説明

三層管と管継手の接続端部加熱用鏝とその鏝を用いた加熱装置及び加熱方法

【課題】樹脂被覆金属三層管と樹脂製管継手との溶融接続を可能とする三層管と管継手の接続端部加熱用鏝を提供する。
【解決手段】樹脂被覆金属三層管7の端部7aと、該三層管7の端部7aの内外両側の樹脂被覆層13、14に当接する三層管端部差込溝11を備えた樹脂製管継手8の端部8aとの接合面を融着するための管端部加熱用鏝であって、a)鏝芯2に背面を固定し、前面に前記三層管7の端部7aに差込可能に対応する円周溝9を形成した三層管加熱体3と、b)前記鏝芯2に背面を固定し、前面に前記管継手8の三層管端部差込溝11に差込可能に対応する管状突起10を備えた継手加熱体4と、c)鏝芯2の基部2aに固定した電気ヒータ5と、そのヒータ5に送電する電気コード6とを備えて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂被覆金属三層管の端部と樹脂製管継手の端部とを溶融接続する際に、両者の接続部分を加熱して溶融するための三層管と管継手の接続端部加熱用鏝と、その鏝を用いた三層管と管継手の接続端部の加熱装置及び加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン等の樹脂管を樹脂製管継手で接続する場合、樹脂同士の接着剤による接続が困難であるため、従来、接続面を加熱溶融して融着することが行われている。
例えば、下記特許文献1には、管と継手の接続部分を加熱溶融して接続する「熱可塑性樹脂の融着接続方法」が提案されている。この方法では、図7に示すように、管状の突起Aと柱状の突起BをヒータCで加熱する加熱治具を用いて、管状の突起Aで樹脂管Dの外周部分を加熱溶融し、柱状の突起Bで樹脂製継手Eの接続部分を加熱溶融し、その溶融部分を接合させて両者を溶着することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭64−6018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、一般的な樹脂製の管の外周面と樹脂製の管継手の内周面とを溶融させて接合することはできても、金属管の内外に樹脂層を有する樹脂被覆金属三層管の場合では、内外の樹脂層を同時に溶融させて管継手に接合することはできない。
【0005】
そこで本発明は、前記樹脂被覆金属三層管(以下「三層管」と呼ぶ)の内外両側の樹脂層を樹脂製管継手(以下「管継手」と呼ぶ)に融着により接続可能とするために、両者の接続端部を加熱して溶融するための三層管と管継手の接続端部加熱用鏝と、その鏝を用いた三層管と管継手の接続端部の加熱装置及び加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための三層管と管継手の接続端部加熱用鏝における請求項1に記載の発明は、樹脂被覆金属三層管の端部と、該三層管の端部の内外両側の樹脂被覆層に当接する三層管端部差込溝を備えた樹脂製管継手の端部との接合面を融着するための三層管と管継手の接続端部加熱用鏝であって、a)鏝芯に背面を固定し、前面に前記三層管の端部に差込可能に対応する円周溝を形成した三層管加熱体と、b)前記鏝芯に背面を固定し、前面に前記管継手の三層管端部差込溝に差込可能に対応する管状突起を備えた継手加熱体と、c)鏝芯の基部に固定した電気ヒータと、そのヒータに送電する電気コードとを備えて成ることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、上記発明おいて、鏝芯の継手加熱体の内部に前記管継手の内径と等しい外径の円柱状の管内支持芯を前記管継手の三層管端部差込溝の深さと同程度の高さに形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、上記各発明おいて、前記鏝芯に三層管加熱体と継手加熱体とを背合わせに設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、上記発明おいて、前記鏝芯に複数対の三層管加熱体及び継手加熱体を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、上記各発明おいて、前記背中合わせの三層管加熱体と継手加熱体とを、各々の中心線を共通の中心線となるように配設したことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、上記各発明おいて、前記三層管加熱体の円周溝及び継手加熱体の管状突起の各表面に、ポリテトラフルオロエチレンの被覆層を形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、上記請求項1から6のうちいずれかに記載の三層管と管継手の接続端部加熱用鏝を用いた管端部加熱装置であって、前記三層管と管継手の接続端部加熱用鏝を支持台に固定し、a)前記三層管と管継手の接続端部加熱用鏝の三層管加熱体の円周溝に対向させて前記三層管の端部を把持する送りクランプを設けるとともに該送りクランプの基部には前記円周溝に向けて進退可能とするクランプ移動台を設け、b)前記三層管と管継手の接続端部加熱用鏝の継手加熱体の管状突起に対向させて前記管継手の端部を把持する送りチャックを設けるとともに該送りチャックの基部には前記管状突起に向けて進退可能とするチャック移動台を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、上記請求項7に記載の発明おいて、a)前記支持台を送りクランプと送りチャックから離れるように移動可能とする鏝移動機構を設け、b)前記送りクランプ及び/又は前記送りチャックの移動台を、把持した前記三層管の端部と前記管継手の端部とが接合可能な位置に移動可能とする台移動手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、上記請求項1から6のうちいずれかに記載の三層管と管継手の接続端部加熱用鏝を用いた三層管と管継手の接続端部の加熱方法であって、内外両側の樹脂被覆層の厚さが3mm以上の熱溶融性ポリエチレン層を有する樹脂被覆金属三層管を対象とし、a)三層管と管継手の接続端部加熱用鏝で前記三層管を加熱する時間を3〜4秒に設定し、且つ加熱する温度を280〜300°Cに設定して前記各樹脂被覆層の金属管側に非溶融部分を残して表層を溶融し、b)同時に、前記三層管と管継手の接続端部加熱用鏝で、樹脂製管継手の三層管端部差込溝の内面を加熱して管の内側と外側に非溶融部分を残して該内面表層を溶融し、c)その溶融中に前記管継手の三層管端部差込溝に前記三層管の加熱端部を差し込んで両者を融着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の三層管と管継手の接続端部加熱用鏝は、鏝芯に前記三層管の端部に差込可能に対応する円周溝を有する三層管加熱体と、三層管端部差込溝を有する継手加熱体とが備わっているので、金属管をポリエチレンなどの熱溶融性樹脂で内外から被覆した樹脂被覆金属三層管と樹脂製管継手との接続部分を、加熱した三層管加熱体と継手加熱体にそれぞれ差し込むことで、該三層管の内外両側の樹脂表面と、前記管継手の三層管端部差込溝の内面との接合面を確実に溶融させることが可能となる。
このため、両者を溶融させた直後に三層管端部差込溝に前記三層管の端部を差込んで接合することで、前記三層管の内外の樹脂被覆層と前記管継手の三層管を挟む溶融部分同士が融着してその接合部分を強固に密着一体化させることが可能となる。
また、その接合部分は両者が一体化されて肉厚となるので、通常では部分的に弱体化するとされる管の継手部分の強度をより高めることができる。
さらに、前記三層管の金属管の切り口端部は、接続後に管内部に又は管外部に露出する部分が全て樹脂で覆われて保護されるため、金属管端部の腐食が防止できて使用寿命を大幅に伸ばすことが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記鏝芯の継手加熱体の内部に円柱状の管内支持芯を形成したことで、該管内支持芯が、加熱中に前記管継手に差し込まれて管内支持管の外周面で前記管継手の内部が変化されるのを防ぎ、前記管継手への管内支持管の装着作業の工程がなくなり、その分、作業効率を高めることが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記鏝芯に三層管加熱体と継手加熱体とを背合わせにしたので、前記三層管の端部と前記管継手の端部を両側で同時に加熱することができる。このため効率良く融着作業を行うことが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記鏝芯に複数対の三層管加熱体及び継手加熱体を設けたことで、1個の鏝で複数のサイズの前記三層管と前記管継手に対応可能となる。
即ち、取り付け交換せずに、1個の鏝で異なるサイズの前記三層管と前記管継手の融着作業を効率良く行うことが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記三層管の端部と前記管継手の端部との管中心線が共通するので、前記三層管の端部を把持する送りクランプと前記管継手の端部を把持する送りチャックの移動が、その中心線に沿って対向側で正確に行うことができ、前記三層管と前記管継手とを正確位置で接続することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記三層管加熱体の円周溝の表面と継手加熱体の管状突起の表面とに、ポリテトラフルオロエチレンの被覆層を形成することで、鏝に溶融した樹脂の付着が防止され円滑に繰り返し使用することができる。
【0021】
請求項7に記載の三層管と管継手の接続端部の加熱装置では、前記三層管と管継手の接続端部加熱用鏝の管状突起と円周溝とに対向して送りクランプが前記三層管の端部を把持して進退可能となり、また送りチャックが前記管継手の端部を把持して進退可能となる。
このため、前記三層管の端部と前記管継手の端部に同時的に嵌合することと外すことができ、前記三層管と管継手の接続端部加熱用鏝の三層管加熱体の円周溝を三層管端部へと円滑に嵌合することができ、また前記継手加熱体の管状突起を樹脂製管継手の三層管端部差込溝の内にも円滑に嵌合することが可能となる。
さらに、溶融後、三層管の端部と管継手の端部から前記三層管加熱体と継手加熱体を円滑に引き離すことが可能となる。
そして、溶融部分の温度が低下しないうち前記三層管の端部と前記管継手の端部とを溶融状態で速やかに接合させることが可能となる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、前記支持台を送りクランプと送りチャックとの間から外へ移動可能とする鏝移動機構によって、三層管と管継手を把持させたままで、溶融後、直ちに前記三層管の端部と前記管継手の端部が嵌合可能な位置にまで移動して、前記三層管の端部と前記管継手の端部とを効率良く融着することが可能となる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、三層管の樹脂被覆層の金属管側に非溶融部分を残して表層のみを溶融させることが可能となる。そして、前記三層管の端部と前記管継手の端部との接触面を強固に融着一体化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の三層管と管継手の接続端部の加熱装置の(イ)が加熱前を示し、(ロ)が加熱中の状態を示す一部要部を縦断した側面図である。
【図2】本発明の三層管と管継手の接続端部の加熱装置の(ハ)が加熱後鏝を外した状態を示し、(ニ)が接続した状態を示す一部要部を縦断した側面図である。
【図3】本発明の(イ)が三層管と管継手の接続端部加熱用鏝、(ロ)が樹脂被覆金属三層管、(ハ)が樹脂製管継手を示す各縦断斜視図である。
【図4】樹脂被覆金属三層管と樹脂製管継手の接続状態の(イ)が加熱直後を示し、(ロ)が接続後を示す各縦断側面図である。
【図5】一対の三層管加熱体と継手加熱体を複数設けた鏝を示す三層管と管継手の接続端部加熱用鏝の縦断斜視図である。
【図6】別の形態の(イ)が三層管と管継手の接続端部加熱用鏝、(ロ)が樹脂被覆金属三層管、(ハ)が樹脂製管継手を示す各縦断側面図である。
【図7】従来の加熱装置の加熱部分を示す縦断側面図である
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
本発明で接続対象となる樹脂被覆金属三層管7は、図4に示すように、肉薄の金属管12の内側と外側に樹脂被覆層13、14を有する樹脂被覆金属三層管7である。
前記金属管12の材質は、アルミニウム、銅、ステンレス、鋼及びそれらの合金など各種金属管材が使用できる。
そして該金属管12の内側と外側を被覆する樹脂材13、14は、熱溶融性のPERT(Poly Ethylene Raised Temperature resistance)の高分子ポリエチレン化合物等の使用が可能である。
【0026】
例えば、前記三層管7がスプリンクラー用送水管の場合では、前記三層管7のサイズは、管の内径20mm、内側の樹脂部分の肉厚さが4mm、外側の樹脂部分の肉厚さが3mm、薄肉の金属管10の肉厚が2.25mmのものが使用に適する。その理由は、このサイズであるとスプリンクラー用の送水管としての強度を満足し、且つ湾曲性にも優れているからである。
該スプリンクラー用送水管は、配管施工の際、湾曲させたときにポリエチレン樹脂被覆層13、14が薄肉の金属管12をその内側から構造的に支え、また伸び率が773%と大きい前記ポリエチレン層が三層管の外側を保護し、中の薄肉の金属管12が座屈することを効果的に防止できる。しかし、屈曲が鋭角である場合では座屈が生じ易くなるのでエルボウ継手などの管継手8を介在させることが必要となる。
【0027】
また本発明では接続対象となる樹脂製管継手8は、図4に示すように、継ぎ口の開口端部8aに開口部の内周に沿って一周した奥の深い円形の三層管端部差込溝11を備える。
該三層管端部差込溝11の溝幅は溝開口部では前記三層管7の肉厚と同サイズ又は若干広い幅にするとともに、最深部では前記三層管7の金属管12部分の肉厚よりも広く且つ該三層管7を温めた管の肉厚よりも若干狭く形成される。
また、該管継手8の径は、該三層管7の流路のネックとなるのを避けるため前記三層管2と略同内径程度の径とした管継手8を用いるのが好ましい。
【0028】
なお、前記樹脂製管継手8には、図4に示すように、該三層管7と同内径で、前記管差込溝11の深さと同程度の長さとした薄い銅等の金属製の肉薄管内支持管15を用意し、加熱させた前記管継手8の開口端部8aに装着すると良い。これは、加熱で前記管継手8の内径側に生じる樹脂の溶融による変形やダレを防ぐものである。
【0029】
そして、接続する際には、図4の(ロ)に示すように、前記樹脂被覆層12、13を加熱溶融させた前記三層管7の開口端部7aを前記管継手8の三層管端部差込溝11(図4の(イ)中の符号Mで示す)に樹脂被覆層13、14を変形させつつ開口端部7aが最深部に達するまで圧入して両者を密着一体化する。
このように融着することで前記三層管7が前記管継手8に強固に接続し、その接合部分の金属は樹脂で覆われるため、腐食は起こらず、液漏れの事故がなくなる。
【0030】
本発明は、以上の如き前記樹脂被覆金属三層管と前記樹脂製管継手とを融着する際に、両者の接続端部を加熱して溶融するために用いる三層管と管継手の接続端部加熱用鏝(以下「鏝」と呼ぶ)と、その鏝を用いた三層管と管継手の接続端部の加熱装置及び管端部加熱方法であり、それらの本発明のうち、先ず鏝の形態から先に説明する。
【0031】
本発明の鏝は、図3に示すように、前記三層管7の端部7aと、該三層管7の端部7aの内外両側の樹脂被覆層13、14の表面に当接する三層管端部差込溝11を備えた前記管継手8の端部8aとの接合面を融着するための金鏝である。
該鏝にはa)銅製の鏝芯2に背面を固定し、前面に前記三層管7の端部7aに差込可能に対応する円周溝9を形成した鉄製の三層管加熱体3と、b)前記銅製鏝芯2に背面を固定し、前面に前記管継手8の三層管端部差込溝11に差込可能に対応する管状突起10を備えた鉄製の継手加熱体4と、を鏝芯2の両面に背中合わせに備える。
そして、前記鏝芯2の基部2aに電気ヒータ5を固定し、そのヒータ5に送電する電気コード6を接続する。そして電気コード6を電源に接続して電気ヒータ5を加熱できるようにする。このため前記鏝芯2が前記電気ヒータ5で加熱されて熱伝導性の優れた金属製の該鏝芯2を熱が伝わり、該鏝芯2に設けた前記三層管加熱体3と継手加熱体4とを加熱する。
【0032】
また、前記三層管加熱体3の円周溝9の深さと、継手加熱体4と管状突起10の突出長さとは、接続対象のなる該三層管7と前記管継手8の溶融対応部位の長さが同じなので略同一とすることが好ましい。
そして、前記三層管加熱体3と継手加熱体4とは、図3に示すように、両側から前記三層管7と管継手8の接続端部を夫々同時に溶融できるように、厚い板状の鏝芯2の板面両側に背合わせ状態に設ける。
【0033】
さらに、図5に示すように、1つの鏝芯2には、複数対の円周溝9、9aを備えた三層管加熱体3、3a及び管状突起10、10aを備えた継手加熱体4、4aを背中合わせに一体的に設けることもできる。この形態では、複数の異なるサイズの鏝を交換せずに、1個の鏝で異なるサイズの前記三層管と管継手の融着作業を行うことが可能となる。
各三層管加熱体3、3a及び継手加熱体4、4aの各設置位置は、前記鏝芯2の表面に一定の間隔を置いて縦方向や横方向に列設したり、等間隔に配置することが可能である。
【0034】
また、図6に示すように、鏝芯2の継手加熱体4の内部には前記管継手8の内径と等しい外径の円柱状の管内支持芯22を形成することも可能である。この形態では、管内支持芯22が、図3に示す管内支持管15の代用となって、加熱中に前記管継手8に差し込まれて管内支持管15の外周面で前記管継手8の内部が変化されるのを防ぐ。
このため、前記管継手8への管内支持管15の装着作業の工程がなくなり、その分、作業効率を高めることが可能となる。
【0035】
さらに、前記背中合わせの三層管加熱体3と継手加熱体4とは、図1の(イ)に示すように、各々の中心線を共通の中心線とすれば、後述の加熱装置に用いた場合、前記三層管の端部を把持する送りクランプと前記管継手の端部を把持する送りチャックの移動が、その中心線に沿って対向側で正反対に移動させて行うことができ、前記三層管と管継手の位置決めを容易且つ正確に行うことが可能となる。
【0036】
また、溶融した樹脂が前記三層管加熱体3及び継手加熱体4に付着して、前記三層管と管継手の端部が該三層管加熱体3及び継手加熱体4から容易に抜けなくなるのを防ぐため、前記三層管加熱体3の円周溝9の表面と継手加熱体4の管状突起10の表面には、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂の被覆層を形成する。
ポリテトラフルオロエチレンは溶融した三層管加熱体3及び継手加熱体4の端部の金属面に樹脂がべた付くのを防止できるため溶融後の円滑な抜取りが可能となる。
【0037】
次に、上記鏝を用いた三層管と管継手の接続端部の加熱装置について説明する。
該加熱装置は、図1の(イ)に示すように、前記鏝を支持台1に固定し、該支持台1の両側に、前記鏝の管状突起10と円周溝9とに対向して前記三層管7の端部7aを把持して進退可能とする送りクランプ16と、前記管継手8の端部8aを把持して進退可能とする送りチャック17とを備える。
【0038】
前記送りクランプ16は、把持する三層管7の向きに沿って全体を垂直又は水平方向に2分割し、前記三層管7の中間を横から入れてその両側から挟んで固定する。その際、前面に形成した三層管クランプ部16aで前記三層管7の側面を確実に挟み付けて、把持可能とする。
該送りクランプ16の基部に移動台20を設け、さらに移動台20をガイドする送りレール19を前記鏝に向けて設け、このレール19に乗った送りクランプ16を、前記鏝に向かって前後にスライドして移動できるようにする。
また、前記送りチャック17は、その前面に設けた継手チャック部17aの3つ爪を狭めて前記管継手8を掴むようにチャックする。
そして該送りチャック17側にも、その基部に移動台20を設けるとともに該移動台20をガイドする送りレール19を前記鏝に向けて設け、前記送りチャック17が該送りレール19に乗ってスライドして前後に移動できるようにする。
前記送りクランプ16及び送りチャック17の移動は、人為的又は機械的に行うことが可能である。
この送りクランプ16及び送りチャック17の移動によって、図1の(ロ)に示すように、前記鏝に前記三層管7及び前記管継手8の端部を管状突起10と円周溝9とに夫々差し込んで加熱でき、前記三層管7及び前記管継手8の端部の加熱終了後に、前記三層管7及び前記管継手8を前記鏝から抜き離すことが可能となる。
【0039】
加熱後、前記鏝から抜き取った前記三層管7及び前記管継手8は、次に端部同士を接合する作業に移行するが、前記三層管7及び前記管継手8は前記送りクランプと送りチャックに把持させたままで、遅滞なく接合させには最適な方法である。
そのために、前記管端部加熱装置には、送りクランプと送りチャックとを接近させて、図2の(二)に示すように、前記三層管7の端部7aを三層管端部差込溝11に圧入し密着させるための台移動手段を設け、また、前記送りクランプと送りチャックとを接近させるのに障害となる前記鏝を、一旦、前記送りクランプ16と送りチャック17との間からその外側に移動可能とする鏝移動機構18を設ける。
【0040】
前記移動機構18は、前記送りクランプ16と送りチャック17との間からその側方へスライドさせて移動させる構造や、図2に(ハ)に示すように、側方へ回転させる構造とする。該移動機構18によって、前記鏝全体を送りクランプと送りチャックとの間から邪魔にならない位置まで移動させることが可能となる。
【0041】
前記台移動手段は、図1及び図2に示すように、送りレール19と該レールに架設した送りクランプ16の移動台20及び送りチャック17の移動台21とが共用できる。
そして、その移動範囲を、図2の(ニ)に示すように、前記移動機構18によって、邪魔にならない位置まで移動させた鏝を跨いで、送りクランプと送りチャックとが接合可能な距離にまでに前進させることで前記三層管7の端部7aを三層管端部差込溝11に嵌合できるようになる。
前記台移動手段は、このように送りレール19を配して移動台20、21をその上に移動させるほか、移動台20、21を直接ロボットアームの先端に固定して電子制御して移動させることも可能である。
【0042】
次に、上記鏝を用いた三層管と管継手の接続端部の加熱方法について説明する。
該加熱方法は、対象となるの樹脂被覆金属三層管7の内外両側の樹脂被覆層が厚さ3mm以上の熱溶融性ポリエチレンとする。
そして、前記鏝を用い、前記三層管7を加熱する設定時間を3〜4秒とし、且つ加熱する設定温度を280〜300°Cとして、前記各樹脂被覆層13、14の金属管12側に非溶融部分を残して表層を溶融する。
また同時に、前記管継手8の三層管端部差込溝11の内面を加熱して、該管継手8の内側と外側に非溶融部分を残して該内面表層を溶融する。
該管継手8の材質は、前記三層管7の内外両側の樹脂被覆層と同じ熱溶融性ポリエチレンとすれば、同じ加熱条件で樹脂表層を溶融でき、前記管端部加熱装置を用いて前記三層管7と管継手8とを同時に溶融可能となるので、その後の融着を進行させる上で好ましい。
【0043】
上記加熱する温度及び時間の条件下では、前記三層管7と該管継手8の溶融部分Mは、図4の(イ)に示すように、樹脂被覆金属三層管7の内外両側端部の樹脂被覆層13、14の表層のみと、樹脂製管継手8の三層管端部差込溝11の内面の表層のみとに形成される。
そして、その溶融部分Mの硬化が起こらない数秒後のうちに直ちに、図2の(二)に示すように、前記管継手8の三層管端部差込溝11に前記三層管7の加熱端部を差し込んで両者を接合させる。
【0044】
また、前記管継手8には、図4に示すように、該三層管7と同内径で、前記管差込溝11の深さと同程度の長さを有する薄手の金属製薄肉管内支持管15を用意し、加熱させた前記管継手8の開口端部8aに予め装着しておくと、加熱で前記管継手8の内径側に生じる可能性のある変形やダレを防ぐことが可能となる。
また、該金属製薄肉管内支持管15を用ない場合には、鏝芯2の継手加熱体4の内部に円柱状の管内支持芯22を形成した鏝を用いれば、加熱で前記管継手8の内径側に生じる可能性のある変形やダレを防ぐことが可能となる。
【0045】
以上によって、前記三層管7の端部が前記管継手8の三層管端部差込溝11に差し込まれ、その接合面が融着一体的された強固な接続が実現される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、スプリンクラー用給水管の他に、水道管やガス管等の各種の液体や気体を送るために使用される樹脂被覆金属三層管と、その管を接続する管継手との融着による接合に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 支持台
2 鏝芯
2a 鏝芯の基部
3 三層管加熱体
3a 三層管加熱体
4 継手加熱体
4a 継手加熱体
5 電気ヒータ
6 電気コード
7 三層管
7a 三層管の端部
8 管継手
8a 管継手の端部
9 円周溝
9a 円周溝
10 管状突起
10a 管状突起
11 三層管端部差込溝
12 金属管
13 樹脂被覆層
14 樹脂被覆層
15 肉薄管内支持管
16 送りクランプ
16a 三層管クランプ部
17 送りチャック
17a 継手チャック部
18 鏝転倒機構
19 送りレール
20 移動台
21 移動台
22 管内支持芯
M 溶融部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂被覆金属三層管の端部と、該三層管の端部の内外両側の樹脂被覆層に当接する三層管端部差込溝を備えた樹脂製管継手の端部との接合面を融着するための三層管と管継手の接続端部加熱用鏝であって、
a)鏝芯に背面を固定し、前面に前記樹脂被覆金属三層管の端部に差込可能に対応する円周溝を形成した三層管加熱体と、
b)前記鏝芯に背面を固定し、前面に前記管継手の三層管端部差込溝に差込可能に対応する管状突起を備えた継手加熱体と、
c)鏝芯の基部に固定した電気ヒータと、そのヒータに送電する電気コードと、
を備えて成ることを特徴とする三層管と管継手の接続端部加熱用鏝。
【請求項2】
請求項1に記載の三層管と管継手の接続端部加熱用金鏝において、
鏝芯の継手加熱体の内部に前記管継手の内径と等しい外径の円柱状の管内支持芯を前記管継手の三層管端部差込溝の深さと同程度の高さに形成したことを特徴とする三層管と管継手の接続端部加熱用金鏝。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の三層管と管継手の接続端部加熱用金鏝において、
鏝芯に三層管加熱体と継手加熱体とを背合わせに設けたことを特徴とする三層管と管継手の接続端部加熱用金鏝。
【請求項4】
請求項3に記載の三層管と管継手の接続端部加熱用金鏝において、
鏝芯に複数対の三層管加熱体及び継手加熱体を設けたことを特徴とする三層管と管継手の接続端部加熱用金鏝。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の三層管と管継手の接続端部加熱金鏝において、
背中合わせの三層管加熱体と継手加熱体とを、各々の中心線を共通の中心線となるように配設したことを特徴とする三層管と管継手の接続端部加熱金鏝。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれかに記載の三層管と管継手の接続端部加熱用鏝において、
三層管加熱体の円周溝及び継手加熱体の管状突起の各表面に、ポリテトラフルオロエチレンの被覆層を形成したことを特徴とする三層管と管継手の接続端部加熱用鏝。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれかに記載の三層管と管継手の接続端部加熱用鏝を用いた三層管と管継手の接続端部の加熱装置であって、
a)前記三層管と管継手の接続端部加熱用鏝を支持台に固定し、
b)前記三層管と管継手の接続端部加熱用鏝の三層管加熱体の円周溝に対向させて前記三層管の端部を把持する送りクランプを設けるとともに該送りクランプの基部には前記円周溝に向けて進退可能とするクランプ移動台を設け、
c)前記三層管と管継手の接続端部加熱用鏝の継手加熱体の管状突起に対向させて前記管継手の端部を把持する送りチャックを設けるとともに該送りチャックの基部には前記管状突起に向けて進退可能とするチャック移動台を設け、
たことを特徴とする三層管と管継手の接続端部の加熱装置。
【請求項8】
請求項7に記載の三層管と管継手の接続端部の加熱装置であって、
a)前記支持台を送りクランプと送りチャックから離れるように移動可能とする鏝移動機構を設け、
b)前記送りクランプ及び/又は前記送りチャックの移動台を、把持した前記三層管の端部と前記管継手の端部とが接合可能な位置に移動可能とする台移動手段を設け、
たことを特徴とする三層管と管継手の接続端部の加熱装置。
【請求項9】
請求項1から6のうちいずれかに記載の三層管と管継手の接続端部加熱用鏝を用いた三層管と管継手の接続端部の加熱方法であって、
内外両側の樹脂被覆層の厚さが3mm以上の熱溶融性ポリエチレン層を有する樹脂被覆金属三層管を対象とし、
a)三層管と管継手の接続端部加熱用鏝で前記三層管を加熱する時間を3〜4秒に設定し、且つ加熱する温度を280〜300°Cに設定して前記各樹脂被覆層の金属管側に非溶融部分を残して表層を溶融し、
b)同時に、三層管と管継手の接続端部加熱用鏝で脂製管継手の三層管端部差込溝の内面を加熱して管の内側と外側に非溶融部分を残して該内面表層を溶融し、
c)直ちに前記管継手の三層管端部差込溝に前記三層管の加熱端部を差し込んで両者を融着することを特徴とする三層管と管継手の接続端部の加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−28081(P2013−28081A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165965(P2011−165965)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(593000971)株式会社テクノフレックス (12)
【Fターム(参考)】