説明

ワーク把持装置およびワーク把持方法

【課題】ハンドを交換することなく特性の異なるワークを把持でき、しかも、ワークと周囲の物体との隙間が狭くても把持でき、さらに、ワークの供給姿勢が限定されないワーク把持装置を提供する。
【解決手段】ロボットは、ハンドでワークを把持する。このハンドは、ハンド本体と、4つのフィンガ部と、ハンド本体に設けられて4つのフィンガ部同士の相対的な姿勢および間隔を変化させるフィンガ部調整機構と、を備える。各フィンガ部は、フィンガ部調整機構に支持される第4テーブル21と、この第4テーブルに進退可能に設けられた棒状のフィンガ22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク把持装置およびワーク把持方法に関する。詳しくは、ワークを把持するワーク把持装置およびワーク把持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車は、多数の部品を組み合わせることで製造される。具体的には、例えば、製造ラインに複数のロボットを配置し、製造ラインに沿ってワークを搬送するとともに、このワークに取り付ける部品を箱状のバケットに収容して、このバケットを各ロボットに供給する。各ロボットは、バケット内の部品を把持して、製造ラインを搬送されるワークに対して取り付ける。
【0003】
ところで、製造ラインを効率的に稼働させるため、1つの製造ラインで複数の車種が製造される。一方で、車種によって、同一機能の部品であっても、形状や重心位置などの特性が大きく異なる場合が多い。そこで、各部品に対して最適な構造のハンドを用意しておき、取り付けようとする部品の特性に応じて最適なハンドを選択して装着することで、1台のロボットで特性が異なる部品を把持している。
【0004】
また、ハンドの形状としては、ハンドのフィンガを略くの字形状とし、この略くの字形状のフィンガでワークを抱えるように把持する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−7337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の手法では、ハンドの交換を頻繁に行うことになるため、作業効率が低下してサイクルタイムが長期化し、その結果、製造コストが上昇する、という問題があった。そのため、ハンドを交換することなく、形状や重心位置が異なるワークを把持できるワーク把持装置の開発が要請されている。
【0006】
また、ハンドでバケット内のワークを把持するが、従来のハンドは、部品の形状や重心位置などの特性に応じて設計されており、把持した状態でのワークの姿勢が予め決定されている。その結果、ワークをバケット内に所定の姿勢で決められた位置に配置する必要があり、製造工程の管理が煩雑になる、という問題があった。そのため、供給姿勢を限定しないワーク把持装置の開発が要請されていた。
【0007】
さらに、特許文献1で示されたハンドの構造では、ワークとバケット壁面や仕切りとの隙間が小さい場合、フィンガがバケットの壁面や仕切りに干渉してしまう、という問題があった。
【0008】
本発明は、ハンドを交換することなく特性の異なるワークを把持でき、しかも、ワークと周囲の物体との隙間が狭くても把持でき、さらに、ワークの供給姿勢が限定されないワーク把持装置およびワーク把持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のワーク把持装置(例えば、後述のロボット1)は、ハンド(例えば、後述のハンド11)でワーク(例えば、後述のミラー60およびサッシュ70)を把持するワーク把持装置であって、前記ハンドは、ハンド本体(例えば、後述のハンド本体14)と、複数のフィンガ部(例えば、後述のフィンガ部20)と、前記ハンド本体に設けられて前記複数のフィンガ部同士の相対的な姿勢および間隔を変化させるフィンガ部調整手段(例えば、後述のフィンガ部調整機構30)と、を備え、前記複数のフィンガ部は、それぞれ、前記フィンガ部調整手段に支持されるテーブル(例えば、後述の第4テーブル21)と、当該テーブルに進退可能に設けられた棒状のフィンガ(例えば、後述のフィンガ22)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、棒状のフィンガを箸のように用いてワークを把持することで、形状や重心位置が異なるワークでも、安定して把持できる。よって、1台のワーク把持装置で、ハンドを交換することなく、異なるワークを把持して作業できるから、ワークを搬送する設備を簡易な構成として、製造コストを低減できる。
【0011】
フィンガの先端側でワークに接近して把持できるので、ワークを把持する際や把持を解除する際に、バケットの壁や仕切りがあっても、フィンガがワークの周囲の壁や仕切りに干渉しにくく、効率よく作業できる。
【0012】
また、ワークを最も安定した状態で把持するため、把持した状態でのワークの姿勢が限定されないので、ワークを供給する姿勢も限定されない。よって、ワーク供給の位置決め精度等にさほど神経質になる必要がない。
【0013】
この場合、前記フィンガ部調整手段および前記フィンガを制御する制御手段(例えば、後述の制御装置13)をさらに備え、当該制御手段は、ワークの形状に応じて、前記複数のテーブル同士の相対的な姿勢および間隔、ならびに、前記フィンガの前記テーブルからの突出寸法を最適化することが好ましい。
【0014】
この発明によれば、ワークの形状に応じて、複数のテーブル同士の相対的な姿勢および間隔、ならびに、フィンガのテーブルからの突出寸法を最適化したので、ワークを安定して把持できる。
【0015】
本発明のワーク把持方法は、ハンドでワークを把持するワーク把持方法であって、前記ハンドに複数のフィンガ部を設け、さらに、前記各フィンガ部にテーブルおよび棒状のフィンガを設けて、前記フィンガ部のテーブル同士の相対的な姿勢および間隔を変化させるとともに、前記フィンガを前記テーブルから進退させることにより、ワークを把持することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、上述の効果と同様の効果がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、棒状のフィンガを箸のように用いてワークを把持することで、形状や重心位置が異なるワークでも、安定して把持できる。よって、1台のワーク把持装置で、ハンドを交換することなく、異なるワークを把持して作業できるから、ワークを搬送する設備を簡易な構成として、製造コストを低減できる。フィンガの先端側でワークに接近して把持できるので、ワークを把持する際や把持を解除する際に、バケットの壁や仕切りがあっても、フィンガがワークの周囲の物体に干渉しにくく、効率よく作業できる。また、ワークを最も安定した状態で把持するため、把持した状態でのワークの姿勢が限定されないので、ワークを供給する姿勢も限定されない。よって、ワーク供給の位置決め精度等にさほど神経質になる必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のワーク把持装置としてのロボット1の概略構成を示す図である。
【0019】
ロボット1は、バケットに収容されたワークを把持して、この把持したワークを、製造ライン上を搬送される別のワークに取り付けるものである。このロボット1は、床面上に設けられたベース10と、ワークを把持するハンド11と、このハンド11の姿勢や3次元空間における位置を変化させるアーム12と、これらハンド11およびアーム12を制御する制御手段としての制御装置13と、を備える。
【0020】
図2は、ハンド11の構成を示す斜視図である。
ハンドは、ハンド本体14と、4つのフィンガ部20と、ハンド本体14に設けられて4つのフィンガ部20同士の相対的な姿勢および間隔を変化させるフィンガ部調整手段としてのフィンガ部調整機構30と、を備える。
【0021】
フィンガ部調整機構30は、ハンド本体14の下面に設けられた一対の多関節アーム31と、一対の多関節アーム32と、これら一対の多関節アーム32を一対の多関節アーム31に向かって進退させる一対のスライド機構33と、を備える。
ここで、ハンド本体14の下面に対して垂直な方向をZ軸とし、一対の多関節アーム31の並ぶ方向をX軸方向とし、多関節アーム32の移動方向をY軸とする。
【0022】
図3は、ハンド11の部分拡大斜視図である。
スライド機構33は、それぞれ、ハンド本体14に設けられたモータ331と、このモータ331に接続されて多関節アーム32の後述の第1テーブル41に螺合された送りねじ機構332と、を備える。
【0023】
ハンド本体14には、図示しないスライドレールが設けられ、多関節アーム32の第1テーブル41には、このスライドレールに嵌合するスライドガイド333が設けられる。
スライド機構33によれば、モータ331を駆動することで、送りねじ機構332を介して、多関節アーム32を多関節アーム31に対して進退できる。
【0024】
以下、多関節アーム32について説明するが、多関節アーム31も、多関節アーム32と同様の構成である。
多関節アーム32は、第1テーブル41と、この第1テーブル41に対して回転可能な第2テーブル42と、この第2テーブルに対して回転可能な第3テーブル43と、を備える。
【0025】
第2テーブル42は、第1回転機構44により、Z軸方向を回転軸として回転可能である。
第1回転機構44は、第1テーブル41に設けられてZ軸方向を回転軸とするモータ441と、このモータ441の回転軸に取り付けられた平歯車442と、第2テーブル42に固定されて平歯車442に噛合する平歯車443と、を備える。
【0026】
第1テーブル41には、平歯車443の軸部を回転可能に保持する軸受部444が設けられている。
第1回転機構44によれば、モータ441を駆動することで、平歯車442および平歯車443を介して、第2テーブル42を第1テーブル41に対して回転できる。
【0027】
第3テーブル43は、Z軸方向に延びる長尺状であり、第2回転機構45により、Y軸方向を回転軸として回転可能である。
第2回転機構45は、第3テーブル43に設けられてY軸方向を回転軸とする一対のモータ451と、この一対のモータ451のそれぞれの回転軸に取り付けられた傘歯車452と、第2テーブル42に固定されて傘歯車452に噛合する傘歯車453と、を備える。このように2台のモータ451を用いることにより、第2回転機構45は、高いトルクを得ることができる。
【0028】
第3テーブル43には、傘歯車453の軸部を回転可能に保持する軸受部454が設けられている。
第2回転機構45よれば、モータ451を駆動することで、傘歯車452および傘歯車453を介して、第3テーブル43を第2テーブル42に対して回転できる。
【0029】
フィンガ部20は、多関節アーム32の第3テーブル43に対して回転可能な第4テーブル21と、この第4テーブル21に進退可能に設けられた棒状のフィンガ22と、を備える。
第4テーブル21は、第3回転機構46により、Y軸方向を回転軸として回転可能である。
【0030】
第3回転機構46は、第3テーブル43に設けられてZ軸方向を回転軸とするモータ461と、このモータ461の回転軸に取り付けられた傘歯車462と、第4テーブル21に固定されて傘歯車462に噛合する傘歯車463と、を備える。
【0031】
第3テーブル43には、傘歯車463の軸部を回転可能に保持する軸受部464が設けられている。
第3回転機構46によれば、モータ461を駆動することで、傘歯車462および傘歯車463を介して、第4テーブル21を第3テーブル43に対して回転できる。
【0032】
フィンガ22は、進退機構23により、Z軸方向に沿って進退可能である。
進退機構23は、第4テーブル21に設けられたモータ231と、このモータ231に取り付けられたピニオンギヤ232と、を備える。
【0033】
フィンガ22には、長さ方向に沿ってラック233が形成されており、ピニオンギヤ232は、このラック233に噛合する。また、フィンガ22の先端側には、外力を検出する図示しない圧力センサが設けられており、この圧力センサは、上述の制御装置13に接続されている。また、フィンガ22の先端側は、ワークの損傷を防ぐため、ラバーでコーティングされている。
進退機構23によれば、モータ231を駆動することで、ピニオンギヤ232およびラック233を介して、フィンガ22を第4テーブル21に対して突没できる。
【0034】
制御装置13は、フィンガ部20の第4テーブル21同士の相対的な姿勢および間隔、ならびに、フィンガ22の第4テーブル21からの突出寸法を、ワークの特性に応じて最適化する。具体的には、フィンガ22に設けられた圧力センサで検出した圧力値に基づいて、ハンド11を動作させる。
【0035】
図4は、ハンド11の動作を示す斜視図である。
多関節アーム32は、スライド機構33により、図4中、直動軸である第1軸Aに沿って移動可能であり、第2テーブル42は、第1回転機構44により、図4中、旋回軸である第2軸Bを回転中心として、第1テーブル41に対して回転可能である。第3テーブル43は、第2回転機構45により、図4中、旋回軸である第3軸Cを回転中心として、第2テーブル42に対して回転可能であり、第4テーブル21は、第3回転機構46により、図4中、旋回軸である第4軸Dを回転中心として、第3テーブル43に対して回転可能である。また、フィンガ22は、進退機構23により、図4中、直動軸である第5軸Eに沿って移動可能である。
【0036】
以上の第1軸A〜第5軸Eの主な機能は、以下の通りである。
第1軸Aに沿った移動により、ワークを把持しやすい位置にフィンガ22を移動できる。第2軸Bを中心とする回転により、フィンガ22の把持する方向を調整することができる。第3軸Cおよび第4軸Dを中心とする回転により、フィンガ22同士を平行に保ちつつ、フィンガ22同士の間隔を調整して、把持動作を行うことができる。特に、第3軸Cは第4軸Dよりも高いトルクで回転するため、第3軸Cで回転動作することで、第4軸Dで回転動作する場合に比べて、大きな把持力を得ることができる。
第5軸Eに沿った移動により、ワークの高さに対応したり、ワークとバケットとのクリアランスが狭い場合でも、ワークにアプローチしたりできる。また、第5軸Eに沿ってフィンガ22を後退させることで、任意のフィンガ22を把持動作から除外することができる。
【0037】
次に、ロボット1で把持するワークについて説明する。
ワークとしては、所定方向に特に長い形状のものや、薄い板状のものがある。このような形状のワークは、バケットにまとめて収容される。所定方向に長いワークとしては、例えば、サッシュ、モール、ガーニッシュ、ライニングが挙げられる。
また、ワークとしては、所定方向に特に長くない形状、つまり、立方体形状や直方体形状のものがある。このような形状ワークは、バケットに仕切りを設けて、仕切りに囲まれた空間に1個ずつ収容される。立方体形状のワークとしては、例えば、ミラー、アウターハンドル、スピーカ、ロックが挙げられる。
【0038】
これらのワークをロボット1で把持する方法としては、ワークの重心をフィンガで挟み込んで把持する方法(以下、第1の把持方法と呼ぶ)と、ワークを複数点で把持する方法(以下、第2の把持方法と呼ぶ)と、がある。
【0039】
第1の把持方法では、ワークの重心をフィンガで挟み込むため、少なくとも2本のフィンガが必要である。
また、第2の把持方法では、少なくとも2本のフィンガでワークの1箇所を挟持し、残るフィンガで別の箇所を把持する。よって、この場合、少なくとも4本のフィンガが必要である。
【0040】
フィンガの本数が3本の場合、例えば、ワークの重心の近傍に突起物があると、ワークの重心をフィンガで挟み込むことができず、ワークが回転してしまうおそれがある。また、箱状のバケットにワークが収容された状態で、フィンガを挿入するための隙間がバケットの四隅にのみある場合も、3本のフィンガでは、ワークの重心を挟み込むことができないおそれがある。そこで、ロボット1では、4本のフィンガ22を設け、進退機構23を駆動してフィンガ22を進退させることで、把持方法に応じてフィンガ22を使い分けることとしている。
【0041】
まず、第1の把持方法によりワークを把持する動作について説明する。
図5に示すように、ワーク50は、平面視で略十字形状であり、長尺状の基部501と、この基部501の略中央に設けられて基部501に略直交する方向に延びる突出部502と、を備える。このワーク50は、バケット51に収容されている。
バケット51は、上方が開放された箱状であり、矩形状の底部511と、この底部511の周縁に立設された壁部512と、を備える。
ワーク50がバケット51に収容されると、ワーク50の周囲とバケット51の壁部512との間には、4つの隙間513が形成される。
【0042】
第1の把持方法では、図5に示すように、4本のフィンガ22を、それぞれ、バケット51の隙間513の隅部近傍に挿入し、その後、これら挿入したフィンガ22をワーク50の基部501の略中央に向かって移動することで、4本のフィンガ22でワーク50の重心を挟み込む。
【0043】
また、ワークの一端側に突出部がある場合には、このワークを把持する動作は、以下のようになる。
すなわち、図6に示すように、ワーク50Aの基部501の一端側には、突出部502が設けられている。このワーク50Aがバケット51に収容されると、隙間513Aでは、突出部502がバケット51の隅部近傍に位置することになる。
そこで、隙間513Aに挿入するフィンガ22については、隙間513Aの隅部近傍ではなく、ワーク50Aの基部501の中央寄りに挿入する。
【0044】
次に、第2の把持方法でワークを把持する動作について説明する。
図7に示すように、第2の把持方法では、ワーク50およびバケット51の構成は、第1の把持方法と同様である。
この第2の把持方法では、図7に示すように、まず、ハンド11の4本のフィンガ22を、それぞれ、バケット51の隙間513に挿入する。次に、基部501の一端側に位置する2本のフィンガ22を、基部501の中心線(図7中一点鎖線で示す)に向かって移動することで、ワーク50の一端側を挟持する。また、同様に、基部501の他端側に位置する2本のフィンガ22を、基部501の中心線に向かって移動することで、ワーク50の他端側を挟持する。
【0045】
第1の把持方法の具体例として、ミラーを把持する動作について説明する。
ミラーは、形状が非対称であり、ドアに取り付ける部品の中では深さ寸法が大きい方である。また、中物部品の中では、サイズが大きく、重量物である。さらに、意匠性が高いため、外表面を損傷しないようにする必要がある。
【0046】
図8に示すように、バケット61は、上方が開放された箱状であり、矩形状の底部611と、この底部611の周縁に立設された壁部612と、を備える。さらに、このバケット61には、内部空間を3つに仕切る仕切り613が設けられており、仕切られたそれぞれの空間には、ミラー60が収容されている。
ミラー60は、鏡が取り付けられたミラー本体601と、このミラー本体601に設けられた支持部602と、を備える。ミラー本体601と支持部602との接続部分には、凹部603が形成されている(図9参照)。
【0047】
まず、4本のフィンガ22のうちの2本を、ミラー60の凹部603の近傍に配置し、残る2本を、ミラー60のミラー本体601に配置する。
この状態から、ミラー60の重心に向かって4本のフィンガ22を移動させることで、図8に示すように、ミラー60をハンド11で把持した後、図9に示すように、ハンド11を上昇させて、ミラー60を持ち上げる。
【0048】
第2の把持方法の具体例として、サッシュを把持する手順について説明する。
図10に示すように、バケット71は、上方が開放された箱状であり、矩形状の底部711と、この底部711の周縁に立設された壁部712と、を備える。
サッシュ70は、断面略コの字形状の長尺状であり、バケット71には、複数のサッシュ70がバケット71の短手方向に沿って延びるように配置されている。この状態では、互いに隣り合うサッシュ70同士の隙間が狭く、上方からフィンガ22を下降させても、このフィンガ22はサッシュ70の下端側まで到達しない。
【0049】
まず、図10に示すように、4本のフィンガ22のうちの2本を、サッシュ70の両端とバケット71との隙間に挿入する。
【0050】
次に、図11に示すように、これら挿入した2本のフィンガ22をサッシュ70の両端に引っ掛けて、サッシュ70を起こし、このサッシュ70の略コの字形状に開放された側を上方に向ける。続いて、これら2本のフィンガ22をサッシュ70の中央側に向かって移動させると、サッシュ70が上方を向いているため、このフィンガ22の先端は、サッシュ70の下端側まで到達する。
【0051】
次に、残る2本のフィンガ22を、既に挿入したフィンガ22にサッシュ70を挟んで対向する位置に配置し、この状態から、互いに対向するフィンガ22同士を接近させることで、図12に示すように、サッシュ70をハンド11で把持する。その後、図13に示すように、ハンド11を上昇させて、サッシュ70を持ち上げる。
【0052】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)棒状のフィンガ22を箸のように用いてワークを把持することで、形状や重心位置が異なるミラー60やサッシュ70のようなワークでも、安定して把持できる。よって、1台のロボット1で、ハンド11を交換することなく、異なるワークを把持して作業できるから、ワークを搬送する設備を簡易な構成として、製造コストを低減できる。
【0053】
(2)フィンガ22の先端側でミラー60やサッシュ70などのワークに接近して把持できるので、ワークを把持する際や把持を解除する際に、バケット61、71の壁部612、712や仕切り613があっても、フィンガ22がこれらの壁部612、712や仕切り613に干渉しにくく、効率よく作業できる。
【0054】
(3)また、ミラー60やサッシュ70などのワークを最も安定した状態で把持するため、把持した状態でのワークの姿勢が限定されないので、ワークを供給する姿勢も限定されない。よって、ワーク供給の位置決め精度等にさほど神経質になる必要がない。
【0055】
(4)ミラー60やサッシュ70などのワークの形状に応じて、第4テーブル21同士の相対的な姿勢および間隔、ならびに、フィンガ22の第4テーブル21からの突出寸法を最適化したので、ワークを安定して把持できる。
【0056】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係るワーク把持装置の概略構成を示す図である。
【図2】前記実施形態に係るワーク把持装置のハンドの構成を示す斜視図である。
【図3】前記実施形態に係るワーク把持装置のハンドの部分拡大斜視図である。
【図4】前記実施形態に係るハンドの動作を示す斜視図である。
【図5】前記実施形態に係るハンドによる第1の把持方法を説明するための平面図である。
【図6】前記実施形態に係るハンドによる第1の把持方法の変形例を説明するための平面図である。
【図7】前記実施形態に係るハンドによる第2の把持方法を説明するための平面図である。
【図8】前記実施形態に係るハンドでミラーを把持した状態を示す斜視図である。
【図9】前記実施形態に係るハンドでミラーを持ち上げた状態を示す斜視図である。
【図10】前記実施形態に係るフィンガをサッシュとバケットとの隙間に挿入した状態を示す斜視図である。
【図11】前記実施形態に係るフィンガをサッシュの両端側に移動した状態を示す斜視図である。
【図12】前記実施形態に係るハンドでサッシュを把持した状態を示す斜視図である。
【図13】前記実施形態に係るハンドでサッシュを持ち上げた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ロボット(ワーク把持装置)
11 ハンド
13 制御装置(制御手段)
14 ハンド本体
20 フィンガ部
21 第4テーブル
22 フィンガ
30 フィンガ部調整機構(フィンガ部調整手段)
60 ミラー(ワーク)
70 サッシュ(ワーク)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドでワークを把持するワーク把持装置であって、
前記ハンドは、ハンド本体と、複数のフィンガ部と、前記ハンド本体に設けられて前記複数のフィンガ部同士の相対的な姿勢および間隔を変化させるフィンガ部調整手段と、を備え、
前記複数のフィンガ部は、それぞれ、前記フィンガ部調整手段に支持されるテーブルと、当該テーブルに進退可能に設けられた棒状のフィンガと、を備えることを特徴とするワーク把持装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク把持装置において、
前記フィンガ部調整手段および前記フィンガを制御する制御手段をさらに備え、
当該制御手段は、ワークの形状に応じて、前記複数のテーブル同士の相対的な姿勢および間隔、ならびに、前記フィンガの前記テーブルからの突出寸法を最適化することを特徴とするワーク把持装置。
【請求項3】
ハンドでワークを把持するワーク把持方法であって、
前記ハンドに複数のフィンガ部を設け、さらに、前記各フィンガ部にテーブルおよび棒状のフィンガを設けて、
前記フィンガ部のテーブル同士の相対的な姿勢および間隔を変化させるとともに、前記フィンガを前記テーブルから進退させることにより、ワークを把持することを特徴とするワーク把持方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−260110(P2008−260110A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106219(P2007−106219)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】