説明

中空粒子含有マスターバッチ

【課題】中空粒子含有マスターバッチにおいて、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して有機合成樹脂中に微細凝集粒子として分散させ、かつ、固形分としてより多くの量を混入できるようにすることによって、シリカナノ中空粒子の応用分野を更に広げるとともに使用を容易にすることができること。
【解決手段】シリカナノ中空粒子1がエタノールと表面修飾剤としての変性シリコーンオイルに配合され(S10)、高速攪拌機で攪拌・分散され(S11)、略5μmの粒子径まで凝集した巨大凝集粒子が分散され、篩で濾過された(S12)後に、湿式ジェットミルによって強力に分散させられて、略0.5μm以下の粒子径の微細凝集粒子となる(S13)。以下、三工程を経て得られた分散性シリカナノ中空粒子5が有機合成樹脂6と加熱混練され(S17)、押出成形されて(S18)、ペレット化され(ステップS19)、中空粒子含有マスターバッチ10が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略30nmから略300nmまでの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子(以下、「シリカナノ中空粒子」ともいう。)の有機合成樹脂への混入量を増加させることによって、使用をより容易にした中空粒子含有マスターバッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジー研究の一環として、数百ナノメートル以下の粒子径を有する微粒子についての応用研究が盛んに行われている。その一例として、特許文献1に記載の高分散シリカナノ中空粒子及びそれを製造する方法の発明がある。このシリカナノ中空粒子は、緻密なシリカ殻からなるナノ中空粒子であって、細孔分布において2nm〜20nmの細孔が検出されないものであり、炭酸カルシウムを調整する第1工程、それにシリカをコーティングする第2工程、炭酸カルシウムを溶解させてシリカナノ中空粒子とする第3工程によって製造される。
【0003】
この特許文献1に係る高分散シリカナノ中空粒子は、中空で、かつ、シリカ殻が薄いため、断熱性及び透明性に優れ、特許文献2に示されるように、塗料・フィルム・合成繊維中に均一に分散させることによって、断熱塗料・断熱フィルム・断熱繊維を得ることができて幅広い技術分野に応用することができ、その他にも、多方面に亘る応用が期待されている。この応用分野を更に広げるとともに、シリカナノ中空粒子の使用を容易にするためには、特許文献3,特許文献4に示されるように、マスターバッチとして供給されることが要望されている。
【特許文献1】特開2005−263550号公報
【特許文献2】特開2007−070458号公報
【特許文献3】特開2006−176750号公報
【特許文献4】特開2007−277433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の高分散シリカナノ中空粒子においては、略30nm〜略300nmの外径を有する微小粒子であるため、凝集を起こし易く、水・有機溶媒等の溶媒中においても、溶融した有機合成樹脂に混入する場合においても、直ちに凝集して数μm〜数十μmの大きさの巨大凝集粒子となってしまい、塗料・フィルム・合成繊維中に数百nmの大きさの微細凝集粒子として均一に分散させることは、実際上は困難であるため、シリカナノ中空粒子の有する断熱性・透明性・低比誘電率といった優れた特性を充分に発現させることができない。
【0005】
また、シリカ殻からなるナノ中空粒子は、略150m2 /gという極めて大きい比表面積を有しているため、塗料や溶融した有機合成樹脂等に混入しようとしても僅かな重量%しか混入することができなかった。この大きな比表面積の値は、シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に微細な分子レベルの凹凸が存在しているためと推測される。このため、上記特許文献3,特許文献4に示されるようなマスターバッチとして供給することが困難であるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して有機合成樹脂中に微細凝集粒子として分散させ、かつ、固形分としてより多くの量を混入できるようにすることによって、シリカナノ中空粒子の応用分野を更に広げるとともに使用を容易にすることができる中空粒子含有マスターバッチを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る中空粒子含有マスターバッチは、略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子を有機合成樹脂中に略均一に分散してペレット状に成形してなるマスターバッチであって、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に表面修飾剤を反応付加させて表面修飾してなる分散性シリカナノ中空粒子を前記有機合成樹脂中に20重量%〜40重量%の範囲内で含有させてなるものである。
【0008】
ここで、「表面修飾剤」としては、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物等や、モノアミン変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイルを始めとする変性シリコーンオイル等を用いることができる。
【0009】
なお、本発明において数値に「略」が付されているものは、臨界値、境界値として当該値が出てきたものではなく、その数値は大凡の値として捉えているものである。
【0010】
請求項2の発明に係る中空粒子含有マスターバッチは、請求項1の構成において、前記分散性シリカナノ中空粒子は、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と前記表面修飾剤を加えて湿式ジェットミルで強力に分散させるとともに、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に前記表面修飾剤を反応付加させて表面修飾してなるものである。
【0011】
ここで、「有機溶媒」としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができる。また、「湿式ジェットミル」としては、エス・ジー・エンジニアリング(株)製のナノマイザー、(株)エスエムテー製の超高圧式ホモジナイザーLAB2000、(株)スギノマシン製のアルティマイザー、等を用いることができる。
【0012】
請求項3の発明に係る中空粒子含有マスターバッチは、請求項2の構成において、前記表面修飾は、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に前記有機溶媒と前記表面修飾剤を加えて混合物を作製し、該混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態として、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させるものである。
【0013】
請求項4の発明に係る中空粒子含有マスターバッチは、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記有機合成樹脂はポリエチレンまたはポリプロピレンであるものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明に係る中空粒子含有マスターバッチは、略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子を有機合成樹脂中に略均一に分散してペレット状に成形してなるマスターバッチであって、シリカ殻からなるナノ中空粒子に表面修飾剤を反応付加させて表面修飾してなる分散性シリカナノ中空粒子を有機合成樹脂中に20重量%〜40重量%の範囲内で、より好ましくは30重量%〜40重量%の範囲内で、含有させてなる。
【0015】
ここで、「表面修飾剤」としては、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物等や、モノアミン変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイルを始めとする変性シリコーンオイル等を用いることができる。
【0016】
略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子を、溶融した有機合成樹脂に混入しようとしても、通常のラボプラストミルやニーダー等の加熱混練機では、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子に凝集したシリカ殻からなるナノ中空粒子を、数百nmオーダーの微細凝集粒子に分散させるのは困難である。また、シリカ殻からなるナノ中空粒子は、略150m2 /gという極めて大きい比表面積を有しているため、溶融した有機合成樹脂に混入しようとしても僅かな重量%しか混入することができなかった。この大きな比表面積の値は、シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に微細な分子レベルの凹凸が存在しているためと推測される。
【0017】
そこで、シリカ殻からなるナノ中空粒子に表面修飾剤を反応付加させて表面修飾することによって、表面修飾剤で微細な分子レベルの凹凸が埋められるものと推測され、比表面積が減少することが分かっている。このように表面修飾することによって、シリカ殻からなるナノ中空粒子の分散性が向上して、一旦微細分散したシリカ殻からなるナノ中空粒子は、容易には再凝集することがなくなり、ほぼ全てのシリカ殻からなるナノ中空粒子が微細分散して、数百nmの外径を有する微細凝集粒子となった分散性シリカナノ中空粒子が得られる。
【0018】
こうして得られた分散性シリカナノ中空粒子は、微細凝集粒子の周囲が表面修飾剤によって表面修飾されているため、溶融した有機合成樹脂に混入する場合にも巨大凝集粒子に凝集することなく、微細凝集粒子に分散させた状態で混入することができる。しかも、上述したように比表面積が減少する結果、数百nmの外径を有する微細凝集粒子に分散させた状態で混入するにも関わらず、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子を混入する場合よりも、より多くの量のシリカナノ中空粒子を混入することができる。
【0019】
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して有機合成樹脂中に微細凝集粒子として分散させ、かつ、固形分としてより多くの量を混入できるようにすることによって、シリカナノ中空粒子の応用分野を更に広げるとともに使用を容易にすることができる中空粒子含有マスターバッチとなる。
【0020】
請求項2の発明に係る中空粒子含有マスターバッチにおいては、分散性シリカナノ中空粒子は、シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて湿式ジェットミルで強力に分散させるとともに、シリカ殻からなるナノ中空粒子に表面修飾剤を反応付加させて表面修飾してなる。
【0021】
ここで、「有機溶媒」としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができる。また、「湿式ジェットミル」としては、エス・ジー・エンジニアリング(株)製のナノマイザー、(株)エスエムテー製の超高圧式ホモジナイザーLAB2000、(株)スギノマシン製のアルティマイザー、等を用いることができる。
【0022】
上述したように、略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子は、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子に凝集しているため、数百nmオーダーの微細凝集粒子に分散させるのは困難である。そこで、まず有機溶媒と表面修飾剤を加えて、湿式ジェットミルで強力な攪拌・分散を行って、シリカ殻からなるナノ中空粒子の大部分を微細分散させる。
【0023】
そして、シリカ殻からなるナノ中空粒子に表面修飾剤を反応付加させて表面修飾する。このように表面修飾することによって、シリカ殻からなるナノ中空粒子の分散性が向上して、一旦微細分散したシリカ殻からなるナノ中空粒子は、容易には再凝集することがなくなり、ほぼ全てのシリカ殻からなるナノ中空粒子が微細分散して、数百nmの外径を有する微細凝集粒子となる。この状態で溶媒を乾燥する等して除去することによって得られた分散性シリカナノ中空粒子は、微細凝集粒子の周囲が表面修飾剤によって表面修飾されているため、溶融した有機合成樹脂に混入する場合にも巨大凝集粒子に凝集することなく、微細凝集粒子に分散させた状態で混入することができる。
【0024】
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して有機合成樹脂中に微細凝集粒子として分散させ、かつ、固形分としてより多くの量を混入できるようにすることによって、シリカナノ中空粒子の応用分野を更に広げるとともに使用を容易にすることができる中空粒子含有マスターバッチとなる。
【0025】
請求項3の発明に係る中空粒子含有マスターバッチにおいては、表面修飾は、シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて混合物を作製し、混合物に高温高圧を加えて有機溶媒の超臨界状態として、シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に表面修飾剤を反応付加させる。
【0026】
有機溶媒の超臨界状態とすることによって、有機溶媒が表面修飾剤とともに凝集粒子の間に自由に入り込んで、微細凝集粒子の表面全面に表面修飾剤が反応付加する。このため、湿式ジェットミルで強力な攪拌・分散を行っても、微細凝集粒子にまで分散せず、巨大凝集粒子として残存しているシリカナノ中空粒子の各表面をも、表面修飾することができる。したがって、湿式ジェットミルの運転条件を緩くすることもできるし、ほぼ全てのシリカナノ中空粒子を微細分散させることができる。
【0027】
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して有機合成樹脂中に微細凝集粒子として分散させ、かつ、固形分としてより多くの量を混入できるようにすることによって、シリカナノ中空粒子の応用分野を更に広げるとともに使用を容易にすることができる中空粒子含有マスターバッチとなる。
【0028】
請求項4の発明に係る中空粒子含有マスターバッチにおいては、有機合成樹脂がポリエチレンまたはポリプロピレンである。
【0029】
ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)は、代表的な熱可塑性樹脂であるとともに、幅広い分野に応用されている汎用有機合成樹脂である。したがって、シリカナノ中空粒子をポリエチレンまたはポリプロピレン中に多量に分散させたマスターバッチを製造することによって、かかるマスターバッチにポリエチレンまたはポリプロピレンを単体で混合して種々の成形を行うことによって、幅広い応用分野に適用することができる。
【0030】
また、ポリエチレン及びポリプロピレンは、分散性シリカナノ中空粒子の分散性も良好であり、しかも安価な有機合成樹脂であるため、比較的高価なシリカナノ中空粒子を分散させたマスターバッチを、より安価で製造することができるという利点も有している。
【0031】
このようにして、シリカナノ中空粒子の凝集を防止して有機合成樹脂中に微細凝集粒子として分散させ、かつ、固形分としてより多くの量を混入できるようにすることによって、シリカナノ中空粒子の応用分野を更に広げるとともに使用を容易にすることができる中空粒子含有マスターバッチとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態において、同一の記号及び同一の符号は同一または相当する機能部分を意味し、実施の形態相互の同一の記号及び同一の符号は、それら実施の形態に共通する機能部分であるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
【0033】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1に係る中空粒子含有マスターバッチについて、図1及び図2を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る中空粒子含有マスターバッチの製造に用いられるシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造工程を示す模式図である。図2は本発明の実施の形態1に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法を示すフローチャートである。
【0034】
最初に、本発明に係るシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造方法の概略について、図1を参照して説明する。図1に示されるように、最初にコア粒子となる炭酸カルシウム微粒子2を結晶成長させる。ここで生成させる炭酸カルシウムの結晶2はカルサイトであり六方晶系であるが、合成条件を制御することにより、あたかも立方晶系であるかのような形状、即ち「立方体状形態」に成長させることができる。ここで、「立方体状形態」とは、立方体に限らず面で囲まれた立方体に似た形状をいう。この炭酸カルシウム2の外径が20nm〜200nmとなるように結晶成長させた後に、ゾル−ゲル法によりシリコンアルコキシドを用いて、炭酸カルシウム微粒子2にシリカ3をコーティングする。
【0035】
続いて、これを水に分散させて酸を添加して内部の炭酸カルシウム2を溶解させて流出させることによって、流出孔を有する立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子4が形成される。最後に、800℃で焼成し溶解した炭酸カルシウム2が流出した孔を塞ぐことによって、緻密なシリカ殻からなるナノ中空粒子(シリカナノ中空粒子)1が製造される。シリカナノ中空粒子1の中空部分1bの内径は、コア粒子の炭酸カルシウム微粒子2の外径20nm〜200nmであり、緻密なシリカ殻1aの厚さは1nm〜5nm、厚くても5nm〜20nm前後であるため、シリカナノ中空粒子1の外径は略30nm〜略300nmとなる。
【0036】
次に、本発明の実施の形態1に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法について、図2のフローチャートを参照して説明する。本実施の形態1においては、シリカナノ中空粒子として、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径70nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1を用いることとする。
【0037】
本実施の形態1に係る分散性シリカナノ中空粒子の製造方法においては、図2に示されるように、まず、図1で説明した製造工程によって製造された立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1が、所定の配合量で有機溶媒としてのエタノールと、表面修飾剤としての変性シリコーンオイルに配合されて(ステップS10)、高速攪拌機で攪拌・分散される(ステップS11)。
【0038】
本実施の形態1においては、「高速攪拌機」として、プライミクス(株)製のT.K.フィルミックスを用いている。ここでは、略5μmの粒子径まで、凝集した巨大凝集粒子が分散される。次に、この分散液が篩で濾過された(ステップS12)後に、湿式ジェットミルによって強力に分散させられて、略0.5μm(500nm)以下の粒子径の微細凝集粒子となる(ステップS13)。ここで、「湿式ジェットミル」としては、具体的には、エス・ジー・エンジニアリング(株)製のナノマイザー、(株)エスエムテー製の超高圧式ホモジナイザーLAB2000、(株)スギノマシン製のアルティマイザー、等を用いることができる。
【0039】
続いて、分散液をエバポレーターに掛けて溶媒を蒸発させて、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の濃度を2.5重量%から10重量%まで濃縮する(ステップS14)。後は、振動乾燥機で水分率を3%以下とし(ステップS15)、更に粉体乾燥機で125℃において60分間加熱して乾燥する(ステップS16)。以上の工程によって、本実施の形態1に係る分散性シリカナノ中空粒子5が得られる。
【0040】
ここで、ステップS10の配合段階において、変性シリコーンオイルとして、ポリエーテル基、エトキシ基、カルボキシル基等の親水性有機基が導入された変性シリコーンオイルを用いることによって、親水性の分散性シリカナノ中空粒子5となる。したがって、親水性の官能基を有する有機合成樹脂に混入して分散させる場合に、ニーダー等の通常の加熱混練装置によって混練するのみで、凝集することなく容易に微細凝集粒子として分散させることができ、かつ、より多くの量を混入することができて、シリカナノ中空粒子1の断熱性や透明性等の特性を充分に発揮させることができる。
【0041】
これに対して、変性シリコーンオイルとして、モノアミン基、アミノ基、アルキル基、等の親油性有機基が導入された変性シリコーンオイルを用いることによって、親油性の分散性シリカナノ中空粒子5となる。したがって、親油性の官能基を有する有機合成樹脂に混入して分散させる場合に、ニーダー等の通常の加熱混練装置によって混練するのみで、凝集することなく容易に微細凝集粒子として分散させることができ、かつ、より多くの量を混入することができて、シリカナノ中空粒子1の断熱性や透明性等の特性を充分に発揮させることができる。
【0042】
このような有機合成樹脂6との加熱混練が、ペレット状の有機合成樹脂6と粉体状の分散性シリカナノ中空粒子5とを、乾燥状態で予め良く混合した後に、ニーダーにおいて実施される(ステップS17)。ニーダーによって、溶融した有機合成樹脂6と分散性シリカナノ中空粒子5とを充分に均一になるように混練した後に、押出成形機によって押出成形されて(ステップS18)、押出成形機のダイスから押し出された混合物をペレット化する(ステップS19)。
【0043】
ここで、ペレット化する方法としては、大きく二通りに分けられる。1つはストランドカットと呼ばれる方法であり、押出成形機のダイスから細い棒状に押し出された混合物を直ちに水中で冷却固化させて、これをカッターで円筒状に切っていく方法である。これによって、外径1mm〜3mm、長さ2mm〜5mmの円筒形状のペレットが多数製造される。もう1つはホットカットと呼ばれる方法であり、押出成形機のダイスから押し出された混合物を回転刃で直ちにカットして、水中で冷却固化させるものである。これによって、外径約1mm〜2mm、長さ約1mm〜2mmの米粒形状または小判形状のペレットが多数製造される。
【0044】
このようにして、有機合成樹脂6の中に分散性シリカナノ中空粒子5が20重量%〜40重量%の範囲内で含有された、本実施の形態1に係る中空粒子含有マスターバッチ10が製造される。
【実施例1】
【0045】
本実施の形態1の実施例1においては、表面修飾剤としてモノアミン変性シリコーンオイルを使用し、有機合成樹脂6として低密度ポリエチレン(LDPE)を使用して、図2に示される製造工程にしたがって、分散性シリカナノ中空粒子5が35重量%の高濃度で含有された、中空粒子含有マスターバッチ10を製造した。なお、図2のステップS19のペレット化においては、低密度ポリエチレンは綺麗な棒状になり易いため、ストランドカットによって外径約1mm、長さ約2.5mmの円筒形状のペレットとした。
【0046】
かかる中空粒子含有マスターバッチ10は、分散性シリカナノ中空粒子5が35重量%の高濃度で含有されているため、重量で4〜8倍の低密度ポリエチレン単体のペレットと混合して、射出成形(二色成形または二段成形)によって、通常のプラスチックの成形体の表面に、分散性シリカナノ中空粒子5を4〜8重量%の割合で含有する低密度ポリエチレンの表面層を形成したり、カレンダー成形によって分散性シリカナノ中空粒子8を4〜8重量%の割合で含有する低密度ポリエチレンフィルムを成形したりすることができる。
【0047】
このような製品は、低密度ポリエチレン中に分散性シリカナノ中空粒子5が均一に分散しているため、シリカナノ中空粒子1の断熱性・透明性・高誘電率等の特性が顕著に発揮されて、断熱性・透明性・高誘電率等の特性が要求される用途に好適に用いることができる。そして、中空粒子含有マスターバッチ10として供給されることによって、製品中における分散性シリカナノ中空粒子5の含有量を自由に、かつ、正確に設定することができる。
【0048】
このようにして、本実施の形態1に係る中空粒子含有マスターバッチ10においては、シリカナノ中空粒子1の凝集を防止して有機合成樹脂としての低密度ポリエチレン6中に微細凝集粒子として分散させ、かつ、固形分としてより多くの量を混入できるようにするために表面修飾することによって、シリカナノ中空粒子1の応用分野を更に広げるとともに使用を容易にすることができる。
【0049】
実施の形態2
次に、本実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチについて、図3乃至図7を参照して説明する。図3は本発明の実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法を示すフローチャートである。
【0050】
図4は本発明の実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法における表面修飾方法の具体例1を示す模式図である。図5は本発明の実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法における表面修飾方法の具体例2を示す模式図である。図6は本発明の実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法における表面修飾方法の具体例3を示す模式図である。図7は本発明の実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法における表面修飾方法の具体例4を示す模式図である。
【0051】
図3に示されるように、まず、上記実施の形態1の図1で説明した製造工程によって製造された立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1が、所定の配合量で有機溶媒としてのn−ヘキサンと、表面修飾剤とに配合されて(ステップS20)、高速攪拌機で攪拌・分散される(ステップS21)。本実施の形態2においても、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径70nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1を用いた。また、本実施の形態2においても、「高速攪拌機」としては、プライミクス(株)製のT.K.フィルミックスを用いている。
【0052】
ここでは、略5μmの粒子径まで、凝集した巨大凝集粒子が分散される。次に、この分散液が篩で濾過された(ステップS22)後に、湿式ジェットミルによって、強力に分散させられて、略0.5μm以下の粒子径の微細凝集粒子となる(ステップS23)。ここで、「湿式ジェットミル」としては、具体的には、エス・ジー・エンジニアリング(株)製のナノマイザー、(株)エスエムテー製の超高圧式ホモジナイザーLAB2000、(株)スギノマシン製のアルティマイザー、等を用いることができる。
【0053】
続いて、分散液をエバポレーターに掛けて、溶媒を蒸発させて、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の濃度を2.5重量%から10重量%まで濃縮する(ステップS24)。そして、オートクレーブで加圧・加熱してn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンの超臨界状態として、表面修飾剤によってシリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面修飾を行う(ステップS25)。
【0054】
これによって、シリカ殻からなるナノ中空粒子1が表面修飾剤によって表面修飾されるとともに粉体化して、本実施の形態2に係る分散性シリカナノ中空粒子8が得られる。ここで、図3のステップS25における表面修飾の具体的な具体例について、図4乃至図7を参照して説明する。
【0055】
図4に示される本実施の形態2の具体例1においては、表面修飾剤としてイソシアネート系化合物であるトリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)12を用いている。なお、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図4においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0056】
これに対して、表面修飾剤としてのTEIS12を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、巨大凝集粒子として凝集しているシリカ殻からなるナノ中空粒子1の間に自由に入り込んで、TEIS12のエトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面に結合する。
【0057】
このようにして、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の無数の水酸基とTEIS12が反応することによって、図4に示されるように、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面がTEIS12で覆われて、本実施の形態2の具体例1に係る分散性シリカナノ中空粒子8が形成される。これによって、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集していたシリカ殻からなるナノ中空粒子1が分散して数百nmオーダーの微細凝集粒子となり、再凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、イソシアネート基が有機合成樹脂の活性基と反応して有機合成樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機合成樹脂中への均一分散が行い易い分散性シリカナノ中空粒子8となる。
【0058】
また、図5に示される本実施の形態2の具体例2においては、表面修飾剤としてエポキシ系化合物である3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン13を用いている。シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図5においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0059】
これに対して、表面修飾剤としての3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン13を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集しているシリカ殻からなるナノ中空粒子1の間に自由に入り込んで、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン13のエトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面に結合する。
【0060】
このようにして、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の無数の水酸基と3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン13が反応することによって、図5に示されるように、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面が3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン13で覆われて、本実施の形態2の具体例2に係る分散性シリカナノ中空粒子8Aが形成される。
【0061】
これによって、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集していたシリカ殻からなるナノ中空粒子1が分散して数百nmオーダーの微細凝集粒子となり、再凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、エポキシ基が有機合成樹脂の活性基と反応して有機合成樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機合成樹脂中への均一分散が行い易い分散性シリカナノ中空粒子8Aとなる。なお、この分散性シリカナノ中空粒子8Aは、親水性の分散性シリカナノ中空粒子である。
【0062】
また、図6に示されるように、本実施の形態2の具体例3においては、表面修飾剤として、メチルトリエトキシシラン14を用いている。シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図6においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0063】
これに対して、表面修飾剤としてのメチルトリエトキシシラン14を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集しているシリカ殻からなるナノ中空粒子1の間に自由に入り込んで、メチルトリエトキシシラン14のエトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面に結合する。
【0064】
このようにして、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の無数の水酸基とメチルトリエトキシシラン14が反応することによって、図6に示されるように、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面がメチルトリエトキシシラン14で覆われて、本実施の形態2の具体例3に係る分散性シリカナノ中空粒子8Bが形成される。
【0065】
これによって、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集していたシリカ殻からなるナノ中空粒子1が分散して数百nmオーダーの微細凝集粒子となり、再凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、メチル基が有機合成樹脂の活性基と反応して有機合成樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機合成樹脂中への均一分散が行い易い分散性シリカナノ中空粒子8Bとなる。なお、この分散性シリカナノ中空粒子8Bは、親油性の分散性シリカナノ中空粒子である。
【0066】
更に、図7に示されるように、本実施の形態2の具体例4においては、表面修飾剤として、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン15を用いている。シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面には、水酸基(−OH)が無数に付いており、図7においては、反応が分かり易いように、無数の水酸基のうち3つのみを示している。
【0067】
これに対して、表面修飾剤としてのアクリロキシプロピルトリメトキシシラン15を、n−ヘキサンを溶媒としてオートクレーブ中でn−ヘキサンの臨界温度(234.9℃)・臨界圧力(3.02MPa)において1時間反応させることによって、n−ヘキサンが超臨界状態となり、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集しているシリカ殻からなるナノ中空粒子1の間に自由に入り込んで、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン15のメトキシ基の3つ全部がシリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の水酸基と縮合反応し、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面に結合する。
【0068】
このようにして、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面の無数の水酸基とアクリロキシプロピルトリメトキシシラン15が反応することによって、図7に示されるように、シリカ殻からなるナノ中空粒子1の表面がアクリロキシプロピルトリメトキシシラン15で覆われて、本実施の形態2の具体例4に係る分散性シリカナノ中空粒子8Cが形成される。
【0069】
これによって、数μm〜数十μmオーダーの巨大凝集粒子として凝集していたシリカ殻からなるナノ中空粒子1が分散して数百nmオーダーの微細凝集粒子となり、凝集し難く分散が容易であるばかりでなく、アクリロキシ基が有機合成樹脂の活性基と反応して有機合成樹脂と強固な結合を作ることにより、さらに有機合成樹脂中への均一分散が行い易い分散性シリカナノ中空粒子8Cとなる。また、アクリロキシ基は紫外線(UV)に反応するUV官能基であるため、本実施の形態2の具体例4に係る分散性シリカナノ中空粒子8Cを用いることによって、紫外線に反応して硬化する分散性シリカナノ中空粒子8Cとして、種々の用途に応用することができる。
【0070】
図3に示されるように、このようにして製造された粉体状の分散性シリカナノ中空粒子8,8A,8B,8Cを、ペレット状の有機合成樹脂6と乾燥状態で予め良く混合した後に、ニーダーにおいて加熱混練が実施される(ステップS26)。ニーダーによって、溶融した有機合成樹脂6と分散性シリカナノ中空粒子8,8A,8B,8Cとを充分に均一になるように混練した後に、押出成形機によって押出成形されて(ステップS27)、押出成形機のダイスから押し出された混合物をペレット化する(ステップS28)。
【0071】
ペレット化する方法としては、上記実施の形態1と同様に、ストランドカットとホットカットとの二通りに分けられる。このようにして、有機合成樹脂6の中に分散性シリカナノ中空粒子8,8A,8B,8Cが20重量%〜40重量%の範囲内で含有された、本実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチ10Aが製造される。
【実施例2】
【0072】
本実施の形態2の実施例2においては、表面修飾剤としてトリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)12を使用し、有機合成樹脂6としてポリプロピレン(PP)を使用して、図3に示される製造工程にしたがって、分散性シリカナノ中空粒子8が30重量%の高濃度で含有された、中空粒子含有マスターバッチ10Aを製造した。なお、図3のステップS28のペレット化においては、ポリプロピレンはポリエチレンよりも棒状になり難いため、ホットカットによって米粒形状のペレットとした。
【0073】
かかる中空粒子含有マスターバッチ10Aは、分散性シリカナノ中空粒子8が30重量%の高濃度で含有されているため、重量で5〜6倍のポリプロピレン単体のペレットと混合して、射出成形(二色成形または二段成形)によって、通常のプラスチックの成形体の表面に、分散性シリカナノ中空粒子8を5〜6重量%の割合で含有するポリプロピレンの表面層を形成したり、カレンダー成形によって分散性シリカナノ中空粒子8を5〜6重量%の割合で含有するポリプロピレンフィルムを成形したりすることができる。
【0074】
このような製品は、ポリプロピレン中に分散性シリカナノ中空粒子8が均一に分散しているため、シリカナノ中空粒子1の断熱性・透明性・高誘電率等の特性が顕著に発揮されて、断熱性・透明性・高誘電率等の特性が要求される用途に好適に用いることができる。そして、中空粒子含有マスターバッチ10Aとして供給されることによって、製品中における分散性シリカナノ中空粒子8の含有量を自由に、かつ、正確に設定することができる。
【0075】
このようにして、本実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチ10Aにおいては、シリカナノ中空粒子1の凝集を防止して有機合成樹脂としてのポリプロピレン6中に微細凝集粒子として分散させ、かつ、固形分としてより多くの量を混入できるようにするために表面修飾することによって、シリカナノ中空粒子1の応用分野を更に広げるとともに使用を容易にすることができる。
【0076】
上記各実施の形態においては、シリカ殻からなるナノ中空粒子として、略50nm〜100nmの範囲内の外径を有する平均外径70nmの、空隙率が略70%〜80%の立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子1を用いた場合について説明したが、略30nm〜略300nmの外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子であれば、その他の特性を有するものを使用しても良い。
【0077】
また、上記各実施の形態においては、表面修飾用の有機溶媒としてエタノール、n−ヘキサンを用いた場合についてのみ説明したが、これに限られるものではなく、他の有機溶媒、例えばメタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール、キシレン等の芳香族炭化水素、等を用いることができる。
【0078】
更に、表面修飾剤として、モノアミン変性シリコーンオイル及びトリエトキシプロピルイソシアネートシラン(TEIS)を用いた場合についてのみ説明したが、これに限られるものではなく、他の表面修飾剤、例えば変性シリコーンオイルとして、ポリエーテル基、エトキシ基、カルボキシル基等の親水性有機基が導入された変性シリコーンオイルや、アミノ基、アルキル基、等の親油性有機基が導入された変性シリコーンオイル等を用いても良いし、アミン系化合物、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メタクリロキシ系化合物、アクリル系化合物、イミド系化合物、アルキル基を有する化合物、アリール基を有する化合物、等を用いても良い。
【0079】
本発明を実施するに際しては、中空粒子含有マスターバッチのその他の部分の構成、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0080】
なお、本発明の各実施の形態で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る中空粒子含有マスターバッチの製造に用いられるシリカ殻からなるナノ中空粒子の製造工程を示す模式図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法を示すフローチャートである。
【図3】図3は本発明の実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法を示すフローチャートである。
【図4】図4は本発明の実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法における表面修飾方法の具体例1を示す模式図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法における表面修飾方法の具体例2を示す模式図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法における表面修飾方法の具体例3を示す模式図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態2に係る中空粒子含有マスターバッチの製造方法における表面修飾方法の具体例4を示す模式図である。
【符号の説明】
【0082】
1 シリカ殻からなるナノ中空粒子
2 コア粒子(炭酸カルシウム)
3 シリカコーティング
5,8,8A,8B,8C 分散性シリカナノ中空粒子
6 有機合成樹脂
10,10A 中空粒子含有マスターバッチ
12,13,14,15 表面修飾剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略30nm〜略300nmの範囲内の外径を有するシリカ殻からなるナノ中空粒子を有機合成樹脂中に略均一に分散してペレット状に成形してなるマスターバッチであって、
前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に表面修飾剤を反応付加させて表面修飾してなる分散性シリカナノ中空粒子を前記有機合成樹脂中に20重量%〜40重量%の範囲内で含有させてなることを特徴とする中空粒子含有マスターバッチ。
【請求項2】
前記分散性シリカナノ中空粒子は、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に有機溶媒と前記表面修飾剤を加えて湿式ジェットミルで強力に分散させるとともに、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に前記表面修飾剤を反応付加させて表面修飾してなることを特徴とする請求項1に記載の中空粒子含有マスターバッチ。
【請求項3】
前記表面修飾は、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子に前記有機溶媒と前記表面修飾剤を加えて混合物を作製し、該混合物に高温高圧を加えて前記有機溶媒の超臨界状態として、前記シリカ殻からなるナノ中空粒子の表面に前記表面修飾剤を反応付加させることを特徴とする請求項2に記載の中空粒子含有マスターバッチ。
【請求項4】
前記有機合成樹脂はポリエチレンまたはポリプロピレンであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の中空粒子含有マスターバッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−84070(P2010−84070A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256499(P2008−256499)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(504067365)グランデックス株式会社 (37)
【Fターム(参考)】