説明

ワーク粘着チャック装置及びワーク貼り合わせ機

【課題】粘着部材と剥離部材のユニット化を構成し易くしながら剥離性能を向上させる。
【解決手段】支持部材3の側面3bと環状部材4の係止凹部4aとの間に、剥離部材2の取付凸部2cを変形部2aの変形方向へ移動不能に挟み込むとともに、環状部材4の取付面4bに、変形部2aの外縁と隣接して粘着部材1を取り付けることにより、環状部材4を介して剥離部材2及び支持部材3と粘着部材1が一体的に組み付けられる。さらに変形部2aと粘着面1aが互いに隣り合って限りなく接近して配置されるため、粘着面1aに粘着保持された板状ワークWを変形部2aの変形で剥離する際に、大きな剥離力が得られ、剥離時において板状ワークWに生ずる撓みが最小限に抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OLED)やプラズマディスプレイ(PDP)やフレキシブルディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの製造過程において、CFガラスやTFTガラスなどのガラス製基板か又はPES(Poly-Ether-Sulphone)などのプラスチックフィルムなどからなる合成樹脂製基板などの板状ワークを粘着保持して貼り合わせる基板貼り合わせ機を含む基板組立装置や、このような基板などの絶縁体、導電体又は半導体ウエハなどのワーク(被処理体)を搬送する基板搬送装置などに用いられるワーク粘着チャック装置と、このワーク粘着チャック装置を備えたワーク貼り合わせ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のワーク粘着チャック装置及びワーク貼り合わせ機としては、第1の基板が安着する第1の定盤が備えられる第1のチャンバと、上記第1のチャンバから離隔され、上記第1の基板と合着される第2の基板が安着する第2定盤が備えられる第2のチャンバと、上記第1の定盤に安着する第1の基板を、粘着力を用いて固定させる粘着ゴムと、上記第1の基板が上記粘着ゴムから離脱されるように上記粘着力と反対される方向の力を誘導する粘着解除装置とを含む基板合着装置がある(例えば、特許文献1参照)。
上記第1の定盤の付着面に複数個の通孔を備え、上記通孔に上記粘着ゴムが露出されるように設けられる。上記粘着解除装置は、上記第1の定盤に備えられた凹部に設けられ、上記第1の基板の付着面方向に加熱膨脹して上記第1の基板を離脱させる加熱膨脹部で構成される。上記加熱膨脹部は、上記粘着ゴムに付着された上記第1の基板の付着面側に膨脹する膨脹部材と、上記膨脹部材が設けられて密閉空間を形成するハウジングと、上記膨脹部材が膨脹するように上記ハウジング内部のエアーを加熱するための加熱部とを含む。上記ハウジングには、上記膨脹部材の収縮時に支持して復帰の際の変形を防止するための支持部材が備えられる。
さらに、上記第1の定盤の上記凹部に上記ハウジングが嵌入され、上記ハウジングの中心部に突設された上記支持部材の表面に沿って、上記膨脹部材となるダイヤフラム(ダイアフラム)を張架し、上記ダイヤフラムの外周部と上記ハウジングの外周部をボルトで上記第1の定盤に対し共締めして取り付けている。上記粘着ゴムは、上記ボルトの外側に上記ダイヤフラムを中心として放射状に複数に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−126342号公報(図1−5,6−8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどに用いられる基板サイズが大型化する傾向で、一辺が2000mmを超えるものまで製造され始めている。その場合、粘着部及び剥離部からなるユニットを数百個以上配置する必要がある。したがって、生産性を向上させるためには、多品種の板状ワークに対応するためのそれらの配置換え、故障又は性能劣化に伴う交換作業等を容易に行うことが不可欠であるとともに、それぞれの粘着部及び剥離部の動作を確実化し且つ均一化する必要がある。
しかし乍ら、このような従来のワーク粘着保持装置及びワーク貼り合わせ機では、定盤に複数の加熱膨脹部が所定間隔毎に分散配置されるとともに、各加熱膨脹部の周囲に多数の粘着ゴムが分散配置されているものの、これら加熱膨脹部と粘着ゴムを定盤に対してそれぞれ個別に取り付けているため、設置作業と部品交換作業が面倒であるという問題があった。
さらに、基板を粘着保持する粘着ゴムと、粘着ゴムから基板を離脱するために定盤から離脱する方向へ押圧するダイヤフラムとが、取り付け用のボルトを挟んで離れて配置されるため、ダイヤフラムの膨張変形で基板を剥離方向へ押圧すると、基板においてダイヤフラムによる押圧部位と粘着ゴムによる粘着部位との間に撓み変形が発生して、この粘着部位を粘着ゴムから剥離方向へ押圧できず、確実に剥離できない場合がある。
特に、基板の厚さ寸法が薄くなると、ダイヤフラムによる押圧で基板の撓み変形量が大きくなり、基板の粘着部分を粘着ゴムから剥離することが困難であった。
さらに、粘着ゴムで粘着保持された第1基板と、別に保持された第2基板とを互いに接近させた後に、ダイヤフラムの膨張変形で粘着ゴムから第1基板を剥離して重ね合わせるワーク貼り合わせ機では、ダイヤフラムにより剥離時に発生した第1基板の撓み変形が貼り合わせ後にも残ってしまい、第1基板と第2基板同士の貼り合わせ精度が部分的に悪くなるという問題もあった。
また、ダイヤフラムが支持部材の表面に沿って張架され、粘着ゴムによる基板の粘着保持時にはダイヤフラムが基板ヘ向け突出しないようにダイヤフラムの裏面を支持部材の表面に密接させる必要があるため、ダイヤフラムと支持部材の材質によっては、それらの対向面同士が部分的又は全体的に貼り付くおそれがある。このような場合には、基板の剥離時に、支持部材の表面からダイヤフラムの裏面の一部のみが部分的に離隔されて、ダイヤフラムが歪な形状に膨張変形し、そのために粘着ゴムの粘着面から基板を斜め方向へ押し剥がしたり、不均一な剥離状態になることがあった。
特に、真空状態で基板を粘着保持するには、ダイヤフラムを支持部材側から真空吸引して両者を強く密接させる必要があるため、ダイヤフラムの裏面を支持部材の表面が更に貼り付き易くなり、内圧の上昇だけで全面的に離すことが困難であった。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、粘着部材と剥離部材のユニット化を構成し易くしながら剥離性能を向上させることが可能なワーク粘着チャック装置を提供すること、粘着保持された第1の板状ワークを第2の板状ワークと平行に剥離して貼り合わせることが可能で生産性が高いワーク貼り合わせ機を提供すること、などを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明によるワーク粘着チャック装置は、板状ワークと対向するように設けられて該板状ワークを着脱自在に粘着保持する粘着部材と、前記板状ワークと交差する方向へ変形して前記粘着面から前記板状ワークを強制的に剥離させるように設けられる剥離部材と、前記剥離部材の背後に設けられる支持部材と、前記剥離部材の外周を囲むように設けられる環状部材とを備え、前記剥離部材は、前記支持部材の表面に沿って変形可能に形成される変形部と、該変形部の外周から前記支持部材の側面に沿って形成され且つ前記環状部材に向けて突出するように形成される取付凸部とを有し、前記環状部材は、前記支持部材の側面との間に前記取付凸部を前記変形部の変形方向へ移動不能に挟み込む係止凹部と、前記変形部の外縁と隣接して前記粘着部材が取り付けられる取付面とを有することを特徴とする。
【0007】
また本発明によるワーク貼り合わせ機は、前記ワーク粘着チャック装置を、対向する一対の保持板のどちらか一方か又は両方に設け、前記ワーク粘着チャック装置で前記板状ワークを粘着保持するとともに剥離して、もう一つの板状ワークに重ね合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
前述した特徴を有する本発明によるワーク粘着チャック装置は、支持部材の側面と環状部材の係止凹部との間に、剥離部材の取付凸部を変形部の変形方向へ移動不能に挟み込むとともに、環状部材の取付面に、変形部の外縁と隣接して粘着部材を取り付けることにより、環状部材を介して剥離部材及び支持部材と粘着部材が一体的に組み付けられ、さらに変形部と粘着面が互いに隣り合って限りなく接近して配置されるため、離れて配置されるものよりも、粘着面に粘着保持された板状ワークを変形部の変形で剥離する際に、大きな剥離力が得られ、それにより剥離時において板状ワークに生ずる撓みが最小限に抑えられるので、粘着部材と剥離部材のユニット化を構成し易くしながら剥離性能を向上させることができる。
その結果、複数の加熱膨脹部と多数の粘着ゴムをそれぞれ個別に取り付けている従来のものに比べ、定盤などに対する設置作業と部品交換作業を容易に行うことができて、コストの低減化が図れる。
さらに、板状ワークの基板サイズの大型化に伴い多数のワーク粘着チャック装置を配置する場合であっても、それぞれの粘着動作と剥離動作を均一化することができ、一辺が2000mm以上に大型化された確実に粘着保持と剥離を行うことができる。
また、粘着ゴムとダイヤフラムが取り付け用のボルトを挟んで離れて配置される従来のものに比べ、板状ワークが薄くなっても、粘着面から確実に剥離することができる。
【0009】
また、前述した特徴を有する本発明によるワーク貼り合わせ機は、一方の保持板に設けたワーク粘着保持装置の粘着部材で粘着保持される第1の板状ワークと、他方の保持板に保持される第2の板状ワークとを互いに接近させ、ワーク粘着保持装置の剥離部材で粘着部材から第1の板状ワークを剥離する場合に、剥離部材と粘着部材が互いに隣り合って限りなく接近して配置されるため、離れて配置されるものよりも、粘着面に粘着保持された板状ワークを変形部の変形で剥離する際に、大きな剥離力が得られ、それにより剥離時において板状ワークに生ずる撓みが最小限に抑えられるので、粘着保持された第1の板状ワークを第2の板状ワークと平行に剥離して貼り合わせることができる。
その結果、ダイヤフラムにより剥離時に発生した第1基板の撓み変形が貼り合わせ後にも残る従来のものに比べ、板状ワークの剥離時における部分的な精度不良に対する影響を少なくすることができ、板状ワーク同士の貼り合わせ精度が向上するとともに、生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るワーク粘着チャック装置を示す説明図であり、(a)が縦断正面図、(b)が底面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るワーク貼り合わせ機を示す縮小縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るワーク粘着チャック装置Aは、図1(a)(b)に示すように、板状ワークWと対向するように設けられて板状ワークWを着脱自在に粘着保持する粘着部材1と、板状ワークWと交差(直交)する方向へ変形して粘着面1aから板状ワークWを強制的に剥離させるように設けられる剥離部材2と、剥離部材2の背後に設けられる支持部材3と、剥離部材2の外周を囲むように設けられる環状部材4を、主要な構成要素として備えている。
【0012】
粘着部材1は、板状ワークWと対向する表面に粘着面1aを有する粘着シートであり、少なくとも粘着面1a又は全体が、例えばフッ素ゴムやエラストマー、ブチルゴム、感光性樹脂、アクリル系やシリコン系などの粘着材料で、粘着面1aが弾性のある面状に形成されている。
さらに、粘着面1aには、例えばエンボス処理や凹溝などを形成して全体的に弾性変形し易くすることにより、板状ワークWに対して容易に粘り付くように構成することが好ましい。
【0013】
剥離部材2は、例えばゴムやエラストマー、軟質合成樹脂などの弾性変形可能な材料で、粘着部材1の粘着面1aで粘着保持される板状ワークWに対して接近又は離隔する方向へ変形可能に形成されるダイヤフラムや弾性膜などからなり、例えば圧縮成形(コンプレッション成型)や射出成形(インジェクション成型)などにより、後述する支持部材3の表面3a及び側面3bに沿った断面略コの字形に形成している。
【0014】
さらに詳しく説明すると、剥離部材2は、後述する支持部材3の表面3aに沿って形成される変形部2aと、変形部2aと連続して厚さ方向へ延びるように形成される脚部2bと、脚部2bから外側へ向け突出するように形成されるフランジ状の取付凸部2cとを有する。
剥離部材2による粘着面1aからの板状ワークWの剥離動作についてその具体例を挙げると、剥離部材2の変形部2aは、図1(a)の実線に示すように、支持部材3の表面3aと接するように平面状又は凹状に収縮変形させることにより、粘着面1aで粘着保持された板状ワークWに剥離力を作用させずに待機している。剥離時には、図1(a)の二点鎖線に示すように、変形部2aの一次側と二次側の圧力差で変形部2aを支持部材3の表面3aから離れる方向へ膨張変形させることにより、その先端が板状ワークWに接触し押圧して粘着面1aから板状ワークWを強制的に剥離する。
【0015】
脚部2bは、変形部2aの外周端から剥離部材2において変形部2aと反対側(裏側)へ向け、後述する支持部材3の側面3bに沿って円筒状又は角筒状に一体形成される。
取付凸部2cは、脚部2bの裏側外面に後述する環状部材4の内面へ向けて環状に突設されている。取付凸部2cと反対側で後述する支持部材3の側面3bと対向する内面には、環状の係合溝2dを形成することが好ましい。
【0016】
支持部材3は、例えば硬質合成樹脂、金属、セラミックなどの剥離部材2の変形部2aと貼り付き難い材料で、後述する環状部材4の内周と嵌り合う例えば円形又は矩形などの板状に形成され、その中央には、剥離部材2の変形部2aを弾性変形させる流体が通る通路3cを形成している。
さらに、互いに対向する剥離部材2の変形部2aの裏面又は支持部材3の表面3aのいずれか一方か、若しくは変形部2aの裏面及び支持部材3の表面3aの両方には、通路3bを中心として放射方向へ連通する拡散路5を形成することが好ましい。
また、支持部材3の側面には、剥離部材2の係合溝2cと嵌り合う環状の係合凸部3dを形成することが好ましい。
【0017】
環状部材4は、例えば金属、硬質合成樹脂、セラミックなどにより支持部材3の厚さと略同じ厚さの板状に形成され、その中央には、支持部材3よりも大きな貫通孔が開穿され、貫通孔の内面4iには、剥離部材2の取付凸部2cを挟んで支持部材3が嵌入される。
さらに、環状部材4は、支持部材3の側面3bとの間に剥離部材2の取付凸部2cを挟み込むように形成される係止凹部4aと、変形部2aの外縁と隣接して粘着部材1が取り付けられる取付面4bとを有している。
係止凹部4aは、環状部材4の内面4iで裏側に剥離部材2の取付凸部2cと対向して凹設され、係止凹部4aと取付凸部2cを当接させることにより、係止凹部4aに対して取付凸部2cが変形部2aの膨張変形方向へ移動不能に保持される。
取付面4bは、環状部材4の表側に変形部2aの外縁と隣接して凹設され、粘着部材1の裏面を例えば接着剤などで固着することにより、粘着面1aが変形部2aの表面よりも若干突出するように配置されている。
【0018】
そして、粘着部材1、剥離部材2、支持部材3及び環状部材4は、それらを順次組み付けることで一体化される。その具体例を説明する。
先ず、環状部材4の内面4i及び係止凹部4aと、剥離部材2の脚部2b及び取付凸部2cとを、接着剤などにより固着して一体化するか、環状部材4の内面4i及び係止凹部4aに沿って、剥離部材2を圧縮成形や射出成形などの型形成により一体化する。
この際、環状部材4の内面4i及び係止凹部4aと剥離部材2の脚部2b及び取付凸部2cとの接着強度を高めるために、環状部材4及び剥離部材2の対向面においてそのいずれか一方又は両方をサンドブラストなどで粗面に形成することが好ましい。
その後工程で、環状部材4と一体化された剥離部材2内に、支持部材3を嵌入して、その係合凸部3dが剥離部材2の係合溝2cと嵌合することにより、環状部材4及び剥離部材2に支持部材3が一体化される。
また、環状部材4の取付面4bには、粘着部材1の裏面を接着剤などにより固着して一体化され、ワーク粘着チャック装置Aとなる。
【0019】
このように組み立てられたワーク粘着チャック装置Aは、例えば定盤などからなる保持板11に対し、粘着面1aで粘着保持される板状ワークWと対向するように分散して多数配置される。
図1(a)(b)に示される例では、環状部材4の外周部分に開穿される取付孔4cに、例えばボルトなどの取付手段6を挿通して保持板11に固着することにより、保持板11に対し環状部材4が着脱自在に取り付けられている。
また、その他の例として図示しないが、保持板11に対する環状部材4の取付手段6として、ボルトに代えて他の固着手段などを用いることも可能である。
【0020】
このような本発明の実施形態に係るワーク粘着チャック装置Aによると、支持部材3の側面3bと環状部材4の係止凹部4aとの間に、剥離部材2の取付凸部2cが変形部2aの(膨張)変形方向へ移動不能に挟み込まれるとともに、環状部材4の取付面4bに、変形部2aの外縁と隣接して粘着部材1が取り付けられる。
それにより、環状部材4を介して剥離部材2及び支持部材3と粘着部材1が一体的に組み付けられる。
ところで、変形部2aと粘着面1aの距離は、接近して配置した方が遠く離れて配置されるものに比べて、粘着面1aに粘着保持された板状ワークWを、変形部2aの(膨張)変形で剥離する際に、大きな剥離力が得られる。それにより、剥離時において板状ワークWに生ずる撓み(歪み)も、変形部2aと粘着面1aを接近して配置した方が、遠く離れて配置されるものに比べて、小さくすることができる。
この点に関し、本発明の実施形態に係るワーク粘着チャック装置Aによると、変形部2aと粘着面1aが互いに隣り合って限りなく接近して配置されるため、剥離時において板状ワークWに生ずる撓みを最小限に抑えることができる。
したがって、本発明の実施形態に係るワーク粘着チャック装置Aは、粘着部材1と剥離部材2のユニット化を構成し易くしながら剥離性能を向上させることができる。
さらに、環状部材4の係止凹部4aと剥離部材2の取付凸部2cとの当接部分を接着剤で固着しても、接着剤が弾性変形する変形部2aまではみ出して付着するおそれがないので、変形部2aの変形に伴う繰り返し応力によって接着剤が付着した箇所の端部から亀裂が生ずることがなく、繰り返し耐久性、信頼性が高いダイヤフラム構造を提供できる。
【0021】
特に、変形部2aの裏面又は支持部材3の表面3aのいずれか一方か、若しくは変形部2aの裏面及び支持部材3の表面3aの両方に、支持部材3の中央に形成される通路3cを中心として放射方向へ連通する拡散路5を形成した場合には、通路3cから流体を放射状の拡散路5に供給することにより、支持部材3の表面3aに対し、変形部2aの裏面がその中央部位から外周部位へ向かい順次(膨張)変形して、支持部材3の表面から変形部2aの裏面全体が離隔される。
それにより、支持部材3から変形部2aをそれらの材質と関係なく全面的に離して対称形状に(膨張)変形させることができる。
その結果、ダイヤフラムと支持部材の材質によってそれらの対向面同士が部分的又は全体的に貼り付くおそれがある従来のものに比べ、変形部2aの(膨張)変形によって粘着部材1の粘着面1aから板状ワークWを垂直に押し剥がすことができる。それにより、剥離された板状ワークWの姿勢を均一化できる。
【0022】
そして、本発明の実施形態に係るワーク貼り合わせ機は、図2に示すように、複数のワーク粘着チャック装置Aを、対向する一対の保持板1,1′のどちらか一方か又は両方に分散配置し、ワーク粘着チャック装置Aで板状ワークWを粘着保持するとともに剥離することにより、もう一つの板状ワークW′に重ね合わせている。
その具体例として、一方(上方)の保持板11には、ワーク粘着保持装置Aが設けられ、その粘着部材1で第1の板状ワークWを粘着保持し、他方(下方)の保持板11′には、シール材Cを介して第1の板状ワークWと平行に対向するように第2の板状ワークW′が保持されている。
さらに必要に応じて、一対の保持板1,1′のどちらか一方か又は両方には、ワーク粘着保持装置Aを囲むように吸引吸着手段12が複数設けられ、これら吸引吸着手段12によって板状ワークW,W′を着脱自在に吸引吸着することも可能である。
【0023】
このような本発明の実施形態に係るワーク貼り合わせ機によると、ワーク粘着保持装置Aの剥離部材2と粘着部材1が互いに隣り合って限りなく接近して配置されるため、離れて配置されるものよりも、粘着面1aに粘着保持された板状ワークWを変形部2aの変形で剥離する際に、大きな剥離力が得られ、それにより剥離時において板状ワークWに生ずる撓みが最小限に抑えられる。
それにより、粘着保持された第1の板状ワークWを第2の板状ワークW′と平行に剥離して貼り合わせることができる。その結果、板状ワークW,W′同士の貼り合わせ精度が向上するとともに、生産性を高めることができる。
次に、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0024】
この実施例は、図1(a)(b)及び図2に示すように、保持板11の表面に形成される凹状部11aに対し、ワーク粘着チャック装置Aの環状部材4が嵌入され、ボルトなどの取付手段6で保持板11にワーク粘着チャック装置Aを取り付け、保持板11に開穿される通気孔11bから圧縮空気などの流体を支持部材3の通路3cへ供給することにより、剥離部材2の変形部2aが膨張変形して、粘着面1aで粘着保持された板状ワークWを強制的に押し剥がすものである。
【0025】
通路3cの外側には、通路3cから環状部材4に繋がる流路を遮断する環状シール部2eが、支持部材3の外周を囲むように形成されている。
図示される例では、剥離部材2の取付凸部2cに環状シール部2eが、保持板11の凹状部11aの内底面に向けて突出するように一体成形され、環状シール部2eの先端を凹状部11aの内底面に突き当てることにより、保持板11の通気孔11bから供給される流体が凹状部11aの内底面に沿って環状部材4へ向け流出することを防止している。
また、その他の例として図示しないが、支持部材3の裏面に通路3cを囲むように環状の凹溝を形成し、この凹溝に環状シール部2eとしてOリングなどを保持板11の凹状部11aの内底面に向け突出するように設けて、凹状部11aの内底面に突き当てることも可能である。
【0026】
このような本発明の実施例に係るワーク粘着チャック装置A及びワーク貼り合わせ機によると、真空又は真空に近い雰囲気において、粘着部材1の粘着面1aに粘着保持された板状ワークWを剥離させるために、支持部材3の通路3cを経て流体が剥離部材2の変形部2aへ向けて供給される際に、環状シール部2eで通路3cから環状部材4へ向け流体が流出することを堰き止めるため、真空又は真空に近い雰囲気中に流体が流れ出ることがなく、高真空状態が保たれる。
それにより、剥離部材2を変形させる駆動流体が漏れ出すのを防止することができる。
その結果、真空中で例えば液晶ディスプレーなどを製造する際に、液晶デバイスの中に変形部2aを変形させるための流体が混入することがなく、気泡などの問題が起こらないという利点がある。
【0027】
なお、図2に示される例では、一方(上方)の保持板11だけに、ワーク粘着チャック装置Aと吸引吸着手段12を設けたが、これに限定されず、他方(下方)の保持板11′にもワーク粘着チャック装置Aや吸引吸着手段12を設けても良い。
【符号の説明】
【0028】
A ワーク粘着チャック装置 1 粘着部材
1a 粘着面 2 剥離部材
2a 変形部 2c 取付凸部
3 支持部材 3a 表面
3b 側面 3c 通路
4 環状部材 4a 係止凹部
4b 取付面 5 拡散路
11,11′ 保持板 W,W′ 板状ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークと対向するように設けられて該板状ワークを着脱自在に粘着保持する粘着部材と、
前記板状ワークと交差する方向へ変形して前記粘着面から前記板状ワークを強制的に剥離させるように設けられる剥離部材と、
前記剥離部材の背後に設けられる支持部材と、
前記剥離部材の外周を囲むように設けられる環状部材とを備え、
前記剥離部材は、前記支持部材の表面に沿って変形可能に形成される変形部と、該変形部の外周から前記支持部材の側面に沿って形成され且つ前記環状部材に向けて突出するように形成される取付凸部とを有し、
前記環状部材は、前記支持部材の側面との間に前記取付凸部を前記変形部の変形方向へ移動不能に挟み込む係止凹部と、前記変形部の外縁と隣接して前記粘着部材が取り付けられる取付面とを有することを特徴とするワーク粘着チャック装置。
【請求項2】
前記支持部材の中央には、前記剥離部材の前記変形部を変形させる流体の通路が形成され、
前記変形部の裏面又は前記支持部材の表面のいずれか一方か、若しくは前記変形部の裏面及び前記支持部材の表面の両方には、前記通路を中心として放射方向へ連通する拡散路を形成したことを特徴とする請求項1記載のワーク粘着チャック装置。
【請求項3】
前記通路の外側には、該通路から前記環状部材に繋がる流路を遮断する環状シール部が、前記支持部材の外周を囲むように形成されることを特徴とする請求項2記載のワーク粘着チャック装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載のワーク粘着チャック装置を、対向する一対の保持板のどちらか一方か又は両方に設け、前記ワーク粘着チャック装置で前記板状ワークを粘着保持するとともに剥離して、もう一つの板状ワークに重ね合わせることを特徴とするワーク貼り合わせ機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−182254(P2012−182254A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43224(P2011−43224)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【特許番号】特許第4785995号(P4785995)
【特許公報発行日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000190105)信越エンジニアリング株式会社 (22)
【Fターム(参考)】