説明

中空脆性材料の内孔加工方法

【課題】
中空脆性材料の加工前の内孔を研削するに際し、被研削対象が比較的長尺であっても研削能力及び研削直進性に優れ、かつ被研削対象への損傷がないようにした中空脆性材料の内孔加工方法を提供する。
【解決手段】
長手方向軸線を中心に回転するドリルロッドと、前記ドリルロッドの前端に設けられたドリルヘッドと、からなり、前記ドリルヘッドが、頭部円板体の外周面に等間隔をおいて設けられた複数個の頭部砥石チップを具備した頭部ドリル体を有し、前記頭部砥石チップの幅が4mm以上10mm以下である中空脆性材料加工用ドリルを用いて中空脆性材料の加工前内孔の内周面の内径を所定寸法だけ拡孔研削する内孔加工方法であって、前記頭部砥石チップの前記中空脆性材料の内孔に対する接触面積を5mm2以上80mm2以下に規制し、研削加工された中空脆性材料の平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレが1.0mm以下であるように加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の構成を有する中空脆性材料加工用ドリルを用いて中空脆性材料の内孔を加工する新規な方法に関し、特に半導体工業用に使用される炉心管やランプを製造するために使用される石英ガラスチュ−ブ及び光ファイバの母材となる石英ガラスチュ−ブ等を製造するための母材となる石英ガラス円筒体の内径を加工するために有効に適用される中空脆性材料の内孔加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工業用に使用される炉心管やランプを製造するために使用される石英ガラスチュ−ブ及び光ファイバの母材となる石英ガラスチュ−ブ等を製造するための母材となる石英ガラス円筒体は、用途によって様々な寸法に加工されるが、その寸法毎に母材から作っていると、生産性において時間と手間がかかり大きなコストアップにつながる。
【0003】
そのため、一般的には、一定寸法の石英ガラスの一次母材をまず作製し、そこから各寸法に内壁及び外壁を加工して二次母材である石英ガラス円筒体を作製し、これらの母材を延伸加工して最終製品を製造する。最終製品での肉厚変動差は、平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレで、1.0mm以下を求められるため、母材に対しても1.0mm以下の精度が求められる。
【0004】
例えば、VAD法やダイレクト法にて作製された無孔の一次母材に、前記母材の円中心に合わせて熱間炭素ドリル穴開け装置等で開孔したり、又はOVD法にてスート母材を作製後、心棒を抜き、透明ガラス化し透明な一次母材を作製した後、精密ホーニング加工装置で研磨するなどして二次母材である石英ガラス円筒体を作製するが、一次母材に熱間炭素ドリルにて穴を開孔する際、特に1mを超える母材に穴を開孔する場合、コアドリルの先端部の溶け方の不均一性やコアドリルの心棒のたわみなどにより直進性よく開孔することが難しい。
【0005】
また、OVD法の場合は、中空の状態でスート母材を透明ガラス化すると内面は不均一な内径の状態で透明化される。これらの状態から精密ホーニング加工装置で研削・研磨する場合、まず内径寸法を整えるだけでも非常に時間を費やし、生産性が悪くなる。
【0006】
これらの問題を解消するために、孔の内壁に対する回転カムの衝撃によって二次的な亀裂が境界領域に生じ、孔が形成された中空脆性材料の強度を更に減少させることを防止するため、中空脆性材料に対する損傷を最小にすると共に、ドリルを精確に案内して、同中空脆性材料に深孔を穿孔する方法及びドリルが開示されている(特許文献1)。
【0007】
図5に示したように、上記した従来の中空脆性材料加工用ドリル10では、内壁を指定寸法に加工するため、ドリルヘッド部の頭部円板体12に設けられた砥石チップ14の数を8個にして拡孔研削加工を行っていたが、内壁に亀裂を残すことなく、平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレが、1.0mm以下に精度良く拡孔でき、寸法精度の良い、石英ガラス円筒体が得られていた。
【0008】
しかし、砥石チップ14の数を8個にして、加工前の内径から+5mm以上の拡孔研削をする場合には、研削時の直進性が落ち、加工後の平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレが、1.0mm以上となってしまい、再度拡孔加工をしなければならなかった。すなわち、加工された内径が母材の長手方向に対して曲がった状態に加工されてしまった。
【0009】
また、時にはドリルヘッド部の砥石チップの研削部分が孔の内壁に作用する機械的剪断及び衝撃応力により、孔の内壁が大きなダメージを受けて深い亀裂が発生し、他の段部では取りきれないほどの深さで亀裂が残り、再度孔の抜き直しを行わなければならないこともあった。
【0010】
これらを未然に防ぐため、特に加工前の内径から+5mm以上の拡孔研削をする場合は、加工前内径から+5mm未満の研削工程を数回繰り返すことで所望の内径に仕上げることも可能であるが、手間と時間がかかり、大きなコストアップとなる。また、特許文献1のように研削ツール(ドリルクラウン)の段数を増やして対応することも可能であるが、研削ツールの構造が複雑になり、また各段の段差の差も考慮しなければならず、一長一短である。
【0011】
このような従来の問題点について本発明者らは鋭意検討した結果、その問題点の原因が以下の点にあることをつきとめた。
【0012】
砥石チップの数が多いほど、研削時の研削負荷が小さいため、研削されるガラス等の中空脆性材料にとっては有利であるが、研削負荷が小さい分、砥石チップのボンド部(砥粒接着部分)の摩耗が相対的に遅くなり、ダイヤモンド砥粒等の砥粒が取れて、新しい次の砥粒が出てくるタイミングも遅くなるので、いわゆるドレッシング効果が低下してしまい、砥石チップの砥粒面も目詰まりを起こして逆に研削能力が落ちてしまう。
【0013】
この現象は、長時間、すなわち全長の長い中空脆性材料の内径を加工する場合ほど顕著になり、砥石チップの研削能力が落ちているのに、能力が落ちていない時の砥石チップを回転させる力及び押し込む力で砥石チップを押し込むので、内径が不均一な未加工の状態では、砥石チップのあたりが多い研削抵抗の大きい内壁部分では抵抗を受けてその方向にドリルヘッドが曲がってしまう。
【0014】
また、場合によっては、砥石チップの研削能力が落ちて、ドリルヘッド部の砥石チップの研削部分が孔の内壁に作用する機械的剪断及び衝撃応力により、孔の内壁が大きなダメージを受けて深い亀裂が発生し、深い亀裂が残る。
【0015】
そこで、本発明者らは、さらに鋭意検討を続けた結果、砥石チップの数を少なくするとともに所定の研削条件を設定して研削することにより、良好な研削結果が得られるという知見を得た。
【特許文献1】特開平08−174538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みなされたもので、中空脆性材料の加工前の内孔を研削するにあたって、被研削対象が比較的長尺であっても研削能力及び研削直進性に優れ、かつ被研削対象への損傷がないようにして中空脆性材料の内孔加工方法を提供することを目的とする。
【0017】
本発明の中空脆性材料の内孔加工方法は、長手方向軸線を中心に回転するドリルロッドと、前記ドリルロッドの前端に設けられたドリルヘッドと、からなり、前記ドリルヘッドが、頭部円板体の外周面に等間隔をおいて設けられた複数個の頭部砥石チップを具備した頭部ドリル体を有し、前記頭部砥石チップの幅が4mm以上10mm以下である中空脆性材料加工用ドリルを用いて中空脆性材料の加工前内孔の内周面の内径を所定寸法だけ拡孔研削する内孔加工方法であって、前記頭部砥石チップの前記中空脆性材料の内孔に対する接触面積を5mm2以上80mm2以下に規制し、研削加工された中空脆性材料の平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレが1.0mm以下であるように加工することを特徴とする。
【0018】
前記ドリルヘッドが、中間円板体の外周面に等間隔をおいて設けられた複数の中間砥石チップを具備するとともに前記頭部ドリル体よりも径大とされた中間ドリル体をさらに有し、前記ドリル体と中間ドリル体との外径差が1mm以下であるように構成するのが好適である。前記中間ドリル体を複数個設置し、前記ドリルロッドの前端側に位置する前端側中間ドリル体の外径よりも前記ドリルロッドの後端側に位置する後端側中間ドリル体の外径が徐々に径大となるように構成し、各中間ドリル体の外径差が1mm以下であるようにすることも可能である。前記頭部砥石チップの数が2個以上4個以下であるのが好適である。また、前記頭部砥石チップの砥粒がダイヤモンド砥粒又はCBN砥粒であるのが好ましい。
【0019】
前記頭部砥石チップの前記中空脆性材料の内孔に対する接触面積を5mm2以上80mm2以下にすると、頭部砥石チップの砥粒接着部の摩耗が相対的に速く、また砥粒が取れて新しい次の砥粒が出てくるタイミングも速くなり、ドレッシング効果により研削能力が維持される。また、中空脆性材料の内径が不均一であっても頭部砥石チップの研削能力は維持されているため、直進性良く研削される。また、ドリルヘッドによる研削部分によって中空脆性材料の内壁に作用する機械的剪断及び衝撃応力も相対的に弱くなり、中空脆性材料の内壁が大きなダメージを受けることなく、深い亀裂が発生しない。特に、中空脆性材料に深孔を開ける際には有効である。
【0020】
なお、中間ドリル体を設置しなくても本発明の作用効果は達成されるが、所望に応じて、1個又は複数個の中間ドリル体を設けることができる。この中間ドリル体に設ける中間砥石チップの個数については特別の限定はないが、例えば、従来構造の場合と同様に6個〜9個設置することができる。
【0021】
前記頭部砥石チップの前記中空脆性材料の内孔に対する接触面積が80mm2を超えると中空脆性材料の内径が不均一な場合、頭部砥石チップの研削能力は維持されず、ドリルヘッドの直進性が損なわれ、また、前記接触面積が5mm2に満たないと、研削能力が低下するという不利がある。
【0022】
前記頭部砥石チップの幅は4mm以上10mm以下がよい。頭部砥石チップの幅を4mm未満にすると、頭部砥石チップが欠けてしまう。また、頭部砥石チップの幅が10mmを超えると、逆に研削抵抗が増えて、研削能力が落ちてしまう。
【0023】
特に加工前の内径から+5mm以上の拡孔研削をする場合は、内壁に亀裂を残すことなく、平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレが、1.0mm以下に精度良く拡孔でき、寸法精度の良い、石英ガラス円筒体が得られる。
【0024】
上記平均外径は、所定の長さの母材に対し、50〜100mm間隔毎に、4点以上360点以下でレーザー式外径測定器で母材の外径を測定し、その円周上での外径を求め、それらを平均化して求めた値であり、平均内径は、前記と同様に50〜100mm間隔毎に、4点以上360点以下でレーザー式肉厚測定器で管の肉厚を測定し、前記外径との計算によりその円周上での内径を求め、それらを平均化して求めた値である。さらに、円中心のズレは、母材の端面の平均外径及び平均内径の面中心を基準とし、この外径面及び内径面の円中心から管の長手方向に垂直に伸ばした軸に対してのズレである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の中空脆性材料の内径加工方法によれば、中空脆性材料の加工前の内孔を研削するにあたって、被研削対象が比較的長尺であっても研削能力及び研削直進性に優れ、かつ被研削対象への損傷がない内径加工を実現できるという著大な効果を有する。
【0026】
また、本発明の中空脆性材料の内径加工方法によれば、上述のように加工前の内径から+5mm以上の拡孔研削をする場合であっても中空脆性材料に損傷を与えることなく精度良く研削できるという利点がある。また、使用する中空脆性材料加工用ドリルの砥石のチップ数も少なくできるため、コストの削減ができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例はあくまでも例示的なものであり、本発明の技術的思想から逸脱しない限り図示例以外にも種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0028】
図1は本発明方法に用いられる中空脆性材料加工用ドリルの一つの実施の形態を示す概略縦側断面図、図2は頭部砥石チップの拡大断面図である。図3は図1のI−I線からみた概略平面断面図、及び図4は本発明方法に用いられる中空脆性材料加工用ドリルの別の実施の形態を示す概略平面断面図である。
【0029】
図1〜図3において、符号20は本発明方法に用いられる中空脆性材料加工用ドリルを示す。中空脆性材料加工用ドリル20は、中空脆性材料の加工前の内孔を所定の内径寸法精度に拡孔研削するために用いられる。
【0030】
中空脆性材料加工用ドリル20は、長手方向軸線Zを中心に回転するドリルロッド22と、前記ドリルロッド22の前端に設けられたドリルヘッド24とを有している。前記ドリルヘッド24はその先端側に設けられた頭部円板体26と、当該頭部円板体26に連設されかつ当該頭部円板体26よりも径大とされた中間円板体28とを具備している。前記頭部円板体26の先端側外周面には等間隔をおいて複数個の頭部砥石チップ30が設置され頭部ドリル体31を形成している。また、前記中間円板体28の外周面には等間隔をおいて複数個の中間砥石チップ32が設置され中間ドリル体33を形成している。
【0031】
前記中間ドリル体33は図1の例では1個設置した場合を示したが、当該中間ドリル体33を設置しない場合でも本発明の作用効果を達成することができる。また、中間ドリル体33を複数個設置することもできる。中間ドリル体33を複数個設置する場合には、ドリルロッド22の前端側に位置する中間ドリル体よりもドリルロッド22の後端側に位置する中間ドリル体が徐々に径大となるように構成する。頭部砥石チップ30及び中間砥石チップ32の砥粒としては、ダイヤモンド砥粒又はCBN砥粒が好適に用いられる。なお、符号34は、内孔36が開穿されている中空脆性材料を示す。
【0032】
図1に示した中空脆性材料加工用ドリル20においては、図3に示されるごとく、2個の頭部砥石チップ30が等間隔をおいて頭部円板体26の外周面に設けられている。この頭部砥石チップ30は、2個以上4個以下設置すればよいものである。図4には、頭部円板体26に4個の頭部砥石チップ30を設けた中空脆性材料加工用ドリル21の構成例を示した。
【0033】
また、頭部砥石チップ30の幅dは4mm以上10mm以下のものが好適に使用できる。これは、頭部砥石チップ30の個数が4個以下であっても、頭部砥石チップ30が中空脆性材料34に接触する接触面積が80mm2を超えると研削の際の直進性が悪くなるか或いは中空脆性材料34にクラックが発生するため、頭部砥石チップ30の幅dを4mm以上10mm以下とし、頭部砥石チップ30の接触面積を80mm2以下とする必要があるためである。
【0034】
前記頭部砥石チップ30の上面は水平面であってもよいが、図2によく示されるごとく、その上面が前記頭部ドリル体31の中心方向に向かって下方に所定の傾斜角度αで傾斜し、その傾斜角度αが5度以上70度以下であるのが好ましい。この傾斜角度αが5度未満であると、研削対象である中空脆性材料34の内孔36の研削が終了する時、頭部砥石チップ30が中空脆性材料34の内孔36から抜ける時点でクラックが発生してしまう場合がある。また、この傾斜角度αが70℃を超えると、頭部砥石チップ30に負荷がかかり、頭部砥石チップ30が欠けてしまうという不都合が生じる場合がある。
【0035】
本発明の中空脆性材料の内孔加工方法は、上記した中空脆性材料加工用ドリル21、即ち長手方向軸線を中心に回転するドリルロッド22と、前記ドリルロッド22の前端に設けられたドリルヘッド24と、からなり、前記ドリルヘッドが、頭部円板体26の外周面に等間隔をおいて設けられた複数の頭部砥石チップ30を具備した頭部ドリル体31を有し、前記頭部砥石チップ30の幅が4mm以上10mm以下である中空脆性材料加工用ドリル21を用いて中空脆性材料34の加工前内孔36の内周面の内径を所定寸法だけ拡孔研削する内孔加工方法であって、前記頭部砥石チップ30の前記中空脆性材料34の内孔36に対する接触面積を5mm2以上80mm2以下に規制し、研削加工された中空脆性材料34の平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレが1.0mm以下であるように加工するものである。
【0036】
前記ドリルヘッド24が、中間円板体28の外周面に等間隔をおいて設けられた複数の中間砥石チップ32を具備するとともに前記頭部ドリル体31よりも径大とされた中間ドリル体33をさらに有し、頭部ドリル体31と中間ドリル体33との外径差が1mm以下であるように構成するのが好適である。また、前記中間ドリル体33を複数個設置し、前記ドリルロッド22の前端側に位置する前端側中間ドリル体の外径よりも前記ドリルロッド22の後端側に位置する後端側中間ドリル体の外径が徐々に径大とし、各中間ドリル体との外径差が1mm以下であるように構成することも可能である。さらに、前記頭部砥石チップ32を2個以上4個以下設置するのが好適である。前記頭部砥石チップ26及び中間砥石チップ32の砥粒がダイヤモンド砥粒又はCBN砥粒であるのが好ましい。
【0037】
前記頭部砥石チップ32を2個以上4個以下設置する場合の利点は次の通りである。
(1)例えば、幅4mmの頭部砥石チップ32を8個設け、中空脆性材料の内孔の内径を 50mmにする場合には頭部砥石チップの中空脆性材料の内孔に対する接触面積の 律速により、一次母材の内径から+5mm(接触面積は80mm2)程度までしか 削れないため、一次母材の加工前の内径が45mm以上と制限されてしまう。また 、一次母材の加工前の内径が45mm以上を廻って一次母材を作らなければならず 、生産性が悪くなる。頭部砥石チップ32を2個〜4個とすれば、内径差1mm〜 十数mmと幅広くなっても対処可能であるので、一次母材の加工前の内径が40m m程度であっても研削加工が可能であり、精密に内径をコントロールする必要がな いため生産性が良好となる。
(2)また、実施例2で示したように、OVD法でガラス化した材料において、当該材料 の内孔の内径が大きい部分と小さい部分の差が大きくなっても、頭部砥石チップ3 2を2個以上4個以下設置する構成とすれば、拡孔できる内径差が1mm〜十数m mあるため、ほぼ制限なく対応して研削加工を行うことができる。例えば、頭部砥 石チップ32が8個であると、一次母材の内径差が5mm程度までしか対応できな いが頭部砥石チップ32が2個以上4個以下であれば5mmを超える内径差や内径 の曲がりがあっても対応できる。
(3)頭部砥石チップ32を2個以上4個以下とすれば、チップの数が少なくて済み、そ の分だけコストダウンとなる。
(4)頭部砥石チップ32を2個以上4個以下とすれば、チップ数が少ないため、研削用 に流すクーラントが隙間から流れやすくなり、それだけ冷却効果が高くなる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0039】
(実施例1)
図1〜図3に示した中空脆性材料加工用ドリルと同様の装置を用い、VAD法によって、四塩化珪素を気化し、酸水素炎中で火炎加水分解し、回転する石英ガラス棒にシリカガラス微粒子を堆積させて多孔質スート体を作成した。この多孔質スート体を電気炉に入れ、Heガスにより1100℃で加熱脱水し、引き続きHeガス雰囲気中1600℃で透明ガラス化して円柱状石英ガラスインゴットを得た。
【0040】
前記円柱状石英ガラスインゴットの両端を切断し、その外周をダイヤモンド砥粒を備えた円筒研削装置で所定の寸法に正確に研削し、レーザー外径測定機で寸法測定を行い、外径の円中心を求めた。前記円中心に合わせて熱間炭素ドリル穴開け装置で開孔し、内径約30mm、長さ約3mの円筒状一次母材を製造した。内径は、透明な状態であったが、得られた一次母材の寸法測定を50mm間隔でレーザー外径測定機及び肉厚測定機で行ったところ、開孔開始部から長さ2mの部分で、平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレが最大で2.0mmであった。
【0041】
この円筒状一次母材の両端を切断し、その内径を30mmから40mmにすべく、頭部円板体26の研削直径を38mmに設定し、幅10mmの#100メタルボンドダイヤモンドの頭部砥石チップ30をその傾斜角度αを50度として2個配置し、中間円板体28の研削外径を40mmに設定した中空脆性材料加工用ドリル20で研削し、内径40mm、長さ3mの二次母材を作成した。研削条件は、頭部砥石チップの中空脆性材料の内孔に対する接触面積を80mm2、ヘッドの回転数を900rpm、送り速度を15mm/minとし、研削液であるクーラント水を圧力0.2MPaで流し続けた。
【0042】
得られた二次母材の寸法測定を50mm間隔でレーザー外径測定機及び肉厚測定機で行ったところ、長さが3m、平均内径が40mmで、平均内径差が0.02mm、真円度が最大で0.05mm、平均外径の円中心からのズレが最大で0.1mm、平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレが最大で0.1mmであった。
【0043】
(実施例2)
図3に示した中空脆性材料加工用ドリルと同様の装置を用い、OVD法によって、四塩化珪素を気化し、酸水素炎中で火炎加水分解し、回転する心棒の周囲にシリカガラス微粒子を堆積させて大型多孔質スート体を作成した。引き続き心棒を引き抜き、この中空多孔質スート体を電気炉に入れ、Heガスにより1100℃で加熱脱水し、引き続きHeガス雰囲気中1600℃で透明ガラス化し、内径約60mm、長さ約4mの円筒状一次母材を製造した。心棒がない状態で透明ガラス化されたため、内径は不均一な円筒状一次母材を製造した。得られた一次母材の寸法測定を50mm間隔でレーザー外径測定機及び肉厚測定機で行ったところ、全体にわたって内径差が6mmの範囲で振れていた。
【0044】
この円筒状一次母材の両端を切断し、その内径を60mmから70mmにすべく、頭部円板体26の研削直径を68mmに設定し、幅4mmの#100メタルボンドダイヤモンドの頭部砥石チップ30をその傾斜角度αを10度として4個配置し、中間円板体28の研削外径を70mmに設定した中空脆性材料用ドリル10Bで研削し、内径70mm、長さ4mの二次母材を作成した。研削条件は、頭部砥石チップの中空脆性材料の内孔に対する接触面積を64mm2、ヘッドの回転数を600rpm、送り速度を20mm/minとし、研削液であるクーラント水を圧力0.2MPaで流し続けた。
【0045】
得られた二次母材の寸法測定を50mm間隔でレーザー外径測定機及び肉厚測定機で行ったところ、長さが4m、平均内径が70mmで、平均内径差は0.12mm、真円度は最大で0.1mm、平均外径の円中心からのズレは最大で0.6mm、平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレは最大で0.7mmであった。
【0046】
(比較例1)
実施例1と同様にVAD法を用い、四塩化珪素を気化し、酸水素炎中で火炎加水分解し、回転する石英ガラス棒にシリカガラス微粒子を堆積させて多孔質スート体を作成した。この多孔質スート体を電気炉に入れ、Heガスにより1100℃で加熱脱水し、引き続きHe雰囲気中1600℃で透明ガラス化して円柱状石英ガラスインゴットを得た。前記円柱状石英ガラスインゴットの両端を切断し、その外周をダイヤモンド砥粒を備えた円筒研削装置で所定の寸法に正確に研削し、レーザー外径測定機で寸法測定を行い、外径の円中心を求めた。前記円中心に合わせて熱間炭素ドリル穴開け装置で開孔し、内径約30mm、長さ約3mの円筒状一次母材を製造した。内径は、透明な状態であったが、得られた一次母材の寸法測定を50mm間隔でレーザー外径測定機及び肉厚測定機で行ったところ、開孔開始部から長さ2.5mの部分で、平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレが最大で1.9mmであった。
【0047】
この円筒状一次母材の両端を切断し、その内径を30mmから40mmにすべく、頭部円板体の研削直径を38mmに設定し、幅4mmの#100メタルボンドダイヤモンドの頭部砥石チップをその傾斜角度αを50度として8個配置し、中間円板体の研削外径を40mmに設定した中空脆性材料用ドリルで研削し、内径40mm、長さ4mの二次母材を作成した。研削条件は、頭部砥石チップの中空脆性材料の内孔に対する接触面積を128mm2、ヘッドの回転数を900rpm、送り速度を15mm/minとし、研削液であるクーラント水を圧力0.2MPaで流し続けた。
【0048】
内面には、亀裂の発生することなく加工でしたが、得られた二次母材の寸法測定を50mm間隔でレーザー外径測定機及び肉厚測定機で行ったところ、開孔開始部から長さ2.5mの部分で、平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレが最大で1.5mmであった。
【0049】
(比較例2)
実施例2と同様にOVD法を用い、四塩化珪素を気化し、酸水素炎中で火炎加水分解し、回転する心棒の周囲にシリカガラス微粒子を堆積させて大型多孔質スート体を作成した。引き続き心棒を引き抜き、この中空多孔質スート体を電気炉に入れ、Heガスにより1100℃で加熱脱水し、引き続きHe雰囲気中1600℃で透明ガラス化し、内径約60mm、長さ約4mの円筒状一次母材を製造した。心棒がない状態で透明ガラス化されたため、内径は不均一な状一次母材を製造した。得られた一次母材の寸法測定を50mm間隔でレーザー外径測定機及び肉厚測定機で行ったところ、全体にわたって内径差が6mmの範囲で振れていた。
【0050】
この円筒状一次母材の両端を切断し、その内径を60mmから70mmにすべく、頭部円板体の研削直径を68mmに設定し、幅15mmの#100メタルボンドダイヤモンドの頭部砥石チップをその傾斜角度αを10度として4個配置し、中間円板体の研削外径を70mmに設定した中空脆性材料用ドリルで研削し、内径70mm、長さ4mの二次母材を作成した。研削条件は、頭部砥石チップの中空脆性材料の内孔に対する接触面積を240mm2、ヘッドの回転数を600rpm、送り速度を20mm/minとし、研削液である水を圧力0.2MPaで流し続けた。しかし、開孔開始部から長さ1mの部分で、ヘッド先端部による内壁研削部分より深い亀裂が研削内面に発生したため、研削を中止した。
【0051】
このように、実施例1〜2で得られた二次母材は、比較例1〜2における二次母材に比べて損傷を与えることなく精度良く研削できたことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明方法に用いられる中空脆性材料加工用ドリルの一つの実施の形態を示す概略縦断面図である。
【図2】頭部砥石チップの拡大断面図である。
【図3】図1のI−I線からみた概略平面断面図である。
【図4】本発明方法に用いられる中空脆性材料加工用ドリルの別の実施の形態を示す概略縦断面図である。
【図5】従来の中空脆性材料加工用ドリルの1例を示す概略平面断面図である。
【符号の説明】
【0053】
20,21:本発明方法に用いられる脆性材料加工用ドリル、22:ドリルロッド、24:ドリルヘッド、26:頭部円板体、28:中間円板体、30:頭部砥石チップ、31:頭部ドリル体、32:中間砥石チップ、33:中間ドリル体、34:脆性材料、36:内孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸線を中心に回転するドリルロッドと、前記ドリルロッドの前端に設けられたドリルヘッドと、からなり、前記ドリルヘッドが、頭部円板体の外周面に等間隔をおいて設けられた複数個の頭部砥石チップを具備した頭部ドリル体を有し、前記頭部砥石チップの幅が4mm以上10mm以下である中空脆性材料加工用ドリルを用いて中空脆性材料の加工前内孔の内周面の内径を所定寸法だけ拡孔研削する内孔加工方法であって、前記頭部砥石チップの前記中空脆性材料の内孔に対する接触面積を5mm2以上80mm2以下に規制し、研削加工された中空脆性材料の平均外径の円中心に対する平均内径の円中心のズレが1.0mm以下であるように加工することを特徴とする中空脆性材料の内孔加工方法。
【請求項2】
前記ドリルヘッドが、中間円板体の外周面に等間隔をおいて設けられた複数の中間砥石チップを具備するとともに前記頭部ドリル体よりも径大とされた中間ドリル体をさらに有し、前記頭部ドリル体と中間ドリル体との外径差が1mm以下であるようにしたことを特徴とする請求項1記載の加工方法。
【請求項3】
前記中間ドリル体を複数個設置し、前記ドリルロッドの前端側に位置する前端側中間ドリル体の外径よりも前記ドリルロッドの後端側に位置する後端側中間ドリル体の外径が徐々に径大となるように構成し、各中間ドリル体の外径差が1mm以下であるようにしたことを特徴とする請求項2記載の加工方法
【請求項4】
前記頭部砥石チップの数が2個以上4個以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の加工方法。
【請求項5】
前記頭部砥石チップの上面が前記頭部ドリル体の中心方向に向かって下方に所定の傾斜角度αで傾斜し、その傾斜角度αが5度以上70度以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の加工方法。
【請求項6】
前記頭部砥石チップの砥粒がダイヤモンド砥粒又はCBN砥粒であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−175967(P2007−175967A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375875(P2005−375875)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000190138)信越石英株式会社 (183)
【Fターム(参考)】