説明

不凍水栓

【課題】開閉操作について、よりスムースな操作性を実現できる不凍水栓を提供すること。
【解決手段】通水管の管路に接続される弁機構部本体10と、その弁機構部本体10に一体的に設けられ、下側給水路11と上側給水路12とを連通する通水孔22を備える弁座部21と、その弁座部21のシール部に下方から当接することで通水孔22を閉塞して止水することができる弁体部25と、その弁体部25が下端部に設けられ、ロッド状に形成されて上端部に操作部50が連係され、下降した際に弁体部25による通水孔22の閉塞を解除することで通水状態とするロッド部30と、そのロッド部30及び弁体部25と、弁機構部本体10に一体的に設けられたスプリング受部35aとの間に配され、ロッド部30及び弁体部25を上方へ付勢するスプリング33とを備え、弁体部25が主弁体26とコマ弁体27とを備え、通水溝32及びスプリングガイド35を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管等の地中に埋設された給水源の通水管に接続されて給水路を開閉し、止水時には水抜きを行うことで凍結を防止する不凍水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、不凍水栓に関する給水路の開閉操作は、操作部によるネジ込み操作(ネジの回転操作)によってスピンドルを進退動させ、そのスピンドルに連係された弁体によって給水路を開閉するものであった。
また、一般的な不凍水栓においては、弁体が、上面にシール部を有する通水孔の弁座に上方から当接することで給水路を閉塞する構造になっている(特許文献1参照)。
【0003】
これに対して、通水孔を弁体によって給水路の上流側から塞ぐ形態の不凍水栓(バルブ装置)が、本件特許出願人によって提案されている(特許文献2参照)。なお、このバルブ装置においても、その開閉操作は、操作部によるネジの回転操作によってなされるものであって、ワンタッチ或いは自動的にできるものではない。
【0004】
これに対しては、本出願人によって、押圧動作でより簡単に開閉する手段を備えた不凍水栓が開示されている(特許文献3参照)。この不凍水栓によれば、水道管等の地中に埋設された給水源の通水管に接続されて給水路を開閉し、止水時には水抜きを行うことで凍結を防止する不凍水栓であって、前記通水管の管路に接続される下側給水路を備え、該下側給水路の上側に設けられる上側給水路の基部となる弁機構部本体と、該弁機構部本体に一体的に設けられ、前記下側給水路と前記上側給水路とを連通する通水孔、及び該通水孔の下面側にシール部を備える弁座部と、該弁座部のシール部に下方から当接することで前記通水孔を閉塞して止水することができる弁体部と、該弁体部が下端部に設けられ、上下方向に延びるロッド状に形成されて軸方向に昇降可能に配されると共に上端部に操作部が連係され、下降された際に前記弁体部による前記通水孔の閉塞を解除することで通水状態とするロッド部と、該ロッド部及び前記弁体部と、前記弁機構部本体に一体的に設けられたスプリング受部との間に配され、前記ロッド部及び前記弁体部を上方へ付勢するスプリングとを具備する。これによれば、不凍水栓の開閉操作をワンタッチの押圧動作で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−327249号公報(要約、第1図)
【特許文献2】特開平10−259882号公報(要約、第1図、第8図)
【特許文献3】特開2010−126935号公報(請求項1、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不凍水栓に関して解決しようとする課題は、従来の不凍水栓に対しては本出願人によって押圧動作でより簡単に開閉する基本的な手段が提案されているが、これをさらに改良してよりスムースな操作性を実現できるものを提供することにある。
そこで、本発明の目的は、開閉操作について、よりスムースな操作性を実現できる不凍水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかる不凍水栓の一形態によれば、水道管等の地中に埋設された給水源の通水管に接続されて給水路を開閉し、止水時には水抜きを行うことで凍結を防止する不凍水栓であって、前記通水管の管路に接続される下側給水路を備え、該下側給水路の上側に設けられる上側給水路の基部となる弁機構部本体と、該弁機構部本体に一体的に設けられ、前記下側給水路と前記上側給水路とを連通する通水孔、及び該通水孔を形成する部位の下面側にシール部を備える弁座部と、該弁座部のシール部に下方から当接することで前記通水孔を閉塞して止水することができる弁体部と、該弁体部が下端部に設けられ、上下方向に延びるロッド状に形成されて軸方向に昇降可能に配されると共に上端部に操作部が連係され、下降された際に前記弁体部による前記通水孔の閉塞を解除することで通水状態とするロッド部と、該ロッド部及び前記弁体部と、前記弁機構部本体に一体的に設けられたスプリング受部との間に配され、前記ロッド部及び前記弁体部を上方へ付勢するスプリングとを備え、前記弁体部が、前記ロッド部の下端側に固定された主弁体と、該主弁体と前記ロッド部に設けられたストッパ部との所定の変位範囲で、該ロッド部に上下動可能に嵌められ、前記主弁体が前記ロッド部と共に押し上げられた際には、該主弁体と前記弁座部のシール部との間に挟まれて前記弁座部の通水孔を閉じるコマ弁体とを備え、該コマ弁体が前記ストッパ部によって前記シール部から押し下げられる前であって前記主弁体が下降して前記コマ弁体から離れた際に、前記通水孔の一部を開くように前記ロッド部と前記コマ弁体との嵌め合い部分の少なくともどちらかに設けられた通水溝を備え、前記主弁体及び前記コマ弁体の両方が、前記弁機構部本体の前記下側給水路側に筒状に設けられると共に前記スプリングのスプリング受部となる底部を備えるスプリングガイドの筒内で上下動可能に案内されている。
【0008】
また、本発明にかかる不凍水栓の一形態によれば、前記弁機構部本体と一体的に設けられて前記上側給水路の基部を形成する周壁に、外部に連通するように設けられると共に、該周壁の内部における排水孔の開口が上方に開いている排水孔と、前記ロッド部に所定の範囲で上下動可能に嵌められ、前記排水孔の開口に上方から当接して前記排水孔を塞ぐ排水孔用弁体と、該排水孔用弁体と前記ロッド部に設けられた受け部との間に配されて前記排水孔用弁体を押し下げるように付勢する押し下げスプリングと、前記排水孔用弁体と前記ロッド部に設けられたストッパ部との間に配されて前記排水孔用弁体を押し上げるように付勢する押し上げスプリングとを備えることを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明にかかる不凍水栓の一形態によれば、前記排水孔用弁体が上方から当接される被当接面であって一部に前記排水孔の開口が設けられた受け面が、前記ロッド部の軸心と同心の円上について断続的に設けられていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明にかかる不凍水栓の一形態によれば、前記排水孔には、前記上側給水路を形成する周壁の内部から外部への排水を許容するが、外部から内部への進入を阻止する逆止用の球体が配され、該球体は逆止用のスプリングによって外部から内部へ向かって付勢されていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明にかかる不凍水栓の一形態によれば、前記操作部が、前記ロッド部の上方に配されて該ロッド部を介して前記弁体部を押し下げることができるように下降可能に設けられた押しボタンと、該押しボタンを押し下げている状態を保持する保持構造と、該押しボタンを押し下げていない初期位置へ復帰させる復帰構造とを有する押しボタン機構を備えることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる不凍水栓の一形態によれば、前記押しボタン機構が、スラストロック機構によって構成されていることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明にかかる不凍水栓の一形態によれば、前記押しボタン機構が、前記押しボタンを押していない初期位置で該押しボタンが押されないように阻止する押しボタンのロック機構を備えることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明にかかる不凍水栓の一形態によれば、前記上側給水路を形成する周壁に、排水の際に空気が内部へ進入することを許容するように開口でき、該上側給水路内に通水している際には閉塞する吸気弁が設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる不凍水栓によれば、開閉操作について、よりスムースな操作性を実現できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る不凍水栓の形態例の通水状態を示す断面図である。
【図2】図1の形態例の通水操作の完了状態を説明する弁機構部の断面図である。
【図3】図1の形態例の止水/水抜き状態を示す断面図である。
【図4】図1の形態例の止水/水抜き状態を説明する弁機構部の断面図である。
【図5】図1の形態例の通水操作の経過を説明する弁機構部の断面図である。
【図6】図1の形態例の通水の開始状態を説明する弁機構部の断面図である。
【図7】弁座を構成する弁箱の形態例を示す斜視断面図である。
【図8】図7の形態例の弁箱の形態例を示す平面図である。
【図9】排水孔用弁体の形態例を示す斜視図である。
【図10】ロッド下端部の形態例を示す断面図である。
【図11】スプリングガイドの形態例を示す斜視図である。
【図12】スラストロック機構の構成を示す斜視図である。
【図13】押しボタンロック機構を示す一部断面を含む斜視図である。
【図14】キャップ部の形態例を示す斜視図である。
【図15】押しボタンの形態例を示す底面から見た斜視図である。
【図16】通水状態における押しボタンの作動状態を示す斜視図である。
【図17】押しボタンのロック状態を示す斜視図である。
【図18】本発明に係る不凍水栓の設置場所の形態例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明にかかる不凍水栓の形態例を添付図面と共に詳細に説明する。
図1は本発明にかかる不凍水栓の形態例についてその通水状態(通水操作をした状態)を示す縦断面図であり、図2はその弁機構部の詳細を示す断面図である。また、図3は図1の形態例の水抜き状態を示す縦断面図及び吸気弁の詳細を示す断面図であり、図4はその弁機構部の詳細を示す断面図である。
この不凍水栓は、水道管等の地中に埋設された給水源の通水管に接続されて給水路を開閉し、止水時には水抜きを行うことで凍結を防止するものである。
【0017】
10は弁機構部本体であり、通水管(例えば水道管111(図18参照))の管路に接続される下側給水路11を備え、その下側給水路11の上側に設けられる上側給水路12の基部になっている。
本形態例の弁機構部本体10は、接続本体13、弁箱14、ガイドブッシュ15が下からその順に接続されてOリングパッキン16、17によって水密状態に一体的に設けられた形態になっている。この弁機構部本体10の下端部が、通水管に接続される接続ネジ部18になっている。また、弁機構部本体10の上端部が、上側給水路12の延長部である立上り管20の管路に接続される接続ネジ部19になっている。101は外筒であり、その内部に立上り管20が支持されている。
【0018】
21は弁座部であり、弁機構部本体10に一体的に設けられ、下側給水路11と上側給水路12とを連通する通水孔22、及びその通水孔22を形成する部位の下面側(通水孔22の下側)にシール部23を備える。
本形態例の弁座部21は、弁箱14の内周部に形成されている(図7及び図8参照)。図7は弁箱14の斜視断面図であり、図8は弁箱14の平面図である。
【0019】
25は弁体部であり、弁座部21のシール部23に下方から当接することで通水孔22を閉塞して止水することができるように設けられている。このように弁体部25が、給水路の上流側である下方から弁座部21に当接する形態であることで、水圧と後述するスプリング33の作用によって通水孔22を確実且つ適切に閉じることができる。
本形態例の弁体部25は、後述するように、主弁体26と、コマ弁体27とによって通水孔22を二段階に開閉する構造になっている。このように二段階の動作によって通水孔22を開く構成によって、小さな力でスムースに操作することができる。
【0020】
30はロッド部であり、弁体部25が下端部に設けられ、上下方向に延びるロッド状に形成されて軸方向に昇降可能に配されると共に上端部に操作部50が連係され、下降された際に弁体部25による通水孔22の閉塞を解除することで通水状態とすることができる。
なお、本形態例のロッド部30は、ロッド下端部30a、ロッド主部30b、ロッド上端部30cがその順に下から直列に配された形態によって構成されている。
【0021】
そして、本形態例の弁体部25は、ロッド部30の下端側に固定された主弁体26と、その主弁体26とロッド部30(ロッド下端部30aの中途部)に設けられたストッパ部31との所定の変位範囲で、そのロッド部30に上下動可能に嵌められ、主弁体26がロッド部30と共に押し上げられた際には、その主弁体26と弁座部21のシール部23との間に挟まれて弁座部21の通水孔22を閉じるコマ弁体27とによって構成されている。また、主弁体26は、弁基部26aと板パッキン26bとによって構成され、ロッド部30の先端にネジ止めされて固定されている(図2等参照)。コマ弁体27は、コマ27aとコマパッキン27bとによって構成されて、中心に設けられた貫通孔27cにロッド下端部30aが挿通されて嵌っている(図2等参照)。
【0022】
32は通水溝であり、コマ弁体27がストッパ部31によってシール部23から押し下げられる前であって主弁体26が下降してコマ弁体27から離れた際に、通水孔22の一部を開くようにロッド部30とコマ弁体27との嵌め合い部分の少なくともどちらかに設けられている。
この通水溝32と弁体部25とによって、通水孔22が、徐々に開閉される弁機構となっている。このため、通水孔22をスムースに開くことができると共に、閉じる際にはウォーターハンマー現象の発生を防止できる。
本形態例の通水溝32は、図6等に示すように、ロッド部30のロッド下端部30aに設けられている。また、本形態例の通水溝32は、図10に示すように複数本(3本)が筋状に設けられている。図10(a)はロッド下端部30aの断面図であり、図10(b)は図10(a)のA−A断面図である。通水溝32の形態は、これに限定されず、例えばコマ弁体27の内周面に形成されていてもよく、実質的に溝状で通水できる形状であればよい。
【0023】
33はスプリングであり、ロッド部30及び弁体部25と、弁機構部本体10に一体的に設けられたスプリング受部35aとの間に配され、ロッド部30及び弁体部25を上方へ付勢している。
本形態例では、スプリングガイド35(図11参照)が、弁機構部本体10の中間部を構成する弁箱14(図7等参照)の下端側に螺合されることで、スプリング受部35aが設けられている。図11はスプリングガイド35の斜視図である。なお、スプリング33は、スプリングガイド35の筒状のポケット内部35bに配されることで、その伸縮動作が好適に案内される。35cは切り欠き部であり、弁箱14と螺合する部分に断続的に四箇所が設けられ、通水孔22へ下側給水路11が連通するように通水路となっている。
【0024】
また、主弁体26及びコマ弁体27の両方が、弁機構部本体10の下側給水路11側に筒状に設けられると共にスプリング33のスプリング受部35aとなる底部を備えるスプリングガイド35の筒内で上下動可能に案内されている。本形態例では、主弁体26とコマ弁体27はほぼ同一の直径に形成されており、ポケット内部35bの同一の内径の部分で上下方向へ摺動するように設けられている。
これによれば、主弁体26及びコマ弁体27の両方が、スプリングガイド35の筒内面によって好適に案内されるため、横振れが抑制されてスムースに上下動できる。このため、操作性が向上する。さらに、主弁体26が下降してコマ弁体27から離れた際に、コマ弁体27が受ける上方向の水圧は、コマ弁体27がスプリングガイド35の筒内にあり、スプリングガイド35の筒内の水圧が通水溝32を介し、上側給水路12側に開放されるため小さくなる。これにより、コマ弁体27を小さい力で押圧することが可能になり、操作性を向上できる。
【0025】
37は排水孔であり、弁機構部本体10と一体的に設けられて上側給水路12の基部を形成する周壁12aに、外部に連通するように設けられると共に、その周壁12aの内部における排水孔の開口37aが上方に開いている。
本形態例の排水孔37は、弁機構部本体10の中間部を構成する弁箱14に設けられている(図7及び図8等参照)。
【0026】
38は排水孔用弁体であり、ロッド部30に所定の範囲で上下動可能に嵌められ、排水孔の開口37aに上方から当接して排水孔37を塞ぐことができるように設けられている。
本形態例の排水孔用弁体38は、弁基部38aにリング状のパッキン38bが固着され、円形の中心部にロッド部30(ロッド下端部30a)が挿通される孔38cが設けられ、半径の中間部に水を通す一対の孔38dが設けられている(図9参照)。図9は排水孔用弁体38の斜視図である。
【0027】
39は押し下げスプリングであり、排水孔用弁体38とロッド部30に設けられた受け部40との間に配されて排水孔用弁体38を押し下げるように付勢している。
なお、本形態例の受け部40は、ロッド下端部30aに外嵌されたE型止め輪によって構成されているが、これに限定されず、例えばロッド下端部30aと一体的に形成されていてもよい。
【0028】
41は押し上げスプリングであり、排水孔用弁体38とロッド部30に設けられたストッパ部31との間に配されて排水孔用弁体38を押し上げるように付勢している。
この押し上げスプリング41によれば、押し下げスプリング39との間で、排水孔用弁体38をバランスよく好適に保持できる。これにより、排水孔用弁体38の上下動に関する動作をより無理なくスムースに行うことでき、操作性を向上できる。
【0029】
また、排水孔37には、上側給水路12を形成する周壁12aの内部から外部への排水を許容するが、外部から内部への進入を阻止する逆止用の球体42が配され、その球体42は逆止用のスプリング43によって外部から内部へ向かって付勢されている(図4等参照)。この逆止用のスプリング43の付勢力によって、逆流を確実に防止できる。
また、外筒101の内部に排水口37bが設けられ、外筒101の下端103から排水が地中へ排出されるように構成されている。これによれば、水抜きの際の排水をスムースに流すことができると共に、逆流して土や砂が流入することを好適に防止できる。
【0030】
さらに、排水孔用弁体38が上方から当接される被当接面であって一部に排水孔の開口37aが設けられた受け面44が、ロッド部30の軸心と同心の円上について断続的に設けられている(図7及び図8参照)。
これによれば、排水孔用弁体38が、受け面44に当接する荷重が集中することになり、排水孔の開口37aを確実且つ適切に閉塞できる。また、排水孔用弁体38が、受け面44から離れて排水孔の開口37aを開く際には、その受け面44に過度に密着することを防止してスムースに作動できる。
【0031】
次に、ロッド部30の上端部に連係される操作部50について説明する。
本形態例の操作部50は、ロッド部30の上方に配されてそのロッド部30を介して弁体部25を押し下げることができるように下降可能に設けられた押しボタン60と、その押しボタン60を押し下げている状態を保持する保持構造と、その押しボタン60を押し下げていない初期位置へ復帰させる復帰構造とを有する押しボタン機構59を備える。
これによれば、不凍水栓の開閉操作を、ワンタッチの押圧動作で好適に行うことができる。
【0032】
本形態例の押しボタン機構59には、スラストロック機構62が採用されている。図12はスラストロック機構62を構成する部品(カムユニットの部分)の形態例を示す斜視図である。62aは上部カムリング、62bは中間回動カムリング、62cは下部固定カムリングである。このスラストロック機構62は、図12に示した構成に加えて、押しボタン60、スプリング33、ロッド上端部30cを含むロッド部30や立上り管20などを備えることで構成されている。これによれば、押しボタン60の一回の押圧動作によって、ロッド部30を介して弁体部25を押し下げることができ、押しボタン60の次の一回の押圧動作によって初期位置へ復帰させることができる。このスラストロック機構62は、簡易な構成でありながら、確実に作動でき、製造コストを低減できると共に信頼性を向上できる。
【0033】
また、図13〜17に示すように、本形態例の押しボタン機構59では、押しボタン60を押していない初期位置でその押しボタン60が押されないように阻止する押しボタンのロック機構70を備えている。
図13、16、17は、操作部50が設けられている不凍水栓の上部外観を示す一部を切り欠いた状態の斜視図である。また、図14は不凍水栓の上部に装着されるキャップ71の斜視図であり、図15は押しボタン60の形態例を示す底面から見た斜視図である。
【0034】
本形態例のキャップ71には、上端外周の立上げ縁72に押しボタンのロック機構70の構成要素であるスリット部73及び被係合凹部74が設けられている。
また、本形態例の押しボタン60は、ロッド部30の上端部30cにスラストロック機構を介して上方から当接し、そのロッド部30を介して弁体部25を押し下げることができるように昇降可能に設けられている。そして、この押しボタン60の内側には、キャップ71のスリット部73に位置する際には押しボタン60の下降を許容し、キャップ71の被係合凹部74に位置する際には押しボタン60の下降を阻止するように、内方で且つ下方へ突起されて形成された係合片部61が設けられている。
【0035】
これによれば、図13に示すように押しボタン60が押されていないでスプリング33の付勢力によって上方に位置している状態では、この不凍水栓は水抜き状態になっている。
この図13の状態から図16に示すように、スリット部73に沿って係合片部61が下降して入り込むように、押しボタン60が押されることで、この不凍水栓は通水状態になる。この状態は、本形態例の場合においてはスラストロック機構のロック機能によって保持される。さらにもう一度、押しボタン60が押されることで、スラストロック機構のロック状態が解除され、図13の状態に戻ることができる。
そして、図17に示すように、図13の状態から押しボタン60を回動することで、キャップ71の被係合凹部74に押しボタン60の係合片部61が係合して、押しボタン60の押圧操作を阻止する状態にすることできる。これにより、不注意や不測事態によって不凍水栓が通水状態になってしまうことを好適に回避できる。
なお、65はカランの連結部であり、カランに接続して水を吐出できるように形成されている。
【0036】
95は吸気弁であり、上側給水路12を形成する上部周壁12bに、排水の際に空気が内部へ進入することを許容するように開口でき、その上側給水路12内に通水している際には閉塞するように設けられている。
本形態例の吸気弁95は、図3の詳細図に示すように、吸気孔96と、その吸気孔96を開閉するフロート弁97と、そのフロート弁97が圧接する弁座部98と、フロート弁97のシール部として配されたOリングパッキン97aと、フロート弁97を閉じる方向に付勢するスプリング99と、そのスプリング99の受け部98aとを構成要素とする。
【0037】
このフロート弁97は、内側から弁座部98にOリングパッキン97aを介して当接して水密シールするように形成されている。また、このフロート弁97は、内側へ延びる軸部97bを有する断面略T字状に形成され、その軸部97bが受け部98aに設けられた案内孔98bに貫通状態に嵌まっており、フロート弁97の開閉動作がスムースに行われるように案内されている。
これによれば、水抜きがされる際であって、立上り管20等によって構成される上側給水路12内が減圧されたときに、図3の詳細図に示すようにフロート弁97が内側へ変位し、点線の矢印で示すように外気が内部へ吸気される。これによって、上側給水路12内の水をスムースに排水することができる。
【0038】
次に、以上の構成を備える不凍水栓の操作及び動作について説明する。
先ず、弁機構部の動作について、図1〜図6に基づいて説明する。
図4は、止水して水抜きがなされている状態を示す弁機構部の断面図であり、水の流れを矢印で示してある。(図3はそのときの全体の縦断面図である。)そして、水抜きが完了すると、各弁(弁体部25の主弁体26とコマ弁体27、及び排水孔用弁体38)の作用状態が維持されて通常の止水状態となる。これは、水圧とスプリング33との作用によって、弁体部25が上方へ押圧されて通水孔22を確実に閉塞できるためである。
【0039】
次に、押しボタン60を押すことにより、ワンタッチで通水状態にする操作について説明する。図5、6は通水操作の経過を説明する弁機構部の断面詳細図である。また、図2は通水操作の完了状態を説明する弁機構部の断面詳細図である。(図1はそのときの全体の縦断面図である。)
先ず、押しボタン60を手動によって少し押すと、図5に示すように押し下げスプリング39によって押されて排水孔用弁体38が排水孔の開口37aを塞ぐ。また、主弁体26が、コマ弁体27から離れて下降する。
【0040】
さらに押しボタン60を押すことによって、図6の断面詳細図に示すようにロッド下端部30aの通水溝32を通って水が流れ始める。このとき、通水孔22が小さく開口して少量の水が流れるだけであり、抵抗となる水圧は小さく、押しボタン60を押す力は小さくてよい。なお、コマ弁体27は、未だ水圧に押されて弁座部21のシール部23に張り付いているが、コマ弁体27が受ける上方向の水圧は、コマ弁体27がスプリングガイド35の筒内にあり、スプリングガイド35の筒内の水圧が通水溝32を介し、上側給水路12側に開放されるため小さくなる。
このように上側給水路12側へ水が流れることで、通水孔22を境にしての下側給水路11と上側給水路12との圧力差が縮まっていく。このため、次のコマ弁体27を押す力も小さくて済むことになり、押しボタン60による操作を軽い押圧力で適切に行うことができる。
【0041】
次に、本発明の一形態である不凍水栓柱100の施工例を、図18に基づいて説明する。
不凍水栓柱100は、水道の本管110に接続された通水管である水道管111に、止水栓112、量水器113、逆止弁114を介して、弁機構部を備える弁機構部本体10の下端部で接続されている。
その弁機構部本体10は、地表面115から地中の凍結しない深さに埋設されており、以上に説明したように水抜き操作が、押しボタン60を押すワンタッチの操作によって簡単になされる。このため、凍結を適切に防止でき、寒冷期にあっても凍結を心配することなく、水道水を利用することができる。
【0042】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明は以上の形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0043】
10 弁機構部本体
11 下側給水路
12 上側給水路
12a 周壁
20 立上り管
21 弁座部
22 通水孔
23 シール部
25 弁体部
26 主弁体
27 コマ弁体
30 ロッド部
31 ストッパ部
32 通水溝
33 スプリング
35a スプリング受部
37 排水孔
37a 排水孔の開口
38 排水孔用弁体
38e 被当接部
39 押し下げスプリング
40 受け部
41 押し上げスプリング
42 逆止用の球体
43 逆止用のスプリング
44 受け面
50 操作部
59 押しボタン機構
60 押しボタン
62 スラストロック機構
65 カランの連結部
70 押しボタンのロック機構
95 吸気弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管等の地中に埋設された給水源の通水管に接続されて給水路を開閉し、止水時には水抜きを行うことで凍結を防止する不凍水栓であって、
前記通水管の管路に接続される下側給水路を備え、該下側給水路の上側に設けられる上側給水路の基部となる弁機構部本体と、
該弁機構部本体に一体的に設けられ、前記下側給水路と前記上側給水路とを連通する通水孔、及び該通水孔を形成する部位の下面側にシール部を備える弁座部と、
該弁座部のシール部に下方から当接することで前記通水孔を閉塞して止水することができる弁体部と、
該弁体部が下端部に設けられ、上下方向に延びるロッド状に形成されて軸方向に昇降可能に配されると共に上端部に操作部が連係され、下降された際に前記弁体部による前記通水孔の閉塞を解除することで通水状態とするロッド部と、
該ロッド部及び前記弁体部と、前記弁機構部本体に一体的に設けられたスプリング受部との間に配され、前記ロッド部及び前記弁体部を上方へ付勢するスプリングとを備え、
前記弁体部が、前記ロッド部の下端側に固定された主弁体と、該主弁体と前記ロッド部に設けられたストッパ部との所定の変位範囲で、該ロッド部に上下動可能に嵌められ、前記主弁体が前記ロッド部と共に押し上げられた際には、該主弁体と前記弁座部のシール部との間に挟まれて前記弁座部の通水孔を閉じるコマ弁体とを備え、
該コマ弁体が前記ストッパ部によって前記シール部から押し下げられる前であって前記主弁体が下降して前記コマ弁体から離れた際に、前記通水孔の一部を開くように前記ロッド部と前記コマ弁体との嵌め合い部分の少なくともどちらかに設けられた通水溝を備え、
前記主弁体及び前記コマ弁体の両方が、前記弁機構部本体の前記下側給水路側に筒状に設けられると共に前記スプリングのスプリング受部となる底部を備えるスプリングガイドの筒内で上下動可能に案内されていることを特徴とする不凍水栓。
【請求項2】
前記弁機構部本体と一体的に設けられて前記上側給水路の基部を形成する周壁に、外部に連通するように設けられると共に、該周壁の内部における排水孔の開口が上方に開いている排水孔と、
前記ロッド部に所定の範囲で上下動可能に嵌められ、前記排水孔の開口に上方から当接して前記排水孔を塞ぐ排水孔用弁体と、
該排水孔用弁体と前記ロッド部に設けられた受け部との間に配されて前記排水孔用弁体を押し下げるように付勢する押し下げスプリングと、
前記排水孔用弁体と前記ロッド部に設けられたストッパ部との間に配されて前記排水孔用弁体を押し上げるように付勢する押し上げスプリングとを備えることを特徴とする請求項1記載の不凍水栓。
【請求項3】
前記排水孔用弁体が上方から当接される被当接面であって一部に前記排水孔の開口が設けられた受け面が、前記ロッド部の軸心と同心の円上について断続的に設けられていることを特徴とする請求項2記載の不凍水栓。
【請求項4】
前記排水孔には、前記上側給水路を形成する周壁の内部から外部への排水を許容するが、外部から内部への進入を阻止する逆止用の球体が配され、該球体は逆止用のスプリングによって外部から内部へ向かって付勢されていることを特徴とする請求項2又は3記載の不凍水栓。
【請求項5】
前記操作部が、前記ロッド部の上方に配されて該ロッド部を介して前記弁体部を押し下げることができるように下降可能に設けられた押しボタンと、該押しボタンを押し下げている状態を保持する保持構造と、該押しボタンを押し下げていない初期位置へ復帰させる復帰構造とを有する押しボタン機構を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の不凍水栓。
【請求項6】
前記押しボタン機構が、スラストロック機構によって構成されていることを特徴とする請求項5記載の不凍水栓。
【請求項7】
前記押しボタン機構が、前記押しボタンを押していない初期位置で該押しボタンが押されないように阻止する押しボタンのロック機構を備えることを特徴とする請求項5又は6記載の不凍水栓。
【請求項8】
前記上側給水路を形成する周壁に、排水の際に空気が内部へ進入することを許容するように開口でき、該上側給水路内に通水している際には閉塞する吸気弁が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の不凍水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−96101(P2013−96101A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238064(P2011−238064)
【出願日】平成23年10月29日(2011.10.29)
【特許番号】特許第4966427号(P4966427)
【特許公報発行日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(000150095)株式会社竹村製作所 (16)
【Fターム(参考)】