【図4】本発明に係るワイヤハーネス取付装置の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図5】図4に示すワイヤハーネス取付装置にカーペットの周辺部が挟まれ、フロアパネルに取り付けられた状態を示す断面図である。
【図6】従来のワイヤハーネス取付装置の一例を示し、(a)正面図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10,10A ワイヤハーネス取付装置
12 バンド保持部
13 バンド
14a 係止歯
16a 係止孔(係合部)
20 増し締めレバー(増し締め手段)
22 結合部
22b 歯
23 回動軸
24 係止爪(係合部)
25 クリップ
28 隙間
35 ワイヤハーネス
40 ダッシュパネル(被取付パネル)
42 フロアパネル(被取付パネル)
44 カーペット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスの外周に巻回される表面に多数の係止歯を有するバンドと、一端が固着された該バンドの自由端を挿入させるバンド挿通孔を有し、該バンド挿通孔内で前記係止歯の一つと係合することにより該バンドの巻回状態を保持するバンド保持部と、前記バンドの巻回状態を保持して結束されたワイヤハーネスを被取付パネルに固定するパネル固定部とを備え、前記ワイヤハーネスを前記パネル固定部を介して前記被取付パネルに固定した後、前記バンドを増し締めすることにより、前記ワイヤハーネスを前記被取付パネルに取り付けるワイヤハーネス取付装置において、
前記バンド保持部に、該バンド保持部との間で相対的に回動自在に設けられ、前記係止歯と噛合する円周状に配列された複数の歯を有し、前記相対的な回転により前記自由端を増し締め方向に移動させる増し締め手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のワイヤハーネス取付装置。
【請求項2】
前記バンドが増し締めされた状態で、前記バンド保持部と前記増し締め手段との間にパネル取付部品の周辺部を挟むための隙間が形成されたことを特徴とする請求項1記載のワイヤハーネス取付装置。
【請求項3】
前記バンド保持部に係止部が設けられ、前記増し締め手段に該係止部に係合する係合部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載のワイヤハーネス取付装置。
【請求項4】
ワイヤハーネスを、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス取付装置に取り付けるためのワイヤハーネス取付方法であって、
前記ワイヤハーネスに前記バンドを巻回して仮保持し、前記ワイヤハーネスを前記パネル固定部を介して前記被取付パネルに固定した後、前記バンド挿通孔内で前記バンドの外面に形成された前記係止歯に前記増し締め手段の歯を噛合させた状態で相対的に回転させることにより、自由端を増し締め方向に移動させ前記バンドを増し締めすることを特徴とするワイヤハーネス取付方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−46482(P2006−46482A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227821(P2004−227821)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】