説明

不揮発性記憶装置の製造方法

【課題】不揮発性記憶装置の特性を向上させ、微細化を図る。
【解決手段】第1の配線と第2の配線とに接続された記憶セルを有する不揮発性記憶装置の製造方法であって、前記第1の配線の上に、第1の電極膜を形成する工程と、前記第1の電極膜の上に、複数のカーボンナノチューブが絶縁材中に分散され、前記複数のカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブが前記絶縁材の表面から表出した層を形成する工程と、前記層の上に、第2の電極膜を形成する工程と、前記第2の電極膜の上に、前記第2の配線を形成する工程と、を備えたことを特徴とする不揮発性記憶装置の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、不揮発性記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NAND型フラッシュメモリに代表される不揮発性メモリは、大容量データ格納用として、携帯電話、デジタルスチルカメラ、USB(Universal Serial Bus)メモリ、シリコンオーディオ等に広く用いられている。また、新規のアプリケーションも急速に立ち上がってきており、その微細化および製造コスト低減が要求されている。特に、NAND型フラッシュメモリにおいては、複数のアクティブエリア(「A.A.」)がゲートコンダクタ(「G.C.」)を共有している。NAND型フラッシュメモリは、しきい値変動によって情報を記憶するトランジスタ動作を利用しており、さらなる特性の高均一化、高信頼性化、高速動作化、高集積化には限界があると言われている。
【0003】
これに対して、例えば、相変化型メモリ素子もしくは抵抗変化型メモリ素子は、抵抗材料の可変抵抗状態を利用するために、書き込み/消去動作においてトランジスタ動作が不要になる。これにより、さらなる特性の高均一化、高信頼性化、高速動作化、高集積化が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−235637号公報
【特許文献2】特開2002−346996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、特性をさらに向上させ、より微細化を図ることを可能にする不揮発性記憶装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の一態様の不揮発性記憶装置の製造方法は、第1の配線と第2の配線とに接続された記憶セルを有する不揮発性記憶装置の製造方法であって、前記第1の配線の上に、第1の電極膜を形成する工程と、前記第1の電極膜の上に、複数のカーボンナノチューブが絶縁材中に分散され、前記複数のカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブが前記絶縁材の表面から表出した層を形成する工程と、前記層の上に、第2の電極膜を形成する工程と、前記第2の電極膜の上に、前記第2の配線を形成する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の要部模式図である。
【図2】第1の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の要部模式図である。
【図3】第1の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図4】第1の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図5】第1の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図6】第1の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図7】第1の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図8】第1の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図9】第1の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図10】第1の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図11】比較例に係る不揮発性記憶装置の製造工程を説明する図である。
【図12】第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図13】第3の実施の形態の第1具体例に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図14】第3の実施の形態の第2具体例に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図15】第3の実施の形態の第3具体例に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図16】第3の実施の形態の第4具体例に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図17】第4の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図18】第4の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【図19】不揮発性記憶装置の記憶セルの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
先ず、不揮発性記憶装置の製造方法を説明する前に、不揮発性記憶装置の記憶セル部の構造および動作について説明する。
図1および図2は、第1の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の要部模式図である。
まず、図1を用いて、不揮発性記憶装置の記憶セル部について説明する。図1(a)は、記憶セル部の要部立体模式図である。図1(b)は、図1(a)の下部配線(ビットライン:BL)10と、上部配線(ワードライン:WL)11とがクロスする位置に設けられた記憶セル(記憶用単位要素)80の断面図である。不揮発性記憶装置の記憶部82は、クロスポイント型のReRAM(Resistance Random Access Memory)セルアレイ構造を有している。
【0009】
不揮発性記憶装置の記憶部82には、下部配線10(第1の配線)および上部配線11(第2の配線)が設けられ、記憶セル80は、下部配線10(第1の配線)と上部配線11(第2の配線)とにより挟まれている。上部配線11は、第1の方向(図中のX軸方向)に延在し、第2の方向(図中のY軸方向)に周期的に配置されている。下部配線10は、第1の方向に対して非平行な第2の方向(図中のY軸方向)に延在し、第1の方向に周期的に配置されている。すなわち、記憶セル80は、互いにクロスする下部配線10と上部配線11との間(クロスポイント位置)に存在している。下部配線10、上部配線11および記憶セル80は、図中のZ軸方向に積層することにより、記憶密度の増加を図ることができる。
【0010】
図1(b)に示すごとく、記憶セル80においては、下部配線10を下地としている。そして、下層から上層に向かって、メタル膜20、ダイオード層21、メタル膜22(第1の電極膜)、カーボンナノチューブを含む層(以下、CNT含有層)23、メタル膜25(第2の電極膜)が設けられている。CNT含有層23は、記憶層として機能する。記憶層としてCNT含有層23を用いれば、酸化膜(例えば、酸化マンガン)を記憶層で構成する不揮発性記憶装置に比べ、より高速のスイッチング動作が得られる。メタル膜25の上には、CMP(Chemical Mechanical Polishing)用のストッパ配線膜26が設けられている。
【0011】
各記憶セル80においては、それぞれのメタル膜20同士が下部配線10で接続され、それぞれのストッパ配線膜26同士が上部配線11で接続されている。各記憶セル80においては、ダイオード層21とCNT含有層23とが直列に接続され、各記憶セル80の一方向に電流が流れる。さらに、記憶部82においては、層間絶縁膜30が上部配線11と下部配線10との間に介設している。
【0012】
このように、記憶部82は、下部配線10、記憶セル80および上部配線11を含む組が複数段に積層した構造を有する。隣接する記憶セル80間には、素子分離層40が設けられ、各記憶セル80間の絶縁が確保されている。ただし、本実施の形態は、この具体例には限定されない。例えば、下部配線10、記憶セル80および上部配線11を有する組を複数段に積層せず、一組のみ有する不揮発性記憶装置も、本実施の形態の範囲に包含される。
記憶セル80の幅は、100nm以下である。本実施の形態で「幅」というときは、特に断らない限り、Z軸方向に略垂直に部位を切断した場合の部位の切断面の径をいう。
【0013】
このような記憶部82の下部配線10と上部配線11とに電圧を印加し、CNT含有層23内に所望の電流が流れると、CNT含有層23は、第1の状態と第2の状態との間で可逆的に遷移する。例えば、CNT含有層23の主面間に印加される電圧が変化し、CNT含有層23の抵抗値が第1の状態と第2の状態との間で可逆的に変化する。これにより、記憶セル80にデジタル情報(「0」または「1」等)を記憶したり、記憶セル80からデジタル情報を消去したりすることができる。なお、「0」→「1」の書き込みを「セット動作」といい、「1」→「0」の書き込みを「リセット動作」と言う。例えば、CNT含有層23の高抵抗状態を「0」とし、CNT含有層23の低抵抗状態を「1」とする。
【0014】
記憶部82は、図1(a)に示すReRAMセルアレイ構造のほか、図2(a)に示す構造としてもよい。
図2(a)に示すReRAMメモリセルアレイにおいては、ワードラインである上部配線11を各段毎に設けるのではなく、上部配線11を共通化して、この上部配線11の上下に記憶セル80が配置されている。
例えば、図示する上部配線11を対称軸として、上部配線11の下方の記憶セル80と、上部配線11の上方の記憶セル80と、が対称に配置されている。
このような構造によれば、記憶密度の向上のほか、上部配線11の共通化により、上部配線11への印加電圧遅延の抑制、書き込み動作および消去動作の迅速化、素子面積の低減等がなされる。
【0015】
このように、本実施の形態の不揮発性記憶装置は、X軸方向に延在する上部配線11と、X軸方向に対して非平行なY軸方向に延在する下部配線10と、上部配線11と下部配線10とが交差する位置に設けられた記憶セル80と、を有する。記憶セル80は、複数の積層膜からなり、積層膜は、CNT含有層23を有する。
【0016】
記憶セル80中のCNT含有層23に関し、より詳細に説明する。CNT含有層23付近の拡大図を、図2(b)もしくは図2(c)に示す。
まず、図2(b)に示すCNT含有層23は、メタル膜22とメタル膜25との間の間隙(ギャップ)23gに複数のCNT23cが分散している。間隙23gは、中空状態である。
また、図2(c)に示すCNT含有層23は、間隙23gを設けず、CNT23cの周辺に絶縁材23aが配置されている。すなわち、メタル膜22とメタル膜25との間に絶縁材23aが配設されている。
【0017】
本実施の形態では、複数のCNT23cと間隙23gとを含めてCNT含有層23と呼称する。あるいは、複数のCNT23cと絶縁材23aとを含めてCNT含有層23と呼称する。CNT含有層23においては、複数のカーボンナノチューブ23cの中の少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cの一方の端がメタル膜22に接触し、他方の端がメタル膜25に電気的に接続されている。
【0018】
なお、カーボンナノチューブ23cの折れ曲がった部分がメタル膜22もしくはメタル膜25に接触した形態も本実施の形態に含まれる。換言すれば、CNT含有層23においては、複数のカーボンナノチューブ23cの中の少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cの一部がメタル膜22に接触し、前記一部以外の他方の一部がメタル膜25に電気的に接続されている。このような形態も本実施の形態に含まれる。
【0019】
CNT23cは、単層のシングルウォールナノチューブ(SWNT)であってもよく、複層のマルチウォールナノチューブ(MWNT)であってもよい。SWNTの場合は、CNT23cの径は、2nm程度である。
また、絶縁材23aは、酸化ケイ素(SiO)、アルミナ(Al)、炭化酸化ケイ素(SiOC)、酸化マグネシウム(MgO)等の酸化物、レジスト等の有機絶縁物が該当する。絶縁材23aは、high−k材でもよく、low−k材でもよい。また、絶縁材23aの少なくとも一部を微粒子状態としてもよい。あるいは、絶縁材23aは、ポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)であってもよい。
【0020】
なお、下部配線10、上部配線11、ストッパ配線膜26の材質は、例えば、高温熱耐性に優れ、抵抗率の低いタングステン(W)が適用される。あるいは、窒化タングステン(WN)、炭化タングステン(WC)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)等を用いてもよい。
また、メタル膜20、22、25の材質は、例えば、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、白金(Pt)等が適用される。
【0021】
ダイオード層21は、例えば、ポリシリコン(poly-Si)を主成分とした整流素子であり、PIN型ダイオード、PN接合ダイオード、ショットキーダイオード、ツェナーダイオード等が該当する。なお、ダイオード層21の材質としては、シリコンの他、ゲルマニウム(Ge)等の半導体材料、NiO、TiO、CuO、InZnO等の金属酸化物の半導体材料を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
また、メタル膜20、22とダイオード層21との安定したオーミックコンタクトを確保するために、メタル膜20、22とダイオード層21との界面にメタル膜20、22とは成分の異なる層を設けてもよい。この層としては、例えば、金属シリサイド膜が挙げられる。金属シリサイド膜は、メタル膜20、22およびダイオード層21にアニール処理を施すことにより形成される。
【0023】
また、素子分離層40の材質は、酸化シリコン(SiO)、FSG(SiOF)、BSG(SiO−B2O、SiOB)、HSQ(Si−H含有SiO)、多孔質シリカ、炭素含有多孔質シリカ、炭素含有SiO(SiOC)、窒化シリコン(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al)、酸化窒化シリコン(SiON)、ハフニア(HfO)、MSQ(メチル基含有SiO)、多孔質MSQ、ポリイミド系高分子樹脂、パリレン系高分子樹脂、テフロン(登録商標)系高分子樹脂、アモルファスカーボン、フッ素含有アモルファスカーボン等である。
【0024】
素子分離層40については、絶縁材23aよりも密度を高く構成してもよい。例えば、シリコン(Si)を含む素子分離層40については、高密度プラズマを用いたCVDで形成し、絶縁材23aよりも密度を高く構成してもよい。あるいは、素子分離層40を塗布法で形成する場合には、ベーキング処理等を施して、絶縁材23aよりも密度を高く構成してもよい。
なお、図で例示されたCNT含有層23の構造は模式図であり、CNT23cの密度は、実際のCNT23cの密度を示すものではない。実際には、CNT含有層23には、図示された数より多数のCNT23cが含まれている。
【0025】
次に、記憶セル80の製造工程について説明する。
図3〜図10は、第1の実施の形態に係る記憶セルの製造工程を説明する図である。
【0026】
先ず、記憶セル80と同じ積層構成を有する積層体を形成する。例えば、図3(a)に示すように、シリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)等を主成分とする半導体基板(図示しない)の上層に、平面状(ベタ状)の下部配線層10Aを形成する。続いて、下部配線層10Aの上に、メタル膜20/ダイオード層21/メタル膜22の順で積層膜を形成する。下部配線層10A/メタル膜20/ダイオード層21/メタル膜22は、例えば、スパッタリング法またはCVD法により形成する。
【0027】
次に、CNT23cを分散させた溶液をメタル膜22の上に塗布する。塗布は、スピンコートにより行う。CNT23cを分散させた溶液の溶媒は、水、有機溶剤(例えば、エタノール等)である。これにより、メタル膜22の上に、CNT23cを含む塗布膜29が形成する。塗布膜29においては、いずれかのCNT23cの一方の端がメタル膜22と接触している。図3(a)には、部分Bにおいて、CNT23cの一方の端がメタル膜22と接触した状態が示されている。なお、CNT23cがメタル膜22と接触する部分は、上記一方の端のほかのCNT23cの部分でもよい。すなわち、CNT23cの一部がメタル膜22に接触している。他の実施の形態においても同様である。
【0028】
次に、図3(b)に示すように、塗布膜29を加熱して溶媒を蒸発(気化)させる。これにより、メタル膜22の上には、溶媒がなく、複数のCNT23cが分散したCNT分散層27が形成する。それぞれのCNT23cは、メタル膜22の上で所定の間隔で離れている。あるいは、それぞれのCNT23cは、互いに絡み合っている。
【0029】
次に、図4(a)に示すように、ALD(Atomic Layer Deposition)、MLD(Molecular Layer Deposition)、プラズマCVD、塗布法等を用いて、CNT23cの周りに絶縁材23aを含侵させる。これにより、CNT23c間に絶縁材23aが埋め込まれる。絶縁材23aは、CNT23cが絶縁材23aにより被覆される程度にまで形成する。これにより、絶縁材23a中に、複数のCNT23cが分散したCNT分散層28がメタル膜22の上に形成される。
【0030】
次に、図4(b)に示すように、CNT分散層28の上面側に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を施し、絶縁材23aの上面側を平坦化する。このCMP処理では、部分Bから延びた、少なくとも1つのCNT23cの他方の端が絶縁材23aから表出するように調整する。CNT23cが絶縁材23aから表出する部分は、上記他方の端のほかのCNT23cの部分でもよい。すなわち、CNT23cの一部を絶縁材23aから表出させる。CNT23cの一部を絶縁材23aから表出させる方法は、他の実施の形態にも転用される。なお、部分Bにおいては、CNT23cの一方の端がメタル膜22と接触した状態が維持されている。これにより、複数のカーボンナノチューブ23cのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cが絶縁材23cから表出された層が形成される。
【0031】
次に、図5(a)に示すように、CNT分散層28の上に、メタル膜25を形成する。これにより、図中の部分Aにおいてメタル膜25と接触し、部分Bにおいてメタル膜22と接触するCNT23cがCNT分散層28内に少なくとも1つ形成する。
なお、図5(a)では、複数のカーボンナノチューブ23cの中の少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cの一方の端がメタル膜22に接触し、他方の端がメタル膜25に電気的に接続されている形態が例示されているが、カーボンナノチューブ23cの折れ曲がった部分がメタル膜22もしくはメタル膜25に接触した形態も本実施の形態に含まれる。換言すれば、CNT分散層28においては、複数のカーボンナノチューブ23cの中の少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cの一部がメタル膜22に接触し、前記一部以外の他方の一部がメタル膜25に電気的に接続されている形態も本実施の形態に含まれる。
続いて、メタル膜25の上に、ストッパ配線膜26をスパッタリング法またはCVD法により形成する。ここまでの工程で形成した積層構造81を、立体模式図で表すと、図5(b)のようになる。
【0032】
次に、積層構造81に、選択的にエッチング処理を施して溝を形成し、この溝に素子分離層40を埋め込む。この状態を、図6(a)に示す。素子分離層40は、図中のY軸方向に延在している。積層構造81の最下層には、Y軸方向に延在する下部配線10が形成する。
【0033】
次に、図6(b)に示すように、積層構造81に、平面状(ベタ状)の上部配線層11Aを、例えば、スパッタリング法またはCVD法により形成する。続いて、フォトリソグラフィの手法を用いて、上部配線層11Aの上に、マスク部材(酸化膜)90をパターニングする。
【0034】
パターニングされたマスク部材90によって、隣接するマスク部材90とマスク部材90との間には、X軸方向に延在する溝部92が形成される。溝部92が延在する方向と、下部配線10が延在する方向とは略直交する。溝部92の底からは、上部配線層11Aが表出する。
【0035】
続いて、溝部92の下方に位置する積層構造81(点線91で示す部分)をエッチングにより除去する。これにより、溝部92から表出した積層構造81が選択的にエッチングされて、上部配線層11Aからメタル膜20までが除去される。この状態を、図7(a)に示す。図示するように、溝部92はより深く掘り下げられて、下部配線10の表面が表出する。上部配線層11Aは、エッチングされてX軸方向に延在する上部配線11が形成される。
【0036】
続いて、溝部92内に、希フッ酸溶液処理、フッ酸蒸気処理、アッシング処理、もしくは有機溶剤処理等を施して、図7(b)に示すように、絶縁材23aをCNT分散層28から除去する。これにより、メタル膜22とメタル膜25との間に間隙23gが形成される。間隙23gには、複数のCNT23cが分散している。間隙23gについては、図6(a)に示す段階で、素子分離層40を形成する前に、絶縁材23aをCNT分散層28から除去して形成してもよい。
【0037】
素子分離層40に関しては、絶縁材23aのエッチャントによって、エッチングされ難い材料が選択される。例えば、絶縁材23aとしては、酸化シリコン(SiO)等が選択された場合、素子分離層40としては、窒化シリコン(Si)等が選択される。この後においては、図8に示すように、溝部92に、素子分離層40を埋設する。上述したマスク部材90については、CMPで除去して、上部配線11の表面を表出させる。
【0038】
このような製造工程によって、下部電極10と上部電極11とが略直交する位置に、CNT含有層23を有する記憶セル80が形成される。
図2(c)に示す記憶セル80を形成するには、図7(b)に示す絶縁材23aの除去工程を省けばよい。
【0039】
なお、図4(b)に示す工程に代えて、図9に示す工程を経てもよい。
例えば、図4(a)に示すCNT分散層28を形成した後、図9(a)に示すように、CNT分散層28の上面に、CMPを施す。このCMP処理では、CNT23cの端が絶縁材23aの表面から突き出るように処理する。
【0040】
次に、CNT分散層28の表面にCNTを選択的に除去するアッシング処理を施す。これにより、CNT23cの突き出た部分が除去される。この際、CNT23cの端と、絶縁材23aの表面との面が面一になるように調整する。この状態を、図9(b)に示す。そして、この後においては、図5に示す製造工程から処理を始める。これにより、部分Aにおいてメタル膜25と接触し、部分Bにおいてメタル膜22と接触するCNT23cがCNT含有層23内に少なくとも1つ形成される。
【0041】
また、図4(b)に示す工程に代えて、図10に示す工程を経てもよい。
例えば、図10(a)に示すように、少なくとも1つのCNT23cの端が絶縁材23aの表面から突き出るように処理する。
続いて、CNT分散層28の上に、メタル膜25を形成する。この状態を、図10(b)に示す。このような方法に従えば、部分Aにおいて突出したCNT23cの端がメタル膜25内に食い込む。すなわち、絶縁材23aの表面から突出したCNT23cの端がメタル膜25内に挿入する。これにより、CNT23cの端と、メタル膜25との接触性がより向上する。
このような製造工程により、CNT含有層23を有する記憶セル80が形成される。
【0042】
これに対し、比較例に係る製造工程を図11に示す。比較例では、メタル膜25を形成する前に絶縁材23aが形成されない工程が示されている。
【0043】
図11は、比較例に係る不揮発性記憶装置の製造工程を説明する図である。
比較例では、図11(a)に示すように、メタル膜22の上に複数のCNT23cが分散したCNT分散層27を形成する。その後、絶縁材23aを形成せず、そのCNT分散層27の上に、例えば、スパッタリング法によりメタル膜25を直接的に形成する。この状態を、図11(b)に示す。
【0044】
このような製造工程では、メタル膜25を形成する前に、メタル膜25の下に、絶縁材23aが存在しないため、メタル膜25の金属成分25aがそれぞれのCNT23cの周りに付着してしまう。CNT23cの周りに堆積した金属成分25aの中には、メタル膜25とメタル膜22との間の電流経路になる場合がある(波線で囲まれたCNT23c参照)。その結果、メタル膜22とメタル膜25とが金属成分25aを通じて短絡する場合がある。
【0045】
メタル膜25を成膜直後に、金属成分25aがメタル膜25からメタル膜22にまで到達していなくても、金属成分25aが徐々に拡散し、メタル膜22とメタル膜25とが金属成分25aを通じて短絡する場合もある。特に、CNT分散層27が薄くなるほど、メタル膜22とメタル膜25とが短絡する確率は高くなる。
【0046】
比較例において、電気的な短絡を抑制するには、CNT分散層27を厚くする方法がある(例えば、80nm以上)。しかし、このような方法では、記憶セル80は、必然的に高アスペクト比となってしまう。その結果、比較例では、記憶セル80の機械的強度が弱くなって、記憶セル80が製造工程中、もしくは動作中に倒れたりする場合もある。これにより、製造歩留まりが低下したり、信頼性が低下する。
【0047】
これに対し、本実施の形態に係る製造工程では、絶縁材23aを含むCNT分散層28を形成した後、メタル膜25をCNT分散層28の上に形成している。従って、メタル膜25の金属成分25aは、CNT分散層28によって遮蔽されてメタル膜22にまで拡散し難い。その結果、メタル膜22とメタル膜25とは短絡し難い。
【0048】
メタル膜22とメタル膜25とが短絡し難くなることから、CNT分散層28については、例えば、80nm以下に形成することができる。その結果、記憶セル80のアスペクト比を低減させることができる。従って、記憶セル80の垂直加工が容易になり、記憶セル80の機械的強度が向上する。
【0049】
また、本実施の形態に係る製造工程では、CNT分散層28の表面は、CMP工程により平坦化される。従って、CNT分散層28から上層の製造工程では、フォトリソグラフィの焦点ずれ等が起こり難い。その結果、より微細な記憶セルを形成し得る。このように、本実施の形態の不揮発性記憶装置の製造方法に依れば、不揮発性記憶装置の特性がさらに向上し、記憶セルのより微細化を図ることができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
次に、記憶セルの製造工程の別の変形例について説明する。ここでは、主にCNT23cを絶縁材23a内に分散させた層を形成する製造工程の変形例について説明する。
図12は、第2の実施の形態に係る記憶セルの製造工程を説明する図である。
まず、図12(a)に示すように、下部配線層10Aの上に、メタル膜20/ダイオード層21/メタル膜22の順で積層膜を形成する。
【0051】
次に、複数のCNT23cを含む流動体31をメタル膜22の主面(上面)に塗布法により載置する。塗布は、スピンコートにより行う。流動体の溶媒として、上述した絶縁材23aの構成元素を含む溶剤が用いられる。溶剤としては、例えば、シラノールが挙げられる。すなわち、流動体31として、シラノール(Si(OH))含有溶媒に、複数のCNT23cを分散させた流動体が用いられる。そして、流動体31を塗布した後に、流動体31に加熱処理を施す。この加熱処理により、溶媒成分が蒸発し、シラノールが脱水重合反応する。
【0052】
なお、流動体31の他の一例としては、複数のCNT23cと絶縁材23aの微粒子とを水またはアルコールに含有させたものがある。このような流動体にも加熱処理を施して、その流動体中に含まれる水、アルコールを蒸発させる。
【0053】
なお、流動体31の中で、CNT23cの比重は溶媒に比して、より大きいことが望ましい。これにより、CNT23cがその自重で沈み、流動体31の下方に位置するメタル膜22に、いずれかのCNT23cの一方の端が接触し易くなる(部分B参照)。加熱処理後においては、シラノールが脱水重合反応して、複数のCNT23cが絶縁材23a中に分散されたCNT分散層24がメタル膜22の上に形成される。この状態を、図12(b)に示す。絶縁材23aの主成分は、酸化シリコン(SiO)である。
【0054】
続いて、CNT分散層24の上面側に、CMPを施し、CNT分散層24の上面側を平坦化する。これにより、絶縁材23aの表面が平坦化される。この際、少なくとも1つのCNT23cの他方の端がCNT分散層24から表出するように処理する。
【0055】
この後においては、図5を用いて説明したように、CNT分散層24の上に、メタル膜25、ストッパ配線膜26をスパッタリング法またはCVD法により形成する。これにより、部分Aにおいてメタル膜25と接触し、部分Bにおいてメタル膜22と接触するCNT23cが少なくとも1つCNT含有層23内に形成する。この後の工程は、第1の実施の形態と同様である。このような製造工程によれば、ALD、MLD、プラズマCVD、塗布法等を用いて、CNT23cの周りに絶縁材23aを含侵させることなく、絶縁材23a中に複数のCNT23cが分散されたCNT分散層24が形成される。このような製造工程においても、第1の実施の形態と同様の効果を得る。特に、第2の実施の形態においては、ALD、MLD、プラズマCVD、塗布法等を用いて、CNT23cの周りに絶縁材23aを含侵させる工程を省くことができるので、製造コストがより低減する。
【0056】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態においては、流動体31をメタル膜22の上に塗布した後に、絶縁材23aの表面近傍のCNT23cの状態に応じて、どのようにCNT23cを絶縁材23aから表出させるかを場合分けして説明する。第3の実施の形態では、絶縁材23aの表面近傍の状態について説明するために、図3等に比べ、微視的な断面図を用いる。
【0057】
(第1具体例)
第1具体例では、絶縁材23aの表面から、複数のカーボンナノチューブ23cのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cが表出された層を形成する前に、以下に示す製造過程を経る。
【0058】
図13は、第3の実施の形態の第1具体例に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【0059】
図13(a)に示すように、複数のCNT23cを含む流動体31をメタル膜22の主面(上面)に塗布法により載置する。塗布は、スピンコートにより行う。流動体31の溶媒としては、シラノール(Si(OH))含有溶媒、メチルシルセスキオキサン(MSQ)含有溶媒が用いられる。溶媒としては、例えば、アルコール等の有機溶媒が用いられる。あるいは、流動体31の他の例として、複数のCNT23cと絶縁材23aの微粒子とを水またはアルコールに含有させたものでもよい。
【0060】
なお、流動体31の中で、CNT23cの比重は溶媒に比して、より大きいことが望ましい。これにより、CNT23cがその自重で沈み、流動体31の下方に位置するメタル膜22に、いずれかのCNT23cの一方の端が接触し易くなる。
【0061】
図13(a)には、流動体31をメタル膜22の主面に載置した後、複数のCNT23cの一部が流動体31の表面から表出した状態が示されている。このような状態のまま、流動体31に加熱処理を施す。この加熱処理により、溶媒成分が蒸発し、シラノール、メチルシルセスキオキサンが脱水重合反応したり、微粒子同士が繋がったりする。この状態を、図13(b)に示す。
【0062】
図13(b)に示すように、加熱処理後においては、複数のCNT23cが絶縁材23a中に分散されたCNT分散層24がメタル膜22の上に形成される。絶縁材23aの主成分は、酸化シリコン(SiO)、ポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)である。
【0063】
第1具体例では、複数のCNT23cの一部が流動体31の表面から表出した状態のまま加熱処理を施した都合上、複数のカーボンナノチューブ23cのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cが絶縁材23aの表面から表出している。
【0064】
この表出されたカーボンナノチューブ23cの絶縁材23aの表面からの厚さd1が、CNT分散層24の上に形成されるメタル膜25の厚さ以上である場合には、表出されたカーボンナノチューブ23cの一部を除去する。例えば、厚さd1がメタル膜25の厚さよりも低くなるように、表出されたカーボンナノチューブ23cの一部を除去する。
【0065】
仮に、厚さd1がメタル膜25の厚さ以上にあると、CNT分散層24の上にメタル膜25形成した後、カーボンナノチューブ23cは、メタル膜25を突き抜け、ストッパ配線膜26、上部電極11に直接接触する可能性がある。
【0066】
第1具体例では、このような不具合が解消するために、図13(c)に示すように、表出されたカーボンナノチューブ23cの一部を除去して、厚さd1がメタル膜25の厚さよりも低くなるように調整する。カーボンナノチューブ23cの一部は、例えば、CMP、ドライエッチングによって除去される。
【0067】
ドライエッチングは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)、アッシング等である。ドライエッチングでは、エッチャントとして、は、酸素(O)系ガス、二酸化炭素(CO)系ガス、アンモニア(NH)系ガス、窒素(N)/水素(H)混合ガスのいずれか、あるいは、エッチャントとして、これらのガスの少なくとも2つ以上を組み合わせたガスが用いられる。
【0068】
このように、厚さd1をメタル膜25の厚さよりも低くなるように調整すれば、カーボンナノチューブ23cがメタル膜25を突き抜け、ストッパ配線膜26、上部電極11に直接接触することもない。
【0069】
なお、厚さd1がメタル膜25の厚さ未満である場合には、表出されたカーボンナノチューブ23cの一部を除去することなく、CNT分散層24の上にメタル膜25を形成すればよい。
【0070】
また、表出されたカーボンナノチューブ23cの一部を除去する際には、メタル膜22の表面からの複数のカーボンナノチューブ23cの高さと、メタル膜22の表面からの絶縁材23aの高さと、が略同じになるように調整してもよい。このような形態でも、絶縁材23aの表面から、複数のカーボンナノチューブ23cのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cが表出された層が形成される。
【0071】
この場合、複数のカーボンナノチューブ23cの高さとは、複数のカーボンナノチューブ23cのうち、メタル膜22の表面から最も高い位置にあるカーボンナノチューブ23cの高さとする。
【0072】
この後においては、図5を用いて説明したように、CNT分散層24の上に、メタル膜25、ストッパ配線膜26をスパッタリング法またはCVD法により形成する。
【0073】
(第2具体例)
第2具体例では、絶縁材23aの表面から、複数のカーボンナノチューブ23cのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cが表出された層を形成する前に、以下に示す製造過程を経る。
【0074】
図14は、第3の実施の形態の第2具体例に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【0075】
図14(a)には、流動体31に加熱処理を施した後の状態が示されている。図14(a)に示すように、複数のカーボンナノチューブ23cが絶縁材23aによって覆われている。このような場合には、絶縁材23aの表面を除去する。
【0076】
例えば、図14(b)に示すように、絶縁材23aの表面を除去して、複数のカーボンナノチューブ23cのうち少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cを絶縁材23aの表面から表出させる。絶縁材23aの表面は、例えば、CMP、ドライエッチング、ウェットエッチング等により除去される。ドライエッチングでは、エッチャントとして、例えば、フッ素(F)系ガス、フッ化炭素(CF)系ガス等が用いられる。ウェットエッチングでは、エッチャントとして、希HF溶液等が用いられる。
【0077】
この後においては、図5を用いて説明したように、CNT分散層24の上に、メタル膜25、ストッパ配線膜26をスパッタリング法またはCVD法により形成する。
【0078】
(第3具体例)
図15は、第3の実施の形態の第3具体例に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【0079】
第3具体例では、複数のCNT23cを含む流動体31をメタル膜22の主面に塗布法により載置する際に、予め、流動体31の溶媒または複数のCNT23cの量(体積(V)または重量(kg))を調整して、メタル膜22の表面からの複数のカーボンナノチューブ23cの高さと、メタル膜22の表面からの絶縁材23aの高さと、が同じになるように制御する。これにより、絶縁材23aの表面を除去せずとも、絶縁材23aの表面から、複数のカーボンナノチューブ23cのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cが表出された層が形成される。
【0080】
この後においては、図5を用いて説明したように、CNT分散層24の上に、メタル膜25、ストッパ配線膜26をスパッタリング法またはCVD法により形成する。
【0081】
(第4具体例)
第4具体例では、絶縁材23aの表面から、複数のカーボンナノチューブ23cのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cが表出された層を形成する前に、以下に示す製造過程を経る。
【0082】
図16は、第3の実施の形態の第4具体例に係る不揮発性記憶装置の記憶セル部の製造工程を説明する図である。
【0083】
図16(a)には、流動体31に加熱処理を施した後の状態が示されている。図16(a)に示すように、絶縁材23a中に分散された複数のカーボンナノチューブ23cの一部の群50が絶縁材23aの表面から選択的に表出している。このような場合、絶縁材23aの表面には、カーボンナノチューブ23cが表出しない領域51が選択的に形成される。換言すれば、複数のカーボンナノチューブ23cは、凸凹状に絶縁材23a中に分散されている。
【0084】
このような場合、CNT分散層24の上に、メタル膜25を形成すると、メタル膜25が凸凹形状の影響を受けて変形し、カーボンナノチューブ23cと、メタル膜25と、の電気的接触性が悪化する可能性がある。あるいは、メタル膜22/CNT含有層24/メタル膜25の積層構造が正常に保たれなくなる可能性がある。例えば、メタル膜22/CNT含有層24/メタル膜25の積層構造が崩れ、絶縁材23cがメタル膜25の下から挿入されたような構造になってしまう。
【0085】
このような場合、メタル膜22の表面からの複数のカーボンナノチューブ23cの高さと、メタル膜22の表面からの絶縁材23aの高さと、が同じになるように、複数のカーボンナノチューブ23cの一部と、絶縁材23aの表面と、を除去する。
【0086】
これにより、CNT分散層24の表面は略平滑になり、メタル膜25の変形による電気的信頼性の低下、記憶セル80の垂直形状の悪化は抑制される。
【0087】
以上、説明したように、第3の実施の形態では、絶縁材23aの表面から、複数のカーボンナノチューブ23cのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cを表出させて、カーボンナノチューブ23cとメタル膜25との電気的接続を確実にしている。その結果、不揮発性記憶装置の信頼性はより向上する。
【0088】
なお、第3の実施の形態の絶縁材23aは、塗布型絶縁層に限らず、第1の実施の形態で例示された複数のカーボンナノチューブ23cに含侵された絶縁材23aでもよい。
【0089】
(第4の実施の形態)
次に、記憶セルの製造工程のさらに別の変形例について説明する。ここでは、主にCNT23cを絶縁材23a内に分散させた層を形成する製造工程の変形例について説明する。
【0090】
図17および図18は、第4の実施の形態に係る記憶セルの製造工程を説明する図である。
図17(a)に示すように、メタル膜22の上に複数のCNT23cを載置し、メタル膜22の上に、複数のCNT23cが分散したCNT分散層27を形成する。
【0091】
続いて、図17(b)に示すように、ALD、MLD、プラズマCVD、塗布法等を用いて、CNT分散層27の上側に、絶縁材23aを含侵させる。絶縁材23aについては、CNT23cの他の端の全てが絶縁材23aにより被覆される程度にまで形成する。CNT分散層27の上側では、それぞれのCNT23c間に絶縁材23aが埋め込まれる。
【0092】
この際、絶縁材23aとメタル膜22とは離してもよい。すなわち、絶縁材23aと、メタル膜22との間に間隙23gが形成してもよい。このような構成であっても、CNT分散層28の上側には、絶縁材23aが設けられたため、この絶縁材23aが後述するメタル膜25のバリア層として機能する。
【0093】
続いて、CNT分散層28のエッチバックを施して、図17(c)に示すように、CNT23cのうちの少なくとも1つの端を絶縁材23aの表面から表出させる(図示しない)。エッチバックの方法は、ドライエッチングでもよく、ウェットエッチングでもよい。エッチバック後のCNT分散層27の表面は、それぞれのCNT23cの他方の端の高さの差が反映されて凹凸になる。
【0094】
次に、図18(a)に示すように、CNT分散層28の上に、メタル膜25を形成する。これにより、絶縁材23aから表出したCNT23cとメタル膜25が接触する。この段階では、メタル膜25の表面は、エッチバック後のCNT分散層27の表面の凹凸形状が反映されて凹凸になる。
【0095】
なお、図18(a)では、複数のカーボンナノチューブ23cの中の少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cの一方の端がメタル膜22に接触し、他方の端がメタル膜25に電気的に接続されている形態が例示されているが、カーボンナノチューブ23cの折れ曲がった部分がメタル膜22もしくはメタル膜25に接触した形態も本実施の形態に含まれる。換言すれば、複数のカーボンナノチューブ23cの中の少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cの一部がメタル膜22に接触し、前記一部以外の他方の一部がメタル膜25に電気的に接続されている形態も本実施の形態に含まれる。
【0096】
次に、図18(b)に示すように、メタル膜25の表面をCMPにより平坦化する。この後においては、図5を用いて説明したように、メタル膜25の上に、ストッパ配線膜26をスパッタリング法またはCVD法により形成する。そして、この後の工程は、実施例1と同様に処理する。
このような製造工程により、CNT23cを絶縁材23a内に分散させたCNT分散層28を形成してもよい。
【0097】
以上説明した製造方法によって形成された記憶セル80の動作について説明する。以下の説明では、図2(b)に示した記憶セル80を例に説明する。
図19は、不揮発性記憶装置の記憶セルの動作を説明する図である。
まず、図19(a)に示す初期状態では、複数のカーボンナノチューブ23cの中の少なくとも1つのカーボンナノチューブ23cの一方の端がメタル膜22に接触し、他方の端がメタル膜25に電気的に接続している。それぞれの接触した部分を部分A、部分Bとする。
【0098】
CNT23cの両端がメタル膜22およびメタル膜25に接触している場合は、メタル膜22とメタル膜25との間の抵抗は、この接触しているCNT23cの抵抗によって決定される。このときの抵抗を第1の抵抗とする。
【0099】
次に、第1の抵抗のリセット動作を行う。リセット動作前の部分Bでは、CNT23cの一方の端がメタル膜22と接触し、部分Aでは、CNT23cの他方の端がメタル膜25と接触している。従って、メタル膜22とメタル膜25との間に第1の電圧を印加すると、部分Aと部分Bとを繋ぐCNT23cに優先的に電流が流れる。
【0100】
この状態で、所定の時間(セット時と比べ長時間)、電流を流し続けると、大電流による発熱によって、例えば、部分A付近のCNT23cが断線する。この状態を、図19(b)に示す。これにより、メタル膜22とメタル膜25との間の抵抗が急激に高くなる。このときの抵抗を第2の抵抗とする。すなわち、メタル膜22とメタル膜25との間の抵抗は、低抵抗状態から高抵抗状態に変化する。
【0101】
続いて、記憶セル80に対しセット動作を行うと、再び、メタル膜22とメタル膜25との間の抵抗は、高抵抗状態から低抵抗状態へ変化する。
この理由は、(1)一旦、断線したCNT23cがメタル膜25にまで延びて、再度メタル膜25に接触する。(2)断線して離れたCNT23c同士が再度ファンデルワールス力により接触する。(3)メタル膜22とメタル膜25とが導通する、別のCNT23cが発生する、等が考えられる。
【0102】
また、上述した理由のほか、電流が通電するCNT23cにおいて、CNT23cの結合状態が第1の状態と第2の状態との間で可逆的に遷移する場合がある。ここで、第1の状態とは、例えば、炭素−炭素結合のsp状態であり、第2の状態とは、例えば、sp状態が該当する。あるいは、記憶セル80の動作では、CNT含有層23とメタル膜との界面で、酸化還元反応が繰り返し起きる場合もある。これにより、CNT含有層23の抵抗が可逆的に変化する。
なお、セット動作では、リセット動作よりも短い時間で電圧を印加するので、CNT23cは断線し難い。そして、第1の状態を情報「0」、第2の状態を情報「1」と定めれば、記憶セル80には、繰り返し情報が書き込まれたり、消去されたりする。
【0103】
このように、記憶セル80では、CNT23cが第1の状態と第2の状態との間で可逆的に変化することによって、CNT含有層23自体が記憶のスイッチング(情報の書き込み、消去)に寄与する。
【0104】
なお、実際には、絶縁材23a中に分散しているCNT23c同士が互いに絡み合っている場合もある。従って、メタル膜22とメタル膜25との通電経路は、1本のCNT23cであるとは限らない。例えば、通電経路は、部分Aにてメタル膜25と接触したCNT23cから、このCNT23cと接触した他のCNTに移り、この他のCNTが接触するメタル膜22へとなる場合もある。
しかし、このような場合であっても、メタル膜25側では、部分Aというピンポイントで、CNT23cとメタル膜25とが接触していることには変わりがない。これにより、上述した動作が可能になる。
【0105】
以上、具体例を参照しつつ、本実施の形態について説明した。しかし、本実施の形態はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本実施の形態の特徴を備えている限り、本実施の形態の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0106】
例えば、本実施形態の不揮発性記憶装置は、ふたつの配線の交差する箇所に記憶セルを接続した、いわゆるクロスポイント型には限定されない。この他にも、例えば、複数の記憶セルのそれぞれに対してプローブを接触させて書き込みや読み出しを実行する、いわゆるプローブメモリ型や、トランジスタなどのスイッチング素子により記憶セルを選択して書き込みや読み出しを実行する形式のメモリも、本実施の形態の範囲に包含される。
【0107】
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて複合させることができ、これらを組み合わせたものも本実施の形態の特徴を含む限り本実施の形態の範囲に包含される。
その他、本実施の形態の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本実施の形態の範囲に属するものと了解される。
たとえば、必要に応じて、ダイオード層を記憶セルから取り除いた形態も本実施の形態に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
10 下部配線
10A 下部配線層
11 上部配線
11A 上部配線層
20、22、25 メタル膜
21 ダイオード層
23 カーボンナノチューブ含有層(CNT含有層)
23a 絶縁材
23c カーボンナノチューブ(CNT)
23g 間隙
25a 金属成分
26 ストッパ配線膜
24、27、28 CNT分散層
29 塗布膜
30 層間絶縁膜
31 流動体
40 素子分離層
80 記憶セル
81 積層構造
82 記憶部
90 マスク部材
92 溝部
91 点線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の配線と第2の配線とに接続された記憶セルを有する不揮発性記憶装置の製造方法であって、
前記第1の配線の上に、第1の電極膜を形成する工程と、
前記第1の電極膜の上に、複数のカーボンナノチューブが絶縁材中に分散され、前記複数のカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブが前記絶縁材の表面から表出した層を形成する工程と、
前記層の上に、第2の電極膜を形成する工程と、
前記第2の電極膜の上に、前記第2の配線を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項2】
前記複数のカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブの一部を、前記絶縁材の表面を除去することにより表出させることを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項3】
前記層を形成する工程は、前記第1の電極膜の上に、複数のカーボンナノチューブを載置した後、前記複数のカーボンナノチューブに前記絶縁材を含侵させる工程を含むことを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項4】
前記層を形成する工程は、前記複数のカーボンナノチューブを含む流動体を前記第1の電極膜の上に載置した後、前記流動体に加熱処理を施す工程を含むことを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項5】
前記層を形成する前に、前記複数のカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つのカーボンナノチューブが前記絶縁材の前記表面から表出し、表出された前記カーボンナノチューブの前記絶縁材の前記表面からの厚さが前記第2の電極膜の厚さ以上である場合には、前記カーボンナノチューブの前記絶縁材の前記表面からの厚さが前記第2の電極膜の厚さよりも低くなるように、表出された前記カーボンナノチューブの一部を除去することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項6】
前記層を形成する前に、前記複数のカーボンナノチューブが前記絶縁材によって覆われた場合、前記絶縁材の前記表面を除去して、前記複数のカーボンナノチューブのうち少なくとも1つのカーボンナノチューブを前記絶縁材の前記表面から表出させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項7】
前記層を形成する前において、前記絶縁材中に分散された前記複数のカーボンナノチューブの一部が前記絶縁材の表面から選択的に表出した場合、前記第1の電極膜の表面からの前記複数のカーボンナノチューブの高さと、前記第1の電極膜の前記表面からの前記絶縁材の高さと、が略同じになるように、前記複数のカーボンナノチューブの一部と、前記絶縁材の表面と、を除去することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブの前記一部を前記絶縁材の表面から突出させ、突出させた前記一部が前記第2の電極膜内に挿入されるように前記絶縁膜の上に、前記第2の電極膜を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁材を除去して、前記第1の電極膜と前記第2の電極膜とのあいだに間隙を形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項10】
前記層の上に、前記第2の電極膜を形成した後に、前記第2の電極膜の表面を平坦化することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−19191(P2012−19191A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37238(P2011−37238)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】