説明

両性イオン重合体

【課題】ブロック共重合体における制御された鎖長及び/又はブロック鎖長を有する両性イオン重合体並びにその重合プロセスを提供する。
【解決手段】基もしくは原子移動ラジカル重合等のリビング重合を用い、構造および分子量が制御された両性イオン単量体から、重合体が製造される。例えば重合体は、塩化銅触媒と、水溶性の配位子と、水溶性の第三アルキルハライド開始剤とを用いることで、1.5未満の多分散度を有する制御された単独重合体と他の親水性乃至疎水性単量体を備えたブロック共重合体とを形成できる。適切な両性イオン単量体は、2−メタクリロイルオキシ−2’−リン酸トリメチルアンモニウムエチル分子内塩である。上記ブロック共重合体は自発的にミセルを形成し得るが、外側表面にてはたとえばホスホリルコリンなどの両性イオン基を有すると確信され、優れた生体適合性を備えた薬剤投与系として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御された構造を有し、特にブロック共重合体における制御された鎖長および/またはブロック鎖長を有する両性イオン重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
蛋白質の吸着ならびに血液および微生物細胞の付着に耐性を有する表面を生成すべくホスホリルコリン系重合体が用いられ得ることが知られている。またWO−A−9301221には、アゾイソブチロニトリルなどの熱開始剤を用いる溶液重合により形成された2−メタクリロイルオキシメチル−2’−トリメチルアンモニウム・リン酸エチル分子内塩(MPC)の共重合体が記述されている。共単量体(comonomer)は、特定の表面結合特性を付与すべく選択される。たとえばC8−24−アルキル(メト)アクリレート共単量体などの疎水性共単量体は、疎水性表面に対する表面結合性を付与する。反応性共単量体は表面官能基に対して架橋性もしくは共有結合的反応性を付与する。イオン性単量体は、逆に荷電された表面に対する静電結合を付与する。種々の改良が記述されているが、たとえばWO−A−9822516に記述されたように、付加的な所望された特性を提供すべく、陽イオン性共単量体が用いられている。またWO−A−9830615には、改良された架橋系が記述されている。
【0003】
上記の各明細書におけるMPCと共単量体との混合物は、1:1からは程遠い反応性比率を有する。熱的に(もしくは酸化還元的に)開始されたラジカル重合において、開始の速度と比較して伝播速度は非常に大きい。重合の過程に全体に亙り、新たな開始ラジカルが生成されるのである。単量体の内のある単量体は他の単量体よりも反応性が高いことから、重合プロセスの全体に亙り重合に利用可能な単量体の組成が変化し、故にプロセスの全体に亙り生成される重合体分子の組成が変化する。ある組成変化はある用途にては容認され得ると共に、該変化が付与する特性に関して利益を有し得ることさえあるが、多くの場合には狭い範囲の組成および分子量を有する重合体を提供することが望ましい。
【0004】
WO−A−9822516およびPCT/GB/00/02078には、組成変化における改良が記述されている。重合は、開始剤を含む反応容器内へと長期に亙り単量体の混合物を供給することにより単量体欠乏条件下で行われた。但し該プロセスは依然として、分子量に関して広範囲な変化を有する重合体を生成する(多分散性)。
【0005】
狭い多分散性を提供すべく、エチレン性不飽和単量体を重合する重合方法が開発されている。ひとつの種類の重合は、イオン性リビング重合体を用いる。該重合は一般に、高度に親水性の傾向がある両性イオン単量体が不溶である有機溶媒(トルエン、テトラヒドロフラン)内で行われる。Matyjaszewskiにより開発されて擬似リビング重合と称されることもあるひとつの形式のリビング重合は、原子移動ラジカル重合(ATRP)と称される。このプロセスは特に、WO−A−96/30421、US−A−5807937、WO−A−98/40415、WO−A−9807758およびUS−A−5789487に記述されている。これらの重合は全て、不活動種MXと高速動的平衡に在る低い定常濃度の成長ラジカルM・を必要とする。このため、相互に結合する2個の成長ラジカルにより停止反応の度合いは少なくなる。開始反応は、伝播速度と比較して非常に高速にされなければならない。成長ラジカルM・の反応はラジカルXと可逆的に反応するものが、このラジカルXはATRPにおいては原子であり一般的にはハロゲン原子である。ATRPにおいて上記可逆反応は、酸化状態を変化させ得る遷移金属化合物を必要とする。原子および基の移動の一般的反応方式は以下の如く表される:
【化1】

式中、InXは開始剤化合物であり、Mはnの酸化状態からn+1の酸化状態へと転換可能な遷移金属化合物であり、Mは単量体である。Kiは開始速度定数であり且つKは伝播速度定数である。遷移金属の酸化還元サイクルが関係する上記反応は、可逆的である。種々の反応の速度定数は比較的低い定常レベルの部分In−M・に帰着する、と言うのも、この部分は不活動種In−M−Xを形成すべく反応するからである。分子量は、単量体転換(monomer conversion)が増加するにつれて線形に増大する。ATRPにおいて、一般的には両方の酸化状態で遷移金属イオンを錯体化する配位子が存在する。
【0006】
MatyjaszewskiのATRP反応の殆どは、有機溶媒中で行われる。最近、X-S Wang等はChem. Commun., 1999, 1817-1818およびPolymer Preprint 2000, 41(1), 413-414において、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ナトリウムメタクリレート、ナトリウム4−ビニルベンゾエート、2−アミノエチルメタクリレート、2−スルファトエチル・メタクリレートアンモニウム塩、3−スルフォプロピル・メタクリレートカリウム塩、N−(4−ビニルベンジル)トリメチル塩化アンモニウムおよびモノメトキシ−エンドキャップ・オリゴ(エチレンオキシド)メタクリレート(OEGMA)などの水溶性のエチレン性不飽和単量体を含む水性媒体中で行われる原子移動ラジカル重合を記述している。用いられた開始剤は、2−ブロモイソブチリルブロマイド(OEGBr)、4−ブロモ−α−トルイル酸もしくは2−ブロモプロパン酸もしくは2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル−2’−ブロモイソ酪酸、に対するモノメトキシ−エンドキャップ・オリゴ(エチレンオキシド)の反応生成物などの水溶性臭素置換化合物であった。上記反応は室温にて行われ得るものであり、その温度では、半時間未満で95%より高い転換率(conversion rate)が得られた。2−スルファトエチル・メタクリレートを重合するOEGMA誘導マクロ開始剤を使用することにより、ブロック共重合体が形成され得る。Armesは2000年9月21日にケンブリッジで開催された会議“Controlled free radical polymerisation”において同様のシステムにおけるカルボキシベタイン型単量体の重合を述べている。
【0007】
1999年3月21〜25日のアナハイム(Anaheim)、POLY−024の第217回ACS国際会議にてHaddleton,D.M.等はコバルト触媒すなわちコバロキシンボロンフルオライド(cobaloxine boron fluoride)を用い、2−メタクリロイルオキシ−2’−トリメチルアンモニウム・リン酸エチルなどのアクリル系単量体の水溶液中での触媒的連鎖移動(CCT)重合を記述した。CCTPにおいて触媒の金属は、成長する重合体鎖に対して直接的に(可逆的に)結合する。
【発明の開示】
【0008】
本発明に依れば、一般式(I)
YBX (I)
の両性イオン単量体を含むエチレン性不飽和単量体が、開始剤および触媒の存在下でリビング・ラジカル重合プロセスにより重合するという新しい重合プロセスが提供される:
上記式中、
Yは、HC=CR−CO−A−、HC=CR−C−A−、HC=CR−CH、RO−CO−CR=CR−CO−O、RCH=CH−CO−O−、RCH=C(COOR)CH−CO−O、
【化2】

から選択されるエチレン性不飽和基であり;
Aは、−O−もしくはNRであり;
は、結合、(CHおよび(CHSO−から選択され、nは1〜12であり;
は、結合、−O−、O−CO−、CO−O、CO−NR−、−NR−CO、O−CO−NR−、NR−CO−O−から選択され;
Rは水素もしくはC1−4アルキルであり;
は水素、C1−4アルキルもしくはBXであり;
は水素もしくはC1−4アルキルであり;
Bは、結合、または、直線状に分岐したアルカンジイル、アルキレンオキサアルキレンもしくはアルキレン(オリゴオキサアルキレン)基であって、オプションとして一個以上のフッ素置換基を含み;
Xは、リン酸もしくは亜リン酸アンモニウム、ホスホニウム、もしくはスルホニウム・エステル両性イオン基である。
【0009】
本発明のこの見地において上記両性イオン基Xは、陽イオン性部分として、アンモニウム、ホスホニウムもしくはスルホニウム基を備える。好ましくは、上記陽イオンはアンモニウム基である。上記両性イオンの陰イオンはホスホ部分である。それは一般的に、リン酸ジエステル、または、亜リン酸エステル系部分である。一般的に上記両性イオン基Xにおいて、上記陰イオンは陽イオンに対してよりもBに対して接近している。但し(以下においてはホスホベタインと称される)一定の両性イオンにおいて、陽イオンは陰イオンに接近している。
【0010】
好ましくは、Xは一般式(II)の基である:
【化3】

式中、同一であるかもしくは異なる部分AおよびAは−O−、−S−、−NH−もしくは共有結合、好ましくはO−であり、Wは、アンモニウム、ホスホニウムもしくはスルホニウム陽イオン性基、ならびに、陰イオン性および陽イオン性部分を連結する、好ましくはC1−12−アルカンジイル基である基、から成る基であり、
好ましくはWは、式−W−N、−W−P、−W−Sもしくは−W−Hetから成る基であり、式中、
は、オプションとして一個以上のエチレン性不飽和二重結合もしくは三重結合を含む、1個以上、好ましくは2〜6個の炭素原子のアルカンジイル、または、二置換型のアリール(アリーレン)、アルキレンアリーレン、アリーレンアルキレン、または、アルキレンアリールアルキレン、シクロアルカンジイル、アルキレンシクロアルキル、シクロアルキルアルキレンもしくはアルキレンシクロアルキルアルキレンであり、基Wはオプションとして一個以上のフッ素置換基および/または一個以上の官能基を含み;且つ、
各基Rは同一であるか、または異なり、各々が水素もしくは1〜4個の炭素原子のアルキルで、好ましくはメチルもしくはフェニルなどのアリールであるか、または、各基Rの内の2個はそれらに結合された窒素原子と協働して5〜7個の原子を含む脂肪族複素環を形成するか、または、3個の基Rはそれらに結合する窒素原子と協働して各環に5〜7個の原子を含む縮合環構造を形成し、オプションとして各基Rのひとつ以上は親水性官能基により置換され、
各基Rは同一であるか、または異なり、各々はRもしくは基ORであり、式中Rは上記に定義されるか、または、
Hetは、たとえばピリジンなどの環を含む芳香族窒素−、リン−もしくは硫黄−、好ましくは窒素−である。
【0011】
Xが、WがWである上記一般式により表される単量体は、本出願人による先の明細書WO−A−9301221に記述された如く作成され得る。ホスホニウムおよびスルホニウム類似物は、WO−A−9520407およびWO−A−9416749に記述されている。
【0012】
一般的に、上記式(II)の基は好ましい一般式(III)を有する:
【化4】

式中、基Rは同一であるか、または異なり、各々は水素もしくはC1−4アルキルであり、mは1〜4であり、好ましくは各基Rは同一であり好ましくはメチルである。
【0013】
ホスホベタイン系基において、Xは一般式(IV)を有してもよい:
【化5】

式中、Aは共有結合、−O−、−S−もしくは−NH−、好ましくはO−であり;
は、(Aと共に)共有結合、もしくは、アルカンジイル、−C(O)アルキレン−もしくは−C(O)NHアルキレンであってアルカンジイルが好適であり、好ましくはアルカンジイル鎖中に1〜6個の炭素原子を含み;
はS、PRもしくはNRであり;
上記基Rは夫々、水素もしくは1〜4個の炭素原子のアルキルであるか、または、2つの基Rはそれらに結合するヘテロ原子と共に5〜7個の原子の複素環を形成し;
は1〜20個、好ましくは1〜10個、更に好ましくは1〜6個の炭素原子のアルカンジイルであり;
は、結合、NH、SもしくはOであってOが好適であり;且つ、
はヒドロキシル、C1−12アルキル、C1−12アルコキシ、C7−18アラルキル、C7−18−アラルコキシ、C6−18アリールもしくはC6−18アリールオキシ基である。
【0014】
一般式(IV)の基を備える単量体は、アミノ置換単量体がホスホランと反応するというJP−B−03−031718に記述された方法により作成され得る。
【0015】
一般式(IV)の基を備える単量体においては、
は結合であり;
はC2−6アルカンジイルであり;
はNRであり;
各RはC1−4アルキルであり;
はC2−6アルカンジイルであり;
はOであり;且つ、
はC1−4アルコキシであるのが好ましい。
【0016】
一般式(I)の両性イオン単量体においては、エチレン性不飽和基YがHC=CR−CO−A−であるのが好ましい。斯かるアクリル部分は好ましくは、RがメチルであるメタクリルまたはRが水素であるアクリルである。上記化合物は(AがNRである)(メタ)アクリルアミド化合物であるが、その場合にRは好ましくは水素、更に好ましくはメチルであり、最も好ましくは上記化合物はエステルであり即ちその場合にAはOである。
【0017】
上記一般式(I)の単量体において、特にYが好ましい(アルカ)アクリル基である場合に、Bは最も好ましくはアルカンジイル基である。斯かる基の水素原子の幾つかはフッ素原子により置換され得るが、好ましくはBは未置換のアルカンジイル基であり、最も好ましくは2〜6個の炭素原子を有する直鎖基である。
特に好ましい両性イオン単量体は、2−メタクリロイルオキシエチル−2’−トリメチルアンモニウム・リン酸エチル分子内塩である。
【0018】
上記重合プロセスにおいて上記エチレン性不飽和単量体は更に共単量体を含み得る。共単量体は、上記両性イオン単量体と共重合可能であり、好ましくは陰イオン性、陽イオン性および非イオン性の単量体から選択される。一般的に、上記単量体混合物は少なくとも一種類の非イオン性単量体を含むのが好ましい。別の種類の共単量体は、重合体を架橋するために重合の後で硬化されてもよい官能基を有する架橋単量体である。
【0019】
適切な共単量体の例は、一般式(X)の化合物である:
【化6】

式中、
31は、水素、ハロゲン、C1−4アルキル、および、Rを水素およびC1−4アルキルとした基COORから選択され;
32は、水素、ハロゲンおよびC1−4アルキルから選択され;
33は、水素、ハロゲン、C1−4アルキル、および、R31およびR33の両者がCOORでないものとしてCOOR、から選択され;
34は、C1−10アルキル、C1−20アルコキシカルボニル、モノ−もしくはジ−(C1−20アルキル)アミノカルボニル、C6−20アリール(アルカリールを含む)、C7−20アラルキル、C6−20アリルオキシカルボニル、C1−20−アラルキルオキシカルボニル、C6−20アリールアミノカルボニル、C7−20アラルキル−アミノ、ヒドロキシルまたはC2−10アシルオキシ基であり、これらのいずれもが、ハロゲン原子、アルコキシ、オリゴ−アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシルアミノ、アミン(モノおよびジ−アルキルアミノおよびトリアルキルアンモニウムを含み、アルキル基は置換可能である)、カルボキシル、スルフォニル、ホスホリル、ホスフィノ、(モノ−およびジ−アルキルホスフィンおよびトリ−アルキルホスホニウムを含む)、トリアルコキシシリル基などの両性イオン性、ヒドロキシル、ビニルオキシカルボニルおよび他のビニル性もしくはアリル性かつ反応性のシリルもしくはシリルオキシ基から選択された一個以上の置換基を有することが可能であり;或いは、
34およびR33、または、R34およびR32は協働して−CONR35COを形成することができ、式中、R35はC1−20アルキル基である。
【0020】
基R31、R32、R33およびR34の内の少なくとも2つはハロゲン、更に好ましくは水素原子である。好ましくは、R31およびR32は両者ともに水素原子である。一般式(X)の化合物がスチレン系もしくはアクリル系化合物であれば特に好ましい。スチレン系化合物においてR34はアリール基、特に置換アリール基を表し、その場合に置換基はアミノアルキル基、カルボキシレートもしくはスルフォネート基である。上記共単量体がアクリル型化合物である場合、R34はアルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニルもしくはアリールオキシカルボニル基である。最も好ましくは斯かる化合物においてR34は、オプションとしてヒドロキシ置換基を有するC1−20−アルコキシカルボニル基である。アクリル化合物は一般的にメタクリルであり、その場合にR33はメチルである。
【0021】
本発明の上記重合プロセスに共単量体が含まれる場合、共単量体に対する両性イオン単量体のモル比は好ましくは1:50〜50:1の範囲、更に好ましくは1:10〜10:1の範囲、更に好ましくは1:5〜1:1の範囲である。
【0022】
本発明のリビング・ラジカル重合プロセスは、たとえばN−Oもしくは他の炭素、硫黄および酸素を中心としたラジカル基が開始剤化合物から単量体へと移動するという基移動ラジカル重合とされ得る。しかし、好ましくは、上記プロセスは原子移動ラジカル重合プロセスである。
【0023】
上記原子もしくは基移動ラジカル重合プロセスにおいて上記開始剤はラジカル的に移動可能な原子もしくは基を有し、且つ、上記触媒は遷移金属化合物および配位子から成り、そこで、上記遷移金属化合物は上記開始剤と不活性(dormant)重合体鎖と共に酸化還元サイクルに関与可能であり、且つ、上記配位子は、遷移金属と成長重合体ラジカルとの間の直接結合が形成されない様に、σ−結合で上記遷移金属原子と協働し得る任意のN−、O−、P−もしくはS−含有化合物、または、π−結合で上記遷移金属と協働し得る任意の炭素含有化合物である。
【0024】
好ましくは、上記ラジカル開始剤は一般式(V)のものである:
111213C−X (V)
式中、
11、R12およびR13の内の2つ以下はHである如く、
は、Cl、Br、I、OR10、SR14、SeR14、OP(=O)R14、OP(=O)(OR14、O−N(R14およびS−C(=S)N(R14から成る群から選択され、式中、R10は水素原子の各々が独立的にハロゲン化物により置き換えられ得る1〜20個の炭素原子のアルキルであり、R14はアリールまたは直線状もしくは分岐状のC〜C20アルキル基であり、且つ、N(R14が存在する場合に2個のR14基は結合されることで5−もしくは6−員の複素環を形成可能であり;且つ、
11、R12およびR13は各々独立して、H、ハロゲン、C〜C20アルキル、C〜Cシクロアルキル、C(=O)R15、C(=O)NR1617、COCl、OH、CN、C〜C20アルケニル、C〜C20アルケニルオキシラニル、グリシジル、アリール、ヘテロシクリル、アラルキル、アラルケニル、
1個乃至全ての水素原子がハロゲンにより置換されるC〜Cアルキル、および、
〜Cアルコキシ、アリール、ヘテロシクリル、C(=O)R15、C(=O)NR1617、−CR1213、オキシラニルおよびグリシジルから成る群から選択された1〜3個の置換基により置換されたC〜Cアルキル、
から成る群から選択され;
ここで、R15は、1〜20個の炭素原子のアルキル、1〜20個の炭素原子のアルコキシ、各アルコキシ基が1〜3個の炭素原子を有するオリゴ(アルコキシ)、アリールオキシもしくはヘテロシクリルオキシであり、いずれの基も、オプションとして置換されたアルコキシ、オリゴアルコキシ、アミノモノ−およびジ−アルキルアミノならびにトリアルキルアンモニウムを含み、該アルキル基はアシル、アルコキシカルボニル、アルケンオキシカルボニル、アリールおよびヒドロキシルから選択された置換基を有することができ)およびヒドロキシルから選択された置換基を有することができ;且つ、
16およびR17は独立して、H、または、1〜20個の炭素原子のアルキルであり、該アルキル基はアシル、アルコキシカルボニル、アルケンオキシカルボニル、アリールおよびヒドロキシルから選択された置換基を有することができ、或いは、R16およびR17は相互に結合して2〜5個の炭素原子のアルカンジイルを形成することで三乃至六員環を形成でき、
11,R12,R13のうち、すべてがHではない。
【0025】
一般式(V)の開始剤においては、R11、R12およびR13の内の2つ以上が水素でない、そして好ましくはいずれも水素でなければ、好ましい。適切には、R11およびR12の少なくとも一方、好ましくは両方がメチルである。R13は適切には基CO−R15であり、式中R15は好ましくは、1〜20個の炭素原子のアルコキシ、各アルコキシ基が1〜3個の炭素原子を有するオリゴ(アルコキシ)、アリールオキシもしくはヘテロシクリルオキシであり、上記基のいずれの基も、オプションとして置換されたアルコキシ、オリゴアルコキシ、アミノ(モノ−およびジ−アルキルアミノならびにトリアルキルアンモニウムを含み、上記アルキル基はアシル、アルコキシカルボニル、アルケンオキシカルボニル、アリールおよびヒドロキシから選択された置換基を有することができ)およびヒドロキシル基から選択された置換基を有してもよい。
【0026】
11、R12およびR13のいずれもが置換基C1213を備えてもよいことから、上記開始剤はジ−、オリゴ−もしくはポリ−官能性であってよい。
【0027】
適切な開始剤の選択は、種々の検討事項に基づく。上記単量体が溶解している液相内で上記重合が実施される場合、上記開始剤はその液相に可溶であることが好ましい。故に上記開始剤は溶媒系に従い該開始剤の溶解度特性に対して選択される一方、上記溶媒系は重合される単量体に従い選択される。同様に、単量体の選択は上記重合体の構造に影響する。適切な開始剤の選択により、星形、櫛形、塊状もしくは線形の重合体が選択され得る。星形の開始剤は、ハロゲン化糖から合成され得る。櫛形の開始剤は、ぶらさがったハロゲン化基を備えた重合体に基づき得る。水溶性の開始剤としてはたとえば、2−ブロモイソブチリルブロマイド(OEGBr)、4−ブロモ−α−トルイル酸もしくはエチル2−ブロモプロパン酸もしくは2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル−2’−ブロモイソ酪酸、に対するモノメトキシ−エンドキャップ・オリゴ(エチレンオキシド)の反応生成物を含む。
【0028】
上記に示された一般的な反応機構からは、開始剤の−C−R111213の部分が成長しつつある重合体鎖の第1単量体に結合することが明らかである。基Xは、上記重合体鎖の末端基に結合するようになる。適切な開始剤の選択は部分的に、その後の官能性に対して特別な特性を有する末端基が必要とされるか否かにより決定される。生成物重合体の引き続く反応は、以下に記述される。
【0029】
上記の原子もしくは基移動ラジカル重合プロセスにおいて、上記触媒の成分を備える上記遷移金属化合物はMn+X’である:
式中、
n+は、Cu1+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Ru2+、Ru3+、Cr2+、Cr3+、Mo2+、Mo3+、W2+、W3+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Rh3+、Rh4+、Re2+、Re3+、Co、Co2+、Co3+、V2+、V3+、Zn、Zn2+、Ni2+、Ni3+、Au、Au2+、AgおよびAg2+から成る群から選択されてもよく;且つ、
X’は、ハロゲン、C12〜C−アルコキシ、(SO1/2、(PO1/3、(R18PO1/2、(R18PO)、トリフラート、ヘキサフルオロ・リン酸塩、メタンスルフォン酸塩、アリールスルフォン酸塩、CNおよびR19COから成る群から選択され、R18はアリールまたは直線状もしくは分岐状のC1−20アルキルであり、且つ、R19は、H、または、ハロゲンにより1〜5回置換され得る直線状もしくは分岐状のC〜Cアルキル基であり、且つ、
nは上記金属上の形式電荷(0≦n≦7)である。
【0030】
好ましくはX’はハロゲン化物であり、最も好ましくは塩化物もしくは臭化物である。特に適切な遷移金属化合物は、たとえばCuClもしくはRuClなどの、銅もしくはルテニウムに基づくものである。
【0031】
上記触媒において上記配位子は好ましくは以下のa)〜e)から成る群から選択される:
a)式、
20−Z−R21および、
20−Z−(R22−Z)−R21
の化合物で、
式中、R20およびR21は独立してH、C〜C20アルキル、アリール、ヘテロシクリルおよびC〜Cアルコキシ、C〜Cジアルキルアミノ、C(=O)R22、C(=O)R2324およびAC(=O)R25から成る群から選択され、式中、AはNR26もしくはOとされ得るものであり;R22は1〜20個の炭素原子のアルキル、アリールオキシもしくはヘテロシクリルオキシであり;R23およびR24は独立してHもしくは1〜20個の炭素原子のアルキルであり又はR23およびR24は相互に結合されることで2〜5個の炭素原子のアルカンジイル基を形成することで3−乃至6−員環を形成することができ;R25は直線状もしくは分岐状のC〜C20アルキルもしくはアリールであり且つR26は水素、直線状もしくは分岐状のC1−20アルキルもしくはアリールであり;或いは、R20およびR21は結合されることでZと協働して飽和もしくは不飽和の環を形成することができ;
ZはO、S、NR27もしくはPR27であり、式中、R27はR20およびR21と同一の群から選択され、ZはPR27であり、R27もまたC〜C20アルコキシであり得るかまたはZは結合、CHもしくは縮合環であり、R20およびR23の一方もしくは両方はヘテロシクリルであり、
各R22は独立して、C〜Cシクロアルカンジイル、C〜Cシクロアルケンジイル、アレーンジイルおよびヘテロシクリレンから成る群から選択された二価基であり、式中、各Zに対する共有結合は隣接位置であるか又はR22はR20およびR21の一方もしくは両方に結合されて複素環系を構成し得るものであり;且つ、
mは1乃至6であり;
b)CO;
c)1〜6個のハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6−アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル、アリール基、ヘテロシクリル基、および、1〜3個のハロゲンにより更に置換されたC1−6アルキル基で置換され得る、ポルフィリンおよびポルフィセン;
d)式R2324C(C(=O)R25の化合物で、式中、R25はC1−20アルキル、C1−20アルコキシ、アリールオキシもしくはヘテロシクリルオキシであり;R23およびR24の各々は独立してH、ハロゲン、C1−20アルキル、アリールおよびヘテロシクリルから成る群から選択され、R23およびR24は結合されることでC1−8シクロアルキル環もしくは水素化芳香環もしくは複素環を形成することができ、該環の原子は更に1乃至5個のC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基もしくはそれらの組み合わせにより更に置換されることができ;および、
e)アレーンおよびシクロペンタジエニル配位子であって、該シクロペンタジエニル配位子は1乃至5個のメチル基で置換され得るか又は第2シクロペンタジエニル配位子に対してエチレンもしくはプロピレン鎖を介して連結され得る、アレーンおよびシクロペンタジエニル配位子。
【0032】
適切な配位子の選択はたとえば、溶解度特性、および/または、生成物重合体混合物からの触媒の分離性に基づく。一般的に、液体反応混合物に可溶なのは触媒であるが、ある状況下では触媒をたとえば孔性基質上に固定化することが可能であり得る。液相で実施される好ましいプロセスに対し、上記配位子は液相に可溶である。上記配位子は一般的に、窒素含有配位子である。好ましい配位子は、ビピリジンもしくは
【化7】

などのピリジル基およびイミノ部分を含む化合物にしてもよく、トリフェニルホスフィンもしくは1,1,4,7,10,10−ヘキサメチル−トリエチレンテトラミンにしてもよい。ここで、式中、Rは適切なアルキル基であり、置換基は可変であると共に所望の溶解度特性を付与すべく適合可能である。
【0033】
斯かる配位子は、上記触媒の一部としての塩化銅および塩化ルテニウム遷移金属化合物と組み合わせて有用に用いられる。
【0034】
本発明の上記リビング・ラジカル重合プロセスは好ましくは、5〜500の範囲の重合度を達成すべく実施される。好ましくは上記重合度は、10〜100の範囲であり、更に好ましくは10〜50の範囲である。好ましい基または原子移動ラジカル重合技術において、重合度は直接的に、単量体に対する開始剤の初期比率に関連する。好ましくは上記比率は1:(5〜500)の範囲であり、更に好ましくは1:(10〜100)の範囲であり、最も好ましくは1:(10〜50)の範囲である。
【0035】
上記触媒における金属化合物と配位子との比率は、金属イオンが完全に錯体化されたときの各成分の比率に基づき略々化学量論的とされねばならない。上記比率は好ましくは、1:(0.5〜2)の範囲、更に好ましくは1:(0.8〜1.25)とすべきである。好ましくは、上記範囲は約1:1である。
【0036】
上記プロセスにおいて上記触媒は、開始剤のレベルと比較して等しいモル量が存在するような量で使用され得る。しかし、触媒は上記反応で消費されないので、一般的に触媒のレベルを開始剤と同じほど高く含める必要はない。開始剤に対する(遷移金属化合物に基づいた)触媒の比率は好ましくは、1:(1〜50)の範囲、更に好ましくは1:(1〜10)の範囲である。
【0037】
上記重合反応は気相内で実施されてもよいが、より好ましくは液相において実施される。上記反応は不均一系すなわち固相および液相を含んでもよいが、より好ましくは均一系である。好ましくは、上記重合は単一液相内で実施される。上記単量体が液体である場合、非重合性溶媒を含めることが不要なこともある。しかし多くの場合、上記重合は非重合性溶媒の存在下で行われる。上記溶媒は、両性イオン単量体および一切の共単量体の性質、たとえば両単量体を含む共通溶液を提供する適合性を考慮して選択されるべきである。上記溶媒は、単一化合物もしくは化合物の混合物を含んでもよい。
【0038】
特に上記両性イオン単量体がMPCである場合、重合混合物に水を含めるのが望ましいことが見出された。好ましくは、水はエチレン性不飽和単量体の重量に基づき10〜100重量%の範囲の量で存在すべきである。好ましくは、非重合性溶媒全体はエチレン性不飽和単量体の重量に基づき1〜500重量%含まれる。上記開始剤および触媒への接触に先立ち、上記両性イオン単量体および水は相互に対して可及的に短い期間に亙り接触すべきことが見出された。故に、重合に関する上記両性イオン単量体以外の全ての成分は事前混合され、両性イオン単量体は該事前混合物に対して最終添加物として添加されるのが望ましい。
【0039】
多くの場合、水に不溶性の共単量体に対してMPCもしくは他の両性イオン単量体を共重合するのが望ましい。斯かる状況においては、MPCおよび更に疎水性の単量体に関して溶解性を付与すべく(水に関する)溶媒もしくは共溶媒が含められる。適切な有機溶媒は、エーテル、エステル、最も好ましくはアルコールである。特に有機溶媒と水との混合物が用いられる場合、適切なアルコールはC1−4−アルカノールである。本発明の重合プロセスにおいては、メタノールが特に適切と見出される。
【0040】
上記プロセスは、たとえば60〜80℃の高温で実施され得る。但し上記プロセスは、室温にても十分に高速に進展することが見出された。
【0041】
本発明の重合プロセスは、ゲル透過クロマトグラフィーによって判断されるように、1.5未満の(分子量の)多分散度を有する両性イオン単量体の重合体を提供することが見出された。1.2〜1.4の範囲の多分散度が達成された。上記プロセスにおいて達成された重合率は90%を超え、多くの場合に95%以上である。上記プロセスは、少なくとも50%または通常は少なくとも70%の重合率レベルに到達するまで継続されるのが好ましい。
【0042】
一般式(I)の単量体から低い多分散性の重合体が形成されたのは本プロセスが最初であり、斯かる重合体は本発明の更なる態様を構成すると確信される。
【0043】
斯かる重合体は好ましくは、本発明の第1の態様のリビング・ラジカル重合プロセスにより作成される。他の制御された重合技術が用いられ得るが、それはたとえば、WO−A−0018807に記述された如きNO基移動系、WO−A−9958588に記述された触媒系、WO−A−99/10387に記述された如く可視光もしくは他のEM放射線による照射を含む系、一般式Z−C=SSRの化合物(開始剤)を用いたRizzardo, E. et al. ACS Symposium Series 2000, 768, 278-296に記述されたラジカル付加フラグメント連鎖移動重合(RAFT)、または、Bontevin, B., J. Polym. Sci. PtA, Polym. Chem., 2000, 38(18), 3235-3243により記述されたキサンテ(xanthes)の交換による高分子設計(MADIX)である。
【0044】
本発明の重合プロセスの重合体生成物は、そのようなものとして有用な生成物であり得る。末端基すなわちCR111213および/またはX基を非活性化もしくは官能化することが望ましいこともある。最終重合体における斯かる基の存在は、引き続く化学反応に対して有用な官能性を提供し得る。たとえば斯かる基における第三アミン置換基は四級化され、エチレン性基は重合され、且つ、架橋可能な基は硬化され得る。
【0045】
上記生成物重合体は、ブロック共重合体を形成するための中間体として有用であり得る。触媒および付加的なエチレン性不飽和単量体の存在下で実施される第2の基または原子移動ラジカル重合段階においては、単一の末端基Xを有する生成物重合体が開始剤として使用され得る。上記生成物はA−B形式のブロック共重合体である。第2ブロックは、初期ブロックAと同一組成とされるか、または更に有用には、異なる構成とされ得る。ブロックAおよびブロックBが形成される単量体は、同一成分であるが異なる比率から成り得る。更に多くの場合にそれらは異なる単量体を含むが、共通の共単量体を含み得る。たとえば両性イオン単量体から形成されたブロックAに添加された第2ブロックは、イオン性単量体もしくは非イオン性単量体から成り得る。上記ブロック共重合体に疎水性を付与するか、もしくはその親水性を制御すべく、非イオン性単量体が選択され得る。第2リビング重合段階で使用されるに適した単量体としては、上記で定義された一般式(V)の単量体が挙げられる。共単量体は、上記ブロック共重合体に生分解可能性を付与すべく選択され得る。
【0046】
第1段階のリビング重合の開始剤が二官能性であり2個の末端基X(および部分的にバックボーンに沿い開始剤から誘導された基)を有する単一ブロックBを生成する場合には、A−B−A形式のブロック共重合体が生成され得る。第2のリビング重合段階においては、初期重合体生成物の各末端にAのブロックが付加される。代替的に、上記第1段階において、第2段階の重合を伝播するX基を各末端に有する星形中間体を生成する多官能性開始剤から開始し、星形構造を有するブロック共重合体が生成され得る。
【0047】
本発明の第2の態様に依れば、AおよびBは同一か、または好ましくは異なるA−BもしくはA−B−A形式のブロック共重合体が提供され、AおよびBの少なくとも一方は一般式(VI)
YBX (VI)
の両性イオン単量体を含むエチレン性不飽和単量体から形成され、
上記式中、
Yは、HC=CR−CO−A−、HC=CR−C−A−、HC=CR−CH、RO−CO−CR=CR−CO−O、RCH=CH−CO−O−、RCH=C(COOR)CH−CO−O、
【化8】

から選択されたエチレン性不飽和基であり;
Aは、−O−もしくはNRであり;
は、結合、(CHおよび(CHSO−から選択され、nは1〜12であり;
は、結合、−O−、O−CO−、CO−O、CO−NR−、−NR−CO、O−CO−NR−、NR−CO−O−から選択され;
Rは水素もしくはC1−4アルキルであり;
は水素、C1−4アルキルもしくはBXであり;
は水素もしくはC1−4アルキルであり;
Bは、結合、または、オプションとして一個以上のフッ素置換基を含む直線状分岐状のアルカンジイル、アルキレンオキサアルキレンもしくはアルキレン(オリゴオキサアルキレン)基であり;
は、両性イオン基である。
【0048】
本発明のこの態様において上記両性イオン基Xは、本発明の上記第1の態様で定義された基Xとされ得る。代替的に、それは両性イオンから成り得るものであり、その場合に陰イオンはスルフェート、スルフォネートもしくはカルボキシレート基から成る。
【0049】
両性イオンのひとつの種類はスルホベタイン基であり、たとえば一般式(XI)
【化9】

のものがあり、式中、各基R36は同一であるか、もしくは異なるものであり、各々は水素またはC1−4アルキルであり且つsは2〜4である。
【0050】
好ましくは、各基R36は同一である。同様に、各基R36の少なくとも一方がメチルなら好適であり、更に好ましくは各基R36は両者ともにメチルである。
【0051】
好ましくはsは2または3であり、より好ましくは3である。
【0052】
代替的に、上記両性イオン基はアミノ酸部分であり、その場合に(アミン基およびカルボン酸基が結合される)アルファ炭素原子は生体適合性重合体のバックボーンに対して結合基を介して結合する。斯かる基は一般式(XII)により表され、
【化10】

式中、Aは共有結合、−O−、−S−もしくは−NH−であり、好ましくはO−であり、
37は、(オプションとしてAと共に)共有結合、または、アルカンジイル、−C(O)アルキレン−もしくは−C(O)NHアルキレンであり、好ましくはアルカンジイルであり、好ましくは1〜6個の炭素原子を含み;且つ、
各R38は同一であるか、もしくは異なるものであり、且つ各々は水素もしくは1乃至4個の炭素原子のアルキル、好ましくはメチルであるか、或いは、各基R38の2つもしくは3つはそれらが結合される窒素と協働して5〜7個の原子の複素環を形成するか、或いは、3個の基R38はそれらが結合される窒素と協働して各環内に5〜7個の原子を含む縮合複素環を形成する。
【0053】
代替的に上記両性イオンはカルボキシベタインーN(R39(CHCOOとされ、各R39基は同一であるか異なるものであり、夫々は水素もしくはR1−4アルキルであり且つrは2〜6、好ましくは2もしくは3である。
【0054】
本発明のこの態様において、それは、両性イオン単量体を含む第1に形成されたブロック、または、第2に形成されたブロックであり得る。いずれかのもしくは両方のブロックがリビング重合技術により形成されることが好ましい、すなわち、重合体の集合はブロックサイズおよび重量の全体的多分散性に関して小さな広がりを有さねばならない。好ましくは両ブロックともに原子または基移動ラジカル重合により形成される。2段階プロセスの各段階の少なくとも一方は、本発明の第1の態様に係る重合プロセス、すなわち、エチレン性不飽和単量体が両性イオン単量体を含む段階である。両段階が原子もしくは基ラジカル移動により実施される2段階重合において、夫々の場合に応じて移動され得る基もしくは原子は2つの段階において同一である。第1段階の重合体生成物の末端基である移動可能基は、第2段階の開始時に遷移金属化合物へと移される。一般的に、同一の触媒を用いれば好都合である。しかし、ある状況においては、重合の第2段階における環境が第1段階の環境と非常に異なるならば、たとえば異なる遷移金属化合物もしくは配位子またはその両者などの、異なる触媒の使用が必要なこともあるかもしれない。たとえば成分を可溶化すべく第2段階における単量体が異なる溶媒の選択を必要とするなら、異なる触媒が選択されてよい。故に、段階2に対して反応混合物を提供するに先立ち、段階1の重合体中間体を触媒から分離する必要がある。適切な分離方法としてはたとえば、ゲル透過もしくは沈殿などのクロマトグラフ技術が挙げられる。しかし、好ましくは、段階1の生成物は全体として、段階2に対する反応混合物の一部を形成する。
【0055】
本発明の第1の態様のプロセスにより生成された中間重合体は、たとえば基もしくは原子移動ラジカル重合に対する開始剤としての有用性があり、有用な市販生成物であり得る。代替的に、上記開始剤から誘導された末端基は誘導反応に委ねられ、イオン基および/またはエチレン性不飽和基などの有用な官能性を導入し得る。
【0056】
本発明の更なる態様に依れば、式(VIII)の新規な重合体が提供される:
【化11】

式中、
は、Cl、Br、I、OR10、SR14、SeR14、OP(=O)R14、OP(=O)(OR14、O−N(R14およびS−C(=S)N(R14から成る群から選択され、式中、R10は水素原子の各々が独立的にハロゲン化物により置き換えられ得る1〜20個の炭素原子のアルキルであり、R14はアリールまたは直線状もしくは分岐状のC〜C20アルキル基であり、且つ、N(R14が存在する場合に2個のR14基は結合されることで五員もしくは六員の複素環を形成可能であり;且つ、
11、R12およびR13は各々独立して、
H、ハロゲン、C〜C20アルキル、C〜Cシクロアルキル、C(=O)R15、C(=O)NR1617、COCl、OH、CN、C〜C20アルケニル、C〜C20アルケニルオキシラニル、グリシジル、アリール、ヘテロシクリル、アラルキル、アラルケニル、
1個乃至全ての水素原子がハロゲンにより置換されるC〜Cアルキル、および、
〜Cアルコキシ、アリール、ヘテロシクリル、C(=O)R15、C(=O)NR1617、−CR1213、オキシラニルおよびグリシジルから成る群から選択された1〜3個の置換基により置換されたC〜Cアルキル、
から成る群から選択され;
15は、1〜20個の炭素原子のアルキル、1〜20個の炭素原子のアルコキシ、各アルコキシ基が1〜5個の炭素原子を有するオリゴ(アルコキシ)、アリールオキシもしくはヘテロシクリルオキシであり、該基のいずれもが、オプションとして置換されたアルコキシ、オリゴアルコキシ、アミノ(モノ−およびジ−アルキルアミノならびにトリアルキルアンモニウムを含み、そのアルキル基はアシル、アルコキシカルボニル、アルケンオキシカルボニル、アリールおよびヒドロキシルから選択された置換基を有することができ)およびヒドロキシルから選択された置換基を有することができ;且つ、
16およびR17は独立して、H、または、1〜20個の炭素原子のアルキルであり、そのアルキル基はアシル、アルコキシカルボニル、アルケンオキシカルボニル、アリールおよびヒドロキシから選択された置換基を有することができるか、或いは、R16およびR17は相互に結合して2〜5個の炭素原子のアルキレン基を形成することで三員環乃至六員環を形成でき;
11、R12とR13のうち全部がHであることはなく、
は一般式(I)
YBX (I)
の両性イオン単量体の残基であり;
上記式中、
Yは、HC=CR−CO−A−、HC=CR−C−A−、HC=CR−CH、RO−CO−CR=CR−CO−O、RCH=CH−CO−O−、RCH=C(COOR)CH−CO−O、
【化12】

から選択されたエチレン性不飽和基であり;
Aは、−O−もしくはNRであり;
は、結合、(CHおよび(CHSO−から選択され、nは1〜12であり;
は、結合、−O−、O−CO−、CO−O、CO−NR−、−NR−CO、O−CO−NR−、NR−CO−O−から選択され;
Rは水素もしくはC1−4アルキルであり;
は水素、C1−4アルキルもしくはBXであり;
は水素もしくはC1−4アルキルであり;
Bは、結合、または、オプションとして一個以上のフッ素置換基を含む直線状分岐状のアルカンジイル、アルキレンオキサアルキレンもしくはアルキレン(オリゴオキサアルキレン)基であり;
Xは、リン酸もしくは亜リン酸アンモニウム、ホスホニウム、もしくはスルホニウム・エステル両性イオン基であり;
xは2〜500であり;
は上記両性イオン単量体と重合可能なエチレン性不飽和共単量体の残基であり;且つ、
yは0〜500である。
【0057】
この態様の好ましい重合体において、一般式(VIII)においてMは好ましくは式(IX)を有する:
【化13】

式中、R27は、水素、C1−4アルキルおよびCOORから選択され、Rは水素もしくはC1−4アルキルであり;
28は水素およびC1−4アルキルから選択され;
29は、水素、C1−4アルキル、および、R27およびR29の両者がCOORでないものとしてCOOR、から選択され;
30は、
結合、
基CH、式中、Aは結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−O−CO−NR−および−NR−CO−Oから選択され、
基−COA−、式中、Aは−O−またはNRであり、式中、Rは水素またはC1−4アルキルまたはBXであり、および、
基−C−A−、式中、Aは(CH、結合もしくは(CHSOである、
から選択され、或いは、
30およびR28、または、R30およびR21は、結合することで基
【化14】

を形成可能であり;
式中、N原子はBに結合し、且つ、
BおよびXは上記で定義されている。
【0058】
一般式(VIII)の重合体において、Mは好ましくは上記の一般式(X)の単量体の残基である。斯かる単量体から誘導された基Mは、一般式−C(R31)(R32−C(R33)R34)を有し、式中、R31乃至R34は上記一般式(X)におけるのと同一の意味を有する。
【0059】
一般式(X)の重合体においてR11、R12、R13ならびにXは、上記において本発明の第1の態様に関して記述された開始剤における夫々の基に割当てられた好ましい意味を有する。故にXは好ましくは、ハロゲン、更に好ましくはClもしくはBrである。好ましくは、R11、R12およびR13の内のひとつだけが水素であり、更に好ましくはいずれもが水素でない。
【0060】
一般式(VIII)においてMの残基は、Mの残基中に無作為に分散する。
【0061】
本発明において、これらの種々の生成物重合体の制御された分子量、構成および構造は、上記重合体の特性において望ましい制御のレベルをもたらす。たとえば両性イオン単量体に由来する構成単位の実質的な単独重合体のブロックの配備は、望ましい湿潤性および/または潤滑性を付与すると確信される。オリゴ(アルキレンオキシド)などに基づくようなオリゴマー開始剤を用いて形成されたABブロック共重合体または重合体において、疎水性構成単位の長寸ブロックの配備は個別ドメインを形成し易い。高度に親水性である組成および高度に疎水性である組成の各ドメインは、特に薬剤もしくは他の有効化合物の吸収および制御された投与に対して、所望の系における他の成分との相互作用などの重合体特性を制御する上で、且つ、親水性および疎水性の性質を持つドメインを有する被覆、もしくは胞体(vesicle)やミセルなどの自発的に自己集合する構造を提供する上で有用であり得る。これらは、医薬などの生物学的に活性のある化合物の吸収性および放出性または溶解性を制御する上で有用であり得る。胞体は、水性環境において、脱水されたまたは疎水性の層もしくはコアおよび両性イオン外側部により形成され得る。外側の両性イオン層は、たとえば生体内に投与されたときの食菌作用に対する抵抗性などの、良好な生体適合性を付与するはずである。故にこれは、有用な薬剤投与デバイスであり得る。
【0062】
本発明は、添付の実施例および図面において更に示される。
【0063】
実施例1:水中におけるATRPによるMPC(1)の単独重合
図1に関し、水性ATRPによる“1”の制御された重合に対する典型的な手順は以下の如くである。1999年のChem.Commun.1285においてE. J. Ashford、V. Naldi、R. O’Dell、N. C. BillinghamおよびS. P.Armesにより先に報告された如く、水溶性ATRP開始剤(OEGBr、413mg、0.67ミリモル、1当量)を合成し、二回蒸留の脱イオン水(10ml)に溶解した。30分間、窒素置換した後、Cu(I)Br触媒(96mg、0.67ミリモル、1当量)およびビピリジン(bpy)配位子(208mg、0.13ミリモル、2当量)を窒素流の下で攪拌溶液に添加した。次に窒素下で上記反応混合物に対し、単量体“1”(2g、6.7ミリモル、10当量)を固体として添加した。上記反応混合物は直ちに暗緑となると共に次第に粘性となった。2〜4℃の発熱が通常通り観察され、重合が生じたことを表した。反応が完了した後、結果として生じた単独重合体“1”がTHFから沈殿し、次に水に再溶解してシリカカラムに通し、残存ATRP触媒を除去した。
【0064】
単量体および開始剤の種々の濃度および比率にて、更なる重合が行なわれた。全ての場合において、水中における“1”のATRPは迅速であった:20℃および17重量%の単量体濃度にて10分以内に約3℃の発熱が観察されると共にほぼ定量的な収量(>96%)が得られた。更に高い単量体濃度(40重量%)においては96%より多い収量が3分以内に得られた。しかし多分散度は1.23〜1.45と僅かに高く、これらの条件下では制御が幾分か維持されなかったことを示した。
【0065】
“1”に対する半対数の反応速度プロット(単独重合条件:[単量体]=17重量%、[開始剤]=24mM;pH7;単量体:開始剤:銅(I):bpyのモル比は28:1:1:2、20℃)は、重合の最初の50%に対しては線形である(図1参照)。更に高い重合率(conversion)では非線形の挙動が観察され、重合体ラジカル濃度がもはや一定でないことを示している。一方、重合による分子量の進展は95%転換まで高度に線形である(図2参照)。
【0066】
分子量の分布は、GPC(50mMのTrisma緩衝液、Superdex 200カラム、PEO基準、RI検出器)を用いて評価された。重合の反応速度は、(δ5.5および5.9における)単量体ビニル信号に依るピーク積分値を(δ0.5〜1.1における)メタクリレートバックボーンのそれと比較することによりH NMRスペクトル観測で監視された。
【0067】
GPC分析は狭幅で単峰性の分子量分布を示し、多分散度(Mw/Mn)は約1.1乃至1.45である(表1参照)。上記開始剤は、H NMRスペクトル観測により単独重合体の重合度を決定するため’末端基’として用いられた(表1参照)。これらの計算においては、開始剤の効率が100%であり、連鎖移動は無視でき、全ての重合体鎖はオリゴ(エチレングリコール)断片を含むものと仮定される。後者の仮定は、次の実験により確認された。ポリ“1”(重合度=20)の水溶液を、オリゴ(エチレングリコール)系開始剤に対する良好な溶媒であるTHF内に沈殿させた。沈殿した単独重合体の重合度はNMRによれば変化が検出されず、予期された様に開始剤基の全てが重合体鎖に対して共有結合的に結合したことが確認された。この実施例に対してだけは比較的に低い重合度が目標とされたが、これは部分的に、本発明者等のGPCカラムの知られた濾過限界によるものである。
【0068】
実施例2:メタノール中におけるATRPによるMPCの単独重合
20℃にてメタノール中で“1”を重合する実施可能性も調べられた。この条件下では良好に制御されたATRPが更に低速に生じ、転換は4時間後で70%のみであった。水性GPC分析によれば、17重量%の単量体濃度にて1.12の最終多分散度が示された。しかし、非常に高い収量が相当に効率的に達成されるから、水性媒体中のATRPが好ましい(表1)。
【0069】
表1:水中もしくはメタノール中における20℃でのATRPによるホスホリルコリン系単量体(1)の単独重合に対する合成条件、分子量データおよび重合率の要約
【表1】

H NMRスペクトル観測から(詳細に関しては本文参照)
水性GPC分析から
これは開始剤なしでの自発的重合であることから、理論的Dpは計算され得なかった。
【0070】
実施例3:共溶媒としてメタノールを用いたATRPによるHO中でのMPCの単独重合
2つのネック部を有する100mlの丸底フラスコに対し、OEG−Br、CuClおよびbipyが装填された。水(8.0ml)が添加され、混合物は均質な溶液が得られるまで攪拌された。脱気したメタノール(2.0ml)に単量体“1”(2.0g)を溶解し、反応溶液に添加し、フラスコをゴム膜でシールした。重合の持続時間に亙り、上記反応混合物を乾燥窒素下で保持した。この場合に用いられた[“1”]:[CuCl]:[bipy]:[開始剤]のモル比は20:1:2:1であり、目標Dp(目標重合度)は20であった。
【0071】
20℃、[HEMA−PC]=0.67M;[OEG350−Br]=0.033M;[CuCl]=0.033M;[bipy]=0.066M;HO=8.0ml、MeOH=2.0mlにおけるHEMA−PCの時間的な単独重合に対するln([M]/[M])のプロットは線形であって原点を通り、重合の時間目盛上でラジカル濃度は一定であることを例証した(図4を参照)。H NMRにより得られた実験的M値は理論的直線と良く一致した(図5(同一条件)を参照)。重合の全体に亙り多分散度は低いまま(Mw/Mn≦1.3)であり、リビング重合を示している。要約すると“1”に対する共溶媒としてメタノールが使用可能であり、これにより該単量体は固体としてではなく溶液として好都合に取り扱われ得る。もしメタノール含有量が比較的低くても(この場合には20体積%)、重合の割合に関する不都合な影響は無いと思われる。
【0072】
表2:20℃における20:80メタノール/水混合物中でのATRPによるHEMA−PCの単独重合に対する反応速度データ。条件は:[HEMA−PC]=0.67M;[OEG−Br]=0.033M;[CuCl]=0.033M;[bipy]=0.066M;HO=8.0ml、MeOH=2.0ml。
【表2】

【0073】
実施例4:ATRPによるAB−ジブロックMPC−NaVBA共重合体の形成
水性ATRPによって“1”に基づくジブロック共重合体も合成され得る。たとえば、Macromolecules、2000, 33, 25513においてX. S. Wang、R. A. JacksonおよびS. P. Armesにより先に記述されたように、OEGBrを開始剤として用いてナトリウム4−ビニルベンゾエート(NaVBA)(0.5g、3.4ミリモル)をpH11および20℃にて水(3.5ml)中で高収率(>90%)で単独重合した([NaVBA]=13重量%、[I]=20mM、Dp=46)。この時点において該反応溶液([“1”]=22重量%、[I]=20mM、理論的Dp=46)に対して単量体“1”(1.0g、3.4ミリモル)が固体として添加され、ジブロック共重合体が形成された。
【0074】
H NMR解析によれば上記ブロック共重合体は約55モル%のNaVBAを含み、理論的Dp(NaVBA)=46、Dp(“1”)=37であることが示された(図6を参照)。このブロック共重合体はpH7にて水中に分子的に溶解したが、酸(pH3)を添加すると可逆的にミセル凝集体を形成した(図7を参照)。動的光散乱の解析によれば二峰性の粒径分布が示され、大きい方の分布は190nmの強度平均ミセル直径を有していた。これらのミセルをDCl/DO中でH NMRにより解析したところ、予期された様に、4−ビニル安息香酸残留物は脱水ミセル核を形成し、ホスホリルコリン系残留物はミセル・コロナを形成した。斯かるミセルは生体内における生医学用途に対する’ステルス(stealth)’ナノ粒子として作用することが期待される、なぜなら、ホスホリルコリンの外層が蛋白質吸着を最小化して食菌作用を防止するからである。
【0075】
実施例5:ATRPによるAB−ジブロックMPC−HEMA共重合体の形成
上記単独重合([“1”]=17重量%、[I]=34mM、理論的D=20)に対して記述されたように“1”(2.0g、6.7ミリモル)を水中(10ml)で重合したが、12分後(98%重合率)にメタノール(5ml)中のHEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(0.88g、6.7ミリモル)の脱気溶液を添加し、67:33の水:メタノール([HEMA]=6重量%、[I]=23mM、理論的D=20)の反応溶液組成を得た。上記第2単量体の1時間後、重合に対する全体的転換は98%以上に達していた。重合に対する実際の度合いは、H NMRスペクトル観測により判断されたように各ブロック((“1”)、HEMA)に対して19であった。
【0076】
実施例6:直接的にHO:MeOH溶媒混合液におけるATRPによるAB−ジブロックMPC−HEMA共重合体の形成
HEMAと“1”とのブロック共重合。“1”(4.1g、1.35×10−2モル)を先ず、[“1”]:[OEG−Br]:[CuCl]:[bipy]=10:1:1:2のモル比となるように、50/50体積/体積のメタノール/水混合物内で重合した。150分後、単量体転換は100%であり、得られた単独重合体は3,000のMnを有する低い多分散性(Mw/Mn=1.19)を有していた。次に、重合している水溶液にHEMA(3.54g、2.7×10−2モル、目標Dp=20)が添加された。24時間後、事実上100%の単量体重合率でジブロック共重合体が得られた。共重合体のMnは、H NMRを用いた末端基分析により計算された。この場合にGPC分析は可能でなかった、なぜなら共重合体は水中でミセルを形成したからである。
【0077】
実施例7:ATRPによるAB−ジブロックMPC−OEGMA共重合体の形成
実施例4と同様の様式で別のブロック共重合体が調製され、先ず“1”(2.0g、6.7ミリモル)を先に記述されたように([“1”]=17重量%、[I]=34mM、理論的D=20)水中(10ml)で重合し、11分(97%重合率)でOEGMA(オリゴエチレングリコール・メタクリレート)の脱気水溶液(2ml)を添加した([OEGMA]=19重量%、[I]=28mM、理論的D=20)。第2単量体の添加20分後、H NMRスペクトル観測が用いられ、ジブロック共重合体に対しては98%より高い総転換、および各ブロックに対しては20の重合度が計算された。水性GPC分析によれば、単独重合体(“1”)に対しては8,750のMおよび1.30のM/Mが与えられ、ジブロックに対しては12,900のMおよび1.34のM/Mが与えられた。
【0078】
実施例8:ATRPによるAB−ジブロックOEGMA−MPC共重合体の形成
先ずOEGMA(5.03g、1.2×10−2モル)を水中(10ml)で次の条件下で重合させた:[OEGMA]:[OEG−Br]:[CuCl]:[bipy]=20:1:1:2、目標Dp=20。20分後に単量体転換は100%に達し、水性GPCにより判断されたようにMn=8,600でMw/Mn=1.19であった。次に、重合OEGMA溶液に対して固体(3.56g、1.2×10−2モル;目標Dp=20)として“1”が添加された。H NMRスペクトル観測により表された如く60分後には事実上100%の単量体重合率が達成された(残存ビニル二重結合は無い)。洗浄および分離後、比較的低い多分散度(Mw/Mn≒1.4)でジブロック共重合体(Mn=15,000)が得られた。
【0079】
実施例9:ATRPによるAB−ジブロックMPC−DMAPS共重合体の形成
“1”はまた、DMAPS([2−(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル(3−スルフォプロピル)アンモニウム・ヒドロキシド)ともブロック共重合し得る。先ず“1”(4.0g、1.35×10−2モル)を水中(10ml)で単独重合した;[“1”]:[OEG−Br]:[CuCl]:[bipy]=20:1:1:2、目標Dp=20。120分後、単量体転換は100%であり、得られた単独重合体(Mn=6,200)は低い多分散度(Mw/Mn=1.20)を有していた。次に重合している水溶液に対し、DMAPS単量体(3.8g、1.35×10−2モル;目標Dp=20)が添加された。21時間後、12,000のMnおよび1.27の多分散度を有するブロック共重合体が得られた。
【0080】
実施例10〜実施例15:他の共単量体とのAB−ジブロック共重合体の形成
MPCを、表5に示された条件で、疎水性を変化させた単量体と、ABブロック共重合体に対する一般的技術を用いて更に重合した。重合の共単量体タイプ、割合および意図した度合いを、この表に示す。この表には、指定反応時間後における転換の度合いならびに(NMRにより)測定された数平均分子量も示される。
【0081】
ATRP[MPC]=0.67M、[OEG−Br]=0.067M、[CuBr]=0.067M、[bipy]=0.135M、MeOH=10ml、T=20℃
【表3】

nBuMA=n−ブチルメタクリレート
HPMA=ヒドロキシプロピルメタクリレート
DHPMA=ジヒドロキシプロピルメタクリレート
【0082】
実施例16〜実施例18:水/メタノール混合物における更なるABブロック合成
ATRP方法を用い、表4に対する表題に示された一般的条件下で、ブロックAとしてのMPCのABブロック共重合の更なる例が行なわれた。表4には、第2ブロックに対する共単量体および相対レベル、ならびに、溶媒タイプ、反応時間、生成物および中間単独重合体特性および多分散性の幾つかも示される。
【0083】
表4−ATRPによるMPC系ジブロック共重合体の合成
[MPC]=0.67M、[OEG−Br]:[CuCl]:[bipy]=1:1:2、T=20℃;全ての場合において先ずMPCが重合された
【表4】

DMAEMA=ジメチルアミノエチル・メタクリレート
【0084】
実施例19:MPCおよびHEMAのABCトリブロック共重合体
トリブロック共重合体が、MPCで、50:50の水:メタノール溶媒内で開始剤としてOEGBrを用い、第1(A)および第3(C)の単独重合体ブロックを形成して、合成された。MPCは各ブロックに対して10の目標Dpを与える量で用いられた。単独重合体ブロックBを構成すべく使用された単量体は、20の目標Dpを与える量で使用された2−ヒドロキシ・エチルメタクリレートであった。第1ブロックに対しては1.5時間で、第2ブロックに対しては約2.5時間で、第3ブロックに対しては約18.5時間で約100%の転換が生じた。A、ABおよびABCに対する算出されたMnは夫々3000、5600および8500であり、一方、(NMRによる)測定Mn値は2900、5500および8420であった。
【0085】
実施例20および21:オリゴマーの二官能性開始剤
2つの重合体の各々が、単一の単量体すなわちMPC(1)と単一段階のATRPプロセスを実施し、溶媒としてメタノールを用いることにより、それら重合体を形成すべく、二官能性の重合抑制剤、すなわち2つの末端臭素置換基を有するポリプロピレンオキシドが用いられた。該プロセスは、実施例20に対してはMPC重合体の各ブロックの10の重合度および実施例21に対しては20の重合度を提供すべく、0.67Mの“1”、0.067MのCuCl遷移金属化合物、0.135Mのビピリジンおよび十分な開始剤を用いて行なわれた。2つの実施例に対する算出されたMnは夫々、7940および13900であった。約100%の転換に対する時間は夫々1.5時間および2時間であり、一方、Mnの測定値は夫々7520および11600であった。
【0086】
実施例22〜29
表6は、メタノール性ATRPによる種々のMPC−DMAEMAおよびMPC−DEAEMAジブロック共重合体の合成に対する条件および結果を記述している。反応条件は、[MPC]=2.02M(10mlのエタノール中で6.0g)、[MPC]:[OEG−Br]:[CuBr]:[bipy]=30:1:1:2、T=20℃であり;全ての場合においてMPCは先ず重合され、次に純粋なDMAEMA(もしくはDEAEMA)が続いた。H NMRスペクトル観測により示された如く、ジブロックに対しては表6に表された時間後に殆ど完全な単量体転換(残存ビニル二重結合なし)が達成された。反応混合物はメタノールにより希釈すると共に、残存ATRP触媒を除去すべくシリカカラムを通した。溶媒蒸発の後、生成物を室温にて真空下で乾燥した。
【0087】
表6:メタノールにおけるMPC−DMAEMAもしくはDEAEMAジブロック共重合体の重合のデータ
【表6】

DMA=ジメチルアミノエチル・メタクリレート
DEA=ジエチルアミノエチル・メタクリレート
AGPC=水性ゲル透過クロマトグラフィ
【0088】
実施例30:重合体実施例24に対する可逆的pH誘導ミセル化
溶液のpHを慎重に調節することで、DEAEMA核を有するミセルが得られた。MPC−DEAEMAジブロック共重合体を20℃にて希DClもしくはNaODに溶解して、最終pHは夫々1.37および8.68の1.0w/v%の共重合体溶液を生成した。図8は、夫々pH1.37および8.68においてMPC−DEAEMAジブロック共重合体に対して得られたプロトンNMRスペクトルを示している。
【0089】
MPC−DEAEMAジブロック共重合体溶液に対して希DClを慎重に添加したところ、1.37の最終pHが生成された。故にこの共重合体はpH1.37および20℃にて希釈水溶液に分子的に溶解した、なぜなら、これらの条件下でMPCおよびDEAEMAブロックは両者ともに親水性だからである。これは図8aにおけるプロトンNMRスペクトルにより特徴付けられ得るものであり、この場合にDEAの残存プロトンに割当てられたδ1.25およびδ3.4ppmにおいて共鳴が示される。
【0090】
図8を比較すると、δ1.25およびδ3.4ppmにおけるDEAEMA残留物による信号は殆ど消失したことは明らかであり、このブロックに対する非常に低い移動度および低い溶媒和を示している。一方、δ4.0およびδ3.5ppmにおけるMPCブロックによる信号は依然として顕著であり、このブロックは溶媒和ミセル・コロナを形成することを示している。予期された様にpH8.68以上においては、DEAEMA核およびMPCコロナから成るミセルが形成された。
【0091】
自己集合は完全に可逆的であり;酸を添加した結果、即時にミセル溶解が生じた。
【0092】
実施例31:官能性開始剤を用いた(水性)ATRPによるMPC系マクロ単量体
2つのネック部を有する100mlの丸底フラスコに対し、(図9に示された)ビニル官能性開始剤1、Cu(I)Brおよびbipyが装填された。水(10.0ml)が添加され、混合物は均質な溶液が得られるまで攪拌された。反応溶液に対してMPC単量体(2.0g)が添加されると共に、フラスコはゴム膜により封がされた。反応混合物は、重合の持続時間に亙り乾燥窒素下および20℃にて保持された。この場合に使用された[MPC]:[開始剤]:[CuBr]:[bipy]のモル比は10:1:1:2であり、目標Dpは10であった。
【0093】
表7は、種々の反応期間後および重合の完了時にて反応混合物に対して確立されたMnおよびMw値を表している。
【表7】

【0094】
図9は、上記手順で用いられる開始剤、単量体と、此処で得られる重合体とを示している。重合の間におけるH NMRを示す図10から理解され得る如く、δ1ppmにおける重合体のピークの面積は時間と共に漸進的に増大する一方、δ5.5〜6.0ppmにおける単量体ビニル信号によるピーク面積は時間と共に減少した。上記開始剤のCH=によるδ5およびδ4.75における酢酸ビニルのピークおよび=CH−O−に対応するδ7.1におけるピークは、重合プロセスを通してそのままだった。
【0095】
得られた最終重合体および中間重合体の水性GPCトレースは、ポリMPCに対応するピークと残存MPC単量体からのピークとを示す。単量体ピークは単量体重合率が99%超に達したときに消失し、該単量体の完全な転換を示唆した。
【0096】
実施例32:ATRPによる統計的四重化重合体の重合
統計的四重化重合体(statistical quatro-polymer) MPC0.30nBuMA0.50HPMA0.15TMSPMA0.05に対して単量体の全てが重合の開始時に一緒に添加されたことを除き、実施例27に対するのと同様の実験手順が採用された。TMSPMAは、トリメトキシシリルプロピル・メタクリレートである。MPCの濃度は2.02Mであり各比率はモルにより示される。OEG−Brの濃度は6.73×10−2であり[OEG−Br]:[CuBr]:[bipy]は1:1:2である。目標Dpは100である。重合の完了後のNMRは残存共単量体を示さなかった(δ5.0〜6.5ppm間でビニル信号なし)。反応性のシリル基の存在の故に、この共重合体ではGPC分析は不可能であった。
【0097】
実施例33:ATRPによるAB−ジブロックMPC−DMAME共重合体の形成
DMAの塩化メチル四重化誘導体(DMAME)に対し、MPCをブロック共重合した。先ず溶媒混合液(2mlのメタノール+8mlの水)中でMPC(6.0g、2.02×10−2モル)を単独重合した:[MPC]:[OEG−Br]:[CuBr]:[bipy]=30:1:1:2、目標Dp=30。60分後、単量体転換は>99%に達し、得られたMPC単独重合体は低い多分散度(Mw/Mn<1.20)を有していた。次に重合溶液に対してはDMAME単量体(4.16g、2.02×10−2モル、目標Dp=30)が添加された。46時間後、H NMRスペクトル観測により表された如く99%超(δ5.5〜6.0ppmにて残存ビニル二重結合なし)の単量体転換が得られた。
【0098】
実施例34:ATRPによるAB−ジブロックMPC−DMABZ共重合体の形成
実施例33と同様の様式で別のブロック共重合体が調製され、目標Dp=30で[MPC]:[OEG−Br]:[CuBr]:[bipy]のモル比が30:1:1:2となるように、先ずMPC(6.0g、2.02×10−2モル)が10.00mlの20/80体積/体積メタノール/水混合物中で単独重合され、60分の時点(99%の単量体重合率)で、DMAの脱気された塩化ベンジル誘導体[DMABZ]の単量体(5.71g、2.02×10−2モル、目標Dp=30)が重合用水溶液に添加された。第2単量体の添加の50時間後にH NMRスペクトル観測が使用されることで、ジブロック共重合体に対する96%超の全体的転換が決定された。
【0099】
実施例35:ATRPによるAB−ジブロックPSSNa−MPC共重合体の形成
先ず以下の様にナトリウム4−スチレンスルホナート(SSNa)を典型的に重合した:SSNa単量体(4.17g)を混合溶媒(15mlHO+5mlMeOH)に溶解し、pHをNaOHにより約10〜12に調節し、該溶液を脱気した。[SSNa]:[NaBMB]:[CuCl]:[bipy]のモル比が50:1:1:2であり目標Dpが50であるように、bipy配位子およびCu(I)Clと共にナトリウム4−(ブロモメチル)ベンゾエート開始剤(NaBMB)を添加した。120分後にSSNa単量体転換は95%に達してから、重合SSNa溶液に対して第2単量体であるMPCを固体(6.0g、2.02×10−2モル、目標Dp=50)として添加した。22時間後にはH NMRスペクトル観測により表されたように、99%超のMPC転換(δ5.5〜6.0ppmにて残存ビニル二重結合なし)が達成された。
【0100】
実施例36〜37:ATRPによるAB−ジブロックMPC−PPO共重合体の形成
ポリ(プロピレングリコール)[PPO]マクロ開始剤を用いてMPCのブロック共重合が達成された。MPC(6.0g、2.02×10−2モル)を10.0mlのメタノール中で重合した。[MPC]:[PPO−Br]:[CuBr]:[bipy]のモル比は30:1:1:2であった。12時間後、H NMRスペクトル観測により表されたように、MPC転換は100%に達した(δ5.5〜6.0ppmにて残存ビニル二重結合なし)。
【0101】
更に長いMPCブロックにより別のMPC−PPOブロック共重合体も以下の条件で合成された:MPC(6.24g、2.10×10−2モル);[MPC]:[PPO−Br]:[CuCl]:[bipy]=50:1:1:2.5。18時間後、100%の単量体転換でジブロック共重合体が得られた。
【0102】
実施例38〜43:ATRPによるMPC系共重合体の形成
表8は、MPCジブロック共重合体合成の条件および結果を要約している。反応条件は、[MPC]=2.02M、[OEG−Br]:[CuBr]:[bipy]=1:1:2、T=20℃であり;全ての場合において最初にMPCを重合した。第2ブロックは、ジエチルアミノエチル・メタクリレート(DEA)もしくはアンモニウム−2−スルファトエチル・メタクリレート(SEM)のいずれかにより形成された。
【0103】
表8:MPC系共重合体のデータ
【表8】

【0104】
実施例44〜47:新たな官能性開始剤とPPO系マクロ開始剤とを用いたATRPによるMeOH中でのMPCの単独重合
表9は、MPC単独重合体合成の条件および結果を記述している。反応条件は、[MPC]=2.02×10−2モル(実施例44、46、47)、[MPC]=1.35×10−2モル(実施例45)、[OEG−Br]:[CuBr]:[bipy]=1:1:2、T=20℃であった。
【0105】
表9:MPC単独重合体に対するデータ
【表9】

DMAEBr:これはマクロ単量体合成に対する官能性開始剤である。これは以下のように合成された。
【化15】

MEBr:NMR標識された開始剤。これは以下に従い合成された:
【化16】

【0106】
実施例48:ATRPによるMPC系マクロ単量体
【化17】

【0107】
実施例46で得られたMPC重合体をメタノール中、40℃で4−ビニル塩化ベンジル[4−VBZCl]と反応させた。このビニル塩化ベンジルは、MPC重合体の末端で第三アミン基を四重化する。[MPC共重合体]:[4−VBZCl]のモル比は1:2であった。マクロ単量体は、5日後に得られた。このマクロ単量体は、H NMRスペクトル観測により示されたように、残存4−VBZClが混入していた。δ5.5〜6.0ppmおよびδ6.5〜7.0ppmにおけるピークは夫々、4−VBZClのビニルおよび芳香基に依るものである。故に結果として生じたマクロ単量体は、THFで洗浄することによる更なる精製を必要とした。
【0108】
実施例49〜50:ATRPによるA(BC)−ジブロックMPC−(MMA/DEA)共重合体の形成
MPCをMMA/DEAとブロック共重合した。先ず10mlのメタノール中でMPC(6.0g、2.02×10−2モル)を単独重合した:[MPC]:[OEG−Br]:[CuBr]:[bipy]=30:1:1:2、目標Dp=30。60分後、単量体転換は>99%に達すると共に、得られた単独重合体は低い多分散度(Mw/Mn<1.20)を有していた。次に重合溶液に対しては、MMA単量体(1.35g、1.35×10−2モル、目標Dp=20)およびDEA単量体(5.0g、2.70×10−2モル、目標Dp=40)を添加した。24時間後、99%超の単量体転換を有するブロック共重合体が得られた。反応混合物はメタノールにより希釈され、シリカカラムを通され、残存ATRP触媒が除去された。溶媒を蒸発させた後、生成物を室温にて真空下で乾燥させた。実施例50に対し、MMA/DEA比率は40/20へと変更された。
【0109】
実施例51:ATRPによるAB−ジブロックMPC−HEMA共重合体の形成
実施例49と同様の様式で別のブロック共重合体が調製されたが、先ず、目標Dp=50として[MPC]:[OEG−Br]:[CuBr]:[bipy]のモル比が50:1:1:2であるようにMPC(6.0g、2.02×10−2モル)を10.00mlのメタノール中で単独重合させた。100分後(99%単量体重合率)、重合溶液に対して脱気HEMA単量体(2.1g、1.62×10−2モル、目標Dp=40)を添加した。第2単量体の添加の20時間後にH NMRスペクトル観測が使用され、ジブロック共重合体に対する99%超の全体的転換が決定された。比較的低い多分散度(Mw/Mn≒1.25)を有する白色のジブロック共重合体(Mn=16,000)が得られた。
【0110】
実施例52:ATRPによるAB−ジブロックMPC−CBMA共重合体の形成
先ずメタノール(10ml)中においてMPC(6.0g、2.02×10−2モル)が次の条件下で重合された:[MPC]:[OEG−Br]:[CuBr]:[bipy]=100:1:1:2;目標Dp=100。120分後、水性GPCにより判断されたように、Mn=31,000およびMw/Mn=1.16として単量体重合率は殆ど100%に達した。次に重合MPC溶液に対しては、N−メタクリロイルオキシエチル−N,Nジメチルアンモニウムメチル・カルボン酸分子内塩CBMA(カルボキシベタイン・メタクリレート)(4.82g、2.02x10−2mol、目標Dp=100)が添加された。24時間後、H NMRスペクトル観測により示されたように、殆ど完全な単量体転換(残存ビニル二重結合なし)が達成された。比較的低い多分散度(Mw/Mn≒1.20)の白色のジブロック共重合体(Mn=33,000)が得られた。
【0111】
実施例53:ATRPによるAB−ジブロックMPC−MMA共重合体の形成
MMAに対するMPCのブロック共重合。MPC(6.0g、2.02×10−2モル、目標Dp=100)を10.0mlのメタノール中で重合させた。[MPC]:[OEG−Br]:[CuBr]:[bipy]のモル比は100:1:1:2であった。3時間後、H NMRスペクトル観測により示されたように、単量体転換は99%超に達した(δ5.5〜6.0ppmにおいて残存ビニル二重結合なし)。次に重合溶液に対しては、MMA単量体(0.6g、6.06×10−3モル、目標Dp=30)が添加された。24時間後、99%超の単量体転換を有するブロック共重合体が得られた。上記反応混合物はメタノールで希釈され、シリカカラムを通されて残存ATRP触媒が除去された。溶媒蒸発後、生成物を室温にて真空下で乾燥させた。
【0112】
実施例54および55:ATRPによるMPC−DMA−DEAのABCトリブロック共重合体の形成
先ずメタノール(10ml)中でMPC(6.0g、2.02×10−2モル)を次の条件下で重合させた:[MPC]:[OEG−Br]:[CuBr]:[bipy]=30:1:1:2;目標Dp=30。60分後、水性GPCにより判断されたように、Mn=10,000およびMw/Mn=1.19として単量体転換は99%に達した。次に、第2単量体すなわちDMAは液体(2.15g、1.35×10−2モル;目標Dp=20)として重合溶液に添加された。150分後、H NMRスペクトル観測により示されたように、本質的に98%の単量体転換が達成された。次に、重合溶液に対しては第3単量体としてDEA(5.05g、2.70×10−2モル、目標Dp=40)が添加された。48時間後、20,000のMnおよび1.43の多分散度を有するブロック共重合体が得られた。
【0113】
DEAのレベルを適切に調節し、同一手順を用いてMPC30−DMA20−DEA30トリブロック共重合体を重合させた。
【0114】
実施例56:MPC−酢酸ビニル官能性マクロ単量体(実施例31)の重合
実施例31に記述されたMPC系マクロマー(0.5g)を、0.5重量%のPerkadox16開始剤を含むメタノール(10g)に溶解した。この溶液を還流下で4時間攪拌し、その後反応混合物を放置冷却した。上記溶液をサンプリングすると共に、溶媒を除去し、白色固体を得た。これはDOに再溶解すると共に、H NMRにかけ、上記マクロマーのスペクトルと比較した。重合した生成物は5.5および6.0ppmにおけるビニル結合を示さず、酢酸ビニル反応鎖の末端基は重合することで櫛状のポリMPC重合体を生成することが例証された。
【0115】
実施例57:MPC30−DMA20−DEA30のシェル架橋
実施例55で形成されたMPC30−DMA20−DEA30トリブロック共重合体が実施例30におけるのと同様にミセル化された。強度平均ミセル直径はpH9.6における1重量%水溶液として56nmと見出された(多分散度は0.064であり、これは良好である)。
【0116】
これは、BIEE:DMA比率を0.5モル比(目標架橋)として20℃にて3日間に亙りpH8〜9にて1,2−bis(2−ヨードエトキシ)エタン(BIEE)の添加により溶液中でシェル架橋された。;これはDMA残留物を四級化し架橋するように反応する。このトリブロック共重合体のシェル架橋の後、ミセルはpH9.6では63nm直径(多分散度0.08)、pH2.0では67nm(多分散度0.111)である。後者の測定値はシェル架橋が好結果であることの証拠である、なぜなら、非架橋のミセルは酸性媒体中で解離するからである。
【0117】
実施例58:(MPC30−HPMA15−TMSPMA5)−(BMA50)ブロック四重化重合体の重合
MPC、HPMAおよびTMSPMAが一緒に添加され、BMAの最終添加の前に統計的に99%転換まで重合することで共重合体における疎水性の別体ブロックを形成したことを除き、実施例32で概説されたプロセスに従い(MPC30−HPMA15−TMSPMA5)−(BMA50)が作成された。
【0118】
実施例59:薬剤投与の研究
鋼鉄の試片(coupon)を、実施例32(統計的四重化重合体)および実施例58(ブロック四重化重合体)により被覆し70℃で一晩中硬化させた。上記試片は次に、エタノールもしくはエタノール:ヘキサン(3:1)中のデキサメタゾンの10mg/ml溶液に30分浸漬させた。上記試片を取出し、超音波処理を用いて5mlのエタノール中で溶離する前に更に30分に亙り空気乾燥させた。上記エタノール溶液は次に、デキサメタゾン溶離物を検出すべく243nmにてUVスペクトル観測により分析した。図11は、上記2つの重合体を用いて2つの溶液から添着された薬剤の相対量を示している。統計的四重化重合体(実施例32)における薬剤の総添着量に関し、エタノール又はエタノール:ヘキサンからの添着に統計的な有意差はなかった。しかしブロック四重化重合体に対しては統計的に有意な増大(p=0.04)があることから、ヘキサン共溶媒は疎水性ブロックを受け入れて膨潤すると共にエタノール膨潤サンプルに対して薬剤添着を増大したことが示された。
【0119】
同様に、同一の重合体が混合エタノール:ヘキサン溶液から添着されて300分に亙り反応速度実験において溶離されたときには、ブロック四重化重合体に対して更に高い最終吸収度が記録されることで、統計的四重化重合体被覆よりも、溶媒組み合わせによる重合体被覆への更に効率的な添着が示された(図12)。
【0120】
実施例60:性能データ
上記で作成された重合体の幾つかは試験に委ねられ、それらがフィブリノゲン吸収のレベルを減少するか否かが決定された。これは、血液適合性の指標である。
【0121】
WO−A−9301221に既述されたように、フィブリノゲンELISAが実施された。表10に示された全ての重合体は、エタノール溶液(10mg/ml)から3mm/秒にてポリエチレンテレフタレート(PET)帯片(30mm×10mm)上へと浸漬被覆された。架橋可能重合体(実施例32)は、試験に先立ち一晩に亙り70℃で架橋された。陽性対照の被覆は、習用のフリーラジカル重合により作成されると共にWO−A−9301221に記述されたMPC−ラウリルメタクリレート(1:2)共重合体であって、フィブリノゲン吸収を減少する生体適合性かつ血液適合性の被覆として商的使用されている共重合体であった。
【0122】
【表10】

【0123】
これらのデータは、実施例25および26の単純なブロック共重合体がアルコール中に分子的に溶解されて平坦表面上へと物理吸着されて安定な生体適合性被覆を形成し得ることを表している。実施例32の統計的四重化重合体は、安定な生体適合性被覆を形成すべく被覆かつ硬化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】実施例1の反応速度のプロット図である。
【図2】実施例1の反応速度のプロット図である。
【図3】実施例1において生成された重合体のH NMRスペクトルである。
【図4】実施例3の反応速度のプロット図である。
【図5】実施例3の反応速度のプロット図である。
【図6】実施例4において、pH9で生成されたブロック共重合体のH NMRスペクトルである。
【図7】実施例4において、pH3で生成されたブロック共重合体のH NMRスペクトルである。
【図8】実施例30に記述された2つのpHにおいて実施例24で生成されたブロック共重合体のH NMRスペクトルである。
【図9】実施例31の開始剤、単量体および重合体に対するH NMRスペクトルおよび化学式を示す。
【図10】実施例31の重合プロセスの間におけるH NMRである。
【図11】実施例58における薬剤添着レベルを示す図である。
【図12】実施例58における薬剤放出レベルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の両性イオン単量体を含むエチレン性不飽和単量体が、開始剤および触媒の存在下でリビング・ラジカル重合プロセスにより重合される重合プロセスであって、
YBX (I)
(式中、
Yは、エチレン性不飽和基HC=CR−CO−A−であり;
Aは、−O−もしくはNRであり;
Rは水素もしくはC1−4アルキルであり;
は水素、C1−4アルキルもしくはBXであり;
Bは、結合、または、オプションとして一個以上のフッ素置換基を含む直線状分岐状のアルカンジイル、アルキレンオキサアルキレンもしくはアルキレン(オリゴオキサアルキレン)基であり;
Xは、一般式(II)の両性イオン基である。
【化1】

(式中、同一であるか、もしくは異なる部分AおよびAは−O−、−S−、−NH−もしくは共有結合であり、Wは、式−W−N、−W−P、−W−Sもしくは−W−Hetから成る基であり;
は、2〜6個の炭素原子のアルカンジイルであり、オプションとして一個以上のフッ素置換基および/または一個以上の官能基を含み;且つ、
各基Rは同一であるか、もしくは異なり、各々が水素もしくは1〜4個の炭素原子のアルキル、もしくは、アリールであるか、または、各基Rの内の2個はそれらに結合された窒素原子と協働して5〜7個の原子を含む脂肪族複素環を形成するか、または、3個の基Rはそれらに結合する窒素原子と協働して各環に5〜7個の原子を含む縮合環構造を形成し;且つ、オプションとして各基Rのひとつ以上は親水性官能基により置換され;且つ、
各基Rは同一であるか、もしくは異なり、各々はRもしくは基ORであり、式中Rは上記に定義され;または、
Hetは、環を含む芳香族窒素−、リン−もしくは硫黄−、である。))
前記開始剤は、一般式(V)であり、
111213C−X (V)
(式中、
11、R12およびR13の内の2つ以下はHであるように構成され、
は、Cl、Br、I、OR10、SR14、SeR14、OP(=O)R14、OP(=O)(OR14、O−N(R14およびS−C(=S)N(R14から成る群から選択され、ここで、R10は水素原子の各々が独立的にハロゲン化物により置き換えられ得る1〜20個の炭素原子のアルキルであり、R14はアリールまたは直線状もしくは分岐状のC〜C20アルキル基であり、N(R14が存在する場合に2個のR14基は結合されることで五もしくは六員の複素環を形成可能であり;且つ、
11、R12およびR13は各々独立して、
H、ハロゲン、C〜C20アルキル、C〜Cシクロアルキル、C(=O)R15、C(=O)NR1617、COCl、OH、CN、C〜C20アルケニル、C〜C20アルケニルオキシラニル、グリシジル、アリール、ヘテロシクリル、アラルキル、アラルケニル、
1個乃至全ての水素原子がハロゲンにより置換されるC〜Cアルキル、および、
〜Cアルコキシ、アリール、ヘテロシクリル、C(=O)R15、C(=O)NR1617、−CR1213、オキシラニルおよびグリシジルから成る群から選択された1〜3個の置換基により置換されたC〜Cアルキル、
から成る群から選択され;
15は、1〜20個の炭素原子のアルキル、1〜20個の炭素原子のアルコキシ、各アルコキシ基が1〜3個の炭素原子を有するオリゴ(アルコキシ)、アリールオキシもしくはヘテロシクリルオキシであり、上記基の任意のものは、オプションとして置換されたアルコキシ、オリゴアルコキシ、アミノ(モノ−およびジ−アルキルアミノならびにトリアルキルアンモニウムを含み、上記アルキル基はアシル、アルコキシカルボニル、アルケンオキシカルボニル、アリールおよびヒドロキシから選択された置換基を有することができ)およびヒドロキシル基から選択された置換基を有することができ;且つ、
16およびR17は独立して、H、または、1〜20個の炭素原子のアルキルであり、該アルキル基はアシル、アルコキシカルボニル、アリールおよびヒドロキシルから選択された置換基を有することができ、或いは、R16およびR17は相互に結合されて2〜5個の炭素原子のアルカンジイルを形成することで三員乃至六員環を形成できる。)
前記触媒は遷移金属化合物および配位子を含み、
前記遷移金属化合物は前記開始剤と不活動重合体鎖とによる酸化還元サイクルに関与可能であり、且つ、
前記配位子は、遷移金属と成長重合体ラジカルとの間の直接結合が形成されない様に、σ−結合で上記遷移金属原子と協働し得る任意のN−、O−、P−もしくはS−含有化合物、または、π−結合で上記遷移金属と協働し得る任意の炭素含有化合物である、重合プロセス。
【請求項2】
Xは一般式(III)の基である、請求項1に記載の重合プロセス。
【化2】

(式中、基Rは同一であるか、もしくは異なり、各々は水素もしくはC1−4アルキルであり、mは1〜4であり、好ましくは各基Rは同一であり好ましくはメチルである。)
【請求項3】
YはHC=CR−CO−A−であり、Rは水素もしくはメチルであり且つAはOである、先行請求項のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項4】
Bは直鎖C2−6−アルカンジイルである、先行請求項のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項5】
前記両性イオン単量体は2−メタクリロイルオキシエチル−2’−トリメチルアンモニウム・リン酸エチル分子内塩である、請求項1記載の重合プロセス。
【請求項6】
前記重合混合物は前記エチレン性不飽和単量体の重量に基づき好ましくは10〜500重量%の範囲の量の非重合性溶媒を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項7】
前記溶媒は前記エチレン性不飽和単量体の重量に基づき好ましくは10〜100重量%の範囲の量の水を含む、請求項6記載の重合プロセス。
【請求項8】
前記エチレン性不飽和単量体は少なくとも一種類の共単量体を含み、前記共単量体は、好ましくは陰イオン性、陽イオン性および非イオン性の単量体から選択され、更に好ましくは非イオン性単量体を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項9】
前記共単量体は前記両性イオン単量体と非混和性であり、且つ、
前記重合混合物は該両性イオン単量体および該共単量体の両者が可溶である非重合性溶媒から成る、請求項8に記載の重合プロセス。
【請求項10】
前記溶媒は、水、および、水混和可能な有機溶媒、好ましくはC1−4アルカノール、更に好ましくはメタノールを含む、請求項9に記載の重合プロセス。
【請求項11】
原子もしくは基移動ラジカル重合である、先行請求項のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項12】
11、R12およびR13のひとつがHである、請求項11記載のプロセス。
【請求項13】
はCl、BrまたはIから選択され、好ましくはBrである、請求項11記載の重合プロセス。
【請求項14】
11およびR12は各々メチルであり且つR13は−CO−R15であり、R15はオリゴアルコキシで、好ましくは2〜10個のエトキシ基が在るメトキシ−オリゴエトキシである、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項15】
前記遷移金属化合物がMn+X’である請求項10乃至14のいずれか一項に記載の重合プロセス。
(式中、
n+は、Cu1+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Ru2+、Ru3+、Cr2+、Cr3+、Mo2+、Mo3+、W2+、W3+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Rh3+、Rh4+、Re2+、Re3+、Co、Co2+、Co3+、V2+、V3+、Zn、Zn2+、Ni2+、Ni3+、Au、Au2+、AgおよびAg2+から成る群から選択され得るものであり;且つ、
X’は、ハロゲン、C12〜C−アルコキシ、(SO1/2、(PO1/3、(R18PO1/2、(R18PO)、トリフラート、ヘキサフルオロ・リン酸塩、メタンスルフォン酸塩、アリールスルフォン酸塩、CNおよびR19COから成る群から選択され、R18はアリールまたは直線状もしくは分岐状のC1−20アルキルであり、且つ、R19は、H、または、ハロゲンにより1〜5回置換され得る直線状もしくは分岐状のC〜Cアルキル基であり、且つ、
nは上記金属上の形式電荷(0≦n≦4)である。)
【請求項16】
前記金属化合物はCuHalであり、Halは塩素もしくは臭素である、請求項15記載の重合プロセス。
【請求項17】
前記配位子は以下のa)〜e)から成る群から選択される、請求項10乃至15のいずれか一項に記載の重合プロセス。
a)式、
20−Z−R21および、
20−Z−(R22−Z)−R21
の化合物、
式中、R20およびR21は独立してH、C〜C20アルキル、アリール、ヘテロシクリルおよびC〜Cアルコキシ、C〜Cジアルキルアミノ、C(=O)R22、C(=O)R2324およびAC(=O)R25から成る群から選択され、式中、AはNR26もしくはOとされ得るものであり;R22は1〜20個の炭素原子のアルキル、アリールオキシもしくはヘテロシクリルオキシであり;R23およびR24は独立してHもしくは1〜20個の炭素原子のアルキルであるか、又はR23およびR24は相互に結合することで2〜5個の炭素原子のアルカンジイル基を形成し、これにより三員乃至六員環を形成することができ;R25は直線状もしくは分岐状のC〜C20アルキルもしくはアリールであり且つR26は水素、直線状もしくは分岐状のC1−20アルキルもしくはアリールであり;或いは、R20およびR21は結合することでZと共に飽和もしくは不飽和の環を形成することができ;
ZはO、S、NR27もしくはPR27であり、式中、R27はR20およびR21と同一の群から選択され、ZがPR27の場合にR27もまたC〜C20アルコキシであり得るか、または、Zは結合、CHもしくは縮合環であり、R20およびR23の一方もしくは両方はヘテロシクリルであり、
各R22は独立して、C〜Cシクロアルカンジイル、C〜Cシクロアルケンジイル、アレーンジイルおよびヘテロシクリレンから成る群から選択された二価基であり、式中、各Zに対する共有結合は隣接位置であるか又はR22はR20およびR21の一方もしくは両方に結合されて複素環系を構成し得るものであり;且つ、
mは1乃至6であり;
b)CO;
c)1〜6個のハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6−アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル、アリール基、ヘテロシクリル基、および、1〜3個のハロゲンにより更に置換されたC1−6アルキル基で置換され得る、ポルフィリンもしくはポルフィセン;
d)式R2324C(C(=O)R25の化合物、
式中、R25はC1−20アルキル、C1−20アルコキシ、アリールオキシもしくはヘテロシクリルオキシであり;R23およびR24の各々は独立してH、ハロゲン、C1−20アルキル、アリールおよびヘテロシクリルから成る群から選択され、R23およびR24は結合することでC1−8シクロアルキル環もしくは水素化芳香環もしくは複素環を形成することができ、該環の原子は更に1乃至5個のC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基もしくはそれらの組み合わせにより更に置換されることができ;および、
e)アレーンおよびシクロペンタジエニル配位子であって、該シクロペンタジエニル配位子は1乃至5個のメチル基で置換され得るか又は第2シクロペンタジエニル配位子に対してエチレンもしくはプロピレン鎖を介して連結され得る、アレーンおよびシクロペンタジエニル配位子。
【請求項18】
前記配位子は、ビピリジン、トリフェニルホスフィン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチル−トリエチレンテトラミン、または、
【化3】

であり、
式中、Rはアルキルもしくは置換アルキル基であり、置換基は、アルキルアミノおよびアシルアミノなどのアミノ、アルコキシ、ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、ヘテロシクリル、イオン性およびハロゲン置換基から選択される、請求項17記載の重合プロセス。
【請求項19】
エチレン性不飽和単量体に対する開始剤のモル比は1:(5〜500)の範囲である、先行請求項のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項20】
前記重合体生成物は5〜500の範囲の平均重合度を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項21】
前記重合体生成物の多分散度は1.5より小さい、先行請求項のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項22】
残存するエチレン性不飽和単量体のレベルが5%未満となるまで実施される、先行請求項のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項23】
初期重合体生成物は第2段階のリビングラジカル重合に委ねられ、該段階においては、触媒の存在下で開始剤として作用する上記初期重合体生成物に対して更なるエチレン性不飽和単量体が接触することでブロック共重合体生成物が形成される、請求項22記載の重合プロセス。
【請求項24】
前記初期重合体生成物は前記第2段階の前に前記生成物混合物から分離されない、請求項23記載の重合プロセス。
【請求項25】
前記更なる単量体は前記第1段階の前記生成物混合物と混和可能な溶媒中の溶液として上記生成物混合物に添加される、請求項24記載の重合プロセス。
【請求項26】
前記初期重合体生成物は前記第1段階の触媒から分離され、且つ、前記第2段階においては好ましくは請求項12記載の触媒である、異なる触媒が用いられる、請求項23記載の重合プロセス。
【請求項27】
前記第1重合は非重合性溶媒の存在下で行われ、前記初期重合体生成物は上記溶媒から分離され、前記第2段階は非重合性溶媒の不在下で、または、前記第1段階で用いられた上記溶媒と異なるか、もしくは同一の非重合性溶媒の存在下で行われる、請求項23または26に記載の重合プロセス。
【請求項28】
式(VIII)の重合体。
【化4】

(式中、
11、R12およびR13の内の2つ以下はHであるように構成され、
は、Cl、Br、I、OR10、SR14、SeR14、OP(=O)R14、OP(=O)(OR14、O−N(R14およびS−C(=S)N(R14から成る群から選択され、式中、R10は水素原子の各々が独立的にハロゲン化物により置き換えられ得る1〜20個の炭素原子のアルキルであり、R14はアリールまたは直線状もしくは分岐状のC〜C20アルキル基であり、且つ、N(R14が存在する場合に2個のR14基は結合することで五員もしくは六員の複素環を形成可能であり;且つ、
11、R12およびR13は各々独立して、
H、ハロゲン、C〜C20アルキル、C〜Cシクロアルキル、C(=O)R15、C(=O)NR1617、COCl、OH、CN、C〜C20アルケニル、C〜C20アルケニルオキシラニル、グリシジル、アリール、ヘテロシクリル、アラルキル、アラルケニル、
1個乃至全ての水素原子がハロゲンにより置換されるC〜Cアルキル、および、
〜Cアルコキシ、アリール、ヘテロシクリル、C(=O)R15、C(=R)NR1617、−CR1213、オキシラニルおよびグリシジルから成る群から選択された1〜3個の置換基により置換されたC〜Cアルキル、
から成る群から選択され;
15は、1〜20個の炭素原子のアルキル、1〜20個の炭素原子のアルコキシ、各アルコキシ基が1〜5個の炭素原子を有するオリゴ(アルコキシ)、アリールオキシもしくはヘテロシクリルオキシであり、該基の任意のものは、オプションとして置換されたアルコキシ、オリゴアルコキシ、アミノ(モノ−およびジ−アルキルアミノならびにトリアルキルアンモニウムを含み、該アルキル基はアシル、アルコキシカルボニル、アルケンオキシカルボニル、アリールおよびヒドロキシルから選択された置換基を有することができ)およびヒドロキシルから選択された置換基を有することができ;且つ、
16およびR17は独立して、H、または、1〜20個の炭素原子のアルキルであり、該アルキル基はアシル、アルコキシカルボニル、アルケンオキシカルボニル、アリールおよびヒドロキシルから選択された置換基を有することができ、或いは、R16およびR17は相互に結合して2〜5個の炭素原子のアルキレン基を形成することで三員乃至六員環を形成でき;
は一般式(I)
YBX (I)
の両性イオン単量体の残基であり;
上記式中、
Yは、エチレン性不飽和基HC=CR−CO−A−であり;
Aは、−O−もしくはNRであり;
Rは水素もしくはC1−4アルキルであり;
は水素、C1−4アルキルもしくはBXであり;
Bは、結合、または、オプションとして一個以上のフッ素置換基を含む直線状分岐状のアルカンジイル、アルキレンオキサアルキレンもしくはアルキレン(オリゴオキサアルキレン)基であり;
Xは、一般式(II)の両性イオン基であり
【化5】

(式中、同一であるか、もしくは異なる部分AおよびAは−O−、−S−、−NH−もしくは共有結合であり、Wは、式−W−N、−W−P、−W−Sもしくは−W−Hetから成る基であり;
は、2〜6個の炭素原子のアルカンジイルであり、オプションとして一個以上のフッ素置換基および/または一個以上の官能基を含み;且つ、
各基Rは同一であるか、もしくは異なり、各々が水素もしくは1〜4個の炭素原子のアルキル、もしくは、アリールであるか、または、各基Rの内の2個はそれらに結合された窒素原子と協働して5〜7個の原子を含む脂肪族複素環を形成するか、または、3個の基Rはそれらに結合する窒素原子と協働して各環に5〜7個の原子を含む縮合環構造を形成し;且つ、オプションとして各基Rのひとつ以上は親水性官能基により置換され;且つ、
各基Rは同一であるか、もしくは異なり、各々はRもしくは基ORであり、式中Rは上記に定義され;または、
Hetは、環を含む芳香族窒素−、リン−もしくは硫黄−、である。);
xは2〜500であり;
は上記両性イオン単量体と重合可能なエチレン性不飽和共単量体の残基であり;且つ、
yは0〜500である。)
【請求項29】
は式(IX)を有する、請求項28記載の重合体。
【化6】

(式中、R27は、水素、C1−4アルキルおよびCOORから選択され、Rは水素もしくはC1−4アルキルであり;
28は水素およびC1−4アルキルから選択され;
29は、水素、C1−4アルキル、および、R27およびR29の両者がCOORでないものとしてCOOR、から選択され;
30は、
結合、
基CH、式中、Aは結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−O−CO−NR−および−NR−CO−Oから選択され、
基−COA−、式中、Aは−O−またはNRであり、式中、Rは水素またはC1−4アルキルまたはBXであり、および、
基−C−A−、式中、Aは(CH、結合もしくは(CHSOである、
から選択され、或いは、
30およびR28、または、R30およびR21は、結合することで、基
【化7】

を形成可能であり;
式中、N原子はBに結合し、且つ、
BおよびXは請求項28で定義されているものである。)
【請求項30】
xは5〜50である、請求項28もしくは29に記載の重合体。
【請求項31】
前記共単量体は式(X)を有する、請求項28乃至30のいずれか一項に記載の重合体。
【化8】

(式中、
31は、水素、ハロゲン、C1−4アルキル、および、Rを水素およびC1−4アルキルとした基COORから選択され;
32は、水素、ハロゲンおよびC1−4アルキルから選択され;
33は、水素、ハロゲン、C1−4アルキル、および、R31およびR33の両者がCOORでないものとしてCOOR、から選択され;
34は、C1−10アルキル、C1−20アルコキシカルボニル、モノ−もしくはジ−(C1−20アルキル)アミノカルボニル、C6−20アリール(アルカリールを含む)、C7−20アラルキル、C6−20アリルオキシカルボニル、C1−20−アラルキルオキシカルボニル、C6−20アリールアミノカルボニル、C7−20アラルキル−アミノ、ヒドロキシルまたはC2−10アシルオキシ基であり、これらのいずれもが、ハロゲン原子、アルコキシ、オリゴ−アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシルアミノ、アミン(モノおよびジ−アルキルアミノおよびトリアルキルアンモニウムを含み、アルキル基は置換可能である)、カルボキシル、スルフォニル、ホスホリル、ホスフィノ、(モノ−およびジ−アルキルホスフィンおよびトリ−アルキルホスホニウムを含む)、トリアルコキシシリル基などの両性イオン性、ヒドロキシル、ビニルオキシカルボニルおよび他のビニル性もしくはアリル性かつ反応性のシリルもしくはシリルオキシ基から選択された一個以上の置換基を有することが可能であり;或いは、
34およびR33、または、R34およびR32は協働して−CONR35COを形成することができ、式中、R35はC1−20アルキル基である。)
【請求項32】
31およびR32は水素であり、R33はメチルであり、R34はオプションとしてヒドロキシ置換基を有するC1−20アルコキシカルボニルである、請求項31に記載の重合体。
【請求項33】
は臭素であり、R11およびR12は各々メチルであり、R13はCOR15であり、R15はオリゴアルコキシである、請求項28乃至32のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項34】
触媒と、開始剤として請求項28乃至33のいずれか一項に記載の重合体と、の存在下でエチレン性不飽和単量体を重合する、ブロック共重合プロセス。
【請求項35】
前記触媒は請求項1に定義される、請求項34記載のブロック共重合プロセス。
【請求項36】
前記触媒は請求項15乃至18のいずれか一項で定義される、請求項37記載のブロック共重合プロセス。
【請求項37】
前記エチレン性不飽和単量体に対する前記重合体開始剤のモル比は1:(2〜500)の範囲である、請求項34乃至36のいずれか一項に記載のブロック共重合プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−13651(P2010−13651A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192153(P2009−192153)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【分割の表示】特願2002−532510(P2002−532510)の分割
【原出願日】平成13年10月5日(2001.10.5)
【出願人】(303039785)バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド (23)
【Fターム(参考)】