説明

不燃性シートの接合物

【課題】熱溶着時における不燃性シートの反りや波打ちの発生を抑制しながら、十分な接着性を有する不燃性シートの接合物を提供すること。
【解決手段】端面を突き合わせて配列させた複数の不燃性シート1の一方面上を、突き合わせ部分を覆うように接合テープ2で被覆して、熱溶着させてなるシート接合物10であって、不燃性シート1は、対向するそれぞれ厚さ30〜180μmの塩化ビニル系樹脂を含む第1樹脂層の間に、当該不燃性シートの全質量に対する含有量が20〜60質量%のガラスクロスを備えるものであり、接合テープ2は、ガラスクロスに塩化ビニル系樹脂を含む樹脂組成物を含浸させた強化繊維層の両面に、それぞれ1つずつ、樹脂組成物と同一又は異なる樹脂からなる厚さ40〜200μmの第2樹脂層が形成されたものであり、ガラスクロスの含有量は、接合テープの全質量に対し10〜40質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性シートの接合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋外サインボード、内照式看板等の用途で大型のシートが用いられている。このような用途のシートとしては、機械的強度を保つためガラスクロスに樹脂を含浸させたシートを複数枚接合したものが用いられている。また、特に大型の内照式看板や屋外サインボードに用いられるシートとしては、近年、安全性の問題から不燃性が求められており、ガラスクロスに不燃性又は難燃性の樹脂を含浸させた不燃性又は難燃性シートの使用が提案されている。
【0003】
下記特許文献1では、難燃性シートを接合する際に、接合テープとしてテープ基材の一面にホットメルト接着剤を積層一体化してなるものやホットメルト接着剤自体をテープ状に形成してなるものが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−72378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討によると、通常のホットメルト接着剤を用いて、ホットメルトが行われる温度(100℃以上)で不燃性シートを熱溶着により接合させた場合、不燃性シートに用いられる樹脂によっては不燃性シートに反りや波打ち等が生じる場合がある。
【0006】
そこで本発明は、熱溶着時における不燃性シートの反りや波打ちの発生を抑制しながら、十分な接着性を有する不燃性シートの接合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、接合テープと不燃性シートが含有するガラスクロスと樹脂層の比率等を調整することで、不燃性シートに反り等を発生させずに熱溶着が行えることを見出し、本発明を達成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、端面を突き合わせて配列させた複数の不燃性シートの一方面上を、突き合わせ部分を覆うように接合テープで被覆して、熱溶着させてなるシート接合物であって、不燃性シートは、対向するそれぞれ厚さ30〜180μmの塩化ビニル系樹脂を含む第1樹脂層の間に、当該不燃性シートの全質量に対する含有量が20〜60質量%のガラスクロスを備えるものであり、接合テープは、ガラスクロスに塩化ビニル系樹脂を含む樹脂組成物を含浸させた強化繊維層の両面に、それぞれ1つずつ、樹脂組成物と同一又は異なる樹脂からなる厚さ40〜200μmの第2樹脂層が形成されたものであり、ガラスクロスの含有量は、接合テープの全質量に対し10〜40質量%である。
【0009】
上記構成によれば、熱溶着時における不燃性シートの反りや波打ちの発生を抑制できる結果、不燃性シートと接合テープの接着強度のバラツキを低減し、十分な接着性を有するシート接合物を提供できる。また、熱溶着時の不燃性シートの波打ちを抑制することで、不燃性シートの接合部の意匠性を向上できる。
【0010】
また、本発明のシート接合物は、不燃性シート及び接合テープに不燃性のガラスクロスが含まれ、不燃性の高い塩化ビニル系樹脂も含まれているため、シート接合物全体の不燃性を高めることができる。
【0011】
接合テープは、ガラスクロスと第2樹脂層との屈折率の差が0.01未満であって、ヘーズが40%以下であり、かつ、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。
【0012】
この場合、接合テープの透明性が著しく高くなる。内照式看板では、不燃性シートの接合面の背後から光源で照らされた場合に、接合テープと不燃性シートとで色等が異なると、接合テープが影として視認できてしまう課題がある。そこで、本発明の透明性を有する接合テープを内照式看板等に用いると、不燃性シートの接合面の背後から光源で照らした場合に不燃性シートの色によらず接合テープが影として視認することを回避できる。この結果、内照式看板としての意匠性が高められる。
【0013】
接合テープのガラスクロスを構成するガラスは、当該ガラスの全重量に対する重量%で、SiOが50.0〜60.0%、Alが10.0〜20.0%、Bが20.0〜30%、MgOが0.0〜4.0%、CaOが0.0%〜6.0%、LiO+NaO+KOが0.0〜0.5%、TiOが0.5〜5.0%の組成を有することが好ましい。
【0014】
この場合、熱溶着時における不燃性シートの反りや波打ちの低減効果に加え、接合テープの透明性の向上によってもシート接合物全体の意匠性を高められる。
【0015】
接合テープの第2樹脂層の融点が、不燃性シートの第1樹脂層の融点より、5〜10℃低いことが好ましい。なお、融点はJIS K 7121等に準拠して測定可能である。
【0016】
接合テープの第2樹脂層の樹脂が、不燃性シートの第1樹脂層の樹脂よりもその融点が低く溶融しやすいことで、同一の温度で処理した際に、接合テープの第2樹脂層の樹脂が接合テープのガラスクロスにより含浸しやすくなる。このため、接合テープのガラスクロスに樹脂が含浸することで、透光性等の接合テープの透明性が向上し、接合テープが影になることをより確実に回避できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱溶着時における不燃性シートの反りや波打ちの発生を抑制しながら、十分な接着性を有する接合テープの接合物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】不燃性シートの接合物の一実施形態を示す断面図である。
【図2】印刷層等を設けた内照式看板向けシート接合物の断面図である。(a)は両面印刷用シート接合物であり、(b)は片面印刷用シート接合物である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る不燃性シートの接合物の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は不燃性シート1の接合物の一実施形態を示す断面図である。図1に示すようにシート接合物10は、端面を突き合わせて配列させた複数の不燃性シート1の一方面上を、突き合わせ部分を覆うように接合テープ2で被覆して、熱溶着させてなる。以下、シート接合物10について詳細に説明する。
【0021】
不燃性シート1は、対向する塩化ビニル系樹脂を含む第1樹脂層4の間に、経糸及び緯糸(これらはいずれもガラス繊維束からなっており、ガラス繊維束は複数のガラスモノフィラメントから構成される)が製織されてなる、ガラスクロス3を備えるものである。
【0022】
第1樹脂層4の厚さは、30〜180μmであることが好ましく、70〜150μmであることがより好ましい。また、第1樹脂層4の厚さは、互いに同一であるか、接合テープ2で被覆されない側の第1樹脂層4の厚さが、もう一方の第1樹脂層4の厚さよりも20μmを超えない範囲で大きいことが好ましい。第1樹脂層4の厚さがこの範囲にあることで、接合テープ2で接合した場合であっても、ガラスクロス3を挟んだ両面の重量差によって不燃性シート1に歪み等が生じることがない。
【0023】
不燃性シート1のガラスクロス3の含有量は、不燃性シート1の全質量に対し20〜60質量%が好ましく、40〜50質量%がより好ましい。
【0024】
接合テープ2は、ガラスクロスに塩化ビニル系樹脂を含む樹脂組成物を含浸させた強化繊維層の両面に、それぞれ1つずつ、樹脂組成物と同一又は異なる樹脂からなる第2樹脂層が形成されたものである。接合テープ2にガラスクロスが含まれることで、不燃性シート1と接合テープ2がほぼ同等の熱膨張率を有するため、内照式看板等の高温環境下でこれらの接合物を使用しても、接合部での歪みの発生が抑えられる。
【0025】
第2樹脂層の厚さは、40〜200μmが好ましく、100〜140μmがより好ましい。また、強化繊維層の両面にそれぞれ1つずつ形成される、2つの第2樹脂層の厚さは、互いに同一であることが好ましい。
【0026】
接合テープ2のガラスクロスの含有量は、接合テープ2の全質量に対し10〜40質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましい。
【0027】
第1樹脂層4及び第2樹脂層の厚さ、不燃性シート1及び接合テープ2のガラスクロスの含有量が上記条件下であると、第1樹脂層4及び第2樹脂層が実質的に塩化ビニル系樹脂のみからなる場合に、不燃性シート1の熱溶着が60〜95(特に70〜80)℃で可能であり、かつ、十分な接着性を有する。また、短時間で接着可能なため不燃性シート1に反り等が生じにくい。
【0028】
接合テープ2は、ガラスクロスに塩化ビニル系樹脂を含む樹脂組成物を含浸させた強化繊維層の両面に、それぞれ1つずつ、樹脂組成物と同一又は異なる樹脂からなる第2樹脂層が形成されたものである。すなわち、樹脂組成物を含浸させたガラスクロスの両面に第2樹脂層が形成されていることが好ましい。樹脂組成物を含浸させたガラスクロスの両面に第2樹脂層が形成されていることで、接合テープ2の表面が第2樹脂層となり、表面平滑性が向上する。上記第2樹脂層はガラスクロスを含まず、厚さが40〜200μmであることが好ましく、接合テープ2の表面平滑性がさらに向上する。上記樹脂層の厚さを40μm未満にすると、ガラスクロスの模様が浮き出て接合テープ2の表面平滑性が低下する傾向にある。第2樹脂層の厚さを200μmより厚くすると、接合テープ2表面からガラスクロスまでの距離が増大するので、接合テープ2の燃えにくい性質が低下する傾向にある。第2樹脂層の厚さは100〜140μmであることがより好ましい。上記範囲にすることにより、燃えにくい性質を保ったまま、さらに接合テープ2の表面平滑性が向上する。
【0029】
上記第2樹脂層を構成する樹脂の材質は、上記強化繊維層を構成する樹脂組成物と同一であっても、異なっていてもよいが、接合テープ2の透明性を向上させる観点から、第2樹脂層を構成する樹脂の屈折率と強化繊維層を構成する樹脂組成物の屈折率との差が0.01未満であることが好ましく、0.005未満であることがより好ましい。また、第2樹脂層を構成する樹脂の材質を、耐ブロッキング性、柔軟性及び耐候性向上の点から、軟質塩化ビニルにすることが好ましい。また、第2樹脂層を構成する樹脂には、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤等を添加してもよい。
【0030】
なお屈折率は、JIS K 7142のプラスチックの屈折率測定方法に従って測定可能である。
【0031】
接合テープ2の全光線透過率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。このような透過率にすることで光が十分に通過し、接合テープ2の透明性が向上する。なお、全光線透過率とは、接合テープ2に入射した光のうち、接合テープ2を透過した光の割合である。
【0032】
接合テープ2のヘーズは40%以下であることが好ましい。ヘーズを40%以下にすることで、接合テープ2に入射した光が拡散せず、優れた透明性が得られる。ヘーズは20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、7%以下であることが特に好ましく、6%以下であることが最も好ましい。ヘーズがより小さいことで、曇りがなくなり接合テープ2の透明性がさらに向上する。
【0033】
接合テープ2における、強化繊維層を構成する樹脂組成物と第2樹脂層を構成する樹脂組成物とを合わせた樹脂組成物の単位面積あたりの質量は50〜900/mであることが好ましい。樹脂組成物の質量を50g/m以上にすることで、ガラスクロスの模様が浮き出る現象や、含浸不良により樹脂が白化して見える現象を防止できる。また、樹脂組成物15の質量を900g/m以下にすることで、接合テープ2におけるガラスクロスの割合が高くなり、接合テープ2の燃えにくい性質を高められる。
【0034】
不燃性シート1の表面平滑性向上の観点から、樹脂組成物の単位面積あたりの質量は200〜300g/mであることが好ましい。
【0035】
不燃性シート1におけるガラスクロス3の単位面積あたりの質量は100〜400g/mであることが好ましい。単位面積あたりの質量を100g/m以上にすることで、ガラスクロス3の強度を十分に高くし、不燃性シート1を複数枚接合した場合でも、接合物が十分な強度を有する。また、単位面積あたりの質量を400g/m以下にすることで、不燃性シート1を複数枚接合した場合でも、ガラスクロス3の自重によるシート接合物10のたわみ等が無視できる程度に小さくなる。不燃性シート1におけるガラスクロス3の単位面積あたりの質量は、より好ましくは200〜350g/mである。
【0036】
また、ガラスクロス3の強度を確保するために、不燃性シート1におけるガラスクロス3は、モノフィラメント径が3〜9μmであり、モノフィラメント本数が50〜800本であり、2.8〜135tex(g/1000m)のガラス繊維束を経糸及び緯糸として、経糸の織り密度を20〜70本/25mm、緯糸の織り密度を20〜70本/25mmとなるように平織りで製織したものであることが好ましい。また、ガラス含有量の高いガラス繊維合撚糸を経糸及び/又は緯糸として用いることが、ガラスクロス3の強度を向上させるためより好ましい。さらに、ガラスクロスの平滑性を向上させるために、不燃性シート1におけるガラスクロス3は開繊処理を施されることが好ましい。
【0037】
接合テープ2におけるガラスクロスの単位面積あたりの質量は10〜200g/mであることが好ましい。単位面積あたりの質量を10g/m以上にすることで、ガラスクロスの強度を十分に高くできる。また、単位面積あたりの質量を200g/m以下にすることで、ガラスクロスの厚さを薄くし、透明性をより容易に得ることができる。接合テープ2におけるガラスクロスの単位面積あたりの質量は、より好ましくは50〜150g/mである。
【0038】
また、ガラスクロスの強度を確保するために、接合テープ2におけるガラスクロスは、モノフィラメント径が3〜9μmであり、モノフィラメント本数が50〜800本であり、2.8〜135tex(g/1000m)のガラス繊維束を経糸及び緯糸として、経糸の織り密度を20〜70本/25mm、緯糸の織り密度を20〜70本/25mmとなるように平織りで製織したものであることが好ましい。さらに、ガラスクロスの厚さを減らし、全光線透過率を向上させるために、接合テープ2におけるガラスクロスは開繊処理を施されることが好ましい。開繊処理により、隣接する経糸の間及び隣接する緯糸の間に生じる糸間隔が0.5mm以下、好ましくは0.1mm以下となり、JIS L 1096の通気性試験方法による通気度が大きくとも10cm/cm/sとなることが、接合テープ2の燃えにくさが向上するため好ましい。
【0039】
不燃性シート1のガラスクロス3を構成するガラスは、特に限定されないが、入手容易性の観点から、Eガラスが好ましい。
【0040】
接合テープ2のガラスクロスを構成するガラスは、CaO及びMgOの少なくとも1種とSiOとを基本組成とするガラスで構成されている。また、該ガラスはCaO、MgO及びSiO以外の成分を含んでいてもよい。CaO、MgO及びSiO以外の成分としては、Al、Fe、NaO、TiO、LiO、KO、ZrO、B、MoO、GeO、P、P、V、BeO、ZnO、BaO及びCr等が挙げられる。但し、ガラス中のアルカリ金属酸化物の含有量が1質量%以下であることが好ましい。アルカリ金属酸化物の含有量を1質量%以下にすることで、接合テープ2の透明性を高くすることができる。
る。
【0041】
上記のガラス組成を有するものであればどのようなガラスを用いてもよいが、ガラスの
製造を考慮すると、好ましいガラスとしては、例えば、下表1に示す組成を有するCガラス、Tガラス、NEガラス等を例示できる。
【0042】
【表1】

【0043】
接合テープ2の透明性が優れることから、上記ガラスの中でもTガラス及びNEガラスを用いることが好ましく、透明性が特に優れることから、NEガラスを用いることがより好ましい。すなわち、接合テープ2のガラスクロスを構成するガラスは、当該ガラスの全重量に対する重量%で、SiOが50.0〜60.0%、Alが10.0〜20.0%、Bが20.0〜30.0%、MgOが0.0〜4.0%、CaOが0.0%〜6.0%、LiO+NaO+KOが0.0〜0.5%、TiOが0.5〜5.0%の組成を有することが好ましい。
【0044】
本実施形態における不燃性シート1の第1樹脂層4と接合テープ2の第2樹脂層を形成する樹脂組成物は、いずれも塩化ビニル系樹脂を含む。同種の樹脂材料を用いることで、相溶性が高められ、熱溶着温度を低下しながら短時間で不燃性シート1と接合テープ2とを接着できる。具体的には、温度60〜95℃、時間2〜12秒の条件下で熱溶着可能である。
【0045】
ここでいう塩化ビニル系樹脂とは、ポリ塩化ビニルのほか、塩化ビニルをモノマー単位として含む共重合体からなる分子鎖を有する樹脂をいう。塩化ビニルと共重合しうるモノマーとしては、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、マレイン酸又はそのエステル、アクリル酸又はそのエステル、及びメタクリル酸又はそのエステル等が挙げられる。
【0046】
また、接合テープ2の第2樹脂層の融点が、不燃性シート1の第1樹脂層4の融点より、5〜10℃低いことが好ましい。この場合、接合テープ2の第2樹脂層の樹脂が、不燃性シート1の第1樹脂層4の樹脂よりも軟化しやすいため、同一の温度で処理すると、接合テープ2の第2樹脂層の樹脂が接合テープ2のガラスクロスにより含浸しやすくなる。このため、接合テープ2のガラスクロスに樹脂が含浸することで、透光性等の接合テープ2の透明性が向上し、接合テープ2が影になることをより確実に回避できる。なお、第1樹脂層4及び第2樹脂層の融点は、後述する可塑剤の種類及び量を変えることで、調整可能である。
【0047】
接合テープ2における樹脂組成物は可塑剤を含むことが好ましい。可塑剤を含むことによって接合テープ2の柔軟性を向上させることができると共に、シワの発生を抑制できる。可塑剤は、上述の塩化ビニル系樹脂と相溶性のあるものであればよい。そのような可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、グリコールエステル類、エポキシ化エステル類、クエン酸エステル類、テトラ−n−オクチルシトレート、ポリプロピレンアジペート、スルホンアミド類、その他のポリエステル系可塑剤が挙げられる。フタル酸エステル類としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチルベンジル又は炭素数11〜13程度の高級アルコールのフタル酸エステルが挙げられる。脂肪族二塩基酸エステル類としては、例えば、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジブチルが挙げられる。リン酸エステル類としては、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−n−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニルが挙げられる。トリメリット酸エステル類としては、例えば、トリメリット酸−トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリブチルが挙げられる。グリコールエステル類としては、例えば、ペンタエリスリトールエステル、ジエチレングリコールベンゾエートが挙げられる。エポキシ化エステル類としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油が挙げられる。クエン酸エステル類としては、例えば、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリオクチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレートが挙げられる。これらの可塑剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0048】
可塑剤の配合割合は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して5〜30重量部であることが好ましい。この配合割合を5重量部以上にすることで、5重量部未満の場合と比較して、接合テープ2の柔軟性が増大する傾向にある。可塑剤の配合割合を30重量部以下にすることで、30重量部を超える場合と比較して、樹脂組成物中の塩化ビニル系樹脂の含有量が高くなるので、接合テープ2の燃えにくい性質が向上する傾向にある。可塑剤の配合割合は10〜20重量部であることがより好ましい。配合割合を上記範囲にすることで、接合テープ2の柔軟性がさらに増大し、燃えにくい性質がさらに向上する。また、接合テープ2の用途に応じて、樹脂組成物に可塑剤を添加しなくてもよい。なお、不燃性シート1は、接合テープ2よりもガラスクロスの含有量が高い場合、不燃性シート1の第1樹脂層4が接合テープ2の第2樹脂層よりも多量の可塑剤を含んでいても、不燃性シート1の不燃性が確保される。
【0049】
樹脂組成物には、可塑剤のほかにも難燃剤、紫外線吸収剤、充填材、帯電防止剤などの添加物が含まれていてもよい。
【0050】
<シート接合物>
シート接合物10は、図1に示すように、端面を突き合わせて配列させた複数の不燃性シート1の一方面上を、突き合わせ部分を覆うように接合テープ2で被覆して、熱溶着させてなる。
【0051】
熱溶着の手段としては、高周波溶着、熱風溶着又は熱版溶着が例示でき、高周波溶着が比較的低温で溶着可能なため好ましい。高周波溶着の手順としては、例えば、不燃性シート1を接合テープ2で被覆した部分を、高周波溶接機(山本ビニター社製等)を用いて、陽極電流0.5〜5A、温度60〜95℃の条件で、2〜12秒間かけて溶着させることができ、陽極電流0.6〜2A、温度70〜80℃の条件で、3〜8秒間かけて溶着させることがより好ましい。
【0052】
上述したように、短時間の熱溶着で接着できるため、不燃性シート1に反り等が生じない。但し、溶着温度が60℃より低いと、樹脂の軟化が不十分であり十分な接着性が得られない。一方、95℃より高いと不燃性シート1に反り等が生じるおそれがある。また、溶着温度が70〜80℃であることが、効率的に溶着を行うことができるため好ましい。
【0053】
このようにして得られたシート接合物10にさらにアクリル樹脂及びフッ素樹脂を含む印刷層5を設けることによって、屋外内照明式看板として用いることができる。印刷層5を設けたシート接合物10の断面図を図2に示す。(a)は、両面に印刷層5が設けられた、両面印刷用シート接合物の断面図であり、(b)は、片面のみに印刷層5が設けられた片面印刷用シート接合物の断面図である。(a)に示すように両面印刷用シート接合物は、ガラスクロス3の両面に第1樹脂層4が設けられ(不燃性シート1)、さらに第1樹脂層4の上下に印刷層5が設けられている。一方、片面印刷用シート接合物は、(b)に示すようにガラスクロス3の両面に第1樹脂層4が設けられ(不燃性シート1)、不燃性シート1の接合テープ2(図示せず)側に保護層6が、接合テープ2と逆側に印刷層5が設けられている。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
[ガラスクロスの作製]
Eガラス(成分:SiO 55wt%、Al 14wt%、CaO 23wt%、MgO 1wt%、RO 0.6wt%、B 6wt%、TiO 0.3wt%;Rはアルカリ金属)を用いた、モノフィラメント径6μm、モノフィラメント本数800本、67.5texのガラス繊維束を2本合撚したガラス繊維糸を経糸及び緯糸として、経糸の織り密度を30本/25m、緯糸の織り密度を32本/25mmとなるように平織りで製織した後、熱脱油及びメタクリロキシプロピルトリメトキシシランによる表面処理、並びに開繊処理を施し、不燃性シート用のガラスクロスを作製した。この結果得られたガラスクロスの単位面積当たりの質量は340g/mであり、厚さは270μmであった。
【0056】
表1に示すガラス組成のNEガラスを用いた、モノフィラメント径7μm、モノフィラメント本数200本、22.4texのガラス繊維束を経糸及び緯糸として、経糸の織り密度を60本/25m、緯糸の織り密度を58本/25mmとなるように平織りで製織した後、熱脱油及びメタクリロキシプロピルトリメトキシシランによる表面処理、並びに開繊処理を施し、接合テープ用のガラスクロスを作製した。この結果得られたガラスクロスの単位面積当たりの質量は100g/mであり、厚さは85μmであり、通気度は6cm/cm/sで、隣接する経糸の間及び隣接する緯糸の間の糸間隔は0.05mmであった。
【0057】
[不燃性シートの作製]
得られた不燃性シート用ガラスクロスの両面に、第1樹脂層として、厚さ80μmの軟質塩化ビニルシート(三菱樹脂社製、融点150℃)をそれぞれ貼り付け、110℃の熱プレスで表面を加熱加圧し積層して、不燃性シートを得た。このとき不燃性シートの全質量に対するガラスクロスの含有量が59質量%であった。
【0058】
[接合テープの作製]
塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体を主成分とする塩化ビニル樹脂(カネカ社製、商品名:カネビラック)100重量部に可塑剤としてジブチルフタレートを15重量部添加し、メチルエチルケトン75重量部で希釈した液を作製した。この液を上記の接合テープ用のガラスクロスに含浸させた後、120℃で乾燥させ、メチルエチルケトンを揮発させ、樹脂組成物を含浸させたガラスクロスを得た。この樹脂組成物を含浸させたガラスクロスの両面に、第2樹脂層として、厚さ120μmの透明軟質塩化ビニルシート(三菱樹脂社製、融点140℃)を貼り付け、110℃の熱プレスで表面を加熱加圧し積層して、接合テープを得た。得られた接合テープにおいて、接合テープの全質量に対するガラスクロスの含有量が20質量%であった。
[シート接合物の作製]
【0059】
上記のようにして作製した不燃性シートを複数用意し、各端面を突き合わせた後、その裏面に50mm幅の接合テープを、2枚の不燃性シートの接合幅がそれぞれ25mmとなるように熱溶着させ図1に示すように不燃性シートの接合物を得た。このときの溶着条件は、陽極電流0.65A、溶着温度80℃で、溶着時間7秒だった。
【0060】
(実施例2)
実施例1において第1樹脂層に用いた透明軟質塩化ビニルシートを第2樹脂層に用い、第2樹脂層に用いた透明軟質塩化ビニルシートを第1樹脂層に用いた以外は実施例1と同様の方法でシート接合物を作製した。
【0061】
(実施例3)
接合テープに用いるガラスクロスを構成するガラスとして表1に示すガラス組成のTガラスを用いた以外は実施例1と同様の方法でシート接合物を作製した。
【0062】
(実施例4)
接合テープに用いるガラスクロスを構成するガラスとしてEガラスを用いた以外は実施例1と同様の方法でシート接合物を作製した。
【0063】
(比較例1)
第2樹脂層として、厚さ120μmの透明軟質塩化ビニルシートに代えて、厚さ30μmの透明軟質塩化ビニルシートを用いた以外は実施例1と同様の方法でシート接合物を作製した。
【0064】
(比較例2)
第2樹脂層として、厚さ120μmの透明軟質塩化ビニルシートに代えて、厚さ240μmの透明軟質塩化ビニルシートを用いた以外は実施例1と同様の方法でシート接合物を作製した。
【0065】
(比較例3)
接合テープに、ガラス組成のEガラスを用いた、モノフィラメント径4.5μm、モノフィラメント本数100本、4.5texのガラス繊維束を経糸及び緯糸として、経糸の織り密度を69本/25m、緯糸の織り密度72本/25mmとなるように平織りで製織し、表面処理及び開繊処理を施したガラスクロスを用いた以外は実施例1と同様の方法でシート接合物を作製した。このとき用いた接合テープのガラスクロスの含有量は、接合テープの全質量に対し8質量%であった。なお、用いたガラスクロスの単位面積あたりの質量は24g/mであり、厚さは25μmであった。
【0066】
(比較例4)
第2樹脂層として、厚さ120μmの透明軟質塩化ビニルシートに代えて、厚さ40μmの透明軟質塩化ビニルシートを用い、接合テープに、ガラス組成のEガラスを用いた、モノフィラメント径9μm、モノフィラメント本数800本、135texのガラス繊維束を経糸及び緯糸として、経糸の織り密度を19本/25m、緯糸の織り密度18本/25mmとなるように平織りで製織し、表面処理及び開繊処理を施したガラスクロスを用いた以外は実施例1と同様の方法でシート接合物を作製した。このとき用いた接合テープのガラスクロスの含有量は、接合テープの全質量に対し42質量%であった。なお、用いたガラスクロスの単位面積あたりの質量は200g/mであり、厚さは250μmであった。
【0067】
また最終的に得られたシート接合物の透明性、屈折率、接着力、反り、波打ち、不燃性及び接合テープの視認性を評価した。得られた結果を作製した不燃性シート及び接着シートの条件とともに表2に示す。これらの特性は、下記の評価方法により求めた。
【0068】
(a)透明性の評価
実施例1〜4の透明性を評価した。具体的にはJIS K 7105に準拠して、積分球式測定装置を用いて接合テープの全光線透過率及び拡散透過率を測定し、その値からヘーズを求めた。
【0069】
(b)屈折率の測定
実施例及び比較例の不燃性シート接合物に用いられる部材の屈折率を測定した。具体的には、JIS K 7142に準拠して、アッベ屈折計を用いて不燃性シートの第1樹脂層、並びに接合テープのガラスクロス及び第2樹脂層の屈折率を測定し、これらの差を求めた。
【0070】
(c)接着力の測定
実施例及び比較例の不燃性シート接合物における接合テープの不燃性シートへの接着力を評価した。具体的には、シートの破断荷重の1/10の荷重をかけて、60℃の温度条件で24時間放置し、接合部が剥れるがどうかを目視で評価した。接合部が剥れない倍を○とし、接合部が剥れる場合を×とした。
【0071】
(d)反りの評価
実施例及び比較例の不燃性シート接合物の反りの評価を行った。具体的には、シート接合物を裁断して、接合部を中心に含む、10cm×10cmサイズの試験片を作製し、この試験片を平坦な机上に静置した際に、机の面から最も浮き上がった部分の机の面からの高さを、ノギスを用いて測定した。この高さが2mm未満の場合、反りがない(○)とし、2mm以上の場合、反りがあり、外観が損なわれる(×)とした。
【0072】
(e)波打ちの評価
実施例及び比較例の不燃性シート接合物の波打ちの評価を行った。具体的には、シート接合物の接合部を目視で観察し、波打ち現象が見られないものを○、外観が損なわれるものを×とした。
【0073】
(f)不燃性の評価
実施例及び比較例で得られた不燃性シート接合物について、発熱性試験を行い、これらの発熱しにくさ(不燃性)を評価した。具体的には、輻射電気ヒーターを用いてシート接合物の表面に照射を行って、シート接合物に50kWの輻射熱を与え、加熱開始後20分間におけるシート接合物の総発熱量を測定した。また、加熱開始後20分間において、シート接合物の発熱量が200kW/mを超えた時間を測定した。さらに、発熱試験後にシート接合物の外観を目視で観察した。建築基準法に準拠し、発熱性試験において総発熱量が8MJ/m以下であり、発熱量が10秒以上継続して200kW/mを超えず、かつ発熱性試験後のシート接合物に貫通する亀裂及び穴がない場合には、不燃性を有するとし(○)、これらの条件を満たさない場合に×とした。
【0074】
(g)接合テープの視認性の評価
実施例及び比較例で得られた不燃性シート接合物における接合テープの視認性を評価した。具体的には、シート接合物を、接合テープが存在する面から5cmの地点に設置された100Wの光源で照らした場合に、接合テープから存在しない側から、接合テープの影が視認できる場合を○とし、影が視認できるが、外観が損なわれないものを△、影が視認でき、外観が損なわれるものを×とした。
【0075】
【表2】

【符号の説明】
【0076】
1…不燃性シート、2…接合テープ、10…シート接合物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面を突き合わせて配列させた複数の不燃性シートの一方面上を、突き合わせ部分を覆うように接合テープで被覆して、熱溶着させてなるシート接合物であって、
前記不燃性シートは、対向するそれぞれ厚さ30〜180μmの塩化ビニル系樹脂を含む第1樹脂層の間に、当該不燃性シートの全質量に対する含有量が20〜60質量%のガラスクロスを備えるものであり、
前記接合テープは、ガラスクロスに塩化ビニル系樹脂を含む樹脂組成物を含浸させた強化繊維層の両面に、それぞれ1つずつ、前記樹脂組成物と同一又は異なる樹脂からなる厚さ40〜200μmの第2樹脂層が形成されたものであり、前記ガラスクロスの含有量は、前記接合テープの全質量に対し10〜40質量%である、シート接合物。
【請求項2】
前記接合テープは、ガラスクロスと第2樹脂層との屈折率の差が0.01未満であって、ヘーズが40%以下であり、かつ、全光線透過率が85%以上である、請求項1に記載のガラスシート接合物。
【請求項3】
前記接合テープのガラスクロスを構成するガラスは、当該ガラスの全重量に対する重量%で、SiOが50.0〜60.0%、Alが10.0〜20.0%、Bが20.0〜30.0%、MgOが0.0〜4.0%、CaOが0.0%〜6.0%、LiO+NaO+KOが0.0〜0.5%、TiOが0.5〜5.0%の組成を有する、請求項2又は3に記載のシート接合物。
【請求項4】
前記接合テープの第2樹脂層の融点が、前記不燃性シートの第1樹脂層の融点より、5〜10℃低い、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート接合物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−76410(P2012−76410A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225700(P2010−225700)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】