一軸性複合材料の中に端部連結構造を形成するためのインサート及び方法
一軸性複合材料に適合した端部連結構造を形成するためのインサートであり、例えば風車のローターハブなどに用いられるものである。このインサート(30)はスリーブにより構成され、該スリーブは多軸配向とされた複数の繊維を含んでいる。該スリーブはその内周面の少なくとも一部にねじ部が形成されている。該スリーブにねじ切り加工を施してねじ部を形成するようにしてもよく、或いは、該スリーブをマンドレル(112、301)上において形成するようにしてもよい。このインサートは、螺旋ねじ溝型インサート部材(300、301)を備えたものとするのもよく、そうすることによって、容易に再使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一軸性複合材料の中に荷重伝達容量の大きな端部連結構造を形成するためのインサートに関する。本発明は更に、かかるインサートを用いて一軸性複合材料の中に端部連結構造を形成する方法に関する。本発明に係るインサートの具体例としては、例えば風車翼の翼根部に用いられるインサートなどがある。ただし、本発明に係るインサートはその他の用途にも好適に用いられ、また、他の材料に対しても好適に用いられるものである。
【0002】
大型の水平軸風車では、風車翼をローターハブに連結するために、多数のボルト締結箇所においてボルト連結がなされている。風車翼のローターハブ側の端部(即ち翼根部)の形状は断面が円形の円柱形状であり、その直径は例えば1500mm〜3000mmである。約60本〜80本のボルトが風車翼をローターハブ内のラジアルピッチベアリングに連結するために用いられている。それらボルトの太さは例えばM30〜M40であり、それらボルトに要求されている引抜き耐力は約200〜400kNである。それらボルトは翼根部の外周に沿って配列されている。
【0003】
かかる連結構造に不備がないことを確実にするための保守作業に際して、雄側ボルトの点検をローターハブの側から行うことができるように、かかる連結構造の雌側部分は翼根部の中に形成しておく必要がある。
【0004】
風車翼の翼根部の典型的な製作材料は繊維強化プラスチックであり、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂材料に、強化繊維としてのガラス繊維を組合せた繊維強化プラスチックなどが用いられている。翼根部を構成している繊維強化プラスチックの強化繊維の配向形態は、殆どの場合、一軸配向とされており、また、その強化繊維の延在方向は、風車翼、即ち、風車翼の翼根部の円柱形状の軸心方向に対して平行な方向であって、翼根部の円柱形状の径方向に延在している繊維は殆ど存在していない。しかるに、翼根部を構成している繊維強化プラスチックの強化繊維がこのように一軸配向とされていることから、風車翼をローターハブに連結するための連結構造の雌側部分を形成する上での問題が生じている。それは、強化繊維が一軸配向とされている積層体の「木口」部分にじかに雌ねじ孔を形成したならば、強化繊維が切断されるため、その雌ねじ孔の引抜き耐力が樹脂材料の剪断強度と同程度の小さなものになってしまうという問題である。その状態を示したのが図1であり、同図から明らかなように、一軸配向の強化繊維が雌ねじ溝の近くで切断されており、雌ねじ部の構造的健全性は樹脂材料によって維持されているに過ぎない。
【0005】
この問題を克服するための従来の解決手段は、雌ねじ部を形成した長寸の金属製インサートを用いるというものであった。この金属製インサートは、翼根部の一軸性複合構造に接合したときに大きな接合面積が得られるように設計されており、それによって接合部が十分な引抜き耐力を持ち得るようにしたものである。そして、この雌ネジ部が形成された金属製インサートに雄ねじ部材であるボルトを螺合させることによって連結が行われるようにしていた。
【0006】
この金属製インサートは、翼根部を構成する繊維強化複合材料の樹脂を硬化させた後に、または、翼根部を構成する繊維強化複合材料を積層形成して樹脂を含浸させる工程で、その繊維強化複合材料の中に配設することができる。これら2通りのうちの第1の方法は、金属製インサートを配設するための孔を翼根部に穿設し、その孔に金属製インサートを挿入して接合するというものである。ただしこの方法は、専用の接着剤と加工機械とを必要とする。また第2の方法は、翼根部を構成する複合材料の樹脂を硬化させるとき、その複合材料の積層体の「積層形成工程」において、その未硬化積層体の間に金属製インサートを配置し、しかる後に、その複合材料の樹脂を硬化させる。
【0007】
このような金属製インサートを用いることによって、翼根部構造の一軸性の「木口」部分にじかに雌ねじ部を形成する場合に発生する問題を回避することができるが、しかしながらこの金属製インサートにはそれに固有の問題が付随している。例えば、金属製インサートとそれを囲繞している周囲の複合材料とでは熱膨張率が異なるという、温度的特性の不一致に起因する構造的問題が存在する。更に加えて、金属製インサートはそれを囲繞している周囲の複合材料より大きな剛性を有するため、運転中に発生する屈曲性の不一致という問題も存在する。
【0008】
これらの問題に対処するための手段の1つは、金属製インサートの形状を、その先端にテーパ部(先細り部)を備えた弾性変形し易い形状(ニンジン形と呼ばれることがある)とすることによって、双方の材料の剛性の不一致の影響を最小にするというものである。これに加えて、金属製インサートが接合される部分の複合積層体を非常に厚くして、当該部分の剛性を増大させることで、双方の材料の剛性の不一致の影響を更に軽減している。その金属製インサートが一軸性複合材料2の中に埋入されている従来の金属製インサート1の一例の模式図を図2に示す。実際には、金属製インサートの全長の約3分の1の長さが先細とされている。更に、現在用いられている金属製インサートのテーパ部は、その内側で金属材料の量を漸減することで作製されたものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかるに、風車が大型化するにつれて、金属製インサートと複合積層体との間の構造的不一致を補償するために、翼根部に必要な余分な複合材料が非常に深刻になってきた。付加的な複合材料の増大によって、風車翼の総重量も著しく増大し、それによってコストも増大している。例えば長さが40mの風車翼であれば、その翼根部の複合積層体の壁厚は約80mmとなり、金属製インサートの長さが350mmであるならば、翼根部のうちの長さが約500mmの部分に渡ってその壁厚を80mmに維持した上で、それから先の壁厚を減じて行くことになる。以上のように翼根部を構成するために必要とされる複合材料の所要量の増大により、例えば炭素繊維強化複合材料のような高価な複合材料を必要に応じてより大きな風車に使用するためのコストは非常に高いものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点によれば、一軸性複合材料の中に端部連結構造を形成するためのインサートが提供され、このインサートはスリーブにより構成され、該スリーブは多軸配向とされた複数の繊維を含んでおり、該スリーブはその内周面の少なくとも一部にねじ部が形成されている。
【0011】
本発明に係るインサートは、温度的特性及び機械的特性が、風車翼の翼根部の複合材料のそれら特性と同様である。そのため、従来の金属製インサートと比べて、翼根部とインサートとの間の温度的及び機械的な挙動の不整合が格段に縮小している。そのため、使用するインサートの長さを、従来のものより短くすることができ、例えば長さが40mの風車翼であれば、従来のインサートでは長さが350mmであったものを、本発明に係るインサートでは長さが160mmのものとすることができる。更には、翼根部の壁厚も薄くすることができ、例えば従来のインサートを使用する場合には約80mmとしていたものを、本発明に係るインサートを使用する場合には約60mmとすることができる。更に加えて、翼根部と本発明に係るインサートとは材質が類似しているため、接合状態が良好であり、翼根部をローターハブに連結するために必要とされるインサート及びボルトの本数が低減され、もって、材料費及び保守費用が低減される。長さが40mの風車翼であれば、本発明に係るインサートを使用することによって翼根部の重量を約50%低減することができる。
【0012】
好適な1つの実施の形態においては、前記スリーブが少なくとも1層の多軸配向布状繊維体層を含んで成るものとしている。これによって、積層形成する繊維体を多種多様なものとすることができ、ひいては設計自由度を増大させることができる。また、前記スリーブが更に少なくとも1層の螺旋巻回型繊維体層を含んで成るものとすることによって、設計自由度を更に増大させることができる。
【0013】
各々の前記螺旋巻回型繊維体層が前記多軸配向布状繊維体層の上に積層されているようにするとよい。これによって堅固な構造が得られることが判明している。各々の前記螺旋巻回型繊維体層の繊維が前記ねじ部のねじ山により規定される経路に実質的に沿って延在しているようにするのもよく、これによって前記インサートの前記ねじ山の強度を更に増大させることができる。
【0014】
別の実施の形態においては、前記スリーブは繊維強化プラスチック製である。また、前記スリーブはフィラメント巻回型繊維複合体チューブとするのがよく、そのようなチューブは容易に購入することができる。また、θを前記ねじ部のねじ溝角とするとき前記繊維のうちの90%はその巻回角が実質的に±θに等しいようにするとよい。本発明の発明者は、前記繊維をこのように配向することによって、前記チューブにねじ切り加工を施して形成する前記ねじ部の引抜き耐力が驚くほど増大することを確認した。
【0015】
前記繊維が硬化した樹脂母材中に埋入されているようにすることが好ましく、これによって、前記インサートを自立型部品として提供することができるようになる。
【0016】
1つの実施の形態では、前記ねじ部が前記スリーブに一体形成されている。この構成によれば、前記スリーブの繊維を全く切断することなく前記ねじ部を形成することができ、そのため前記ねじ部の構造的健全性を向上させることができるという利点が得られる。
【0017】
別の実施の形態として、前記ねじ部がねじ切り加工により形成されているようにしてもよく、そのようにしたものは製造が容易である。本発明の発明者は、多軸配向繊維体を含んで成るスリーブにねじ切り加工によりねじ部を形成したときに、そのねじ部が風車翼の翼根部に適用するのに十分な引抜き耐力を有するものとなることを確認した。
【0018】
前記インサートがねじ溝付きマンドレル上に配設されているようにするのもよい。
【0019】
前記インサートは前記ねじ部の中に配設された螺旋ねじ溝型インサート部材を更に備えているものとすることが好ましく、これによって前記インサートの再使用を容易にすることができる。前記螺旋ねじ溝型インサートは螺旋コイル部材としてもよいが、内側に雌ねじ部を備えた連続型スリーブ部材とすればなお好ましい。この連続型スリーブ部材が更に外側に雄ネジ部を備えているようにするのもよい。これによって前記螺旋ねじ溝型インサート部材がマンドレルとしても機能するものとなる。前記螺旋ねじ溝型インサート部材は、従来の金属製インサートと比べて格段に薄くなるため、剛性もまた格段に小さくなる。
【0020】
本発明は、第2の観点においては、端部連結構造を提供するものであり、この端部連結構造は、本発明の第1の観点に係るインサートを少なくとも1個備えており、該インサートが一軸性複合材料の中に埋入されている。この端部連結構造は、本発明の第1の観点に係るインサートを複数個備えており、該インサートが一軸性複合材料の中に埋入されているものとすることが好ましい。
【0021】
本発明は、第3の観点においては、本発明の第1の観点に係るインサートを少なくとも1個備えており、該インサートが風車翼の翼根部の中に埋入されている。
【0022】
本発明の第4の観点によれば、一軸性複合材料の中に端部連結構造を形成する方法が提供され、この方法においては、多軸配向とされた複数の繊維を含んでいるスリーブを用意し、前記スリーブの内周面の少なくとも一部にねじ部を設け、前記スリーブを前記一軸性複合材料の中に配置して固定する。
【0023】
好適な1つの実施の形態においては、前記スリーブを用意する際に、ねじ溝付きマンドレルの周面上に前記スリーブを製造することにより、前記ねじ部を前記スリーブに一体形成するようにしている。
【0024】
前記スリーブを製造する際に、前記ねじ溝付きマンドレルの周面上に1層または複数層の多軸配向布状繊維体を配設するとよい。前記方法においては更に、少なくとも1層の前記多軸配向布状繊維体層の上に繊維体を螺旋状に巻回することで1層または複数層の螺旋巻回型繊維体層を形成するのもよい。また、各々の前記多軸配向布状繊維体層の上に繊維体を螺旋状に巻回することで夫々に螺旋巻回型繊維体層を形成するとよい。
【0025】
各々の前記螺旋巻回型繊維体層を形成する際に、前記マンドレルの周りに繊維体を螺旋状に巻回することにより、各々の前記螺旋巻回型繊維体層の繊維が前記スリーブの内周面の前記ねじ部のねじ山により規定される経路に実質的に沿って延在するようにするとよい。
【0026】
前記方法においては更に、前記スリーブに樹脂を含浸させて硬化させることにより繊維強化プラスチック製スリーブを形成するようにするとよい。
【0027】
別の実施の形態においては、前記スリーブは繊維強化プラスチック製であり、好ましくは、フィラメント巻回型繊維複合体チューブであり、前記ねじ部の形成は、前記フィラメント巻回型繊維複合体チューブにねじ切り加工を施すようにするとよい。
【0028】
前記スリーブの配置と固定が、前記一軸性複合材料に孔を穿設し、前記スリーブを前記孔の中に配置し、接着剤により前記スリーブを前記孔の中に固定するようにするとよい。この用途に用いるのに適した接着剤の具体例としては、例えば剪断強度が25〜40MPaの範囲内にあるエポキシ接着剤などがある。
【0029】
別の実施の形態においては、前記スリーブの配置と固定が、一軸性材料を積層形成するときに当該一軸性材料の中に前記スリーブを配置し、前記一軸性材料に樹脂を含浸させ、そして樹脂を硬化させるようにしている。
【0030】
1つの実施の形態においては、同一工程内で前記スリーブと前記一軸性材料との両方に樹脂を含浸させるようにしている。この方法の利点は、前記インサートを前記一軸性材料の中に固定することで前記インサートを完成後の材料に一体化できることにある。
【0031】
前記スリーブを、マンドレルの外周面上に位置決めした状態で、配置して固定するようにするとよい。これによって、前記インサートが支持された状態で、装着工程を実行することが可能となる。
【0032】
前記スリーブの主軸が前記一軸性複合材料の一軸配向繊維に対して実質的に平行に延在するようにして、前記スリーブを前記一軸性複合材料の中に配置するようにするのもよい。
【0033】
前記ねじ部の中に螺旋ねじ溝型インサート部材を配設するとよく、これによって前記インサートの再使用を容易にすることができる。前記螺旋ねじ溝型インサートは螺旋コイル部材としてもよいが、内側に雌ねじ部を備えた連続型スリーブ部材とすればなお好ましい。この連続型スリーブ部材が更に雄ネジ部を備えているようにするのもよい。これによって前記螺旋ねじ溝型インサート部材がマンドレルとしても機能するものとなり、ひいては工程を格段に簡易化することができる。
【0034】
以下に添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。添付図面については下記の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】一軸性複合材料の端部にじかに形成された雌ねじ部を示した模式的断面図である。
【図2】一軸性複合材料の端部に接合された従来の金属製インサートを示した模式的断面図である。
【図3a】フィラメント巻回型複合体チューブの模式的断面図及び雌ねじ部を形成するねじ切り工具の模式図であり、ねじ切り加工の実行前の状態を示した図である。
【図3b】図3aに示したチューブ及びねじ切り工具の図であり、ねじ切り加工の実行中の状態を示した図である。
【図3c】図3aに示したチューブ及びねじ切り工具の図であり、ねじ切り加工の完了後の状態を示した図である。
【図4a】ねじ溝付きマンドレルを示した模式図である。
【図4b】図4aに示したねじ溝付きマンドレルの図であり、製造中の本発明に係るインサートの模式的断面図を併せて示した図である。
【図4c】図4bに示したインサートの模式的断面図であり、当該インサートをねじ溝付きマンドレルから抜去した状態を示した図である。
【図5a】本発明に係るインサートの製造における第1工程を示した図である。
【図5b】図5aに示したインサートの製造における第2工程を示した図である。
【図5c】図5aに示したインサートの製造における後続の工程を示した図である。
【図5d】図5aに示したインサートの完成状態を示した図である。
【図6】一軸性複合材料の端部に接合された本発明に係るインサートを示した模式的断面図である。
【図7】ねじ溝型インサート部材が装着された図6に示したインサートの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図3a及び図3bは、本発明に係るインサートを製造する第1の製造方法を説明するための模式図である。図3aに示したのは、フィラメント巻回型繊維複合体チューブ10及びねじ切り工具12である。チューブ10の繊維20のうちの大部分は、θをねじ切り工具12のねじ溝角とするとき、その巻回角が実質的に±θ(±5°)に等しい。理想的には、このフィラメント巻回型繊維複合体チューブ10は、その繊維のうちの90%が±θの巻回角で巻回されているものとするとよい。ただし、その繊維のうちの75%〜95%が±θの巻回角で巻回されているチューブを使用することも可能である。
【0037】
説明を明確にするために繊維20の巻回角の定義を述べておくと、繊維20の巻回角とは、チューブ10を側方から見たときに、繊維20とチューブ10の主軸11とが成す角度のうちの鋭角の方の角度である(図3a参照)。ねじ切り工具12のねじ溝角も同様の角度であり、即ち、ねじ切り工具12を側方から見たときに、ねじ溝17とねじ切り工具12の主軸13とが成す角度のうちの鋭角の方の角度である(図3a参照)。尚、添付図面では、図の見易さを考慮して、図3aには巻回角が約+θの繊維20だけを図示した。しかし乍ら、チューブ10は巻回角が±θの繊維20を含むことが理解されるであろう。
【0038】
その1つの具体例を挙げるならば、チューブ10は、標準的なEガラス繊維と、エポキシ樹脂とから成ることができる。ただし、その他の適当な繊維複合材料を用いることも可能であり、例えば、Eガラス繊維と、ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、または炭素繊維やアラミド繊維を用いた繊維複合材料を用いることもできる。
【0039】
図3bは、フィラメント巻回型繊維複合体チューブ10のねじ切り工程を示した図である。このねじ切り工程においては、ねじ切り工具12をチューブ10の中に「ねじ込んで行く」ことによって、チューブ10の内周面にねじ部25を形成する。この後、ねじ切り工具12を抜去する(図3c)。これによって部品が完成し、この部品は、スリーブ35により構成されたねじ部付きインサート30であって、スリーブ35はチューブ10から製作されたものであり、また、スリーブ35はその内周面にねじ部25が形成されている。ねじ部のねじ溝26のねじ溝角は、ねじ切り工具12のねじ溝角に等しく、従って繊維20の巻回角に略々等しい。インサート30を使用する際には、このインサート30を、風車翼の翼根部の一軸性材料に埋入して接合するようにし、これについては後に更に詳細に説明する。
【0040】
図4a〜図4cは、本発明に係るインサートを製造する第2の製造方法の基本原理を説明するための模式図である。図4aに示したのは、ねじ溝付きマンドレル112であり、このねじ溝付きマンドレル112の上に複数層の繊維体層120を重ねて配置して行く(図4b)ことによって、スリーブ135を積層形成する。
【0041】
マンドレル112はその外周面にねじ部117が形成されていることから、スリーブ135はこのねじ溝付きマンドレル112の外周面上に積層形成されることにより、その内周面にねじ部125が形成される。後に図5a〜図5dを参照して詳細に説明する好適例に係る製造方法では、マンドレル112上に複数層の多軸配向布状繊維体層220を重ねて配置し、その際に、各々の多軸配向布状繊維体層の上に、一軸配向繊維糸条体221を巻回することによって、その多軸配向布状繊維体層の布状繊維体を、マンドレルのねじ溝の中に押し込むようにする。ただし、ねじ溝付きマンドレル112上にスリーブ135を積層形成する方法としては、これ以外の他の方法を用いることも可能であり、そのような方法については後に説明するが、それら方法を用いたものも本発明の範囲に含まれる。
【0042】
適当な手段を用いて、ねじ溝付きマンドレル112上にスリーブ135を積層形成したならば、そのスリーブ135に樹脂を含浸させて硬化させた後に、それをねじ溝付きマンドレル112から抜去することによって、硬化済インサート130が形成される。別法として、スリーブ135に樹脂を含浸させず、そのスリーブ135がねじ溝付きマンドレル上に取付けられた状態のままで、そのスリーブ135を供給し、また、そのスリーブ135の装着を行うようにしてもよい。その場合には、装着する現場においてそのスリーブ135に樹脂を含浸させて硬化させることでインサート130とすればよく、これについては後に更に詳細に説明する。
【0043】
図5a〜図5cに示したのは、本発明に係るインサートの製造方法の好適例である。図5aに示したように、第1工程では、ねじ溝付きマンドレル212を覆うように、テックス数の小さな(例えば3〜24kテックスの)繊維を用いた多軸配向布状繊維体から成る層220aを配設する。この多軸配向布状繊維体は、編布の形態とした繊維体とすることが好ましい。ただし、平織りの織布の形態とした繊維体や、螺旋織りの布テープの形態とした繊維体を用いてもよい。
【0044】
第2工程では、一軸配向のテックス数の小さな繊維を複数本揃えて形成した一軸配向繊維糸条体を、多軸配向布状繊維体層220aの上に巻回し、それによって螺旋巻回型繊維体層221aを形成する。図5aから明らかなように、一軸配向繊維糸条体を巻回する際には、マンドレルの外周面のねじ部のねじ溝の中にその一軸配向繊維糸条体が位置するようにして、マンドレル212の周囲にその一軸配向繊維糸条体を巻回して行く。これによって、多軸配向布状繊維体層220aがねじ部のねじ溝の中へ押し込まれるため、こうすることは、完成したインサートのねじ部が、ねじ溝付きマンドレル212のねじ部の正確な「陰型」となるようにする上で効果的である。また、これによって、螺旋巻回型繊維体層221aの繊維が、スリーブ235の内周面のねじ部のねじ山127(図4c)により規定される経路に実質的に沿って延在することになる。図5aから明らかなように、螺旋巻回型繊維体層221aは、軸心方向には不連続な層であり、そのため、その下にある多軸配向布状繊維体層220aの上面を完全には覆っていない。
【0045】
図5bに示した第3工程では、更にマンドレル212の周囲に、第2の多軸配向布状繊維体層220bを配置する。図5cに示した第4工程では、第2の多軸配向布状繊維体層220bをねじ溝付きマンドレル212のねじ部のねじ溝の中へ押し込むために、この第2の多軸配向布状繊維体層220bに、オプションのガイド糸状体222を巻回している。更に、そのガイド糸条体222は第2の螺旋巻回型繊維体層221bによって巻回される。以上の工程を、例えば4回ないし5回に亘って反復実行することによって、ねじ溝付きマンドレル212のねじ部のねじ溝を繊維積層構造体で完全に埋め尽くしたならば、その繊維積層構造体によってスリーブ235が形成される。この後、1つの具体例では、スリーブ235に樹脂を含浸させて硬化させた後に、それをねじ溝に沿って回転させてねじ溝付きマンドレルから抜去することにより、硬化済インサート230(図5d)が得られる。また、別の具体例では、以下に説明するように、スリーブ235に樹脂を含浸させず、そのスリーブ235がねじ溝付きマンドレルの外周面上に取り付けられた状態のままで、それをインサート230として供給し、また、そのインサート230の装着を行うようにする。
【0046】
既述のごとく、インサート130、230のスリーブ135、235をねじ溝付きマンドレルの外周面上に積層形成する好適な方法は、以上に図5a〜図5cを参照して説明した方法である。ただし、ねじ溝付きマンドレルの外周面上に繊維体から成るスリーブを形成する方法はこの方法だけに限られず、その他の方法を用いることもできる。例えば、多軸配向布状繊維体層を1層だけ形成し、その布状繊維体層の上に、一軸配向繊維、及び/または、フィラメントを巻回した繊維体層を形成するようにしてもよい。更に別法として、複数層の多軸配向繊維体層だけでスリーブを積層形成するようにしてもよい。その場合には、それら繊維体層をねじ溝付きマンドレルのねじ部のねじ溝の中に適切に押し込むための手段として、真空バッグを使用するのもよく、或いは、雌ねじ部を形成した外周嵌合マンドレルを使用するのもよい。
【0047】
更に別の方法として、繊維強化複合材料製チューブを形成する際に、平らな円筒面とされているマンドレルを使用して、そのマンドレルの外周面上に、多軸配向布状繊維体で形成する繊維体層、一軸配向繊維糸条体を巻回して形成する繊維体層、単にフィラメントを巻回して形成する繊維体層、または、それら繊維体層を任意に組合せた、複数層の繊維体層を積層形成するようにしてもよい。この場合、そのスリーブに樹脂を含浸させて硬化させた後に、それをマンドレルから抜去し、そして、例えば図3a〜図3cに示したようなねじ切り工具を用いて、ねじ切り加工を施せばよい。
【0048】
硬化済インサートは、それがいずれの方法で製造したものであっても、風車翼の翼根部の一軸性複合材料の中に装着する際の装着方法として、以下に説明する2通りの方法を用いることが可能である。それらのうち第1の方法では、風車翼の翼根部に孔を穿設し、その孔の中に硬化済インサートを挿入して接着剤で接着することにより固定する。もう1つの方法では、風車翼の翼根部の一軸性材料を積層形成する工程において、その一軸性材料の中に硬化済インサートを装着し、そして、その翼根部に樹脂を含浸させて硬化させることで、硬化済インサートをその位置に固定する。
【0049】
一方、樹脂を含浸させていないインサートは、そのインサートがマンドレルの外周面上に担持された状態のままで、風車翼の翼根部の一軸性材料を積層形成する工程において、そのインサートを翼根部の一軸性材料の中に配置する。そして、同一工程内でそれら翼根部の一軸性材料とインサートとの両方に樹脂を含浸させて硬化させ、その樹脂が硬化した後にマンドレルを抜去すればよい。
【0050】
図6に示したのは、以上のように製造されて装着されたインサートが、一軸性複合材料の中に配置されたときの状態である。同図から明らかなように、このインサートは、その主軸(中心軸)11が一軸性複合材料の一軸配向繊維に対して実質的に平行に延在するようにして一軸性複合材料の中に装着されている。
【0051】
実用性の観点からは、保守作業ないし修理作業を行う上で、連結ボルトが何度も脱着できるように、インサートのねじ部は再使用できることが望まれる。インサートの再使用性の改善のために、スリーブの内周面のねじ部の範囲内に、金属製のねじ溝型インサート部材300(図7)を配設しておくとよい。このねじ溝型インサート部材300は、ねじ込まれる前の状態では、その外径寸法が複合材料製のインサートのねじ部の内径寸法よりも少し大きく、ねじ込まれることによって両者が締り嵌め状態となることによってねじ溝型インサート部材300がその位置に固定されるようにしてある。
【0052】
図7に示したねじ溝型インサート部材300は、螺旋コイル部材として構成されている。図8に示したのは、それとはまた別のインサート部材301である。図8のインサート部材301は、螺旋コイル部材としてではなく、薄い周壁を有する金属製スリーブ部材として構成されている。この金属製スリーブ部材301は、その外周面に雄ねじ部302を有しており、この雄ねじ部302は複合材料製のインサートの雌ねじ部と螺合するものであって、マンドレルのねじ部と同一形状とされている。更に、この金属製スリーブ部材301は、その内周面に雌ねじ部303を有しており、この雌ねじ部303はボルトと螺合する。2つのねじ部のねじ溝の谷底間の厚さ寸法Tは5mm未満とすることが好ましい。この金属製スリーブ部材301は、ボルトと螺合する螺合面を提供するばかりでなく、多軸配向型インサートをその外周面上に形成するためのマンドレルとしても利用し得るものである。その形成工程は、図5a〜図5cに関して上述した形成工程と同一であるが、ただし、この場合、形成した複合材料製のインサートからマンドレルを抜去する必要がない。この実施の形態でも、先に説明した実施の形態による利点の全てを享受することができ、従って、多軸配向型スリーブとそれを囲繞している一軸性複合材料との界面が維持される。しかし、ボルトと螺合し、製造が容易な金属製インサート部材を備えているために、容易に再使用することができる。
【0053】
ねじ溝型インサート部材301は、外見的には、図2に示した従来の金属製インサートに幾分類似している。しかしながら、重大な相違は、図2の金属製スリーブ1が、一軸性複合材料との間の接着によって一軸性複合材料の中に保持されるということである。金属製スリーブは、周囲の多軸配向布状繊維体層のねじ部に保持されるねじ溝型インサート部材301と比べて格段に太く、また長くせざるを得ない。従ってねじ溝型インサート部材301では、先に従来技術に付随する問題として指摘した温度的特性の不一致及び弾性変形特性の不一致に関連した問題が、格段に軽減されている。特に、温度的特性及び弾性変形特性の不一致に関連した問題を引き起こす原因となっていた図2に示す先細り形状の先端部分を備える必要がない。更にその他の重要な相違として、図2の従来の金属製インサートは極めて堅いのに対して、本発明の実施の形態に係るインサート部材301はその周壁の厚さが非常に薄いことから、従来の金属製インサートと比べてはるかに弾性変形し易いものとなっている。
【0054】
本発明に係るインサートは、その内周面の全域に亘ってねじ部が形成されている必要はない。1つの実施の形態(不図示)として、インサートの一方の端部にだけねじ部が形成されているようにしてもよい。インサートの外周面の接着面積を増大させたい場合などには、そのような実施の形態とすることが有用なことがある。
【0055】
以上に提示した本発明に係るインサートの説明は、そのインサートを風車翼の翼根部の一軸性複合材料の中に装着して用いる場合に即したものであったが、容易に理解されるように、本発明に係るインサートの用途はこれに限られず、ボルトによる連結を必要とするその他の様々な用途にも利用し得るものである。また、これも容易に理解されるように、本発明に係るインサートは、一軸性複合材料以外の複合材料の中にも、また更に、他のタイプの様々な材料の中にも装着して用い得るものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一軸性複合材料の中に荷重伝達容量の大きな端部連結構造を形成するためのインサートに関する。本発明は更に、かかるインサートを用いて一軸性複合材料の中に端部連結構造を形成する方法に関する。本発明に係るインサートの具体例としては、例えば風車翼の翼根部に用いられるインサートなどがある。ただし、本発明に係るインサートはその他の用途にも好適に用いられ、また、他の材料に対しても好適に用いられるものである。
【0002】
大型の水平軸風車では、風車翼をローターハブに連結するために、多数のボルト締結箇所においてボルト連結がなされている。風車翼のローターハブ側の端部(即ち翼根部)の形状は断面が円形の円柱形状であり、その直径は例えば1500mm〜3000mmである。約60本〜80本のボルトが風車翼をローターハブ内のラジアルピッチベアリングに連結するために用いられている。それらボルトの太さは例えばM30〜M40であり、それらボルトに要求されている引抜き耐力は約200〜400kNである。それらボルトは翼根部の外周に沿って配列されている。
【0003】
かかる連結構造に不備がないことを確実にするための保守作業に際して、雄側ボルトの点検をローターハブの側から行うことができるように、かかる連結構造の雌側部分は翼根部の中に形成しておく必要がある。
【0004】
風車翼の翼根部の典型的な製作材料は繊維強化プラスチックであり、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂材料に、強化繊維としてのガラス繊維を組合せた繊維強化プラスチックなどが用いられている。翼根部を構成している繊維強化プラスチックの強化繊維の配向形態は、殆どの場合、一軸配向とされており、また、その強化繊維の延在方向は、風車翼、即ち、風車翼の翼根部の円柱形状の軸心方向に対して平行な方向であって、翼根部の円柱形状の径方向に延在している繊維は殆ど存在していない。しかるに、翼根部を構成している繊維強化プラスチックの強化繊維がこのように一軸配向とされていることから、風車翼をローターハブに連結するための連結構造の雌側部分を形成する上での問題が生じている。それは、強化繊維が一軸配向とされている積層体の「木口」部分にじかに雌ねじ孔を形成したならば、強化繊維が切断されるため、その雌ねじ孔の引抜き耐力が樹脂材料の剪断強度と同程度の小さなものになってしまうという問題である。その状態を示したのが図1であり、同図から明らかなように、一軸配向の強化繊維が雌ねじ溝の近くで切断されており、雌ねじ部の構造的健全性は樹脂材料によって維持されているに過ぎない。
【0005】
この問題を克服するための従来の解決手段は、雌ねじ部を形成した長寸の金属製インサートを用いるというものであった。この金属製インサートは、翼根部の一軸性複合構造に接合したときに大きな接合面積が得られるように設計されており、それによって接合部が十分な引抜き耐力を持ち得るようにしたものである。そして、この雌ネジ部が形成された金属製インサートに雄ねじ部材であるボルトを螺合させることによって連結が行われるようにしていた。
【0006】
この金属製インサートは、翼根部を構成する繊維強化複合材料の樹脂を硬化させた後に、または、翼根部を構成する繊維強化複合材料を積層形成して樹脂を含浸させる工程で、その繊維強化複合材料の中に配設することができる。これら2通りのうちの第1の方法は、金属製インサートを配設するための孔を翼根部に穿設し、その孔に金属製インサートを挿入して接合するというものである。ただしこの方法は、専用の接着剤と加工機械とを必要とする。また第2の方法は、翼根部を構成する複合材料の樹脂を硬化させるとき、その複合材料の積層体の「積層形成工程」において、その未硬化積層体の間に金属製インサートを配置し、しかる後に、その複合材料の樹脂を硬化させる。
【0007】
このような金属製インサートを用いることによって、翼根部構造の一軸性の「木口」部分にじかに雌ねじ部を形成する場合に発生する問題を回避することができるが、しかしながらこの金属製インサートにはそれに固有の問題が付随している。例えば、金属製インサートとそれを囲繞している周囲の複合材料とでは熱膨張率が異なるという、温度的特性の不一致に起因する構造的問題が存在する。更に加えて、金属製インサートはそれを囲繞している周囲の複合材料より大きな剛性を有するため、運転中に発生する屈曲性の不一致という問題も存在する。
【0008】
これらの問題に対処するための手段の1つは、金属製インサートの形状を、その先端にテーパ部(先細り部)を備えた弾性変形し易い形状(ニンジン形と呼ばれることがある)とすることによって、双方の材料の剛性の不一致の影響を最小にするというものである。これに加えて、金属製インサートが接合される部分の複合積層体を非常に厚くして、当該部分の剛性を増大させることで、双方の材料の剛性の不一致の影響を更に軽減している。その金属製インサートが一軸性複合材料2の中に埋入されている従来の金属製インサート1の一例の模式図を図2に示す。実際には、金属製インサートの全長の約3分の1の長さが先細とされている。更に、現在用いられている金属製インサートのテーパ部は、その内側で金属材料の量を漸減することで作製されたものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかるに、風車が大型化するにつれて、金属製インサートと複合積層体との間の構造的不一致を補償するために、翼根部に必要な余分な複合材料が非常に深刻になってきた。付加的な複合材料の増大によって、風車翼の総重量も著しく増大し、それによってコストも増大している。例えば長さが40mの風車翼であれば、その翼根部の複合積層体の壁厚は約80mmとなり、金属製インサートの長さが350mmであるならば、翼根部のうちの長さが約500mmの部分に渡ってその壁厚を80mmに維持した上で、それから先の壁厚を減じて行くことになる。以上のように翼根部を構成するために必要とされる複合材料の所要量の増大により、例えば炭素繊維強化複合材料のような高価な複合材料を必要に応じてより大きな風車に使用するためのコストは非常に高いものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点によれば、一軸性複合材料の中に端部連結構造を形成するためのインサートが提供され、このインサートはスリーブにより構成され、該スリーブは多軸配向とされた複数の繊維を含んでおり、該スリーブはその内周面の少なくとも一部にねじ部が形成されている。
【0011】
本発明に係るインサートは、温度的特性及び機械的特性が、風車翼の翼根部の複合材料のそれら特性と同様である。そのため、従来の金属製インサートと比べて、翼根部とインサートとの間の温度的及び機械的な挙動の不整合が格段に縮小している。そのため、使用するインサートの長さを、従来のものより短くすることができ、例えば長さが40mの風車翼であれば、従来のインサートでは長さが350mmであったものを、本発明に係るインサートでは長さが160mmのものとすることができる。更には、翼根部の壁厚も薄くすることができ、例えば従来のインサートを使用する場合には約80mmとしていたものを、本発明に係るインサートを使用する場合には約60mmとすることができる。更に加えて、翼根部と本発明に係るインサートとは材質が類似しているため、接合状態が良好であり、翼根部をローターハブに連結するために必要とされるインサート及びボルトの本数が低減され、もって、材料費及び保守費用が低減される。長さが40mの風車翼であれば、本発明に係るインサートを使用することによって翼根部の重量を約50%低減することができる。
【0012】
好適な1つの実施の形態においては、前記スリーブが少なくとも1層の多軸配向布状繊維体層を含んで成るものとしている。これによって、積層形成する繊維体を多種多様なものとすることができ、ひいては設計自由度を増大させることができる。また、前記スリーブが更に少なくとも1層の螺旋巻回型繊維体層を含んで成るものとすることによって、設計自由度を更に増大させることができる。
【0013】
各々の前記螺旋巻回型繊維体層が前記多軸配向布状繊維体層の上に積層されているようにするとよい。これによって堅固な構造が得られることが判明している。各々の前記螺旋巻回型繊維体層の繊維が前記ねじ部のねじ山により規定される経路に実質的に沿って延在しているようにするのもよく、これによって前記インサートの前記ねじ山の強度を更に増大させることができる。
【0014】
別の実施の形態においては、前記スリーブは繊維強化プラスチック製である。また、前記スリーブはフィラメント巻回型繊維複合体チューブとするのがよく、そのようなチューブは容易に購入することができる。また、θを前記ねじ部のねじ溝角とするとき前記繊維のうちの90%はその巻回角が実質的に±θに等しいようにするとよい。本発明の発明者は、前記繊維をこのように配向することによって、前記チューブにねじ切り加工を施して形成する前記ねじ部の引抜き耐力が驚くほど増大することを確認した。
【0015】
前記繊維が硬化した樹脂母材中に埋入されているようにすることが好ましく、これによって、前記インサートを自立型部品として提供することができるようになる。
【0016】
1つの実施の形態では、前記ねじ部が前記スリーブに一体形成されている。この構成によれば、前記スリーブの繊維を全く切断することなく前記ねじ部を形成することができ、そのため前記ねじ部の構造的健全性を向上させることができるという利点が得られる。
【0017】
別の実施の形態として、前記ねじ部がねじ切り加工により形成されているようにしてもよく、そのようにしたものは製造が容易である。本発明の発明者は、多軸配向繊維体を含んで成るスリーブにねじ切り加工によりねじ部を形成したときに、そのねじ部が風車翼の翼根部に適用するのに十分な引抜き耐力を有するものとなることを確認した。
【0018】
前記インサートがねじ溝付きマンドレル上に配設されているようにするのもよい。
【0019】
前記インサートは前記ねじ部の中に配設された螺旋ねじ溝型インサート部材を更に備えているものとすることが好ましく、これによって前記インサートの再使用を容易にすることができる。前記螺旋ねじ溝型インサートは螺旋コイル部材としてもよいが、内側に雌ねじ部を備えた連続型スリーブ部材とすればなお好ましい。この連続型スリーブ部材が更に外側に雄ネジ部を備えているようにするのもよい。これによって前記螺旋ねじ溝型インサート部材がマンドレルとしても機能するものとなる。前記螺旋ねじ溝型インサート部材は、従来の金属製インサートと比べて格段に薄くなるため、剛性もまた格段に小さくなる。
【0020】
本発明は、第2の観点においては、端部連結構造を提供するものであり、この端部連結構造は、本発明の第1の観点に係るインサートを少なくとも1個備えており、該インサートが一軸性複合材料の中に埋入されている。この端部連結構造は、本発明の第1の観点に係るインサートを複数個備えており、該インサートが一軸性複合材料の中に埋入されているものとすることが好ましい。
【0021】
本発明は、第3の観点においては、本発明の第1の観点に係るインサートを少なくとも1個備えており、該インサートが風車翼の翼根部の中に埋入されている。
【0022】
本発明の第4の観点によれば、一軸性複合材料の中に端部連結構造を形成する方法が提供され、この方法においては、多軸配向とされた複数の繊維を含んでいるスリーブを用意し、前記スリーブの内周面の少なくとも一部にねじ部を設け、前記スリーブを前記一軸性複合材料の中に配置して固定する。
【0023】
好適な1つの実施の形態においては、前記スリーブを用意する際に、ねじ溝付きマンドレルの周面上に前記スリーブを製造することにより、前記ねじ部を前記スリーブに一体形成するようにしている。
【0024】
前記スリーブを製造する際に、前記ねじ溝付きマンドレルの周面上に1層または複数層の多軸配向布状繊維体を配設するとよい。前記方法においては更に、少なくとも1層の前記多軸配向布状繊維体層の上に繊維体を螺旋状に巻回することで1層または複数層の螺旋巻回型繊維体層を形成するのもよい。また、各々の前記多軸配向布状繊維体層の上に繊維体を螺旋状に巻回することで夫々に螺旋巻回型繊維体層を形成するとよい。
【0025】
各々の前記螺旋巻回型繊維体層を形成する際に、前記マンドレルの周りに繊維体を螺旋状に巻回することにより、各々の前記螺旋巻回型繊維体層の繊維が前記スリーブの内周面の前記ねじ部のねじ山により規定される経路に実質的に沿って延在するようにするとよい。
【0026】
前記方法においては更に、前記スリーブに樹脂を含浸させて硬化させることにより繊維強化プラスチック製スリーブを形成するようにするとよい。
【0027】
別の実施の形態においては、前記スリーブは繊維強化プラスチック製であり、好ましくは、フィラメント巻回型繊維複合体チューブであり、前記ねじ部の形成は、前記フィラメント巻回型繊維複合体チューブにねじ切り加工を施すようにするとよい。
【0028】
前記スリーブの配置と固定が、前記一軸性複合材料に孔を穿設し、前記スリーブを前記孔の中に配置し、接着剤により前記スリーブを前記孔の中に固定するようにするとよい。この用途に用いるのに適した接着剤の具体例としては、例えば剪断強度が25〜40MPaの範囲内にあるエポキシ接着剤などがある。
【0029】
別の実施の形態においては、前記スリーブの配置と固定が、一軸性材料を積層形成するときに当該一軸性材料の中に前記スリーブを配置し、前記一軸性材料に樹脂を含浸させ、そして樹脂を硬化させるようにしている。
【0030】
1つの実施の形態においては、同一工程内で前記スリーブと前記一軸性材料との両方に樹脂を含浸させるようにしている。この方法の利点は、前記インサートを前記一軸性材料の中に固定することで前記インサートを完成後の材料に一体化できることにある。
【0031】
前記スリーブを、マンドレルの外周面上に位置決めした状態で、配置して固定するようにするとよい。これによって、前記インサートが支持された状態で、装着工程を実行することが可能となる。
【0032】
前記スリーブの主軸が前記一軸性複合材料の一軸配向繊維に対して実質的に平行に延在するようにして、前記スリーブを前記一軸性複合材料の中に配置するようにするのもよい。
【0033】
前記ねじ部の中に螺旋ねじ溝型インサート部材を配設するとよく、これによって前記インサートの再使用を容易にすることができる。前記螺旋ねじ溝型インサートは螺旋コイル部材としてもよいが、内側に雌ねじ部を備えた連続型スリーブ部材とすればなお好ましい。この連続型スリーブ部材が更に雄ネジ部を備えているようにするのもよい。これによって前記螺旋ねじ溝型インサート部材がマンドレルとしても機能するものとなり、ひいては工程を格段に簡易化することができる。
【0034】
以下に添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。添付図面については下記の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】一軸性複合材料の端部にじかに形成された雌ねじ部を示した模式的断面図である。
【図2】一軸性複合材料の端部に接合された従来の金属製インサートを示した模式的断面図である。
【図3a】フィラメント巻回型複合体チューブの模式的断面図及び雌ねじ部を形成するねじ切り工具の模式図であり、ねじ切り加工の実行前の状態を示した図である。
【図3b】図3aに示したチューブ及びねじ切り工具の図であり、ねじ切り加工の実行中の状態を示した図である。
【図3c】図3aに示したチューブ及びねじ切り工具の図であり、ねじ切り加工の完了後の状態を示した図である。
【図4a】ねじ溝付きマンドレルを示した模式図である。
【図4b】図4aに示したねじ溝付きマンドレルの図であり、製造中の本発明に係るインサートの模式的断面図を併せて示した図である。
【図4c】図4bに示したインサートの模式的断面図であり、当該インサートをねじ溝付きマンドレルから抜去した状態を示した図である。
【図5a】本発明に係るインサートの製造における第1工程を示した図である。
【図5b】図5aに示したインサートの製造における第2工程を示した図である。
【図5c】図5aに示したインサートの製造における後続の工程を示した図である。
【図5d】図5aに示したインサートの完成状態を示した図である。
【図6】一軸性複合材料の端部に接合された本発明に係るインサートを示した模式的断面図である。
【図7】ねじ溝型インサート部材が装着された図6に示したインサートの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図3a及び図3bは、本発明に係るインサートを製造する第1の製造方法を説明するための模式図である。図3aに示したのは、フィラメント巻回型繊維複合体チューブ10及びねじ切り工具12である。チューブ10の繊維20のうちの大部分は、θをねじ切り工具12のねじ溝角とするとき、その巻回角が実質的に±θ(±5°)に等しい。理想的には、このフィラメント巻回型繊維複合体チューブ10は、その繊維のうちの90%が±θの巻回角で巻回されているものとするとよい。ただし、その繊維のうちの75%〜95%が±θの巻回角で巻回されているチューブを使用することも可能である。
【0037】
説明を明確にするために繊維20の巻回角の定義を述べておくと、繊維20の巻回角とは、チューブ10を側方から見たときに、繊維20とチューブ10の主軸11とが成す角度のうちの鋭角の方の角度である(図3a参照)。ねじ切り工具12のねじ溝角も同様の角度であり、即ち、ねじ切り工具12を側方から見たときに、ねじ溝17とねじ切り工具12の主軸13とが成す角度のうちの鋭角の方の角度である(図3a参照)。尚、添付図面では、図の見易さを考慮して、図3aには巻回角が約+θの繊維20だけを図示した。しかし乍ら、チューブ10は巻回角が±θの繊維20を含むことが理解されるであろう。
【0038】
その1つの具体例を挙げるならば、チューブ10は、標準的なEガラス繊維と、エポキシ樹脂とから成ることができる。ただし、その他の適当な繊維複合材料を用いることも可能であり、例えば、Eガラス繊維と、ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、または炭素繊維やアラミド繊維を用いた繊維複合材料を用いることもできる。
【0039】
図3bは、フィラメント巻回型繊維複合体チューブ10のねじ切り工程を示した図である。このねじ切り工程においては、ねじ切り工具12をチューブ10の中に「ねじ込んで行く」ことによって、チューブ10の内周面にねじ部25を形成する。この後、ねじ切り工具12を抜去する(図3c)。これによって部品が完成し、この部品は、スリーブ35により構成されたねじ部付きインサート30であって、スリーブ35はチューブ10から製作されたものであり、また、スリーブ35はその内周面にねじ部25が形成されている。ねじ部のねじ溝26のねじ溝角は、ねじ切り工具12のねじ溝角に等しく、従って繊維20の巻回角に略々等しい。インサート30を使用する際には、このインサート30を、風車翼の翼根部の一軸性材料に埋入して接合するようにし、これについては後に更に詳細に説明する。
【0040】
図4a〜図4cは、本発明に係るインサートを製造する第2の製造方法の基本原理を説明するための模式図である。図4aに示したのは、ねじ溝付きマンドレル112であり、このねじ溝付きマンドレル112の上に複数層の繊維体層120を重ねて配置して行く(図4b)ことによって、スリーブ135を積層形成する。
【0041】
マンドレル112はその外周面にねじ部117が形成されていることから、スリーブ135はこのねじ溝付きマンドレル112の外周面上に積層形成されることにより、その内周面にねじ部125が形成される。後に図5a〜図5dを参照して詳細に説明する好適例に係る製造方法では、マンドレル112上に複数層の多軸配向布状繊維体層220を重ねて配置し、その際に、各々の多軸配向布状繊維体層の上に、一軸配向繊維糸条体221を巻回することによって、その多軸配向布状繊維体層の布状繊維体を、マンドレルのねじ溝の中に押し込むようにする。ただし、ねじ溝付きマンドレル112上にスリーブ135を積層形成する方法としては、これ以外の他の方法を用いることも可能であり、そのような方法については後に説明するが、それら方法を用いたものも本発明の範囲に含まれる。
【0042】
適当な手段を用いて、ねじ溝付きマンドレル112上にスリーブ135を積層形成したならば、そのスリーブ135に樹脂を含浸させて硬化させた後に、それをねじ溝付きマンドレル112から抜去することによって、硬化済インサート130が形成される。別法として、スリーブ135に樹脂を含浸させず、そのスリーブ135がねじ溝付きマンドレル上に取付けられた状態のままで、そのスリーブ135を供給し、また、そのスリーブ135の装着を行うようにしてもよい。その場合には、装着する現場においてそのスリーブ135に樹脂を含浸させて硬化させることでインサート130とすればよく、これについては後に更に詳細に説明する。
【0043】
図5a〜図5cに示したのは、本発明に係るインサートの製造方法の好適例である。図5aに示したように、第1工程では、ねじ溝付きマンドレル212を覆うように、テックス数の小さな(例えば3〜24kテックスの)繊維を用いた多軸配向布状繊維体から成る層220aを配設する。この多軸配向布状繊維体は、編布の形態とした繊維体とすることが好ましい。ただし、平織りの織布の形態とした繊維体や、螺旋織りの布テープの形態とした繊維体を用いてもよい。
【0044】
第2工程では、一軸配向のテックス数の小さな繊維を複数本揃えて形成した一軸配向繊維糸条体を、多軸配向布状繊維体層220aの上に巻回し、それによって螺旋巻回型繊維体層221aを形成する。図5aから明らかなように、一軸配向繊維糸条体を巻回する際には、マンドレルの外周面のねじ部のねじ溝の中にその一軸配向繊維糸条体が位置するようにして、マンドレル212の周囲にその一軸配向繊維糸条体を巻回して行く。これによって、多軸配向布状繊維体層220aがねじ部のねじ溝の中へ押し込まれるため、こうすることは、完成したインサートのねじ部が、ねじ溝付きマンドレル212のねじ部の正確な「陰型」となるようにする上で効果的である。また、これによって、螺旋巻回型繊維体層221aの繊維が、スリーブ235の内周面のねじ部のねじ山127(図4c)により規定される経路に実質的に沿って延在することになる。図5aから明らかなように、螺旋巻回型繊維体層221aは、軸心方向には不連続な層であり、そのため、その下にある多軸配向布状繊維体層220aの上面を完全には覆っていない。
【0045】
図5bに示した第3工程では、更にマンドレル212の周囲に、第2の多軸配向布状繊維体層220bを配置する。図5cに示した第4工程では、第2の多軸配向布状繊維体層220bをねじ溝付きマンドレル212のねじ部のねじ溝の中へ押し込むために、この第2の多軸配向布状繊維体層220bに、オプションのガイド糸状体222を巻回している。更に、そのガイド糸条体222は第2の螺旋巻回型繊維体層221bによって巻回される。以上の工程を、例えば4回ないし5回に亘って反復実行することによって、ねじ溝付きマンドレル212のねじ部のねじ溝を繊維積層構造体で完全に埋め尽くしたならば、その繊維積層構造体によってスリーブ235が形成される。この後、1つの具体例では、スリーブ235に樹脂を含浸させて硬化させた後に、それをねじ溝に沿って回転させてねじ溝付きマンドレルから抜去することにより、硬化済インサート230(図5d)が得られる。また、別の具体例では、以下に説明するように、スリーブ235に樹脂を含浸させず、そのスリーブ235がねじ溝付きマンドレルの外周面上に取り付けられた状態のままで、それをインサート230として供給し、また、そのインサート230の装着を行うようにする。
【0046】
既述のごとく、インサート130、230のスリーブ135、235をねじ溝付きマンドレルの外周面上に積層形成する好適な方法は、以上に図5a〜図5cを参照して説明した方法である。ただし、ねじ溝付きマンドレルの外周面上に繊維体から成るスリーブを形成する方法はこの方法だけに限られず、その他の方法を用いることもできる。例えば、多軸配向布状繊維体層を1層だけ形成し、その布状繊維体層の上に、一軸配向繊維、及び/または、フィラメントを巻回した繊維体層を形成するようにしてもよい。更に別法として、複数層の多軸配向繊維体層だけでスリーブを積層形成するようにしてもよい。その場合には、それら繊維体層をねじ溝付きマンドレルのねじ部のねじ溝の中に適切に押し込むための手段として、真空バッグを使用するのもよく、或いは、雌ねじ部を形成した外周嵌合マンドレルを使用するのもよい。
【0047】
更に別の方法として、繊維強化複合材料製チューブを形成する際に、平らな円筒面とされているマンドレルを使用して、そのマンドレルの外周面上に、多軸配向布状繊維体で形成する繊維体層、一軸配向繊維糸条体を巻回して形成する繊維体層、単にフィラメントを巻回して形成する繊維体層、または、それら繊維体層を任意に組合せた、複数層の繊維体層を積層形成するようにしてもよい。この場合、そのスリーブに樹脂を含浸させて硬化させた後に、それをマンドレルから抜去し、そして、例えば図3a〜図3cに示したようなねじ切り工具を用いて、ねじ切り加工を施せばよい。
【0048】
硬化済インサートは、それがいずれの方法で製造したものであっても、風車翼の翼根部の一軸性複合材料の中に装着する際の装着方法として、以下に説明する2通りの方法を用いることが可能である。それらのうち第1の方法では、風車翼の翼根部に孔を穿設し、その孔の中に硬化済インサートを挿入して接着剤で接着することにより固定する。もう1つの方法では、風車翼の翼根部の一軸性材料を積層形成する工程において、その一軸性材料の中に硬化済インサートを装着し、そして、その翼根部に樹脂を含浸させて硬化させることで、硬化済インサートをその位置に固定する。
【0049】
一方、樹脂を含浸させていないインサートは、そのインサートがマンドレルの外周面上に担持された状態のままで、風車翼の翼根部の一軸性材料を積層形成する工程において、そのインサートを翼根部の一軸性材料の中に配置する。そして、同一工程内でそれら翼根部の一軸性材料とインサートとの両方に樹脂を含浸させて硬化させ、その樹脂が硬化した後にマンドレルを抜去すればよい。
【0050】
図6に示したのは、以上のように製造されて装着されたインサートが、一軸性複合材料の中に配置されたときの状態である。同図から明らかなように、このインサートは、その主軸(中心軸)11が一軸性複合材料の一軸配向繊維に対して実質的に平行に延在するようにして一軸性複合材料の中に装着されている。
【0051】
実用性の観点からは、保守作業ないし修理作業を行う上で、連結ボルトが何度も脱着できるように、インサートのねじ部は再使用できることが望まれる。インサートの再使用性の改善のために、スリーブの内周面のねじ部の範囲内に、金属製のねじ溝型インサート部材300(図7)を配設しておくとよい。このねじ溝型インサート部材300は、ねじ込まれる前の状態では、その外径寸法が複合材料製のインサートのねじ部の内径寸法よりも少し大きく、ねじ込まれることによって両者が締り嵌め状態となることによってねじ溝型インサート部材300がその位置に固定されるようにしてある。
【0052】
図7に示したねじ溝型インサート部材300は、螺旋コイル部材として構成されている。図8に示したのは、それとはまた別のインサート部材301である。図8のインサート部材301は、螺旋コイル部材としてではなく、薄い周壁を有する金属製スリーブ部材として構成されている。この金属製スリーブ部材301は、その外周面に雄ねじ部302を有しており、この雄ねじ部302は複合材料製のインサートの雌ねじ部と螺合するものであって、マンドレルのねじ部と同一形状とされている。更に、この金属製スリーブ部材301は、その内周面に雌ねじ部303を有しており、この雌ねじ部303はボルトと螺合する。2つのねじ部のねじ溝の谷底間の厚さ寸法Tは5mm未満とすることが好ましい。この金属製スリーブ部材301は、ボルトと螺合する螺合面を提供するばかりでなく、多軸配向型インサートをその外周面上に形成するためのマンドレルとしても利用し得るものである。その形成工程は、図5a〜図5cに関して上述した形成工程と同一であるが、ただし、この場合、形成した複合材料製のインサートからマンドレルを抜去する必要がない。この実施の形態でも、先に説明した実施の形態による利点の全てを享受することができ、従って、多軸配向型スリーブとそれを囲繞している一軸性複合材料との界面が維持される。しかし、ボルトと螺合し、製造が容易な金属製インサート部材を備えているために、容易に再使用することができる。
【0053】
ねじ溝型インサート部材301は、外見的には、図2に示した従来の金属製インサートに幾分類似している。しかしながら、重大な相違は、図2の金属製スリーブ1が、一軸性複合材料との間の接着によって一軸性複合材料の中に保持されるということである。金属製スリーブは、周囲の多軸配向布状繊維体層のねじ部に保持されるねじ溝型インサート部材301と比べて格段に太く、また長くせざるを得ない。従ってねじ溝型インサート部材301では、先に従来技術に付随する問題として指摘した温度的特性の不一致及び弾性変形特性の不一致に関連した問題が、格段に軽減されている。特に、温度的特性及び弾性変形特性の不一致に関連した問題を引き起こす原因となっていた図2に示す先細り形状の先端部分を備える必要がない。更にその他の重要な相違として、図2の従来の金属製インサートは極めて堅いのに対して、本発明の実施の形態に係るインサート部材301はその周壁の厚さが非常に薄いことから、従来の金属製インサートと比べてはるかに弾性変形し易いものとなっている。
【0054】
本発明に係るインサートは、その内周面の全域に亘ってねじ部が形成されている必要はない。1つの実施の形態(不図示)として、インサートの一方の端部にだけねじ部が形成されているようにしてもよい。インサートの外周面の接着面積を増大させたい場合などには、そのような実施の形態とすることが有用なことがある。
【0055】
以上に提示した本発明に係るインサートの説明は、そのインサートを風車翼の翼根部の一軸性複合材料の中に装着して用いる場合に即したものであったが、容易に理解されるように、本発明に係るインサートの用途はこれに限られず、ボルトによる連結を必要とするその他の様々な用途にも利用し得るものである。また、これも容易に理解されるように、本発明に係るインサートは、一軸性複合材料以外の複合材料の中にも、また更に、他のタイプの様々な材料の中にも装着して用い得るものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸性複合材料の中に端部連結構造を形成するためのインサートにおいて、該インサートはスリーブを含み、該スリーブは多軸配向とされた複数の繊維を含んでおり、該スリーブはその内周面の少なくとも一部にねじ部が形成されていることを特徴とするインサート。
【請求項2】
前記スリーブが少なくとも1層の多軸配向布状繊維体層を含んで成ることを特徴とする請求項1記載のインサート。
【請求項3】
前記スリーブが複数層の多軸配向布状繊維体層を含んで成ることを特徴とする請求項2記載のインサート。
【請求項4】
前記スリーブが更に少なくとも1層の螺旋巻回型繊維体層を含んで成ることを特徴とする請求項2又は3記載のインサート。
【請求項5】
前記スリーブが複数層の螺旋巻回型繊維体層を備えていることを特徴とする請求項4記載のインサート。
【請求項6】
各々の前記螺旋巻回型繊維体層が各々の前記多軸配向布状繊維体層の上に積層されていることを特徴とする請求項4又は5記載のインサート。
【請求項7】
各々の前記螺旋巻回型繊維体層の繊維が前記ねじ部のねじ山により規定される経路に実質的に沿って延在していることを特徴とする請求項6記載のインサート。
【請求項8】
前記スリーブは繊維強化プラスチック製であることを特徴とする請求項1記載のインサート。
【請求項9】
前記スリーブはフィラメント巻回型繊維複合体チューブであることを特徴とする請求項8記載のインサート。
【請求項10】
θを前記ねじ部のねじ溝角とするとき前記繊維のうちの90%はその巻回角が実質的に±θに等しいことを特徴とする請求項9記載のインサート。
【請求項11】
前記繊維が硬化した樹脂母材中に埋入されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載のインサート。
【請求項12】
前記ねじ部が前記スリーブに一体形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載のインサート。
【請求項13】
前記ねじ部がねじ切り加工により形成されたものであることを特徴とする請求項8乃至11の何れか1項記載のインサート。
【請求項14】
ねじ溝付きマンドレル上に配設されていることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項記載のインサート。
【請求項15】
前記ねじ部の中に配設された螺旋ねじ溝型インサート部材を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項記載のインサート。
【請求項16】
前記螺旋ねじ溝型インサート部材は雄ねじ部と雌ねじ部とを備えた連続型スリーブ部材であることを特徴とする請求項15記載のインサート。
【請求項17】
前記螺旋ねじ溝型インサート部材は前記雄ねじ部のねじ溝の谷底と前記雌ねじ部のねじ溝の谷底との間の壁厚が5mm未満であることを特徴とする請求項16記載のインサート。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか1項記載のインサートを少なくとも1個備えており、該インサートが一軸性複合材料の中に埋入されていることを特徴とする端部連結構造。
【請求項19】
請求項1乃至17の何れか1項記載のインサートを複数個備えており、該インサートが一軸性複合材料の中に埋入されていることを特徴とする請求項18記載の端部連結構造。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れか1項記載のインサートを複数個備えており、該インサートが風車翼の翼根部の中に埋入されていることを特徴とする風車翼。
【請求項21】
一軸性複合材料の中に端部連結構造を形成する方法において、
多軸配向とされた複数の繊維を含んでいるスリーブを用意し、
前記スリーブの内周面の少なくとも一部にねじ部を設け、
前記スリーブを前記一軸性複合材料の中に配置して固定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
前記スリーブを用意する際に、ねじ溝付きマンドレル上に前記スリーブを製造することを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記スリーブを製造する際に、前記ねじ溝付きマンドレル上に少なくとも1層の多軸配向布状繊維体層を配設することを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記スリーブを製造する際に、前記ねじ溝付きマンドレル上に複数層の多軸配向布状繊維体層を配設することを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1層の前記多軸配向布状繊維体層の上に少なくとも1層の巻回型繊維体層を螺旋状に巻回することを更に含む請求項23又は24記載の方法。
【請求項26】
各々の前記多軸配向布状繊維体層の上に夫々に巻回型繊維体層を螺旋状に巻回することを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
各々の前記螺旋巻回型繊維体層の繊維が前記スリーブの内周面の前記ねじ部のねじ山により規定される経路に実質的に沿って延在するようにすることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記スリーブに樹脂を含浸させて硬化させることにより繊維強化プラスチック製スリーブを形成することを更に含む請求項21乃至27の何れか1項記載の方法。
【請求項29】
前記スリーブは繊維強化プラスチック製であることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項30】
前記スリーブはフィラメント巻回型繊維複合体チューブであることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記ねじ部を設ける際に、前記フィラメント巻回型繊維複合体チューブにねじ切り加工を施すことを含む請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記スリーブを配置して固定する際に、
前記一軸性複合材料に孔を穿設し、
前記スリーブを前記孔の中に配置し、
接着剤により前記スリーブを前記孔の中に固定する、
ことを特徴とする請求項21乃至31の何れか1項記載の方法。
【請求項33】
前記スリーブを配置して固定する際に、
一軸性材料を積層形成するときに当該一軸性材料の中に前記スリーブを配置し、
前記一軸性材料に樹脂を含浸させ、そして
樹脂を硬化させる、
ことを特徴とする請求項21乃至31の何れか1項記載の方法。
【請求項34】
請求項21乃至27の何れか1項記載の方法が、同一工程内で前記スリーブと前記一軸性材料との両方に樹脂を含浸させることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記スリーブを、マンドレル上に位置決めした状態で、配置して固定することを特徴とする請求項21乃至34の何れか1項記載の方法。
【請求項36】
前記スリーブの主軸が前記一軸性複合材料の一軸配向繊維に対して実質的に平行に延在するようにして、前記スリーブを前記一軸性複合材料の中に配置することを特徴とする請求項21乃至35の何れか1項記載の方法。
【請求項37】
前記ねじ部の中に螺旋ねじ溝型インサート部材を配設することを特徴とする請求項21乃至36の何れか1項記載の方法。
【請求項38】
前記螺旋ねじ溝型インサート部材は雄ねじ部と雌ねじ部とを備えた連続型スリーブ部材であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記螺旋ねじ溝型インサート部材は前記雄ねじ部のねじ溝の谷底と前記雌ねじ部のねじ溝の谷底との間の壁厚が5mm未満であることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項1】
一軸性複合材料の中に端部連結構造を形成するためのインサートにおいて、該インサートはスリーブを含み、該スリーブは多軸配向とされた複数の繊維を含んでおり、該スリーブはその内周面の少なくとも一部にねじ部が形成されていることを特徴とするインサート。
【請求項2】
前記スリーブが少なくとも1層の多軸配向布状繊維体層を含んで成ることを特徴とする請求項1記載のインサート。
【請求項3】
前記スリーブが複数層の多軸配向布状繊維体層を含んで成ることを特徴とする請求項2記載のインサート。
【請求項4】
前記スリーブが更に少なくとも1層の螺旋巻回型繊維体層を含んで成ることを特徴とする請求項2又は3記載のインサート。
【請求項5】
前記スリーブが複数層の螺旋巻回型繊維体層を備えていることを特徴とする請求項4記載のインサート。
【請求項6】
各々の前記螺旋巻回型繊維体層が各々の前記多軸配向布状繊維体層の上に積層されていることを特徴とする請求項4又は5記載のインサート。
【請求項7】
各々の前記螺旋巻回型繊維体層の繊維が前記ねじ部のねじ山により規定される経路に実質的に沿って延在していることを特徴とする請求項6記載のインサート。
【請求項8】
前記スリーブは繊維強化プラスチック製であることを特徴とする請求項1記載のインサート。
【請求項9】
前記スリーブはフィラメント巻回型繊維複合体チューブであることを特徴とする請求項8記載のインサート。
【請求項10】
θを前記ねじ部のねじ溝角とするとき前記繊維のうちの90%はその巻回角が実質的に±θに等しいことを特徴とする請求項9記載のインサート。
【請求項11】
前記繊維が硬化した樹脂母材中に埋入されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載のインサート。
【請求項12】
前記ねじ部が前記スリーブに一体形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載のインサート。
【請求項13】
前記ねじ部がねじ切り加工により形成されたものであることを特徴とする請求項8乃至11の何れか1項記載のインサート。
【請求項14】
ねじ溝付きマンドレル上に配設されていることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項記載のインサート。
【請求項15】
前記ねじ部の中に配設された螺旋ねじ溝型インサート部材を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項記載のインサート。
【請求項16】
前記螺旋ねじ溝型インサート部材は雄ねじ部と雌ねじ部とを備えた連続型スリーブ部材であることを特徴とする請求項15記載のインサート。
【請求項17】
前記螺旋ねじ溝型インサート部材は前記雄ねじ部のねじ溝の谷底と前記雌ねじ部のねじ溝の谷底との間の壁厚が5mm未満であることを特徴とする請求項16記載のインサート。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか1項記載のインサートを少なくとも1個備えており、該インサートが一軸性複合材料の中に埋入されていることを特徴とする端部連結構造。
【請求項19】
請求項1乃至17の何れか1項記載のインサートを複数個備えており、該インサートが一軸性複合材料の中に埋入されていることを特徴とする請求項18記載の端部連結構造。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れか1項記載のインサートを複数個備えており、該インサートが風車翼の翼根部の中に埋入されていることを特徴とする風車翼。
【請求項21】
一軸性複合材料の中に端部連結構造を形成する方法において、
多軸配向とされた複数の繊維を含んでいるスリーブを用意し、
前記スリーブの内周面の少なくとも一部にねじ部を設け、
前記スリーブを前記一軸性複合材料の中に配置して固定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
前記スリーブを用意する際に、ねじ溝付きマンドレル上に前記スリーブを製造することを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記スリーブを製造する際に、前記ねじ溝付きマンドレル上に少なくとも1層の多軸配向布状繊維体層を配設することを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記スリーブを製造する際に、前記ねじ溝付きマンドレル上に複数層の多軸配向布状繊維体層を配設することを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1層の前記多軸配向布状繊維体層の上に少なくとも1層の巻回型繊維体層を螺旋状に巻回することを更に含む請求項23又は24記載の方法。
【請求項26】
各々の前記多軸配向布状繊維体層の上に夫々に巻回型繊維体層を螺旋状に巻回することを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
各々の前記螺旋巻回型繊維体層の繊維が前記スリーブの内周面の前記ねじ部のねじ山により規定される経路に実質的に沿って延在するようにすることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記スリーブに樹脂を含浸させて硬化させることにより繊維強化プラスチック製スリーブを形成することを更に含む請求項21乃至27の何れか1項記載の方法。
【請求項29】
前記スリーブは繊維強化プラスチック製であることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項30】
前記スリーブはフィラメント巻回型繊維複合体チューブであることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記ねじ部を設ける際に、前記フィラメント巻回型繊維複合体チューブにねじ切り加工を施すことを含む請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記スリーブを配置して固定する際に、
前記一軸性複合材料に孔を穿設し、
前記スリーブを前記孔の中に配置し、
接着剤により前記スリーブを前記孔の中に固定する、
ことを特徴とする請求項21乃至31の何れか1項記載の方法。
【請求項33】
前記スリーブを配置して固定する際に、
一軸性材料を積層形成するときに当該一軸性材料の中に前記スリーブを配置し、
前記一軸性材料に樹脂を含浸させ、そして
樹脂を硬化させる、
ことを特徴とする請求項21乃至31の何れか1項記載の方法。
【請求項34】
請求項21乃至27の何れか1項記載の方法が、同一工程内で前記スリーブと前記一軸性材料との両方に樹脂を含浸させることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記スリーブを、マンドレル上に位置決めした状態で、配置して固定することを特徴とする請求項21乃至34の何れか1項記載の方法。
【請求項36】
前記スリーブの主軸が前記一軸性複合材料の一軸配向繊維に対して実質的に平行に延在するようにして、前記スリーブを前記一軸性複合材料の中に配置することを特徴とする請求項21乃至35の何れか1項記載の方法。
【請求項37】
前記ねじ部の中に螺旋ねじ溝型インサート部材を配設することを特徴とする請求項21乃至36の何れか1項記載の方法。
【請求項38】
前記螺旋ねじ溝型インサート部材は雄ねじ部と雌ねじ部とを備えた連続型スリーブ部材であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記螺旋ねじ溝型インサート部材は前記雄ねじ部のねじ溝の谷底と前記雌ねじ部のねじ溝の谷底との間の壁厚が5mm未満であることを特徴とする請求項38記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2012−505091(P2012−505091A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530551(P2011−530551)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002397
【国際公開番号】WO2010/041008
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511088438)ブレード ダイナミクス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002397
【国際公開番号】WO2010/041008
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511088438)ブレード ダイナミクス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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