説明

不飽和な末端を有する分岐したポリアミド

【課題】端部が不飽和な分岐したポリアミドと、それによって構成される熱溶融性接着剤と、その熱溶融性接着剤または電気ケーブルの被覆での使用。
【解決手段】 下記の(1)と(2)から成る:
(1)2つ以上の官能基を有する多官能性モノマー(A)から得られる少なくとも一つの単位、
(2)少なくとも一つの不飽和一塩基酸の存在下で下記(a)〜(d)を縮合して得られる少なくとも1つの鎖:
(a) 少なくとも2つの互いに異なるラクタム、または
(b) 少なくとも1つのラクタム、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも一つのジアミン、または
(c) ラクタムまたはα、ω-アミノカルボキシル酸、または
(d) ジアミンおよび二酸、
(ただし、(A)の比率は(A)および上記モノマーの全体の9重量%以下)
架橋は開始剤として過酸化水素を用いた加熱、紫外線感応性開始剤を用いた紫外線(または紫外線下の溶融)下、繃線または竈線照射で簡単に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不飽和な末端を有する分岐したポリアミドに関するものである。
本発明の不飽和な末端を有する分岐したポリアミドは、2つ以上の官能基を有する多官能性モノマー(A)の存在下で、連鎖制限剤として不飽和一塩基酸を使用して、ポリアミドを形成する通常のモノマー(ラクタム、α、ω−アミノカルボン酸、二酸、ジアミン)を共重合して製造できる。
【0002】
多官能性モノマー(A)の官能基は例えばアミン、酸またはヒドロキシルにすることができる。多官能性モノマー(A)の例としてはジエチレントリアミン、ジエフアミン(Jeffamine、登録商標、T 403)、ベンゼンヘキサカルボン酸、ペンタエリスリトール、2,2−ジメチロールプロピオン酸を挙げることができる。
【0003】
この不飽和な末端を有する分岐したポリアミドは架橋ができる。この架橋は開始剤として過酸化水素を用いて加熱で行うか、UV感応性開始剤を用いて紫外線(またはUV下での溶融)で行うか、繃線または竈線を照射して容易に行うことができる。
【0004】
本発明の末端が不飽和な分岐したポリアミドは架橋可能な接着剤、電気ケーブルの被覆剤として使用でき、一般的には機械特性および耐熱性に優れた物品の生産に使用できる。
【背景技術】
【0005】
ホットメルト接着は周囲温度では固体で、加熱すると(約180℃で)粘着性の液体となる熱可塑性物質である。この液体を第1の基板に塗布した後に基板を第2の面で覆う。冷却後に基板と第2の面との間に接着力が得られる。周囲温度で接着剤が基板上に塗布されてからの時間すなわち第2の面を取付けた後、冷却して基板と第2の面との間に接着力が得られるまでの時間をオープン時間という。このオープン時間の経過した後は、基板と第2の面とのに満足な接着力を得ることはもはやできない。この接着剤は2つの被接着材料間に固体の状態で配置され、接着剤を加熱した後、冷却することで2つの被接着材料は互いに結合する。この方法はテキスタイル産業で使用されており、フィルムまたは粉の形をした接着剤を2つの繊維布の間に配置し、アイロンを用いて接着させる。この接着剤はホットメルト接着(HMA)とよばれ、「熱溶融性接着剤(thermoadhesive)」とよばれることもある。
【0006】
テキスタイル分野(布および不織布の固定)、電子分野(銅線コイルのコーティング)、自動車分野で熱溶融性接着剤として使われている公知のポリアミドは、融点以上の温度で塗布され、各種表面に良く接着する。熱溶融性接着剤の耐熱性はその融点に限定され、多くの場合、融点より10℃低い温度で製品は軟化し、粘着性が低下する。
【0007】
現在、全ての用途で熱溶融性接着剤の性能の向上、例えば表面処理済みの表面への接着力の強化、耐熱性の向上、蒸気洗浄時の接着強度の向上、ドライクリーニングに対する耐久性が求められている。これらの性能の改良は現在使用している技術を変えず行わなければならない。
【0008】
HMAの特性を改善する一つの方法は接着後に架橋をすることである。ポリアミドおよびコポリアミドの架橋は既に公知である。下記文献にはイソシアネートで架橋することが開示されている:
【特許文献1】ドイツ国特許第DE 3725486号公報
【特許文献2】欧州特許第EP 940 461号公報
【特許文献3】国際特許第WO 2002/026887号公報
【0009】
下記文献にはエポキシ混合物によって架橋することが開示されている:
【特許文献4】国際特許第WO 2002/086009号公報
【特許文献5】米国特許第6515048号明細書
【0010】
下記文献には予めカプセル化した試薬を用いて架橋することが開示されている:
【特許文献6】欧州特許第EP 326 444号公報
【0011】
下記文献にはアミノ末端を有するポリアミドを用いてエポキシ、ポリスルフィドまたはシアノアクリレートを架橋することが開示されている:
【特許文献7】米国特許第6111030号明細書
【0012】
上記の系の欠点はイソシアネート、アクリレートまたはエポキシ樹脂樹脂のような有毒な共反応剤の使用が必要な点にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、照射(熱、UV、UV+マイクロ波、繃線または竈線)によって簡単に活性化して架橋反応を実行できる、末端が不飽和な分岐したコポリアミドを見出した。連鎖制限剤として不飽和一塩基酸を使用することでポリマー中の主反応物を直接一体化でき、従って、追加の配合物なしで製品にすることができる。
なお、不飽和な末端を有するポリマーは既に公知である。下記文献には不飽和末端を有する水に分散可能なポリアミドが開示されている。
【特許文献8】米国特許第6 680 264号明細書
【0014】
しかし、この化合物はHMAではない。
下記文献には不飽和末端を有する線形のポリアミドが開示されている。
【特許文献9】欧州特許第EP 147 267号公報
【特許文献10】国際特許第WO 2003/087193号公報
【0015】
2つ以上の不飽和末端を有する利点は、鎖が単純に伸びるのに比べて架橋反応によって三次元ネットワークが形成され、従って、架橋はより迅速かつ効率的に行われる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は下記の(1)と(2)から成る不飽和な末端を有する分岐したポリアミドを提供する:
(1)2つ以上の官能基を有する多官能性モノマー(A)から得られる少なくとも一つの単位、
(2)少なくとも一つの不飽和一塩基酸の存在下で下記(a)〜(d)を縮合して得られる少なくとも1つの鎖:
(a) 少なくとも2つの互いに異なるラクタム、または
(b) 少なくとも1つのラクタム、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも一つのジアミン、または
(c) ラクタムまたはα、ω-アミノカルボキシル酸、または
(d) ジアミンおよび二酸、
(ただし、(A)の比率は(A)と上記モノマーの合計の9重量%以下)
【0017】
本発明のポリアミドは連鎖制限剤としての不飽和一塩基酸の存在下で下記を縮合して作ることができる:
(a) 少なくとも2つの互いに異なるラクタム、または
(b) 少なくとも1つのラクタム、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも一つのジアミン、または
(c) ラクタムまたはα、ω-アミノカルボキシル酸、または
(d) ジアミンおよび二酸。
【0018】
ポリアミド鎖のモノマーの縮合時またはその後に2つ以上の官能基を有する多官能性モノマー(A)を存在させることができ、また、触媒を加えることができる。
【0019】
本発明はさらに、不飽和な末端を有する分岐したポリアミドから成る熱溶融性接着剤にも関するものである。この接着剤は開始剤として過酸化水素を用いることで加熱によって簡単に架橋でき、あるいは紫外線官能性開始剤を用いて紫外線(または紫外線下の溶融)によって架橋でき、さらには、繃線または竈線の照射によって架橋できる。
【0020】
本発明はさらに、不飽和な末端を有する分岐したポリアミドの熱溶融性接着剤として使用に関するものである。
本発明はさらに、不飽和な末端を有する分岐したポリアミドの電気ケーブルの被覆での使用に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
2つ以上の官能基を有する多官能性モノマー(A)とは、ラクタム(開環後)、ジアミンまたは二酸と反応できかつ結合できる任意の化合物を意味する。この多官能性モノマーの例としてはジエチレントリアミン、ジエフアミン(Jeffamine、登録商標、T 403)、ベンゼンヘキサカルボン酸(acid mellitique)、ペンタエリスリトールおよび2,2-ジメチロールプロピオン酸を挙げることができる。
【0022】
この多官能性モノマー(A)の比率は(A)と上記モノマーとの合計重量に対して0.05〜5重量%にするのが好ましく、好ましくは、(A)と上記モノマーとの合計重量に対して0.05〜2重量%にする。
【0023】
ポリアミド鎖としては、(炭素原子数が互いに異なる)少なくとも2のα、ω−アミノカルボン酸、または、(炭素原子数が互いに異なる)2つのラクタム、または、(炭素原子数が互いに異なる)ラクタムとα、ω−アミノカルボン酸の縮合で得られるコポリアミドを挙げることができる。
さらに、少なくとも一つのα、ω−アミノカルボン酸(またはラクタム)と、少なくとも一つのジアミンと、少なくとも一つのジカルボン酸との縮合で得られるコポリアミドも挙げることができる。さらに、ラクタムまたはα、ω−アミノカルボン酸またはジアミンと二酸との縮合で得られるポリアミドを挙げることもできる。
【0024】
ラクタムの例としては、主環に3〜12個の炭素原子を有するものを挙げることができる。このラクタムは置換されていてもよい。例としては竈、竈−ジメチルプロピオラクタム、α、α−ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタムおよびラウリルラクタムが挙げられる。
【0025】
α、ω−アミノカルボン酸の例としては、アミノウンデカン酸およびアミノドデカン酸を挙げることができる。ジカルボン酸の例としてはアジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、テトラデカン酸、セバシン酸、イソフタル酸、ブタン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、スルホイソフタル酸のナトリウム塩またはリチウム塩、ダイマー化された脂肪酸(このダイマー化された脂肪酸のダイマーの含有率は少なくとも98%で、水素化されているのが好ましい)およびドデカンジオン酸:HOOC-(CH2)10-COOHを挙げることができる。
【0026】
ジアミンは炭素原子数が6〜12の脂肪族ジアミンにすることができ、アリールおよび/または飽和環のジアミンにすることができる。その例としてはヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ポリオールジアミン、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタメチレンジアミン(MPMD)、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)およびビス−(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)を挙げることができる。
【0027】
コポリアミド鎖は少なくともカプロラクタムとラウリルラクタムとを含むのが有利である。コポリアミド鎖の他の有利な形式は少なくともカプロラクタムと、ヘキサメチレンジアミンと、アジピン酸とから成るものである。
コポリアミド鎖の例としてはカプロラクタムとラウリルラクタムとのコポリアミド(6/12)、ラウリルラクタムとカプロラクタムと11-アミノウンデカン酸(6/11/12)とのコポリアミド、カプロラクタムと、アジピン酸と、ヘキサメチレンジアミンとのコポリアミド(6/6-6)、カプロラクタムと、ラウリルラクタムと、アジピン酸と、ヘキサメチレンジアミンとのコポリアミド(6/12/6-6)、カプロラクタムと、ラウリルラクタムと、11-アミノウンデカン酸と、アゼライン酸と、ヘキサメチレンジアミンとのコポリアミド(6/6-9/11/12)、カプロラクタムと、ラウリルラクタムと、11-アミノウンデカン酸と、アジピン酸と、ヘキサメチレンジアミンとのコポリアミド(6/6-6/11/12)、ラウリルラクタムと、アゼライン酸と、ヘキサメチレンジアミンとのコポリアミド(PA 6-9/12)を挙げることができる。
【0028】
不飽和一塩基酸の例としはアクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、シトラコン酸、イタコン酸、ビニル酢酸、ウンデシレン酸、マイレン酸、フマル酸、5‐ノルボルネン-2-アクリル酸、3-フラニル-2-アクリル酸、3-ピロリル-2-アクリル酸、N-アリル−アミノ安息香酸、N-アクリロイルアミノ安息香酸、N-メタクロイルアミノ安息香酸、アクリロイルオキシ安息香酸、メタクロイルオキシ安息香酸、N-アクリロイルまたはN-メタクリロイル-p-アミノフェニル酢酸、N-アリルアミノ‐11-ウンデカン酸を挙げることができる。
これらの酸の少なくとも二つを混合して使用しても本発明の範囲を逸脱するものではない。また、これらの酸の塩およびエステルを使用することもできる。
【0029】
これらのコポリアミドの製造方法は連鎖制限剤としての不飽和一塩基酸の存在下でポリアミド鎖モノマーを縮合して行う点を除いてポリアミドまたはコポリアミドの通常の製造方法と同じである。全ての不飽和酸をポリマーに結合させ、反応を架橋しながらミカエル型の付加(二重結合へのアミンの付加)を有利に行わせるために、ジアミンを過剰に加えることのが有利である。
【0030】
ポリアミド鎖モノマーの縮合時またはその後に2つ以上の官能基を有する多官能性モノマー(A)を存在させることができ、触媒を加えることもできる。多官能性モノマー(A)の官能基がOH基の場合には触媒を加えることが推薦される。この触媒は反応開始時か、ポリアミド鎖モノマーの縮合後に加えることができる。この触媒はカルボキシル基およびジオール基、例えばポリエチレングリコールまたはボリテトラメチレングリコールを末端に有するポリアミドブロックの縮合に用いられるものにすることができる。この触媒はポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するコポリマーの製造で使用されている。
【0031】
触媒はチタン、ジルコニウムおよびハフニウムから成る群の中から選択される金属(M)の誘導体であるのが好ましい。そうした誘導体の例としては下記の一般式に対応するテトラアルコキサイドを挙げることができる:
M(OR)4
(ここで、
Mはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、
Rは炭素原子数が1〜24の直鎖または分岐したアルキル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい)
【0032】
本発明方法で触媒として使用されるテトラアルコキサイドのR基として選択されるC1〜C24アルキル基は例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシルまたはヘキサドデシルである。
好ましい触媒はR基がC1〜C8アルキル基(互いに同一でも異なっていてもよい)であるテトラアルコキサイドである。そうした触媒の例としては特にZr(OC254、Zr(O−isoC374、Zr(OC494、Zr(OC5114、Zr(OC6134、Hf(OC254、Hf(OC494またはHf(O−isoC374を挙げることができる。
【0033】
上記定義の式:M(OR4)のテトラアルコキサイドの触媒は単独で使用するか、複数使用することができる。また、このテトラアルコキサイドの一種または複数と、下記の式を有する一種または複数のアルカリ金属アルコラートまたはアルカリ土金属アルコラートと組合せることもできる:
(R1O)pY
(ここで、
R1は炭化水素残基、好ましくはC1〜C24アルキル、好ましくはC1〜C8アルキルを表し、
Yはアルカリ金属またはアルカリ土金属を表し、
p はYの原子価を表す)
【0034】
上記のアルカリ金属アルコラートまたはアルカリ土金属アルコラートおよび混合触媒を構成するために組み合わされるジルコニウムまたはハフニウムのテトラアルコキサイドの量は広範囲に変えることができるが、アルコラートのモル比とテトラアルコキサイドのモル比とが実質的に同じになるような量を用いるのが好ましい。
【0035】
触媒の重量比(すなわち、触媒がアルカリ金属またはアルカリ土金属アルコラートを含まない場合のテトラアルコキサイドまたはテトラアルコキサイドの重量比、さらには、触媒がこれらの2種類の化合物の組合せから成る場合のテトラアルコキサイドまたはテトラアルコキサイドとアルカリ金属アルコラートまたはアルカリ土金属アルコラートとの合計)は、ポリアミド鎖と多官能性モノマー(A)との混合物の重量の0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%にするのが好ましい。
【0036】
上記以外の誘導体の例としては金属(M)の塩、特に金属(M)の塩と有機酸、金属(M)の酸化物および/または金属(M)の水酸化物の錯塩と有機酸とを挙げることができる。有機酸は蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、サリチル酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、マイレン酸、フマル酸、フタル酸およびクロトン酸にするのが好ましい。特に、酢酸およびプロピオン酸が好ましい。金属(M)はジルコニウムにするのが好ましい。この塩はジルコニル塩ともよばれている。このジルコニウム塩と有機酸または上記の錯塩はプロセス中にZrO++を放出すると思われるが、この説明に限定されるものではない。酢酸ジルコニルの名称で市販の製品を使用することもできる。その使用量は誘導体M(OR)4の場合と同じである。
これらの触媒は下記文献に記載されている:
【0037】
【特許文献11】米国特許第4 332 920号明細書
【特許文献12】米国特許第4 230 838号明細書
【特許文献13】米国特許第4 331 786号明細書
【特許文献14】米国特許第4 252 920号明細書
【特許文献15】日本国特許第JP 07145368A号公報
【特許文献16】日本国特許第JP 06287547A号公報
【特許文献17】欧州特許第EP 613 919号公報
【0038】
ポリアミドの製造方法は例えば下記文献に記載されている:
【非特許文献1】Kunststoff-Handbuch, 3 Technische Thermoplaste, 4 Polyamide, 1998, Carl Hanser Verlag, Munich
【0039】
その重量平均モル質量は10000〜30000 g/モルにするのが好ましい。MFI(Melt Flow Indexの略)は5〜35g/10分(2.16kg、130℃)にすることができる。
【0040】
本発明で得られる製品の架橋に関する利点は、従来の熱溶融性接着剤と同じ機械でそれと同じように使用できる点にある。すなわち、材料を接着した後、開始剤として過酸化水素を用いて加熱によって架橋を行うか、紫外線感応性の開始剤を用いて紫外線(または紫外線下の溶融)で架橋を行うか、繃線または竈線の照射で簡単に架橋できる。
加熱源は赤外線にすることもでき、架橋は30秒〜5分間で行うことができる。紫外線下または紫外線およびマイクロ波下で架橋を行う場合には架橋は15〜30秒で行うことができる。繃線または竈線の照射下での架橋は1秒以下の時間で架橋できる。
【0041】
この加熱のために追加の設備を必要としない。架橋時間および架橋の程度は過酸化物と活性化温度を適当に選択することによってコントロールできる。紫外線架橋を用いた場合には溶融状態の材料の塗布時間と架橋時間とを分離でき、マイクロ波等で材料を加熱することで架橋をより効果的に行うことができる。繃線または竈線を使用する利点は架橋が実質的に瞬間的に起ることと開始剤を必要としない点にある。
【実施例】
【0042】
実施例1
ジエチレントリアミン(DETA)、クロトン酸およびヘキサメチレンジアミンの存在下で、11-アミノウンデカン酸、カプロラクタムおよびラウリルラクタムを縮合する。
【0043】
実施例2
ペンタエリスリトールおよびクロトン酸の存在下で、11-アミノウンデカン酸、カプロラクタム、ラウリルラクタム、ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸を縮合する。次に、6gの酢酸ジルコニウムとジルコニウムブチレートとの混合物を、70mbar〜50 mbarの絶対圧力下で、240℃の温度で加える。粘度変化が見られなくなったときに反応を停止する。
【0044】
実施例3
ジエチレントリアミン(DETA)、ウンデシレン酸およびヘキサメチレンジアミンの存在下で、11-アミノウンデカン酸、カプロラクタムおよびラウリルラクタムを縮合する。
【0045】
実施例4
ジエチレントリアミン(DETA)およびウンデシレン酸の存在下で、カプロラクタム、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンおよびラウリルラクタムを縮合する。
縮合物のMFIと縮合物を架橋した結果は[表1]にまとめて示してある。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)と(2)から成る不飽和な末端を有する分岐したポリアミド:
(1)2つ以上の官能基を有する多官能性モノマー(A)から得られる少なくとも一つの単位、
(2)少なくとも一つの不飽和一塩基酸の存在下で下記(a)〜(d)を縮合して得られる少なくとも1つの鎖:
(a) 少なくとも2つの互いに異なるラクタム、または
(b) 少なくとも1つのラクタム、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも一つのジアミン、または
(c) ラクタムまたはα、ω-アミノカルボキシル酸、または
(d) ジアミンおよび二酸、
(ただし、(A)の比率は(A)と上記モノマーの全体の9重量%以下)
【請求項2】
多官能性モノマー(A)がジエチレントリアミンおよびペンタエリスリトールから選択される請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
コポリアミド鎖が少なくともカプロラクタムとラウリルラクタムとから成る請求項1または2に記載のポリアミド。
【請求項4】
コポリアミド鎖が少なくともカプロラクタム、ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸から成る請求項1または2に記載のポリアミド。
【請求項5】
上記の不飽和一塩基酸がクロトン酸またはウンデシレン酸である請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項6】
下記(a)〜(d):
(a) 少なくとも2つの互いに異なるラクタム、または
(b) 少なくとも1つのラクタム、少なくとも1つのジカルボン酸および少なくとも一つのジアミン、または
(c) ラクタムまたはα、ω-アミノカルボキシル酸、または
(d) ジアミンおよび二酸
の縮合を連鎖制限剤としての不飽和一塩基酸の存在下で行い、ポリアミド鎖モノマーの縮合の間または縮合後に、2つ以上の官能基を有する多官能性モノマー(A)を存在させることができ、また、触媒を加えることができる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアミドの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の不飽和な末端を有する分岐したポリアミドからなる熱溶融性接着剤。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の不飽和な末端を有する分岐したポリアミドの熱溶融性接着剤としての使用。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の不飽和な末端を有する分岐したポリアミドの電気ケーブルの被覆での使用。

【公開番号】特開2008−297556(P2008−297556A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189252(P2008−189252)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【分割の表示】特願2005−126151(P2005−126151)の分割
【原出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】