説明

不具合診断装置、不具合診断方法及びプログラム

【課題】燃費に基づいてより正確な不具合診断を実現することができる不具合診断装置、不具合診断方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】本発明による不具合診断装置1は、車両の実燃費の測定を行う実燃費測定手段2aと、車両の前記測定時の走行条件を検出する走行条件検出手段2bと、前記走行条件と所定の予測モデルに基づいて前記車両の前記測定時の推定燃費を計算する推定燃費計算手段2cと、前記実燃費と前記推定燃費の偏差を演算する偏差演算手段2dを含む、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装備されてユーザやディーラーにとって車両を保守管理する上でより有用な情報を提供し得る不具合診断装置、不具合診断方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザの省燃費指向に併せて適切な情報を提供して支援することや省燃費指向への関心を高めることにより省燃費運転を促すことを目的として、例えば特許文献1に記載されているように、前回の給油から今回の給油までの走行距離を今回の給油量で除した燃費を逐次求めて、ユーザに車両の燃費を提示することが提案されている。
【0003】
ここで、車両の燃費はタイヤの空気圧の不足や、積載荷重の大小、エンジン等の走行系統やエアコンやオルタネータ等の補機系統の故障、劣化等の車両状況に不具合が発生していることによって低下する方向に変化する性質を有している。特許文献1においては、燃費の実測値がこれらの車両状況を間接的に示すパラメータであることに着目して、ユーザの過去の車両の運転における燃費と、最新の燃費とを比較して、最新の燃費がある程度低下している場合には、車両状態に不具合が発生しているとみなして不具合発生の旨をユーザに報知することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−166999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、車両の実際の燃費はユーザのアクセルやブレーキの操作の仕方、アイドリング時間、走行している道路の勾配の有無、信号や一旦停止線による停止発進の有無やその頻度、幅員や車線数による走行のしやすさ、一般道か高速道路か等による車速の違い、曲線手前の減速と曲線後の加速の頻度、曲線走行中の走行抵抗増加、渋滞による低速走行や停止発進の繰り返し等の様々な走行条件の変化によっても低下し得る。
【0006】
特許文献1に記載のような過去の燃費と最新の燃費の比較に基づく報知においては、比較対象となる燃費の評価区間における走行条件が同じであることを前提としているものであり、走行条件が異なれば、車両状態を正確に診断すること、すなわち、不具合の発生の有無を正確に判定することができないという問題が生じる。しかし、従来技術においては、間接的なパラメータである燃費に基づいてより正確な不具合診断を実現することができていないという課題があった。
【0007】
本発明は、上記問題及び課題に鑑み、燃費に基づいてより正確な不具合診断を実現することができる不具合診断装置、不具合診断方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するため、本発明による不具合診断装置は、
車両の実燃費の測定を行う実燃費測定手段と、
前記車両の前記測定時の走行条件を検出する走行条件検出手段と、
前記走行条件と所定の予測モデルに基づいて前記車両の前記測定時の推定燃費を計算する推定燃費計算手段と、
前記実燃費と前記推定燃費の偏差を演算する偏差演算手段を含む、ことを特徴とする。
【0009】
なお、前記走行条件とは、前記実燃費を低下させる要因となるもののうち前記車両の車両状態の不具合以外のものを指すものとし、例えば、アクセル開度、エンジン回転数、バッテリ容量、車速、積載荷重、タイヤ空気圧、エアコンの使用状況と稼働状況、気温、天気、湿度、渋滞、勾配の有無、曲線の有無、信号や一時停止線の有無等その他の種々のパラメータを含む。これらのパラメータは適宜選択された一部を用いてもよいし、全部用いてもよい。
【0010】
また、前記所定の予測モデルは、例えば特開2005−291081号公報や特開2006−118479号公報等に記載の従来技術で周知の予測モデル及び予測モデル作成方法を用いることができる。さらに、前記測定時とは、例えば前記実燃費測定手段の測定周期毎の時刻を指し、理想的には前記測定時の走行条件とは当該測定周期毎の走行条件であることが好ましいが、前記走行条件検出手段の検出周期と前記測定周期が異なる場合には、前記測定周期毎の時刻の直近の又は隣接する前記検出周期毎の時刻であってもよい。
【0011】
前記不具合診断装置によれば、前記推定燃費は前記実燃費が測定されたときの前記走行条件に基づいて計算されたものとすることができ、前記推定燃費と前記実燃費の偏差は前記走行条件によっては発生しないものとして、前記偏差を前記車両の車両状態の不具合のみを反映するパラメータとすることができ、前記偏差を用いての不具合発生の判定つまり不具合診断をより正確なものとすることができる。
【0012】
ここで、前記不具合診断装置において、
前記偏差に基づいて前記車両における車両状態の不具合の発生の有無を判定する判定手段を含む、
ことが好ましい。
【0013】
前記不具合診断装置によれば、前記車両の車両状態の不具合のみを反映するパラメータであって間接的なパラメータである前記偏差に基づいて、より正確に前記車両の車両状態の不具合の発生の有無を判定することができる。
【0014】
ここで、前記不具合診断装置において、
前記判定手段は前記偏差が設計公差より大きい場合に前記不具合が発生していると判定することが好ましい。
【0015】
なお、前記設計公差とは前記推定燃費と前記実燃費との前記所定の予測モデルが有する精度に基づく公差である。すなわち、前記偏差が前記設計公差より大きい場合とは、前記推定誤差に対して前記実燃費が下回り乖離が発生している場合を示す。
【0016】
前記不具合診断装置によれば、前記車両の車両状態の不具合のみを反映するパラメータであって間接的なパラメータである前記偏差と前記予測モデルのスペックに基づいて容易に求められる前記設計公差に基づいて、より正確かつより容易に前記車両の車両状態の不具合の発生の有無を判定することができる。
【0017】
さらに、前記不具合診断装置において、
前記判定手段の判定の結果に基づいた報知を行う報知手段を含むことが好ましい。
【0018】
前記不具合診断装置によれば、前記判定の結果に基づいて報知を適宜行うことにより、ユーザにとってより対処しやすい報知を行うことができる。
【0019】
すなわち、前記不具合診断装置において、
前記判定手段により前記不具合が発生していると判定された場合には、前記報知手段は前記不具合が発生した旨を報知する。
【0020】
ここで、前記不具合診断装置において、
前記不具合は、故障、故障予兆、劣化を含むことが好ましい。
【0021】
前記不具合診断装置によれば、前記判定手段は前記不具合についてより詳細な前記判定を行うことができる。
【0022】
さらに、前記不具合診断装置において、
前記判定手段は前記偏差の変化率と前記故障及び前記故障予兆に対応する所定変化率との比較を行うとともに、前記偏差と前記故障に対応する第一所定値との比較を行うことが好ましい。
【0023】
加えて、前記不具合診断装置において、
前記判定手段は前記偏差と前記第一所定値より小さい前記故障予兆に対応する第二所定値との比較を行うことが好ましい。
【0024】
加えて、前記不具合診断装置において、
前記判定手段は前記変化率が前記所定変化率以上である状態が継続した後前記偏差が前記第一所定値以上である状態が継続する場合に前記故障が発生していると判定することが好ましい。
【0025】
前記不具合診断装置によれば、実験又はシミュレーションにより比較的容易に求められる前記所定変化率と前記第一所定値と前記偏差との比較に基づいて、前記故障の発生の判定をより容易に行うことができる。
【0026】
さらに、前記不具合診断装置において、
前記判定手段は前記変化率が前記所定変化率以上である状態が継続した後前記偏差が前記第二所定値以上であり前記第一所定値未満である状態が継続する場合に前記故障予兆が発生していると判定することが好ましい。
【0027】
前記不具合診断装置によれば、実験又はシミュレーションにより比較的容易に求められる前記第二所定値と前記偏差との比較に基づいて、前記故障予兆の発生の判定をより容易に行うことができる。
【0028】
さらに、前記不具合診断装置において、
前記判定手段は前記変化率が前記所定変化率未満である状態が継続した後前記偏差が前記第二所定値未満である状態が継続する場合に前記劣化が発生していると判定することが好ましい。
【0029】
前記不具合診断装置によれば、実験又はシミュレーションにより比較的容易に求められる前記第二所定値と前記偏差との比較に基づいて、前記劣化の発生の判定をより容易に行うことができる。
【0030】
より具体的には、前記不具合診断装置において、
前記判定手段により前記故障が発生していると判定された場合には、前記報知手段は前記故障が発生した旨を報知する。
【0031】
同様に、前記不具合診断装置において、
前記判定手段により前記故障予兆が発生していると判定された場合には、前記報知手段は前記故障予兆が発生した旨を報知する。
【0032】
同様に、前記不具合診断装置において、
前記判定手段により前記劣化が発生していると判定された場合には、前記報知手段は前記劣化が発生した旨を報知する。
【0033】
なお、本発明に係る不具合診断方法は、
車両の実燃費の測定を行う実燃費測定ステップと、
車両の実燃費の測定を行う実燃費測定ステップと、
前記車両の前記測定時の走行条件を検出する走行条件検出ステップと、
前記走行条件と所定の予測モデルに基づいて前記車両の前記測定時の推定燃費を計算する推定燃費計算ステップと、
前記実燃費と前記推定燃費の偏差を演算する偏差演算ステップを含む、
ことを特徴とする。
【0034】
また、本発明のプログラムは、
前記不具合診断方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、燃費に基づいてより正確な不具合診断を実現することができる不具合診断装置、不具合診断方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る不具合診断装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る不具合診断装置の制御内容を示すタイムチャートである。
【図3】本発明に係る不具合診断装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る不具合診断装置の制御結果としてのユーザへの報知内容の具体例とユーザ及びディーラーが取り得る処置内容を示す模式図である。
【図5】本発明に係る不具合診断装置の他の実施形態における制御内容を示すタイムチャートである。
【図6】本発明に係る不具合診断装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る不具合診断装置の制御結果としての判定内容に対応する不具合の具体例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0038】
図1は、本実施例1の不具合診断装置1の一実施形態を示すブロック図である。
【0039】
不具合診断装置1は、カーナビゲーションECU2(Electronic Control Unit)と、GPSアンテナ3、ヨーレートセンサ4、受信機5、データベース6、ディスプレイ7、スピーカ8とから構成される。カーナビゲーションECU2には、CAN(Controller Area Network)等の通信規格を介してエンジンECU9、ブレーキECU10、EPSECU12(Electronic Power Steering)が接続される。
【0040】
カーナビゲーションECU2は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納された通常制御用プログラム又はデータベース6から読み出した推定用プログラムに従い、CPUが以下に述べる処理を行うものである。カーナビゲーションECU2は、実燃費測定手段2a、走行条件検出手段2b、推定燃費計算手段2c、偏差演算手段2d、判定手段2e、報知手段2f、探索手段2g、表示手段2hを構成する。
【0041】
カーナビゲーションECU2にはGPSアンテナ3(Global Positioning System:全地球測位システム)と、ヨーレートセンサ4と、ディスプレイ7と、スピーカ8とが接続されている。
【0042】
GPSアンテナ3は、地球上空を適宜の軌道で旋回する複数の衛星の内四個の衛星からの電波を受信し、これらの電波をもとに、探索手段2gは、三角測量の原理で車両の位置つまりは経度と緯度及び高度を測定する。
【0043】
ここで、ヨーレートセンサ4は車両のヨーレートを検出するものであり、EPSECU12に接続された図示しないステアリングセンサは図示しない車両の操舵装置に設けられて操舵角を検出するものである。
【0044】
ディスプレイ7上に設けられたタッチパネルはユーザが目的地や目標時間等の探索条件と、後述する走行条件の一部を入力する入力装置である。
【0045】
データベース6はCD−ROMやDVD−ROMあるいはハードディスク等の記憶媒体により構成される。データベース6は、表示用の地図情報と、探索用の地図情報及び推定燃費計算手段2cが用いる所定の予測モデルを含む推定用プログラムを格納し記憶している。この推定用プログラムが本発明のプログラムに該当し、実行させるコンピュータはここではカーナビゲーションECU2である。
【0046】
ディスプレイ7はタッチパネルにより入力された目的地をもとに探索手段2gが探索した経路を表示用の地図情報とともに表示手段2hの指令の下に表示するものであり、後述する報知手段2fの指令に基づいても適宜テキスト情報等を表示するものである。
【0047】
ここで、エンジンECU9は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたエンジン制御用プログラムに従い、図示しないエンジンの燃料噴射量F(l/s:リットルパーセコンド)、スロットル開度、バルブリフト量、バルブタイミング、エンジン回転数等を制御し、適宜検出したバッテリ容量に基づいて図示しないオルタネータを制御するとともに、これらのエンジン制御情報とバッテリ容量を含むデータフレームをカーナビゲーションECU2にCANにより送信するものである。
【0048】
さらに、ブレーキECU10は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたブレーキ制御用プログラムに従い、CPUが処理を行って図示しない車輪毎のブレーキ装置をユーザによるブレーキペダルの踏み込みが有る場合に制御して制動を行うものである。
【0049】
これとともにブレーキECU10は、制動時の車輪のロックを防止するABS機能(Anti-Lock Brake System)を有しており、その制御に用いるための車輪速を図示しない車輪速センサから取得して車速V(km/h)の演算を行い、車速V(km/h)を含むデータフレームをカーナビゲーションECU2にCANにより送信するものである。
【0050】
また、EPSECU11は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従いCPUが処理を行って、図示しないステアリングホイールにユーザにより入力される操舵力に基づいて、車輪を転舵する操舵装置のアシスト力を制御するものである。EPSECU11は、アシスト力の制御に用いるための操舵角を操舵装置内部の図示しないステアリングセンサから取得しており、カーナビゲーションECU2に対して操舵角を含むデータフレームをCANにより伝送している。
【0051】
さらに、受信機5は光あるいは電波ビーコンに準拠したものであり、VICS(Vehicle Information & Communication System:道路交通情報システム)からの道路情報を受信する。VICSは、警察が収集した一般路の情報と道路公団が収集した高速道路の情報がVICSセンターに送られて、そこで編集された情報がFM多重放送、電波ビーコンあるいは光ビーコンにより発信されるものである。
【0052】
VICSの発信する情報は、渋滞情報、渋滞区間、渋滞距離、車両の位置から目的地までの所要時間、道路工事による交通規制、速度規制、チェーン規制、駐車場情報、天候情報、地震・津波などの緊急情報も含む。
【0053】
上述したGPSアンテナ3を用いた車両の位置の測定は、衛星からの電波を利用する特性上、高層ビルの谷間に車両が位置する場合やトンネル内を車両が走行している場合、あるいは、高架橋の下を車両が走行している場合などでは電波をGPSアンテナ3が受信できないため、車両の位置が測定できないタイミングが生じる。
【0054】
このため、GPSアンテナ3が電波を受信できない場合には、探索手段2gは、ブレーキECU10が検出した車速Vとヨーレートセンサ4が検出したヨーレート、ステアリングセンサが検出してEPSECU12から送信された操舵角をもとにして、車両の移動距離と方向を自律航法INS(Inertial Navigation System)により計算して車両の位置を測定し、GPSアンテナ3を用いた車両の位置の測定と併せて補完して、トータルの車両位置の測定の精度を高めている。
【0055】
そして、表示手段2hは、データベース6内の表示用の地図情報と、上述した手法により測定した車両の位置と、タッチパネルにより入力された目的地と、受信機5により受信した道路工事による交通規制や渋滞区間等の渋滞情報と、探索手段2gが探索した経路を併せて地図上の車両の位置を特定しディスプレイ7に表示する。
【0056】
カーナビゲーションECU2の実燃費測定手段2aは、ブレーキECU10から送信された車速V(km/h)を検出し、エンジンECU9から送信された燃料噴射量F(l/s)を検出して、以下の数1の式を用いて、車速Vを燃料噴射量Fで除してさらに3.6により除すことにより、実燃費R(km/l)を測定し求める。
【0057】
【数1】

カーナビゲーションECU2の走行条件検出手段2bは、実燃費測定手段2aの測定時刻に同期させて、エンジンECU9から送信されるスロットル開度、バルブリフト量、バルブタイミング、エンジン回転数、バッテリ容量、ブレーキECU10から送信される車速V、探索手段2gが検出した高度、受信機5が受信した渋滞情報、天候情報、CAN上から適宜取得できるエアコンの使用状況、予めタッチパネルにより入力する乗車人員、荷物等の重量、タイヤの空気圧を含む実燃費測定時の走行条件を検出する。
【0058】
カーナビゲーションECU2の推定燃費計算手段2cは、データベース6内に格納された所定の予測モデルを含む推定プログラムを読み出してシミュレーションを行い、走行条件検出手段2bが検出した実燃費測定時の走行条件を入力パラメータとした所定の予測モデルの出力を推定燃費Sとして計算する。
【0059】
さらに、カーナビゲーションECU2の偏差演算手段2dは、実燃費Rと推定燃費Sの偏差D=S−Rを演算する。
【0060】
加えて、カーナビゲーションECU2の判定手段2eは、偏差Dに基づいて車両における車両状態の不具合の発生の有無を判定する。より具体的には、判定手段2eは偏差Dが設計公差Dpより大きい状態が予め定められた所定期間Pにおいて継続する場合に、不具合が発生していると判定する。なお、所定期間Pは判定にあたって偏差Dの傾向を評価するにあたり必要十分な時間として予め定められるものである。
【0061】
具体的な判定内容について図2を用いて説明する。図2は本実施例1の不具合診断装置1において推定燃費Sを破線で実燃費Rを実線で示すタイムチャートである。例えば、図2において、破線に示すような推定燃費Sに対して、実線で示すような実燃費Rが途中から乖離して偏差Dが設計公差Dpを上回る状態が継続する挙動を示す場合に、判定手段2eは不具合の発生が有りと判定する。
【0062】
さらに、カーナビゲーションECU2の報知手段2fは、判定手段2eの判定の結果に基づいた報知を行うものとし、具体的には、判定手段2eにより車両状態の不具合が発生していると判定された場合には、報知手段2fは不具合が発生した旨と偏差Dが設計公差Dpより大きくなり乖離が発生している状態が継続していることをディスプレイ7の表示とスピーカ8の音声により報知する。
【0063】
以上述べた本実施例1の不具合診断装置1の制御内容を、フローチャートと模式図を用いて説明する。図3は本実施例1の不具合診断装置1の制御内容を示すフローチャートである。図4は報知に基づいてユーザ又はディーラーが取り得る処置内容を示す模式図である。
【0064】
図3に示すフローチャートのスタート(START)条件としては、例えば「エンジン始動状態」とすることができ、所定時間毎に以下に述べるRETURNまでの処理を含む本ルーチンが繰り返し実行される。
【0065】
ステップS1において、カーナビゲーションECU2の実燃費測定手段2aはCAN上から燃料噴射量Fと車速Vを検出して、ステップS2において、実燃費測定手段2aは、上述した数1を用いて実燃費Rを測定する。
【0066】
ステップS3において、カーナビゲーションECU2の走行条件検出手段2bは、受信機5及びCAN上から上述した走行条件を、ステップS2の処理に同期させて検出し、ステップS4において、データベース6内の推定プログラムを読み出してシミュレーションを行い、実燃費走行時の走行条件を入力パラメータとして所定の予測モデルが出力した値を推定燃費Sとして計算する。
【0067】
ステップS5において、カーナビゲーションECU2の偏差演算手段2dは、実燃費Rと推定燃費Sの偏差D=S−Rを演算して、ステップS6にすすみ、STARTからステップS1に最初に移行してから所定期間Pが経過したか否かを判定し、肯定であればステップS7にすすみ、否定であればステップS1に再度戻る。すなわち、所定期間Pが経過するまでの間は、ステップS1からステップS5までの処理は繰り返し実行される。
【0068】
ステップS7において、カーナビゲーションECU2の判定手段2eは、所定期間P全般において偏差Dが設計公差Dpより大きい状態が継続しているか否かを判定し、肯定であればステップS8にすすみ、否定であればRETURNにすすむ。
【0069】
ステップS8において、カーナビゲーションECU2の判定手段2eは、車両状態に不具合が発生していることが有りと判定し、ステップS9にすすみ、ステップS9において、カーナビゲーションECU2の報知手段2fは、不具合が発生した旨と偏差Dが設計公差Dpより大きくなり乖離が発生している状態が継続していることを例えば、ディスプレイ7上において、図4右側に示すようなテキスト情報「燃費値がD悪化しています。実燃費Rで推定燃費Sです。」を表示し、同じ内容をスピーカ8の音声として発生することにより報知する。
【0070】
ステップS1からステップS9までの処理は所定の処理周期で繰り返し実行され、本発明に係る不具合診断方法のうち、実燃費測定ステップがステップS1及びステップS2で実行され、走行条件検出ステップがステップS3で実行され、推定燃費計算ステップがステップS4で実行され、判定ステップがステップS7及びステップS8で実行され、報知ステップがステップS9で実行される。
【0071】
本実施例1の不具合診断装置1及びそれにより実行される不具合診断方法によれば、以下のような作用効果を得ることができる。つまり、推定燃費Sは実燃費Rが測定されたときの走行条件に基づいて計算されたものとすることができ、推定燃費Sと実燃費Rの偏差Dは走行条件によっては発生しないものとして、偏差Dを車両の車両状態の不具合のみを反映するパラメータとすることができる。このため、本実施例1においては、偏差Dを用いての不具合発生の判定つまり不具合診断をより正確なものとすることができる。
【0072】
また、本実施例1においては、偏差Dを車両の車両状態の不具合のみを反映するパラメータとして、直接的なダイアグ情報ではない間接的なパラメータである偏差Dに基づいて、より正確に車両の車両状態の不具合の発生の有無を判定することができる。
【0073】
これにより、例えば、車両が各種車載機器の状態監視機能を有している場合においては、この状態監視機能のバックアップを行うことができる。また、偏差Dは直接的なダイアグ情報よりも時期的に早い段階で変化する特性を有しているので、不具合情報の先取りを行うことができる。あるいは、グレードの低い車両においては状態監視に必要なハード及びソフトを省略してコストダウンを図ることも可能とすることができる。
【0074】
また、本実施例1においては、車両の車両状態の不具合のみを反映するパラメータであって間接的なパラメータである偏差Dと予測モデルのスペックに基づいて容易に求められる設計公差Dpに基づいて、より正確かつより容易に車両の車両状態の不具合の発生の有無を判定することができる。
【0075】
この場合において、本実施例1においては、不具合発生の旨とともに偏差Dそのものもユーザに報知しているので、図4中吹出内に示すように、偏差Dつまり乖離量が比較的大きい場合にはガス欠のおそれがあることをユーザに気付かせ、例えば「明日遠出の用事があるので給油をしよう。」との意思を促すことができ、乖離量が比較的小さい場合には「修理の有無をユーザの都合に併せて選択させる。」ことを促すことができる。
【0076】
ユーザが修理を目的としてディーラーに車両を入庫させた場合には、ディーラーの作業員が偏差Dつまり乖離量を予め視認することによって、乖離量が大きければ例えばエンジン系統の故障であって、乖離量が小さければ吸気系統にゴミが詰まっている等の一応の目星を付け不具合発生箇所の予想を行うことができる。これにより、ダイアグツール等を使っての本格的な点検を行う前に、車両のいずれの箇所に不具合が生じているかの目星を作業員が付けることを可能とすることができる。
【0077】
本実施例1においては、不具合の発生の有無のみを判定することとしたが、不具合を故障、故障予兆、劣化の三種類の項目に分類して、これらの分類された項目において偏差の時系列変化がそれぞれ以下に述べる固有の特徴を有することを利用して、これらの分類された項目の発生の有無をそれぞれ判定して、判定内容に基づいた適切な報知を行うこととすることもできる。以下それについての実施例2について述べる。
【実施例2】
【0078】
本実施例2の不具合診断装置1は、判定内容及び表示内容以外の構成は実施例1に示したものと同様であるため、同一の符号を付して個々の説明は省略し、制御内容のみを説明する。
【0079】
まず、本実施例2の制御内容における技術思想となる一般的な偏差Dの挙動について図2を用いて説明する。図5は、本実施例2の不具合診断装置1における偏差Dの変化態様について示すタイムチャートである。図5中横軸は時刻(s)を縦軸は燃費(km/h)を示し、内側にシミュレーションと記載された左右方向に並列された二つの四角枠はそれぞれ実施例1で示した所定期間Pの始期Tsと終期Teを示す。
【0080】
図5中所定期間Pの始期Ts以前の時刻においては、推定燃費Sと実燃費Rとは一致している。なお、説明の便宜上図5中において実燃費Rと偏差Dの図市場の関係をわかりやすくするため、所定期間Pの始期Ts以降において破線で示す推定燃費Sは一定としている。このため、推定燃費Sを基準とし下方を正とした偏差Dは、例えば図5中の下段の実線で示す実燃費の実線R1については矢印線D1で示される。実線R2、R3についても偏差Dが破線の推定燃費Sを基準として下方に指向する矢印線で示されることは同様である。
【0081】
一般的に、故障が発生した場合には、実燃費Rは下段側の実線R1の挙動を示し、偏差Dは始点Tsから所定変化率ΔDh以上の傾きを有して偏差Dは急峻に増加することが継続し、推定燃費Sを基準とした第二所定値D2(正常・異常判定クライテリア)を上回って、さらに、第一所定値D1(故障判定クライテリア:D1>D2)以上となった後増加が完了し、完了した後は、第一所定値D1以上である状態が継続する。
【0082】
また、故障の一歩手前の故障予兆が発生している場合には、実燃費Rは中段側の実線R2の挙動を示し、偏差Dは始点Tsから所定変化率ΔDh以上の傾きを有して急峻に増加することが継続し、推定燃費Sを基準とした第二所定値D2(正常・異常判定クライテリア)以上となって、かつ、第一所定値D1(故障判定クライテリア)以上となることはない状態で増加の継続は完了し、完了した後は第二所定値D2以上である状態が継続する。
【0083】
さらに、故障も故障予兆も発生しないで劣化のみが発生している場合には、実燃費Rは上段側の実線R3の挙動を示し、偏差Dは始点Tsから所定変化率ΔDh以上の傾きを有して急峻に増加することはなく徐々に増加して、推定燃費Sを基準とした第二所定値D2(正常・異常判定クライテリア)は上回ることなく、設計公差Dpを上回る状態が継続する。
【0084】
本実施例2では偏差Dが、不具合が故障、故障予兆、劣化のいずれであるかにより、上述した特性を有して遷移することを利用して、偏差Dと第一所定値D1、第二所定値D2、設計公差Dpとの比較と、偏差Dの時間微分値である変化率ΔDと所定変化率ΔDthとの比較に基づいて、不具合が故障、故障予兆、劣化のいずれであるかを特定し、それに応じて報知内容を適宜変更することとしている。
【0085】
すなわち、本実施例2の不具合診断装置1においては、カーナビゲーションECU2の判定手段2eにより不具合が発生していると判定された場合に、カーナビゲーションECU2の報知手段2fは不具合が発生した旨を報知することは省略して、判定手段2eは、不具合が、故障、故障予兆、劣化がいずれであるかを特定する判定を行う。
【0086】
つまり、カーナビゲーションECU2の判定手段2eは、偏差Dの変化率ΔDと故障及び故障予兆に対応する所定変化率ΔDthとの比較を行い、偏差Dと故障に対応する第一所定値D1との比較を行うとともに、偏差Dと第一所定値D1より小さい故障予兆に対応する第二所定値D2との比較を行う。
【0087】
より具体的には、判定手段2eは、変化率ΔDが所定変化率ΔDth以上である状態が継続して完了した後、偏差Dが第一所定値D1以上である状態が継続する場合に故障が発生していると判定する。
【0088】
同様に、判定手段2eは、変化率ΔDが所定変化率ΔDth以上である状態が継続して完了した後、偏差Dが第二所定値D2以上であり第一所定値D1未満である状態が継続する場合に故障予兆が発生していると判定する。
【0089】
さらに判定手段2eは、変化率ΔDが所定変化率ΔDth未満である状態が継続した後偏差Dが第二所定値D2未満である状態が継続する場合に劣化が発生していると判定する。
【0090】
これらの判定に対応して報知内容をそれぞれ変化させる。つまり、判定手段2eにより故障が発生していると判定された場合には、報知手段2fは故障が発生した旨を報知し、判定手段2eにより故障予兆が発生していると判定された場合には、報知手段2fは故障予兆が発生している旨を報知し、判定手段2eにより劣化が発生していると判定された場合には、報知手段2fは劣化が発生している旨を報知する。
【0091】
以下に本実施例2の不具合診断装置1の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図6は本実施例1の不具合診断装置1の制御内容を示すフローチャートである。なお、図1に示したフローチャートと共通するステップについては同一の符号を付している。
【0092】
ステップS1において、カーナビゲーションECU2の実燃費測定手段2aはCAN上から燃料噴射量Fと車速Vを検出して、ステップS2において、実燃費測定手段2aは、上述した数1を用いて実燃費Rを測定する。
【0093】
ステップS3において、カーナビゲーションECU2の走行条件検出手段2bは、受信機5又は探索手段2g及びCAN上から上述した走行条件を、ステップS2の処理に同期させて検出し、ステップS4において、データベース6内の推定プログラムを読み出してシミュレーションを行い、実燃費走行時の走行条件を入力パラメータとして所定の予測モデルが出力した値を推定燃費Sとして計算する。
【0094】
ステップS5−1において、カーナビゲーションECU2の偏差演算手段2dは、実燃費Rと推定燃費Sの偏差D=S−Rを演算し、偏差Dを時間微分して変化率ΔDを演算して、ステップS6にすすみ、STARTからステップS1に最初に移行してから所定期間Pが経過したか否かを判定し、肯定であればステップS7にすすみ、否定であればステップS1に再度戻る。つまり、所定期間Pが経過するまでの間は、ステップS1からステップS5までの処理は繰り返し実行される。
【0095】
ステップS7において、カーナビゲーションECU2の判定手段2eは、所定期間P全般において偏差Dが設計公差Dpより大きい状態が継続しているか否かを判定し、肯定であればステップS8にすすみ、否定であればRETURNにすすむ。
【0096】
ステップS8において、カーナビゲーションECU2の判定手段2eは、車両状態に不具合が発生していることが有りと判定するが、実施例1とは異なり本実施例2ではステップS9は省略し、この段階では、カーナビゲーションECU2の報知手段2fは、不具合が発生した旨については報知せず、ステップS10にすすむ。
【0097】
ステップS10において、カーナビゲーションECU2の判定手段2eは、偏差Dの変化率ΔDが所定変化率ΔDth以上であることが継続し完了したか否かを判定し、肯定であればステップS11にすすみ、否定であればステップS17にすすむ。
【0098】
ステップS11において、カーナビゲーションECU2の判定手段2eは、偏差Dが第二所定値D2以上である状態が継続したか否かを判定し、肯定であればステップS12にすすみ、否定であればステップS17にすすむ。
【0099】
ステップS12において、カーナビゲーションECU2の判定手段2eは、偏差Dが第一所定値D1以上である状態が継続したか否かを判定し、肯定であればステップS13にすすみ、否定であればステップS15にすすむ。
【0100】
ステップS13において判定手段2eは故障の発生が有りと判定し、ステップ15において判定手段2eは故障予兆の発生が有りと判定し、ステップS17において判定手段2eは劣化の発生が有りと判定する。
【0101】
ステップS14において報知手段2fは故障発生有りで通常修理が必要な旨をディスプレイ7上において、テキスト情報により表示し、同じ内容をスピーカ8の音声として発生することにより報知する。
【0102】
ステップS16において報知手段2fは故障予兆発生有りで不定期メンテナンスが必要な旨をディスプレイ7上において、テキスト情報により表示し、同じ内容をスピーカ8の音声として発生することにより報知する。
【0103】
ステップS18において報知手段2fは劣化発生有りで定期メンテナンスを推奨する旨をディスプレイ7上において、テキスト情報により表示し、同じ内容をスピーカ8の音声として発生することにより報知する。
【0104】
ステップS1からステップS18までの処理は所定の処理周期で繰り返し実行され、本発明に係る不具合診断方法のうち、実燃費測定ステップがステップS1及びステップS2で実行され、走行条件検出ステップがステップS3で実行され、推定燃費計算ステップがステップS4及びステップS5−1で実行され、判定ステップがステップS7からステップS13、ステップS15、ステップS17で実行され、報知ステップがステップS14、ステップS16、ステップS18で実行される。
【0105】
以上述べた制御により実現される本実施例2の不具合診断装置1及び併せて実行される不具合診断方法によれば以下のような有利な作用効果を得ることができる。すなわち、実施例1と同様に、推定燃費Sを実燃費Rが測定されたときの走行条件に基づいて計算されたものとすることができ、推定燃費Sと実燃費Rの偏差Dは走行条件を原因としては発生しないものとして、偏差Dを車両の車両状態の不具合のみを反映するパラメータとすることができる。
【0106】
本実施例2においては、上述した偏差Dと三つの閾値、偏差Dの変化率ΔDと所定変化率ΔDthを用いての判定とにより、不具合発生の有無の判定と不具合が故障、故障予兆、劣化のいずれであるかの特定の判定を行っているため、実施例1よりもよりきめの細かい判定をより正確に行うことができる。これにより、ユーザ及びディーラーの作業員の双方にとって予め不具合箇所の目星をより付けやすくすることができる。
【0107】
なお、故障、故障予兆、劣化について本実施例2が適用される対象が吸気系統であれば、例えば、図7に示すように、ステップS13により判定される故障はエアフロメータ断線、ステップS15により判定される故障予兆はエアフロメータの特性変化、ステップS17により判定される劣化はエアクリーナのゴミ蓄積増大等である。もちろん、適用対象は吸気系統に限らず、図7に示すように、エアコン系統、スロットル系統、点火系統、バッテリ系統としてもよい。
【0108】
適用対象がエアコン系統であれば、ステップS13により判定される故障はエバポレータ温度センサ断線、ステップS15により判定される故障予兆はエバポレータ温度センサ抵抗値異常、ステップS17により判定される劣化はエバポレータ温度センサへのゴミ付着等である。
【0109】
また、適用対象がスロットル系統であれば、ステップS13により判定される故障はアクセルセンサ断線、ステップS15により判定される故障予兆はスロットル・アクセルセンサの抵抗配線の特性変化、ステップS17により判定される劣化はスロットル・アクセルセンサへのゴミ付着等である。
【0110】
同様に、適用対象が点火系統であれば、ステップS13により判定される故障は点火配線断線、ステップS15により判定される故障予兆は点火プラグ接点へのスス付着、ステップS17により判定される劣化は点火プラグへのゴミ付着等である。
【0111】
さらに、適用対象が点火系統であれば、ステップS13により判定される故障はオルタネータ故障、バッテリ故障、ステップS15により判定される故障予兆はバッテリセル故障、ステップS17により判定される劣化はバッテリの経年劣化等である。
【0112】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0113】
例えば、上述した実施例においては本発明の不具合診断装置のそれぞれの手段をカーナビゲーションECU2により実現しているが、その他のECUにより実現してもよい。また、走行条件として検出するパラメータは上述した実施例に示した組合せに限られず、適宜選択し直すこと、適宜パラメータを追加すること、適宜パラメータを削除することが可能である。
【0114】
また、実燃費Rの測定手法についても上述した実施例に示したものに限られず、他のパラメータを取得した上で測定することも可能である。例えば、車速VについてはブレーキECU10から取得することに限られず、他のECUから取得することも可能である。
【0115】
さらに、実施例2においては不具合判定を行った直後の不具合判定に関する報知を行っていないが、これについても必要であれば実行してもよい。
【0116】
また、タイヤ空気圧についてはTPMS(Tire Pressure Measurement System)を利用して常時検出してもよいし、乗車人員、荷物等の重量についても荷重センサを使用して常時検出する構成として、タッチパネルによる事前入力を省略してもよい。
【0117】
さらに推定燃費計算のシミュレーションに用いる推定用プログラムについては、上述した実施例のようにデータベース6内に格納する形態ではなく、路側又は地上側のセンタのサーバ内に格納し、サーバに推定燃費計算手段を含ませて、サーバとカーナビゲーションECU2とが、通信装置、基地局、ネットワークにより相互に無線通信を行う形態としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、間接的なパラメータである燃費に基づいてより正確な不具合診断を実現することができる不具合診断装置、不具合診断方法及びプログラムに関するものであり、より正確な不具合診断結果をユーザに提示して、適宜の対応をユーザに促す効果を高め、安全運転を促進することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【符号の説明】
【0119】
1 不具合診断装置
2 カーナビゲーションECU
2a 実燃費測定手段
2b 走行条件検出手段
2c 推定燃費計算手段
2d 偏差演算手段
2e 判定手段
2f 報知手段
2g 探索手段
2h 表示手段
3 GPSアンテナ
4 ヨーレートセンサ
5 受信機
6 データベース
7 ディスプレイ
8 スピーカ
9 エンジンECU
10 ブレーキECU
11 EPSECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の実燃費の測定を行う実燃費測定手段と、前記車両の前記測定時の走行条件を検出する走行条件検出手段と、前記走行条件と所定の予測モデルに基づいて前記車両の前記測定時の推定燃費を計算する推定燃費計算手段と、前記実燃費と前記推定燃費の偏差を演算する偏差演算手段を含む、ことを特徴とする不具合診断装置。
【請求項2】
前記偏差に基づいて前記車両における車両状態の不具合の発生の有無を判定する判定手段を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の不具合診断装置。
【請求項3】
前記判定手段は前記偏差が設計公差より大きい場合に前記不具合が発生していると判定することを特徴とする請求項2に記載の不具合診断装置。
【請求項4】
前記判定手段の判定の結果に基づいた報知を行う報知手段を含むことを特徴とする請求項3に記載の不具合診断装置。
【請求項5】
前記判定手段により前記不具合が発生していると判定された場合には、前記報知手段は前記不具合が発生した旨を報知することを特徴とする請求項4に記載の不具合診断装置。
【請求項6】
前記不具合は、故障、故障予兆、劣化を含むことを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載の不具合診断装置。
【請求項7】
前記判定手段は前記偏差の変化率と前記故障及び前記故障予兆に対応する所定変化率との比較を行うとともに、前記偏差と前記故障に対応する第一所定値との比較を行うことを特徴とする請求項6に記載の不具合診断装置。
【請求項8】
前記判定手段は前記偏差と前記第一所定値より小さい前記故障予兆に対応する第二所定値との比較を行うことを特徴とする請求項7に記載の不具合診断装置。
【請求項9】
前記判定手段は前記変化率が前記所定変化率以上である状態が継続した後前記偏差が前記第一所定値以上である状態が継続する場合に前記故障が発生していると判定することを特徴とする請求項8に記載の不具合診断装置。
【請求項10】
前記判定手段は前記変化率が前記所定変化率以上である状態が継続した後前記偏差が前記第二所定値以上であり前記第一所定値未満である状態が継続する場合に前記故障予兆が発生していると判定することを特徴とする請求項9に記載の不具合診断装置。
【請求項11】
前記判定手段は前記変化率が前記所定変化率未満である状態が継続した後前記偏差が前記第二所定値未満である状態が継続する場合に前記劣化が発生していると判定することを特徴とする請求項10に記載の不具合診断装置。
【請求項12】
前記判定手段により前記故障が発生していると判定された場合には、前記報知手段は前記故障が発生した旨を報知することを特徴とする請求項11に記載の不具合診断装置。
【請求項13】
前記判定手段により前記故障予兆が発生していると判定された場合には、前記報知手段は前記故障予兆が発生した旨を報知することを特徴とする請求項12に記載の不具合診断装置。
【請求項14】
前記判定手段により前記劣化が発生していると判定された場合には、前記報知手段は前記劣化が発生した旨を報知することを特徴とする請求項13に記載の不具合診断装置。
【請求項15】
車両の実燃費の測定を行う実燃費測定ステップと、前記車両の前記測定時の走行条件を検出する走行条件検出ステップと、前記走行条件と所定の予測モデルに基づいて前記車両の前記測定時の推定燃費を計算する推定燃費計算ステップと、前記実燃費と前記推定燃費の偏差を演算する偏差演算ステップを含む、ことを特徴とする不具合診断方法。
【請求項16】
請求項15に記載の不具合診断方法をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−141161(P2011−141161A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1271(P2010−1271)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】