説明

不揮発性半導体記憶装置

【課題】データ保持特性を向上させた不揮発性半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】不揮発性半導体記憶装置は、第1配線と第2配線との間に配置され、抵抗を変化させる可変抵抗素子を有するメモリセルを備える。メモリセルは、可変抵抗層、第1電極層、第2電極層、及び第1バリアハイト制御層を備える。可変抵抗層は、可変抵抗素子として機能する。可変抵抗層は、炭素(C)、珪素(Si)、及び水素(H)を含み、又は炭素(C)、珪素(Si)、及び水素(H)を含み且つ窒素(N)及び酸素(O)の少なくともいずれか一方を含む。第1電極層は、可変抵抗素子の一方の面側に設けられている。第2電極層は、可変抵抗素子の他方の面側に設けられている。第1バリアハイト制御層は、絶縁物からなり且つ可変抵抗層の一方の面と第1電極層との間に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は、可変抵抗素子を有する不揮発性半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型で且つ記憶容量の大きい情報記録再生装置(記憶装置)の需要が急速に拡大してきている。その中でも、NAND型フラッシュメモリ及び小型HDD(hard disk drive)は、急速な記録密度の増加を遂げ、大きな市場を形成するに至っている。このような状況の下、記録密度を大幅に増加させることを目指した新しい記憶装置のアイデアが幾つか提案されている。その中でも、低抵抗状態と高抵抗状態とを切り替えることができる抵抗変化素子を有する不揮発性半導体記憶装置(ReRAM:抵抗変化型メモリ)が注目されている。
【0003】
この不揮発性半導体記憶装置(抵抗変化型メモリ)は、抵抗変化素子に電圧を印加するなどして低抵抗状態と高抵抗状態とを繰り返し変化させることができるので、この2つの状態を2値データ("0"及び"1")に対応させてデータを記憶することができる。また、多値記録が可能となるので、記録密度をさらに増加させることが期待されている。
【0004】
このような不揮発性半導体記憶装置(抵抗変化型メモリ)は、一般的に可変抵抗層を金属で挟んだ構造をしている。そして、書き込みもしくは消去時に印加した電圧により、可変抵抗層の抵抗状態が変化すると同時に、可変抵抗層中に電荷が捕獲(トラップ)される。この影響で誤読み出し、もしくは読み出し時にその電荷が移動(デトラップ)することで、可変抵抗層の抵抗が変化をしてしまうおそれがある。さらには、トラップされた電荷が可変抵抗層からの抜ける(リーク)、或いは、トラップされた電荷がエネルギー準位間で移動(デトラップ)することにより、電圧が印加されなくても可変抵抗層の抵抗は変化してしまうおそれがある。すなわち、データ保持特性の劣化が生じる。そのため、可変抵抗層中に捕獲された電荷は、書き込みもしくは消去時毎に安定的に可変抵抗層中に留まる必要があり、そのための構造が要求されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】R. Soni, et al.,“Probing Cu doped Ge0.3Se0.7 based resistance switching memory devices with random telegraph noise” 107, 024517 (2010)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−324447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、データ保持特性を向上させた不揮発性半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に説明する実施形態の不揮発性半導体記憶装置は、第1配線と第2配線との間に配置され、抵抗を変化させる可変抵抗素子を有するメモリセルを備える。メモリセルは、可変抵抗層、第1電極層、第2電極層、及び第1バリアハイト制御層を備える。可変抵抗層は、可変抵抗素子として機能する。可変抵抗層は、炭素(C)、珪素(Si)、及び水素(H)を含み、又は炭素(C)、珪素(Si)、及び水素(H)を含み且つ窒素(N)及び酸素(O)の少なくともいずれか一方を含む。第1電極層は、可変抵抗素子の一方の面側に設けられている。第2電極層は、可変抵抗素子の他方の面側に設けられている。第1バリアハイト制御層は、絶縁物からなり且つ可変抵抗層の一方の面と第1電極層との間に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る抵抗変化素子を有する不揮発性半導体記憶装置を例示するための模式回路図である。
【図2】メモリセルアレイ10の積層構造10Aを示す斜視図である。
【図3】メモリセルアレイ10の積層構造10Bを示す斜視図である。
【図4】メモリセルアレイ10の積層構造10Cを示す斜視図である。
【図5】メモリ層60の構成を示す断面図である。
【図6】本実施形態と比較例のエネルギー準位を示す図である。
【図7】サンプル(評価装置)100を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、図中の矢印X、矢印Y、矢印Zは互いに直交する方向を表している。
【0011】
[概略構成]
先ず、図1を参照して、実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の概略について説明する。図1は、実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の概略図である。
【0012】
図1に示すように、不揮発性半導体記憶装置は、メモリセルアレイ10、ワード線選択回路20a、ワード線駆動回路20b、ビット線選択回路30a、及びビット線駆動回路30bを有する。
【0013】
メモリセルアレイ10は、互いに交差するワード線WL(WL1、WL2)及びビット線BL(BL1、BL2)、並びにワード線WLとビット線BLとの交差部に配置されたメモリセルMC(MC<1,1>〜MC<2,2>)を有する。
【0014】
ワード線WLは、Y方向に所定ピッチをもって配列され、X方向に延びるように形成されている。ビット線BLは、X方向に所定ピッチをもって配列され、Y方向に延びるように形成されている。メモリセルMC(MC<1,1>〜MC<2,2>)は、X方向及びY方向に形成される面上にマトリクス状に配置されている。
【0015】
メモリセルMCは、直列接続されたダイオードDIと可変抵抗素子VRを有する。ダイオードDIは、記憶(書き込み)/再生(読み出し)時における回り込み電流(Sneak Current)を防止するために配置されている。可変抵抗素子VRは、電圧の印加または電流の供給により低抵抗状態と高抵抗状態とを繰り返し変化させることができる。この2つの状態における抵抗値に基づいて、メモリセルMCはデータを不揮発的に記憶する。ダイオードDIのアノードは、ワード線WLに接続され、ダイオードDIのカソードは、可変抵抗素子VRの一端に接続されている。可変抵抗素子VRの他端は、ビット線BLに接続されている。
【0016】
ワード線選択回路20aは、複数の選択トランジスタTra(Tra1、Tra2)を有する。選択トランジスタTraの一端は、ワード線WLの一端に接続され、選択トランジスタTraの他端は、ワード線駆動回路20bに接続されている。選択トランジスタTraのゲートには、信号Sa(Sa1、Sa2)が供給される。信号Saの制御により、ワード線選択回路20aは、ワード線WLを選択的にワード線駆動回路20bに接続する。
【0017】
ワード線駆動回路20bは、メモリセルMCに記憶されているデータの消去、メモリセルMCへのデータの書き込み、及びメモリセルMCからのデータの読み出しに必要な電圧をワード線WLへ印加する。また、ワード線駆動回路20bは、データの消去、データの書き込み、データの読み出しに必要な電流をワード線WLへ供給する。
【0018】
ビット線選択回路30aは、複数の選択トランジスタTrb(Trb1、Trb2)を有する。選択トランジスタTrbの一端は、ビット線BLの一端に接続され、選択トランジスタTrbの他端は、ビット線駆動回路30bに接続されている。選択トランジスタTrbのゲートには、信号Sb(Sb1、Sb2)が供給される。信号Sbの制御により、ビット線選択回路30aは、ビット線BLを選択的にビット線駆動回路30bに接続する。
【0019】
ビット線駆動回路30bは、メモリセルMCに記憶されているデータの消去、メモリセルMCへのデータの書き込み、及びメモリセルMCからのデータの読み出しに必要な電圧をビット線BLへ印加する。ビット線駆動回路30bは、データの消去、データの書き込み、データの読み出しに必要な電流をビット線BLへ供給する。また、ビット線駆動回路30bは、ビット線BLを介して読み出されたデータを外部に出力する。
【0020】
[積層構造]
次に、図2〜図4を参照して、メモリセルアレイ10の積層構造について説明する。図2〜図4は、メモリセルアレイ10の積層構造を示す概略斜視図である。
【0021】
メモリセルアレイ10は、図2に示す積層構造10Aにて構成されている。積層構造10Aは、基板40の面上に下層から上層へとZ方向に積層された第1導電層50、メモリ層60、及び第2導電層70を有する。ここで、第1導電層50は、前述したワード線WLとして機能する。メモリ層60は、前述したメモリセルMCとして機能する。第2導電層70は、前述したビット線BLとして機能する。すなわち、積層構造10A(メモリセルアレイ10)は、第1導電層50(ワード線WL)と第2導電層70(ビット線BL)との交差部にメモリ層60(メモリセルMC)を配置した、所謂、クロスポイント型の構成を有している。
【0022】
第1導電層50は、Y方向に所定ピッチをもって、X方向に延びるストライプ状に形成されている。第1導電層50は、導電性材料(例えば、金属など)から形成されている。第1導電層50は、耐熱性が高く、且つ抵抗値の低い材料から形成されることが望ましい。例えば、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、及びこれらの窒化物、もしくはこれらを積層したものなどを例示することができる。
【0023】
メモリ層60は、第1導電層50上に設けられ、X方向及びY方向においてマトリクス状に配置されている。
【0024】
第2導電層70は、X方向に所定ピッチをもって、Y方向に延びるストライプ状に形成されている。第2導電層70は、メモリ層60の上面と接するように形成されている。第2導電層70は、耐熱性が高く、且つ抵抗値の低い材料から形成されることが望ましい。例えば、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、及びこれらの窒化物、もしくはこれらを積層したものなどを例示することができる。なお、第1導電層50と第2導電層70とを同じ材料から形成することもできるし、異なる材料から形成することもできる。
【0025】
図2に例示をした積層構造10Aは、第1導電層50、メモリ層60、第2導電層70を一層ずつ有するものである。しかしながら、メモリセルアレイ10は、積層構造10Aに限定されない。
【0026】
例えば、メモリセルアレイ10は、図3に示す積層構造10Bにて構成されていてもよい。積層構造10Bは、積層構造10Aの構成に加えて、さらに上層(Z方向)に絶縁層(図示略)を介して積層された第1導電層50、メモリ層60、及び第2導電層70を有する。
【0027】
また、メモリセルアレイ10は、図4に示す積層構造10Cにて構成されていてもよい。積層構造10Cは、積層構造10Aの第2導電層70の上層(Z方向)に形成されたメモリ層60、及びこのメモリ層60の上層(Z方向)に形成された第1導電層50を有する。すなわち、積層構造10Cにおいて、上下のメモリ層60は、その間の第2導電層70を共有する。
【0028】
次に、メモリ層60の構成を説明する。図5は、メモリ層60の構成を示す断面図である。なお、図5は、一例として、図2に例示をした積層構造10Aの断面図である。
【0029】
図5に示すように、メモリ層60は、下層から上層へとZ方向に積層された、ダイオード層61、電極層62、バリアハイト制御層63、可変抵抗層64、バリアハイト制御層65、電極層66を有する。なお、メモリ層60は、バリアハイト制御層63、65のいずれか一方だけを含むものであってもよい。
【0030】
ダイオード層61は、第1導電層50の上層(Z方向)に形成されている。ダイオード層61は、前述したダイオードDIとして機能する。ダイオード層61は、例えば、MIM(Metal-Insulator-Metal)構造、PIN構造(P+poly-Silicon - Intrinsic - N+poly-Silicon)を有するものとすることができる。
【0031】
電極層62は、ダイオード層61の上層(Z方向)に形成されている。電極層62は、以下に示す「元素群g1」から選択される少なくとも1種類以上の金属、もしくは、「化合物g1」のような「元素群g1」の窒化物、炭化物の何れかから形成してもよい。或いは、電極層62は、これらの混合体から形成してもよい。
【0032】
元素群g1:タングステン(W)、タンタル(Ta)、シリコン(Si)、イリジウム(Ir)、ルビジウム(Ru)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、チタン(Ti)
【0033】
化合物群g1:Ti−N、Ti−Si−N、Ta−N、Ta−Si−N、Ti−C、Ta−C、W−N
【0034】
バリアハイト制御層63は、電極層62の上層(Z方向)に形成されている。バリアハイト制御層63は、可変抵抗層64と電極層62との間に設けられ、それらの間にショットキー接合が形成される事を防ぐ。バリアハイト制御層63は、電圧印加により抵抗変化を起こさないような絶縁膜、例えば、珪素(Si)、アルミニウム(Al)の少なくとも一方を含む酸化物、窒化物、酸化物と窒化物との混合物のいずれかにて構成されている。
【0035】
バリアハイト制御層63は、SiO、Si、Al、Alのいずれかにより構成してもよい。バリアハイト制御層63をSiOとした場合、1.5≦X≦2が望ましい。Xが1.5以下であると、格子欠陥やダングリング・ボンド等の不完全な結合が増える。これにより、可変抵抗層64をスイッチングさせる場合、バリアハイト制御層63(SiO)において電荷のトラップや原子移動が起こる。すなわち、可変抵抗層64のスイッチング特性、データ保持特性等が悪化するだけでなく、その絶縁性も悪化するため、素子のリーク電流も大きくなり消費電力が増加してしまう。一方、Xが2の場合、SiOはSiOとなる。Xが2より大きい場合、SiOは一般的に均一な膜として形成され難い。
【0036】
バリアハイト制御層63をSiとした場合、1.1≦Y/X≦1.33が望ましい。Y/Xが1.1以下であると、SiOの場合と同様に不完全な結合が増え、可変抵抗層64のスイッチング時にバリアハイト制御層63(Si)において電荷のトラップや原子移動が起こる。すなわち、可変抵抗層64のスイッチング特性やデータ保持特性が悪化するだけでなく、その絶縁性も悪化する。Y/Xが1.33の場合、Siは化学量論組成の一つであるSiとなる。Y/Xが1.33より大きい場合、Siは均一な膜として形成され難く、結合が不安定である。
【0037】
バリアハイト制御層63をAlとした場合、1.1≦Y/X≦1.5が望ましい。これまでの議論と同様にY/Xが1.1以下であると、不完全な結合が増え、電荷のトラップや原子移動が起こる。すなわち、可変抵抗層64のスイッチング特性やデータ保持特性等が悪化するだけでなく、その絶縁性も悪化する。Y/Xが1.5の場合、Alは化学量論組成の一つであるAlとなる。Y/Xが1.5より大きい場合、Alは均一な膜として形成され難く、結合が不安定である。
【0038】
バリアハイト制御層63をAlとした場合、0.7≦Y/X≦1.0が望ましい。これまでの議論と同様にY/Xが0.7以下であると、不完全な結合が増え、電荷のトラップや原子移動が起こる。すなわち、可変抵抗層64のスイッチング特性やデータ保持特性等が悪化するだけでなく、その絶縁性も悪化する。Y/Xが1.0の場合、AlはAlNとなる。Y/Xが1.0より大きい場合、Alは均一な膜として形成され難く、結合が不安定である。なお、バリアハイト制御層63は、SiO、Si、Al、Alのいずれであっても、その成膜方法において使用されるガスにより、微量元素としてO(酸素)もしくはN(窒素)、もしくはH(水素)もしくはCl(塩素)を少なからず含むものであってもよい。特に、H(水素)は条件にもよるが、微量ではなく30at.%から50at.%程度含まれる場合もある。
【0039】
バリアハイト制御層63の膜厚は、上記材料を用いて成膜されることを考慮すると、0.5nm以上が好ましい。すなわち、十から数十原子層の原子が積層されていないと均一な膜厚の膜が形成されず、その結果としてバリアハイト制御層63として機能しない。バリアハイト制御層63の機能については、以下に示す実施例のデータ保持特性を説明する部分にて述べる。一方、バリアハイト制御層63の膜厚が2nm以上であると、フォーミング時またはセット時、印加電圧によりバリアハイト制御層65が破壊される危険があり、フォーミング時またはセット時の電圧が高くなる。またはフォーミング時またはセット時、印加電圧により可変抵抗層64が破壊される危険がある。よって、バリアハイト制御層63の膜厚は、トンネル電流が流れる程度の膜厚である2nm以下が好ましい。
【0040】
可変抵抗層64は、電極層62の上層(Z方向)に形成されている。可変抵抗層64は、前述した可変抵抗素子VRとして機能する。可変抵抗層64は、印加される電圧及び通電される電流の少なくともいずれかによって電気抵抗値を変化させる。可変抵抗層64の膜厚は、3nm(ナノメートル)以上70nm(ナノメートル)以下が好ましい。
【0041】
バリアハイト制御層65は、可変抵抗層64の上層(Z方向)に形成されている。バリアハイト制御層65は、可変抵抗層64と電極層66との間に設けられ、それらの間にショットキー接合が形成される事を防ぐ。バリアハイト制御層65は、電圧印加により抵抗変化を起こさないような絶縁膜、例えば、珪素(Si)、アルミニウム(Al)の少なくとも一方を含む酸化物、窒化物、酸化物と窒化物との混合物のいずれかにて構成されている。
【0042】
バリアハイト制御層65は、SiO、Si、Al、Alのいずれかにより構成してもよい。バリアハイト制御層65をSiOとした場合、1.5≦X≦2が望ましい。Xが1.5以下であると、格子欠陥やダングリング・ボンド等の不完全な結合が増える。これにより、可変抵抗層64をスイッチングさせる場合、バリアハイト制御層65(SiO)において電荷のトラップや原子移動が起こる。すなわち、可変抵抗層64のスイッチング特性、データ保持特性等が悪化するだけでなく、その絶縁性も悪化するため、素子のリーク電流も大きくなり消費電力が増加してしまう。一方、Xが2の場合、SiOはSiOとなる。Xが2より大きい場合、SiOは一般的に均一な膜として形成され難い。
【0043】
バリアハイト制御層65をSiとした場合、1.1≦Y/X≦1.33が望ましい。Y/Xが1.1以下であると、SiOの場合と同様に不完全な結合が増え、可変抵抗層64のスイッチング時にバリアハイト制御層65(Si)において電荷のトラップや原子移動が起こる。すなわち、可変抵抗層64のスイッチング特性やデータ保持特性が悪化するだけでなく、その絶縁性も悪化する。Y/Xが1.33の場合、Siは化学量論組成の一つであるSiとなる。Y/Xが1.33より大きい場合、Siは均一な膜として形成され難く、結合が不安定である。
【0044】
バリアハイト制御層65をAlとした場合、1.1≦Y/X≦1.5が望ましい。これまでの議論と同様にY/Xが1.1以下であると、不完全な結合が増え、電荷のトラップや原子移動が起こる。すなわち、可変抵抗層64のスイッチング特性やデータ保持特性等が悪化するだけでなく、その絶縁性も悪化する。Y/Xが1.5の場合、Alは化学量論組成の一つであるAlとなる。Y/Xが1.5より大きい場合、Alは均一な膜として形成され難く、結合が不安定である。
【0045】
バリアハイト制御層65をAlとした場合、0.7≦Y/X≦1.0が望ましい。これまでの議論と同様にY/Xが0.7以下であると、不完全な結合が増え、電荷のトラップや原子移動が起こる。すなわち、可変抵抗層64のスイッチング特性やデータ保持特性等が悪化するだけでなく、その絶縁性も悪化する。Y/Xが1.0の場合、AlはAlNとなる。Y/Xが1.0より大きい場合、Alは均一な膜として形成され難く、結合が不安定である。なお、バリアハイト制御層65は、SiO、Si、Al、Alのいずれであっても、その成膜方法において使用されるガスにより、微量元素としてO(酸素)もしくはN(窒素)、もしくはH(水素)もしくはCl(塩素)を少なからず含むものであってもよい。特に、H(水素)は条件にもよるが、微量ではなく30at.%から50at.%程度含まれる場合もある。
【0046】
バリアハイト制御層65の膜厚は、上記材料を用いて成膜されることを考慮すると、0.5nm以上が好ましい。すなわち、十から数十原子層の原子が積層されていないと均一な膜厚の膜が形成されず、その結果としてバリアハイト制御層65として機能しない。バリアハイト制御層65の機能については、以下に示す実施例のデータ保持特性を説明する部分にて述べる。一方、バリアハイト制御層65の膜厚が2nm以上であると、フォーミング時またはセット時、印加電圧によりバリアハイト制御層65が破壊される危険があり、フォーミング時またはセット時の電圧が高くなる。またはフォーミング時またはセット時、印加電圧により可変抵抗層64が破壊される危険がある。よって、バリアハイト制御層65の膜厚は、トンネル電流が流れる程度の膜厚である2nm以下が好ましい。
【0047】
電極層66は、バリアハイト制御層65の上面と第2導電層70の下面との間に形成されている。電極層66は、電極層62と同様の組成を有するものとすることができる。
【0048】
絶縁層67は、マトリクス状に配置された各メモリ層60の間に形成されている。絶縁層67は、いわゆる素子間絶縁層として機能する。絶縁層67は、絶縁性材料から形成することができる。例えば、絶縁層67は、ポリイミドやフタロシアニン系有機分子材料などから形成してもよい。
【0049】
[可変抵抗層64の組成]
次に、可変抵抗層64の組成について説明する。可変抵抗層64は、誤動作(誤スイッチ)の確率を低くするため、低抵抗状態と高抵抗状態との抵抗比が高い抵抗変化材料を用いている。可変抵抗層64は、炭素(C)と珪素(Si)を主成分とし、さらに、水素(H)を含む。或いは、可変抵抗層64は、炭素(C)と珪素(Si)、及び水素(H)を含み、且つ窒素(N)と酸素(O)の少なくとも一方を含む。
【0050】
可変抵抗層64は、Si-C結合、Si-(CH)結合(Xは整数)、及びSi-H結合の少なくともいずれか1つを有することが好ましい。また、可変抵抗層64は、これらに加えて、-CH-結合、-C=C-結合、Si-N結合、及びSi-NH結合(Xは整数)、-NH結合(Xは整数)、及びSi-C結合(Xは整数)の少なくともいずれか1つを有するものであってもよい。ここで、Cはベンゼンの置換基であるフェニル基である。
【0051】
一例として、Si-C結合の構造式を[化1]に示す。Si-(CH)結合の構造式を[化2]に示す。-CH−結合の構造式を[化3]に示す。-C=C-結合の構造式を[化4]に示す。Si-N結合の構造式を[化5]に示す。-NH結合の構造式を[化6]に示す。Si-C結合の構造式を[化7]に示す。
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】

【0052】
本実施形態において、可変抵抗層64の組成式は、Si(C)と表すことができる。この場合、原子比X、Y、Z、A、B、Cの範囲は、各々、5≦X≦40、20≦Y≦60、5≦Z≦65、50≦A≦100、0≦B≦20、0≦C≦4が望ましい。
【0053】
例えば、炭素(C)の割合が全体の約60%程度まで多くなると、熱による膜の収縮や吸湿性が大きくなるので、例えば電極材料等に対して、膜は、密着力が弱まり、引いては剥がれやすくなる。そのため、炭素(C)の割合が、全体の約60%程度、或いはそれよりも多くなると可変抵抗層64と電極(電極層62、64)との密着力が小さくなりすぎるおそれがある。
【0054】
また、Si-N結合、Si-NH結合、及び-NH結合が存在すれば、可変抵抗層64の耐熱性を向上させることができる。そのため、熱による膜収縮率を小さくすることができる。よって、Si-N結合、Si-NH結合、及び-NHx結合の結合状態が存在するようにすれば、可変抵抗層64においては、膜の収縮率を抑え、その耐熱性を高めることができる。
【0055】
炭素(C)の割合が全体の約60%より多くなるとセル電流が増加して消費電力が大きくなりすぎるおそれがある。また、珪素(Si)の割合が全体の約50%以上まで多くなると、セル電流が増加して消費電力が大きくなりすぎるおそれがある。
【0056】
[可変抵抗層64の抵抗変化の機構]
次に、可変抵抗層64の抵抗変化の機構について説明する。可変抵抗層64が電圧印加等により過熱されると、その可変抵抗層64内の炭素原子(C)の結合状態は変化する。これにより、可変抵抗層64はリセット状態(=高抵抗状態)からセット状態(=低抵抗状態)に遷移する。或いは、可変抵抗層64はセット状態(=低抵抗状態)からリセット状態(=高抵抗状態)に遷移する。
【0057】
例えば、可変抵抗層64は、C=C結合の割合の変化に応じて抵抗値を変化させる。すなわち、可変抵抗層64は、sp2混成軌道の成分、若しくはパイ電子の成分の変化に応じて抵抗値を変化させる。また、可変抵抗層64は、その内部におけるフィラメントの形成/破壊に応じて抵抗値を変化させる。
【0058】
例えば、可変抵抗層64は、リセット状態(=高抵抗状態)において、以下の[化8]に示す構造を有するものとする。この[化8]の状態において水素結合が切れるとC=C結合が増加し、可変抵抗層64は以下の[化9]に示すセット状態(=低抵抗状態)に遷移する。或いは、[化8]の状態において水素結合が切れると、可変抵抗層64は、以下の[化10]に示す状態となる。[化10]の状態は、ダングリングボンドを有する不安定な状態である。よって、[化10]の状態は、C=C結合の割合を増やすように、またフィラメントを形成するようにも変化し易い。また、[化10]に示す状態に変化することにより、可変抵抗層64中に欠陥が生じ、その欠陥を介して原子が移動し易くなる。
【化8】


【化9】


【化10】

【0059】
[バリアハイト制御層63、65の製造方法]
次に、実施形態に係るバリアハイト制御層63、65の形成方法について説明する。例えば、バリアハイト制御層63、65は、CVD法(Chemical Vapor Deposition)(熱CVD法、プラズマCVD法)、蒸着法、プラズマ酸化、窒化、スパッタリング法、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて形成される。
【0060】
CVD法には幾つかの方法があるが、例えば、プラズマCVD(PECVD)法を用いれば、SiO膜は、シラン(SiH)系のガスに酸素(O)を加え、500℃以下の比較的低温において形成できるため好適である。また、プラズマCVD(PECVD)法を用いれば、Si膜は、例えば、シラン(SiH)系のガスにアンモニア(NH)又は窒素ガス、酸素ガス(NO)を加え、700℃程度において形成することができる。これらの場合、プラズマの周波数は、通常商用に用いられる周波数帯(13.56MHz)としてもよいし、さらに低周波数の帯域としてもよい。
【0061】
蒸着法を用いれば、バリアハイト制御層63、65は、液体状の原料を気化させ、これを凝縮させることで形成される。この様にすれば、液体の状態において成分を調整したり、気化後に他のガスと混合したりすることができるので、製造時において種々のバリエーションを採用することができる。そのため、膜の形成における自由度を高めることが可能となる。
【0062】
ここで、電極層62がSiの場合、電極層62の最表面のみをプラズマ酸化、窒化することで、Siの酸化膜系のバリアハイト制御層63を形成することができる。また、可変抵抗層64は珪素(Si)、炭素(C)、水素(H)を主成分とする膜であるため、バリアハイト制御層63と同様に最表面のみをプラズマ酸化、窒化することでSiの酸化膜系のバリアハイト制御層65を形成することができる。
【0063】
スパッタ法は、SiO、Si、AlY、Al等からなるスパッタリング・ターゲットを不活性ガス(アルゴン(Ar)等)によりスパッタする。または、スパッタ法は、珪素(Si)やアルミニウム(Al)単体のスパッタリング・ターゲットをスパッタすると同時に、窒素(N)、酸素(O)を含むガスを反応ガス(例えば、O、N、NH)として導入する。スパッタ法には幾つかの方法があるが、マグネトロン・スパッタ法が量産性に優れるため好適である。
【0064】
ALD法を用いれば、SiO膜は、シラン(SiH)系のガスに酸素(O)を加えることで形成される。ALD法を用いれば、Si膜は、例えば、シラン(SiH)系のガスにアンモニア(NH)又は窒素ガス、酸素ガス(NO)を加えることで形成される。ALD法を用いれば、Al膜は、例えば、TMA(Tri Methyl Aluminium)とHOを反応させることで形成される。Al膜は、例えば、アルミニウムを高温・高圧下で窒化することで形成される。
【0065】
[バリアハイト制御層63、65の役割]
次に、実施形態のバリアハイト制御層63、65の役割について図6を参照して説明する。図6は、本実施形態と比較例のエネルギー準位を示す図である。図6に示すように、本実施形態はバリアハイト制御層63、65を有する一方、比較例はバリアハイト制御層63、65を有していない。すなわち、比較例において、可変抵抗層64は、直接的に電極層62、66に接している(ショットキー接続されている)。これにより、比較例において、可変抵抗層64のエネルギー準位は、その端部から中央部に向かって(電極層62、66との界面から離れるに従って)連続的に低くなる。したがって、セット動作実行後、可変抵抗層64の端部(電極層62、66との界面)のエネルギー準位にトラップされた電子は、時間経過と共にエネルギー的に安定である低いエネルギー準位に遷移する。すなわち、可変抵抗層64は、時間経過と共に低抵抗状態から高抵抗状態となる。
【0066】
一方、実施形態は、可変抵抗層64と電極層62、66との間にバリアハイト制御層63、65を設け、これにより、可変抵抗層64と電極層62、66と間にショットキー接合が形成される事を防止している。このため、可変抵抗層64のエネルギー準位を比較例に比べて平坦にすることができる。このように、バリアハイト制御層63、65を可変抵抗層64と電極層62、66との間に介在させることにより、比較例に比べ可変抵抗層64の抵抗値の経時変化を抑制することができる。
【0067】
[サンプル100(評価装置)の構成]
次に、図7を参照して、後述する実施例1〜24に対する情報保持特性(データリテンション:Data Retention)の評価に用いたサンプル100(評価装置)について説明する。図7に示すように、サンプル100は、基板40a、メモリ層60a、導電層70a、絶縁層67a、測定パッド69a、69bを有する。
【0068】
メモリ層60aは、基板40a上に設けられている。メモリ層60aは、下層から上層へ積層された電極層62a、バリアハイト制御層63a、可変抵抗層64a、バリアハイト制御層65a、及び電極層66aを有する。また、メモリ層60aは、層63a〜65aの側面を覆う絶縁層67aを有する。なお、バリアハイト制御層63a、65aのいずれか一方は、省略可能である。
【0069】
電極層62aは、基板40a上に設けられている。バリアハイト制御層63aは、電極層62aと可変抵抗層64aの間に設けられている。可変抵抗層64aは、バリアハイト制御層63a上に形成されている。バリアハイト制御層65aは、可変抵抗層64aと電極層66aの間に設けられている。
【0070】
バリアハイト制御層63a、可変抵抗層64a、及びバリアハイト制御層65aは、各々、同一直径を持つ柱状に形成されている。バリアハイト制御層63a、可変抵抗層64a、及びバリアハイト制御層65aは、電極層62aの上面に積層されている。電極層62a、電極層66aは、上記「元素群g1」から選択される少なくとも1種類以上の金属、もしくは、例えば、「化合物g1」のような「元素群g1」の窒化物、炭化物の何れかから形成されている。或いは、電極層62は、これらの混合体から形成されている。可変抵抗層64aの組成式は、Si(C)と表すことができる(5≦X≦40、20≦Y≦60、5≦Z≦65、50≦A≦100、0≦B≦20、0≦C≦4)。
【0071】
導電層70aは、電極層66aの上面を覆うように設けられている。導電層70aは、金属などの導電体から構成されている。絶縁層67aは、二酸化珪素(SiO)などから形成されている。
【0072】
測定パッド69a、69bは、各々、100マイクロメートル(μm)程度の直径を有する。電極層62aと測定パッド69aとは配線68aを介して電気的に接続されている。電極層66aと測定パッド69bとは配線68bを介して電気的に接続されている。測定パッド69a、69b、及び配線68a、68bは、アルミニウム(Al)、タングステン(W)等の導電体から形成されている。なお、測定パッド69a、69bには、必要に応じて保護抵抗などの付随する回路を適宜設けても良い。
【0073】
[情報保持特性の評価手順]
次に、サンプル100の情報保持特性の評価手順について説明する。評価はプローブ対を用いて行なった。プローブ対は、その先端が10ナノメートル(nm)以下に先鋭化されたものである。
【0074】
まず、プローブ対を測定パッド69a、69bに接触させて、メモリ層60a(メモリセル)への書き込み/消去に用いられる1〜15Vの電圧を印加した。具体的に、書き込み時、例えば、10nsec〜100msec幅で、1〜15Vの電圧パルスを印加した。消去時、例えば、10nsec〜100msec幅で、0.2〜15Vの電圧パルスを印加した。
【0075】
なお、評価を行うサンプルの材料及び構造により、書き込み/消去の際のパルス幅の最適値は異なる。また、書き込み/消去の際のパルス幅は、スイッチング回数により若干異なるものとなる場合もある。そのため、評価にあたり前述した範囲の中で最適なパルス幅を選択するようにした。
【0076】
次に、書き込み又は消去の後に、読み出しを行なうことによりスイッチング動作を確認した。読み出しは、プローブ対を介して、パルス幅が10〜1000nsec、電圧が0.1〜0.5V程度の電圧パルスを印加し、メモリ層60aの抵抗値、電流、電圧等を測定することにより行なった。
【0077】
情報保持特性の評価に用いた複数のサンプルは、室温において可変抵抗層64aに情報を記録したものとした。なお、書き込み/消去を1サイクルとすると、メモリ層60a(可変抵抗層64a)への情報の記録は、1000サイクル行なった。以上のように情報を記録したサンプルを室温、85℃、及び125℃のオーブンに挿入し、一定時間ごとにそれらサンプルに対して読み出しを行い、抵抗値を測定した。そして、その抵抗値と、情報を記録していないメモリ層60aの抵抗値とを比較して、情報保持特性を評価した。
【0078】
[情報保持特性の評価結果]
次に、可変抵抗層64aの情報保持特性の評価結果について説明する。以下、実施例1〜実施例8は、室温において保持特性を評価したものである。
【0079】
[実施例1]
実施例1として次に示すサンプルを測定した。実施例1において、可変抵抗層64aの直径は0.25マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはSiO系の膜を用いた。
【0080】
一方、実施例1と比較するため、実施例1からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例1)を測定した。
【0081】
実施例1においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例1は良好な結果を示した。一方、比較例1においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は30%程度変化し、比較例1は改善を要する結果となった。すなわち、実施例1は、室温においてバリアハイト制御層63a、65aを設けることでデータ保持特性が比較例1よりも向上することを示した。
【0082】
[実施例2]
実施例2として次に示すサンプルを測定した。実施例2において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは可変抵抗層64aと電極層66aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはSiO系の膜を用いた。
【0083】
一方、実施例2と比較するため、実施例2からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例2)を測定した。
【0084】
実施例2においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例2は良好な結果を示した。一方、比較例2においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は30%程度変化し、比較例2は改善を要する結果となった。すなわち、実施例2は、実施例1よりも可変抵抗層64aの直径が小さくなっても、バリアハイト制御層63a、65aを設けることでデータ保持特性が比較例2よりも向上することを示した。
【0085】
[実施例3]
実施例3として次に示すサンプルを測定した。実施例3において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは5ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはSiO系の膜を用いた。
【0086】
一方、実施例3と比較するため、実施例3からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例3)を測定した。
【0087】
実施例3においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例3は良好な結果を示した。一方、比較例3においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は30%程度変化し、比較例3は改善を要する結果となった。すなわち、実施例3は、第1実施例よりも可変抵抗層64aの膜厚が薄くなっても、バリアハイト制御層63a、65aを設けることでデータ保持特性が比較例3よりも向上することを示した。
【0088】
[実施例4]
実施例4として次に示すサンプルを測定した。実施例4において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはAl系の膜を用いた。
【0089】
一方、実施例4と比較するため、実施例4からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例4)を測定した。
【0090】
実施例4においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例4は良好な結果を示した。一方、比較例4においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は30%程度変化し、比較例4は改善を要する結果となった。すなわち、実施例4は、室温においてバリアハイト制御層63a、65aをSiO系の膜の代わり、Al系の膜で構成してもデータ保持特性が比較例4よりも向上することを示した。
【0091】
[実施例5]
実施例5として次に示すサンプルを測定した。実施例5において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはSi系の膜を用いた。
【0092】
一方、実施例5と比較するため、実施例5からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例5)を測定した。
【0093】
実施例5においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例5は良好な結果を示した。一方、比較例5においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は30%程度変化し、比較例5は改善を要する結果となった。すなわち、実施例5は、室温においてバリアハイト制御層63a、65aをSiO系の膜の代わり、Si系の膜で構成してもデータ保持特性が比較例5よりも向上することを示した。
【0094】
[実施例6]
実施例6として次に示すサンプルを測定した。実施例6において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはAlN系の膜を用いた。
【0095】
一方、実施例6と比較するため、実施例6からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例6)を測定した。
【0096】
実施例6においては、情報記録時から200時間経過後の測定でもメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例6は良好な結果を示した。一方、比較例6においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は30%程度変化し、比較例6は改善を要する結果となった。すなわち、実施例6は、室温においてバリアハイト制御層63a、65aをSiO系の膜の代わり、Al系の膜で構成してもデータ保持特性が比較例6よりも向上することを示した。
【0097】
[実施例7]
実施例7として次に示すサンプルを測定した。実施例7において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、一方、上記実施例1〜6と異なり、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けなかった。バリアハイト制御層63aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63aはSiO系の膜を用いた。
【0098】
一方、実施例7と比較するため、実施例7からバリアハイト制御層63aを除いたサンプル(比較例7)を測定した。
【0099】
実施例7においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は20%以下であり、実施例7は良好な結果を示した。一方、比較例7においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は30%程度変化し、比較例7は改善を要する結果となった。
【0100】
[実施例8]
実施例8として次に示すサンプルを測定した。実施例8において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設け、一方、上記実施例1〜7と異なり、バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設けなかった。バリアハイト制御層65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層65aはSiO系の膜を用いた。
【0101】
一方、実施例8と比較するため、実施例8からバリアハイト制御層65aを除いたサンプル(比較例8)を測定した。
【0102】
実施例8においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は20%以下であり、実施例8は良好な結果を示した。一方、比較例8においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は30%程度変化し、比較例8は改善を要する結果となった。すなわち、実施例7、8は、室温においてバリアハイト制御層63a、65aのいずれか一方のみで比較例7、8よりもデータ保持特性が向上することを示した。
【0103】
[実施例9]
以下、実施例9〜実施例16は、85℃においての保持特性を評価したものである。実施例9として次に示すサンプルを測定した。実施例9において、可変抵抗層64aの直径は0.25マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはSiO系の膜を用いた。
【0104】
一方、実施例9と比較するため、実施例9からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例9)を測定した。
【0105】
実施例9においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例9は良好な結果を示した。一方、比較例9においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は40%程度変化し、比較例9は改善を要する結果となった。すなわち、実施例9は、85℃においてバリアハイト制御層63a、65aを設けることでデータ保持特性が比較例9よりも向上することを示した。
【0106】
[実施例10]
実施例10として次に示すサンプルを測定した。実施例10において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは可変抵抗層64aと電極層66aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはSiO系の膜を用いた。
【0107】
一方、実施例10と比較するため、実施例10からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例10)を測定した。
【0108】
実施例10においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例10は良好な結果を示した。一方、比較例10においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は40%程度変化し、実施例10は改善を要する結果となった。すなわち、実施例10は、実施例9よりも可変抵抗層64aの直径が小さくなっても、バリアハイト制御層63a、65aを設けることでデータ保持特性が比較例10よりも向上することを示した。
【0109】
[実施例11]
実施例11として次に示すサンプルを測定した。実施例11において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは5ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはSiO系の膜を用いた。
【0110】
一方、実施例11と比較するため、実施例11からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例11)を測定した。
【0111】
実施例11においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例11は良好な結果を示した。一方、比較例11においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は45%程度変化し、実施例11は改善を要する結果となった。すなわち、実施例11は、第9実施例よりも可変抵抗層64aの膜厚が薄くなっても、バリアハイト制御層63a、65aを設けることでデータ保持特性が比較例11よりも向上することを示した。
【0112】
[実施例12]
実施例12として次に示すサンプルを測定した。実施例12において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはAl系の膜を用いた。
【0113】
一方、実施例12と比較するため、実施例12からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例12)を測定した。
【0114】
実施例12においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例12は良好な結果を示した。一方、比較例12においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は40%程度変化し、実施例12は改善を要する結果となった。すなわち、実施例12は、85℃においてバリアハイト制御層63a、65aをSiO系の膜の代わり、Al系の膜で構成してもデータ保持特性が比較例12よりも向上することを示した。
【0115】
[実施例13]
実施例13として次に示すサンプルを測定した。実施例13において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはSi系の膜を用いた。
【0116】
一方、実施例13と比較するため、実施例13からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例13)を測定した。
【0117】
実施例13においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例13は良好な結果を示した。一方、比較例13においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は40%程度変化し、比較例13は改善を要する結果となった。すなわち、実施例13は、85℃においてバリアハイト制御層63a、65aをSiO系の膜の代わり、Si系の膜で構成してもデータ保持特性が比較例13よりも向上することを示した。
【0118】
[実施例14]
実施例14として次に示すサンプルを測定した。実施例14において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはAlN系の膜を用いた。
【0119】
一方、実施例14と比較するため、実施例14からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例14)を測定した。
【0120】
実施例14においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例14は良好な結果を示した。一方、比較例14においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は40%程度変化し、比較例14は改善を要する結果となった。すなわち、実施例14は、85℃においてバリアハイト制御層63a、65aをSiO系の膜の代わり、Al系の膜で構成してもデータ保持特性が比較例14よりも向上することを示した。
【0121】
[実施例15]
実施例15として次に示すサンプルを測定した。実施例15において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、一方、上記実施例9〜14と異なり、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けなかった。バリアハイト制御層63aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63aはSiO系の膜を用いた。
【0122】
一方、実施例15と比較するため、実施例15からバリアハイト制御層63aを除いたサンプル(比較例15)を測定した。
【0123】
実施例15においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は30%以下であり、実施例15は良好な結果を示した。一方、比較例15においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は40%程度変化し、比較例15は改善を要する結果となった。
【0124】
[実施例16]
実施例16として次に示すサンプルを測定した。実施例16において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設け、一方、上記実施例9〜15と異なり、バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設けなかった。バリアハイト制御層65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層65aはSiO系の膜を用いた。
【0125】
一方、実施例16と比較するため、実施例16からバリアハイト制御層65aを除いたサンプル(比較例16)を測定した。
【0126】
実施例16においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は30%以下であり、実施例16は良好な結果を示した。一方、比較例16においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は40%程度変化し、比較例16は改善を要する結果となった。すなわち、実施例15、16は、85℃においてバリアハイト制御層63a、65aのいずれか一方のみでデータ保持特性が比較例15、16よりも向上することを示した。
【0127】
[実施例17]
以下、実施例17〜実施例24は、125℃においての保持特性を評価したものである。実施例17として次に示すサンプルを測定した。実施例17において、可変抵抗層64aの直径は0.25マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはSiO系の膜を用いた。
【0128】
一方、実施例17と比較するため、実施例17からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例17)を測定した。
【0129】
実施例17においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例17は良好な結果を示した。一方、比較例1においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は50%程度変化し、比較例17は改善を要する結果となった。すなわち、実施例17は、125℃においてバリアハイト制御層63a、65aを設けることでデータ保持特性が比較例17よりも向上することを示した。
【0130】
[実施例18]
実施例18として次に示すサンプルを測定した。実施例18において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは可変抵抗層64aと電極層66aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはSiO系の膜を用いた。
【0131】
一方、実施例18と比較するため、実施例18からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例18)を測定した。
【0132】
実施例18においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例18は良好な結果を示した。一方、比較例18においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は50%程度変化し、比較例18は改善を要する結果となった。すなわち、実施例18は、実施例17よりも可変抵抗層64aの直径が小さくなっても、バリアハイト制御層63a、65aを設けることでデータ保持特性が比較例18よりも向上することを示した。
【0133】
[実施例19]
実施例19として次に示すサンプルを測定した。実施例19において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは5ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはSiO系の膜を用いた。
【0134】
一方、実施例19と比較するため、実施例19からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例19)を測定した。
【0135】
実施例19においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例19は良好な結果を示した。一方、比較例19においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗が55%程度変化し、比較例19は改善を要する結果となった。すなわち、実施例19は、第17実施例よりも可変抵抗層64aの膜厚が薄くなっても、バリアハイト制御層63a、65aを設けることでデータ保持特性が比較例19よりも向上することを示した。
【0136】
[実施例20]
実施例20として次に示すサンプルを測定した。実施例20において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはAl系の膜を用いた。
【0137】
一方、実施例20と比較するため、実施例20からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例20)を測定した。
【0138】
実施例20においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例20は良好な結果を示した。一方、比較例20においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は50%程度変化し、比較例20は改善を要する結果となった。すなわち、実施例20は、125℃においてバリアハイト制御層63a、65aをSiO系の膜の代わり、Al系の膜で構成してもデータ保持特性が比較例20よりも向上することを示した。
【0139】
[実施例21]
実施例21として次に示すサンプルを測定した。実施例21において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはSi系の膜を用いた。
【0140】
一方、実施例21と比較するため、実施例21からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例21)を測定した。
【0141】
実施例21においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例21は良好な結果を示した。一方、比較例21においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は50%程度変化し、比較例21は改善を要する結果となった。すなわち、実施例21は、125℃においてバリアハイト制御層63a、65aをSiO系の膜の代わり、Si系の膜で構成してもデータ保持特性が比較例21よりも向上することを示した。
【0142】
[実施例22]
実施例22として次に示すサンプルを測定した。実施例22において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けた。バリアハイト制御層63a、65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63a、65aはAlN系の膜を用いた。
【0143】
一方、実施例22と比較するため、実施例22からバリアハイト制御層63a、65aを除いたサンプル(比較例22)を測定した。
【0144】
実施例22においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は10%以下であり、実施例22は良好な結果を示した。一方、比較例22においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は50%程度変化し、比較例22は改善を要する結果となった。すなわち、実施例22は、125℃においてバリアハイト制御層63a、65aをSiO系の膜の代わり、Al系の膜で構成してもデータ保持特性が比較例22よりも向上することを示した。
【0145】
[実施例23]
実施例23として次に示すサンプルを測定した。実施例23において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設け、一方、上記実施例17〜22と異なり、バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設けなかった。バリアハイト制御層63aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層63aはSiO系の膜を用いた。
【0146】
一方、実施例23と比較するため、実施例23からバリアハイト制御層63aを除いたサンプル(比較例23)を測定した。
【0147】
実施例23においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は30%以下であり、実施例23は良好な結果を示した。一方、比較例23においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は50%程度変化し、比較例23は改善を要する結果となった。
【0148】
[実施例24]
実施例24として次に示すサンプルを測定した。実施例24において、可変抵抗層64aの直径は0.043マイクロメートル(μm)とし、その高さは10ナノメートル(nm)とした。バリアハイト制御層65aは電極層66aと可変抵抗層64aとの間に設け、一方、上記実施例17〜23と異なり、バリアハイト制御層63aは電極層62aと可変抵抗層64aとの間に設けなかった。バリアハイト制御層65aの厚さは、2ナノメートル(nm)とした。なお、可変抵抗層64aは前述した組成範囲にあり、バリアハイト制御層65aはSiO系の膜を用いた。
【0149】
一方、実施例24と比較するため、実施例24からバリアハイト制御層65aを除いたサンプル(比較例24)を測定した。
【0150】
実施例24においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗変化は30%以下であり、実施例24は良好な結果を示した。一方、比較例24においては、情報記録時から200時間経過後の測定でメモリ層60aの抵抗は50%程度変化し、比較例24は改善を要する結果となった。すなわち、実施例23、24は、125℃においてバリアハイト制御層63a、65aのいずれか一方のみでデータ保持特性が比較例23、24よりも向上することを示した。
【0151】
以上、0.043マイクロメートル(μm)の直径、10ナノメートル(nm)の高さの可変抵抗層64aを持つ実施例2、4〜8及び比較例2、4〜8は、次の[表1]で表すことができる。優劣の判定として、情報記録時から200時間経過後にメモリ層60aの抵抗変化が10%未満である実施例、比較例に符号「○」を付した。情報記録時から200時間経過後にメモリ層60aの抵抗変化が10%以上、40未満である実施例に符号「△」を付した。
【表1】

【0152】
同様に、0.043マイクロメートル(μm)の直径、10ナノメートル(nm)の高さの可変抵抗層64aを持つ実施例10、12〜16及び比較例10、12〜16は、次の[表2]で表すことができる。優劣の判定として、情報記録時から200時間経過後にメモリ層60aの抵抗変化が40%以上である実施例に符号「×」を付した。
【表2】

【0153】
同様に、0.043マイクロメートル(μm)の直径、10ナノメートル(nm)の高さの可変抵抗層64aを持つ実施例18、20〜24及び比較例18、20〜24は、次の[表3]で表すことができる。
【表3】

【0154】
以上、実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0155】
10…メモリセルアレイ、 20a…ワード線選択回路、 20b…ワード線駆動回路、 30a…ビット線選択回路、 30b…ビット線駆動回路、 60…メモリ層、 61…ダイオード層、 62、66…電極層、 63、65…バリアハイト制御層、 64…可変抵抗層、50、70…導電層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線と第2配線との間に配置され、抵抗を変化させる可変抵抗素子を有するメモリセルを備えた不揮発性半導体記憶装置において、
前記メモリセルは、
前記可変抵抗素子として機能し、炭素(C)、珪素(Si)、及び水素(H)を含み、又は炭素(C)、珪素(Si)、及び水素(H)を含み且つ窒素(N)及び酸素(O)の少なくともいずれか一方を含んだ可変抵抗層と、
前記可変抵抗素子の一方の面側に設けられた第1電極層と、
前記可変抵抗素子の他方の面側に設けられた第2電極層と、
絶縁物からなり且つ前記可変抵抗層の一方の面と前記第1電極層との間に設けられた第1バリアハイト制御層とを備える
ことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第1バリアハイト制御層は、酸化物、窒化物、及び酸化物と窒化物との混合物のいずれかにて構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記メモリセルは、絶縁物からなり且つ前記可変抵抗層の他方の面と前記第2電極層との間に設けられた第2バリアハイト制御層を更に備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第1バリアハイト制御層は、珪素(Si)及びアルミニウム(Al)の少なくともいずれか一方を含む
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
前記可変抵抗層は、Si(Cであり、
5≦X≦40、20≦Y≦60、5≦Z≦65、50≦A≦100、0≦B≦20、0≦C≦4である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項6】
前記可変抵抗層は、3nm以上70nm以下の膜厚を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項7】
前記第1バリアハイト制御層は、0.5nm以上2nm以下の膜厚を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の不揮発性半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−160640(P2012−160640A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20598(P2011−20598)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】