説明

両面プリント配線板の検査方法

【課題】ビアホールと回路パターンとの間に異物が有るか無いかを確認することができる両面プリント配線板の検査方法を提供する。
【解決手段】絶縁基板1の周辺部以外の箇所に複数の回路用ビアホール4を形成する。絶縁基板1の周辺部に複数の検査用貫通穴5を縦横等間隔に設け、各検査用貫通穴5に導電性ペースト3を充填することによって複数の検査用ビアホール6からなるテストクーポン7を形成する。次に絶縁基板1の両面に金属層8を形成した後、エッチングを行うことによって絶縁基板1の周辺部以外の箇所に回路パターン9を形成すると共に絶縁基板1の周辺部の金属層8を除去する。これによって露出した検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面を観察して異物15の有無を確認し、この結果に基づいて回路用ビアホール4の導電性ペースト3と金属層8との間の異物15の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面プリント配線板の良否を検査する方法、より詳しくは、導電ペーストプリント配線板においてビアホールと回路パターンとの間に異物が有るか無いかを確認することができる両面プリント配線板の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電ペーストプリント配線板とは、図6(a)に示すように、絶縁基板1に設けた貫通穴20に導電性ペースト3を充填してビアホール21を形成し、このビアホール21の導電性ペースト3によって、絶縁基板1の両面に設けた回路パターン9の層間接続を行うようにしたプリント配線板のことをいう(例えば、特許文献1参照。)。この導電ペーストプリント配線板は、電気・電子素子をコンパクトに実装することができるという特徴を有しているので、近年においては、各種電気・電子製品の分野において多用されている。特に、図6(a)のように貫通穴20を完全に導電性ペースト3で充填することで、ビアランドの上部への電気接続が可能となり、多層化してスタックビアと呼ばれる直上接続型のビアホール21によって実装密度を上げることができるものである。
【0003】
このように、導電性ペースト3を貫通穴20に充填してビアホール21を形成する場合には、めっきスルーホール(図示省略)と比較して特に問題となる項目として、電気的接続性(導通性)の確保が挙げられる。図6に示すものからも容易に理解することができるように、ビアホール21を形成する導電性ペースト3と絶縁基板1上の回路パターン9との間の接続が極めて重要であり、この界面に図6(b)のように異物15が介在するようなことがあれば、著しく接続信頼性が低下してしまう。また、異物15を含む導電ペーストプリント配線板のロットの発見が遅れた場合、多層化が進んでしまい、完成間際になった時点での不良発覚では、あまりに製造ロスが大きすぎる。従って、導電ペーストプリント配線板をビルドアッププリント配線板の一部として使用する場合には、導電ペーストプリント配線板を製造した時点でその良否を判定することが非常に重要となる。
【0004】
ところで、従来のめっきスルーホールプリント配線板(図示省略)では、いわゆるディジーパターンを絶縁基板1の周辺部に形成し、このディジーパターンの抵抗値を測定することで、断線や短絡などの不具合を検出することが行われている。この場合、貫通穴の内壁にめっきが析出していない等の不具合の検出を容易に行うことができ、初期故障の大半を抽出することが可能であった。
【特許文献1】特開平6−268345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電ペーストプリント配線板の主要な不良モードには、上述した図6(b)のように、ビアホール21を形成する導電性ペースト3と絶縁基板1上の回路パターン9との界面に異物15を巻き込むことによる不良モードがある。この場合、界面全体にわたって異物15が介在しない限り、ディジーパターンでは抵抗値の異常を検出することができない。つまり、わずかな異物15が存在していても一時的には電気的接続性を確保することができる。ところが、たとえわずかな異物15を含む導電ペーストプリント配線板であっても、これが熱履歴を伴った使用をされると、電気的接続性は著しく低下することとなる。そのため、導電性ペースト3と回路パターン9との界面に異物15が全く存在しないことを確認する作業が非常に重要となるが、上述のようにディジーパターンのみではわずかな異物15の検出が困難である。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ビアホールと回路パターンとの間に異物が有るか無いかを確認することができる両面プリント配線板の検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る両面プリント配線板の検査方法は、絶縁基板1の周辺部以外の箇所に複数の回路用貫通穴2を設け、各回路用貫通穴2に導電性ペースト3を充填することによって複数の回路用ビアホール4を形成すると共に、絶縁基板1の周辺部に複数の検査用貫通穴5を縦横等間隔に設け、各検査用貫通穴5に導電性ペースト3を充填することによって複数の検査用ビアホール6からなるテストクーポン7を形成し、次に絶縁基板1の両面に金属層8を形成した後、エッチングを行うことによって絶縁基板1の周辺部以外の箇所に回路パターン9を形成すると共に絶縁基板1の周辺部の金属層8を除去し、これによって露出した検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面を観察して異物の有無を確認し、この結果に基づいて回路用ビアホール4の導電性ペースト3と金属層8との間の異物の有無を判定することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、検査用ビアホール6の直径が回路用ビアホール4の直径よりも小さいことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、検査用ビアホール6間のピッチが回路用ビアホール4間の最小ピッチよりも小さいことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、絶縁基板1の周辺部にディジーパターン10を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係る両面プリント配線板の検査方法によれば、回路用ビアホールと回路パターンとの間に異物が有るか無いかを確認することができるものである。
【0012】
請求項2の発明によれば、検査用ビアホールと金属層との間に異物が存在しやすくなるように検査条件を厳しくしているので、回路用ビアホールと回路パターンとの間に異物が無い両面プリント配線板をより高い確率で判別することができるものである。
【0013】
請求項3の発明によれば、検査用ビアホールと金属層との間に異物が存在しやすくなるように検査条件を厳しくしているので、回路用ビアホールと回路パターンとの間に異物が無い両面プリント配線板をより高い確率で判別することができるものである。
【0014】
請求項4の発明によれば、回路用ビアホールを形成する導電性ペーストと回路パターンを形成する金属層との間の電気的接続性の良否も併せて確認することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
(実施形態1)
本実施形態では、次のようにして両面プリント配線板(導電ペーストプリント配線板)を製造すると共に、製造直後においてその良否を検査することができるものである。
【0017】
すなわち、まず図1(a)に示すように、絶縁基板1を用意する。絶縁基板1としては、特に限定されるものではないが、例えば、アンクラッド積層基板等を用いることができる。このアンクラッド積層基板は、銅張積層板等の金属張積層板の片面又は両面の金属箔をエッチングにより除去することによって得ることができる。なお、金属張積層板は、ガラスクロス等の基材11にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを複数枚重ね、この片面又は両面に銅箔等の金属箔を加熱加圧して得ることができる。
【0018】
次に図1(b)に示すように、絶縁基板1の両面に接着層12を形成する。この接着層12は、絶縁基板1の表面にエポキシ樹脂等をロールコーター等で塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。乾燥は、接着層12のタック性がなくなるまで行うのが好ましい。
【0019】
次に図1(c)に示すように、接着層12の表面にPETフィルム等の離型フィルム13をラミネーター等を用いて貼着する。
【0020】
その後、この絶縁基板1に回路パターン9を形成すると共に、テストクーポン7を形成するのであるが、このテストクーポン7は、回路パターン9が形成される領域14の外側に形成される。具体的には、図3(平面図)に示すように、回路パターン形成領域14は、絶縁基板1の周辺部以外の箇所(例えば、中央部など)であるので、テストクーポン7は、絶縁基板1の周辺部に形成することとなる。以下、この工程について詳しく説明する。
【0021】
まず図1(d)に示すように、絶縁基板1の周辺部以外の箇所(回路パターン9を形成する領域)に複数の回路用貫通穴2を設けると共に、絶縁基板1の周辺部(回路パターン9を形成しない領域)に複数の検査用貫通穴5を設ける。いずれの貫通穴2,5もドリル加工機等を用いて設けることができるが、この穴あけ加工に伴って樹脂スミア等の異物15(例えば、ガラスクロスやPPレジン等)が発生するので、穴あけ後に高圧エアーでいずれの貫通穴2,5の内部もクリーニングしておく。
【0022】
ここで、回路用貫通穴2は、所望の回路パターン9に基づいて必要とされる数だけ設けるものであるが、検査用貫通穴5は、図4(a)に示すように、四辺形状に縦横等間隔に設ける。図4(a)では、3種類のものを示しているが、検査用貫通穴5の内径はより小さいものが好ましく、また、隣り合う検査用貫通穴5間のピッチはより小さいものが好ましいので、図4(a)では、左側のものよりも中央のもの、中央のものよりも右側のものが好ましい。また、検査用貫通穴5の内径は、回路用貫通穴2の内径よりも小さいことが好ましい。これらの点については後述する。
【0023】
次に図1(e)に示すように、各回路用貫通穴2に導電性ペースト3を充填することによって複数の回路用ビアホール4を形成すると共に、各検査用貫通穴5に導電性ペースト3を充填することによって複数の検査用ビアホール6を形成する。導電性ペースト3としては、特に限定されるものではないが、例えば、銀ペーストや銅ペースト等を用いることができ、また、各貫通穴2,5へ導電性ペースト3を充填する方法としては、スクリーン印刷等を採用することができる。そして、テストクーポン7は、複数の検査用ビアホール6からなるもので形成されることとなる。
【0024】
次に図1(f)に示すように、離型フィルム13を剥離すると、離型フィルム13の厚み分だけ接着層12の表面から導電性ペースト3が突出した状態となる。
【0025】
次に図1(g)に示すように、絶縁基板1の両面(接着層12及び導電性ペースト3の表面)に金属層8を形成する。金属層8は、絶縁基板1の両面に銅箔等の金属箔16を配置し、これを真空下において加熱加圧することによって形成することができる。ここで、金属箔16を配置する際に異物15を巻き込んで、図6(b)に示すような状態となる場合があるが、このような状態となってしまっても、後述するように、本発明による方法で異物15の存在を確認することができるものである。なお、異物15としては、ガラスクロスやPPレジン等のほか、工程内のゴミ、人間の皮膚に由来する蛋白質等も例示することができる。
【0026】
次に、図1(g)に示す金属層8の表面にドライフィルム(図示省略)をラミネートし、露光・現像する。その後、塩化第二銅等を用いてエッチングを行うことによって、図1(h)に示すように、絶縁基板1の周辺部以外の箇所に回路パターン9を形成すると共に、絶縁基板1の周辺部の金属層8を全て除去する。なお、ドライフィルムは、エッチングを行った後に、水酸化ナトリウム溶液等を用いて剥離する。
【0027】
上記のようにして、両面プリント配線板(導電ペーストプリント配線板)が製造されるのであるが、回路パターン9の形成と同時に、エッチングによる金属層8の除去によって、図1(h)のように検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面が露出することとなる。ここで、エッチングでは、ガラスクロスやPPレジン等の異物15は除去されないので、もし製造工程の途中で導電性ペースト3と金属層8との間に異物15が巻き込まれた場合には、露出した検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面を観察することによって、異物15の有無を確認することができる。図5(平面図)は、露出した検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面を図示したものであり、図5(a)は異物15が存在しない状態を示し、図5(b)は異物15が存在する状態の一例を示す。
【0028】
そして、検査用ビアホール6の導電性ペースト3と金属層8との間に異物15が存在する場合には、回路用ビアホール4の導電性ペースト3と金属層8との間にも異物15が存在する傾向が強いので、検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面を観察した結果に基づいて、回路用ビアホール4の導電性ペースト3と金属層8との間の異物15の有無を判定することができるものである。すなわち、各検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面を観察した結果、いずれも図5(a)に示すような状態であれば、回路用ビアホール4の導電性ペースト3と金属層8との間に異物15が存在する可能性は低く、両面プリント配線板は、図6(a)に示すような良品であると判定することができる。一方、各検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面を観察した結果、いずれかが図5(b)に示すような状態であれば、回路用ビアホール4の導電性ペースト3と金属層8との間に異物15が存在する可能性が高く、両面プリント配線板は、図6(b)に示すような不良品であると判定することができる。
【0029】
上記のように、本発明による両面プリント配線板の検査方法によれば、回路用ビアホール4と回路パターン9との間に異物15が有るか無いかを両面プリント配線板を破壊しないで確認することができるものである。
【0030】
次に、本実施形態において、より好ましい形態について説明する。まず、図1(d)に示す段階において、検査用貫通穴5の内径が回路用貫通穴2の内径よりも小さくなるように、穴あけ加工を行うのが好ましい。すなわち、図1(e)に示すように、検査用ビアホール6の直径Dが回路用ビアホール4の直径Dよりも小さいことが好ましい。そうすると、検査用ビアホール6と金属層8との間に異物15を挟み込みやすくなって検査条件が厳しくなるので、回路用ビアホール4と回路パターン9との間に異物15が無い両面プリント配線板をより高い確率で判別することができるものである。
【0031】
また、図1(e)に示すように、検査用ビアホール6間のピッチPが回路用ビアホール4間の最小ピッチPよりも小さいことが好ましい。このようにしても、検査用ビアホール6と金属層8との間に異物15を挟み込みやすくなって検査条件が厳しくなるので、回路用ビアホール4と回路パターン9との間に異物15が無い両面プリント配線板をより高い確率で判別することができるものである。なお、回路用ビアホール4は、所望の回路パターン9に応じて数や位置が変化し、回路用ビアホール4間は等間隔にはならない場合があるので、回路用ビアホール4間のピッチのうち最小のもの(最小ピッチ)Pを選択し、これを比較の対象として、検査用ビアホール6間のピッチPを決定するものである。
【0032】
さらに、図3や図4(b)に示すように、絶縁基板1の周辺部には、テストクーポン7を形成した上で、ディジーパターン10(ディジーチェーン)も形成するのが好ましい。ディジーパターン10は、例えば、次のようにして回路パターン9の形成と同時に形成することができる。すなわち、まず図1(d)に示す段階において、絶縁基板1の周辺部に検査用貫通穴5の他に複数の貫通穴(図示省略)を2列に列設する。次に図1(e)に示す段階において、各貫通穴に導電性ペースト3を充填する。その後、図1(f)〜図1(h)に示す段階を経て、導電性ペースト3を充填した各貫通穴を金属層8で1本につないで電気的に接続することによって、図4(b)に示すようなディジーパターン10を得ることができる。このように、ディジーパターン10も形成しておけば、回路用ビアホール4を形成する導電性ペースト3と回路パターン9を形成する金属層8との間の電気的接続性の良否も併せて確認することができるものである。
【0033】
(実施形態2)
本実施形態では、次のようにして両面プリント配線板(導電ペーストプリント配線板)を製造すると共に、製造直後においてその良否を検査することができるものである。
【0034】
すなわち、まず図2(a)に示すように、銅箔等の金属箔16を用意し、この金属箔16の片面に図2(b)のように略円錐状の回路用バンプ17及び検査用バンプ18をそれぞれ複数形成する。いずれのバンプ17,18も、銀ペーストや銅ペースト等の導電性ペースト3を用いて形成することができる。なお、回路用バンプ17の形成箇所は、絶縁基板1の周辺部以外の箇所に相当する箇所であり、また、検査用バンプ18の形成箇所は、絶縁基板1の周辺部に相当する箇所である。さらに、いずれのバンプ17,18も略同一の高さであって、絶縁基板1の厚みよりも長くなるように形成してある。
【0035】
次に図2(c)に示すように、金属箔16のバンプ形成面19を絶縁基板1の片面に重ねて加熱加圧する。そうすると、回路用バンプ17及び検査用バンプ18が絶縁基板1を貫通し、絶縁基板1の反対側の面に両バンプ17,18の先端が突出することとなる。なお、絶縁基板1としては、実施形態1のものと同様のものを用いることができる。
【0036】
このように、本実施形態では、絶縁基板1の周辺部以外の箇所(回路パターン9を形成する領域14)に複数の回路用貫通穴2を設けるという作業と、各回路用貫通穴2に導電性ペースト3を充填して複数の回路用ビアホール4を形成するという作業とを、同時に行うことができる。つまり、図1(d)〜図1(f)に相当する工程を図2(c)に示す工程で済ませることができるものである。同様に、絶縁基板1の周辺部(回路パターン9を形成しない領域)に複数の検査用貫通穴5を設けるという作業と、各検査用貫通穴5に導電性ペースト3を充填して複数の検査用ビアホール6を形成するという作業とを、同時に行うこともできる。そして、テストクーポン7は、複数の検査用ビアホール6からなるもので形成されることとなる。また、本実施形態では、ドリル加工機等による穴あけ加工が不要となるので、樹脂スミア等の異物15(例えば、ガラスクロスやPPレジン等)が発生しにくいものである。
【0037】
ここで、回路用ビアホール4は、所望の回路パターン9に基づいて必要とされる数だけ設けるものであるが、検査用ビアホール6は、図4(a)に示すように、四辺形状に縦横等間隔に設ける。図4(a)では、3種類のものを示しているが、検査用ビアホール6の直径はより小さいものが好ましく、また、隣り合う検査用ビアホール6間のピッチはより小さいものが好ましいので、図4(a)では、左側のものよりも中央のもの、中央のものよりも右側のものが好ましい。また、検査用ビアホール6の直径は、回路用ビアホール4の直径よりも小さいことが好ましい。これらの点については実施形態1で説明した通りである。なお、本実施形態では、ビアホールの形状は、円柱状ではなく、円錐状であるので、ビアホールの直径という場合には、円錐底面の直径を意味する。
【0038】
次に図2(d)に示すように、絶縁基板1の両面に金属層8を形成する。ここで、絶縁基板1の一方の面には既に図2(c)のように金属箔16によって金属層8が形成されているので、絶縁基板1の他方の面に銅箔等の金属箔16を配置し、これを真空下において加熱加圧することによって、残りの金属層8を形成する。ここで、金属箔16を配置する際に異物15を巻き込んで、図6(b)に示すような状態となる場合があるが、このような状態となってしまっても、後述するように、本発明による方法で異物15の存在を確認することができるものである。なお、異物15としては、ガラスクロスやPPレジン等のほか、工程内のゴミ、人間の皮膚に由来する蛋白質等も例示することができる。
【0039】
次に、図2(d)に示す金属層8の表面にドライフィルム(図示省略)をラミネートし、露光・現像する。その後、塩化第二銅等を用いてエッチングを行うことによって、図2(e)に示すように、絶縁基板1の周辺部以外の箇所に回路パターン9を形成すると共に、絶縁基板1の周辺部の金属層8を全て除去する。なお、ドライフィルムは、エッチングを行った後に、水酸化ナトリウム溶液等を用いて剥離する。
【0040】
上記のようにして、両面プリント配線板(導電ペーストプリント配線板)が製造されるのであるが、回路パターン9の形成と同時に、エッチングによる金属層8の除去によって、図2(e)のように検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面が露出することとなる。ここで、エッチングでは、ガラスクロスやPPレジン等の異物15は除去されないので、もし製造工程の途中で導電性ペースト3と金属層8との間に異物15が巻き込まれた場合には、露出した検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面を観察することによって、異物15の有無を確認することができる。図5(平面図)は、露出した検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面を図示したものであり、図5(a)は異物15が存在しない状態を示し、図5(b)は異物15が存在する状態の一例を示す。
【0041】
そして、検査用ビアホール6の導電性ペースト3と金属層8との間に異物15が存在する場合には、回路用ビアホール4の導電性ペースト3と金属層8との間にも異物15が存在する傾向が強いので、検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面を観察した結果に基づいて、回路用ビアホール4の導電性ペースト3と金属層8との間の異物15の有無を判定することができるものである。すなわち、各検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面を観察した結果、いずれも図5(a)に示すような状態であれば、回路用ビアホール4の導電性ペースト3と金属層8との間に異物15が存在する可能性は低く、両面プリント配線板は、図6(a)に示すような良品であると判定することができる。一方、各検査用ビアホール6の導電性ペースト3の表面を観察した結果、いずれかが図5(b)に示すような状態であれば、回路用ビアホール4の導電性ペースト3と金属層8との間に異物15が存在する可能性が高く、両面プリント配線板は、図6(b)に示すような不良品であると判定することができる。
【0042】
上記のように、本発明による両面プリント配線板の検査方法によれば、回路用ビアホール4と回路パターン9との間に異物15が有るか無いかを両面プリント配線板を破壊しないで確認することができるものである。
【0043】
次に、本実施形態において、より好ましい形態について説明する。まず、図2(b)に示す段階において、検査用バンプ18の直径が回路用バンプ17の直径よりも小さくなるように、両バンプを金属箔16に形成しておくのが好ましい。すなわち、図2(c)に示すように、検査用ビアホール6の直径Dが回路用ビアホール4の直径Dよりも小さいことが好ましい。そうすると、検査用ビアホール6と金属層8との間に異物15を挟み込みやすくなって検査条件が厳しくなるので、回路用ビアホール4と回路パターン9との間に異物15が無い両面プリント配線板をより高い確率で判別することができるものである。
【0044】
また、図2(c)に示すように、検査用ビアホール6間のピッチPが回路用ビアホール4間の最小ピッチPよりも小さいことが好ましい。このようにしても、検査用ビアホール6と金属層8との間に異物15を挟み込みやすくなって検査条件が厳しくなるので、回路用ビアホール4と回路パターン9との間に異物15が無い両面プリント配線板をより高い確率で判別することができるものである。なお、回路用ビアホール4は、所望の回路パターン9に応じて数や位置が変化し、回路用ビアホール4間は等間隔にはならない場合があるので、回路用ビアホール4間のピッチのうち最小のもの(最小ピッチ)Pを選択し、これを比較の対象として、検査用ビアホール6間のピッチPを決定するものである。
【0045】
さらに、図3や図4(b)に示すように、絶縁基板1の周辺部には、テストクーポン7を形成した上で、ディジーパターン10(ディジーチェーン)も形成するのが好ましい。ディジーパターン10は、例えば、次のようにして回路パターン9の形成と同時に形成することができる。すなわち、まず図2(b)に示す段階において、絶縁基板1の周辺部に検査用バンプ18の他に複数の円錐状バンプ(図示省略)を2列に列設する。これらの円錐状バンプも図2(c)のように絶縁基板1を貫通させる。その後、図2(d)〜図2(e)に示す段階を経て、円錐状バンプで形成された複数のビアホール(図示省略)を金属層8で1本につないで電気的に接続することによって、図4(b)に示すようなディジーパターン10を得ることができる。このように、ディジーパターン10も形成しておけば、回路用ビアホール4を形成する導電性ペースト3と回路パターン9を形成する金属層8との間の電気的接続性の良否も併せて確認することができるものである。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0047】
(実施例1)
まず図1(a)に示すように、絶縁基板1として、FR−4グレードのアンクラッド基板(松下電工(株)製「R1621」、板厚0.1mm)を用意した。
【0048】
次に図1(b)に示すように、絶縁基板1の両面に接着層12を形成した。この接着層12は、絶縁基板1の表面にエポキシ樹脂をロールコーターで塗布し、これを乾燥させることによって形成した。乾燥は、接着層12のタック性がなくなるまで60℃で行った。接着層12の厚みは30μmである。
【0049】
次に図1(c)に示すように、接着層12の表面にPETフィルム(東レ(株)製「T−60」、厚み38μm)をラミネーターを用いて貼着した。この貼着は、温度80℃、圧力0.05MPaの条件で行った。
【0050】
次に図1(d)に示すように、絶縁基板1の周辺部以外の箇所に1200個の回路用貫通穴2(穴径0.15mm)を設けると共に、絶縁基板1の周辺部に2800個の検査用貫通穴5(穴径0.10mm)を設けた。いずれの貫通穴もドリル加工機を用いて設け、穴あけ後に高圧エアーでいずれの貫通穴の内部もクリーニングした。
【0051】
次に図1(e)に示すように、各回路用貫通穴2に導電性ペースト3を充填することによって1200個の回路用ビアホール4を形成すると共に、各検査用貫通穴5に導電性ペースト3を充填することによって2800個の検査用ビアホール6からなるテストクーポン7を形成した。導電性ペースト3としては、銀を主成分とするものを用いた。各貫通穴2,5へ導電性ペースト3を充填する方法としては、スクリーン印刷を採用した。
【0052】
次に図1(f)に示すように、PETフィルムを剥離すると、PETフィルムの厚み分だけ接着層12の表面から導電性ペースト3が突出した状態となった。
【0053】
次に図1(g)に示すように、絶縁基板1の両面に金属層8を形成した。金属層8は、絶縁基板1の両面に銅箔を配置し、これを180℃で約1時間、真空下において加熱加圧することによって形成した。
【0054】
次に、図1(g)に示す金属層8の表面にドライフィルム(図示省略)をラミネートし、露光・現像した。その後、塩化第二銅を用いてエッチングを行うことによって、図1(h)に示すように、絶縁基板1の周辺部以外の箇所に回路パターン9を形成すると共に、絶縁基板1の周辺部の金属層8を全て除去した。なお、ドライフィルムは、エッチングを行った後に、水酸化ナトリウム溶液を用いて剥離した。
【0055】
上記のようにして、両面プリント配線板(導電ペーストプリント配線板)を製造した。そして、露出した2800個の検査用ビアホール6の表面を観察したところ、異物15は全く存在しないことを確認した。この結果に基づくと、1200個の回路用ビアホール4と金属層8との間にも異物15が全く無いと判定することができる。実際に断面観察を行ったところ、異物15が全く存在しないことを確認することができた。
【0056】
(実施例2)
穴あけ後に高圧エアーによるクリーニングを意図的に行わなかった以外は、実施例1と同様にして、両面プリント配線板(導電ペーストプリント配線板)を製造した。そして、露出した2800個の検査用ビアホール6の表面を観察したところ、35個の検査用ビアホール6の表面に異物15が存在することを確認した。この結果に基づくと、1200個の回路用ビアホール4と金属層8との間にも異物15が存在すると判定することができる。実際に断面観察を行ったところ、15個の回路用ビアホール4と金属層8との間に異物15が存在することを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)〜(h)は断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の他の例を示すものであり、(a)〜(e)は断面図である。
【図3】両面プリント配線板の一例を示す平面図である。
【図4】同上の一部を拡大したものであり、(a)は一例の平面図、(b)は他の例の平面図である。
【図5】検査用ビアホールの一例を示すものであり、(a)は異物の無い状態の平面図、(b)は異物の有る状態の平面図である。
【図6】両面プリント配線板の一例を示すものであり、(a)は良品の断面図、(b)は不良品の断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 絶縁基板
2 回路用貫通穴
3 導電性ペースト
4 回路用ビアホール
5 検査用貫通穴
6 検査用ビアホール
7 テストクーポン
8 金属層
9 回路パターン
10 ディジーパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の周辺部以外の箇所に複数の回路用貫通穴を設け、各回路用貫通穴に導電性ペーストを充填することによって複数の回路用ビアホールを形成すると共に、絶縁基板の周辺部に複数の検査用貫通穴を縦横等間隔に設け、各検査用貫通穴に導電性ペーストを充填することによって複数の検査用ビアホールからなるテストクーポンを形成し、次に絶縁基板の両面に金属層を形成した後、エッチングを行うことによって絶縁基板の周辺部以外の箇所に回路パターンを形成すると共に絶縁基板の周辺部の金属層を除去し、これによって露出した検査用ビアホールの導電性ペーストの表面を観察して異物の有無を確認し、この結果に基づいて回路用ビアホールの導電性ペーストと金属層との間の異物の有無を判定することを特徴とする両面プリント配線板の検査方法。
【請求項2】
検査用ビアホールの直径が回路用ビアホールの直径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の両面プリント配線板の検査方法。
【請求項3】
検査用ビアホール間のピッチが回路用ビアホール間の最小ピッチよりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の両面プリント配線板の検査方法。
【請求項4】
絶縁基板の周辺部にディジーパターンを形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の両面プリント配線板の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−93307(P2007−93307A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280913(P2005−280913)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】