説明

三次元形状解析機能を有する走査型電子顕微鏡

【課題】 低加速電圧を用いた高精度な三次元解析を行える走査型電子顕微鏡を提供する。
【解決手段】 二次電子検出器12よりも電子源側に、4分割された変換電極21a〜21dが配置されている。変換電極21aは対物レンズの下面(試料側)より上方に配置されており、その変換電極21aに衝突した反射電子23aは二次電子23bに変換され、変換電極21aの近傍の二次電子検出器12aに捕集される。同様にして、変換電極21bに衝突した反射電子23aは二次電子23bに変換されて二次電子検出器12bにより捕獲され、変換電極21cに衝突した反射電子23aは二次電子23bに変換されて二次電子検出器12cにより捕獲され、変換電極21dに衝突した反射電子23aは二次電子23bに変換され、二次電子検出器12dに捕集される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査電子顕微鏡に関し、より詳細には、検査対象試料から発生する信号に基づいて三次元形状解析を行う手法であって、特に低加速電圧反射電子情報を利用し、深さ(z)方向の測定精度を向上させる走査型電子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、走査電子顕微鏡による三次元計測が行われている。この方法は、反射電子信号を利用し、4分割された反射電子検出器を用いて測定される。また走査電子顕微鏡では、反射電子を検出するために、二次電子検出器とは別の反射電子検出器を試料上部に配置して検出していた(特許文献1、図1参照)。
【0003】
また、特許文献2では、試料の上方に電極を配置し、この電極に負電圧を印加して電子の軌道に直接作用することで電子を追い返して検出器に導く構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−31520号公報
【特許文献2】特開平3−179655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、一次電子の加速電圧が5kV以下の低加速電圧になると、試料から発生する反射電子のエネルギーも一次電子のそれと同程度であるため、従来の検出器では十分な感度が得られないという問題点があった。さらに三次元形状計測におけるより精度の良い深さ(z)方向の計測のためには低加速電圧での測定がきわめて重要である。すなわち、三次元形状解析を行う手段を備えた走査電子顕微鏡において、試料最表面の微小形状の測定及びより高精度な深さ測定を可能にするためには、反射電子検出器では検出が困難な低加速電圧での反射電子情報の検出が必要となる。
【0006】
また、特許文献2の技術では、一次電子とほぼ同等のエネルギーの反射電子を追い返すのに必要な電圧を光軸上で印加するため、高分解能なSEMでは一次電子線への悪影響が発生する。
【0007】
本発明の目的は、低加速電圧を用いた高精度な三次元解析を行える走査型電子顕微鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、一次電子線を発生する電子源と、該電子源を集束し試料に照射する対物レンズと、前記電子線を試料上で走査する走査手段と、前記試料上における前記電子線の走査によって該試料から発生する二次信号に基づいて該試料の電子線画像を表示する電子線画像表示手段と、を有する走査型電子顕微鏡であって、試料より発生する二次信号のうちエネルギーが高い信号電子が反射する位置に設けられ、反射により前記エネルギーが高い信号電子をエネルギーの低い信号電子に変換する複数の信号変換手段と、前記試料から直接発生するエネルギーの低い二次電子信号と前記の信号変換手段により変換された前記信号電子とを検出可能な位置に複数設けられた複数の信号検出手段と、前記複数の信号検出手段により検出された信号を演算処理し前記試料の表面の三次元形状解析を行う三次元形状解析処理手段と、を有する走査電子顕微鏡が提供される。上記走査型電子顕微鏡によれば、反射電子を信号変換手段に衝突させて、信号変換手段から発生した二次電子を検出する。
【0009】
前記信号検出手段は、前記電子線の光軸に軸対称に配置された少なくとも3つの二次電子信号検出器を含み、前記複数の信号変換手段は、前記二次電子信号検出器の上方に電気的に接地された状態で配置され、前記二次電子検出器のそれぞれに対応するように光軸に軸対称に配置され少なくとも前記二次電子検出器の数だけ分割された二次電子変換電極を含むことを特徴とする。反射電極を接地することで、光軸上には高い電圧を発生しないようにすることにより、例えば反射手段に負電圧を印加する手法に比べて一次電子線への影響が少なくなる。
【0010】
試料からの電子が分割された二次電子変換電極により反射されて2次電子に変換され、それぞれ位置の異なる複数の検出器により信号を検出される。これにより、三次元形状解析の精度を向上させることができる。
【0011】
従来の反射電子検出方法においては、加速電圧の高い高加速電圧を印加した一次電子で試料を走査し、加速電圧とほぼ同じエネルギーをもった反射電子を発生させ検出している。この方法では、一次電子線は試料の表面にとどまらず深部まで浸入し試料内部で散乱が生じるため、得られる反射電子像は発生領域が広がり、空間分解能が低下する。また、試料から直接発生したエネルギーの低い二次電子信号の検出量を制御し、エネルギーが高い信号電子のみを検出・処理することができる。
【0012】
本発明の反射電子検出技術においては、加速電圧を低くした状態においても、二次電子と反射電子との情報を分離し、低いエネルギー状態の反射電子のみに基づく試料像を形成することができる。加速電圧の低い一次電子は、試料表面の浅い部分にしか入り込まず、試料からの反射電子は浅い部分から放出されるため、そこから得られる反射電子信号は空間分解能の高いものとなる。よって、この状態の反射電子信号を使用して、三次元形状解析を行うことにより、より表面の形状を忠実に反映し、正確な深さ情報を得られることとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次電子検出器を利用して、二次電子や反射電子による像観察から深さ方向の三次元形状解析まで行えるようになる。また、試料と対物レンズとの間に反射電子検出器を挿入することなく反射電子信号を取り込めることから、特に低加速電圧においても反射電子情報が得られ、より精度良く、試料表面の微細形態の深さ情報を得られるとともに、試料と対物レンズとを接近させることができるため、空間分解能も向上する。また、一次電子とほぼ同等のエネルギーの反射電子を追い返すのに必要な電圧を光軸上で印加する必要がないため、高分解能なSEMでは一次電子線への悪影響が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態による三次元形状解析機能を有する走査型電子顕微鏡(以下、単に「走査型電子顕微鏡」とも称する。)について図面を参照しつつ説明を行う。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態による走査型電子顕微鏡の内部構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態による走査型電子顕微鏡においては、電子源内の陰極1と第一陽極2との間に、高圧制御電極13により引き出し電圧が印加され、陰極1から一次電子ビーム4が放射される。一次電子ビーム4は高圧制御電源13より、陰極1と第一陽極2よりも後段に設けられた第二陽極3との間に印加された電圧によりさらに加速され、さらに後段に配置されているレンズ系方向に進む。
【0016】
このようにして形成された一次電子ビーム4は、その後に、C1レンズ制御電源14によってクロスオーバー位置を制御される第一の集束レンズ5(C1レンズ)によって収束され、対物レンズ絞り6を通過する。次いで、この一次電子ビーム4は、C2レンズ制御電源15によってクロスオーバー位置を制御する第二の集束レンズ7(C2レンズ)によって収束された後、対物レンズ9によって、試料10上に収束されるように構成されている。この際、対物レンズ9は対物レンズ制御電源20によって、一次電子ビーム4が試料10上に焦点を結ぶように制御される。C2レンズ7と対物レンズ9との間には二段の偏向器8が配置されており、走査電源16によって一次電子ビーム4を試料10上で二次元的に走査することができる。
【0017】
一次電子ビーム4が照射された試料10から発生する二次電子のうちエネルギーの低い二次電子11aは、対物レンズ9の磁界により電子源側に引き上げられ、二次電子検出器12によって検出される。ここで、対物レンズ近傍において一次電子ビーム4に対して軸対称であり、かつ、試料10との間の位置に設けられた軸対称電極22に対して負の電圧(例えば−100V程度の電圧)が印加されると、試料10から発生した二次電子11aは軸対称電極22に印加される負電圧により軸対称電極22を通過できないようになるため、二次電子検出器12によって二次電子11aが検出されなくなる。尚、軸対称電極22に印加される電圧は電極制御電源24により制御されている。
【0018】
図2も参照しつつ説明を続けると、二次電子検出器12よりも電子源側には、例えば4分割(n分割、nは3以上の整数)された変換電極21(21a〜21d)が配置されている。変換電極は例えば電気的に接地された状態で配置されている。尚、4分割された変換電極21は、信号の混在を防止するために、それぞれの電極間を絶縁する必要があり、例えばスリット(図2(b)の符号S1参照)を入れることにより区切られている。
【0019】
変換電極21に反射電子23aが衝突すると、二次電子23bが発生する。すなわち、変換電極21は、反射電子23aを反射させることで二次電子23bに変換する機能を有する。4分割された電極21の各電極21a〜21dまでのそれぞれにおいて反射電子から二次電子に変換された二次電子23bをそれぞれ独立して検出できるように、各電極21a〜21dまでのそれぞれに対して1つずつ、合計4つの二次電子検出器12(12a〜12d)が設けられている。変換電極21aは対物レンズ9の下面(試料側)より上方に配置されており、その変換電極21aに衝突した反射電子23aは二次電子23bに変換され、変換電極21aの近傍の二次電子検出器12aに捕集される。同様にして、変換電極21bに衝突した反射電子23aは二次電子23bに変換されて二次電子検出器12bにより捕獲され、変換電極21cに衝突した反射電子23aは二次電子23bに変換されて二次電子検出器12cにより捕獲され、変換電極21dに衝突した反射電子23aは二次電子23bに変換され、二次電子検出器12dに捕集される(特に図2(a)参照)。
【0020】
二次電子検出器12a〜12dは、それぞれ表面に約10kV程度の高電圧が印加された二次電子捕集電極28を有している。この二次電子捕集電極28は、シンチレータとシンチレータとの発光を電気信号に変換するホトマルチプライアにより構成される。二次電子検出器12の二次電子捕集電極28の電圧は、一次電子ビームの軸対称性のずれを補正するための捕集電圧微調整機構18により微調整される(図2(b)参照)。
【0021】
二次電子検出器12a、12b、12c、12dの信号出力は、捕集電圧微調整機構18の制御によりそれぞれの変換プレートより二次電子検出器12a〜12dに捕集される信号強度が異なってくるため、それぞれの二次電子検出器12a〜12dの信号強度を可変増幅器29によって増幅した後に信号解析システム19において正規化した後に演算処理され、三次元情報に変換される。三次元情報はCPU25によって制御される画像メモリ27内に取り込まれるとともにCPU25によって制御される像表示手段(表示モニタ)26に三次元試料像情報が表示される。
【0022】
図3に三次元情報を得るための信号解析例の概略図を示す図である。図2(a)、(b)に示すように、4分割された二次電子変換電極21a〜21dに衝突した反射電子信号23aは試料10側(図の下側)に配置された二次電子検出器12aから12dに捕集され正規化された後、解析システム19により演算処理され、三次元情報に変換される。図3(a)に示すように、4分割された変換電極21aから21d(図2)に衝突した反射電子信号は二次電子信号に変換された後、放出方向ごとに異なる二次電子検出器21aから21d(図2)に捕集される。検出器12aで検出される信号をAとし、検出器12bで検出される信号をBとし、検出器12cで検出される信号をCとし、検出器12dで検出される信号をDとすると、各検出器12aから12d(図2)で検出された二次電子信号A〜Dまでを用いてx,y方向で図3(b)に示すような2次元的な積分を行い、下記(1)式により基準点P1点に対する試料の現在走査位置である任意の位置P3の高さZ(P3)を求める。
【0023】
【数1】

【0024】
このように、二次電子検出器12aから12dによって検出された信号をx,y各方向に積分演算することにより、試料表面上の各点におけるZ方向の情報が得られる。試料に照射する電子線を走査しながら、上記式(1)の演算を連続して行うことにより、試料表面の高さ分布を求めることができる。従って、走査電子顕微鏡に設けられた像表示手段(表示モニタ)26における表示画面上の任意の位置における断面プロファイルの作成、粗さパラメータの測定や斜視図(鳥瞰図)の作成・表示が可能である。
【0025】
図4は、走査電子顕微鏡で測定した場合に得られる表示例を示す図である。図4(a)、図4(b)ともに、測定対象はSiウェハー上のレジストパターンである。ここで、図4(a)は反射電子を検出するための二次電子検出器とは別の反射電子検出器を設けた従来の装置を用い、試料に対して一般的な加速電圧である15kVの条件で電子線を照射して反射電子像情報を取り込み、上記の三次元形状解析を行った場合の測定結果の表示例を示す図である。図4(a)に示すように、上部に帯状の2次元パターンPT1が、下部にこの2次元パターンの高さ方向zの分布が表示されている。このように、z方向の分布を見ると、エッジED1がだれており、正確なエッジを特定することが難しく、精度の良い三次元解析ができない。
【0026】
図4(b)は本実施の形態による走査型電子顕微鏡を用いて加速電圧3kVの低加速電圧で反射電子像情報を取り込み、三次元形状解析を行った場合の測定結果の表示例を示す図である。図4(b)に示すように、上部に帯状の2次元パターンPT2が、下部にこの2次元パターンの高さ方向zの分布が表示されている。このように、z方向の分布を見ると、エッジED2の切れが良くなっており、エッジを精度良く特定することができ、精度の良い三次元解析が可能となっていることがわかる。すなわち、両者のラインプロファイルを比較した場合、加速電圧が低い図4(b)の条件で測定できる本実施の形態による走査型電子顕微鏡の方が、試料形状をより忠実に反映し、より精度の良い高さ情報を得ることができることがわかる。
【0027】
すなわち、従来の反射電子検出方法においては、加速電圧5kV以上の高加速電圧を印加した一次電子で試料を走査し、加速電圧とほぼ同じエネルギーをもった反射電子を発生させ検出している。この方法では、一次電子線は試料の表面にとどまらず深部まで浸入し試料内部で散乱が生じるため、得られる反射電子像は発生領域が広がり、空間分解能が低下していた。
【0028】
これに対して、本実施の形態による反射電子検出方法においては、従来の反射電子の発生方法と異なり、加速電圧を低くした状態においても、二次電子と反射電子との情報を分離し、低いエネルギー状態の反射電子のみに基づく試料像を形成することが可能である。加速電圧の低い一次電子は、試料表面の浅い部分にしか入り込まず、試料からの反射電子は浅い部分から放出されるため、そこから得られる反射電子信号は空間分解能の高いものとなる。よって、この状態の反射電子信号を使用して、三次元形状解析を行うことにより、より表面の形状を忠実に反映し、正確な深さ情報を得られることとなる。
【0029】
図5は、本実施の形態による走査電子顕微鏡上で三次元形状解析を行う際の表示方法および表示機能の例を示す図である。図5に示す表示部兼SEM操作部には、三次元計測切り替えボタン30と、SEM操作画面31と、三次元計測用表示画面32と、三次元計測用機能選択用ボタン33と、検出器選択ウィンドウ34と、が設けられている。SEM操作画面31には、例えば半導体のパターンの2次元画面が表示され、ストライプ状のパターン部分37とパターンがない部分35とが表示される。
【0030】
三次元計測切り替えボタン30を押すと、加速電圧が低くなり、二次電子が検出器まで届かなくなるため、検出する電子としては反射電子が支配的になるとともに、三次元計測用表示機能が起動し、図5に示すように三次元計測用表示画面32に例えば試料の斜視図などの3次元情報に基づく3次元表示が行われる。ここでは、パターン部分37に対応するパターンの斜視図40が表示され、画面31と画面32のパターンとは同じ符号の部分が対応しているため、操作者にもわかりやすい。併せて、3次元解析により得られた断面構造のラインプロファイルを表示することもできる(下図参照)。この際、上図の斜視図からどの切り口で切ったラインプロファイルにするかを決定し(符号L0)、この符号L0のラインで切った断面を下図に表示させることができる。図4(b)に示すようにパターンの両方エッジL1、L2を操作により確定することで、パターン幅W1を求めることも可能である。
【0031】
尚、三次元計測用表示画面32は、図に示すように三次元計測用機能選択用ボタン33と重複して表示させないようにしても良いし、自動的にいずれか一方の表示に切り替わり、重複表示されないようにしたり、並列表示されるようにしたりすることも可能である。あるいはSEM像表示と三次元計測用表示画面のみが重複しないようにも表記しても良い。
【0032】
また、三次元計測表示画面(32)はSEM操作画面(31)中にSEM機能の一部として表示させても良いし、図5に示すようにSEM操作画面とは別個に独立操作画面として表示しても良い。独立操作画面として表示する場合は、SEM操作画面中から三次元計測用切り替えボタン(30)をクリックすることで、三次元計測用表示画面が立ち上がっても良く、あるいは独立ソフトとして別個に立ち上げても良い。その三次元計測用表示画面上には機能選択用ボタン33が並んでいる。
【0033】
それらのボタンは以下の機能を持つことを特徴とする。
(1)分割電極信号演算指示画面(三次元測定方向指示機能、凹凸像表示機能付)。
(2)画像と三次元計測測定結果のラインプロファイルを表示する機能。この場合、ラインは画像上に表示するか、画像とは別個に表示するか選択可能とする。また画像上の描画位置も指定できると良い。
(3)画像に対して複数のラインプロファイルを表示可能な機能。
(4)斜視図(鳥瞰図)表示機能(鳥瞰方向指定機能付)。
【0034】
(5)凹凸像情報を得るために、どの方向に陰影をつけるかを変更できるように、4つの検出器の中から利用する検出器を選択することができるウインドウ34を有する。このウィンドウ34にA,B、C、Dの選択ボタンが設けられており、この選択ボタンによりAからDまでのいずれの検出器を利用してどの方向に陰影を付けるかを変更することができる。
【0035】
(6)画像およびそこに付随する三次元情報を拡大表示できる機能。
(7)三次元計測により得られたラインプロファイルに対して、その任意の幅を測長可能な機能(X、Y方向とも可能)。測長に際し、手動あるいは自動測長(測長パラメータ選択機能付)が切り替えられる機能を有する。
(8)得られたラインプロファイルに対して近似接線を計測し、角度が求められる機能(手動角度測定機能と切り替え可能)。
【0036】
(9)三次元計測表示画面上への文字入力機能。
(10)試料表面の粗さ計測し、そのラフネス度を求めることが可能な機能。
(11)試料の真円度およびその直径を求める機能。
(12)それぞれの検出器から検出される信号に対して別の色を擬似的につけ、カラー表示させる機能。
【0037】
以上に説明したように、本実施の形態による三次元形状解析機能を有する走査型電子顕微鏡によれば、低加速電圧で三次元解析が可能なため、精度の高い三次元解析を行うことができるという利点がある。また、一次電子とほぼ同等のエネルギーの反射電子を追い返すのに必要な電圧を光軸上で印加する必要がないため、高分解能なSEMでは一次電子線への悪影響が生じない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の三次元形状解析機能を有する走査型電子顕微鏡によれば、反射電子信号を変換電極板により二次電子信号に変換して捕集し、三次元形状解析を実施することから、従来法に比べより低加速電圧での形状解析が可能となる。従って、電子ビームによるダメージに弱い生物系の試料から、最新の半導体の分野におけるシュリンクしやすいパターンの形状解析まで、幅広い分野において、高精度に三次元形状解析が行えるため、応用分野は広い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態による三次元形状解析手段を備えた走査電子顕微鏡の一構成例を示す概略図である。
【図2】反射電子を二次電子信号に変換して検出する検出手段の構成例を示す概略図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は上方から見た図である。
【図3】三次元解析のための画像演算処理の概略を示す図であり、図3(a)は基準点P1に対した場合に、走査している任意の点P3を示す図であり、図3(b)は、x軸に対する高さ方向の軸z方向における点P3の求め方を示す図である。
【図4】加速電圧を変えた際に得られる反射電子像とそのラインプロファイルであり、図4(a)は加速電圧15kV、図4(b)は加速電圧3kVの際の図である。
【図5】本実施の形態による走査電子顕微鏡に適用できる画面表示例の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・陰極、2・・・第一陽極、3・・・第二陽極、4・・・一次電子ビーム、5・・・C1レンズ、6・・・対物レンズ絞り、7・・・C2レンズ、8・・・偏向コイル、9・・・対物レンズ、10・・・試料、11・・・二次電子、12・・・二次電子検出器、13・・・高電圧制御電源、14・・・C1レンズ制御電源、15・・・C2レンズ制御電源、16・・・走査電源、17・・・ホトマル電圧制御電源、18・・・捕集電圧微調整機構、19・・・信号解析システム、20・・・対物レンズ制御電源、21・・・電極(4分割)、22・・・軸対称電極、23a・・・反射電子、23b・・・反射電子の衝突により発生した二次電子、24・・・電極電圧制御電源、25 ・・・CPU、26・・・像表示装置、27・・・画像メモリ、28・・・二次電子捕集電圧、29・・・可変増幅器、30・・・三次元計測切り替えボタン、31・・・SEM観察画面、32・・・三次元計測用表示画面、33・・・三次元計測用機能選択用ボタン、34・・・検出器選択ウィンドウ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次電子線を発生する電子源と、該電子源を集束し試料に照射する対物レンズと、前記電子線を試料上で走査する走査手段と、前記試料上における前記電子線の走査によって該試料から発生する二次信号に基づいて該試料の電子線画像を表示する電子線画像表示手段と、を有する走査型電子顕微鏡であって、
試料より発生する信号のうちエネルギーが高い信号電子が反射する位置に設けられ、反射により前記エネルギーが高い信号電子をエネルギーの低い信号電子に変換する複数の信号変換手段と、前記試料から直接発生するエネルギーの低い二次電子信号と前記の信号変換手段により変換された前記信号電子とを検出可能な位置に複数設けられた複数の信号検出手段と、前記複数の信号検出手段により検出された信号を演算処理し前記試料の表面の三次元形状解析を行う三次元形状解析処理手段と、を有する走査電子顕微鏡。
【請求項2】
前記信号検出手段は、前記電子線の光軸に軸対称に配置された少なくとも3つの二次電子信号検出器を含み、
前記複数の信号変換手段は、前記二次電子信号検出器の上方に電気的に接地された状態で配置され、前記二次電子検出器のそれぞれに対応するように光軸に軸対称に配置され少なくとも前記二次電子検出器の数だけ分割された二次電子変換電極を含むことを特徴とする請求項1記載の走査電子顕微鏡。
【請求項3】
前記二次電子検出器のそれぞれは表面に高電圧が印加された二次電子捕集電極とシンチレータと該シンチレータからの発光を電気信号に変換するホトマルチプライアとにより構成され、
前記二次電子捕集電極は、電子線に印加された加速電界によって生じる軸対称性のずれを補正する捕集電圧微調整機構を有していることを特徴とする請求項2に記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項4】
前記信号検出手段により検出される前記二次電子信号の量を制御する信号量制御手段を備え、該信号量制御手段は、前記二次電子変換電極と前記試料との間に前記電子線の軸に沿う方向に形成される軸対称電極と、該軸対称電極に対して電圧を印加する電極電圧制御電源と、を含むことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項5】
さらに、試料から放出される電子を前記一次電子線の軸外に偏向する電界を発生させる電界発生器と、
前記試料から放出される電子を該電界発生器の方向に偏向する磁界を発生する磁界発生器と、を備えたことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の走査電子顕微鏡。
【請求項6】
さらに、三次元計測切り替えボタンと、三次元計測用表示画面と、三次元計測用の機能を選択する三次元計測用機能選択ボタンと、を有しており、
前記三次元計測切り替えボタンを押す操作に連動して、前記一次電子線の加速電圧を低下させるとともに、前記信号検出手段による検出される主な信号を前記反射電子に切り替え、前記三次元計測用表示機能を起動させて三次元計測用表示画面に3次元表示が行われることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の走査電子顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−172919(P2006−172919A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364239(P2004−364239)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】