説明

不織布用バインダー組成物

【課題】 耐熱変色性、湿潤強度、乾燥強度および重合安定性に優れ、ホルマリン発生量が少なく、不快臭が低減され、おしぼり用として好適に用いることができる不織布用バインダー組成物を提供すること。
【解決手段】 脂肪族共役ジエン単量体10〜55重量%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜5重量%、エチレン性不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体0.1〜3重量%、およびこれらと共重合可能なモノオレフィン性単量体37〜88.9重量%からなる単量体混合物を、乳化重合して得られ、体積平均粒子径が150〜250nmである共重合体ラテックス(A)と、フェノール系老化防止剤(B)と、を含有する不織布用バインダー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布用バインダー組成物に係り、さらに詳しくは、耐熱変色性、湿潤強度、乾燥強度および重合安定性に優れ、ホルマリン発生量が少なく、不快臭の低減された不織布を得るための不織布用バインダー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛生上の理由から、布おしぼりに代わって、パルプ製不織布の使い捨ておしぼりが利用されるようになってきた。パルプ製不織布は、通常、ポリ酢酸ビニル系エマルジョン、ポリアクリル酸エステル系エマルジョン、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスなどの不織布用バインダーを用いて、パルプ繊維同士を接着することにより製造される。より具体的には、パルプ繊維同士を交絡させたパルプシート(パルプ基材)を上記バインダーに浸漬したり、あるいは、パルプシートに上記バインダーをスプレー塗布したりした後、乾燥して製造される。
【0003】
このようなパルプ製不織布からなる使い捨ておしぼりは、通常、湿潤状態で使用される。そのため、乾燥時のみならず、湿潤時においてもその強度に優れることが求められる。
【0004】
このようなおしぼり用の不織布に用いるためのバインダーとして、たとえば、特許文献1には、共役ジエン単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体およびこれらと共重合可能な他のモノオレフィン性単量体からなる単量体混合物を、高級アルコール硫酸エステル塩の存在下に共重合して得られる共重合体ラテックスバインダーが開示されている。
【0005】
しかしながら、おしぼり用の不織布のバインダーとして、この文献に記載のラテックスバインダーを使用した場合においては、乾燥強度や湿潤強度については良好な結果が得られるものの、不快臭が発生してしまうという問題があった。また、この文献記載の方法で、共重合体ラテックスを製造すると、重合時に微細凝集物が発生するという問題もあった。
【0006】
上記微細凝集物の発生を防止するために、本出願人は、先に、特許文献2において、共役ジエン単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体およびこれらと共重合可能な他の単量体からなる単量体混合物を、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物またはその塩およびアニオン性界面活性剤の存在下で、乳化重合して得られる共重合体ラテックス組成物を提案している。しかしながら、この特許文献2においては、微細凝集物の問題は解決するものの、特定の化合物の存在下で重合する必要があった。
【0007】
【特許文献1】特開2001−11766号公報
【特許文献2】特開2004−352895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、たとえば、おしぼり用などの不織布のバインダーとして使用され、耐熱変色性、湿潤強度、乾燥強度および重合安定性に優れ、ホルマリン発生量が少なく、不快臭の低減された不織布用バインダー組成物を提供することである。また、本発明は、この不織布用バインダー組成物をパルプ基材に付着してなり、おしぼり用の不織布として好適に用いることができる乾式パルプ不織布を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、所定組成の単量体混合物を乳化重合して得られ、体積平均粒子径が150〜250nmである共重合体ラテックス(A)と、フェノール系老化防止剤(B)と、を含有する新規な不織布用バインダー組成物が、耐熱変色性、湿潤強度、乾燥強度および重合安定性に優れ、ホルマリン発生量が少なく、しかも、不快臭を低減できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る不織布用バインダー組成物は、
脂肪族共役ジエン単量体10〜50重量%、
エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜5重量%、
エチレン性不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体0.1〜3重量%および、
これらと共重合可能なモノオレフィン性単量体37〜88.9重量%からなる単量体混合物を、乳化重合して得られ、
体積平均粒子径が150〜250nmである共重合体ラテックス(A)と、
フェノール系老化防止剤(B)と、
を含有する。
【0011】
本発明の不織布用バインダー組成物において、好ましくは、前記フェノール系老化防止剤(B)の含有量が、前記共重合体ラテックス(A)の固形分100重量部に対して、0.05〜5重量部である。
【0012】
本発明の不織布用バインダー組成物において、好ましくは、前記不織布用バインダー組成物が、さらにホルマリンキャッチャー(C)を含有する。
より好ましくは、前記ホルマリンキャッチャー(C)の含有量は、前記共重合体ラテックス(A)の固形分100重量部に対して、0.01〜5.0重量部である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の不織布用バインダー組成物は、上記所定組成の単量体混合物を乳化重合することにより得られ、体積平均粒子径が150〜250nmである共重合体ラテックス(A)を含有している。そのため、耐熱変色性、湿潤強度および乾燥強度に優れ、しかも、高い重合安定性を有し、微細凝集物の発生が有効に防止されている。さらに、本発明の不織布用バインダー組成物は、この重合体ラテックス(A)に加えて、フェノール系老化防止剤(B)を含有している。そのため、ホルマリンの発生量や、不快臭の低減が可能となる。なお、本発明の不織布用バインダー組成物においては、ホルマリンキャッチャー(C)をさらに含有させることで、ホルマリン発生量のさらなる低減が可能となる。
【0014】
また、本発明の不織布用バインダー組成物をパルプ基材に付着してなる乾式パルプ不織布は、耐熱変色性、湿潤強度および乾燥強度に優れ、ホルマリン発生量が少なく、しかも不快臭が有効に低減されている。そのため、たとえば、おしぼり用の不織布として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の不織布用バインダー組成物、およびこの不織布用バインダー組成物をパルプ基材に付着してなる乾式パルプ不織布を順に説明する。
【0016】
不織布用バインダー組成物
本発明の不織布用バインダー組成物は、共重合体ラテックス(A)と、フェノール系老化防止剤(B)とを含有する。
まず、共重合体ラテックス(A)について説明する。
【0017】
共重合体ラテックス(A)
本発明の不織布用バインダー組成物を構成する共重合体ラテックス(A)は、
脂肪族共役ジエン単量体、
エチレン性不飽和カルボン酸単量体、
エチレン性不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体、および
これらと共重合可能なモノオレフィン性単量体からなる単量体混合物を、乳化重合して得られ、体積平均粒子径が150〜250nmの範囲にあるラテックスである。
【0018】
脂肪族共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどが挙げられる。
これらのなかでも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらの脂肪族共役ジエン単量体は単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0019】
脂肪族共役ジエン単量体の含有量は、全単量体単位100重量%に対して、10〜55重量%であり、好ましくは15〜45重量%、より好ましくは20〜35重量%である。脂肪族共役ジエン単量体の含有量が少なすぎても、また、多すぎても、乾燥強度および湿潤強度が劣ってしまう場合がある。
【0020】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などのエチレン性不飽和多価カルボン酸およびそれらの無水物;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ2−ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;などが挙げられる。
これらのなかでも、エチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましく、特に、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。これらのエチレン性不飽和カルボン酸単量体は、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの塩の状態で使用しても良い。また、これらのエチレン性不飽和カルボン酸単量体は、単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0021】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体の含有量は、全単量体単位100重量%に対して、1〜5重量%であり、好ましくは1.2〜4重量%、より好ましくは1.4〜3重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体の含有量が少なすぎると、乾燥強度に劣る傾向にある。一方、多すぎると、ラテックス粘度が高くなり作業性に劣る傾向にある。
【0022】
エチレン性不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体としては、たとえば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。
これらのなかでも、特にN−メチロールアクリルアミドが好ましい。これらのエチレン性不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体は、単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0023】
エチレン性不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体の含有量は、全単量体単位100重量%に対して、0.1〜3重量%であり、好ましくは0.5〜2.7重量%、より好ましくは1.0〜2.5重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体の含有量が少なすぎると、湿潤強度に劣る傾向にある。一方、多すぎても湿潤強度が劣り、さらに遊離ホルマリン量が増加してしまう傾向にある。
【0024】
上記各単量体と、共重合可能なモノオレフィン性単量体としては、たとえば、エチレン性不飽和ニトリル単量体、芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体などが挙げられる。
これらのなかでも、エチレン性不飽和ニトリル単量体、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体から選択される少なくとも1種が好ましく、特に、芳香族ビニル単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0025】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどが挙げられる。これらのなかでも、特に、アクリロニトリルが好ましい。
【0026】
芳香族ビニル単量体としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。これらのなかでも、特に、スチレンが好ましい。
【0027】
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0028】
エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体としては、たとえば、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブチロール(メタ)アクリルアミドなどのN−(ヒドロキシアルキル)置換エチレン性不飽和カルボン酸アミド;(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0029】
これらの共重合可能なモノオレフィン性単量体の含有量は、全単量体単位100重量%に対して、37〜88.9重量%であり、好ましくは48.3〜83.3重量%、より好ましくは59.5〜77.6重量%である。共重合可能なモノオレフィン性単量体の含有量が少なすぎても、また、多すぎても、乾燥強度および湿潤強度に劣る傾向にある。
【0030】
共重合体ラテックス(A)を製造するための乳化重合の方法としては、特に限定されず、従来公知の乳化重合法を採用すれば良い。
【0031】
乳化重合に使用する重合開始剤としては、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等が挙げられる。
これらのなかでも、無機過酸化物が好ましく使用できる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、過酸化物開始剤は、重亜硫酸ナトリウム等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。
重合開始剤の使用量は、重合に使用する単量体混合物の全量100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜2重量部である。
【0032】
得られる共重合体ラテックスのテトラヒドロフラン不溶解分量を調節するために、乳化重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。
連鎖移動剤としては、たとえば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
これらのなかでも、アルキルメルカプタンが好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましく使用できる。これらの連鎖移動剤は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
連鎖移動剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.05〜2重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。
【0033】
本発明においては、乳化重合時に、さらにアニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。アニオン性界面活性剤を使用することにより、重合安定性を向上させることができ、結果として、微細凝集物の発生を有効に防止することができる。
アニオン性界面活性剤としては、乳化重合において従来公知のものが使用できる。アニオン性界面活性剤の具体例としては、ナトリウムラウリルサルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムオクチルサルフェート、ナトリウムデシルサルフェート、ナトリウムテトラデシルサルフェート、ナトリウムヘキサデシルサルフェート、ナトリウムオクタデシルサルフェートなどの高級アルコールの硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウムなどの脂肪族スルホン酸塩;などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。この使用量が少ないと、微細凝集物の含有量が多くなり、逆に多いと不織布の湿潤強度に劣る。また、アニオン性界面活性剤に加えて、従来公知のノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを併用することもできる。
【0034】
本発明においては、乳化重合時に、必要に応じて、さらにナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物またはその塩を使用しても良いが、使用量が多いと、得られる不織布が耐熱変色性に劣る傾向にあるため、使用しないことが好ましい。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物またはその塩を使用する場合には、単量体混合物100重量部に対して、0.1重量部以下であることが好ましい。
【0035】
本発明においては、乳化共重合の際に、水酸化ナトリウム、アンモニアなどのpH調整剤;分散剤、キレート剤、酸素捕捉剤、ビルダー、粒子径調節のためのシードラテックスなどの各種添加剤を適宜使用することができる。
【0036】
重合反応を行う際の重合温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃、好ましくは40〜80℃とする。このような温度範囲で乳化共重合し、所定の重合転化率で、重合停止剤を添加したり、重合系を冷却したりして、重合反応を停止する。重合反応を停止する重合転化率は、好ましくは93重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。
【0037】
重合反応を停止した後、所望により、未反応単量体を除去し、ラテックスpHや固形分濃度を調整して、共重合体ラテックスを得る。
【0038】
本発明で用いる共重合体ラテックス(A)には、公知の分散剤、増粘剤、老化防止剤、消泡剤、防腐剤、抗菌剤、ブリスター防止剤、pH調整剤などを必要に応じて添加することができる。
【0039】
本発明で用いる共重合体ラテックス(A)の体積平均粒子径は、150〜250nmであり、好ましくは160〜200nmである。粒子径が上記範囲にあると、乾燥強度および湿潤強度により優れる不織布が得られる。一方で、粒子径が小さすぎると、湿潤強度が低下する傾向にあり、大きすぎても湿潤強度が劣り、さらに重合安定性が低下する傾向にある。
【0040】
本発明で用いる共重合体ラテックスのテトラヒドロフラン不溶解分は、好ましくは60〜95重量%、より好ましくは70〜90重量%である。テトラヒドロフラン不溶解分が上記範囲にあると、乾燥強度および湿潤強度により優れる不織布が得られる。
【0041】
本発明で用いる共重合体ラテックスのテトラヒドロフラン可溶解分の重量平均分子量は、好ましくは30,000〜200,000、より好ましくは50,000〜150,000である。重量平均分子量が上記範囲にあると、乾燥強度および湿潤強度により優れる不織布が得られる。
【0042】
フェノール系老化防止剤(B)
本発明の不織布用バインダー組成物は、上記共重合体ラテックス(A)に加えて、フェノール系老化防止剤(B)を含有させることにより、不快臭の低減が可能となる。
【0043】
本発明の不織布用バインダー組成物中におけるフェノール系老化防止剤(B)の含有量は、上記共重合体ラテックス(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜3.0重量部、さらに好ましくは0.3〜1.0重量部である。フェノール系老化防止剤(B)の含有量が少なすぎると、不快臭の低減効果が得難くなる。一方、多すぎると、ラテックスの分散安定性を低下させる傾向がある。
【0044】
上記フェノール系老化防止剤としては、モノフェノール系老化防止剤、ビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤、チオビスフェノール系老化防止剤等が挙げられる。その具体例として、モノフェノール系老化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジオクチルフェノール、ブチルヒドロキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、ブチル化オクチル化フェノール等が挙げられる。ビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤としては、2,2’−メチレン−ビス−(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、変性ポリアルキル亜りん酸塩化多価フェノール等が挙げられる。チオビスフェノール系老化防止剤としては、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−o−クレゾール)等が挙げられる。
【0045】
フェノール系老化防止剤の中で好ましく用いられる老化防止剤としては、常温で固体であることが好ましい。上記の点を勘案して、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物等が挙げられ、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物が特に好ましい。
【0046】
老化防止剤の共重合体ラテックスへの添加方法は、特に限定されないが、共重合体ラテックスとの混合の容易さを考慮して、通常、液状(分散体:エマルジョン又はディスパージョン)で添加される。その老化防止剤分散体は、通常、エマルジョン法又は粉砕法によって調製される。
【0047】
エマルジョン法は、必要ならば、加熱して液状にした老化防止剤、乳化剤及び温水とを、十分に高速攪拌して、エマルジョンとして調製する方法である。
【0048】
粉砕法には、ターボミル、ジェットミル等を用いる乾式粉砕と、コロイドミル等を用いる湿式粉砕法がある。粉砕による到達粒径が小さいこと及び粉砕時の発熱が少ないことから湿式粉砕法が好ましく、これらのなかでも、メディア式湿式粉砕法が好ましい。メディア式湿式粉砕法では、ボールミル、高速ビーズミル等を用いることが可能である。これらのなかでも高速ビーズミルによる粉砕が好ましい。
【0049】
老化防止剤の粒子のうち、重量比率で最も多い粒子径である重量最頻粒子径は、ラテックス中での分散性が良好であり、かつ耐熱変色性、湿潤強度、および乾燥強度に優れる点で、1.8μm以下が好ましく、0.05μm以上、1.5μm以下が更に好ましい。
【0050】
ホルマリンキャッチャー(C)
本発明の不織布用バインダー組成物は、さらにホルマリンキャッチャー(C)を含有していても良い。ホルマリンキャッチャーは、ホルマリンを捕捉可能な化合物であり、ホルマリンの発生(すなわち、ホルマリンの大気中への拡散)を防止する効果を有する化合物である。
【0051】
ホルマリンキャッチャーとしては、たとえば、硫酸ヒドロキシルアミンや、尿素、エチレン尿素、ジシアンジアミド、塩酸ヒドロキシルアミン、などが挙げられる。これらのなかでも、特に硫酸ヒドロキシルアミンが好ましい。
【0052】
ホルマリンキャッチャー(C)の含有量は、共重合体ラテックス(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは0.01〜5.0重量部であり、より好ましくは0.1〜2.0重量部、さらに好ましくは0.2〜1.0重量部である。ホルマリンキャッチャーの含有量が少なすぎると、ホルマリンの発生量の抑制が困難となる傾向にある。
【0053】
不織布用バインダー組成物の調製
本発明の不織布用バインダー組成物は、上記した共重合体ラテックス(A)に、上述のフェノール系老化防止剤(B)、および必要に応じて添加されるホルマリンキャッチャー(C)を添加することにより調製することができる。
【0054】
共重合体ラテックス(A)に、フェノール系老化防止剤(B)およびホルマリンキャッチャー(C)を添加する時期としては、特に限定されず、乳化重合後の共重合体ラテックス(A)に、フェノール系老化防止剤(B)およびホルマリンキャッチャー(C)を添加する方法が好ましい。
【0055】
また、本発明の不織布用バインダー組成物には、たとえば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどの無機塩;ピロリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどの分散剤;ポリグリコール、脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーンオイルなどの消泡剤;ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレン・アルキルエーテルフォスフェートなどの浸透剤;エポキシ基を有する化合物、ブロックドイソシアネート化合物、エチレン尿素化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂などの架橋剤;防腐剤、抗菌剤、増粘剤、老化防止剤、pH調整剤などの助剤を適宜配合することができる。
【0056】
以上のようにして、本発明の不織布用バインダー組成物が得られる。
本発明の不織布用バインダー組成物は、耐熱変色性、湿潤強度および乾燥強度に優れ、微細凝集物の発生が有効に防止されており、ホルマリン発生量が少なく、しかも不快臭が低減されている。そのため、おしぼり用として使用されるパルプ製不織布用のバインダーとして、特に好適に用いることができる。また、おしぼり用として使用されるパルプ製不織布としては、乾式パルプ不織布、および湿式パルプ不織布が挙げられ、乾式パルプ不織布が特に好ましい。
【0057】
乾式パルプ不織布
本発明によって得られる乾式パルプ不織布は、上述した本発明の不織布用バインダー組成物を、パルプ基材に付着してなるものである。
本発明の不織布用バインダー組成物をパルプ基材に付着させる方法は、特に限定されず、たとえば、不織布用バインダー組成物を、パルプ基材の片面または両面に噴霧する方法などを採用することができる。
上記の方法にて、共重合体ラテックス組成物を不織布に付着させた後、乾燥し、必要に応じて、100〜200℃で加熱処理を施すことにより、十分な強度を有する乾式パルプ不織布が得られる。
【0058】
乾式パルプ不織布をおしぼりに使用する場合には、乾式パルプ不織布を殺菌剤溶液に含浸したり、乾式パルプ不織布に殺菌剤溶液をスプレー塗布したりした後、おしぼりに加工される。殺菌剤としては、安定化二酸化塩素が好ましく用いられる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。これらの例中の〔部〕および〔%〕は、特に断わりのない限り重量基準である。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0060】
実施例1
共重合体ラテックスの製造
攪拌装置を備えたステンレス製耐圧反応器に、シードラテックス(スチレン38部、1,3−ブタジエン60部及びメタクリル酸2部を重合して得られる、粒子径70nmの重合体粒子のラテックス)を固形分にて3部、スチレン:66部、1,3−ブタジエン:30部、アクリル酸:1部、メタクリル酸:1部、N−メチロールアクリルアミド:2部、アンモニウムラウリルサルフェート(アニオン性界面活性剤、花王(株)製 ラテムルAD−25):2部、t−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤):0.2部、キレート剤(キレスト400G 中部キレスト(株)製)0.05部、ハイドロサルファイト:0.01部、およびイオン交換水:108部を添加し、攪拌した。次いで、反応器内の温度を60℃に昇温した後、4%過硫酸カリウム水溶液:10部を投入して重合反応を開始させた。そして、重合反応を進行させ、重合転化率が70%に達したとき、反応温度を70℃に昇温した。反応温度を70℃に維持しながら、重合転化率が97%に達するまで、重合反応を継続した。その後、反応系を室温まで冷却して、重合反応を停止し、未反応単量体を除去した。その後、固形分濃度を47%、ラテックスpHを7.5に調整することにより、共重合体ラテックス(A)を得た。なお、ラテックスpHの調整は、10%アンモニア水溶液を添加することにより行った。
【0061】
得られた共重合体ラテックスの重合安定性(微細凝集物の含有量)および体積平均粒子径を、以下の方法により測定した。
【0062】
共重合体ラテックスの重合安定性(微細凝集物の含有量)
得られた共重合体ラテックス1,000gを、200メッシュの金網でろ過し、金網上に残る残渣の乾燥重量を求め、これを微細凝集物とし、共重合体ラテックス1,000g中の全固形分量に対する、微細凝集物の含有割合を求めることにより、重合安定性を評価した。本実施例においては、微細凝集物の含有割合が、0.01%以下を良好とした。結果を表1に示す。
【0063】
共重合体ラテックスの体積平均粒子径
共重合体ラテックスの体積平均粒子径は、粒子径測定機(コールターLS230:コールター社製)を用いて、測定した。結果を表1に示す。
【0064】
不織布用バインダー組成物およびパルプ不織布の製造
次いで、上記にて製造した共重合体ラテックスに、フェノール系老化防止剤であるp−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物(WINGSTAY L:GOODYEAR社製)を高速ビーズミルで粉砕した水分散液(固形分濃度:45%、重量最頻粒子径:1.3μm):0.5部(固形分)、およびホルマリンキャッチャーである硫酸ヒドロキシルアミン:0.5部を添加し、不織布用バインダー組成物を製造した。なお、老化防止剤およびホルマリンキャッチャーの添加量は、共重合体ラテックス中の固形分100部に対する添加量である。
【0065】
上記にて得られた不織布用バインダー組成物を、蒸留水を使用して、固形分濃度が5%になるように、希釈し、ローラーカードを用いて作成したパルプウェブ(NBKPパルプ、目付け量:40g/m、大きさ28cm×18cm)に均一になるように、6g/mの割合で、スプレー法により塗布した。次いで、不織布用バインダー組成物を塗布したパルプウェブを、温度140℃、10分間の条件で乾燥することにより、乾式パルプ不織布を得た。
【0066】
次いで、得られた乾式パルプ不織布に、安定化二酸化塩素の0.05%水溶液を2.5倍量含浸させ、湿潤状態のパルプ不織布(おしぼりサンプル)を得た。得られた湿潤状態のパルプ不織布について、臭気性、乾燥強度、湿潤強度、耐熱変色性(70℃×10時間、および70℃×20時間)、および遊離ホルマリン量を、以下の方法により測定した。
【0067】
臭気性
まず、安定化二酸化塩素水溶液を含浸させた湿潤状態のパルプ不織布(28cm×18cm)の長方向を二つ折りにし、次いで、これを丸めて、無臭のポリプロピレンフィルムにて完全に密封した。そして、1週間後に、この密封サンプルを開封し、3人のモニターテストを行い、次の判定基準で臭気性を評価した。結果を表1に示す。
○ : 無臭または僅かに臭う
△ : はっきり臭う
× : 強く臭う
【0068】
乾燥強度
安定化二酸化塩素水溶液を含浸させた湿潤状態のパルプ不織布を、温度130℃、3分間の条件で乾燥し、その後、温度23℃、相対湿度65%の恒温恒湿室に24時間放置した。そして、放置後の不織布を、幅2.5cm、長さ13cmの長方形に裁断することにより、乾燥強度測定用の試験片を作製した。次いで、得られた試料を、テンシロン万能試験機(RTC−1125A ORIENTIC製)により、荷重1kg、チャック間距離10cm、引張速度200mm/分の条件で、乾燥時の破断強度を測定した。なお、本実施例においては、破断強度の測定は、1種類の試料につき、9つのサンプルについて行い、その測定結果を平均することにより、乾燥強度を求めた。結果を表1に示す。
【0069】
湿潤強度
湿潤強度の測定は、乾燥強度の測定用の試験片と同様にして作製した幅2.5cm、長さ13cmの乾燥後の試験片を、さらに、温度23℃の蒸留水中に、1時間浸漬した後、紙製フキンで余剰水を除去したものを用い、それ以外は、乾燥強度の測定と同様に、湿潤時の破断強度を測定し、湿潤強度を求めた。結果を表1に示す。
【0070】
耐熱変色性
まず、安定化二酸化塩素水溶液を含浸させた湿潤状態のパルプ不織布の長方向を二つ折りにし、次いで、これを丸めて、無臭のポリエチレンフィルムにて密封した。次いで、密封したポリエチレンフィルムの一端をカットし、カットした部分を上端として、試験片を立てた状態にて、温度70℃の環境下に置いた。そして、試験開始後、10時間後、および20時間後の変色性の確認を行うことにより、耐熱変色性を評価した。なお、耐熱変色性の試験に際しては、1種類の試料につき、10個の試験片を使用し、その10個の試験片を重ねて、相対比較により、以下の判定基準に基づき、0.5刻みの数値(すなわち、たとえば、はっきりと変色であれば「3」、はっきりと変色と、かなり変色との中間であれば「2.5」)で判定を行った。耐熱変色性の結果は、「5」に近いほうが好ましい。結果を表1に示す。
5 : 全く変色しない
4 : 僅かに変色
3 : はっきりと変色
2 : かなり変色
1 : 非常に変色
【0071】
遊離ホルマリン量
遊離ホルマリン量の測定は、安定化二酸化塩素水溶液を含浸させた湿潤状態のパルプ不織布2.50gを秤り取り、JIS L1041(A法:アセチルアセトン法)に従い、遊離ホルマリン量(吸光度)の測定を行った。遊離ホルマリン量(吸光度)は低いほうが好ましく、本実施例においては、0.05以下を良好とした。結果を表1に示す。
【0072】
実施例2
ホルマリンキャッチャーである硫酸ヒドロキシルアミンの含有量を、0.5重量部から1重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、不織布用バインダー組成物および湿潤状態のパルプ不織布を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
実施例3
共重合体ラテックスを構成するスチレンの含有量を68部、1,3−ブタジエンの含有量を28部とし、フェノール系老化防止剤であるp−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物の含有量を、0.5部から1部に変更した以外は、実施例1と同様にして、不織布用バインダー組成物および湿潤状態のパルプ不織布を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
実施例4
共重合体ラテックスを構成するスチレンの含有量を68部、1,3−ブタジエンの含有量を28部とし、さらに、共重合体ラテックスの重合条件のうち、シードラテックスの使用量を2部に変更して、共重合体ラテックスの体積平均粒子径が、195nmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、不織布用バインダー組成物および湿潤状態のパルプ不織布を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
実施例5
共重合体ラテックスを構成するスチレンの含有量を70重量部、1,3−ブタジエンの含有量を26重量部とし、老化防止剤として、フェノール系老化防止剤である1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンを使用した以外は、実施例1と同様にして、不織布用バインダー組成物および湿潤状態のパルプ不織布を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
実施例6
共重合体ラテックスを構成するスチレンの含有量を70重量部、1,3−ブタジエンの含有量を26重量部とし、重合体ラテックスを製造する際に、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩(花王(株)製 デモールT−45):0.1重量部をさらに使用した以外は、実施例1と同様にして、不織布用バインダー組成物および湿潤状態のパルプ不織布を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
比較例1
老化防止剤として、フェノール系老化防止剤の代わりに、p−フェニレンジアミン系老化防止剤であるN−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミンを使用した以外は、実施例1と同様にして、不織布用バインダー組成物および湿潤状態のパルプ不織布を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
比較例2
共重合体ラテックスを構成するN−メチロールアクリルアミドの含有量を、2重量部から4重量部に増加させ、1,3−ブタジエンの含有量を28重量部とした以外は、実施例2と同様にして、不織布用バインダー組成物および湿潤状態のパルプ不織布を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
比較例3
共重合体ラテックスを構成するスチレンの含有量を68重量部、1,3−ブタジエンの含有量を28重量部とし、さらに、共重合体ラテックスの重合条件のうち、シードラテックスの使用量を10部に変更して、共重合体ラテックスの体積平均粒子径が、130nmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、不織布用バインダー組成物および湿潤状態のパルプ不織布を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
比較例4
老化防止剤を使用しないこと以外は、実施例6と同様にして、不織布用バインダー組成物および湿潤状態のパルプ不織布を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1から、以下のことが確認できる。
老化防止剤として、フェノール系以外の老化防止剤を使用した場合には、臭気性に劣る結果となり、臭気低減効果が得られないことが確認できる(比較例1)。
N−メチロールアクリルアミドの含有量が多すぎる場合には、遊離ホルマリン量が多くなるとともに、臭気性も悪化してしまう結果となった(比較例2)。
共重合体ラテックスとして、体積平均粒子径の小さい共重合体ラテックスを使用した場合には、湿潤強度に劣ってしまう結果となった(比較例3)。
老化防止剤を使用しない場合には、乾燥強度、湿潤強度が低下し、さらに耐熱変色性が低下する結果となった(比較例4)。
【0083】
これに対して、本発明の不織布用バインダー組成物を使用した湿潤状態のパルプ不織布は、乾燥強度および湿潤強度を高く維持しながら、耐熱変色性に優れ、ホルマリンの発生を抑えることができ、しかも、臭気性を低減できることが確認できる(実施例1〜6)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族共役ジエン単量体10〜55重量%、
エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜5重量%、
エチレン性不飽和カルボン酸アミドのメチロール誘導体0.1〜3重量%および、
これらと共重合可能なモノオレフィン性単量体37〜88.9重量%からなる単量体混合物を、乳化重合して得られ、
体積平均粒子径が150〜250nmである共重合体ラテックス(A)と、
フェノール系老化防止剤(B)と、
を含有する不織布用バインダー組成物。
【請求項2】
前記フェノール系老化防止剤(B)の含有量が、前記共重合体ラテックス(A)の固形分100重量部に対して、0.05〜5重量部である請求項1に記載の不織布用バインダー組成物。
【請求項3】
前記不織布用バインダー組成物が、さらにホルマリンキャッチャー(C)を含有する請求項1または2に記載の不織布用バインダー組成物。
【請求項4】
前記ホルマリンキャッチャー(C)の含有量が、前記共重合体ラテックス(A)の固形分100重量部に対して、0.01〜5.0重量部である請求項3に記載の不織布用バインダー組成物。

【公開番号】特開2006−274467(P2006−274467A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92757(P2005−92757)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】