説明

三環性化合物

【課題】LXRアンタゴニストとして機能し、生活習慣病に有用な新規化合物及び該化合物を含有する医薬を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)


[式中、R1は、水素原子、低級アルキル基、無置換又は置換基を有していても良いフェニル基等、R2は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル基、カルボキシメチル基を表し、R3は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子を表し、Xは直結、酸素原子、硫黄原子、(CH基(ただしnは1から3の整数)を表し、YはCOまたはSOを表す]で表される三環性化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓X受容体(LXR(s))のアンタゴニストとして有効な三環性化合物及びその付加塩又はそれらの水和物、並びにこれらの化合物を含有する医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
LXR(Liver X Receptor)は、核内受容体スーパーファミリーに属するリガンド依存性転写因子であり、コレステロール、脂質及び糖質の代謝に関連する遺伝子の転写調節において重要な役割を担っている。
LXRには、2種類のサブタイプ、LXRα及びLXRβ(又はNR1H3及びNR1H2)が同定されており、高度に保存されたアイソフォームとして存在している。LXRは、RXR(Retinoid X Receptor)とヘテロ二量体を形成し、標的となる遺伝子の転写調節領域に結合して、リガンド依存的な転写調節を行っている。LXRβアイソフォームはユビキタスに発現されるが、LXRαは主として肝臓に多く発現し、その他、脂肪組織、マクロファージ、腎臓、骨格筋、小腸などにおいても発現が確認されている。
【0003】
LXRの標的遺伝子として、コレステロールの分解に関与するCYP7A1遺伝子やコレステロール逆輸送に関与するABCA1、ABCG1、ApoEなどの遺伝子が報告されており、LXRがコレステロールの分解、排出に関与していることが示唆されている。そのため、LXRをターゲットとしてその活性を調節する化合物の探索は、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症などの疾患の治療薬の開発に繋がることが期待されている。
また、LXRの標的遺伝子として、コレステロール代謝関連遺伝子以外に、SREBP−1c、ChREBPや脂肪酸シンターゼなどの脂質合成酵素遺伝子が報告されている。
さらに、LXRがグルコース代謝に関与する遺伝子発現を調節しているとの報告もあり糖代謝への関与も指摘されている(非特許文献1、2及び3)。
【0004】
これまでに報告されているLXRアゴニストのうち(特許文献1、2及び3)、芳香族アミノアルコール誘導体であるGW3965(特許文献1)、ベンゼンスルホンアミド誘導体であるT0901317(特許文献2)について、高コレステロール血症及び動脈硬化症の治療薬としての有用性が報告されている。しかし、その一方で、LXRアゴニストがトリアシルグリセロールの合成を促進することから、その使用により高トリアシルグリセリド血症を発症させる危険性が心配されている。従って、血清脂質濃度を正常に保つためには、LXRアゴニストのみならず、LXRアンタゴニストの開発も創薬上重要な課題となっている。
LXRアンタゴニストも幾つか報告されている(非特許文献3、4及び5、特許文献3)。そのうち、22−S−HCは、管状筋細胞において脂肪合成を抑制し、グルコースの取り込み及び酸化を上昇させ、さらに、コレステロール逆輸送に関与するABCA1の発現には影響を与えることなく、コレステロール合成に関与する遺伝子の発現を減少させることが報告されている(非特許文献3)
【0005】
以上のように、LXRがコレステロール代謝、脂質代謝及び糖代謝など、LXRの異常が生活習慣病又はメタボリックシンドローム等の原因となる生体内メカニズムの重要な制御因子であることから、該疾患の治療上、LXRリガンド(アゴニスト及びアンタゴニスト)の開発が必要とされている。
【0006】
【非特許文献1】Laffitteら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,100:5419−5424,2003
【非特許文献2】Caoら,J.Biol.Chem.,278:1131−1136,2003
【非特許文献3】Kaseら,Diabetologia,50:2171−2180,2007
【非特許文献4】Noguchi−Yachideら,Chem.Pharm.Bull.,55:1750−1754,2007
【非特許文献5】Tamehiroら,FEBS Let.,579:5299−5304,2005
【特許文献1】WO2002/24632
【特許文献2】WO2000/54759
【特許文献3】特開2007−284367
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、LXRアンタゴニスト活性を有する新規化合物及びその製造方法の提供を目的とする。
また、本発明は、該新規化合物を有効成分として含んでなる、LXR活性の亢進に伴う疾患の治療に有効な医薬の提供を目的とする。
さらに、本発明は上記医薬を用いた、LXRの機能の亢進に伴う疾患の治療方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記の一般式(1)で表される三環性化合物がLXRアンタゴニストとしての作用を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
一般式(1)
【化2】


[式中、R1は、 水素原子、低級アルキル基、無置換又は置換基を有していても良いフェニル基、無置換又は置換基を有していても良いベンジル基を表し、R2は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル基、カルボキシメチル基を表し、R3は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子を表し、Xは直結、酸素原子、硫黄原子、(CH基(ただしnは1から3の整数)を表し、YはCOまたはSOを表す]で表される三環性化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物である。
【0010】
一般式(1)
【化3】


[式中、R1は、 水素原子、低級アルキル基、無置換又は置換基を有していても良いフェニル基、無置換又は置換基を有していても良いベンジル基を表し、R2は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル基、カルボキシメチル基を表し、R3は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子を表し、Xは直結、酸素原子、硫黄原子、(CH基(ただしnは1から3の整数)を表し、YはCOまたはSOを表す]で表される三環性化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物、並びに薬理学上許容される担体を含有する、LXRの機能の亢進に起因する疾患の治療のための医薬である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の三環性化合物は、LXRアンタゴニストとして機能し、LXRの標的遺伝子の転写活性化の亢進に起因する疾患(例えば、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病)の治療及び/又は予防に効果を示す医薬の開発に有用である。
【0012】
本発明の三環性化合物は、LXR(α及び/又はβ)の機能、例えば、標的遺伝子の転写活性化機能の亢進に起因する疾患(例えば、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病)の治療及び/又は予防において有用である。
【0013】
本発明の三環性化合物は、生活習慣病の治療又は治療薬と、併用し又は併用しないで用いることができる栄養補助食品又は健康補助食品等の有効成分としても使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一般式(1)で表される化合物のうち、式中、R1が低級アルキル基、無置換又は置換基を有していても良いフェニル基、無置換又は置換基を有していても良いベンジル基を表し、R2が1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル基を表し、R3が水素原子を表し、Xが直結を表し、YがCOである一般式(1a)
【化4】


は例えば以下の方法により製造することができる(スキーム 1)。
【0015】
【化5】

【0016】
すなわち、一般式(1a)
【化6】


[式中、R1は低級アルキル基、無置換又は置換基を有していても良いフェニル基、無置換又は置換基を有していても良いベンジル基である]で示される化合物は2−(4−置換アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール(化合物2)と2−ヨードベンゾイルクロライドを反応(第I工程)させることにより合成される一般式(3)
【化7】


[式中、R1は低級アルキル基、無置換又は置換基を有していても良いフェニル基、無置換又は置換基を有していても良いベンジル基である]で示される化合物を環化(第II工程)することにより製造することができる。
【0017】
第I工程の反応は、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキド、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム等の溶媒中塩基の存在下又は非存在下実施することができる。塩基として、例えば、水素化ナトリウムのようなアルカリ金属水素化物、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ピリジン、トリエチルアミンのような有機塩基を用いることができる。反応温度としては、−50℃から200℃にて、好適には0℃から100℃にて実施することができる。
第II工程の反応は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中酢酸パラジウムとトリシクロヘキシルホスフィンテトラフルオロボレートを用いて塩基の存在下実施することができる。塩基として、例えば、炭酸セシウムや炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩を用いることができる。反応温度としては、50℃から200℃にて、好適には100℃から150℃にて実施することができる。
【0018】
また、本発明の一般式(1)で表される化合物のうち、式中、R1が水素原子を表し、R2が1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル基を表し、R3が水素原子を表し、Xが直結を表し、YがCOである一般式(1b)
【化8】


は例えば以下の方法により製造することができる(スキーム 2)。
【0019】
【化9】

【0020】
すなわち、一般式(1b)
【化10】


で示される化合物は、2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール(化合物4)と2−ヨードベンゾイルクロライドを反応(第III工程)させることにより合成される化合物(5)の水酸基を2−メトキシエトキシ(MEM)基、アミド窒素原子を4−メトキシベンジル(PMB)基で保護(第IV工程)することにより得られる化合物(6)のMEM基を脱保護反応(第V工程)して得られる化合物(7)を環化反応(第VI工程)して得られる化合物(8)のPMB基を脱保護(第VII工程)することにより製造することができる。
【0021】
第III工程の反応は、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキド、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム等の溶媒中塩基の存在下又は非存在下実施することができる。塩基として、例えば、水素化ナトリウムのようなアルカリ金属水素化物、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ピリジン、トリエチルアミンのような有機塩基を用いることができる。反応温度としては、−50℃から200℃にて、好適には、0℃から100℃にて実施することができる。
第IV工程のMEM化反応は、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキド、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム等の溶媒中塩基の存在下実施することができる。塩基として、例えば、水素化ナトリウムのようなアルカリ金属水素化物、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ピリジン、トリエチルアミンのような有機塩基を用いることができる。反応温度としては、−50℃から200℃にて、好適には0℃から100℃にて実施することができる。
第IV工程のPMB化反応は、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキド、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム等の溶媒中塩基の存在下実施することができる。塩基として、例えば、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、ナトリウムメトキシドのようなアルカリ金属水素化物、t−ブトキシドカリウムのようなアルカリ土類金属水素化物を用いることができる。反応温度としては、−50℃から200℃にて、好適には0℃から100℃にて実施することができる。
第V工程の反応は、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の溶媒中ルイス酸の存在下実施することができる。ルイス酸として、例えば、四塩化チタン、塩化アルミニウムを用いることができる。反応温度としては、−50℃から100℃にて、好適には0℃から80℃にて実施することができる。
第VI工程の反応は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中酢酸パラジウムとトリシクロヘキシルホスフィンテトラフルオロボレートを用いて塩基の存在下実施することができる。塩基として、例えば、炭酸セシウムや炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩を用いることができる。反応温度としては、50℃から200℃にて、好適には100℃から150℃にて実施することができる。
第VII工程の反応は、アセトニトリル又はアセトニトリルと水との混合溶媒中硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN)を用いて実施することができる。反応温度としては、0℃から100℃にて、好適には20℃から80℃にて実施することができる。
【0022】
また、本発明の一般式(1)で表される化合物のうち、式中、R1が水素原子、低級アルキル基、無置換又は置換基を有していても良いフェニル基、無置換又は置換基を有していても良いベンジル基を表し、R2が1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル基を表し、R3が水素原子を表し、Xが酸素原子を表し、YがCOである一般式(1c)
【化11】


は例えば以下の方法により製造することができる(スキーム 3)。
【0023】
【化12】

【0024】
すなわち、一般式(1c)
【化13】


[式中、R1が水素原子、低級アルキル基、無置換又は置換基を有していても良いフェニル基、無置換又は置換基を有していても良いベンジル基である]で示される化合物は、2−メトキシアニリン(化合物9)とヘキサフルオロアセトンを反応(第VIII工程)させることにより合成される化合物(10)と2−ヨード安息香酸を反応(第IX工程)することにより得られる化合物(11)のメチル基を脱保護反応(第X工程)して得られる化合物(12)を環化反応(第XI工程)して得られる化合物(1c;R1=H)のアミド水素を置換(第XII工程)することにより製造することができる。
【0025】
第VIII工程の反応は、トルエン、ベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキド、テトラヒドロフラン等の溶媒中有機酸の存在下実施することができる。有機酸として例えばパラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、メタンスルホン酸を用いることができる。反応温度としては−50℃から150℃にて、好適には0℃から100℃にて実施することができる。
第IX工程の反応は、カルボキシル基をそのままで、又は反応性の誘導体に変換して実施することができる。
「カルボキシル基の反応性誘導基」としては、酸塩化物、酸臭化物、酸無水物、カルボニルイミダゾール等が挙げられる。反応性誘導体を用いた反応の場合には、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中、塩基として、例えば、水素化ナトリウムのようなアルカリ金属水素化物、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、又はピリジン、トリエチルアミンのような有機塩基の存在下又は非存在下にて実施することができる。
カルボン酸体のままで反応を行う場合には、塩化メチレン、クロロホルム、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド等の溶媒中縮合剤の存在下、塩基の存在下又は非存在下で、さらには、添加剤の存在下又は非存在下実施することができる。
縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、シアノリン酸ジエチル、ジフェニルリン酸アジド、カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、又はピリジン、トリエチルアミンのような有機塩基が挙げられる。添加剤としては、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシスクシンイミドや3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン等が挙げられる。反応温度としては、−20℃から100℃にて、好適には0℃から50℃にて実施することができる。
第X工程の反応は、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の溶媒三臭化ホウ素を用いて実施することができる。反応温度としては、−100℃から100℃にて、好適には−80℃から50℃にて実施することができる。
第XI工程の反応は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド溶媒中、塩基の存在下実施することができる。塩基として、例えば、炭酸セシウムや炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩を用いることができる。反応温度としては、120℃から220℃にて、好適には140℃から200℃にて実施することができる。
第XII工程の反応は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶媒中、塩基の存在下実施することができる。塩基として、例えば、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、ナトリウムメトキシドのようなアルカリ金属水素化物、t−ブトキシドカリウムのようなアルカリ土類金属水素化物を用いることができる。反応温度としては、−40℃から150℃にて、好適には−20℃から100℃にて実施することができる。
【0026】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、LXRアンタゴニストとして機能する。ここで、LXR(α及びβ)の機能とは、当業者により理解される機能のことを指し、例えば、RXR(Retinoid X Receptor)と二量体を形成し、リガンド依存的に標的となる遺伝子(例えば、Cyp7A1など)の転写を調節することである。LXRアンタゴニストは、このようなLXRの機能を阻害又は抑制するように作用するものである。従って、LXRアンタゴニストは、例えば、標的遺伝子の転写活性化機能の亢進に起因する疾患の治療及び/又は予防に効果を示す医薬の開発に利用することができる。LXR(α及び/又はβ)の機能の亢進に起因する疾患としては、例えば、脂質代謝又は糖代謝異常に関連した疾患、限定はしないが、例えば、高脂血症、動脈硬化、糖尿病、肥満症を含む生活習慣病などの疾患を挙げることができる。
なお、本出願の明細書及び請求の範囲において、LXRと記載した場合には、特に付言しない限り、LXRα及びLXRβの両方を表すものとする。
【0027】
本発明の化合物は、生体に対して悪影響を及ぼさない医薬組成物の形態で医薬として、用いることができる。
通常、医薬組成物には、本発明の化合物の他、薬理学上許容される担体が含まれる。
「薬理学上許容される担体」は、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、アイソトニックに作用して吸着を遅らせる薬剤及びその類似物を含み、薬剤的投与に適するもののことである。該担体及び該担体を希釈するために好ましいものの例には、限定はしないが、水、生理食塩水、フィンガー溶液、デキストロース溶液、及びヒト血清アルブミンなどが含まれる。また、リポソーム及び不揮発性油などの非水溶性媒体も用いられる。さらに、本発明の化合物の活性を保護又は促進するような特定の化合物が、該組成物中に包含されていてもよい。
【0028】
本発明の医薬は、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入なども含む)、経皮及び経粘膜への投与を含み、治療上適切な投与経路に適合するように製剤化される。非経口、皮内、又は皮下への適用に使用される溶液又は懸濁液には、限定はしないが、注射用の水などの滅菌的希釈液、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒、ベンジルアルコール又は他のメチルパラベンなどの保存剤、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなどの無痛化剤、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝剤、塩化ナトリウム又はデキストロースなど浸透圧調製のための薬剤を含んでもよい。
pHは塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調製することができる。非経口的標品はアンプル、ガラスもしくはプラスチック製の使い捨てシリンジ又は複数回投与用バイアル中に収納される。
【0029】
注射に適する医薬組成物には、滅菌された注射可能な溶液又は分散媒を、使用時に調製するための滅菌水溶液(水溶性の)又は分散媒及び滅菌されたパウダーが含まれる。静脈内の投与に関し、適切な担体には生理食塩水、静菌水、又はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。注射剤として使用する場合、組成物は滅菌的でなくてはならず、また、シリンジを用いて投与されるために十分な流動性を保持していなくてはならない。該組成物は、調剤及び保存の間、化学変化及び腐食等に対して安定でなくてはならず、細菌及び真菌などの微生物由来のコンタミネーションを防止する必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及び適切な混合物を含む溶媒又は分散媒培地を使用することができる。例えば、レクチンなどのコーティング剤を用い、分散媒においては必要とされる粒子サイズを維持し、界面活性剤を用いることにより適度な流動性が維持される。種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールなどは、微生物のコンタミネーションの防止に対して使用可能である。また、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール及び塩化ナトリウムのような等張性を保つ薬剤が組成物中に含まれてもよい。吸着を遅らせることができる組成物には、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの薬剤が含まれる。
【0030】
滅菌的な注射可能溶液は、必要な成分を単独で、又は他の成分と組み合わせた後に、適切な溶媒中に必要量の活性化合物を加え、滅菌することで調製される。一般に、分散媒は、基本的な分散培地及び上述したその他の必要成分を含む滅菌的媒体中に活性化合物を取り込むことにより調製される。滅菌的な注射可能な溶液を調製するための滅菌的パウダーの調製方法には、活性な成分及び滅菌溶液に由来する何れかの所望な成分を含むパウダーを調製する真空乾燥及び凍結乾燥が含まれる。
【0031】
経口組成物には、不活性な希釈剤又は体内に取り込んでも害を及ぼさない担体が含まれる。経口組成物には、例えば、ゼラチンのカプセル剤に包含されるか、加圧されて錠剤化される。経口的治療のためには、活性化合物は賦形剤と共に取り込まれ、錠剤、トローチ又はカプセル剤の形態で使用される。また、経口組成物は、流動性担体を用いて調製することも可能であり、流動性担体中の該組成物は経口的に適用される。さらに、薬剤的に適合する結合剤、及び/又はアジュバント物質などが包含されてもよい。
錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ及びその類似物は以下の成分又は類似の性質を持つ化合物の何れかを含み得る:微結晶性セルロースのような賦形剤、アラビアゴム、トラガント又はゼラチンなどの結合剤;アルギン酸、PRIMOGEL、又はコーンスターチなどの膨化剤;ステアリン酸マグネシウム又はSTRROTESなどの潤滑剤;コロイド性シリコン二酸化物などの滑剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味剤;又はペパーミント、メチルサリチル酸又はオレンジフレイバーなどの香料添加剤。
【0032】
本発明の化合物は、植込錠及びマイクロカプセルに封入された送達システムなどの徐放性製剤として、体内から即時に除去されることを防ぎ得る担体を用いて調製することができる。エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生物分解性、生物適合性ポリマーを用いることができる。このような材料は、当業者によって容易に調製することができる。また、リポソームの懸濁液も薬剤的に受容可能な担体として使用することができる。有用なリポソームは、限定はしないが、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導ホスファチジルエタノール(PEG−PE)を含む脂質組成物として、使用に適するサイズになるように、適当なポアサイズのフィルターを通して調製され、逆相蒸発法によって精製される。
【0033】
本発明の化合物による特定の疾患の治療又は予防において、適切な投与量レベルは、投与される患者の状態、投与方法等に依存するが、当業者であれば、容易に最適化することが可能である。
注射投与の場合は、例えば、一日に患者の体重あたり約0.1μg/kgから約500mg/kgを投与するのが好ましく、一般に一回又は複数回に分けて投与され得るであろう。好ましくは、投与量レベルは、一日に約0.1μg/kgから約250mg/kgであり、より好ましくは一日に約0.5〜約100mg/kgである。
経口投与の場合は、組成物は、好ましくは1.0から1000mgの活性成分を含む錠剤の形態で提供され、好ましくは活性成分が1.0,5.0,10.0,15.0,20.0,25.0,50.0,75.0,100.0,150.0,200.0,250.0,300.0,400.0,500.0,600.0,750.0,800.0,900.0及び1000.0mgである。化合物は一日に1〜4回の投与計画で、好ましくは一日に一回又は二回投与される。
【0034】
医薬組成物又は製剤は、一定の投与量を保障すべく、均一単位投与量により構成されなくてはならない。単位投与量は、患者の治療に有効な一回の投与量を含み、薬剤的に受容可能な担体と共に製剤化された一単位のことである。本発明の単位投与量を決定する場合には、製剤化される化合物の物理的、化学的特徴、期待される治療上の効果、及び該化合物に特有な留意事項等が考慮される。
【0035】
本発明の医薬組成物はキットの形態で、容器、パック中に投与の説明書と共に含めることができる。本発明に係る薬剤組成物がキットとして供給される場合、該薬剤組成物のうち異なる構成成分が別々の容器中に包装され、使用直前に混合される。このように構成成分を別々に包装するのは、活性構成成分の機能を失うことなく長期間の貯蔵を可能にするためである。
【0036】
キット中に含まれる試薬は、構成成分が活性を長期間有効に持続し、容器の材質によって吸着されず、変質を受けないような何れかの種類の容器中に供給される。例えば、封着されたガラスアンプルは、窒素ガスのような中性で不反応性ガスの下において包装されたバッファーを含む。アンプルは、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの有機ポリマー、セラミック、金属、又は試薬を保持するために通常用いられる他の何れかの適切な材料などから構成される。他の適切な容器の例には、アンプルなどの類似物質から作られる簡単なボトル、及び内部がアルミニウム又は合金などのホイルで裏打ちされた包装材が含まれる。他の容器には、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジ、又はその類似物が含まれる。容器は、皮下用注射針で貫通可能なストッパーを有するボトルなどの無菌のアクセスポートを有する。
【0037】
また、キットには使用説明書も添付される。当該医薬組成物からな成るキットの使用説明は、紙又は他の材質上に印刷され、及び/又はフロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなどの電気的又は電磁的に読み取り可能な媒体として供給されてもよい。詳細な使用説明は、キット内に実際に添付されていてもよく、あるいは、キットの製造者又は分配者によって指定され又は電子メール等で通知されるウェブサイトに掲載されていてもよい。
【0038】
また、本発明の化合物は、食品又は飲料の形態で健康食品又は健康補助食品の有効成分として使用することができる。食品又は飲料の有効成分として本発明の化合物を使用する場合には、本発明の化合物を体内摂取が許容される他の食品原料などと併せて、例えば、栄養機能食品、特定保健用食品、健康食品、栄養補助食品、ドリンク剤などの形態にすることができる。
【0039】
さらに、本発明には、LXRの機能の亢進によって発症する疾患に罹患した哺乳動物の該疾患に関する治療方法も含まれる。ここで「治療」とは、疾患に罹患するおそれがあるか又は罹患した哺乳動物において、該疾患の病態の進行及び悪化を阻止又は緩和することを意味し、これによって該疾患の諸症状等の進行及び悪化を阻止又は緩和することを目的とする治療的処置の意味として使用される。
また、ここで言う疾患には、LXRの機能の亢進に起因して発症する疾患全般を意味し、限定はしないが、例えば、高脂血症、動脈硬化、糖尿病、肥満症を含む生活習慣病などを挙げることができる。
【0040】
次に本発明を具体例によって説明するがこれらの例によって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
〔実施例1〕N−エチル−N−(4−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)フェニル)−2−ヨードベンズアミド
【化14】


2−(4−(エチルアミノ)フェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール(100mg,0.349mmol)のCHCl溶液に1等量のトリエチルアミン及び1等量の2−ヨードベンゾイルクロライドを加え、室温で一晩撹拌した。反応液を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、標題化合物を得た。
収量:175mg(97%)。
1H NMR (CDCL3): d = 7.67 (d, J = 7.7 Hz, 1 H), 7.53 (d, J = 6.8 Hz, 2 H), 7.25 (d, J = 6.8 Hz, 2 H), 7.06 (t, J = 6.6 Hz, 1 H), 6.94 (d, J = 7.3 Hz, 1 H), 6.84 (t, J = 6.6 Hz, 1 H), 4.02 (s, 2 H), 3.55 (s, 1 H), 1.29 (s, 3 H).
MS (FAB); 518 (M+H)+
【0042】
〔実施例2〕5−エチル−2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)フェナンスリジン−6(5H)−オン
【化15】


実施例1の化合物(44.2mg,0.0855mmol)、2等量の炭酸セシウムのN,N−ジメチルホルムアミド溶液に10モル%の酢酸パラジウム、20モル%のトリシクロヘキシルホスフィンテトラフルオロボレート130℃で一晩撹拌した。反応液をろ過し、ろ過物を酢酸エチルで洗浄した。ろ液及び洗浄液を混合後濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、標題化合物を得た。
収量:27.1mg(81%)。
1H NMR (CDCL3): d = 8.68 (d, J = 1.5 Hz, 1 H), 8.56 (dd, J = 7.9, 1.5 Hz, 1 H), 8.31 (d, J = 7.9 Hz, 1 H), 7.85 (d, J = 9.4 Hz, 1 H), 7.80 (td, J = 7.9, 1.3 Hz, 1 H), 7.63 (t, J = 7.7 Hz, 1 H), 7.50 (d, J = 9.0 Hz, 1 H), 4.48 (q, J = 7.3 Hz, 2 H), 3.71 (s, 1 H), 1.44 (t, J = 7.3 Hz, 3 H).
MS (FAB); 390 (M+H)+
【0043】
〔実施例3〕5−ベンジル−2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)フェナンスリジン−6(5H)−オン
【化16】


実施例2と同様にして表題化合物を得た。
1H NMR (CDCL3): d = 8.67 (d, J = 1.3 Hz, 1 H), 8.63 (d, J = 8.1, 1.3 Hz, 1 H), 8.34 (d, J = 8.1 Hz, 1 H), 7.84 (td, J = 7.2, 1.3 Hz, 1 H), 7.68 (q, J = 8.3 Hz, 2 H), 7.38 (d, J = 9.4 Hz, 1 H), 7.34-7.23 (m, 5 H), 5.66 (s, 2 H), 3.63 (s, 1 H).
MS (FAB); 452 (M+H)+
【0044】
〔実施例4〕5−(4−メトキシベンジル)−2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)フェナンスリジン−6(5H)−オン
【化17】


実施例2と同様にして表題化合物を得た。
1H NMR (CDCL3): d = 8.62 (m, 1 H), 8.47 (s, 1 H), 8.00 (d, J = 18 Hz, 1 H), 7.74 (t, J = 3.6 Hz, 1 H), 7.63 (q, J = 7.3 Hz, 2 H), 7.43 (d, J = 8.6 Hz, 1 H), 6.93 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 6.84 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 4.60 (s, 2 H), 3.75 (s, 3 H).
MS (FAB); 482 (M+H)+
【0045】
〔実施例5〕5−(2,2,2トリフルオロエチル)−2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)フェナンスリジン−6(5H)−オン
【化18】


実施例2と同様にして表題化合物を得た。
1H NMR (CDCL3): d = 8.70 (d, J = 1.1 Hz, 1 H), 8.56 (dd, J = 8.1, 1.1 Hz, 1 H), 8.33 (d, J = 8.1 Hz, 1 H), 7.87 (dd, J = 7.7, 1.1 Hz, 1 H), 7.85 (dd, J = 7.7, 1.1 Hz, 1 H), 7.66 (td, J = 8.1 Hz, 1 H), 7.51 (d, J = 9.0 Hz, 1 H), 5.13 (s, 2 H), 3.78 (s, 1 H).
MS (FAB); 444 (M+H)+
【0046】
〔実施例6〕5−(2,2,2トリフルオロエチル)−2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)フェナンスリジン−6(5H)−オン
【化19】


実施例2と同様にして表題化合物を得た。
Mp 86.0-87.5℃.
IR (KBr) 3181, 1634, 1616, 1579, 1277, 1108 cm-1;
1H-NMR (500MHz, CDCl3) d 8.66 (d, J = 1.5 Hz), 8.56 (dd, J = 7.9, 1.5 Hz), 8.31 (d, J = 7.9 Hz), 7.86 (d, J = 8.6 Hz), 7.81 (dd, J = 8.6, 6.7 Hz), 7.64 (dd, J = 9.2, 6.7 Hz), 7.49 (d, J = 9.2 Hz), 3.83 (s, 3H), 3.70 (s, 1H);
MS (FAB): m/z 376 (M+H)+.
HRMS (FAB) calcd for C17H11F6NO2 376.0772; found: 376.0765 (M+H)+.
Anal. Calcd for C17H11F6NO2 ・11/10 H2O C, 51.68; H, 3.37; N, 3.55. Found: C, 51.57; H, 3.33; N, 4.02.
【0047】
〔実施例7〕2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)フェナンスリジン−6(5H)−オン
【化20】


実施例2と同様にして表題化合物を得た。
1H NMR (CDCL3): d = 8.88 (s, 1 H), 8.58 (s, 1 H), 8.41 (dd, J = 7.7, 1.1 Hz, 1 H), 8.33 (dd, J = 7.7, 1.1 Hz, 1 H), 7.91 (t, J = 7.7 Hz, 1 H), 7.74 (d, J = 8.6 Hz, 1 H), 7.69 (t, J = 7.7 Hz, 1 H), 7.48 (d, J = 9.0 Hz, 1 H).
MS (FAB); 362 (M+H)+
【0048】
〔実施例8〕2−(4−アミノ−3−メトキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール
【化21】


2−メトキシアニリン(1.2mL,10.7mmol)の50mLトルエン溶液にパラトルエンスルホン酸(206mg,1.08mmol)とヘキサフルオロアセトン(2.2mL,16.1mmol)を加えアルゴンガス雰囲気下130℃で20時間撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄し無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過した。ろ液濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、標題化合物を得た。
収量:1.29g(41%)。
1H NMR (CDCL3): d = 8.27 (s, 1 H), 7.00 (s, 1 H), 6.94 (d, J = 8.5 Hz, 1 H), 6.66 (d, J = 8.5 Hz, 1 H), 5.08 (s, 2 H), 3.75 (s, 1 H).
MS (FAB); 289 (M+H)+.
【0049】
〔実施例9〕2−フルオロ−N−(4−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパン−2−イル)−2−メトキシフェニル)ベンズアミド
【化22】


実施例8の化合物(555mg,1.92mmol)の10mL脱水塩化メチレン溶液にトリエチルアミン(0.32mL,2.31mmol)と2−フルオロベンゾイルクロライド(0.27mL,2.28mmol)を加えアルゴン雰囲気下室温で1時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈後飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄し無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過した。ろ液濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、標題化合物を得た。
収量:747mg(95%)。
MS (FAB); 412 (M+H)+.
【0050】
〔実施例10〕2−フルオロ−N−(4−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパン−2−イル)−2−ヒドロキシフェニル)ベンズアミド
【化23】


実施例9の化合物(743mg,1.81mmol)の10mL脱水塩化メチレン溶液に三臭化ホウ素の1mol/L塩化メチレン溶液(3.6mL,3.6mmol)をアルゴン雰囲気下0℃で滴下しそのまま30分撹拌した。反応液を氷水中に注加し、水、飽和食塩水で順次洗浄し無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過した。ろ液濃縮し粗製の標題化合物を得た。
収量:745mg(定量的)
本化合物はさらに精製せず次の反応に用いた。
【0051】
〔実施例11〕7−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ジベンゾ[b,f][1,4]オキサゼピン−11(10H)−オン
【化24】


実施例10の化合物(60.9mg,0.153mmol)の5mL脱水N,N−ジメチルホルムアミド溶液に無水炭酸カリウム(28.5mg,0.206mmol)を加え150℃で1時間加熱撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈後、水、飽和食塩水で順次洗浄し無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、標題化合物を得た。
収量:46.8mg(81%)。
1H-NMR (500MHz, CD3SOCD3) d 10.7 (s, 1H), 8.85 (s, 1H), 7.78 (dd, J = 7.8, 2.0 Hz, 1H), 7.63 (dd, J = 8.2 Hz, 1H), 7.59 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.33 (dd, J = 8.2 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 8.2 Hz, 1H);
MS (FAB): m/z 378 (M+H)+.
HRMS (FAB) calcd for C16H9F6NO3 378.0565; found: 378.0569 (M+H)+.
【0052】
〔実施例12〕7−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−10−メチルジベンゾ[b,f][1,4]オキサゼピン−11(10H)−オン
【化25】


実施例11の化合物(50mg,0.133mmol)の1mL脱水N,N−ジメチルホルムアミド溶液に60%水素化ナトリウム(18.6mg,0.775mmol)を加え0℃で30分、室温で30分撹拌した。次に、反応液中にヨードメタン(0.009mL,0.145mmol)を加え2時間室温にて撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈後、水、飽和食塩水で順次洗浄し無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過した。残留物を薄層クロマトグラフィーで精製し、標題化合物を得た。
収量:33.0mg(64%)。
1H-NMR (500MHz, CD3SOCD3) d 8.95 (s, 1H), 7.76 (dd, J = 7.8, 1.5 Hz, 1H), 7.64 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 7.62?7.58 (m, 2H), 7.54 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.32 (dd, J = 8.3, 7.3 Hz, 1H), 3.50 (s, 3H);
MS (FAB): m/z 392 (M+H)+.
HRMS (FAB) calcd for C17H12F6NO3 392.0721; found: 392.0705 (M+H)+.
【0053】
〔試験例1〕ヒトLXR受容体に対する転写活性化試験
10%脱脂牛血清を含むダルベッコ変法イ−グル培地(FCS/DMEM)にて培養したヒト胎児腎細胞(HEK293)に、酵母の転写因子(GAL4)のDNA結合領域とヒト型LXR(α及びβ)のリガンド結合領域との融合蛋白質を発現する受容体プラスミド及びそのレポータープラスミド、さらに内部標準用のβガラクトシダーゼプラスミドをリン酸カルシウム法にて無血清状態にてコトランスフェクションした。その後、被検化合物を添加して16時間後にルシフェラ-ゼ活性ならびにβガラクトシダーゼ活性を測定し、内部標準により補正してLXR転写活性化活性(EC50値)を求めた。
また、合成LXRリガンドであるT0901317(100μM)共存下での転写活性の抑制度を求めることでLXR転写抑制活性(IC50値)を求めた。
結果を表1に示す。本試験法により評価した結果、本発明化合物はヒトLXRに対してアゴニスト活性は示さず、アンタゴニスト活性を示した。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の化合物は、LXRアンタゴニストとして機能することから、LXRの機能亢進に関連する疾患の治療及びその治療薬の開発に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】


[式中、R1は、 水素原子、低級アルキル基、無置換又は置換基を有していても良いフェニル基、無置換又は置換基を有していても良いベンジル基を表し、R2は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル基、カルボキシメチル基を表し、R3は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子を表し、Xは直結、酸素原子、硫黄原子、(CH基(ただしnは1から3の整数)を表し、YはCOまたはSOを表す]で表される三環性化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項2】
R1が低級アルキル基である請求項1に記載の三環性化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項3】
R2が1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル基である請求項1に記載の三環性化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項4】
R2がカルボキシメチル基である請求項1に記載の三環性化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項5】
Xが直結である請求項1に記載の三環性化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項6】
Xが酸素原子である請求項1に記載の三環性化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項7】
YがCOである請求項1に記載の三環性化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の三環性化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物、並びに薬理学上許容される担体を含有する、LXRの機能の亢進に起因する疾患の治療のための医薬。
【請求項9】
前記疾患が生活習慣病であることを特徴とする請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
前記生活習慣病が、高脂血症、糖尿病、肥満症又は動脈硬化からなるグループより選択されるものであることを特徴とする請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の三環性化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物、並びに薬理学上許容される担体を含有する、健康補助食品。

【公開番号】特開2011−102240(P2011−102240A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50690(P2008−50690)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】