説明

中空パネルの製造方法及び中空パネル

【課題】従来よりも中空孔同士の間隔が狭く、中空率が高くて軽量化された中空パネルを容易に得ることができる中空パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】成形材料1を押出成形することによって複数の中空孔2を有する中空パネルAを製造する方法に関する。成形材料1として、下記のように定義されるプランジャー値が0.18MPa以下のものを用いる。プランジャー値とは、内径16mmのシリンダー3と、シリンダー3内を摺動するプランジャー4と、シリンダー3の先端に設けられる内径3mmのノズル5とを備えて形成される容量2.6×10mmのプランジャー試験機Bを用いる場合において、シリンダー3内に充填された成形材料1がノズル5から出始めるときにプランジャー4に加えられている圧力をいう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根材、外壁材等の外装材、間仕切り、床、天井材等の内装材として用いられる、複数の中空孔を有する中空パネルをセメント系成形材料等の成形材料を押出成形することによって製造する方法及びこの方法を使用して得られる中空パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋根材、外壁材等の外装材、間仕切り、床、天井材等の内装材として用いられるパネルDは、セメント、補強繊維、増粘剤を混合して粘土状にした成形材料を押出成形することによって製造されている。このようなパネルDは建築物に多く使用されるので、建築物にかかる重量負荷を少しでも軽減する目的で図7のようにパネルDの内部に複数の中空孔2を設けることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、中空孔2を複数設けることによって、中実のものよりも軽量化を図ることができるものである。
【特許文献1】特開平5−43292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来用いられている成形材料は粘性が高いものであるので、押出成形金型の狭い隙間に行き渡らせるには高い押出圧力が必要とされ、中空孔同士の間隔は3mm程度にするのが限界であり、中空率は25%程度であった。このように中空孔同士の間隔には限界があるので、中空孔を大きくして中空率を上げることが考えられるが、この場合には保形性を確保する必要があるので、成形材料の比重や硬さを高めなければならないが、結局このことにより更なる軽量化は望めないものであった。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、従来よりも中空孔同士の間隔が狭く、中空率が高くて軽量化された中空パネルを容易に得ることができる中空パネルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る中空パネルの製造方法は、成形材料1を押出成形することによって製造された複数の中空孔2を有する中空パネルAであって、成形材料1として、下記のように定義されるプランジャー値が0.18MPa以下のものを用いることを特徴とするものである。
【0006】
プランジャー値とは、内径16mmのシリンダー3と、シリンダー3内を摺動するプランジャー4と、シリンダー3の先端に設けられる内径3mmのノズル5とを備えて形成される容量2.6×10mmのプランジャー試験機Bを用いる場合において、シリンダー3内に充填された成形材料1がノズル5から出始めるときにプランジャー4に加えられている圧力をいう。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1において、乳化剤、スチレンモノマー、水、架橋剤、重合開始剤を混合して逆エマルジョンを調製し、この逆エマルジョンにセメント、軽量化材、補強繊維を加えて混合して得られたものを成形材料1として用いることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3に係る中空パネルは、請求項1又は2に記載の方法を使用して製造された中空パネルAであって、中空率が40〜50%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に係る中空パネルの製造方法によれば、成形材料のプランジャー値が0.18MPa以下であることによって、高い押出圧力を必要とせず、低い押出圧力であっても、押出成形金型の狭い隙間に成形材料を行き渡らせることができ、従来よりも中空孔同士の間隔が狭く、中空率が高くて軽量化された中空パネルを容易に得ることができるものである。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、プランジャー値が0.18MPa以下である成形材料を容易に調製することができるものである。
【0011】
本発明の請求項3に係る中空パネルによれば、従来よりも断熱性及び遮音性が向上すると共に、更なる軽量化を図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
本発明に係る中空パネルの製造方法は、成形材料1を押出成形することによって、図6に示すような複数の中空孔2を有する中空パネルAを製造するものである。
【0014】
本発明において成形材料1としては、次のように定義されるプランジャー値が0.18MPa以下のものを用いる。すなわち、プランジャー値とは、成形材料1の流動性の指標となるものであり、図1に示すように、内径16mmのシリンダー3と、シリンダー3内を摺動するプランジャー4と、シリンダー3の先端に設けられる内径3mmのノズル5とを備えて形成される容量2.6×10mmのプランジャー試験機Bを用いる場合において、シリンダー3内に充填された成形材料1がノズル5から出始めるときにプランジャー4に加えられている圧力をいう。そして本発明によれば、このプランジャー値が0.18MPa以下であることによって、押出成形の際に高い押出圧力を必要とせず、低い押出圧力であっても、押出成形金型Cの狭い隙間に成形材料1を行き渡らせることができ、従来よりも中空孔2同士の間隔が狭く、中空率が高くて軽量化された中空パネルAを容易に得ることができるものである。具体的には中空孔2同士の間隔は1.5mmにまで狭くすることが可能であり、これにより中空孔2を大きくして中空率を上げることもできる。しかし、成形材料1のプランジャー値が0.18MPaを超えるような場合には、従来のように押出成形金型Cの狭い隙間に行き渡らせるには高い押出圧力が必要とされ、中空孔2同士の間隔は3mm程度にするのが限界である。なお、成形材料1のプランジャー値の下限は0.05MPaである。
【0015】
上記のような成形材料1としては、次のようなセメント系成形材料(セメントを主成分とする水硬性材料)を用いることができる。すなわち、このセメント系成形材料は、まず、乳化剤、スチレンモノマー、水、架橋剤、重合開始剤を混合して逆エマルジョン(W/Oエマルジョン)を調製し、次に、この逆エマルジョンにセメント、軽量化材、補強繊維を加えて強制攪拌機又は連続混合機で混合することによって得ることができる。
【0016】
ここで、乳化剤としては、例えば、ヤシ油系乳化剤、オレイン酸系乳化剤、ソルビタンセスキオレート、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ジエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ジグリセロールモノオレート等の非イオン性界面活性剤、各種アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を用いることができる。
【0017】
また、架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート等を用いることができる。
【0018】
また、重合開始剤としては、有機過酸化物や過硫酸塩等の重合開始剤、例えば、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等を用いることができる。
【0019】
そして、逆エマルジョン全量に対して、乳化剤の含有量は2.0〜5.0重量%、スチレンモノマーの含有量は8.0〜17.0重量%、水の含有量は77.0〜89.0重量%、架橋剤の含有量は0.04〜0.6重量%、重合開始剤の含有量は0.04〜0.6重量%に設定することができる。
【0020】
また、セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、アルミナセメント、ハイアルミナセメント、スラグセメント、早強セメント、シリカヒューム等を用いることができる。
【0021】
また、軽量化材としては、例えば、フライアッシュバルーン、パーライト、シラスバルーン等のほか、発泡ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン発泡体、アクリロニトリル系発泡体等の有機発泡体等を用いることができる。
【0022】
また、補強繊維としては、例えば、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維等を用いることができる。
【0023】
そして、セメント系成形材料全量に対して、セメントの含有量は70〜98重量%、軽量化材の含有量は0.3〜30重量%、補強繊維の含有量は1.0〜2.0重量%に設定することができる。
【0024】
上記のような成形材料1であれば、プランジャー値を容易に0.18MPa以下に調整することができる。すなわち、まず少量の成形材料1を試験的に調製し、図1に示すようなプランジャー試験機Bを用いてこの成形材料1のプランジャー値を測定する。そしてプランジャー値が0.18MPa以下であれば、試験的に調製した成形材料1と同一の条件で調製した成形材料1を中空パネルAの製造に用いることができる。一方、プランジャー値が0.18MPaを超えていれば、成形材料1を調製し直し、再度プランジャー値を測定し、プランジャー値が0.18MPa以下になるまでこの操作を繰り返す。ここで、成形材料1の調製に使用される成分は、逆エマルジョン(乳化剤、スチレンモノマー、水、架橋剤、重合開始剤)、セメント、軽量化材、補強繊維と明確にされているので、各成分の含有量を適宜調節すればよく、このような作業には手間がかからないものである。
【0025】
次に、成形材料1を押出成形する際に用いられる押出成形金型Cについて説明する。図2に示す押出成形金型Cは、一対の分割型15にて構成される本体型6と、支持体9及び突部10を有する中子型7とで、形成される。
【0026】
まず、中子型7について、図3,4を示して説明する。この中子型7は、支持体9の一端から複数の突部10を平行並列に突設して構成されている。図示の突部10は円柱状であるが、この突部10は中空パネルAに形成される中空孔2の形状に応じて六角柱状等の他の適宜の形状に形成される。支持体9に対する突部10の突出方向は、成形材料1の流通方向と一致する。複数の突部10は間隔をあけて平行並列に一列に設けられ、かつこの突部10の列がその並び方向と直交する方向に並んで設けられている。隣り合う突部10の列間では、一方の列における突部10の間に他方の列における突部10が配置されるようにして、複数の突部10が千鳥状に配列している。各突部10は円柱状に形成されており、その端部には直径が基部側よりも大きくなった大径部22が形成されている。各突部10の基部側と大径部22との間には、直径が徐々に大きくなる拡径部23が形成されている。また、全ての突部10の端面は面一に形成されている。
【0027】
支持体9の突部10とは反対側の端部には、分岐部11が形成されている。分岐部11は、段重ね方向に隣り合う一対の突部10の列ごとに設けられている。以下、「列方向」とは前記突部10の列方向をいい、「段重ね方向」とは前記突部10の段重ね方向をいうものとする。この分岐部11は、支持体9における前記突部10の列の間に相当する位置に形成され、かつ突部10の列方向の全体に亘って設けられている。分岐部11は突部10とは反対側に突出するように形成されており、その突出方向側ほど厚みが薄くなるように形成されている。またこの分岐部11の突出方向の端部は凸曲面に形成されている。
【0028】
上記分岐部11からは、各突部10を支持する複数の支持部17が突設されている。支持部17は各分岐部11につき二列設けられている。各列の支持部17は突部10の列に合致するように間隔をあけて設けられており、かつ一方の列における支持部17の間に他方の列の支持部17が配置され、突部10と同様の千鳥状に配列している。各支持部17の分岐部11に対する段重ね方向の外方の面は各突部10の突出方向と平行な面に形成されている。また、各支持部17の分岐部11に対する段重ね方向の内方には、先端部分を除き、基部側ほど厚みが厚くなるテーパ部18が一体に設けられている。このテーパ部18はその両側の二つの支持部17とも一体となっている。これら各支持部17の端面にそれぞれ突部10が突設されている。
【0029】
各列における隣り合う支持部17間には分岐路12が形成されている。この分岐路12は突部10側と分岐部11側とにそれぞれ連通し、かつその内面が支持部17及びテーパ部18の外面にて形成されている。各分岐路12の分岐部11側の開口は、分岐部11の段重ね方向の両側部にそれぞれ開口し、分岐部11の先端よりも突部10側に入り込んだ位置に形成される。このとき複数の支持部17は千鳥状に配列しているため、列方向に並ぶ各支持部17間に分岐路12が設けられると共に、段重ね方向に並ぶ各支持部17間にも分岐路12が設けられる。このとき、支持体9の段重ね方向の両端面においては、複数の支持部17が一列に並んで設けられると共に、各支持部17の間に分岐路12が、支持体9の前記端面で開口する凹部14として形成されている。
【0030】
このような中子型7は、一又は複数列の突部10を有する複数の分割体13にて構成することができる。図5に示す例は、分割体13は支持体9を分割した支持分体19と、この支持分体19に突設された二列の突部10にて構成されている。支持分体19は支持体9を隣り合う分岐部11間で列方向と平行な面で分割した形状を有し、一つの分岐部11を有すると共に二列の支持部17を有している。各列内の支持部17の間には、支持部17側及び突部10側に開口すると共に支持部17の列の段重ね方向の外方に開口する凹部14が設けられており、この凹部14が分岐路12を構成する。そして、複数の支持部17の端面に突部10が突設されている。
【0031】
このような分割体13を支持体9の段重ね方向に適宜の個数重ねることにより、図3,4に示すような中子型7を形成することができる。このとき、隣り合って重ねられる分割体13の対向面では、一方の分割体13の凹部14の位置と他方の分割体13の支持部17の位置とが重なると共に各支持部17の列方向の縁部同士が当接するように配置され、凹部14の外面の開口が支持部17にて閉塞されるようになっている。なお、この分割体13のみで中子型7を形成してもよい。
【0032】
次に、本体型6について説明する。本体型6は内部に成形材料1が流通する流路8が形成され、かつこの流路8内に上記中子型7が配設される。
【0033】
本体型6は一対の分割型15にて構成することができる。この分割型15は、段重ね方向に分割可能なものであり、重ねられた分割型15の間に成形材料1の流路8が形成される。
【0034】
この本体型6の流路8の下流側端部は本体型6の端面で開口し、この開口が成形材料1の押出口20となっている。この流路8内に上記中子型7が、押出口20の開口と各突部10の端面とが面一になるように配置される。
【0035】
各分割型15の内面、すなわち上記流路8の内面を構成する面には、支持体9の段重ね方向の各端面に当接することによりこの支持体9を流路8内で挟持して支持する凸部16が設けられている。この凸部16は流路8における成形材料1の流通方向に沿った複数の凸条として設けられており、支持体9の配置位置に合致する位置に設けられている。また、各凸部16は、支持体9の段重ね方向の端面における分岐路12を構成する各凹部14の開口と合致する位置に設けられ、凸部16の両側の縁部が前記凹部14の外縁、すなわち凹部14両側の支持部17の縁部と当接することで、前記凹部14の外面の開口を閉塞している。このため、凸部16にて支持体9を支持すると共に、この凸部16の間には成形材料1が流通可能な分岐路12(12a)が形成される。このため、支持体9の段重ね方向の端部に位置する支持部17の更に段重ね方向の外方にも分岐路12が形成される。ここで、図示の例では中子型7における突部10の列が偶数列(四列)の場合の例を示し、この場合、図示のように一方の分割型15における隣り合う凸部16の間に形成される分岐路12(12a)が、他方の分割型15における凸部16が対向するように、これらの凸部16が配置される。
【0036】
また本体型6には流路8における支持体9の配置位置よりも下流側、すなわち突部10が配置されている箇所では、各分割型15の内面の上流側に下流側に向けて流路8を徐々に狭くするテーパ21が設けられており、このテーパ21よりも下流側では前記内面は突部10の突出方向に沿った面となって、押出口20までの流路8の広さが均一となっている。
【0037】
次に、このように形成される押出成形金型Cを用いた中空パネルAの製造方法の一例について説明する。
【0038】
上記のような押出成形金型Cを適宜の押出成形装置に設け、成形材料1に押出圧力をかけて本体型6内の流路8へ供給し、押出口20から押し出して中空パネルAを形成する。事前に成形材料1のプランジャー値は0.18MPa以下であることが確認されているので、押出成形の際には高い押出圧力を必要とせず、低い押出圧力であっても、押出成形金型Cの狭い隙間に成形材料1を行き渡らせることができるものである。
【0039】
この押出成形において、本体型6内の中子型7を成形材料1が通過する際には、成形材料1はまず分岐部11に到達し、この分岐部11によって成形材料1がかき分けられてその流通が分岐部11から段重ね方向の両側に分岐する。このとき、分岐部11の端部は上記のように凸曲面として形成されていることから、前記成形材料1の流通の分岐がスムーズに行われる。
【0040】
次に、成形材料1は分岐路12の上流側の開口に到達し、各分岐路12に成形材料1が流入することによって、成形材料1の流通が各列内で隣り合う各突部10間に向けて分岐する。
【0041】
次に、上記分岐された成形材料1は支持部17を通過し、各分岐路12の下流側開口から導出される。この成形材料1は、流路8内の突部10の間の隙間を、突部10の突出方向に沿って流通する。このため、各突部10の周囲には、突部10の列方向の両側と突部10の段重ね方向の両側の四ヶ所において、成形材料1が突部10の突出方向に沿って並列に流れることとなる。このように突部10の周囲を成形材料1が流通する間に、突部10の間に成形材料1が十分に充填され、かつそれぞれ異なる分岐路12から導出された成形材料1間の界面が馴染み、成形材料1が一体化する。
【0042】
そして、この成形材料1が押出口20から押し出されることにより、図6に示すような中空孔2を有する中空パネルAが形成されるものである。図6(a)は本実施形態のように円柱状の突部10を適用する場合に得られる中空パネルAを示し、断面円形状の中空孔2を有する。また、突部10として六角形状のものを適用する場合には、図6(b)に示すような、断面六角形状の中空孔2を有する中空パネルAを得ることができ、その他適宜の形状の突部10を採用することで、所望の形状の中空孔2を有する中空パネルAを得ることができる。いずれの中空パネルAであっても、中空孔2同士の間隔は1.5mmにまで狭くすることが可能であり、これにより中空孔2を大きくして中空率を上げることもできる。具体的には、中空率は40〜50%であることが好ましい。中空率がこの範囲であると、従来よりも断熱性及び遮音性が向上すると共に、更なる軽量化を図ることができるものである。しかし、中空率が40%未満であると、このような効果を十分に得ることができないおそれがあり、逆に、中空率が50%を超えると、中空パネルAの強度が低下し、脆弱になるおそれがある。なお、中空率とは、中空孔2がないと仮定したときの中空パネルAの全体積に対する中空孔2の全体積の割合をいう。
【0043】
得られた中空パネルAは、特にセメント系成形材料にて形成する場合には、必要に応じて養生硬化させた後、表面や端面の仕上げ加工を行い、所定の寸法に切断される。なお、押出成形の際に中空パネルAの表面側や裏面側を厚めに形成し、後で模様を形成することができる層を設けておいてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0045】
(実施例1)
まず、乳化剤としてオレイン酸系乳化剤を3.0重量%、スチレンモノマーを10.0重量%、水を86.7重量%、架橋剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレートを0.1重量%、重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを0.2重量%混合して逆エマルジョンを調製した。
【0046】
次に、この逆エマルジョン38.3重量%に、セメントとして普通ポルトランドセメントを60.0重量%、軽量化材としてアクリロニトリル系発泡体を0.4重量%、補強繊維としてポリプロピレン繊維を1.3重量%加えて強制攪拌機で混合することによって、セメント系成形材料(ポリマー複合セメント系A)を得た。
【0047】
そして、図1に示すようなプランジャー試験機Bを用いてこのセメント系成形材料のプランジャー値を測定した。その結果を下記[表1]に示す。
【0048】
(実施例2)
まず、乳化剤としてオレイン酸系乳化剤を4.1重量%、スチレンモノマーを13.6重量%、水を82.1重量%、架橋剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレートを0.1重量%、重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを0.1重量%混合して逆エマルジョンを調製した。
【0049】
次に、この逆エマルジョン28.4重量%に、セメントとして普通ポルトランドセメントを69.6重量%、軽量化材としてアクリロニトリル系発泡体を0.5重量%、補強繊維としてポリプロピレン繊維を1.5重量%加えて強制攪拌機で混合することによって、セメント系成形材料(ポリマー複合セメント系B)を得た。
【0050】
そして、図1に示すようなプランジャー試験機Bを用いてこのセメント系成形材料のプランジャー値を測定した。その結果を下記[表1]に示す。
【0051】
(比較例)
無機フィラーを含むセメントを63.2重量%、軽量化材としてアクリロニトリル系発泡体を0.2重量%、パルプを2.3重量%、増粘剤を1.0重量%、水を33.3重量%加えて強制攪拌機で混合することによって、セメント系成形材料(繊維混入セメント系)を得た。
【0052】
そして、図1に示すようなプランジャー試験機Bを用いてこのセメント系成形材料のプランジャー値を測定した。その結果を下記[表1]に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
上記[表1]にみられるように、実施例1,2のセメント系成形材料のプランジャー値は、比較例のセメント系成形材料のプランジャー値に比べて、約1/2〜1/3と非常に小さく、流動性に優れていることが確認される。
【0055】
次に、図2に示すような押出成形金型Cを用いて各セメント系成形材料を押出成形したところ、実施例1,2についてはいずれも、図6に示すような中空パネルAを得ることができたが、比較例については、図6に示すような中空パネルAを得ることはできなかった。実施例1の中空パネルAの中空孔2同士の間隔は1.5mm、中空率は45%であり、実施例2の中空パネルAの中空孔2同士の間隔は2mm、中空率は35%であった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】プランジャー試験機の一例を示す断面図である。
【図2】押出成形金型の一例を示すものであり、(a)は側方から視た断面図、(b)は(a)のイ−イ断面図である。
【図3】同上の中子型を示すものであり、(a)は斜め前方からの斜視図、(b)は斜め後方からの斜視図である。
【図4】同上の中子型を示すものであり、(a)は一部省略した斜め前方からの斜視図、(b)は正面図である。
【図5】同上の中子型の分割体の一例を示すものであり、(a)は側面図、(b)は一部省略した斜め前方からの斜視図、(c)は斜め後方からの斜視図である。
【図6】(a)(b)は本発明の中空パネルの例を示す一部破断した斜視図である。
【図7】従来の中空パネルの例を示す一部破断した斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
A 中空パネル
B プランジャー試験機
1 成形材料
2 中空孔
3 シリンダー
4 プランジャー
5 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を押出成形することによって複数の中空孔を有する中空パネルを製造する方法であって、成形材料として、下記のように定義されるプランジャー値が0.18MPa以下のものを用いることを特徴とする中空パネルの製造方法。
プランジャー値とは、内径16mmのシリンダーと、シリンダー内を摺動するプランジャーと、シリンダーの先端に設けられる内径3mmのノズルとを備えて形成される容量2.6×10mmのプランジャー試験機を用いる場合において、シリンダー内に充填された成形材料がノズルから出始めるときにプランジャーに加えられている圧力をいう。
【請求項2】
乳化剤、スチレンモノマー、水、架橋剤、重合開始剤を混合して逆エマルジョンを調製し、この逆エマルジョンにセメント、軽量化材、補強繊維を加えて混合して得られたものを成形材料として用いることを特徴とする請求項1に記載の中空パネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法を使用して製造された中空パネルであって、中空率が40〜50%であることを特徴とする中空パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−137245(P2008−137245A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324965(P2006−324965)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】