説明

中空容器の製造方法及び中空容器

【課題】ポリオレフィン(A)、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)、及び変性ポリを溶融混合してなる樹脂組成物からなるバリア層を有する中空容器を製造する方法、および得られる中空容器を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン(A)、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)、及び変性ポリオレフィン(C)を溶融混合してなる樹脂組成物からなるバリア層を有する中空容器の製造方法であって、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットが2.0〜5.0mmの大きさの粒状物であり、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットについてDSC測定で観測される結晶化由来のピークが下記条件を満足するものを利用することを特徴とする中空容器の製造方法。H<H/10・・・式(1)1回目昇温時に観測される結晶化ピーク熱量=H(J/g)1回目昇温完了直後に急冷、再度昇温した際に観測される結晶化ピーク熱量=H(J/g)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性に優れた成形体の製造方法および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料保存用容器として、軽量化、防錆処理不要化、形状の自由度向上、加工工数の削減や製造の全自動化などの面から、ブロー成形などにより製造された樹脂製燃料用容器が注目され、金属製燃料用容器からの代替が進んでいる。
【0003】
その多くは高密度ポリエチレン(以下、HDPEと略する場合がある)を利用したものであり、機械強度、成形加工性、および経済性に優れるものの、容器内部に充填される燃料に対するバリア性能に劣る。一方樹脂製容器に対する燃料透過量規制は環境汚染の観点から年々厳しくなっており、HDPEからなる容器では対応が困難となっており、燃料バリア性を高めるための技術が強く望まれている。
【0004】
HDPE容器の燃料バリア性を高める方法の1つとして、HDPE容器の内面をフロン処理やスルホン処理する方法が知られている(特許文献1参照)。この方法は従来から生産されていたHDPE容器の製造設備をそのまま利用できるメリットを有するものの、フッ素処理時の有害ガス取扱に対する安全性の確保が必要であったり、処理後の回収方法が問題となる上に、フッ素化処理後の品質検査が難しい等のデメリットを有する。
【0005】
HDPE容器に、中間層としてエチレンビニルアルコール共重合樹脂(以下、EVOHと略することがある)の様なバリア性樹脂を積層して多層構造とする方法が知られている(特許文献2、3参照)。この方法によれば従来のHDPE容器よりも優れたバリア性を付与することができ、かつ積層したEVOH層の厚みによってその容器のバリア性能を制御することができるため、所望のバリア性を有する容器をつくることが容易である。しかしながら、この方法によるとこれまで利用してきたHDPE容器の製造設備では対応することができず、HDPE、接着性樹脂、EVOHそれぞれを押し出すために少なくとも3台以上の押出機を設けた多層ブロー装置を導入する必要がある。またダイレクトブロー法により製造された容器には必ずピンチオフ部と称される、金型でパリソンを食い切った部位が残るが、上述の多層容器においてはそのピンチオフ部の断面に内層HDPEの合わせ面ができるため、EVOH層が切断されている部位が生じる。肉厚の薄い容器であれば食い切り部の内層HDPE合わせ面の厚みは非常に薄くなり、事実上問題は少ないものの、燃料容器の様に高い強度を要求される容器においては、一般に内層HDPEの厚みは厚めに設定されているため、その合わせ面を通じて燃料が容易に透過してしまう欠点があった。
【0006】
さらにHDPE容器の燃料バリア性を高める方法として、ナイロン6等のポリアミド樹脂を接着性樹脂と共にHDPEとブレンドし、その組成物から単層容器を製造する方法が知られている(特許文献4、5参照)。この方法によれば、従来のHDPE容器を製造するための設備をほぼ流用することができる上に、ポリアミド樹脂を組成物で薄片状に分散させることで多層構造に近いバリア性を付与することができる。また容器を構成する樹脂材料と、容器を製造した時に発生する端材やパージくずを構成する樹脂材料は同じであることから、フッ素化処理容器と異なり、粉砕機にて粉砕しリサイクル材として押出機に投入し、容器を構成する材料の一つとして再利用することが可能である。
またこの方法を利用し、前述した多層容器の内層HDPEに代えて、上記ポリアミド樹脂、接着性樹脂およびHDPEをブレンドした組成物を適用することで、ピンチオフ部の内層HDPE合わせ面からの燃料透過を軽減することもできる。
【0007】
ポリアミド樹脂の中でも、とりわけメタキシリレンジアミンとアジピン酸を主成分とするポリメタキシリレンアジパミドは酸素や二酸化炭素等のガスバリア性に優れ、かつ他のポリアミドと比較して各種有機溶剤に対する耐性にも優れた材料であり、ナイロン6を利用した容器よりも優れたバリア性を発揮する容器を容易に得ることができる(特許文献6、7参照)。しかしながらポリメタキシリレンアジパミドはHDPE容器を製造する加工温度よりも融点が高くなることが多いため、ポリメタキシリレンアジパミドを組成物中に薄片状に分散させながら、かつ溶融加工中のHDPEの劣化を防ぐことを両立させるための成形加工条件はその範囲が狭いものとなる傾向がある。よって押出機温度や押出速度等の成形加工条件が多少変動すると、ポリメタキシリレンアジパミドの組成物中での分散状態が変化し、得られる中空容器のバリア性能がばらつくことがあった。また安定した性能を発揮する製品を製造するには、製造時の成形条件管理はもちろんのこと、得られた製品の品質を細かく検査し、安定した性能を発揮する製品が得られているかについて成形を行うたびに確認しなければならないという問題があり、その生産性は良いものとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭60−6735号公報
【特許文献2】特開平6−328634号公報
【特許文献3】特開平9−22904号公報
【特許文献4】特開昭55−121017号公報
【特許文献5】特開昭58−209562号公報
【特許文献6】特開2005−206806号公報
【特許文献7】特開2006−177208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポリオレフィン(A)、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)、及び変性ポリを溶融混合してなる樹脂組成物からなるバリア層を有する中空容器を安定して製造する方法、およびその製造方法によって得られる中空容器を提供するものである。
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、成形に供するメタキシリレン基含有ポリアミド(B)について、特定の形状や大きさ、結晶化度合いを有するペレットを原料として利用することにより、ロット内及びロット間においてバラツキのない優れたバリア性能を発揮する中空容器が生産可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、ポリオレフィン(A)40〜90重量%、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)3〜30重量%、及び変性ポリオレフィン(C)3〜50重量%を溶融混合してなる樹脂組成物からなるバリア層を有する中空容器の製造方法であって、
(1)メタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットが2.0〜5.0mmの大きさの粒状物であり、
(2)メタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットについてDSC測定で観測される結晶化由来のピークが下記条件を満足するものを利用することを特徴とする中空容器の製造方法に関する。
<H/10 ・・・ 式(1)
1回目昇温時に観測される結晶化ピーク熱量=H(J/g)
1回目昇温完了直後に急冷、再度昇温した際に観測される結晶化ピーク熱量=H(J/g)
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法で得られる成形体は、優れたバリア性能を有し、かつロット内またはロット間の品質のバラツキが少ないものであり、燃料、薬品、農薬、飲料等の容器として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のペレットの形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、まずはポリオレフィン(A)について説明する。
【0015】
本発明の中空容器の製造方法は主にダイレクトブロー法によることから、使用されるポリオレフィンは成形品の偏肉原因となるパリソンのドローダウンを防止するためにも溶融粘度の高いものを使用することが好ましい。具体的には、メルトフローレート(MFR)が、1g/10分(荷重:21.6kgf、温度:190℃)以上、かつ2g/10分(荷重:2.16kgf、温度:190℃)以下の範囲にあるものが好ましい。より好ましくは1.5g/10分(荷重:21.6kgf、温度:190℃)以上、かつ1g/10分(荷重:2.16kgf、温度:190℃)以下の範囲にあるものである。さらに好ましくは2g/10分(荷重:21.6kgf、温度:190℃)以上、かつ0.8g/10分(荷重:2.16kgf、温度:190℃)以下の範囲にあるものである。上述の範囲にあるMFRを示すポリオレフィンを利用することにより、ドローダウンが小さく、肉厚が制御された容器を容易に得ることができ、さらにメタキシリレン基含有ポリアミド(B)が樹脂組成物中に薄片状に分散し易くなるため、バリア性に優れたものとすることができる。
【0016】
次にメタキシリレン基含有ポリアミド(B)について説明する。
本発明のメタキシリレン基含有ポリアミド(B)は、成形体のバリア性能を高める効果を付与する材料である。メタキシリレン基含有ポリアミドを構成するジアミン単位は、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む。メタキシリレンジアミンをジアミン単位の主成分とすることで得られるポリアミドのガスバリア性を効率良く高めることができる。なお、メタキシリレンジアミン以外に使用できるジアミンとしては、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
メタキシリレン基含有ポリアミドを構成するジカルボン酸単位は、α,ω−脂肪族ジカルボン酸を50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上含む。α,ω−脂肪族ジカルボン酸の含有量を70モル%以上とすることで、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の結晶性の過度の低下を避けることができる。α,ω−脂肪族ジカルボン酸としてはスベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等が挙げられるが、良好なガスバリア性と結晶性を保持する性能に優れることから、アジピン酸やセバシン酸が好ましく用いられる。α,ω−脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸単位としては、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸や1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。特にイソフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸はメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の製造時における重縮合反応を阻害することなく、バリア性に優れるポリアミドを容易に得ることができるので好ましい。
【0018】
また前記のジアミン単位、ジカルボン酸単位以外にも、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)を構成する単位として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等を共重合単位として使用できる。
【0019】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)は溶融重縮合(溶融重合)法により製造される。例えばジアミンとジカルボン酸からなるナイロン塩を水の存在下に、加圧下で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法がある。また、ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態に保つために、ジアミンをジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応温度が、生成するオリゴアミドおよびポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
【0020】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の重縮合系内にはアミド化反応を促進する効果や、重縮合時の着色を防止する効果を得るために、リン原子含有化合物を添加しても良い、リン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸エチル、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等が挙げられる。これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩がアミド化反応を促進する効果が高く、かつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましいが、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
【0021】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の重縮合系内に添加するリン原子含有化合物の添加量は、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)中のリン原子濃度換算で1〜500ppmであることが好ましく、より好ましくは5〜450ppmであり、さらに好ましくは10〜400ppmである。上述の範囲内にリン原子化合物の添加量を設定することで重縮合中のキシリレン基含有ポリアミドの着色を防止することができる。
【0022】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の着色を防止するためにはリン原子含有化合物を十分な量存在させる必要があるが、場合によってはキシリレン基含有ポリアミド(B)のゲル化を促進する恐れがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を共存させることが好ましい。例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属/アルカリ土類金属水酸化物や、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム等のアルカリ金属/アルカリ土類金属酢酸塩等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の重縮合系内にアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添加する場合、該化合物のモル数をリン原子含有化合物のモル数で除した値が0.5〜2.0となるようにすることが好ましく、より好ましくは0.6〜1.8であり、さらに好ましくは0.7〜1.5である。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の添加量を上述の範囲とすることでリン原子含有化合物によるアミド化反応促進効果を得つつゲルの生成を抑制することが可能となる。
【0023】
溶融重縮合で得られたメタキシリレン基含有ポリアミド(B)は一旦取り出され、ペレット化された後、乾燥して使用される。また更に重合度を高めるために固相重合しても良い。乾燥乃至固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリアミドの固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回分式加熱装置が、系内を密閉化でき、かつ着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
【0024】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の重合度の指標としてはいくつかあるが、相対粘度が一般的に使われるものである。キシリレン基含有ポリアミド(B)において好ましい相対粘度は1.8〜4.2であり、より好ましくは2.1〜4.1、さらに好ましくは2.3〜4.0である。メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の相対粘度を上述の範囲に設定することで成形加工が安定し、外観の良好な成形品を得ることができる。尚、ここで言う相対粘度は、ポリアミド1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t0 ・・・(イ)
【0025】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)には、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、滑剤、ゲル化防止剤等の添加剤、層状珪酸塩等のクレイやナノフィラー等を加えることもできる。またキシリレン基含有ポリアミド(B)の改質を目的に、必要に応じてナイロン6やナイロン66、芳香族ジカルボン酸をモノマーとした非晶性ナイロン等の各種ポリアミドやその変性樹脂、ポリオレフィンやその変性樹脂、スチレンを骨格内に有するエラストマー等を添加することができるが、以上に示したものに限定されることなく、種々の材料を混合しても良い。
【0026】
次に変性ポリオレフィン(C)について説明する。
本発明で用いられる変性ポリオレフィンは、前述のポリオレフィンを不飽和カルボン酸またはその無水物でグラフト変性したもので、一般に接着性樹脂として広く用いられているものである。不飽和カルボン酸またはその無水物の具体例として、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロロマレイン酸、ブテニルコハク酸など、およびこれらの酸無水物が挙げられる。中でも、マレイン酸および無水マレイン酸が好ましく用いられる。上記不飽和カルボン酸またはその無水物をポリオレフィンにグラフト共重合して変性ポリオレフィンを得る方法としては、従来公知の種々の方法を用いることができる。例えば、ポリオレフィンを押出機等を用いて溶融させ、グラフトモノマーを添加して共重合させる方法、あるいはポリオレフィンを溶媒に溶解させてグラフトモノマーを添加して共重合させる方法、ポリオレフィンを水懸濁液とした後グラフトモノマーを添加して共重合させる方法等を挙げることができる。
【0027】
本発明で用いられる変性ポリオレフィン(C)は、190℃、2.16kgfの荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、0.01〜5(g/10分、2.16kgf)であることが好ましく、より好ましくは0.02〜4(g/10分、2.16kgf)であり、さらに好ましくは0.03〜3(g/10分、2.16kgf)である。上記範囲内であると、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)が樹脂組成物中で薄片状に分散しやすくなり、かつポリオレフィン(A)とメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の接着強度が良好で強度の高い容器が得られる。
【0028】
本発明におけるポリオレフィン(A)の使用量はポリオレフィン(A)、メタキリシレン基含有ポリアミド(B)及び変性ポリオレフィン(C)の合計100重量%に対して40〜90重量%とすることが好ましく、より好ましくは50〜90重量%であり、さらに好ましくは60〜80重量%である。上述の範囲にポリオレフィン(A)の使用量を設定することによって、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)とブレンドした容器の強度低下を最小限にすることができる。
【0029】
本発明におけるメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の使用量はポリオレフィン(A)、メタキリシレン基含有ポリアミド(B)及び変性ポリオレフィン(C)の合計100重量%に対して3〜30重量%とすることが好ましく、より好ましくは5〜25重量%であり、さらに好ましくは5〜20重量%である。上述の範囲にメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の使用量を設定することによって、容器のバリア性能を効率良く高めることができ、且つ容器の強度低下を実用性のある範囲内に抑制することができる。
【0030】
本発明における変性ポリオレフィン(C)の使用量はポリオレフィン(A)、メタキリシレン基含有ポリアミド(B)及び変性ポリオレフィン(C)の合計100重量%に対して3〜50重量%とすることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%であり、さらに好ましくは10〜30重量%である。上述の範囲に変性ポリオレフィン(C)の使用量を設定することによって、接着性のないポリオレフィン(A)とメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の接着性を向上させることができ、容器の強度を高めることが可能となる。
【0031】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)に対する変性ポリオレフィン(C)の使用量は、重量比で0.8〜5.0倍とすることが好ましく、より好ましくは1.0〜4.5倍であり、さらに好ましくは1.0〜4.0倍である。変性ポリオレフィン(C)の使用量を上述の範囲に設定することで、容器の強度を高めることができる。例えば落下等の衝撃を受けても、樹脂組成物中に分散するポリオレフィン(A)とメタキシリレン基含有ポリアミド(B)との界面における剥離が防止され、容器強度やバリア性を保つことができる。
【0032】
本発明の製造法によって得られる容器にはポリオレフィン(A)、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)及び変性ポリオレフィン(C)の3成分の他に、改質目的で熱可塑性エラストマーやEEA(=エチレン−エチルアクリレート)やEMA(=エチレン−メチルアクリレート)等の各種共重合ポリオレフィン、アイオノマー等を混合しても良く、さらには容器の製造工程において発生したパージくずやバリ、製品とならなかった不良品を粉砕したものを混合しても良い。なお粉砕物の混合率は容器の強度低下を最小限とするため、60重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは50重量%以下であり、さらに好ましくは40重量%以下である。粉砕物を、ポリオレフィン(A)、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)及び変性ポリオレフィン(C)を混合した材料に混合すると、容器に占めるメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の含有率が増加することがある。その際は容器の強度が大きく低下することを防止するためにも、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)に対する変性ポリオレフィン(C)の含有量が重量比で0.8〜5.0倍となるようにすることが好ましく、より好ましくは1.0〜4.5倍、さらに好ましくは1.5〜4.0倍となるよう粉砕物の配合を行う。
【0033】
本発明の中空容器の製造方法はダイレクトブロー法を採用することが好ましい。ダイレクトブロー法は従来公知の方法が適用できる。例えば押出機、アダプター、円筒ダイ、金型、冷却装置、型締め機等からなる装置を用い、押出機にて材料を溶融混練した後、アダプターを経由して円筒ダイから中空のパリソンを押し出し、一定量押し出した後に型締め機にてパリソンを挟んだ後、空気を吹き込みながら冷却して容器を成形する方法が挙げられる。その装置にはアキュームレーターを使用しても良いし、パリソンコントローラーを用いて肉厚が制御されたパリソンを押し出すことで肉厚分布に優れる成形品を製造することもできる。もちろん射出成形によって中空容器の前駆体を成形した後、圧縮空気を吹き込み中空容器に成形する、いわゆるインジェクションストレッチブロー法を採用しても良い。
【0034】
押出機でポリオレフィン(A)、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)及び変性ポリオレフィン(C)を混合した材料(以下、材料と記載することがある)を溶融混合する際に、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)は押出機ヒーターから与えられる熱を吸収して軟化し、次いでスクリュー回転による剪断応力を受けることによって薄片状に引き延ばされ、ついでその薄片がさらに剪断をうけ小さな薄片に切断される(=分散)。さらに樹脂組成物中で薄片状になったメタキシリレン基含有ポリアミド(B)は、スクリュー回転による混合により樹脂組成物全体に均一に散らばる(=分配)。こうして、メタキシレンジアミン(B)が樹脂組成物中に薄片状に均一に分散することで、該樹脂組成物からなる容器はバリア性能を発揮する。
しかし、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)が樹脂組成物中で過度の剪断応力を受けた場合、その分散は薄片状にとどまらず、微細な粒子にまで切断され、その結果バリア性能が低下する。
よって、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)を樹脂組成物中で過度に分散させないような工夫が必要となる。
【0035】
本発明において、バリア性の優れた容器を得るためにはメタキシリレン基含有ポリアミド(B)を樹脂組成物中に薄片状に分散させることが重要である。また性能が安定した容器を常に成形できるようにするためには、成形条件が多少変動しても樹脂組成物中におけるメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の分散状態が変わらないようにすることが必要である。その方法を種々検討した結果、押出加工に供するメタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットの形状や大きさ、またその結晶化度合いが重要であることをつきとめた。
【0036】
本発明において成形加工に供するメタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットの形状及び大きさは2.0〜5.0mmの粒状物であることが必要であり、2.5〜5.0mmであればより好ましく、3.0〜5.0mmであればさらに好ましい。
ここで、ペレットの形状が「粒状物」とは図1のように楕円状、球状、円柱状等を意味する。
また、「ペレットの大きさが2.0〜5.0mmである」とは、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットが楕円状の場合は、長径の長さ、短径の長さの平均がともに2.0〜5.0mmの範囲であることを意味する。またメタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットが球状の場合は、直径の平均が2.0〜5.0mmの範囲であることを、円柱状の場合は直径の直径が2.0〜5.0mmかつ長さの平均が2.0〜5.0mmの範囲であることを意味する。
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットの大きさが2.0mm未満の場合、すなわち、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットが楕円状の場合は短径が、球状の場合は直径が、円柱状の場合は直径あるいは長さが2.0mm未満となると、押出機で材料を溶融混合し押出加工する際に、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)がスクリュー回転による剪断応力によって樹脂組成物中に微細な粒子状になって分散してしまい、容器のバリア性が悪化してしまう原因となりうる。
またペレットの大きさが5.0mmを超えた場合、すなわちメタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットが楕円状の場合は長径が、球状の場合は直径が、円柱状の場合は直径あるいは長さが5.0mmを超えた場合、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)を樹脂組成物中で薄片状に分散するために押出機シリンダー温度設定を高める必要が生じ、その結果HDPEの酸化劣化を招いたり、また場合によってはメタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットが押出機内で十分に軟化せず、未溶融粒となって製品中に混入し、容器の外観悪化や強度低下を招くことがある。
【0037】
本発明において用いるメタキシリレン基含有ポリアミド(B)は結晶性を有するポリアミドであるが、成形に供する前のメタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットの結晶化度合いによって、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレットが押出機のシリンダー内で軟化を開始する位置が変わってくる。詳しく述べると、結晶化が進行している樹脂はその融点近傍になるまでスクリューの剪断応力を受けても変形しない。よってポリアミドが変形を開始する位置はシリンダーの入口から遠い場所となる。逆に結晶化が進行していないメタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレットはガラス転移温度を超えた時点で軟化が始まり、剪断応力を受けると元の形状から変形し始める性質を有する。このため、ポリアミドの変形が始まる位置は、シリンダー内の入口に近いところとなる。
また、本発明では材料を押出機内で溶融混合する際に、剪断応力によって、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)を薄片状に変形させ、樹脂組成物中をそれ以上分散するのを極力抑制し、パリソンとして押し出すことが重要であるから、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の軟化が開始される位置は押出機のシリンダー内でできるだけ一定にしなければならない。
【0038】
本発明では、原料として押出機に供するメタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレットの結晶化度合いを制御することによってロット内及びロット間のバリア性能のバラツキ度合いを解消することに成功した。メタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレットの結晶化度合いは示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。原料として供するメタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレットの1回目昇温時に観測される結晶化に起因する発熱量をH(J/g)、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)を融点以上に昇温して完全に溶解させた後、急冷してほぼ非晶状態にしたのち、再度DSCで昇温測定を行い、観測される結晶化に起因する発熱量をH(J/g)とした場合、下記関係式を満足するメタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレットを原料として使用することで、ペレットの形状や大きさが多少ばらついていても、成形して得られる容器のバリア性能のバラツキを押さえることができることを見出した。
<H/10 ・・・ 式(1)
【0039】
DSCの測定は窒素等の不活性ガス流通下にて室温から10℃/分の昇温速度で融点+50℃まで昇温する方法で行われる。1回目昇温は原料として供するメタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレットを測定用容器に封入し、前記条件にて測定を行う。急冷は1回目昇温が完了した直後に溶融したメタキシリレン基含有ポリアミド(B)が封入された容器を液体窒素に漬けることによって行われる。2回目昇温は上記容器を室温下に置き調温した後、再びDSCにセットし、窒素等の不活性ガス流通下にて室温から10℃/分の昇温速度で融点+50℃まで昇温する方法で行われる。
【0040】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレットの結晶化度が高い程、DSC測定において結晶化に起因する発熱ピークは小さくなり、場合によっては観測されなくなる。逆に結晶化度が小さく非晶状態に近い程、結晶化に起因する発熱ピークは大きくなる。なお、メタキシリレンジアミンとアジピン酸の重縮合物であるポリメタキシリレンアジパミドはその原料の状態にもよるが145〜160℃に結晶化に起因する発熱ピークが観測される。またメタキシリレンジアミン、アジピン酸、イソフタル酸共重合体の結晶化に起因するピークはイソフタル酸量が多い程高温側にシフトする傾向にある。結晶化に起因するピークはガラス転移温度と融点の間で観測される発熱ピークであり、その同定は問題なく行うことができる。
【0041】
本発明において、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の結晶化度について式(1)を満たす状態、すなわちHがHの10分の1すなわち10%未満であることが必要であり、9.5%以下であればより好ましく、9%以下であればさらに好ましい。
式(1)において、HがHの10%未満となっている状態はメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の結晶化度が高い状態であり、この状態で押出機内に供すれば、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の軟化は融点近傍にならないと起こらないので、成形加工条件が同じであれば剪断応力による変形が起こるタイミングが安定し、樹脂組成物中のメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の分散状態も安定化するため、性能のバラツキがない製品を安定して得ることができるようになる。
【0042】
なお、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレットの結晶化度合いが、式(1)を満たさない場合、すなわちHがHの10分の1以上の場合、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)は押出機内でガラス転移温度を超えたあと比較的早めに軟化し始めるため、スクリュー回転の剪断応力により薄片状の状態にとどまらずに微細な粒状になるまで分散してしまい、結果としてバリア性の低い容器となってしまう。
またメタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレットの結晶化度合いがばらついていると、押出機内での軟化開始温度が変動するため、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の樹脂組成物中での分散状態が製品ごとにばらつき、製品の品質が安定しなくなる。
【0043】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)を樹脂組成物中で過度に分散するのを防止するには、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)に加える熱量を極力小さくする、もしくはスクリュー回転数を低下させる方法が挙げられるが、スクリュー回転数を低下させることは容器の生産性を悪化させることに直結することになるため好ましくない。本発明では、生産効率の低下防止と樹脂組成物中でのメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の薄片状の分散状態を確保するため、押出機内で材料を溶融混練する際の樹脂温度がメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の融点±20℃の温度範囲になるように、押出機の温度を調節することが好ましく行われる。より好ましくは融点±15℃の温度範囲であり、さらに好ましくは融点±10℃である。樹脂温度は実際に押出機先端から吐出される樹脂の実温度を測定したものを採用することが好ましいが、押出機先端部に設けられた熱電対によって計測される数字と樹脂の実温度間の差がある程度判明している場合はその数値を参考に調整しても良い。メタキシリレン基含有ポリアミド(B)の融点−20℃を下回る樹脂温度で溶融混練を行うとメタキシリレン基含有ポリアミド(B)が十分軟化せず未溶融のペレットが成形品に混入したり、押出機モーターに過度の負荷がかかることがあるので好ましくない。融点+20℃を超える温度になるとメタキシリレン基含有ポリアミド(B)が完全に融解してスクリュー回転による剪断応力で過度に分散してしまうため、樹脂組成物中での薄片状の分散状態を保てずに微細な粒子状になり、容器のバリア性が大きく低下してしまうため好ましくない。
【0044】
樹脂組成物中でのメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の分散状態に影響するその他の因子として、押出機内に設置するスクリュー構造がある。ダイレクトブロー用押出機には大きな樹脂圧力に対応できるよう、一般に単軸押出機が使用される。単軸押出機に使用するスクリューは通常原料を押出機先端部へ搬送するための供給部、熱を吸収し軟化した樹脂を完全に溶融させるための圧縮部、吐出量を制御するための計量部の3つの部位から構成される。本発明では一般的なスクリューであれば制限無く使用することができるが、樹脂組成物中のメタキシリレン基含有ポリアミド(B)の過度の分散を防止するためには、一般にダルメージやマードックと呼ばれる、混合部位を持たないいわゆるフルフライト型を使用することが好ましい。またフルフライト型でもできるだけ分散・分配効果を抑制するため、圧縮部が比較的短い急圧縮タイプのものがより好ましく用いられる。急圧縮タイプのフルフライトスクリューとしては、スクリュー全体のピッチ数(フライト1回転分が1ピッチ)を100とした場合、供給部が40〜60、圧縮部が5〜20、計量部が30〜50のものを選択することが好ましく、より好ましくは供給部が45〜55、圧縮部が10〜15、供給部が35〜45のものである。なおピッチ間距離については任意で良い。また圧縮部のフライト数を2本にしたダブルフライト式スクリューを使用しても良い。
【0045】
本発明の製造方法により得られる容器は、ポリオレフィン(A)、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)、及び変性ポリオレフィン(C)を溶融混合してなる樹脂組成物からなるバリア層を有する中空容器である。ここで「樹脂組成物からなるバリア層を有する中空容器」とは、上述の樹脂組成物からなる単層の容器であっても良いし、該樹脂組成物を1層以上積層した多層構造であっても良い。多層構造物を構成する層として利用する場合はどの層に用いてもかまわないが、多層構造物の最内層として用いると、ダイレクトブロー法によって得られた物品の場合、ピンチオフ部の合わせ面に本発明の層が適用されるため、ピンチオフ部からの内容物の透過を抑制することができ、従来以上にバリア性能に優れた多層容器を得ることができる。また必要に応じて本発明で得た容器の内面をフッ素処理することでよりバリア性能を高めることもできる。
【0046】
本発明の方法により得られる容器はボトル状、カップ状、トレイ状、タンク状等の容器、チューブ等、様々な形状を採ることができる。収納できる物品としては、ガソリンや灯油、軽油等の燃料、エンジンオイル、ブレーキオイル等の潤滑油、漂白剤、洗剤、シャンプー等の各種サニタリー用品、エタノール、オキシドール等の化学物質、野菜ジュースや乳飲料等の各種飲料、調味料等の様々な物品が挙げられる。本発明により得られる容器は、収納する物品の保存性を高める容器として有効に利用することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例等により本発明を具体的に説明する。尚、実施例等における各種評価は下記の方法によった。
(1)メタキシリレン基含有ポリアミドのペレットサイズ
無作為に取り出した20粒のペレットについて、ノギスを用いて寸法を測定し、最大及び最小寸法の平均値を算出した。
(2)メタキシリレン基含有ポリアミドの融点および結晶化熱量
島津製作所(株)製、示差走査熱量計DSC−60により、以下の条件にて測定した。
標準物質:α−アルミナ
試料量:5〜7mg
<1回目昇温条件>
昇温速度:10℃/分
測定温度範囲:25〜300℃
雰囲気:窒素ガス 50ml/分
<2回目昇温条件>
1回目昇温終了直後にサンプルを取り出し、液体窒素に5秒間漬けて冷却し、室温下で10分放置。
昇温速度:10℃/分
測定温度範囲:25〜300℃
雰囲気:窒素ガス 50ml/分
(3)メタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度
ポリアミド1gを精秤し、96%硫酸100mLに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温層中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また同様の条件で96%硫酸そのものの落下時間(t0)を測定した。tおよびt0から式(イ)により相対年度を算出した。
相対粘度=t/t0 ・・・(イ)
(4)燃料透過量
内容積500mlの容器に、イソオクタン/トルエン/エタノール=45/45/10vol%からなる擬似ガソリンを480cc充填し、口栓開口部をアルミ箔積層フィルムでシールし、キャップを閉めた後、擬似ガソリン封入後の容器総重量を測定した。その後40℃、80%RHの防爆型恒温恒湿機に保管、総重量の経時変化を調査し、容器重量の減少量から擬似ガソリンの透過率(g/day・個)を求めた。
(5)分散状態
TD方向に容器を切断、断面をカッターで平滑にした後、希ヨードチンキ(月島薬品株式会社製)を断面に塗布してポリアミド部分を染色した後、10倍の倍率にて顕微鏡によりポリアミドの分散状態を観察した。
【0048】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレット1の製造
分縮器、全縮器、圧力計、窒素導入口、液体注入口、樹脂抜き出しバルブ、攪拌機を備えた内容量50リットルの加熱ジャケット付きSUS製反応缶に、アジピン酸15000g(102.6mol)、次亜リン酸ナトリウム17.3g(0.16mol)、酢酸ナトリウム12.1g(0.15mol)を仕込み、反応缶内部を窒素置換した。次いで、窒素を10Ml/Min.の速度で流通させながら、常圧下で反応缶を170℃まで加熱し、アジピン酸を完全に融解させた後、メタキシリレンジアミン13980g(102.6mol)の滴下を開始した。メタキシリレンジアミンの滴下中は重縮合により生成する水を系内から除去しつつ、反応系内が固化しないように連続的に昇温した。100分かけてメタキシリレンジアミンを全量滴下し、かつ反応缶内温を250℃まで昇温した。次いで常圧のまま10分かけて内温を260℃に上げた後、内温を260℃に保持しつつアスピレーターと圧力調節器を使用して反応缶内を600mmHgまで10分かけて減圧し、600mmHgで重縮合反応を継続した。攪拌機のトルクを観察しながら十分に樹脂の粘度が高くなった時点で撹拌を止め、窒素により反応缶内を0.2MPaに加圧してから反応缶底の樹脂抜き出しバルブを開けてポリマーをストランド状にして抜き出し、水冷後ペレタイザーにてペレット化して、約25kgのメタキシリレン基含有ポリアミドのペレットを得た。
次いで、真空乾燥機を用い、上記ペレットを140℃で6時間の条件で真空乾燥し、ペレット1を得た。ペレット1のモノマー組成、真空乾燥条件、相対粘度、ペレットの最小及び最大寸法、DSC測定結果を表1に示す。
【0049】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレット2の製造
真空乾燥温度を120℃としたこと以外は、ペレット1の製造方法と同様にしてペレット2を製造した。ペレット2のモノマー組成、真空乾燥条件、相対粘度、ペレットの最小及び最大寸法、DSC測定結果を表1に示す。
【0050】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレット3、4、6、7の製造
ペレット化を行う際のストランドの吐出速度及び引き取り速度、カッターの回転速度を変更してペレットの大きさを変更したこと以外は、ペレット1の製造方法と同様にしてペレット3、4、6及び7を製造した。ペレット3、4、6及び7のモノマー組成、真空乾燥条件、相対粘度、ペレットの最小及び最大寸法、DSC測定結果を表1に示す。
【0051】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレット5の製造
真空乾燥温度を100℃としたこと以外は、ペレット1の製造方法と同様にしてペレット5を製造した。ペレット5のモノマー組成、真空乾燥条件、相対粘度、ペレットの最小及び最大寸法、DSC測定結果を表1に示す。
【0052】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレット8の製造
ペレット1の製造方法と同様にして溶融重合によりメタキシリレン基含有ポリアミドからなるペレットを得た。次に、窒素導入管、減圧管、温度センサー、真空ポンプを備えた内容量60リットルの加熱ジャケット付きタンブラーに25kgのメタキシリレン基含有ポリアミドのペレットを仕込み、タンブラー内を窒素置換した。次いで、タンブラーの回転を開始し、窒素を20ml/minの速度で流通させながら、常圧下で加熱し、ペレット温度が140℃になるまで昇温した後、さらに回転と昇温を継続しつつ真空ポンプによりタンブラー内を0.1mmHgまで減圧した。ペレット温度が180℃に到達した時点から40分経過した時点で窒素を導入してタンブラー内を常圧に戻し、加熱をやめ、窒素を100ml/minの速度で流通させながら反応缶を冷却した。80℃までペレット温度が下がったら、タンブラーの回転を止め、取り出し口を開放し、ペレット8を製造した。ペレット8のモノマー組成、真空乾燥条件、相対粘度、ペレットの最小及び最大寸法、DSC測定結果を表1に示す。
【0053】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレット9の製造
分縮器、全縮器、圧力計、窒素導入口、液体注入口、樹脂抜き出しバルブ、攪拌機を備えた内容量50リットルの加熱ジャケット付きSUS製反応缶に、アジピン酸14000g(95.8mol)、イソフタル酸796g(4.8mol)、次亜リン酸ナトリウム17.0g(0.16mol)、酢酸ナトリウム11.9g(0.14mol)を仕込み、反応缶内部を窒素置換した。次いで、窒素を10ml/minの速度で流通させながら、常圧下で反応缶を170℃まで加熱し、アジピン酸を完全に融解させた後、メタキシリレンジアミン13700g(100.6mol)の滴下を開始した。メタキシリレンジアミンの滴下中は重縮合により生成する水を系内から除去しつつ、反応系内が固化しないように連続的に昇温した。120分かけてメタキシリレンジアミンを全量滴下し、かつ反応缶内温を240℃まで昇温した。次いで常圧のまま10分かけて内温を250℃に上げた後、内温を250℃に保持しつつアスピレーターと圧力調節器を使用して反応缶内を600mmHgまで10分かけて減圧し、600mmHgで重縮合反応を継続した。攪拌機のトルクを観察しながら十分に樹脂の粘度が高くなった時点で撹拌を止め、窒素により反応缶内を0.2MPaに加圧してから反応缶底の樹脂抜き出しバルブを開けてポリマーをストランド状にして抜き出し、水冷後ペレタイザーにてペレット化して、約25kgのメタキシリレン基含有ポリアミドからなるペレットを得た。
次いで、真空乾燥機を用い、ペレットを140℃で6時間の条件で真空乾燥し、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレット9を得た。ペレット9のモノマー組成、真空乾燥条件、相対粘度、ペレットの最小及び最大寸法、DSC測定結果を表1に示す。
【0054】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレット10の製造
原料の使用量を、アジピン酸13500g(92.4mol)、イソフタル酸1535g(9.2mol)、次亜リン酸ナトリウム17.3g(0.16mol)、酢酸ナトリウム12.0g(0.15mol)、メタキシリレンジアミン13840g(101.6mol)とした以外は、ペレット9の製造と同様にして、約24kgのペレット10を得た。ペレット10のモノマー組成、真空乾燥条件、相対粘度、ペレットの最小及び最大寸法、DSC測定結果を表1に示す。
【0055】
実施例1〜5
50mm単軸押出機、アダプター、パリソンコントローラー付き円筒ダイ、金型、型締め機、冷却器等を備えた単層ダイレクトブロー容器成形装置を使用して内容積500ml、平均肉厚3mmのネジ口栓付きボトルの成形を行った。材料は高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製、ノバテックHB420R、以下HDPEと略する)、接着性ポリエチレン(日本ポリエチレン製、アドテックスL6100M、以下ADと略する)及びメタキシリレン基含有ポリアミド(B)ペレット1(以下、ポリアミドペレット1と略する)を70:20:10(重量%)でドライブレンドした混合ペレットを使用し、押出機シリンダー温度を210〜235℃、アダプター温度を235℃、ダイ温度を230℃に設定、スクリュー回転数を30rpmとしてパリソンを押し出し、ダイレクトブローによってボトルを得た。なお、押出機ヘッド部に設けられた樹脂温度は242℃であった。次いで得られたボトルについて擬似ガソリンの透過率を求めた。
また、ポリアミドペレット2〜4、8についても同様に容器を成形し、擬似ガソリン透過率を求めた。結果を表2に示す。
【0056】
比較例1
ADとポリアミドペレットを使用せず、HDPEのみを使用してボトルを成形したこと以外は実施例1と同様にして容器を成形し、擬似ガソリン透過率を求めた。結果を表2に示す。
【0057】
比較例2〜4
ポリアミドペレット5〜7を使用したこと以外は実施例1と同様にして容器を成形し、擬似ガソリン透過率を求めた。結果を表2に示す。
【0058】
実施例6、7
押出機シリンダー温度を205〜230℃、アダプター温度を230℃、ダイ温度を220℃に設定したこと、ポリアミドペレット9および10を用いたこと以外は実施例1と同様にして容器を成形し、擬似ガソリン透過率を求めた。結果を表2に示す。
【0059】
実施例8〜11
HDPE:AD:ポリアミドペレット=80:10:10(重量%)としたこと以外は実施例1、4、5、6と同様にして容器を成形し、擬似ガソリン透過率を求めた。結果を表3に示す。
【0060】
実施例12〜15
HDPE:AD:ポリアミドペレット=65:20:15(重量%)としたこと以外は実施例1、4、5、6と同様にして容器を成形し、擬似ガソリン透過率を求めた。結果を表4に示す。
【0061】
実施例16
実施例1に示した条件により連続で400個のボトル成形を行った。開始から1個目、100個目、200個目、300個目、400個目のボトルについて実施例1と同様に擬似ガソリン透過率を求めた。結果を表5に示す。
【0062】
比較例5、6
比較例1及び2に示した条件により連続で400個のボトル成形を行った。開始から1個目、100個目、200個目、300個目、400個目のボトルについて実施例1と同様に擬似ガソリン透過率を求めた。結果を表5に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
本発明の製造方法によって得られた容器は、HDPEのみでなる比較例1のボトルと比較して優れた擬似ガソリンバリア性能を発揮し、かつペレットサイズが多少変動していても結晶化度合いが特定の範囲に制御されているため、性能差が少ない。また連続で成形したボトルのバリア性能も安定したものであった。
これに対して、結晶化度合いが本発明の範囲から外れている比較例2、またペレットサイズが小さい比較例3について、製造された容器の断面を顕微鏡観察したところ、メタキシリレンジアミン(B)が樹脂組成物中で微細な粒子状に分散している部分があり、燃料バリア性も悪化していた。
またメタキシリレンジアミン(B)のペレットサイズが大きい比較例4はペレットが溶融しきれずに混入したため、バリア性が悪化した。
さらに連続生産時のボトルにおいて、結晶化度合い本発明の範囲から外れている比較例5、及びペレットサイズが本発明の範囲から外れている比較例6は、ロット間で擬似ガソリン透過率の値がばらついており、明らかに品質のバラツキが見られた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の製造方法で得られる中空容器は、バリア性、製品の品質安定性に優れており、各種物品用容器の他、チューブ、部品等、種々の成形体に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン(A)40〜90重量%、メタキシリレン基含有ポリアミド(B)3〜30重量%、及び変性ポリオレフィン(C)3〜50重量%を溶融混合してなる樹脂組成物からなるバリア層を有する中空容器の製造方法であって、
(1)メタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットが2.0〜5.0mmの大きさの粒状物であり、
(2)メタキシリレン基含有ポリアミド(B)のペレットについてDSC測定で観測される結晶化由来のピークが下記条件を満足するものを利用する中空容器の製造方法。
<H/10 ・・・ 式(1)
1回目昇温時に観測される結晶化ピーク熱量=H(J/g)
1回目昇温完了直後に急冷、再度昇温した際に観測される結晶化ピーク熱量=H(J/g)
【請求項2】
ポリオレフィン(A)が高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1記載の中空容器の製造方法。
【請求項3】
メタキシリレン基含有ポリアミド(B)が、ジアミン構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミン単位であり、ジカルボン酸構成単位の50モル%以上が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位であることを特徴とする請求項1記載の中空容器の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られた中空容器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−162684(P2011−162684A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27853(P2010−27853)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】