説明

中空構造板及びその製造方法

【課題】特定位置に任意の厚さの薄板部を形成することが可能な中空構造板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】マトリクス状に中空状の凸部2a,3aが形成された熱可塑性樹脂シート2,3の両側に、熱可塑性樹脂からなる1対の表面材5,6を積層し、更に必要に応じて表面材5,6の一方又は両方に面材を貼付したものの特定領域に、切り込み7を形成する。そして、この切り込み7を境に一方の領域を押圧して薄板部10を形成し、切り込み7を境界として厚板部と薄板部10とが設けられている中空構造板とする。また、その際、切り込みを形成する工程及び押圧する工程を常温で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製の中空構造板及びその製造方法に関する。より詳しくは、表面が平坦でないものにも適用可能な中空構造板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の中空構造板は、軽量で、かつ耐薬品性、耐水性、断熱性、遮音性及び復元性に優れ、取り扱いも容易であることから、箱材や梱包材などの物流用途、壁や天井用のパネル材などの建築用途を初めてとして、幅広い分野に使用されている(例えば、特許文献1,2参照。)。このような中空構造板は、通常、複数の熱可塑性樹脂シートを積層し、融着することにより製造されている(例えば、特許文献3,4参照。)。
【0003】
例えば、特許文献3に記載の製造方法では、2枚の熱可塑性樹脂シートを減圧チャンバー内に導入し、エンボスローラに突設されたピンにより、各シートに多数の中空凸部を形成すると共に、各中空凸部の端面同士を熱融着して、中空構造板を形成している。また、特許文献4に記載の製造方法では、先ず、多数のキャップ状突起をもつシートと、平坦なバックシートを貼り合わせ、その後、突起の頂部にライナーシートを押圧して貼り合わせることにより、中空構造板を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−107144号公報
【特許文献2】特開2010−099963号公報
【特許文献3】特開2008−260309号公報
【特許文献4】特開2009−113382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の中空構造板は、平板状であるため、凹凸があるものの上には設置又は配置される用途には不向きであるという問題点がある。一方、中空構造板を、凹凸があるものにも適用可能にするためには、設置・配置するものの形状に合わせて、部分的に中空構造板の厚さを変えれば良いが、例えば加圧加工により部分的に厚さを薄くした場合、経時変化により薄くした部分が復元してしまうため、加工時の厚さを維持することができない。また、形状保持性能を向上させるため、加圧加工時に熱を加えると、得られた中空構造板に反りが生じることがある。
【0006】
そこで、本発明は、特定位置に任意の厚さの薄板部を形成することが可能な中空構造板及びその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る中空構造板は、片面又は両面に、1又は複数の切り込みが形成されており、該切り込みを境界として厚板部と薄板部とが設けられているものである。
この中空構造板は、中空で円錐台形状の凸部がマトリクス状に形成された2枚の熱可塑性樹脂シートを、それぞれの凸部同士が突き合わさるようにして重ね合わせて固着した芯材と、該芯材の両面に貼付された熱可塑性樹脂からなる表面材と、を有し、前記切り込みは、2枚の表面材のうちの一方と芯材にのみ形成されていてもよい。
また、薄板部の厚さが、厚板部の厚さの1/2以上とすることができる。
更に、前記芯材及び前記表面材は、例えばポリプロピレン系樹脂により形成することができる。
更にまた、少なくとも一方の表面材上に、面材が積層されていてもよい。
【0008】
本発明に係る中空構造板の製造方法は、マトリクス状に中空状の凸部が形成された熱可塑性樹脂シートの両側に、熱可塑性樹脂からなる1対の表面材を積層する工程と、前記表面材の一方と熱可塑性樹脂シートに切り込みを形成する工程と、前記切り込みを境に一方の領域を押圧する工程と、を有し、前記切り込みを形成する工程及び前記押圧する工程を常温で行う。
この製造方法では、中空で円錐台形状の凸部がマトリクス状に形成された2枚の熱可塑性樹脂シートを、それぞれの凸部同士が突き合わさるようにして重ね合わせて熱融着して芯材を得る工程と、該芯材の両面に前記表面材を貼付する工程と、を有していてもよい。
また、少なくとも一方の表面材上に、面材を貼付する工程を有していてもよい。
更に、切り込み工程と押圧工程とは、同時に行うこともできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配置場所の形状に合わせて、所定位置に薄板部が形成されているため、表面に凹凸があるものの上にも配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る中空構造板を示す平面図であり、(b)はそのA−A線による概略断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、図1に示す中空構造板1の製造方法を、その工程順に示す概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る中空構造板の構造を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る中空構造板の構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
先ず、本発明の第1の実施形態に係る中空構造板について説明する。図1(a)は本実施形態の中空構造板を示す平面図であり、図1(b)はそのA−A線による概略断面図である。図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の中空構造板1は、熱可塑性樹脂からなる中空ハニカム構造板であり、その一方又は両面に1若しくは複数の薄板部10が形成されている。
【0013】
具体的には、本実施形態の中空構造板1は、中空で円錐台形状の凸部2aがマトリクス状に形成された熱可塑性樹脂シート2と、中空で円錐台形状の凸部3aがマトリクス状に形成された熱可塑性樹脂シート3とを、凸部2a,3a同士を当接させた状態で熱融着して形成した芯材4の両面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材5,6を積層した構成となっている。
【0014】
ここで、芯材4を構成する熱可塑性樹脂シート2,3及び表面材5,6の材質は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えばポリプロピレン(PP)系樹脂及びポリカーボネート(PC)系樹脂などを使用することができ、特に、PP系樹脂が好ましい。ただし、復元抑制の観点から、熱可塑性樹脂シート2,3及び表面材5,6を構成する樹脂は、エラストマー成分を含有しないものであることがより好ましい。
【0015】
また、本実施形態の中空構造板1では、表面材5,6と熱可塑性樹脂シート2,3の凸部2a,3aとがなす角度(傾斜角)θが、55〜80°であることが望ましい。なお、この凸部2a,3aの傾斜角θが、55°未満の場合、中空構造板として必要な剛性や強度が十分に得られないことがある。一方、凸部2a,3aの傾斜角θが80°を超えると、中空構造板の芯材形成において、真空成型後の脱型に支障をきたすことがある。
【0016】
更に、芯材4を構成する熱可塑性樹脂シート2,3の厚さ、即ち、凸部2a,3bのシート厚さは、0.2〜1.5mmであることが望ましい。凸部2a,3aのシート厚さが0.2mm未満の場合、十分な平面圧縮特性が得られないことがあり、また、凸部2a,3aのシート厚さが1.5mmを超えると、軽量性が損なわれることがある。
【0017】
そして、この中空構造板1には、設置又は載置される場所の形状に合わせて、特定位置に、薄板部10が形成されている。この薄板部10は、表面材5又は表面材6と、芯材4を構成する熱可塑性樹脂シート2,3に、切り込み7を形成し、この切り込み7を境に一方の領域を押圧することにより形成されている。即ち、中空構造板1には、中空部分が押しつぶされて、他の部分(厚板部)よりも厚さが薄くなっている部分があり、この部分を薄板部10という。
【0018】
また、薄板部10と厚板部とでは、表面材5,6が分断されており、この点が単なる加圧加工とは異なる。なお、薄板部10が形成されている部分の厚さは、配置される部分の凹凸などに応じて適宜設定することができるが、薄板部10の厚さを、その他の部分(厚板部)の厚さの1/2よりも薄くしようとすると、加圧加工面と反対の面に押圧痕が浮き出してしまう。中空構造板1では、加圧加工面と反対側の面が製品表層となる場合が多いため、その表面に押圧痕があると、意匠性が損なわれることとなる。よって、薄板部10の厚さは、厚板部の厚さの1/2以上であることが望ましい。
【0019】
なお、本実施形態の中空構造板1は、厚さ、形状又は大きさなどが異なる複数の薄板部10が形成されていてもよい。また、本実施形態の中空構造板1は、薄板部10が形成されている部分の割合が、形成されていない部分(厚板部)よりも多くてもよく、また両面に薄板部10が形成されていてもよい。
【0020】
次に、本実施形態の中空構造板の製造方法について、図1に示すハニカム構造のものを例にして説明する。図2(a)〜(c)は、図1に示す中空構造板1の製造方法を、その工程順に示す概略断面図である。図2(a)に示すように、本実施形態においては、先ず、薄板部10がなく、厚板部のみで構成される中空構造板9を作製する。
【0021】
具体的には、熱可塑性樹脂シート2,3に、マトリクス状に凸部2a,3aを形成する。そして、熱可塑性樹脂シート2と熱可塑性樹脂シート3とを、凸部2a,3a同士を当接させた状態で熱融着して芯材4を形成する。その後、芯材4の両面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材5,6を積層し、中空構造板9とする。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、薄板部10と厚板部との境界となる部分に切り込み7を形成すると共に、切り込み7を境に一方の領域、例えば図1(a)に示す中空構造板1であれば、切り込み7により囲まれる領域を押圧し、薄板部10を形成する。このとき、切り込み7は、表面材5,6のいずれか一方と、芯材4にのみに形成し、他方の表面材には達しないようにする。なお、切り込み7の深さが、押圧用治具よりも浅いと、押圧不足になったり、押圧部周辺が変形したりする。また、切り込み7が深過ぎて他方の表面材に達した場合、押圧時にその箇所が切り抜かれてしまう。
【0023】
一方、押圧の程度は、特に限定されるものではなく、薄板部10の目標厚さなどに応じて適宜設定することができる。ただし、切り込み形成及び押圧の際は、常温で行うことが望ましい。これにより、反りや押圧痕の発生及び表面平滑性の低下を防止することができ、省エネルギーにも貢献することができる。
【0024】
なお、前述した切り込み形成工程と、押圧工程は、切断用の刃の内側に押圧部材を備えた治具を使用して、同時に行ってもよいが、切断刃で切り込みを形成した後、押圧用治具により押圧してもよい。また、切り込み形成工程と、押圧工程と、外周切断工程とを全て同時に行うこともできる。その場合は、外周切断用の刃と、この刃よりも短い切り込み形成用の刃と、押圧部材とを備える治具を使用すればよい。
【0025】
以上詳述したように、本実施形態の中空構造板では、設置又は載置される場所の形状に合わせて薄板部が形成されているため、表面に凹凸があるものの上にも配置することが可能である。また、この薄板部10は、切り込みにより厚板部と分断されており、更に、押潰された中空部分は、芯材の凸部の側壁が座屈したり又は一方の凸部先端がもう一方の凸部の先端にめり込んだりしているため、厚さが復元しにくく、長期間に亘って加工時の形状を維持することができる。
【0026】
更に、本実施形態の中空構造板は、加熱せず、常温で薄板部を形成しているため、反りや押圧痕が発生しにくく、また表面平滑性が低下することもない。
【0027】
なお、本発明は、図1に示す構造の中空構造板1に限定されるものではない。図3,4は本発明の第1の実施形態の変形例に係る中空構造板の構造を模式的に示す断面図である。具体的には、図3に示すような中空で円錐台形状の凸部がマトリクス状に形成された熱可塑性樹脂シートの両面に熱可塑性樹脂シートからなる表面材を貼付した構成の中空構造板11にも適用することができる。
【0028】
また、図4に示すような円筒状の凸部がマトリクス状に形成された熱可塑性樹脂シートの両面に熱可塑性樹脂シートからなる表面材を貼付した構成の中空構造板12にも適用することができる。これら図3に示す中空構造板11及び図4に示す中空構造板12においても、図1に示す中空構造板1と同様の方法で、薄板部を形成することができる。
【0029】
更に、本発明の中空構造体は、一方又は両方の表面材上に、不織布、織布、紙、熱可塑性樹脂シート、発泡性シート、無機系シートなどの面材が積層されていてもよい。その場合は、表面材上に面材を貼付した後、切り込み形成工程及び押圧工程を行えばよい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、以下に示す方法で、図1に示す中空構造板1を製造し、その薄板部10の形状を評価した。
【0031】
具体的には、先ず、熱可塑性樹脂(プライムポリマー社製 ブロックコポリプロピレンE601/MI=0.8):90質量%、及びフィラー(竹原化学工業社製 タルクマスターバッチMAX2070T/タルク含有量70質量%):10質量%をドライブレンドし、芯材及び表面材の原料とした。そして、この原料を、2台の一軸押出機で溶融混練した後、平行に配置された2台のTダイにより、溶融状態の熱可塑性樹脂シートを押出成形した。
【0032】
次に、規則的に金属製突起体が配置された温調可能な成形ローラにより、芯材4を構成する2枚の熱可塑性樹脂シート2,3を真空状態で作製した。その際、金属製突起体先端径が2mm、根元が6mm、突起体間隔が2mm、高さが4.5mmの成形ローラを使用した。その後、樹脂シート間に接触状態で配置された熱融着用の加熱手段を設け、互いの中空凸部を加熱し、両エンボスローラの接線位置で中空凸部の端面同士を熱融着して一体化し、芯材4を得た。
【0033】
更に、この芯材4の表裏に熱融着により、芯材4と同一組成のポリプロピレン樹脂シート(表面材)を貼り合わせた。そして、この表面材を貼り合わせた直後の冷却工程において、最初に構造板に接触する一対の冷却ローラを上下別々の温度制御を行った。その際、冷却ローラを通過した直後の構造板の上下表面温度を同一となるように熱媒循環装置温度を制御し、冷却板を通過させて中空板を常温まで冷却させたところ、板厚み9.4mm、総目付1500g/m(中間体目付=1000、ポリプロピレン樹脂シート250×2=500g/m)、傾斜角θが66°、リブ厚み0.5mmの中空構造板を得た。
【0034】
次に、外周にトムソン刃(ナカヤマ社製 ニューカッター 刃の厚さ1.0mm、刃の高さ23.6mm)を厚さ12mmのベニヤ板に取り付けると共に、前述した刃よりも1.6mm低い切り込み刃を、高さが22.0mmになるように、薄板部の形状50mm×50mmの矩形状)及び位置に合わせて取り付けた。切り込み形成工程と押圧工程を同時に行うために、薄板部の形状に合わせて設置した切り込み刃の内側に、押圧用のスペーサ(厚さ:8.4mm)を配置した。
【0035】
そして、このベニヤ型を200tプレス機に設置した後、ベニヤ型の上に前述の中空構造板を載せ、プレス下降速度:2mm/秒、プレス圧:20tで、切り込み形成工程及び押圧工程を行った。これにより、外寸が500mm×100mmで、厚さ6.0mmの薄板部を備えた中空構造板が得られた。
【符号の説明】
【0036】
1、9、11、12 中空構造板
2,3 熱可塑性樹脂シート
2a,3a 凸部
4 芯材
5,6 表面材
7 切り込み
10 薄板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面又は両面に、1又は複数の切り込みが形成されており、該切り込みを境界として厚板部と薄板部とが設けられている中空構造板。
【請求項2】
中空で円錐台形状の凸部がマトリクス状に形成された2枚の熱可塑性樹脂シートを、それぞれの凸部同士が突き合わさるようにして重ね合わせて固着した芯材と、
該芯材の両面に貼付された熱可塑性樹脂からなる表面材と、を有し、
前記切り込みは、2枚の表面材のうちの一方と芯材にのみ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の中空構造板。
【請求項3】
薄板部の厚さが、厚板部の厚さの1/2以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空構造板。
【請求項4】
前記芯材及び前記表面材は、ポリプロピレン系樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の中空構造板。
【請求項5】
少なくとも一方の表面材上に、面材が積層されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の中空構造板。
【請求項6】
マトリクス状に中空状の凸部が形成された熱可塑性樹脂シートの両側に、熱可塑性樹脂からなる1対の表面材を積層する工程と、
前記表面材の一方と熱可塑性樹脂シートに切り込みを形成する工程と、
前記切り込みを境に一方の領域を押圧する工程と、を有し、
前記切り込みを形成する工程及び前記押圧する工程を常温で行う中空構造板の製造方法。
【請求項7】
中空で円錐台形状の凸部がマトリクス状に形成された2枚の熱可塑性樹脂シートを、それぞれの凸部同士が突き合わさるようにして重ね合わせて熱融着して芯材を得る工程と、
該芯材の両面に前記表面材を貼付する工程と、
を有することを特徴とする請求項6に記載の中空構造板の製造方法。
【請求項8】
更に、少なくとも一方の表面材上に、面材を貼付する工程を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の中空構造板。
【請求項9】
切り込み工程と押圧工程とを同時に行うことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の中空構造板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−96506(P2012−96506A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248303(P2010−248303)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】