説明

両面塗工装置

【課題】走行するウエブを安定してガイドできる両面塗工装置を提供する。
【解決手段】上下一対の上ダイ12と下ダイ14とを水平に搬送するウエブWの搬送路に配置し、下ダイ14の上流側にガイド部材16を配置し、ガイド部材16は、多孔質材料よりなる空気吹き出し部42を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状のウエブの両面に塗工液を塗工する両面塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のリチウムイオン電池やポリマー電池などの普及により、これら電池の製造工程において、金属箔やパンチング箔などのウエブの両面に電極剤(塗工液)を塗工する工程が増加してきている。この塗工にはダイを用いたダイコート法が多く用いられている。
【0003】
従来、第1のラインで、ウエブは巻き出し装置より巻き出され、ダイでウエブの一方の面に塗工液を塗工して熱処理装置で乾燥させ、乾燥した後に巻取り装置によって巻き取られる。その後、第2のラインで、巻取り装置によって巻き取られたウエブは、再度巻き出し装置に設置され、前回塗工したウエブの他方の面に塗工液がダイによって再度塗工され、熱処理装置で乾燥して、巻取り装置に巻き取られるのが一般的な製造工程である。
【0004】
しかし、生産性を上げるために、1ラインでウエブの両面に塗工液を塗工する両面塗工装置が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1であると、熱処置装置の上流側に設けられた上下一対のダイでウエブの両面に同時塗工する両面塗工装置が提案されている。
【0006】
また、特許文献2であると、ダイのダイスリット先端部に近接する所定の位置に、ガイド部品を設け、走行中のウエブの正面と接触及び摺動させることにより、ダイ先端部とウエブの表面との隙間を一定の距離に維持する両面塗工装置が提案されている。
【0007】
特許文献3であると、ウエブと摺動接触するダイの先端部接触部を、塗工液に溶けず導電性を有しない合成樹脂材で形成した両面塗工装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−339785号公報
【特許文献2】特開2000−113878号公報
【特許文献3】特開2011−121034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1〜3の両面塗工装置においては、ウエブを安定してガイドさせるガイド手段が、ウエブと接触しているため、これらガイド手段によってウエブが損傷するという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、走行するウエブを安定してガイドできる両面塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、上流から下流へ走行する長尺状のウエブの一方の面に第1の塗工液を塗工する第1のダイと、前記ウエブの他方の面に第2の塗工液を塗工する第2のダイと、前記ウエブの一方の面側であって、前記第1のダイの吐出口の上流側から前記吐出口まで延びたガイド部材と、を有し、前記ガイド部材は、前記ウエブの一方の面に、多孔質材料よりなる空気吹き出し部を介して空気を吹き出す、ことを特徴とする塗工装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガイド部材が、ウエブの一方の面に対し、多孔式材料よりなる空気吹き出し口から空気を吹き出すため、ウエブを安定してガイドさせることができ、また、空気吹き出し部とウエブが接触しないためウエブが損傷することがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1の両面塗工装置の説明図である。
【図2】実施形態2の両面塗工装置の説明図である。
【図3】実施形態3の両面塗工装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態の両面塗工装置10について図面に基づいて説明する。
【実施形態1】
【0015】
本発明の実施形態1の両面塗工装置10について図1に基づいて説明する。
【0016】
本実施形態における長尺状のウエブWは、例えば、銅箔やアルミニウム箔より形成された金属箔、又は、孔が開口したパンチング箔、フィルム、紙などである。
【0017】
(1)両面塗工装置10の構造
両面塗工装置10の構造について図1に基づいて説明する。
【0018】
両面塗工装置10は、上ダイ12、下ダイ14、ガイド部材16、第1ガイドロール18、第2ガイドロール20を有している。
【0019】
ウエブWは、巻き出し装置から巻き出され、第1ガイドロール18、第2ガイドロール20を経て、ほぼ水平に走行する。
【0020】
この水平な搬送路の上下には、上ダイ12と下ダイ14とが上下対称に配されている。上ダイ12は、ダイ本体22内部において、液溜め部22が設けられ、この液溜め部22からスリット状に吐出路24が下方に向かって設けられている。そして、この吐出路24の下端には、スリット状の吐出口26が設けられている。この吐出口26によって、塗工液をウエブWに塗工し易いようにするために、上ダイ12の本体28の下部は、下方に行くほど細くなるように傾斜面30,32を有し、吐出口26がある位置のみこの両傾斜面30,32から吐出した突出部34が形成されている。
【0021】
上ダイ12の本体28には液パイプ36が接続され、上ダイ12によって塗工される塗工液が液パイプ36を経て液溜め部22に供給される。この液パイプ36は、圧送ポンプ38に接続され、この圧送ポンプ38は塗工液を間欠的に圧送し、上ダイ12は、ウエブWに対し塗工液を間欠塗工する。なお、「間欠塗工」とは、ウエブWに対し塗工液によって形成される塗工区間と、塗工液が塗工されない未塗工区間とを交互に形成する塗工方法である。
【0022】
下ダイ14も、上ダイ12と上下対称であって、同様の構造を有している。
【0023】
(2)ガイド部材16の構造
次に、ガイド部材16の構造の構造について図1に基づいて説明する。
【0024】
このガイド部材16は、薄い直方体状に形成され、下ダイ14の上流側から下ダイ14の吐出口26までの間に配置されている。
【0025】
このガイド部材16は、金属製のガイド本体40、このガイド本体40の上部に取り付けられた板状の空気吹き出し部42、この空気吹き出し部42の上流側の下面を覆う閉塞板44より形成されている。
【0026】
空気吹き出し部42は、セラミックやアルミ系材料よりなる多孔質材料であって、この多孔質材料の孔径は、0.3〜20μmで、気孔率は10〜20%である。そして、この空気吹き出し部42の上流側は、下ダイ14の本体28の傾斜面32に沿って薄くなるように傾斜して形成され、その先端は突出部34まで延びている。そして、この傾斜面の位置に合成樹脂よりなる閉塞板44が取り付けられている。
【0027】
ガイド本体40と空気吹き出し部42の下面との間には空気拡大空間46が形成され、また、この空気拡大空間46の下面、すなわちガイド本体40の下面には、圧縮空気が送り込まれる空気パイプ48が接続されている。この送り込まれる圧縮空気は、0.1〜0.2MPaである。
【0028】
(3)両面塗工装置10の動作状態
次に、両面塗工装置10を用いてウエブWの上下面に塗工液を塗工する動作状態について説明する。
【0029】
なお、このウエブWとしては上記したように金属箔、パンチング箔、フィルム、紙などが挙げられるが、以下の説明ではパンチング箔を用いて説明する。このパンチング箔への両面塗工は、上下から塗工される塗工液に圧力が掛かっているため、パンチング孔があるとウエブWの裏面に噴出するため、本実施形態のように上下対称の上ダイ12と下ダイ14から同時に塗工液を塗工して、裏面に噴出するのを防ぐ必要があるからである。このパンチング箔としては、リチウムイオン電池などの二次電池用の電極材として用いられている。
【0030】
ウエブWは、第1ガイドロール18、第2ガイドロール20を経てほぼ水平方向に走行する。走行するウエブWは、ガイド部材16の上方を通過する。この場合にガイド部材16からは、多孔質材料よりなる空気吹き出し部42から圧縮空気が吹き出されているため、このガイド部材16に接触することなく水平方向にウエブWは走行する。ウエブWの張力が0.05〜0.2kg/cmのとき、ウエブWの浮上する量は、50〜200μmである。
【0031】
このようにガイド部材16によって水平方向にガイドされているウエブWが上下一対の上ダイ12と下ダイ14との間を通り、塗工液が間欠塗工される。間欠塗工では、特に下面からの塗工は下ダイ14から塗工液が噴出している状態から噴出を停止したときに塗工液の接着力の影響でウエブWが下方に引き付けられて、塗工液を確実にカットできない状態が起こる。これを防ぐために、本実施形態では、ガイド部材16によってウエブWをガイド部材16に接触させないで案内することにより、ウエブWを傷めることなく確実に塗工液をカットできる。
【0032】
その上、ガイド部材16の空気吹き出し部42の上流側は、下ダイ14の突出部34まで傾斜して形成されているため、突出部34の近くまでウエブWを浮上した状態で確実にガイドできる。
【0033】
また、空気を吹き出す場合に、多孔質材料よりなる空気吹き出し部42を介して吹き出しているため、ウエブWの下面に対し圧縮空気が万遍なく吹き出され、かつ、一部が強く吹き出されることがないため、ウエブWの浮上量が50〜200μmで安定してガイドできる。そのため、ウエブWを傷めずに走行でき、擦り傷や削り粉が発生することがない。
【0034】
(4)効果
本実施形態によれば、ガイド部材16から圧縮空気が吹き出され、走行するウエブWが安定してガイドされているため、間欠塗工を正確に行うことができる。
【0035】
また、空気吹き出し部42が多孔質材料により形成されているため、圧縮空気が万遍なく、かつ、強くない程度に吹き出されるため、ウエブWを安定して浮上した状態でガイドさせることができる。
【0036】
また、ガイド部材16の空気吹き出し部42の上流側の先端は、傾斜して形成されているため、下ダイ14の吐出口26の位置まで配置させることができ、ウエブWをこの位置まで安定してガイドできる。
【実施形態2】
【0037】
次に、実施形態2の両面塗工装置10について図2に基づいて説明する。
【0038】
本実施形態と実施形態1の異なる点は、上ダイ12と下ダイ14との配置位置にある。
【0039】
実施形態1では上下対称に上ダイ12と下ダイ14を配したが、本実施形態では下ダイ14の上流側、すなわち、第1ガイドロール18の位置に上ダイ12を配している。この場合に第1ガイドロール18はバックアップロールの役割を果たしている。
【0040】
本実施形態の両面塗工装置10であっても、上面が塗工されたウエブWの下側にガイド部材16が配され、このガイド部材16によって下ダイ14の吐出口26の位置までウエブWを安定してガイドしているため、間欠塗工を正確に行うことができる。
【実施形態3】
【0041】
次に、実施形態3の両面塗工装置10について図3に基づいて説明する。
【0042】
実施形態1と実施形態2ではウエブWを横方向(水平方向)に走行させていたが、本実施形態ではウエブWを縦方向(垂直方向)に走行させている。
【0043】
そして、2個のダイ12,14は、走行するウエブWの搬送路に左右対称に配置し、ガイド部材16は、一方のダイ14側に配置している。
【0044】
本実施形態であっても、ガイド部材16によって縦方向に走行するウエブWを安定してガイドさせることができるため、間欠塗工を正確に行うことができる。
【変更例】
【0045】
上記実施形態では、ウエブWに対し間欠塗工を行ったが、これに代えて塗工液をウエブWに対し連続して塗工する連続塗工であってもよい。連続塗工であってもガイド部材16を配することにより、塗工厚みを正確に維持することができ、塗工精度は上がる。この理由は、吐出口26とウエブWの高さ位置がガイド部材16が有ることにより安定するためである。
【0046】
なお、上記実施形態では2台のダイ12,14からは同じ塗工液を吐出したが、これに代えて異なる塗工液をそれぞれ塗工してもよい。
【0047】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10・・・両面塗工装置、12・・・上ダイ、14・・・下ダイ、16・・・ガイド部材、26・・・吐出口、40・・・ガイド本体、42・・・空気吹き出し口、44・・・閉塞板、46・・・空気拡大空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流へ走行する長尺状のウエブの一方の面に第1の塗工液を塗工する第1のダイと、
前記ウエブの他方の面に第2の塗工液を塗工する第2のダイと、
前記ウエブの一方の面側であって、前記第1のダイの吐出口の上流側から前記吐出口まで延びたガイド部材と、
を有し、
前記ガイド部材は、前記ウエブの一方の面に、多孔質材料よりなる空気吹き出し部を介して空気を吹き出す、
ことを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記ウエブは横方向に走行し、
前記第1のダイは、前記ウエブの下面に配されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記第1のダイと前記第2のダイとが、上下対称に配されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記第1のダイが、前記第2のダイよりも下流側に配されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の塗工装置。
【請求項5】
前記ウエブは縦方向に走行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
【請求項6】
前記第1のダイと前記第2のダイとが、左右対称に配されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の塗工装置。
【請求項7】
前記ガイド部材は、板状の空気吹き出し部と、前記空気供給口と、前記空気供給口と前記空気吹き出し部の間に設けられた空気拡大空間とを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の塗工装置。
【請求項8】
前記第1のダイと前記第2のダイとは、前記第1の塗工液と前記第2の塗工液とを間欠塗工する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の塗工装置。
【請求項9】
前記第1のダイと前記第2のダイとは、前記第1の塗工液と前記第2の塗工液とを連続塗工する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の塗工装置。
【請求項10】
前記多孔質材料は、セラミック又はアルミ系材料である、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−107053(P2013−107053A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255295(P2011−255295)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000240341)株式会社ヒラノテクシード (58)
【Fターム(参考)】