説明

中空発泡成形体の製造方法及び中空発泡成形体

【課題】中空発泡成形体の内部を流通させる流体の流量効率を向上させることが可能な中空発泡成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】 発泡樹脂(13)を金型(12a,12b)で挟み込み、通気路を有する中空発泡成形体を成形し、中空発泡成形体を冷却させるための流体を通気路に流し、中空発泡成形体を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車は、高い天井、広いシートなど、内部空間を広くすることが要求されているため、自動車用のダクトは、コンパクトであると共に、目的とする所望の空気流量をスムーズに流すことが要求されている。しかも、車種毎に異なるダクトの形状が要求されている。
【0003】
これらの要求に答えるため、従来の自動車用のダクトは、高密度ポリエチレンやポリプロピレン等からなる中空成形体が使用されていた。中空成形体は、異型形状の成形が容易であり、目的とする所望の空気流量を容易に確保できるため、自動車用のダクトとしては好適なものであった。
【0004】
しかし、近年、エアコンのコンプレッサーから発生する騒音や、ダクトを通る空気の風切り音が、ダクト吹出し口から漏れてくることが問題となっており、これらの騒音の低減が要求されている。ところが、従来の中空成形体は、高密度ポリエチレンやポリプロピレン等の非発泡樹脂で構成していたため、騒音を吸収するという機能に欠けていた。
【0005】
このようなことから、特許文献1(特開2004−116959号公報)には、エアコンのコンプレッサーが発生する騒音や、ダクトを通る空気の風切り音を低減でき、しかも、結露防止性、断熱性、耐熱性、軽量性に優れ、実用上十分な強度を有すると共に、簡素な工程で製造可能なダクトについて開示されている。
【0006】
上記特許文献1では、見掛け密度0.05〜0.5g/cm3、独立気泡率50%以上の中空発泡成形体であって、該中空発泡成形体の内面の表面硬度が45〜80度であるダクトについて開示されている。
【0007】
上記特許文献1のように特定範囲の見掛け密度、独立気泡率を有し、且つ、特定範囲のダクトの内面の表面硬度を有することで、優れた吸音性を有し、エアコンのコンプレッサーが発生する騒音や、ダクトを通る空気の風切り音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−116959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1のような中空発泡成形体を製造する場合は、例えば、図13に示すように、熱可塑性樹脂と発泡剤とで構成する発泡パリソン11aをダイ21から押出し、減圧用配管23が設けられた分割金型22a,22b内に発泡パリソン11aを配置する。そして、金型22aと金型22bとで発泡パリソン11aを挟み込むと共に、その発泡パリソン11aの内部に空気等の気体を吹き込みながら分割金型22a,22bを閉鎖する。分割金型22a,22bを閉鎖して行くと、発泡パリソン11aは、キャビティ24に沿って変形し、分割金型22a,22bの内面に密着する。分割金型22a,22bの閉鎖が完了すると、図14に示すように、中空発泡成形体1の壁2の内部に空間(空気流路)3が形成される。そして、分割金型22a,22bを閉じた状態で中空発泡成形体1を冷却する。これにより、見掛け密度0.05〜0.5g/cm3、独立気泡率50%以上の中空発泡成形体1であって、該中空発泡成形体1の内面の表面硬度が45〜80度であるダクトを製造することができる。
【0010】
但し、上述した製造方法を用いて、高発泡倍率(例えば、発泡倍率が2.5倍以上)で、且つ、肉厚の厚い(例えば、肉厚が2.0mm以上)中空発泡成形体1を製造した場合は、製造工程時において中空発泡成形体1の肉厚が厚くなる。
【0011】
しかし、製造工程時において中空発泡成形体1の肉厚が厚くなった場合は、その中空発泡成形体1自体の断熱性が高くなるため、中空発泡成形体1を冷却する際に、中空発泡成形体1の壁2の内部まで十分に冷却できない場合がある。中空発泡成形体1の壁2の内部まで十分に冷却できない場合は、中空発泡成形体1にヒケやソリが発生するため、中空発泡成形体1の冷却時間を長くしたり、中空発泡成形体1を分割金型22a,22bから取り出し後に、中空発泡成形体1の形状を矯正したりする必要がある。
【0012】
また、中空発泡成形体1の壁2の内部の冷却が遅くなると、その壁2の内部の気泡が粗大化し、破泡が発生し、壁2の内部の表面が荒れてしまうことになる。壁2の内部の表面が荒れてしまうと、壁2の内部の空間(空気流路)3を流通させる空気(流体)に対する抵抗力が増加し、中空発泡成形体1の内部を流通させる流体の流量効率が低下してしまうことになる。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、中空発泡成形体の内部を流通させる流体の流量効率を向上させることが可能な中空発泡成形体の製造方法及び中空発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有することとする。
【0015】
<中空発泡成形体の製造方法>
本発明にかかる中空発泡成形体の製造方法は、
発泡樹脂を金型で挟み込み、通気路を有する中空発泡成形体を成形する成形工程と、
前記中空発泡成形体を冷却させるための流体を前記通気路に流し、前記中空発泡成形体を冷却する冷却工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
<中空発泡成形体>
本発明にかかる中空発泡成形体は、
内部に通気路を有する中空発泡成形体であって、
前記通気路の表面の十点平均粗さRzは、100μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、中空発泡成形体の内部を流通させる流体の流量効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の中空発泡成形体200の外観構成例を示す図である。
【図2】本実施形態の中空発泡成形体200の断面構成例を示す図である。
【図3】本実施形態の中空発泡成形体200の通気路205の表面形状例を示す図である。
【図4】本実施形態の中空発泡成形体200の製造方法例を説明するための第1の図である。
【図5】本実施形態の中空発泡成形体200の製造方法例を説明するための第2の図である。
【図6】本実施形態の中空発泡成形体200の他の形態を示す図である。
【図7】第3の実施形態の中空発泡成形体200の製造方法例を説明するための図である。
【図8】タケヤリ針とロケット針との構成例を示す図である。
【図9】内面温度測定結果を示す図である。
【図10】表面粗さ測定結果を示す図である。
【図11】圧力損失測定結果を示す図である。
【図12】圧力損失測定装置の構成例を示す図である。
【図13】従来の中空発泡成形体200の製造方法例を説明するための第1の図である。
【図14】従来の中空発泡成形体200の製造方法例を説明するための第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<本実施形態の中空発泡成形体200の概要>
まず、図1〜図5を参照しながら、本実施形態の中空発泡成形体200の概要について説明する。図1〜図3は、中空発泡成形体200の構成例を示し、図4、図5は、中空発泡成形体200の製造方法例を示す。
【0020】
本実施形態の中空発泡成形体200は、図4、図5に示すように、発泡樹脂(発泡パリソン13に相当)を金型12a,12bで挟み込み、図1〜図3に示すように、通気路205を有する中空発泡成形体200を成形する。そして、図5に示すように、中空発泡成形体200を冷却させるための流体を通気路205に流し、中空発泡成形体200を冷却する。
【0021】
これにより、図3に示す通気路205の表面の凹凸208をなだらかにすることができる。また、流路逆方向に比べて流路方向Aに向かって流体を流れやすくすることができる。その結果、中空発泡成形体200の内部を流通させる流体の流量効率を向上させることができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態の中空発泡成形体200について詳細に説明する。
【0022】
<中空発泡成形体200の構成例>
まず、図1、図2を参照しながら、本実施形態の中空発泡成形体200の構成例について説明する。図1は、本実施形態の中空発泡成形体200の構成例を示す図であり、図2は、図1に示すX-X'の断面構成例を示す図である。
【0023】
本実施形態の中空発泡成形体200は、エアコンユニットから供給される冷暖風を所望の部位へ流通させるための軽量な中空発泡成形体200であり、発泡剤を混合させた熱可塑性樹脂をブロー成形することで成形される。
【0024】
本実施形態の中空発泡成形体200は、発泡状態の壁面(第1壁部201,第2壁部202)を有して構成し、発泡倍率2.5倍以上で複数の気泡セル有する独立気泡構造(独立気泡率が70%以上)で構成している。203は、パーティングラインである。
【0025】
本実施形態の中空発泡成形体200は、図2に示すように、内部に通気路205を有して構成し、中空発泡成形体200の長手方向の先端には、エアコンユニット(図示せず)に接続するための供給口206を有し、エアコンユニットの冷暖風を中空発泡成形体200内の通気路205に供給することにしている。また、中空発泡成形体200の長手方向の末端には、排出口207を有し、中空発泡成形体200内の通気路205に導いた冷暖風を排出口207から外部に排出することにしている。なお、本実施形態の中空発泡成形体200の形状や構成は、図1、図2に示す形状や構成に限定するものではなく、任意に設計変更することが可能である。
【0026】
本実施形態の中空発泡成形体200の壁面201,202の平均肉厚は、2.0mm以上となるように構成し、好ましくは、3.0mm以上となるように構成する。壁面201,202の厚み方向における気泡セルの平均気泡径は300μm未満、好ましくは、100μm未満である。
【0027】
本実施形態の中空発泡成形体200は、ポリプロピレン系樹脂からなり、好ましくは、1〜20wt%のポリエチレン系樹脂および/または5〜40wt%の水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを混合させたブレンド樹脂で構成し、−10℃における引張破壊伸びが40%以上で、かつ、常温時における引張弾性率が1000kg/cm2以上である。さらに、−10℃における引張破壊伸びが100%以上であることが好ましい。なお、本実施形態で用いる各用語について以下に定義する。
【0028】
発泡倍率:後述する本実施形態の製造方法で用いた熱可塑性樹脂の密度を、本実施形態の製造方法により得られた中空発泡成形体200の第1壁部201及び第2壁部202の壁面の見かけ密度で割った値を発泡倍率とした。
引張破壊伸び:後述する本実施形態の製造方法により得られた中空発泡成形体200の第1壁部201及び第2壁部202の壁面を切り出し、−10℃で保管後に、JIS K-7113に準じて2号形試験片として引張速度を50mm/分で測定を行った値を引張破壊伸びとした。
引張弾性率:後述する本実施形態の製造方法により得られた中空発泡成形体200の第1壁部201及び第2壁部202の壁面を切り出し、常温(23℃)で、JIS K-7113に準じて2号形試験片として引張速度を50mm/分で測定を行った値を引張弾性率とした。
【0029】
本実施形態の中空発泡成形体200は、図2に示すように、内部に通気路205を有して構成し、その通気路205の表面は、図3に示すように、凹凸208になっている。図3は、図1に示す中空発泡成形体200の内部状態を示す図であり、第1壁部201側を破断した状態を示している。
【0030】
本実施形態の中空発泡成形体200は、通気路205の表面の凹凸208がなだらかになっていると共に、流路方向Aに向かって流体が流れやすくなっている。このため、図1に示す中空発泡成形体200をダクトとして使用する際に、供給口206を介してエアコンユニット等から通気路205に供給した冷暖風等の流体に対する抵抗力を低減し、流体の流量効率を向上させることができる。
【0031】
<中空発泡成形体200の製造方法例>
次に、図4、図5を参照しながら、本実施形態の中空発泡成形体200の製造方法例について説明する。
【0032】
まず、図4に示すように、発泡パリソンを環状ダイス11より射出し、円筒形状の発泡パリソン13を分割金型12a,12b間に押し出す。
【0033】
次に、分割金型12a,12bを型締めし、図5に示すように、発泡パリソン13を分割金型12a,12bで挟み込む。これにより、発泡パリソン13を分割金型12a,12bのキャビティ10a,10bに収納させる。
【0034】
次に、図5に示すように、分割金型12a,12bを型締めした状態で、吹き込み針14と吹き出し針15とを発泡パリソン13に同時に突き刺し、吹き込み針14から空気等の圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧にてブロー成形を行う。
【0035】
吹き込み針14は、図1に示す中空発泡成形体200の供給口206側を構成する部位に突き刺し、圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込むための吹き込み口を形成する。また、吹き出し針15は、図1に示す中空発泡成形体200の排出口207側を構成する部位に突き刺し、圧縮気体を発泡パリソン13の内部から外部に吹き出すための吹き出し口を形成する。これにより、吹き込み針14から圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧にてブロー成形を行うことができる。
【0036】
ブロー圧は、レギュレータ16,背圧レギュレータ17の差圧であり、分割金型12a,12bを密閉した状態でレギュレータ16,背圧レギュレータ17をそれぞれ所定の圧力に設定し、所定のブロー圧にてブロー成形を行う。例えば、所定の圧力の圧縮気体を所定の時間だけ吹き込み針14から発泡パリソン13内に吹き込み、発泡パリソン13の内部の圧力(内圧)を大気圧から所定の圧力状態に加圧する。
【0037】
ブロー圧は、0.5〜3.0kg/cm2で設定し、好ましくは、0.5〜1.0kg/cm2で設定する。ブロー圧を3.0kg/cm2以上に設定すると、中空発泡成形体200の肉厚がつぶれ易くなったり、発泡倍率が低下し易くなったりしてしまう。また、ブロー圧を0.5kg/cm2以下に設定すると、レギュレータ16、背圧レギュレータ17の差圧の調整が難しくなってしまったり、中空発泡成形体200内の通気路205の表面形状を、発泡パリソン13の内部に吹き込んだ圧縮気体の流路方向Aに沿って変形させ難くなってしまったりする。このため、ブロー圧は、0.5〜3.0kg/cm2で設定し、好ましくは、0.5〜1.0kg/cm2で設定する。
【0038】
また、所定のブロー圧にてブロー成形を行う場合は、温調設備を設け、吹き込み針14から発泡パリソン13内に供給する圧縮気体を所定の温度に加熱することも可能である。これにより、発泡パリソン13の内部に供給された圧縮気体が所定の温度になるため、発泡パリソン13内に含有されている発泡剤を発泡させ易くすることができる。なお、所定の温度は、発泡剤を発泡させるのに適した温度に設定することが好ましい。
【0039】
また、温調設備を設けず、吹き込み針14から発泡パリソン13内に供給する圧縮気体を室温で行うことも可能である。これにより、圧縮気体の温度を調整するための温調設備を設ける必要がないため、中空発泡成形体200を低コストで製造することができる。また、ブロー成形後の中空発泡成形体200を冷却することになるため、ブロー成形時は室温で行うことで、ブロー成形後の中空発泡成形体200の冷却時間の短縮に寄与することができる。
【0040】
本実施形態では、吹き込み針14から圧縮気体を発泡パリソン13内に吹き込むと共に、分割金型12a,12bのキャビティ10a,10bから排気を行い、発泡パリソン13とキャビティ10a,10bとの間の隙間を無くし、負圧状態にさせる。これにより、分割金型12a,12b内部のキャビティ10a,10bに収納された発泡パリソン13の内外において圧力差(発泡パリソン13の内部が外部よりも高い圧力)が設定され、発泡パリソン13は、キャビティ10a,10bの壁面に押圧され、通気路205を有する中空発泡成形体200が成形される。
【0041】
なお、上述した製造工程において、発泡パリソン13の内部に圧縮気体を吹き込む工程と、発泡パリソン13の外部に負圧を発生させる工程と、は同時に行う必要はなく、互いの工程を時間的にずらして行うことも可能である。また、上記一方の工程だけを行い、発泡パリソン13を分割金型12a,12bのキャビティ10a,10bの壁面に押圧させて、通気路205を有する中空発泡成形体200を成形することも可能である。
【0042】
次に、吹き込み針14から空気等の圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧にて中空発泡成形体200を冷却する。
【0043】
中空発泡成形体200を冷却する際に吹き込み針14から発泡パリソン13内に供給する圧縮気体の温度は、10℃〜30℃に設定し、室温(例えば、23℃)に設定することが好ましい。圧縮気体の温度を室温に設定することで、圧縮気体の温度を調整するための温調設備を設ける必要がないため、中空発泡成形体200を低コストで製造することができる。また、温調設備を設け、吹き込み針14から発泡パリソン13内に供給する圧縮気体の温度を室温よりも低くした場合は、中空発泡成形体200の冷却時間を短縮することができる。なお、圧縮気体の温度にもよるが、冷却時間は、30秒〜80秒で行うことが好ましい。
【0044】
これにより、内部に通気路205を有して構成し、その通気路205の表面の凹凸208がなだらかな中空発泡成形体200を製造することができる。また、流路逆方向に比べて、流路方向Aに向かって流体が流れやすい通気路205を有する中空発泡成形体200を製造することができる。
【0045】
なお、上述した製造方法では、吹き込み針14を発泡パリソン13の上部側に位置させ、吹き出し針15を発泡パリソン13の下部側に位置させ、重力方向と順方向に圧縮気体を流通させることにしている。これにより、流路方向Aに向かって流体が流れやすい通気路205を有する中空発泡成形体200を形成し易くすることができる。
【0046】
なお、本実施形態の中空発泡成形体200を成形する際に適用可能な発泡剤としては、物理発泡剤、化学発泡剤及びその混合物が挙げられる。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、及び、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、更には、それらの超臨界流体を適用することができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることで作ることができる。
【0047】
また、本実施形態の中空発泡成形体200を成形する際に適用可能なポリプロピレン系樹脂としては、230℃におけるメルトテンションが30〜350mNの範囲内のポリプロピレンが好ましい。特に、ポリプロピレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体であることが好ましく、エチレン−プロピレンブロック共重合体を添加することが更に好ましい。
【0048】
また、ポリプロピレン系樹脂にブレンドされる水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、耐衝撃性を改善すると共に中空発泡成形体200としての剛性を維持するために、ポリプロピレン系樹脂に対して5〜40wt%、好ましくは、15〜30wt%の範囲で添加する。
【0049】
具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体などの水素添加ポリマーを用いる。また、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは、20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は10g/10分以下、好ましくは、5.0g/10分以下で、かつ、1.0g/10分以上である。
【0050】
また、ポリプロピレン系樹脂にブレンドされるポリオレフィン系重合体としては、低密度のエチレン−α−オレフィンが好ましく、1〜20wt%の範囲で配合することが好ましい。低密度のエチレン−α−オレフィンは、密度0.91g/cm3以下のものを用いることが好ましく、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体が好適であり、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があり、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好適である。また、上記の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは単独で用いたり、2種以上を併用したりすることも可能である。エチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、50〜99wt%の範囲である。また、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、1〜50wt%の範囲である。特に、メタロセン系触媒を用いて重合された直鎖状超低密度ポリエチレン又はエチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0051】
また、中空発泡成形体200の断熱性能を向上させる為には、中空発泡成形体200の肉厚を厚くすることが好ましい。中空発泡成形体200の肉厚を厚くすることで、中空発泡成形体200の通気路205の表面は、中空発泡成形体200の内部に吹き込まれた圧縮気体の抵抗を受け易くなるため、流路方向Aに向かって流体が流れやすく、且つ、通気路205の表面の凹凸208がなだらかな中空発泡成形体200を成形し易くすることができる。中空発泡成形体200の肉厚としては、2.0mm以上で構成し、好ましくは、3.0mm以上で構成する。また、中空発泡成形体200を成形する発泡パリソン13は、200℃におけるMFRが1g/10分以上、かつ、200℃におけるMTが6cN以上、かつ、MFR×MTが13以上となる配合が好ましい。
【0052】
<本実施形態の中空発泡成形体200の作用・効果>
このように、本実施形態の中空発泡成形体200は、発泡パリソン13を金型12a,12bで挟み込み、発泡パリソン13内が大気圧以上の内圧となるように、圧縮気体を発泡パリソン13内に流し、中空発泡成形体200を成形すると共に中空発泡成形体200を冷却する。このとき、圧縮気体は、中空発泡成形体200をダクトとして使用する際に、通気路205に流体を流通させる流路方向Aと同じ方向で流す。
【0053】
これにより、内部に通気路205を有して構成し、その通気路205の表面の凹凸208がなだらかな中空発泡成形体200を製造することができる。また、流路逆方向に比べて、流路方向Aに向かって流体が流れやすい通気路205を有する中空発泡成形体200を製造することができる。その結果、中空発泡成形体200の内部を流通させる流体の流量効率を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態のように、中空発泡成形体200を成形するためのブローと、中空発泡成形体200を冷却するためのブローと、を同時に行うことで、中空発泡成形体200の製造サイクルを短縮することができる。
【0055】
なお、上述した製造方法では、吹き込み針14と吹き出し針15とを同時に発泡パリソン13に突き刺すことにした。しかし、吹き込み針14と吹き出し針15とを同時に発泡パリソン13に突き刺す必要はなく、例えば、吹き込み針14を発泡パリソン13に先に突き刺した後に、吹き出し針15を発泡パリソン13に突き刺すことも可能である。
【0056】
また、上述した実施形態では、図4、図5に示すように、中空発泡成形体200が枝分かれしていない場合を例に説明した。しかし、図6に示すように、中空発泡成形体200が二股以上に枝分かれしている場合もある。このような中空発泡成形体200を製造する場合は、図6に示すように、各枝毎に吹き出し針15を設置し、吹き込み針14から圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して各枝毎に設置した吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧にて中空発泡成形体200を冷却する。これにより、各枝毎の通気路205に対して圧縮気体を流通させることができるため、中空発泡成形体200を容易に冷却することができると共に、各枝の通気路205の表面の凹凸208をなだらかにすることができる。また、各枝の通気路205の表面を流路方向Aに向かって流体が流れやすい形状にすることができる。
【0057】
また、上記実施形態では、吹き込み針14から圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、中空発泡成形体200を冷却することにした。しかし、空気等の圧縮気体ではなく、吹き込み針14から水等の冷却媒体を霧状に噴霧した圧縮気体(ミストエアー)を発泡パリソン13の内部に吹き込むことも可能である。これにより、中空発泡成形体200を容易に冷却することが可能になると共に、中空発泡成形体200の通気路205の表面の凹凸208をなだらかにすることができる。また、通気路205の表面を流路方向Aに向かって流体が流れやすい形状にすることができる。これは、水等の冷却媒体を霧状に噴霧した圧縮気体(ミストエアー)を発泡パリソン13の内部に吹き込むと、圧縮気体(ミストエアー)の抵抗力により、中空発泡成形体200の通気路205の表面の凹凸208をなだらかにすることができると共に、通気路205の表面を流路方向Aに向かって流体が流れやすい形状にすることができるためである。
【0058】
また、上記実施形態では、発泡剤が一様に混合されている材料から発泡パリソン13を形成することにした。しかし、発泡パリソン13を2層以上の多層構成として少なくとも最も内側の層が発泡剤を含有する構成にすることも可能である。
【0059】
また、上記実施形態では、分割金型12a,12bを型締め(密閉)した状態で、吹き込み針14から圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧を設定することにした。しかし、レギュレータ16,背圧レギュレータ17の差圧の設定の際に、レギュレータ16,背圧レギュレータ17同士をチューブで繋いで、吹き込み針14から圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧に設定することも可能である。分割金型12a,12bを型締め(密封)した状態で、レギュレータ16,背圧レギュレータ17の差圧の設定を調整する場合は、分割金型12a,12bの隙間から圧縮気体が漏れてしまい、所定のブロー圧を維持することができない場合がある。このため、レギュレータ16,背圧レギュレータ17同士をチューブで繋いで、吹き込み針14から圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧を設定することが好ましい。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0061】
第1の実施形態では、分割金型12a,12bを型締め(密閉)した状態で、吹き込み針14から圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を大気圧以上に高めてブロー成形を行うことにした。
【0062】
第2の実施形態では、分割金型12a,12bを型締め(密閉)した状態で、分割金型12a,12bのキャビティ10a,10bから吸引する減圧成形を行う。この場合、発泡パリソン13は、キャビティ10a,10bの壁面に吸着され、通気路205を有する中空発泡成形体200が成形される。
【0063】
次に、吹き込み針14から空気等の圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧にて中空発泡成形体200を冷却する。冷却方法は、第1の実施形態と同様な方法が適用可能である。
【0064】
これにより、内部に通気路205を有して構成し、その通気路205の表面の凹凸208がなだらかな中空発泡成形体200を製造することができる。また、流路逆方向に比べて、流路方向Aに向かって流体が流れやすい通気路205を有する中空発泡成形体200を製造することができる。
【0065】
<本実施形態の中空発泡成形体200の作用・効果>
このように、本実施形態の中空発泡成形体200は、発泡パリソン13を金型12a,12bで挟み込み、減圧成形により、通気路205を有する中空発泡成形体200を成形する。その後、中空発泡成形体200をダクトとして使用する際に、通気路205に流体を流通させる流路方向Aと同じ方向で、中空発泡成形体200を冷却させるための圧縮気体を通気路205に流し込み中空発泡成形体200を冷却する。
【0066】
これにより、内部に通気路205を有して構成し、その通気路205の表面の凹凸208がなだらかな中空発泡成形体200を製造することができる。また、流路逆方向に比べて、流路方向に向かって流体が流れやすい通気路205を有する中空発泡成形体200を製造することができる。その結果、中空発泡成形体200の内部を流通させる流体の流量効率を向上させることができる。
【0067】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0068】
第1、第2の実施形態では、発泡パリソン13を用いて中空発泡成形体200を成形することにした。第3の実施形態では、熱可塑性樹脂シートを用いて中空発泡成形体200を成形することを特徴とする。以下、図7を参照しながら、本実施形態の中空発泡成形体200について説明する。
【0069】
<中空発泡成形体200の製造方法例>
まず、図7を参照しながら、本実施形態の中空発泡成形体200の製造方法例について説明する。図7は、本実施形態の中空発泡成形体200を成形する成形装置の構成例を示す図である。
【0070】
本実施形態の中空発泡成形体200を成形するための成形装置は、押出装置101と、型締装置102と、を有して構成し、押出装置101から溶融状態の熱可塑性樹脂シート18,19を型締装置102に押し出し、型締装置102で熱可塑性樹脂シート18,19を型締めし、図1に示す中空発泡成形体200を成形する。
【0071】
押出装置101は、第1のアキュムレータ21と、第2のアキュムレータ22と、第1のプランジャー23と、第2のプランジャー24と、第1のTダイ25と、第2のTダイ26と、第1の押出機27と、第2の押出機28と、第1の熱可塑性樹脂供給ホッパ29と、第2の熱可塑性樹脂供給ホッパ30と、第1の一対のローラ31と、第2の一対のローラ32と、を有して構成する。
【0072】
型締装置102は、分割金型12a,12bと、型枠9a,9bと、を有して構成する。型枠9a,9bは、分割金型12a,12bの外周に位置している。分割金型12a,12bは、キャビティ10a,10bを有して構成する。
【0073】
まず、図7に示すように、第1壁部201を形成するための第1の熱可塑性樹脂シート18(溶融状態で、且つ、気泡セルを有する熱可塑性樹脂シート)を第1のTダイ25から押し出し、第1の熱可塑性樹脂シート18を一対の分割金型12a,12bの間に垂下させる。
【0074】
また、図7に示すように、第2壁部202を形成するための第2の熱可塑性樹脂シート19(溶融状態で、かつ、気泡セルを有する熱可塑性樹脂シート)を第2のTダイ26から押し出し、第2の熱可塑性樹脂シート19を一対の分割金型12a,12bの間に垂下させる。
【0075】
次に、型枠9a,9b及び一対の分割金型12a,12bを水平方向に前進させ、一対の分割金型12a,12bの外周に位置する型枠9a,9bを、第1の熱可塑性樹脂シート18及び第2の熱可塑性樹脂シート19に密着させる。これにより、型枠9a,9bにより第1の熱可塑性樹脂シート18及び第2の熱可塑性樹脂シート19を保持することができる。
【0076】
次に、第1の熱可塑性樹脂シート18及び第2の熱可塑性樹脂シート19を型枠9a,9bにより保持した状態で、一対の分割金型12a,12bを水平方向に前進させ、第1の熱可塑性樹脂シート18と、第2の熱可塑性樹脂シート19と、をそれぞれ一対の分割金型12a,12bのキャビティ10a,10bに真空吸引し、第1の熱可塑性樹脂シート18と、第2の熱可塑性樹脂シート19と、をキャビティ10a,10bに沿った形状にする。
【0077】
次に、型枠9a,9b及び一対の分割金型12a,12bを水平方向に前進させ、型枠9a,9b及び一対の分割金型12a,12bを閉じ、型締めする。これにより、一対の分割金型12a,12bが当接し、第1の熱可塑性樹脂シート18と、第2の熱可塑性樹脂シート19と、が接合して熱融着し、第1の熱可塑性樹脂シート18と、第2の熱可塑性樹脂シート19と、の接合面にパーティングライン203が形成され、通気路205を有する中空発泡成形体200を成形することになる。
【0078】
次に、中空発泡成形体200を一対の分割金型12a,12b内で冷却する。この時、吹き込み針14と吹き出し針15とを熱可塑性樹脂シート18,19に突き刺し、吹き込み針14から空気等の圧縮気体を熱可塑性樹脂シート18,19の内部に吹き込み、熱可塑性樹脂シート18,19の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、中空発泡成形体200を冷却する。冷却方法は、第1の実施形態と同様な方法が適用可能である。これにより、中空発泡成形体200を容易に冷却することが可能になると共に、通気路205の表面の凹凸208をなだらかにすることができる。また、通気路205の表面を流路方向Aに向かって流体が流れやすい形状にすることができる。
【0079】
次に、型枠9a,9b及び一対の分割金型12a,12bを水平方向に後退させ、型枠9a,9b及び一対の分割金型12a,12bを中空発泡成形体200から離型させる。
【0080】
なお、一対の分割金型12a,12bの間に垂下された熱可塑性樹脂シート18,19は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生するのを防止するため、樹脂シートの厚み、押出速度、押出方向の肉厚分布などを個別に調整することが必要になる。
【0081】
第1の熱可塑性樹脂シート18は、発泡剤を添加した熱可塑性樹脂を第1の押出機27により溶融混練した後、第1のアキュムレータ21のアキュム室に一時的に貯留され、一定間隔毎に第1のプランジャー23によって第1のTダイ25に供給されることになる。
【0082】
また、第2の熱可塑性樹脂シート19も、第1の熱可塑性樹脂シート18と同様に、発泡剤を添加した熱可塑性樹脂を第2の押出機28により溶融混練した後、第2のアキュムレータ22のアキュム室に一時的に貯留され、一定間隔毎に第2のプランジャー24によって第2のTダイ26に供給されることになる。
【0083】
第1のTダイ25により押し出された第1の熱可塑性樹脂シート18は、第1の一対のローラ31,31によって挟圧されて一対の分割金型12a,12b間に配置される。また、第2のTダイ26により押し出された第2の熱可塑性樹脂シート19は、第2の一対のローラ32,32によって挟圧されて一対の分割金型12a,12b間に配置される。この時、第1の熱可塑性樹脂シート18及び第2の熱可塑性樹脂シート19の厚み、肉厚分布などを個別に調整することになる。
【0084】
具体的には、まず、第1のアキュムレータ21及び第2のアキュムレータ22、第1のTダイ25及び第2のTダイ26により押出速度がそれぞれ別個に設定される。
【0085】
第1のアキュムレータ21及び第2のアキュムレータ22にそれぞれ接続される第1の押出機27及び第2の押出機28の押出能力は、中空発泡成形体200の大きさにより適宜選択することが可能である。しかし、第1の押出機27及び第2の押出機28の押出能力は、50kg/時以上であることが、中空発泡成形体200の成形サイクルを短縮させる観点から好ましい。
【0086】
また、ドローダウンの発生を防止する観点から、第1のTダイ25からの第1の熱可塑性樹脂シート18の押し出しは、40秒以内、さらに好ましくは、30秒以内に完了する必要がある。同様に、第2のTダイ26からの第2の熱可塑性樹脂シート19の押し出しも、40秒以内、さらに好ましくは、30秒以内に完了する必要がある。
【0087】
このため、第1のアキュムレータ21のアキュム室及び第2のアキュムレータ22のアキュム室に貯留された熱可塑性樹脂は、第1のTダイ25及び第2のTダイ26のスリットの開口から1cm2当り50kg/時以上、好ましくは、60kg/時以上で押し出されることになる。この際、第1のTダイ25及び第2のTダイ26の各スリット隙間を熱可塑性樹脂シート18,19の押し出しに併せて変動させることによりドローダウンの影響を最小限に抑えることができる。
【0088】
つまり、ドローダウン現象により熱可塑性樹脂シート18,19の上方へ行くに従い自重により引き伸ばされて薄くなる肉厚に対して、第1のTダイ25及び第2のTダイ26の各スリット隙間を、樹脂シートの押出開始から徐々に広げて、熱可塑性樹脂シート18,19の上方ほどスリット隙間を広くすることで、熱可塑性樹脂シート18,19の上方から下方にわたって均一な厚みに調整することができる。
【0089】
さらに、第1のTダイ25及び第2のTダイ26から押し出された熱可塑性樹脂シート18,19の押出速度に対して、第1の一対のローラ31,31及び第2の一対のローラ32,32の回転速度を変動させることで、第1のTダイ25及び第2のTダイ26からの熱可塑性樹脂シート18,19の押出速度と、第1の一対のローラ31,31及び第2の一対のローラ32,32による熱可塑性樹脂シート18,19の送り速度と、の差により、第1のTダイ25及び第2のTダイ26から第1の一対のローラ31,31及び第2の一対のローラ32,32まで熱可塑性樹脂シート18,19を延伸させて樹脂シートの厚みを薄く調整することができる。
【0090】
第1のTダイ25及び第2のTダイ26にそれぞれ供給された熱可塑性樹脂は、図示しない各Tダイ本体のマニホールドから樹脂流路を通ってスリットから樹脂シートとして押し出される。各Tダイ本体は、一方のダイ及び他方のダイを重ね合わせて構成し、各Tダイ本体の先端部分において一方のダイリップ及び他方のダイリップがスリット隙間をもって対向しており、スリット隙間の間隔は、スリット隙間調整装置33により設定される。
【0091】
第1のTダイ25及び第2のTダイ26から押し出される樹脂シートの厚みは、スリット隙間により決定されるが、そのスリット隙間は、公知のスリット隙間調整装置33によって樹脂シートの幅方向における均一性が調整されることになる。更に、図示しないスリット隙間駆動装置により、間欠的に押し出される樹脂シートの押出開始から樹脂シートの押出終了までの間で他方のダイリップを変動させて、樹脂シートの押出方向の厚みが調整されることになる。
【0092】
スリット隙間調整装置33としては、熱膨張式または機械式があり、その両方の機能を併せ持つ装置を用いることが好ましい。
【0093】
スリット隙間調整装置33は、スリットの幅方向に沿って等間隔に複数配置され、各スリット隙間調整装置33によってスリット隙間をそれぞれ狭くしたり、広くしたりすることで幅方向における樹脂シートの厚みを均一なものにすることができる。
【0094】
スリット隙間調整装置33は、一方のダイリップに向けて進退自在に設けたダイボルトを有し、その先端に圧力伝達部を介して調整軸が配置されている。調整軸には締結ボルトにより係合片が結合されており、係合片は一方のダイリップに連結されている。ダイボルトを前進させると圧力伝達部を介して調整軸が先端方向に押し出されて一方のダイリップが押圧される。これにより、ダイリップは凹溝の部位で変形されてスリット隙間が狭くなる。スリット隙間を広くするにはこれと逆にダイボルトを後退させる。
【0095】
さらに、上記機械式の調整手段に合わせて熱膨張式の調整手段を用いることで精度良くスリット隙間を調整することができる。具体的には、図示しない電熱ヒーターにより調整軸を加熱して熱膨張させることで一方のダイリップが押圧され、スリット隙間が狭くなる。
【0096】
また、スリット隙間を広くするには電熱ヒーターを停止させ、図示しない冷却手段により調整軸を冷却して収縮させる。
【0097】
第1のTダイ25及び第2のTダイ26から押し出された樹脂シートは、一対の分割金型12a,12b間に垂下された状態で、つまり、型締めされる時点において押出方向の厚みが均一となるように調整することが好ましい。この場合、スリット隙間を、樹脂シートの押出開始から徐々に広げ、樹脂シートの押出終了時に最大となるように変動させる。
【0098】
これにより、第1のTダイ25及び第2のTダイ26から押し出される樹脂シートの厚みは、樹脂シートの押出開始から徐々に厚くなるが、溶融状態で押し出された樹脂シートは、自重により引き伸ばされて樹脂シートの下方から上方へ徐々に薄くなるため、スリット隙間を広げて厚く押し出した分とドローダウン現象により引き伸ばされて薄くなった分とが相殺されて、樹脂シート上方から下方にわたって均一な厚みに調整することができる。
【0099】
一対の分割金型12a,12b内に垂下させる第1の熱可塑性樹脂シート18及び第2の熱可塑性樹脂シート19は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生するのを防止し、高い発泡倍率とすることにより良好な軽量性、断熱性を有する第1の壁部201及び第2の壁部202を得る観点から溶融張力の高い材料を用いることが必要である。
【0100】
具体的には、230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が5.0g/10分以下、更に好ましくは、1.5〜3.0g/10分とする。なお、一般に、Tダイのスリットから薄く押し出す観点から、フィルム等の成形では230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分より大きく、具体的には5.0〜10.0g/10分のものが用いられている。
【0101】
なお、上記実施形態では、2枚の熱可塑性樹脂シート18,19を用いて中空発泡成形体200を成形することにした。しかし、1枚の熱可塑性樹脂シートを用いて中空発泡成形体200を成形することも可能である。この場合は、1枚の熱可塑性樹脂シートをコの字状に成形し、例えば、図3に示すように、一方の壁面がない状態の中空発泡成形体200を成形することになる。
【0102】
<本実施形態の中空発泡成形体200の作用・効果>
このように、本実施形態の中空発泡成形体200は、熱可塑性樹脂シート18,19を金型12a,12bで挟み込み、通気路205を有する中空発泡成形体200を成形する。そして、中空発泡成形体200をダクトとして使用する際に、通気路205に流体を流通させる流路方向Aと同じ方向で、中空発泡成形体200を冷却させるための圧縮気体を通気路205に流し込み中空発泡成形体200を冷却する。
【0103】
これにより、内部に通気路205を有して構成し、その通気路205の表面の凹凸208がなだらかな中空発泡成形体200を製造することができる。また、流路逆方向に比べて、流路方向に向かって流体が流れやすい通気路205を有する中空発泡成形体200を製造することができる。その結果、中空発泡成形体200の内部を流通させる流体の流量効率を向上させることができる。
【0104】
(実施例)
次に、本実施形態の中空発泡成形体200の具体的な実施例について説明する。但し、以下に説明する実施例は一例であり、以下の実施例に限定するものではない。
【0105】
本実施例では、以下の条件で中空発泡成形体200を製造する。
【0106】
発泡パリソンの原料配合
WB140/FB3312/FX201=70部/20部/10部、PO217K:1部、999018:1部
但し、WB140:ボレアリス社製のHMS-PP(High Melt Strength-PP:高溶融張力ポリプロピレン)
FB3312:日本ポリプロ社製のHMS-PP
FX201:住友化学工業株式会社製のLLDPE(Linear Low Density Polyethylene:直鎖状低密度ポリエチレン)
PO217K:大日精化工業(株)製の無機系発泡剤
999018:東京インキ(株)製のカーボンブラックマスターバッチ
【0107】
溶融物性
MFR(230℃)=6g/10分、MT(230℃)=3.5g/10分
但し、上記の値は、成形品の一部を採取し、200℃、約−0.1kg/cm2に調整されたオーブン内で15分間放置して脱泡したものを測定した時の値である。
【0108】
なお、MTは、ASTM D 1238に準拠して製作された、例えば、東洋精機製メルトテンションテスターII型で測定する。測定方法は、まず、ストランドを測定
装置の滑車にかけ、巻取り速度を1.3×10-2m/sec2で加速させ、ストランドが破断した回転数Xrpmを測定する。MT測定の際の巻取り速度は、X×0.7rpmで行い、この時の読み取り値の平均をMTとする。
【0109】
<実施例1>
最終成形体の中空発泡成形体200の発泡倍率が3.0倍、肉厚が3.0mmとなるように調整し、発泡パリソンを作成し、ブロー成形を行う。このため、発泡パリソンを形成する際のスリット幅を0.6mmとした。次に、ブロー成形を行った発泡パリソンの内部に圧縮気体を吹き込んで中空発泡成形体200を冷却し、最終成形体の中空発泡成形体200の発泡倍率が3.0倍であり、肉厚が3.0mmである中空発泡成形体200を成形した。実施例1では、内部に吹き込んだ圧縮気体の圧力を1kg/cm3とした。また、実施例1では、発泡パリソンの内部に圧縮気体を吹き込む吹き込み口だけが存在し、その吹き込み口から圧縮気体を吹き出すことにした(エアー循環無し)。
【0110】
<実施例2>
最終成形体の中空発泡成形体200の発泡倍率が3.0倍、肉厚が3.0mmとなるように調整し、発泡パリソンを作成し、ブロー成形を行う。このため、発泡パリソンを形成する際のスリット幅を0.6mmとした。次に、ブロー成形を行った発泡パリソンの内部に吹き込み針14から圧縮気体を吹き込み、吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧にて中空発泡成形体200を冷却し、最終成形体の中空発泡成形体200の発泡倍率が3.0倍であり、肉厚が3.0mmである中空発泡成形体200を成形した。実施例2では、吹き込み針14から吹き込んだ圧縮気体の圧力を2kg/cm3とし、吹き出し針15から吹き出した圧縮気体の圧力を1kg/cm3とし、ブロー圧の差圧を1kg/cm3とした。また、実施例2では、発泡パリソンの内部に圧縮気体を吹き込む吹き込み口と、圧縮気体を吹き出す吹き出し口と、が各々存在し、吹き出し口から圧縮気体を吹き出すことにした(エアー循環有り)。但し、実施例2では、吹き込み針14は、図1に示す中空発泡成形体200の供給口206側を構成する部位に突き刺し、圧縮気体を発泡パリソンの内部に吹き込むための吹き込み口を形成し、また、吹き出し針15は、図1に示す中空発泡成形体200の排出口207側を構成する部位に突き刺し、圧縮気体を発泡パリソンの内部から外部に吹き出すための吹き出し口を形成することにした(エアー循環順方向)。なお、吹き込み針14は、図8(a)に示すタケヤリ針を使用し、吹き出し針15は、図8(b)に示すロケット針を使用した。図8(a)に示すように、タケヤリ針は、針の差込方向と吹き込み/吹き出し方向が同一である。一方、図8(b)に示すように、ロケット針は、吹き込み/吹き出し方向が針の差込方向と交差する方向にある。なお、タケヤリ針は、加工が簡単であるという利点があるが、吹き出し針として使用すると、針先端穴から樹脂が入り込み、エアーの吹き出しができなくなるおそれがある。このため、吹き出し針15には、図8(b)に示すロケット針を使用することが好ましい。
【0111】
<実施例3>
最終成形体の中空発泡成形体200の発泡倍率が3.0倍、肉厚が3.0mmとなるように調整し、発泡パリソンを作成し、ブロー成形を行う。このため、発泡パリソンを形成する際のスリット幅を0.6mmとした。次に、ブロー成形を行った発泡パリソンの内部に吹き込み針14から圧縮気体を吹き込み、吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧にて中空発泡成形体200を冷却し、最終成形体の中空発泡成形体200の発泡倍率が3.0倍であり、肉厚が3.0mmである中空発泡成形体200を成形した。実施例3では、吹き込み針14から吹き込んだ圧縮気体の圧力を2kg/cm3とし、吹き出し針15から吹き出した圧縮気体の圧力を1kg/cm3とし、ブロー圧の差圧を1kg/cm3とした。また、実施例3では、実施例2と同様に、発泡パリソンの内部に圧縮気体を吹き込む吹き込み口と、圧縮気体を吹き出す吹き出し口と、が各々存在し、吹き出し口から圧縮気体を吹き出すことにした(エアー循環有り)。但し、実施例3では、吹き込み針14は、図1に示す中空発泡成形体200の排出口207側を構成する部位に突き刺し、圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込むための吹き込み口を形成し、また、吹き出し針15は、図1に示す中空発泡成形体200の供給口206側を構成する部位に突き刺し、圧縮気体を発泡パリソン13の内部から外部に吹き出すための吹き出し口を形成することにした(エアー循環逆方向)。即ち、実施例3は、吹き込み口と、吹き出し口と、を実施例2と逆にした。
【0112】
<内面温度測定結果>
実施例1において、冷却時間を45秒,60秒,75秒とし、中空発泡成形体200の通気路205の内面温度を測定した結果を図9に示す(図9に示すエアー循環無し)。また、実施例2において、冷却時間を45秒,60秒,75秒とし、中空発泡成形体200の通気路205の内面温度を測定した結果を図9に示す(図9に示すエアー循環有り)。
【0113】
図9に示す測定結果から明らかなように、エアー循環有りの場合の方が、エアー循環無しの場合よりも通気路205の内面温度が低下していることが判明した。このため、実施例2のように、ブロー成形した発泡パリソンの内部に吹き込み針14から圧縮気体を吹き込み、吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧にて中空発泡成形体200を冷却することで、実施例1よりも中空発泡成形体200を早く冷却することができる。その結果、中空発泡成形体200の成形サイクルの効率化を図ることができる。また、中空発泡成形体200の内部の冷却を早くすることができるため、中空発泡成形体200の内部の気泡が粗大化し、破泡が発生し、内部の表面が荒れてしまうことも回避することができる。
【0114】
<表面粗さ測定結果>
実施例1において、冷却時間を60秒とし、中空発泡成形体200の通気路205の表面粗さを測定した結果を図10(a)に示す(図10(a)に示すエアー循環無し)。また、実施例2において、冷却時間を60秒とし、中空発泡成形体200の通気路205の表面粗さを測定した結果を図10(b)に示す(図10(b)に示すエアー循環有り)。図10において、Raは、算術平均粗さであり、Ryは、最大高さであり、Rzは、十点平均粗さであり、Smは、凹凸の平均間隔であり、JIS B 0601(1994)に準拠して測定した結果である。図10に示す測定結果は、通気路205の表面の5点を測定し、その平均値(AVE)を算出した。
【0115】
図10に示す測定結果から明らかなように、エアー循環有りの場合の方が、エアー循環無しの場合よりも通気路205内の表面の凹凸208がなだらかなことが判明した。このため、実施例2のように、ブロー成形した発泡パリソンの内部に吹き込み針14から圧縮気体を吹き込み、吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧にて中空発泡成形体200を冷却することで、実施例1よりも中空発泡成形体200の通気路205内の表面の凹凸208をなだらかにすることができる。また、実施例2は、通気路205の表面を流路方向Aに向かって流体が流れやすい形状にすることができる。その結果、中空発泡成形体200の内部を流通させる流体の流量効率を向上させることができる。
【0116】
<圧力損失測定結果>
実施例1において冷却時間を60秒として成形した中空発泡成形体200の圧力損失測定結果を図11に示す(図11に示すエアー循環なし)。また、実施例2において冷却時間を60秒として成形した中空発泡成形体200の圧力損失測定結果を図11に示す(図11に示すエアー循環順方向)。また、実施例3において冷却時間を60秒として成形した中空発泡成形体200の圧力損失測定結果を図11に示す(図11に示すエアー循環逆方向)。但し、圧力損失測定結果は、図12に示す圧力損失測定装置を用いて、以下の手順で行った。但し、系内の風量は、JIS B 8330に準拠したベルマウス式流量計1により調整する。
【0117】
まず、圧力チャンバー3に中空発泡成形体200を測定サンプル7として接続する。次に、ブロアー2を作動させる。なお、圧力チャンバー3内には、整流メッシュ4が配置されており、ブロアー2から吹き出した空気を整流メッシュ4で整流している。次に、ベルマウス式流量計1に接続された第1の差圧計5の圧力P(60秒間の平均値)を測定し、空気流量Qを算出する。空気流量Qは、以下の算出式を用いて算出する。
【0118】
Q=60 α A(2P/ρ)1/2
ρ=1.293×273.2/(273.2+T)
但し、Q:空気流量(m3/min)、α:流量係数=0.99、A:管路断面積(m2)、P:測定圧力(Pa)、ρ:空気密度(kg/m3)、T:温度(℃)。
【0119】
次に、上記算出した空気流量Qが規定流量(本実施例では、供給風量が333(m3/h))になるようにブロアー2の出力を調整する。次に、第2の差圧計6にて圧力チャンバー3内の圧力を測定し、圧力損失(60秒間の平均値)を算出する。圧力損失は、25℃の時の圧力損失を算出した。これにより、図11に示す圧力損失測定結果を得た。
【0120】
図11に示す測定結果から明らかなように、エアー循環有り(エアー循環順方向、エアー循環逆方向)の場合の方が、エアー循環無しの場合よりも圧力損失が少ないことが判明した。更に、エアー循環有りの場合において、エアー循環順方向の場合の方が、エアー循環逆方向の場合よりも圧力損失が少ないことが判明した。このため、実施例2、3のように、ブロー成形した発泡パリソンの内部に吹き込み針14から圧縮気体を吹き込み、吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧にて中空発泡成形体200を冷却することで、実施例1よりも中空発泡成形体200の内部を流通させる流体の流量効率を向上させることができる。更に、実施例2のように、吹き込み針14は、図1に示す中空発泡成形体200の供給口206側を構成する部位に突き刺し、圧縮気体を発泡パリソンの内部に吹き込むための吹き込み口を形成し、吹き出し針15は、図1に示す中空発泡成形体200の排出口207側を構成する部位に突き刺し、圧縮気体を発泡パリソンの内部から外部に吹き出すための吹き出し口を形成することで、実施例3よりも中空発泡成形体200の内部を流通させる流体の流量効率を更に向上させることができる。
【0121】
因みに、上記実施例1〜3において、最終成形体の中空発泡成形体200の発泡倍率が3.0倍、肉厚が2.0mmとなるように調整し、発泡パリソンを形成する際のスリット幅を0.5mmとし、冷却時間を60秒とした場合において、エアー循環有りの場合の最終成形体の中空発泡成形体200の十点平均粗さRzは、Rz=55μmであり、エアー循環無しの場合の最終成形体の中空発泡成形体200の十点平均粗さRzは、Rz=80μmであった。また、エアー循環順方向の場合の圧力損失は、200Paであり、エアー循環逆方向の場合の圧力損失は、202Paであり、その差は、2Paであった。
【0122】
これにより、最終成形体の中空発泡成形体200の肉厚が2mmとなるようにした場合でも、エアー循環有り(エアー循環順方向、エアー循環逆方向)の場合の方が、エアー循環無しの場合よりも圧力損失が少ないことが判明した。更に、エアー循環有りの場合において、エアー循環順方向の場合の方が、エアー循環逆方向の場合よりも圧力損失が少ないことが判明した。但し、最終成形体の中空発泡成形体200の肉厚が3mm以上となるようにした場合よりも効果は少ない。このため、中空発泡成形体200の内部を流通させる流体の流量効率を向上させるためには、最終成形体の中空発泡成形体200の肉厚が3mm以上となるように成形することが好ましい。
【0123】
また、上記実施例2、3において、最終成形体の中空発泡成形体200の肉厚が3mmとなるように調整し、発泡パリソンを形成する際のスリット幅を0.6mmとし、冷却時間を60秒とした場合において、水を霧状に噴霧した圧縮気体(ミストエアー)を適用した場合は、エアー循環有りの場合の最終成形体の中空発泡成形体200の十点平均粗さRzは、Rz=45μmであった。また、エアー循環順方向の場合の圧力損失は、196Paであり、エアー循環逆方向の場合の圧力損失は、200Paであり、その差は、4Paであった。
【0124】
これにより、圧縮気体としてミストエアーを適用することで、ミストエアーを適用しない場合よりも、中空発泡成形体200の通気路205内の表面の凹凸208をなだらかにすることができることが判明した。また、圧力損失を少なくすることができることが判明した。
【0125】
なお、上記実施例2のように、通気路205の表面の十点平均粗さRzがRz=69.8μm以下であれば、中空発泡成形体200の内部を流通させる流体の流量効率を向上させることができるが、通気路205の表面の十点平均粗さRzがRz=100μm以下であれば、中空発泡成形体200の内部を流通させる流体の流量効率を向上させることができる。
【0126】
また、上記実施例2、3では、ブロー圧の差圧を設けることにしたが、ブロー圧の差圧を設けないようにすることも可能である。
【0127】
また、上記実施例では、最終成形体の中空発泡成形体200の発泡倍率が3.0倍、肉厚が3.0mmとなるように、発泡パリソンを形成する際のスリット幅を0.6mmとし、また、最終成形体の中空発泡成形体200の発泡倍率が3.0倍、肉厚が2.0mmとなるように、発泡パリソンを形成する際のスリット幅を0.5mmとした。これは、スリットから押し出された発泡パリソンは発泡し、目標とする最終成形体の中空発泡成形体200の肉厚よりも厚くなり、ブロー成形時に肉厚が少し薄くなり、冷却後に、最終成形体の中空発泡成形体200の肉厚に近づくためである。しかし、プリブローの有無やブロー圧等の条件により、最終成形体の中空発泡成形体200の肉厚は変化するため、条件に応じてスリット幅を適宜調整することになる。
【0128】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0129】
例えば、上述する実施形態では、第1の壁部201と、第2の壁部202と、は同じ発泡樹脂で構成することにした。しかし、第1の壁部201と、第2の壁部202と、は異なる発泡樹脂で構成し、発泡倍率を異ならせることも可能である。
【0130】
また、上述した第3の実施形態では、溶融状態の熱可塑性樹脂シートを用いて型締めし、中空発泡成形体200を成形する好適な成形方法を用いた場合について説明した。しかし、本実施形態の中空発泡成形体200は、上記実施形態で説明した成形方法に限定せず、例えば、特開2009−233960号公報等に開示されている成形方法(固形化した板状のシートを、再加熱し、その再加熱したシートをブロー成形して中空発泡成形体200を成形する方法)等を適用して成形することも可能である。この場合も、上述した製造方法と同様に、再加熱したシートをブロー成形した後に、そのシートに吹き込み針14と吹き出し針15とを突き刺し、吹き込み針14から空気等の圧縮気体をシートの内部に吹き込み、シートの内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、中空発泡成形体200を冷却する。これにより、中空発泡成形体200を容易に冷却することが可能になると共に、中空発泡成形体200の通気路205の表面の凹凸208をなだらかにすることができる。また、通気路205の表面を流路方向Aに向かって流体が流れやすい形状にすることができる。
【0131】
また、中空発泡成形体200をダクトとして使用する際に通気路205に供給する流体の流量に応じて、圧縮気体を通気路205に流し込む際の流量を調整するようにすることも可能である。
【0132】
また、上記実施形態では、2つの分割金型12a,12bを用いた場合について説明した。しかし、分割金型12a,12bは、2つに限定するものではなく、任意の数の分割金型を用いることも可能である。
【0133】
また、上述した実施形態では、自動車に好適な中空発泡成形体200について説明した。しかし、本実施形態の中空発泡成形体200は、自動車に限定するものではなく、中空発泡成形体200の形状を適宜設計変更し、列車、船舶、航空機等の輸送機にも適用することができる。なお、本実施形態の中空発泡成形体200は、軽量化及び低コスト化を図ることができるため、輸送機のコストを低減することができると共に、輸送機の燃費も向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、自動車、列車、船舶、航空機等の輸送機等に適用可能である。
【符号の説明】
【0135】
200 中空発泡成形体
201 第1の壁部
202 第2の壁部
203 パーティングライン
205 通気路
206 供給部
207 排出口
208 凹凸
10a、10b キャビティ
11 環状ダイス
12a、12b 分割金型
13 発泡パリソン
14 吹き込み針
15 吹き出し針
16 レギュレータ
17 背圧レギュレータ
A 流路方向
101 押出装置
102 型締装置
21 第1のアキュムレータ
22 第2のアキュムレータ
23 第1のプランジャー
24 第2のプランジャー
25 第1のTダイ
26 第2のTダイ
27 第1の押出機
28 第2の押出機
29 第1の熱可塑性樹脂供給ホッパ
30 第2の熱可塑性樹脂供給ホッパ
31 第1の一対のローラ
32 第2の一対のローラ
33 スリット隙間調整装置
9a,9b 型枠
18 第1の熱可塑性樹脂シート
19 第2の熱可塑性樹脂シート
1 ベルマウス式流量計
2 ブロアー
3 圧力チャンバー
4 整流メッシュ
5 第1の差圧計
6 第2の差圧計
7 測定サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂を金型で挟み込み、通気路を有する中空発泡成形体を成形する成形工程と、
前記中空発泡成形体を冷却させるための流体を前記通気路に流し、前記中空発泡成形体を冷却する冷却工程と、
を有することを特徴とする中空発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
発泡樹脂を金型で挟み込み、前記発泡樹脂の内部に、前記発泡樹脂の内部が大気圧以上の内圧となるように前記流体を流し、前記通気路を有する中空発泡成形体を成形すると共に、前記中空発泡成形体を冷却することを特徴とする請求項1に記載の中空発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
前記中空発泡成形体をダクトとして使用する際に、前記通気路に流体を流通させる流路方向と同じ方向で、前記流体を流すことを特徴とする請求項1または2に記載の中空発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
前記中空発泡成形体の肉厚が3mm以上になるように成形することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の中空発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
冷却媒体を霧状に噴霧した流体を前記通気路に流し、前記中空発泡成形体を冷却することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の中空発泡成形体の製造方法。
【請求項6】
前記流体を前記通気路に流し込むための吹き込み口と、前記流体を前記通気路から吹き出すための吹き出し口と、を前記中空発泡形成体に形成し、前記吹き込み口から前記流体を前記通気路に吹き込み、前記吹き出し口から前記流体を吹き出し、前記中空発泡形成体を冷却することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の中空発泡成形体の製造方法。
【請求項7】
前記吹き込み口は、前記中空発泡成形体をダクトとして使用する際に前記通気路に流体を供給する供給口側であり、
前記吹き出し口は、前記中空発泡成形体をダクトとして使用する際に前記通気路から流体を排出する排出口側であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の中空発泡成形体の製造方法。
【請求項8】
内部に通気路を有する中空発泡成形体であって、
前記通気路の表面の十点平均粗さRzは、100μm以下であることを特徴とする中空発泡成形体。
【請求項9】
前記通気路に流体を流したときの圧力損失は、前記通気路に前記流体を順方向に流した場合の方が、前記通気路に前記流体を逆方向に流した場合よりも小さいことを特徴とする請求項8記載の中空発泡成形体。
【請求項10】
前記中空発泡成形体の肉厚は、2.0mm以上であり、発泡倍率が2.5倍以上であることを特徴とする請求項8または9記載の中空発泡成形体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−6198(P2012−6198A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142769(P2010−142769)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】