説明

中空成形体の製造装置及び製造方法

【課題】中空成形体をその加熱成形時において発生する蒸気による損傷を抑えて好適に、生産性を低下させることなく製造することができる中空成形体の製造装置を提供すること。
【解決手段】本発明の中空成形体の製造装置は、内部にキャビティ20を有する成形型2、キャビティ20内に挿入される芯材3、及びキャビティ20内に成形原料を供給する成形原料供給手段5を備えており、更に、芯材3を、芯材3の軸廻りに回転させる芯材回転機構6を有している。本発明の中空成形体の製造方法は、前記製造装置を用いた製造方法であり、キャビティ20内に、芯材3を挿入し且つ成形原料100を充填した状態下に、芯材3を回転させ、芯材3と成形原料100との間に生じる微小な隙間を介して蒸気抜きを行いながら成形原料100を加熱成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形体、特に、鋳物製造用の鋳型又は構造体(以下、鋳型等ともいう。)に好適な中空成形体の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な鋳物の製造方法において中空形状の鋳物を鋳造する場合には、鋳物砂で中子を形成し、主型内に該中子をセットし、溶融金属を鋳込み、冷却後に型を開いて鋳物を脱型した後、中子を崩壊、除去し所望の鋳物を得ている。
【0003】
ところで、中子は、通常の砂にバインダーを添加した鋳物砂を硬化させることによって賦形されているので、鋳造時にアミン等の分解ガスが発生する課題があった。また、脆いため、主型へセットするときや、ケレンを装着するとき、さらに注湯時に破損しやすい点が課題としてあった。さらに、砂を再利用する場合には再生処理が必要となるが、この再生処理の際にダストなどの廃棄物が発生する問題も生じている。
【0004】
出願人は、下記特許文献1に記載の技術を提案している。この技術は、鋳造に用いる鋳型等を、有機繊維、無機繊維及び熱硬化性樹脂を含む成形体で構成したものである。この技術による成形体は、従来の鋳砂を用いた鋳型等に比べ、薄肉・軽量で加工性に優れている。また上述の廃棄物が発生する問題もない。しかし、この成形体は、抄造により製造するため、より簡便な方法で成形体を製造できる技術が望まれていた。また、抄造による製造では、成形体の肉厚が大きく変化するような複雑な形状を成形することが困難であった。
【0005】
一方、特許文献2、3には、原料を射出成形し、成形体を成形する技術が提案されている。しかし、これらの技術は、成形体の肉厚が大きく変化するような複雑な形状を成形する観点では好適であるが、中空成形体の製造技術についての開示がなく、原料に起因した蒸気発生による、該中空成形体の破損を抑えることができなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−181472号公報
【特許文献2】特開平11−280000号公報
【特許文献3】特開2003−71897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、中空成形体をその加熱成形時において発生する蒸気による損傷を抑えて好適に、生産性を低下させることなく製造することができる中空成形体の製造装置及び製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内部にキャビティを有する成形型、前記キャビティ内に挿入される芯材、及び前記キャビティ内に成形原料を供給する成形原料供給手段を備えている中空成形体の製造装置であって、前記芯材を、該芯材の軸廻りに回転させる芯材回転機構を有する中空成形体の製造装置を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明は、前記中空成形体の製造装置を使用した中空成形体の製造方法であって、前記キャビティ内に、前記芯材を挿入し且つ前記成形原料を充填した状態下に、該芯材を回転させ、該芯材と該成形原料との間に生じる微小な隙間を介して蒸気抜きを行いながら、該成形原料を加熱成形する中空成形体の製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中空成形体をその加熱成形時において発生する蒸気による損傷を抑えて好適に製造することができる中空成形体の製造装置及び製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
まず、本発明の中空成形体の製造装置をその好ましい実施形態に基づいて図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1〜6は、本発明の中空成形体の製造装置(以下、単に製造装置ともいう。)の一実施形態の模式図である。これらの図において、符号1は製造装置、10は中空成形体(以下、単に成形体ともいう。)、100は成形原料(後述の成形体製造用組成物に分散媒を添加して調製された原料)を示している。
【0013】
図1に示すように、製造装置1は、内部にキャビティ20を有する成形型2と、成形型2のキャビティ20内に挿入される芯材3と、成形型2のゲート(以下、ゲート孔ともいう。)21の開閉手段4と、キャビティ20内に成形原料を供給する成形原料供給手段5と、芯材3を、該芯材3の軸廻りに回転させる芯材回転機構6とを備えている。
【0014】
成形型2は、一対で一組の割型2A、2Bから構成される。成形型2は、これらの割型を組み合わせることによって、内部にキャビティ20が形成されるとともに、キャビティ20に通じるゲート孔(ゲート)21及び芯材3の出入口22が形成される。各割型の内面で作られるキャビティ20の形成面が、成形体10の外形形状に対応している。割型2Bには、ゲート孔21に通じる成形原料注入口23が形成されている。割型は、アルミニウム合金やステンレス鋼等の金属で構成される。成形型2は、図示しない型締め手段のプラテンに取り付けられ、上下方向に開閉される。また、各割型は、図示しない加熱手段によって所定の温度に加熱される。
【0015】
芯材3の先端部30の断面は、図1及び図3に示すように、芯材3の挿入方向に向けて漸次狭まる形態を有している。該先端部30の稜線31は、曲線でも直線でも良いが、図示例における芯材3は、先端部30にテーパー部32(稜線31が直線)を有している棒状の形態を有している。この芯材3の外表面が成形体10の中空部分の内表面の形状に対応している。芯材3は、図示しない駆動手段によって前後(図1の左右方向)に駆動され、成形型2の出入口22を通してキャビティ20に出し入れされる。
【0016】
ゲートの開閉手段4は、ゲート孔21内を摺動するゲートピン40を備えている。ゲートピン40は図示しない駆動手段によって前後(図1の左右方向)に駆動され、先端部分が成形型2のゲート孔21内を摺動する。
【0017】
成形原料の供給手段5は、いわゆる流体圧シリンダー・ピストンユニットで構成されている。成形原料の供給手段5は、成形原料が収容されるシリンダー50と、シリンダー50内で摺動するピストン51と、ピストン51で押された成形原料を吐出するノズル52とを備えている。成形原料の供給手段5は、ノズル52が、成形原料注入口23に挿入された状態で、シリンダー50内に加圧空気等の流体が供給されることによって、ピストン51が上昇し、シリンダー50内の成形原料100がノズル52を通じてゲート孔21に供給される。
【0018】
芯材回転機構6は、内部に図示しないモーターを備えた回転駆動部60と、該モーターによって回転駆動される回転駆動軸61と、該回転駆動軸61と芯材3とを連結する連結部62とを備えている。モーターを回転させると、回転駆動軸61及びそれに連結された芯材3が一体的に回転し、芯材3は、その軸廻りに回転する。回転駆動部60、回転駆動軸61及び連結部62は、前記駆動手段(図示せず)によって一体的に、芯材3の挿入方向(図1の左右方向)に駆動され、それによって、芯材3は、出入口22を通してキャビティ20に出し入れされる。連結部62は、回転駆動軸61と芯材3とを公知の結合手段により結合させた部分であり、結合手段としては、両者を結合させ得る多様な手段を採用し得る。例えば、回転駆動軸61及び芯材3の端部それぞれに、周囲に張り出したフランジ部を設け、該フランジ部同士をボルトや接着剤、溶接等により結合させたり、回転駆動軸61に、芯材3の端部が嵌合可能な凹部や、芯材3の端部を挟んだり周囲から圧迫したりして固定可能な係合部等を設けたりすることができる。
【0019】
芯材回転機構6は、図4に示すように、芯材3をキャビティ内の所定位置迄挿入し、該芯材3の挿入方向への移動を停止した状態において、該芯材3を回転させることが可能であると共に、図3に示すように、当該所定位置に向かって前進中の該芯材3を回転させることも可能である。更に、芯材3を回転させながら、当該所定位置から図3中の左方向に後退させることも可能である。
【0020】
製造装置1は、成形型2、芯材3、ゲート開閉手段4、成形原料の供給手段5及び芯材回転機構6を、後述するような手順に従って作動させるシーケンサーを備えた制御手段(図示せず)を備えている。
【0021】
次に、本発明の中空成形体の製造方法を、前記製造装置1を使用し、鋳造に使用される中空の中子の製造方法に適用した実施形態に基づいて、図1〜図6を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態の中空成形体の製造方法においては、まず、成形原料を調製する。成形原料の調製では、無機粉体を主成分とし、無機繊維、熱硬化性樹脂及び水溶性のバインダーを予め乾式で混合する。熱膨張性粒子を含ませる場合には、この乾式混合のときに含ませる。そしてこれらの混合物(成形体製造用組成物)を、分散媒に分散させて混練機で混練し、成形原料をドウ状に調製する。ここで、無機粉体を主成分とするとは、成形体に含まれる全成分中で無機粉体が、質量比率で最も多いことを意味する。
【0023】
ここで、成形原料をドウ状に調製するとは、粉体及び繊維組成物と分散媒を捏和混練し、流動性を有しながらも粉体及び繊維組成物と分散媒が容易に分離することがない状態に調製することをいう。
【0024】
前記分散媒としては、水、エタノール、メタノール等の溶剤又はこれらの混合系等の水系の分散媒が挙げられる。成形の安定性、成形体の品質の安定性、費用、取り扱い易さ等の点から特に水が好ましい。
【0025】
前記無機粉体としては、黒鉛(例えば鱗状黒鉛等)、黒曜石、雲母、滑石(タルク)、ムライト、シリカ、マグネシア、等が挙げられる。無機粉体は、一種又は二種以上を選択して用いることができる。成形性、コストの点から黒鉛を用いることが好ましい。
【0026】
前記無機繊維は、主として成形体の骨格をなし、例えば、鋳造時の溶融金属の熱によっても燃焼せずにその形状を維持する。前記無機繊維としては、炭素繊維、ロックウール等の人造鉱物繊維、セラミック繊維、天然鉱物繊維が挙げられる。前記無機繊維は、一種又は二種以上を選択して用いることができる。これらの中でも、前記熱硬化性樹脂の炭化に伴う収縮を効果的に抑える点から高温でも高強度を有するピッチ系やポリアクリロニトリル(PAN)系の炭素繊維を用いることが好ましい。
【0027】
前記無機繊維は、鋳型等の成形性、均一性の観点から平均繊維長が0.5〜15mm、特に1〜8mmであるものが好ましい。
【0028】
前記熱硬化性樹脂は、成形体の常温強度及び熱間強度を維持させるとともに、成形体の表面性を良好とし、成形体を鋳型として用いた場合に鋳物の表面粗度を向上させる上で必要な成分である。前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特に、可燃ガスの発生が少なく、燃焼抑制効果があり、熱分解(炭化)後における残炭率が25%以上と高く、成形体を鋳型に用いた場合に炭化皮膜を形成して良好な鋳肌を得ることができる点からフェノール樹脂を用いることが好ましい。フェノール樹脂には、硬化剤を必要とするノボラックフェノール樹脂、硬化剤の必要ないレゾールタイプ等のフェノール樹脂が用いられる。前記熱硬化性樹脂は、一種又は二種以上を選択して用いることができる。
【0029】
前記水溶性のバインダーとしては、増粘性の多糖類、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。前記多糖類には、キサンタンガム、タマリンドガム、ジェランガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム等のガム剤、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カラギーナン、プルラン、ペクチン、アルギン酸、寒天等が挙げられる。これら多糖類の中でも寒天の様な天然物よりも、非天然物例えば、カルボキシメチルセルロースの様なセルロース誘導体や化学修飾物は、成形体製造用組成物における水溶性のバインダーの配合比を少量でその性能を発揮することができる観点で良好である。
【0030】
前記成形体製造用組成物において、前記無機粉体、前記無機繊維、前記熱硬化性樹脂、及び前記水溶性のバインダー(固形分)の総質量に対し、各成分の配合比(質量比率)は、無機粉体/無機繊維/熱硬化性樹脂/水溶性のバインダー(固形分)=40〜90/1〜20/1〜30/1〜10(質量比率)が好ましく、50〜85/2〜16/2〜25/1〜5(質量比率)がより好ましく、50〜85/2〜16/2〜20/1〜5(質量比率)がさらに好ましい。(ただし上記質量比率の合計は100である。)
【0031】
前記無機粉体の配合比が前記範囲であると、鋳込み時での形状保持性、成形品の表面性が良好となり、また成形後の離型性も好適となる。前記無機繊維の配合比が前記範囲であると、成形性、鋳込み時の形状保持性が良好である。前記熱硬化性樹脂の配合比が前記範囲であると、鋳型の成形性、鋳込み後の形状保持性、表面平滑性が良好である。前記水溶性のバインダーの配合比が前記範囲であると、成形原料を成形型内に充填する際に、成形原料の流動性が良好な状態で充填可能となり、成形体の成形性が良好となる。
【0032】
前記成形原料において熱膨張性粒子を含ませる場合、該熱膨張性粒子としては、熱可塑性樹脂の殻壁に、気化して膨張する膨張剤を内包したマイクロカプセルが好ましい。該マイクロカプセルは、80〜200℃で加熱すると、直径が好ましくは3〜5倍、体積が好ましくは50〜100倍に膨張し、膨張前の平均粒径が好ましくは5〜80μm、より好ましくは20〜50μmの粒子が好ましい。熱膨張性粒子の膨張が斯かる範囲であると膨張による成形精度への悪影響を抑えた上で添加効果が十分に得ることができる。前記熱膨張性粒子は、膨張前の平均直径が好ましくは5〜80μm、より好ましくは20〜50μmのものが好ましい。
【0033】
前記マイクロカプセルの殻壁を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はこれらの組み合わせが挙げられる。前記殻壁に内包される膨張剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、石油エーテル等の低沸点の有機溶剤が挙げられる。
【0034】
前記熱膨張性粒子は、前記無機粉体、前記無機繊維、前記熱硬化性樹脂及び前記水溶性のバインダーの総質量に対し、0.5〜10%(質量%)含んでいることが好ましく、1〜5%(質量%)含んでいることがより好ましい。熱膨張性粒子を斯かる範囲で含んでいると膨張により成形原料が型の細部にわたり充填され、型の形状を忠実に転写でき、添加効果が十分に得られる。また前記範囲の場合には、大量の熱膨張性粒子を含まないため、過膨張を防ぐことができ、余分な冷却時間を必要としないため、高い生産性を維持することができる。
【0035】
本実施形態の成形体には、前記各成分以外に、着色剤、離型剤、コロイダルシリカ等の他の成分を適宜の割合で添加することもできる。また、本実施形態の成形体には、その効果に悪影響を及ぼさない範囲で有樹繊維を含ませることができる。前記有機繊維には、紙繊維(パルプ繊維)、フィブリル化した合成繊維、再生繊維(例えば、レーヨン繊維)等が挙げられる。有機繊維は、一種又は二種以上を選択して用いることができる。成形性、乾燥後の強度、コストの点から、紙繊維が好ましい。
【0036】
次に、図1に示すように成形型2を型締めするとともに、芯材3及びゲートピン40をセットする。芯材3は、その先端部31が成形型2の出入口22に位置するようにセットする。
このときの成形型の温度は、分散媒の蒸発、熱硬化性樹脂の硬化速度、熱膨張性粒子の膨張速度、成形原料の焦げ付き等を考慮すると、120〜250℃が好ましい。
そして、図2に示すように、成形原料の供給手段5のピストン51を上昇させることによって、成形原料100を成形原料注入口23から成形型2内に加圧しながら充填する。成形原料の供給手段5の加圧流体にエアを使用した場合には、エア圧は0.5〜3MPaが好ましい。また、成形型2内への成形原料の充填圧力は、充填している間は変化するが、最大充填圧力は前記エア圧と等しい。
【0037】
次に、図3に示すように、ゲートピン40を前記駆動手段によって前進させキャビティ20を密閉状態とする。
そして、図3に示すように、芯材回転機構6により芯材3を回転させながら、該芯材3をキャビティ20に挿入する方向に前進させる。芯材3は、図4に示すように、予め設定された所定位置迄挿入し、当該所定位置において前後方向(図4の左右方向)への移動を停止する。
そして、所定時間の加熱成形を行う。この加熱成形の間も、芯材3の回転を継続させる。芯材3を回転させながら成形原料100の加熱成形を行うことにより、芯材3と成形原料100との間に生じた微小な隙間(図示せず)を介して、成形原料100から発生した蒸気を、成形型2の外部に効率よく逃がすことができる。より具体的には、芯材3と成形原料100との間に生じた微小な隙間を通った蒸気は、芯材3の外周面33と出入口22との間の隙間を通って成形型2の外部へと放出される。
これにより、急激な脱気による成形体10の損傷を効率的に抑えることができる。芯材3は、成形原料100が流動状態から非流動状態(固化状態)へと変化する段階において、少なくとも回転させておくことが好ましい。
【0038】
芯材3の回転速度は、10〜1000rpm、特に200〜800rpmとすることが好ましい。また、芯材3の外周面33と出入口22との間に、蒸気は逃がすことができるが、流動状態の成形原料が漏れ出さないような隙間を形成する観点から、芯材3の外径と出入口22の内周面の内径との差は、10〜500μm、特に30〜200μmとすることが好ましい。尚、本実施形態における芯材3の外周面及び出入口22の内周面は断面円形である。
【0039】
次に、芯材3を図4に示す所定位置から後退させるが、その後退の際にも、芯材3の回転を継続させておく。
また、この後退の際には、図5に示すように、テーパー部32が出入口22にかかるところで芯材3の引き出しを停止する。この状態において、テーパー部32と出入口22の内周面との間の隙間を通して、更なる蒸気抜きを行う。これにより、急激な脱気による成形体10の損傷を一層効果的に抑制することができる。
【0040】
前記蒸気は成形原料に前記の分散媒を含んでいる為に発生するが、分散媒の蒸気以外のガスが発生しても、上述のように、芯材3を回転させ、加圧成形中に蒸気抜きを行うことによって、該ガスを成形型から排出することができる。分散媒の蒸気以外のガスとしては、前記熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を使用した場合には、ホルマリンガス、フリーフェノールガス、アンモニアガス等が発生し、さらに前記熱膨張性粒子からは該粒子に使用しているマイクロカプセル内部の炭化水素ガス等が発生する。
【0041】
上述のよう芯材3の引き出しを一端停止して蒸気抜きを行った後、所定時間の加熱を続けて成形体の乾燥を行う。そして、図6に示すように、ゲートピン40を後退させ、成形型2を開き、成形体10を取り出す。成形体10は、冷却後必要に応じてトリミング、薬剤の塗布、再加熱処理等の後処理を行って製造を完了する。
【0042】
本実施形態の中空成形体の製造方法は、芯材3を回転させながら成形原料100を加熱成形するので、芯材3と成形原料100との間に微小な隙間を介して蒸気を外部に効率よく逃がすことができ、蒸気爆発などによる成形体の損傷を抑えて成形体を高速で製造することができる。
【0043】
しかも、芯材3を後退させる際に、出入口22の内周とテーパー部32との隙間を通じた蒸気抜きを行い、その後、成形体10を引き続き加熱して乾燥を行うので、蒸気爆発などによる成形体の損傷を一層確実に防止でき、損傷のない成形体を一層高速で製造することができる。
【0044】
更に、成形原料100が充填されたキャビティ20内に、芯材3を、該芯材3を回転させながら挿入したので、芯材3が、キャビティ20に撓んだ状態に挿入されることも防止され、また、芯材3の周囲に厚みムラ等が生じることも防止される。
【0045】
図7は、このようにして製造された成形体の模式図である。成形体10の先端部101は閉じており、後端部102は開いている。また、成形体10は外径が太くなる部分を有しており、本実施形態では後端部102の外径が他の部分よりも太く形成されている。
【0046】
また、成形体10は、水を含む成形原料から製造された場合は、該成形体の使用前(鋳造に供せられる前)の質量含水率は5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。含水率が低いほど、鋳造時の熱硬化性樹脂の熱分解(炭化)に起因するガス発生量を低く抑えることができる。
【0047】
また、成形体10は、無機粉体を主成分とし、無機繊維、熱硬化性樹脂、及び水溶性のバインダーを含有しており、軽量であり、常温強度が高く、ケレンなどを使用して中子として使用する時等の取り扱い性に優れている。また、使用時において熱分解に伴うガスの発生が少ないため、環境に及ぼす悪影響を低く抑えることができる。また、寸法精度が高く、熱間強度も高いので、高精度の鋳物を安定的に製造することができる。特に、熱膨張性粒子を含ませた場合には、細部に亘って成形精度の高い成形体であるので、より高精度の鋳物を製造することができる。また、内部が中空であるので、鋳造時に発生するガスを中空部から外部へと効率よく排出でき、また、より軽量であり、使用後は、ブラスト処理等によって容易に細かくすることができ、鋳造後の取り扱いにも優れている。
【0048】
本発明は、前記実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0049】
例えば、成形原料100が充填されたキャビティ20内に、芯材3を回転させながら挿入するのに代えて、成形原料100を充填する前のキャビティ20内に芯材3を挿入しておき、その芯材3を回転させながら、キャビティ20内に成形原料100を加圧充填させることもできる。この場合においても、芯材3を回転させることで、芯材3がキャビティ20内で撓むことが防止され、厚みが高精度に制御された高品質の中空成形体が得られる。
また、このように、芯材3が挿入された状態のキャビティ20内に成形原料100を充填する場合においても、芯材3を回転させ、芯材3と成形原料100との間に生じる微小な隙間を介して蒸気抜きを行いながら、成形原料100を加熱成形することにより、蒸気爆発などによる成形体の損傷を抑えて、損傷のない成形体を高速で製造することができる。
【0050】
また、芯材3と回転駆動軸61とは一体成形されていても良い。芯材3は、モーター以外によって駆動されるものであっても良い。
【0051】
また、前記実施形態では、芯材の先端部の断面が、該芯材の挿入方向に向けて漸次狭まる形態(先端部にテーパー部を有する形態)としたが、芯材の先端部の断面を斯かる形態にする代わりに、芯材の出入口の断面が、該芯材の挿入方向に向けて漸次狭まる形態とすることもでき、さらに芯材の先端部の断面と芯材の出入口断面の両方を該芯材の挿入方向に向けて、漸次狭まる形態とすることもできる。
更に、芯材は、その先端部の断面が、該芯材の挿入方向に向けて漸次狭まる形態でなくても良い。
【0052】
本発明の中空成形体の製造装置及び製造方法は、前記実施形態のような鋳造に使用される中子の他、鋳型(主型)、湯道、湯止り、受口、湯口、湯口底、せき、ガス抜き、揚り、押湯等の構造体及びその他の付帯構造体の用途に好適である。また、耐熱性を要する鋳造分野以外の用途にも適用でき、その用途に応じた形状の細部に亘って成形精度の高いものとすることができる。
【0053】
また、本発明の製造装置及び製造方法は、前記実施形態におけるような、前記無機粉体、前記無機繊維、前記熱硬化性樹脂、前記水溶性のバインダー(固形分)、及び前記熱膨張性粒子を含む成形原料を用いた中空成形体の製造に好適であるが、それ以外の成形原料を使用した中空成形体の製造にも適用することができる。
例えば、有機繊維とでんぷんの混合物を、水を分散媒として混練したもの等を成形原料とする成形体の製造にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の中空成形体の製造装置の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図2】同製造装置を使用した本発明の中空成形体の製造方法の一実施形態における成形原料の供給工程を模式的に示す部分断面図である。
【図3】同製造装置を使用した本発明の中空成形体の製造方法の一実施形態における芯材の挿入工程を模式的に示す部分断面図である。
【図4】同製造装置を使用した本発明の中空成形体の製造方法の一実施形態における成形工程を模式的に示す部分断面図である。
【図5】同製造装置を使用した本発明の中空成形体の製造方法の一実施形態における加熱乾燥工程を模式的に示す部分断面図である。
【図6】同製造装置を使用した本発明の中空成形体の製造方法の一実施形態における脱型工程を模式的に示す部分断面図である。
【図7】本発明の中空成形体の製造方法により製造された中空成形体の一実施形態を示す半断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 成形体の製造装置
2 成形型
2A、2B 割型
20 キャビティ
21 ゲート孔(ゲート)
22 出入口
3 芯材
4 ゲート開閉手段
40 ゲートピン
5 成形原料供給手段
50 シリンダー
51 ピストン
52 ノズル
6 芯材回転機構
60 回転駆動部
61 回転駆動軸
62 連結部
10 成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にキャビティを有する成形型、前記キャビティ内に挿入される芯材、及び前記キャビティ内に成形原料を供給する成形原料供給手段を備えている中空成形体の製造装置であって、
前記芯材を、該芯材の軸廻りに回転させる芯材回転機構を有する中空成形体の製造装置。
【請求項2】
前記芯材回転機構は、前記ギャビティ内の所定位置迄挿入した状態の前記芯材を回転可能であると共に、該所定位置に向かって前進中の該芯材も回転可能である請求項1記載の中空成形体の製造装置。
【請求項3】
請求項1記載の中空成形体の製造装置を使用した中空成形体の製造方法であって、
前記キャビティ内に、前記芯材を挿入し且つ前記成形原料を充填した状態下に、該芯材を回転させ、該芯材と該成形原料との間に生じる微小な隙間を介して蒸気抜きを行いながら、該成形原料を加熱成形する中空成形体の製造方法。
【請求項4】
前記成形原料が充填された前記キャビティ内に、前記芯材を、該芯材を回転させながら挿入する請求項3記載の中空成形体の製造方法。
【請求項5】
前記芯材が挿入された前記キャビティ内に、該芯材を回転させながら、前記成形原料を充填する請求項3記載の中空成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−101554(P2009−101554A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274245(P2007−274245)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】