説明

両面にパターンを有するフォトマスクの作製方法およびフォトマスク

【課題】透明基板に回折光学素子パターンが形成されている両面フォトマスクの作製方法において、透明基板のエッチング状態を正確に把握して、回折光学素子パターンのエッチング深さおよびパターン寸法を高精度に形成し、所望の光学特性を得ることが可能な両面フォトマスクの作製方法および両面フォトマスクを提供する。
【解決手段】両面フォトマスクの作製方法であって、透明基板の他方の主面上に形成された遮光膜の開口部に露出した透明基板をエッチングして回折光学素子パターンを形成するに際し、両面フォトマスクのパターン露光時の有効面外にある前記透明基板の他方の主面上に形成された遮光膜の開口部に、回折光学素子パターンを作製するときのモニターパターンを形成し、前記モニターパターンのエッチング状態を参照しながら回折光学素子パターンを形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基板の一方の主面上と他方の主面上の両面にパターンを有するフォトマスクの作製方法および作製されたフォトマスクに関し、特に透明基板の一方の主面上に遮光膜よりなる遮光パターンが形成され、他方の主面上に回折光学素子パターンが形成されている両面フォトマスクの作製方法およびフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路をウェハ上に投影露光して転写する際に原版として用いられるフォトマスク(レチクルともいう)は、一般には石英ガラスなどの透明基板の一主面上にクロムなどの金属からなる遮光パターンが形成された構造をしている。近年、投影露光装置の光学特性をさらに高精度にして、より微細な加工を実現するために、遮光パターンを透明基板の相対する一方の主面(以下、本発明では「表面」とも称する)と他方の主面(以下、本発明では「裏面」とも称する)の2つの主面上の両面に形成するフォトマスクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、照明効率を向上させるために、透明基板の一方の主面上に遮光膜よりなる遮光パターン、他方の主面上に回折光学素子パターンを形成したフォトマスクが提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。透明基板の表裏両面にパターンを有する特許文献1〜特許文献3に記載のフォトマスクは、いずれも「両面フォトマスク」と呼ばれており、本発明においても、透明基板の表裏両面にパターンを有するフォトマスクを「両面フォトマスク」として用いている。
【0004】
特許文献2に記載されたフォトマスクは、遮光膜パターンと共に回折格子あるいはホログラムによる回折手段を具備することにより、フォトマスク自身が斜方照明機能を持ち、このフォトマスクを使用すれことにより、斜方照明にもとづく投影露光が可能となるため、照明の効率を高く維持したまま解像度の向上を図ることが可能となるものである。
しかし、特許文献2に記載されたフォトマスクは、光学干渉を用いて回折光学素子パターンを形成しているので透明基板表面に感光層を設けた基板が必要となり、また別々の透明基板に作製した遮光パターンと回折光学素子パターンとを貼り合わせて1枚のフォトマスクとする方法で作製しているので、精度良く貼り合わせることが難しく、表裏のパターンの位置合わせ精度に問題があった。また、貼り合わせ後にフォトマスクが汚れた場合、マスク洗浄が困難となるという問題があった。
【0005】
これに対して、特許文献3に記載されたフォトマスクは、1枚の透明基板の一方の主面上に遮光パターン、他方の主面上に回折光学素子(DOE素子:Diffraction Optical Effect 素子)パターンを形成し、遮光パターンと回折光学素子パターンとは透明基板を介して一体化しているという特徴を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−285122号公報
【特許文献2】特開平9−50117号公報
【特許文献3】特開2004−14865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来、フォトマスク上に回折光学素子パターンを作製するには、回折光学素子の光学特性などを確認しながら作製する必要があるが、設計通りの寸法、深さ、光学特性で回折光学素子を形成するのは容易でなかった。特に特許文献3に記載されるフォトマスクのように、回折光学素子パターンの反対側の透明基板上に遮光膜が形成されている場合には、遮光パターン配置、計測ポイントのサイズ、他のパターンとの関係などから、回折光学素子の光学特性などを計測できない場合があり、透明基板のエッチング状態を正確に把握することができず、推測で作製条件を制御せざるを得ないという問題があった。そのため作製した両面フォトマスクの品質、歩留が低下するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、透明基板の少なくとも一方の主面上に遮光膜よりなる遮光パターンが形成され、他方の主面上に回折光学素子パターンが形成されている両面フォトマスクの作製方法において、回折光学素子を含む表裏両面の各パターンの位置精度が高く、透明基板のエッチング状態を正確に把握して、回折光学素子パターンのエッチング深さおよびパターン寸法を高精度に形成し、所望の光学特性を得ることが可能な両面フォトマスクの作製方法および両面フォトマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、透明基板の一方の主面と他方の主面の両主面上に遮光膜を設け、前記一方の主面上の遮光膜を部分的に除去して遮光パターンを形成し、前記他方の主面上の遮光膜を部分的に除去して開口部を形成し、該開口部に回折光学素子パターンを形成する両面フォトマスクの作製方法であって、前記他方の主面上の遮光膜の開口部に露出した透明基板の全面または一部をエッチングして前記回折光学素子パターンを形成するに際し、前記両面フォトマスクのパターン露光時の有効面外にある前記他方の主面上の遮光膜にモニター用開口部を設け、前記モニター用開口部に前記回折光学素子パターンを作製するときのモニターパターンを形成し、前記モニターパターンのエッチング状態を参照しながら前記回折光学素子パターンを形成することを特徴とするものである。請求項1の発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、モニターパターンを形成し、モニターパターンのエッチング状態を参照しながら透明基板をエッチングして回折光学素子パターンを形成することにより、回折光学素子パターンのエッチング深さおよびパターン寸法を高精度に形成し、所望の光学特性で高精度のパターンを有する両面フォトマスクを得ることが可能となる。
【0010】
請求項2の発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、請求項1に記載の両面フォトマスクの作製方法において、前記回折光学素子パターンが、計算機ホログラム素子パターンであることを特徴とするものである。請求項2の発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、計算機ホログラム素子パターンを用いることにより、露光光源からの入射光を集光、拡散、分岐、分光する機能を持たせることが容易に可能となり、表面パターンの任意のポイント、領域を、強度分布を制御しながら、照明することが可能となる。
【0011】
請求項3の発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、請求項1または請求項2に記載の両面フォトマスクの作製方法において、前記モニターパターンが、前記回折光学素子パターンと同じパターンまたは前記回折光学素子パターンの特徴点を抽出して単純化した光学的に等価なパターンであり、少なくとも前記モニターパターンのエッチング深さおよびパターン寸法を参照しながら前記回折光学素子パターンを形成することを特徴とするものである。請求項3の発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、モニターパターンがCGH素子パターンと同じパターンである場合には、同一パターンなのでそのままモニターとして使用できるという利点を有する。また、モニターパターンがCGH素子パターンと光学的に等価なパターンである場合には、モニターパターン作製の描画時間を短縮し、両面フォトマスクの作製時間とコストを低減することができる。
【0012】
請求項4の発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の両面フォトマスクの作製方法において、前記光学的に等価なパターンが、ライン/スペースパターン、ドットパターン、ホールパターンまたはチャープパターンの内のいずれか1種以上のパターンで形成されていることを特徴とするものである。請求項4の発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、光学的に等価なパターンが単純化されたパターンなので、パターンの作製が容易であり、またパターンの計測、評価を精度良く迅速に行うことができる。
【0013】
請求項5の発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の両面フォトマスクの作製方法において、前記モニターパターンの反対側となる前記透明基板の一方の主面上に形成された遮光膜に、前記モニターパターンの検査用の開口部を開け、該検査用開口部を用いて、前記モニターパターンのエッチング状態を参照しながら前記回折光学素子パターンを形成することを特徴とするものである。請求項5の発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、開口部を設けることにより、モニターパターンの0次光などの回折光や照明パターン周辺のノイズを評価し、CGH素子パターンの石英基板エッチングの深さの最適値を選定することが容易に可能となる。さらに、開口部からの出射光をカメラによる2次元強度分布評価装置や分光装置などの別装置で計測し評価することもできる。
【0014】
請求項6の発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の両面フォトマスクの作製方法において、前記モニターパターンのエッチング状態の参照が、前記モニターパターンの0次光評価、強度分布評価、回折効率評価の内のいずれか1つ以上の評価を含むことを特徴とするものである。請求項6の発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、両面フォトマスクの作製工程において、透明基板のエッチング中にモニターパターンを参照し評価することにより、石英基板エッチングの最適な深さを確認しながら高精度のパターンを有する両面フォトマスクを作製することが可能となる。
【0015】
本発明の請求項7の発明に係る両面フォトマスクは、透明基板の一方の主面と他方の主面の両主面上に遮光膜を設け、前記一方の主面上の遮光膜を部分的に除去して遮光パターンが形成され、前記他方の主面上の遮光膜を部分的に除去して開口部が形成され、該開口部に露出した透明基板の全面または一部をエッチングして回折光学素子パターンが形成されている両面フォトマスクであって、前記両面フォトマスクのパターン露光時の有効面外にある前記他方の主面上の遮光膜にモニター用開口部を設け、前記モニター用開口部に前記回折光学素子パターンを作製するときのモニターパターンが前記透明基板をエッチングして形成されていることを特徴とするものである。請求項7の発明に係る両面フォトマスクは、表裏両面の各パターンの位置精度が高く、回折光学素子パターンは高精度のエッチング深さとパターン寸法であって、所望の光学特性を有するので、高品質のパターン露光転写が可能となる。
【0016】
請求項8の発明に係る両面フォトマスクは、請求項7に記載の両面フォトマスクにおいて、前記回折光学素子パターンが、計算機ホログラム素子パターンであることを特徴とするものである。請求項8の発明に係る両面フォトマスクは、計算機ホログラム素子パターンにより、露光光源からの入射光を集光、拡散、分岐、分光する機能を持たせることが容易に可能となり、表面パターンの任意のポイント、領域を、強度分布を制御しながら、照明することが可能となる。
【0017】
請求項9の発明に係る両面フォトマスクは、請求項7または請求項8に記載の両面フォトマスクにおいて、前記モニターパターンが、前記回折光学素子パターンと同じパターンまたは前記回折光学素子パターンの特徴点を抽出して単純化した光学的に等価なパターンであり、前記光学的に等価なパターンは、ライン/スペースパターン、ドットパターン、ホールパターンまたはチャープパターンの内のいずれか1種以上のパターンで形成されていることを特徴とするものである。請求項9の発明に係る両面フォトマスクは、モニターパターンがCGH素子パターンと同じパターンである場合には、同一パターンなのでそのままモニターとして使用できるという利点を有する。また、モニターパターンがCGH素子パターンと光学的に等価なパターンである場合には、パターンが単純化されているので、光学特性の計測、評価を精度良く迅速に行うことが可能となる。
【0018】
請求項10の発明に係る両面フォトマスクは、請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の両面フォトマスクにおいて、前記モニターパターンの反対側となる前記透明基板の一方の主面上に形成された遮光膜に、前記モニターパターンの検査用の開口部が開けられていることを特徴とするものである。請求項10の発明に係る両面フォトマスクは、検査用の開口部が設けられていることにより、モニターパターンの0次光などの回折光や照明パターン周辺のノイズを評価することが容易に可能となる。さらに、開口部からの出射光をカメラによる2次元強度分布評価装置や分光装置などの別装置で計測し評価することもできる。
【0019】
請求項11の発明に係る両面フォトマスクは、請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の両面フォトマスクにおいて、前記モニターパターンが、前記両面フォトマスクの作製後の品質検査用パターンを兼ねることを特徴とするものである。請求項11の発明に係る両面フォトマスクは、パターン露光時の有効面外にあるモニターパターンを用いて、両面フォトマスクの回折光学素子パターンの回折光の0次光、強度分布、回折効率などが評価でき、両面フォトマスクの品質保証を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の両面フォトマスクの作製方法によれば、電子線描画装置やレーザ描画装置を用い、表裏両面の位置ずれを計測し、補正しながらパターン描画するため、回折光学素子を含む表裏両面の各パターンの位置精度が高い両面フォトマスクを作製することができる。また、モニターパターンを形成し、モニターパターンのエッチング状態を参照しながら透明基板をエッチングして回折光学素子パターンを形成することにより、回折光学素子パターンのエッチング深さおよびパターン寸法を高精度に形成し、所望の光学特性で高精度のパターンを有する両面フォトマスクを得ることができる。
【0021】
本発明の両面フォトマスクによれば、表裏両面の各パターンの位置精度が高く、回折光学素子パターンは高精度のエッチング深さとパターン寸法であって、所望の光学特性を有するので、高品質のパターン露光転写が可能となる。また、パターン露光時の有効面外にあるモニターパターンを用いて、両面フォトマスクの回折光学素子パターンの回折光の0次光、強度分布、回折効率などが評価でき、両面フォトマスクの品質保証を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の両面フォトマスクの作製方法の一例を示す工程断面模式図である。
【図2】図1に続く本発明の両面フォトマスクの作製方法の一例を示す工程断面模式図である。
【図3】本発明の両面フォトマスクの作製方法により作製された本発明の両面フォトマスクの一例を示す断面模式図である。
【図4】本発明の両面フォトマスクの作製方法によって作製された本発明の両面フォトマスクの一例を示す斜視外観模式図である。
【図5】遮光膜の開口部に形成したCGH素子パターンの拡大平面模式図である。
【図6】CGH素子パターンに入射した光により、透明基板の反対側の遮光パターン面に形成された照明パターンの代表的な例を示す斜視説明図である。
【図7】CGH素子パターンに入射した光により、透明基板の反対側の遮光パターン面に形成された照明パターンの代表的な例と、その特徴点を抽出する作業を示す説明図である。
【図8】CGH素子パターンと等価な本発明のモニターパターンの実施形態の例を示す平面模式図である。
【図9】モニターパターンとしてCGH素子パターンと同様なパターンを用いた場合の照明パターンの例を示す模式図である。
【図10】モニターパターンとしてCGH素子パターンと同様なパターンを用いた場合、モニターパターンの反対面に形成する遮光膜パターンの例である。
【図11】外周部ノイズ評価用の遮光膜パターンを用いてシュミレーションにより求めた照明パターン外周部のノイズの状態を示す平面図である。
【図12】モニターパターンとしてCGHパターンと等価なパターンを用いた場合の照明パターンの例を示す模式図である。
【図13】モニターパターンとしてCGHパターンと等価なパターンを用いた場合、モニターパターンの反対面に形成する遮光膜パターンの例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の両面フォトマスクの作製方法および両面フォトマスクの実施形態について詳細に説明する。図1およびそれに続く図2は、本発明の両面フォトマスクの作製方法の一例を示す工程断面模式図である。
【0024】
(両面フォトマスクの作製方法)
図1に示すように、洗浄された透明基板101の一方の主面(表面)上に第1の遮光膜102を形成し(図1(a))、次に第1のレジスト膜103をこの順に形成し、この第1のレジスト膜103に電子線(以後、EBとも記す)またはレーザ光104で第1回目のパターン描画をする(図1(b))。透明基板101としては、例えば、厚さが6.35mmで、154mm×154mm角の合成石英製のフォトマスク基板が用いられる。第1の遮光膜102としては、クロムなどの遮光性材料をスパッタリング法などの方法で成膜することにより形成される。第1回目の描画で描画するパターンとしては、表面本パターンと表面アライメントマークとモニターパターン検査用開口部を有するパターンの少なくとも3種類のパターンが描画される。モニターパターン検査用開口部は、パターン転写露光に支障を及ぼさないように、パターン露光時の有効面外に形成される。
【0025】
本発明においては、透明基板101の相対する2つの主面のうち、一方の主面を表面、他方の主面を裏面と称し、フォトマスクとして使用するときに、表面はウェーハなどの被転写露光側、裏面は光源側を意味するものとし、通常は表面側により微細なパターンが形成される。また、本発明において、本パターンとは、両面フォトマスクをフォトマスクとして使用する時に利用され、パターン露光時に転写するパターンのことをいい、アライメントマークなどのパターンとは区別している。アライメントマークは、表裏のパターンの位置合わせ精度を高めるために、表裏面とも一主面上に2箇所以上設けるのが好ましい。
【0026】
もしも後述の裏面アライメントマーク形成時に両面マスクアライナーを用いる場合には、上記の描画時に予め両面アライナー用マークを描画しておく。上記の表面パターン描画には、微細パターンとパターン精度が求められるので、通常、電子線描画装置やレーザ描画装置が用いられる。
【0027】
描画後、レジスト膜103を現像して第1のレジストパターン105を形成し(図1(c))、次に露出した第1の遮光膜102をエッチングした後、第1のレジストパターン105を剥離して、表面本パターンP1と表面アライメントマークA1とモニターパターン検査用の開口部(検査用用開口部と記す)M1とを少なくとも有する第1の遮光膜よりなる表面パターン106を形成する(図1(d))。
【0028】
次に、透明基板の表面パターン106を形成したのとは反対側の他方の主面(裏面)上に第2の遮光膜107を形成し(図1(e))、次に第2のレジスト膜108を形成し、電子線またはレーザ光または紫外線109で、第2のレジスト膜108に裏面アライメントマーク形成のための第2回目のパターン描画を行う(図1(f))。第2の遮光膜107としては、クロムなどの遮光性材料をスパッタリング法などの方法で成膜することにより形成される。
【0029】
描画後、現像し、第2のレジストパターン110を形成し(図1(g))、次に露出した第2の遮光膜107をエッチングした後、第2のレジストパターン110を剥離して、位置ずれ量計測用の裏面アライメントマークA2を有する第2の遮光膜よりなる遮光パターン111を形成する(図1(h))。ここで、以後の工程での裏面パターンの電子線描画工程で使用するEB描画用アライメントマークとして、上記の裏面アライメントマークを兼用することもできるが、通常、描画装置は装置ごとに専用のアライメントマーク形状が必要とされるので、描画精度を高めるために専用のEB描画用アライメントマーク(不図示:図面が煩雑となるので図示は省略している)を別に描画し、形成しておくのが好ましい。上記の裏面アライメントマークA2の描画には、電子線描画装置やレーザ描画装置による描画、あるいは両面マスクアライナーによるアライメントマークを設けたフォトマスクによる転写露光が用いられる。
【0030】
次に、表面アライメントマークA1と裏面アライメントマークA2とを用いて、表裏面の位置ずれ量を計測する。位置ずれ量は、光学顕微鏡などにより垂直方向から観察することによって計測でき、裏面のパターンを描画する際の、x、y方向への平行移動補正量およびθ方向への回転移動補正量を求めておく。表裏のアライメントマークのずれ量が予め定めた所定値以内であれば、次工程に進み、もしも所定値を越えていた場合には、第2の遮光膜よりなる遮光パターン111をエッチングなどの方法により除去し、図1(e)の工程に戻って再び第2の遮光膜成膜以降の工程をやり直す。
【0031】
次に、裏面アライメントマークA2を形成した第2の遮光膜よりなる遮光パターン111上に第3のレジスト膜112を形成し、この第3のレジスト膜112に電子線またはレーザ光113で第3回目のパターン描画をする(図2(i))。描画するパターンとしては、裏面パターン用開口部とモニター用開口部を有するパターンの少なくとも2種類のパターンが描画される。モニター用開口部は、パターン転写露光に支障を及ぼさないように、パターン露光時の有効面外に形成する。
【0032】
描画後、レジスト膜112を現像して第3のレジストパターン114を形成し(図2(j))、次に露出した第2の遮光膜よりなる遮光パターン111をエッチングした後、第2のレジストパターン112を剥離して、裏面パターン用開口部P2とモニター用開口部M2と裏面アライメントマークA2とを少なくとも有する第2の遮光膜よりなる裏面パターン115を形成する(図2(k))。
【0033】
次に、第2の遮光膜よりなる裏面パターン115上に第4のレジスト膜116を形成し(図2(l))、この第4のレジスト膜116に電子線またはレーザ光117で第4回目のパターン描画をする(図2(m))。描画パターンとしては、裏面パターン用開口部P2に描画する裏面パターンとしての回折光学素子パターンと、モニター用開口部M2に描画するモニターパターンの少なくとも2種類のパターンが描画される。
【0034】
描画後、第4のレジスト膜116を現像して回折光学素子パターンとモニターパターンとを少なくとも有する第4のレジストパターン118を形成し、各々のパターン部に透明基板101を露出させる(図2(n))。次に露出した透明基板101を所定の深さまでエッチングし、モニター用開口部M2に凹部119、裏面パターン用開口部P2に凹部120を形成する(図2(o))。
【0035】
透明基板101のエッチングは、従来公知のフッ化水素酸水溶液を用いるウェットエッチング方法、フッ素系ガスを用いるドライエッチング方法が適用できるが、微細パターンを形成する上からドライエッチングがより好ましい。
【0036】
本発明においては、透明基板101のエッチングにおいて、上記のモニターパターンのエッチング状態を参照しながら回折光学素子パターンを形成することを特徴とするものである。モニターパターンのエッチング状態は、モニターパターンの反対側となる透明基板に形成された遮光層の検査用開口部を用いて、モニターすることができる。
【0037】
モニターパターンのエッチング状態を観察、計測し、エッチング状態が予め定めた所定の数値範囲内であれば、エッチング工程を終了とし、第4のレジストパターン118を剥離して、裏面に裏面パターンとなる回折光学素子パターンP3とモニターパターンM3とアライメントマークA2とを少なくとも有する両面フォトマスクを形成する(図2(p))。
【0038】
上記の説明において、第1のレジスト膜103、第2のレジスト膜108、第3のレジスト膜112および第4のレジスト膜116の形成には、すべて同種のレジストを用いてもよいし、あるいは2種以上の複数種類の異なるレジストを用いてもよいが、製造工程を簡単にするためにはすべて同種のレジストを用いるのが好ましい。
【0039】
また、第1の遮光膜102、第2の遮光膜107としては、すべて同種の遮光膜であってもよいし、あるいは表面と裏面が異なる2種の遮光膜を用いてもよいが、製造工程を簡単にするためにはすべて同種の遮光膜を用いるのが好ましい。また遮光膜は単層膜のみならず、表面低反射層を有する2層膜、あるいは表裏面に低反射層を有する3層膜であってもよい。上記の例としては、例えば、単層膜としてクロム膜、2層膜としてクロム酸化膜/クロム膜、3層膜としてクロム酸化膜/クロム膜/クロム窒化膜などが挙げられる。
【0040】
上記の両面フォトマスクの作製方法では、実施形態の主な作製手順として、表面本パターンと検査用開口部などを有する表面パターン形成、裏面パターン用開口部とモニター用開口部などを有する裏面パターン形成、裏面CGH素子パターンとモニターパターン形成の順に説明したが、本発明の作製方法は、上記の実施形態の作製手順に限定されない。例えば、本発明の両面フォトマスクの作製方法の他の実施形態として、表面パターン形成、裏面CGH素子パターンとモニターパターン形成、裏面パターン形成の順に作製することも可能である。また、他の実施形態として、裏面CGH素子パターンとモニターパターン形成、裏面パターン形成、表面パターン形成の順に作製することも可能である。さらに、他の実施形態として、裏面パターン形成、裏面CGH素子パターンとモニターパターン形成、表面パターン形成の順に作製することも可能である。
【0041】
また、本発明の両面フォトマスクの作製方法は、第1の遮光膜が位相シフト膜を有していても適用することが可能であり、さらに第1の遮光膜が露光波長での光の透過率が5〜40%となるハーフトーン型の半透明の遮光膜においても適用することが可能である。
【0042】
(両面フォトマスク)
図3は、本発明の両面フォトマスクの作製方法により作製された本発明の両面フォトマスクの一例を示す断面模式図である。図3で、図2と同じ部位を示す場合には、同じ符号を用いている。図3において、透明基板101の一方の主面(表面)上に、表面本パターンP1、表面アライメントマークA1、モニターパターンの検査用開口部M1を少なくとも有する第1の遮光膜よりなる表面パターン106が形成され、他方の主面(裏面)上に、透明基板101をエッチングしてなる回折光学素子パターンP3、裏面アライメントマークA2、回折光学素子パターンP3を作製するときのモニターパターンM3を少なくとも有する第2の遮光膜よりなる裏面パターン115が形成されており、モニターパターンM3は両面フォトマスクのパターン露光時の有効面外にある第2の遮光膜の開口部に露出した透明基板をエッチングして形成されているものである。
【0043】
なお、本実施形態に係る両面フォトマスク基板の作製方法における作製工程で、第1の遮光膜よりなる表面パターン106に設けられる表面アライメントマークA1および第2の遮光膜よりなる裏面パターン115に設けられる裏面アライメントマークA2は、透明基板101の表面に形成される表面本パターンP1およびモニターパターン検査用開口部M1と、同じく裏面に形成される裏面パターン用開口部P2、回折光学素子パターンP3およびモニターパターンM3との表裏の位置合わせを行うときに用いるものである。このようなアライメントマークによって表裏の位置合わせを行うときに用いる技術としては、本出願人がすでに提出している特願2008―262439や特願2008―262440に記載の方法を用いることができる。図3に示す表面アライメントマークA1および裏面アライメントマークA2は、完成した両面フォトマスクを用いた転写露光に用いるものではなく、露光領域外に設けられている。図3では、露光時にマスクと被転写体との間で用いるアライメントマークは省略してある。
【0044】
図4は、本発明の両面フォトマスクの作製方法によって作製された本発明の両面フォトマスクの一例を示す斜視外観模式図であり、回折光学素子パターンを設けた裏面側を上側としている。図4において、透明基板101の一方の主面(表面)上に遮光膜よりなる表面パターン106(パターンは不図示)が形成され、他方の主面(裏面)上に透明基板をエッチングしてなる回折光学素子パターンとしての計算機ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)素子パターン(CGH素子パターンともいう)P3と、遮光膜の開口部にモニターパターンM3が形成されている。図4では、モニターパターンは1箇所しか図示してないが、本発明においては、パターン露光時の有効面外に複数箇所設けるのが好ましい。また、図4では、図が煩雑になるのでアライメントパターンは省略している。
【0045】
本発明においては、透明基板101の他方の主面(裏面)上の遮光膜の開口部に露出した透明基板の全面または一部をエッチングするものであり、アライメントパターンなどのように、透明基板の裏面側に透明基板をエッチングしていない遮光膜パターンを有するマスクも本発明の両面フォトマスクに含まれるものである。
【0046】
本発明において、回折光学素子としては、回折格子やホログラフィク光学素子などが適用できるが、所望の光強度分布の光パターンを発生させるようにあらかじめ設計された計算機ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)素子からなるものが好適である。計算機ホログラム素子は、物体光と参照光との干渉で得られるものである干渉縞パターンを計算により求め、その結果を描画装置により直接出力することで作られるホログラムである。再生光として所望の光強度分布を得るための干渉縞形状はコンピュータによる反復計算を用いて最適化することで求めることができる。計算機ホログラム素子は、上記の干渉縞形状をもとに、透明合成石英基板を階段状に多段にエッチング加工して作製することもできる回折光学素子である。
【0047】
図5は、図4に示す第2の遮光膜よりなる裏面パターン115の遮光膜の開口部にCGH素子パターンP3を形成した本発明の実施形態に係る両面フォトマスクのCGH素子パターン部分の拡大平面模式図である。
【0048】
本発明の両面フォトマスクを用いて露光を行う際には、上記のように、第2の遮光膜よりなる裏面パターン115を露光光源側にし、第1の遮光膜よりなる表面パターン106を被転写露光側にセットして用いる。表面パターン106には回路パターンなどが形成されており、一方、第2の遮光膜よりなる裏面パターン115の開口部の露出した透明基板には回折光学素子パターンP3が形成されている。以下、回折光学素子パターンP3としてCGH素子パターンを例に説明する。
【0049】
CGH素子は露光光源から入射される光を集光、拡散、分岐、分光する機能を持ち、表面パターン106の任意のポイント、領域を、強度分布を制御しながら、照明することができる。光はCGH素子パターンP3の全領域から、表面パターン106の各部へ照射され得るようになっている。例えば、表面パターン106の特定の領域には強度が大きい光を照射させ、他の領域には強度の小さい弱い光を照射させる、といったことをCGH素子パターンP3により実現することをできる。逆に、表面パターン106面の任意のポイント、領域からみれば、入射光の角度、方向、強度分布を選択的に制御することが可能である。例えば、光源と、両面フォトマスクの表面パターン106面と、結像面を含む、露光機の全体の光学系の配置を考慮して、CGH素子の配置や機能を考慮することも可能である。このような裏面パターン115の開口部におけるCGH素子パターンP3の機能によって、本発明の両面フォトマスクを用い、従来よりもさらに微細なリソグラフィを実現することが可能となる。
【0050】
(モニターパターン)
上記のように、CGH素子パターンに光が入射すると、回折されて任意の形状、強度分布の再生パターンが反対面に照明される。この照明パターンを基にモニターパターンを設計し、フォトマスクに配置し、モニターパターンを参照しながら、透明基板(合成石英基板)のパターンのエッチングの深さ管理、重要寸法であるCD(Critical Dimension)管理を行う。
【0051】
本発明の両面フォトマスクの作製方法の好ましい形態としては、上記のモニターパターンが、回折光学素子パターンと同じパターンもしくは回折光学素子パターンの特徴点を抽出して単純化した光学的に等価なパターンであり、少なくともモニターパターンのエッチング深さおよびパターン寸法を参照しながら回折光学素子パターンを形成するものである。
【0052】
例えば、モニターパターンがCGH素子パターンと同じパターンである場合には、同一パターンなのでそのままモニターとして使用できるという利点を有する。しかし、モニターパターンが回折光学素子パターンと同一であると、モニターパターンが複雑となり、その作成のための描画時間が増加し、その結果、両面フォトマスクの作製時間とコストが増大して実用に適しない場合が生じる。
【0053】
そこで、本発明においては、好ましい実施形態として、モニターパターンとしてCGH素子パターンの複雑なパターンの特徴点を抽出して単純化した光学的に等価なパターンを用いるものである。次に、光学的に等価なモニターパターンについて説明する。
【0054】
図6は、図3に示した両面フォトマスクの裏面側(光源側)のCGH素子パターンに入射した光601により、両面フォトマスク(厚さ6.35mm)の表面側の遮光パターン面に形成された照明パターンの代表的な例を示す斜視説明図である。図6において、図6(A)は再生された照明パターンが矩形状パターンの場合であり、図6(B)は矩形状に中抜けした矩形状パターンの場合であり、図6(C)は円形状パターンの場合である。
【0055】
図7は、図6に示したCGH素子パターンに入射した光により両面フォトマスクの表面側の遮光パターン面に再生して形成された照明パターンの代表的な例と、その特徴点を抽出する作業を示す説明図である。図8は、CGHパターンと等価な本発明のモニターパターンの実施形態の例を示す平面模式図である。
【0056】
図7(a)は、再生された照明パターンが矩形状パターンの場合であり、図7(a)に示す回折角の最大角をθとすると、照明パターンと等価なモニターパターンは、図8(a−1)に示すピッチdのライン/スペースパターン、あるいは図8(a−2)に示すピッチdのドットパターンで表すことができる。ドットパターン(ドット幅はd/2)はポジ型、ネガ型のどちらの型であっても良い。
【0057】
図7(b)は、再生された照明パターンが中抜けした矩形状パターンの場合であり、図7(b)に示す照明パターンの遠い部分の回折角をθ1、内側の部分の回折角をθ2、あるいは基準点を中抜け矩形パターンの角にとると、等価なモニターパターンは、図8(b−1)に示すピッチd1、d2の複数個のピッチを有するライン/スペースパターン、あるいは図8(b−2)に示す斜め成分を有するライン/スペースパターンで表すことができる。
【0058】
図7(c−1)は、再生された照明パターンが重心を有する円形状パターンの場合である。この場合、照明パターンと等価なモニターパターンとしては、上記のd1〜d2に個別に配置するか、あるいはライン/スペースパターンのピッチが一様でなく位置の関数として徐々に変化しているチャープパターンとして表すことができる。
【0059】
図7(c−2)は、再生された照明パターンに強度分布がある場合であり、例えば、図7(c−3)に、図の左側から順に、複数の同心円状の強度分布、重みがある矩形状強度分布、4方向の重みがある矩形状強度分布、ガウシアン分布の強度分布の例を示す。この場合、照明パターンの強度分布を参照して、p1、p2などの特徴点や平均位置、半値幅(ガウシアン分布の場合)から回折格子のピッチを算出し、回折光学素子パターンと等価なモニターパターンを形成する。または、統計的手法、画像処理、数値演算的手法を用いて得られる回折格子のピッチで回折光学素子パターンと等価なモニターパターンを形成する。
【0060】
上記の説明のように、本発明に係る両面フォトマスクの作製方法は、CGH素子パターンと光学的に等価な単純化されたモニターパターンが、ライン/スペースパターン、ドットパターン、ホールパターンまたはピッチが変化するチャープパターンの内のいずれか1種以上のパターンで形成されていることを好ましい形態とするものである。CGH素子パターンと光学的に等価な単純化されたモニターパターンを使用することにより、モニターパターン作製の描画時間を短縮し、両面フォトマスクの作製時間とコストを低減することができる。
【0061】
(モニターパターンによる評価)
モニターパターンにより透明基板のエッチング状態を評価して、CGH素子パターンのエッチング深さおよびパターン寸法を計測する方法としては、走査型電子線顕微鏡(SEM)による高倍率のパターン観察、測長、原子間力顕微鏡(AFM)によるエッチング深さ計測などの方法が用いられる。上記の計測の場合には、モニターパターン側の上面側から観察・計測することができる。しかし、光学的な評価をするには再生された照明パターンを評価するのがより好ましく、光学的な評価をする場合には、透明基板の反対面側の表面の遮光パターンを工夫することにより、光学的な評価が可能となる。
【0062】
そこで、本発明の好ましい実施形態としては、モニターパターンの反対側となる透明基板の一方の主面(表面)上に形成された遮光膜に、モニターパターンの検査用の開口部を開け、この検査用開口部を用いて、モニターパターンのエッチング状態を参照しながら回折光学素子パターンを形成するものである。
【0063】
さらに、本発明の好ましい実施形態としては、上記のモニターパターンのエッチング状態の参照が、モニターパターンの0次光評価、強度分布評価、回折効率評価の内のいずれか1つ以上の評価を含むものである。
【0064】
次に、本発明に係るモニターパターンM3を用いてCGH素子パターンP3の光学的な特性を評価する方法について、モニターパターンとしてCGH素子パターンと同じパターンを用いる場合と、CGH素子パターンと等価なパターンを用いる場合に分けてさらに詳しく説明する。
【0065】
図9は、モニターパターンとしてCGH素子パターンと同様なパターンを用いた場合の照明パターンの例を示す模式図であり、図9(a)は入射光901が透明基板の他方の主面(裏面)のCGH素子パターン902で回折し、透明基板の一方の主面(表面)側の遮光膜面903に照明パターン904として再生して形成された状態を示す斜視模式図であり、図9(b)は照明パターン904の平面図である。図9(b)に示すように、透明基板の表面側の遮光膜面903に形成された照明パターン904には、0次光と、照明パターン周辺に生じたノイズ905が観測される。
【0066】
したがって、透明基板の表面側の遮光膜面903に回折光が出るような開口部を設けることにより、モニターパターンの0次光などの回折光や照明パターン周辺のノイズを評価し、0次光が最小になる箇所、またはノイズが最小になる箇所、あるいは信号の部分が最大となる箇所を、CGH素子パターンの石英基板エッチングの深さの最適値として選定することが容易に可能となる。さらに、モニターパターンの検査用開口部からの出射光をカメラによる2次元強度分布評価装置や分光装置などの別装置で計測し評価することもできる。
【0067】
上記のように、透明基板の他方の主面(裏面)に設けられたモニターパターンの反対面となる透明基板の一方の主面(表面)側に形成するパターンにより、CGH素子パターンの回折光の0次光、強度分布、回折効率などが評価できる。図10は、モニターパターンの反対面に形成する遮光膜パターンの例である。図10(a)は0次光評価用の遮光膜パターン、図10(b)は照明パターン評価用の遮光膜パターン、図10(c)は任意の場所でのCGHの信号を評価する部分評価用の遮光膜パターン、図10(d)は外周部ノイズ評価用の遮光膜パターンである。図11は、図10(d)に示す外周部ノイズ評価用の遮光膜パターンを用い、シュミレーションにより求めた照明パターン外周部のノイズの状態を示す平面図である。
【0068】
図12は、モニターパターンとしてCGH素子パターンと等価なパターンを用いた場合の照明パターンの例を示す模式図である。図12(a)は入射光121が透明基板の他方の主面(裏面)のCGH素子パターン122で回折し、透明基板の一方の主面(表面)側の遮光膜面123に照明パターン124として再生して形成された状態を示す斜視模式図であり、図12(b)はモニターパターンの一例(ライン/スペースパターンとドットパターン)と照明パターンの平面図を示し、照明パターンには0次光と±1次光が生じている。前述の図7、図8で説明した方法で作製したモニターパターンを用いた場合には、図12に示すように回折光が発生するので、0次光、±1次光を同時にまたは分離して計測する。
【0069】
図13は、モニターパターンの反対面に形成する遮光膜パターンの例で、0次光評価用の遮光膜パターン、±1次光評価用の遮光膜パターンである。
【0070】
上記のように、回折光学素子の0次光の軽減、あるいは回折光強度を評価するために、モニターパターンは回折光学素子パターンを考慮して作成されており、両面フォトマスクの作製工程において、透明基板のエッチング中にモニターパターンを参照することにより、高精度のパターンを有する両面フォトマスクを作製することができる。例えば、適切なモニターパターンを用いることにより、0次光をモニターし、石英基板エッチングの最適な深さを確認しながら製造することが可能となる。
【0071】
CGH素子の0次光を最小にするためには、個々の照明パターンを発生するCGH素子ごとに管理するほうが精度が向上する。また、CGH素子パターンとモニターパターンの配置関係は、合成石英基板のエッチング製造誤差を考慮した配置にするのが好ましい。したがって、本発明の両面フォトマスクの作製方法においては、モニターパターンは両面フォトマスクのパターン露光時の有効面外の数箇所に設けるのが好ましい。
【0072】
CGH素子パターンの反対面の遮光膜パターン側には、微細な遮光膜パターンが存在するため、CGH素子パターン自体の光学特性を直接に計測することが常に可能であるとは言い得ない。本発明の両面フォトマスクは、モニターパターンを、両面フォトマスクの作製後の品質検査用パターンとして利用することが可能である。モニターパターンおよびモニターパターンの検査用開口部を用いて、CGH素子パターンの回折光の0次光、強度分布、回折効率などが評価でき、両面フォトマスクの品質保証を行うことができ、高精度、高品質の両面フォトマスクを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
101 透明基板
102 第1の遮光膜
103 第1のレジスト膜
104 電子線またはレーザ光
105 第1のレジストパターン
106 表面パターン
P1 表面本パターン
A1 表面アライメントマーク
M1 検査用開口部
107 第2の遮光膜
108 第2のレジスト膜
109 電子線またはレーザ光または紫外線
110 第2のレジストパターン
A2 裏面アライメントマーク
111 遮光パターン
112 第3のレジスト膜
113 電子線またはレーザ光
114 第3のレジストパターン
P2 裏面パターン用開口部
M2 モニター用開口部
115 裏面パターン
116 第4のレジスト膜
117 電子線またはレーザ光
118 第4のレジストパターン
119、120 凹部
P3 回折光学素子パターン(裏面本パターン)
M3 モニターパターン
901、121 入射光
902、122 CGH素子パターン
903、123 遮光膜面
904、124 照明パターン
905 ノイズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の一方の主面と他方の主面の両主面上に遮光膜を設け、前記一方の主面上の遮光膜を部分的に除去して遮光パターンを形成し、前記他方の主面上の遮光膜を部分的に除去して開口部を形成し、該開口部に回折光学素子パターンを形成する両面フォトマスクの作製方法であって、
前記他方の主面上の遮光膜の開口部に露出した透明基板の全面または一部をエッチングして前記回折光学素子パターンを形成するに際し、
前記両面フォトマスクのパターン露光時の有効面外にある前記他方の主面上の遮光膜にモニター用開口部を設け、前記モニター用開口部に前記回折光学素子パターンを作製するときのモニターパターンを形成し、前記モニターパターンのエッチング状態を参照しながら前記回折光学素子パターンを形成することを特徴とする両面フォトマスクの作製方法。
【請求項2】
前記回折光学素子パターンが、計算機ホログラム素子パターンであることを特徴とする請求項1に記載の両面フォトマスクの作製方法。
【請求項3】
前記モニターパターンが、前記回折光学素子パターンと同じパターンまたは前記回折光学素子パターンの特徴点を抽出して単純化した光学的に等価なパターンであり、少なくとも前記モニターパターンのエッチング深さおよびパターン寸法を参照しながら前記回折光学素子パターンを形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の両面フォトマスクの作製方法。
【請求項4】
前記光学的に等価なパターンが、ライン/スペースパターン、ドットパターン、ホールパターンまたはチャープパターンの内のいずれか1種以上のパターンで形成されていることを特徴とする請求項3に記載の両面フォトマスクの作製方法。
【請求項5】
前記モニターパターンの反対側となる前記透明基板の一方の主面上に形成された遮光膜に、前記モニターパターンの検査用の開口部を開け、該検査用開口部を用いて、前記モニターパターンのエッチング状態を参照しながら前記回折光学素子パターンを形成することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の両面フォトマスクの作製方法。
【請求項6】
前記モニターパターンのエッチング状態の参照が、前記モニターパターンの0次光評価、強度分布評価、回折効率評価の内のいずれか1つ以上の評価を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の両面フォトマスクの作製方法。
【請求項7】
透明基板の一方の主面と他方の主面の両主面上に遮光膜を設け、前記一方の主面上の遮光膜を部分的に除去して遮光パターンが形成され、前記他方の主面上の遮光膜を部分的に除去して開口部が形成され、該開口部に露出した透明基板の全面または一部をエッチングして回折光学素子パターンが形成されている両面フォトマスクであって、
前記両面フォトマスクのパターン露光時の有効面外にある前記他方の主面上の遮光膜にモニター用開口部を設け、前記モニター用開口部に前記回折光学素子パターンを作製するときのモニターパターンが前記透明基板をエッチングして形成されていることを特徴とする両面フォトマスク。
【請求項8】
前記回折光学素子パターンが、計算機ホログラム素子パターンであることを特徴とする請求項7に記載の両面フォトマスク。
【請求項9】
前記モニターパターンが、前記回折光学素子パターンと同じパターンまたは前記回折光学素子パターンの特徴点を抽出して単純化した光学的に等価なパターンであり、前記光学的に等価なパターンは、ライン/スペースパターン、ドットパターン、ホールパターンまたはチャープパターンの内のいずれか1種以上のパターンで形成されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の両面フォトマスク。
【請求項10】
前記モニターパターンの反対側となる前記透明基板の一方の主面上に形成された遮光膜に、前記モニターパターンの検査用の開口部が開けられていることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の両面フォトマスク。
【請求項11】
前記モニターパターンが、前記両面フォトマスクの作製後の品質検査用パターンを兼ねることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の両面フォトマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−204257(P2010−204257A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47857(P2009−47857)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】