説明

乗員姿勢検知装置および乗員姿勢検知方法

【課題】安価に構成可能でコストの削減を図りつつ乗員の姿勢を検知する。
【解決手段】乗員姿勢検知装置100は、静電容量センサ部10と回路部20とを備える。静電容量センサ部10は、車室天井部2の座席40の前方および座席40の直上にそれぞれ配置された第1および第2検知電極11,12を備え、各検知電極11,12は切替スイッチSW1,SW2を介して回路部20の静電容量検知回路21とシールド駆動回路23とにそれぞれ接続されている。回路部20のCPU29は、静電容量検知回路21にて検出された各検知電極11,12からの静電容量に基づく静電容量値を用いて、座席40に着座した乗員(人体)48の頭部49の位置の情報に基づいて着座姿勢を判定する。判定した着座姿勢に関する姿勢情報は、車両1に搭載されたECUに出力され、エアバッグの展開等の制御に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の座席に着座した乗員の姿勢を検知する乗員姿勢検知装置および乗員姿勢検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の高性能化に伴い、例えば衝突時に乗員を保護するためのエアバッグの展開を乗員の姿勢などに基づき制御することが行われつつある。このような乗員の姿勢を検知するものとして、例えば下記特許文献1に開示されている頭部位置検出システムが知られている。
【0003】
この頭部位置検出システムは、シート(座席)に座った(着座した)乗員と高周波的に電気接続される発振電極をシート座部(着座部)に配し、発振電極と金属枠との間に発振出力を印加する発振部と、発振電極と対向するように車室天井部に受信電極を絶縁配置した距離測定用センサとを備える。
【0004】
また、この頭部位置検出システムは、乗員に電気接続される導体面から既知の距離だけ離れ、導体面と対向して校正用受信電極を絶縁配置して計測するキャリブレーションセンサと、この計測結果に基づき受信電極における各距離と出力電圧にかかる特性曲線とを決定し、各出力電圧の値を、該当する特性曲線に当てはめて各距離を求める処理回路とを備える。そして、乗員の頭部と受信電極との間の距離を計測して頭部の位置を検出するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−365011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている頭部位置検出システムでは、発振電極と受信電極がそれぞれ座席の上方や下方に配置されているため、配線長が長くなったりシステム構成が複雑化したりして、コストの削減を図りにくいという問題がある。
【0007】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、安価に構成可能でコストの削減を図ることができる乗員姿勢検知装置および乗員姿勢検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる乗員姿勢検知装置は、車両の座席の上方の車室天井部に、前記座席に着座した人体の頭部と前記車室天井部との間の静電容量を検知可能となるように2つ配置され、前記座席に着座した人体の頭部と前記車室天井部との間の静電容量を検知する検知電極と、前記検知電極とそれぞれ接続され、各検知電極からの検知信号に基づいて前記人体の頭部の位置を検出する検出回路と、前記検出回路からの検出結果に応じて、前記人体の着座姿勢を判定する姿勢判定回路とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる乗員姿勢検知装置は、以上のように構成することにより、従来のものと比べて検知電極を車室天井部に2つ設けるだけで済み、発振電極や受信電極といった構成が不要なシンプルな構成にすることができるとともに、これら電極間の距離の問題も皆無となるので、安価に構成可能でコストの削減を図ることができる。なお、人体の頭部としては、特に頭頂部を検出することが好ましい。
【0010】
前記検知電極の一方は、前記座席に着座した人体の頭部と前記座席前方の車室天井部との間の静電容量を検知可能となるように、他方は、前記座席に着座した人体の頭部と前記座席直上の車室天井部との間の静電容量を検知可能となるように配置されてもよい。
【0011】
また、前記検知電極の一方は、前記座席に着座した人体の頭部と前記座席側方の車室天井部との間の静電容量を検知可能となるように、他方は、前記座席に着座した人体の頭部と前記座席直上の車室天井部との間の静電容量を検知可能となるように配置されてもよい。
【0012】
前記姿勢判定回路は、判定した前記人体の着座姿勢に関する情報を、前記車両に搭載されたエアバッグの展開を制御する機能を含むECUに出力するとよい。
【0013】
前記検知電極の裏面側および周囲の両方またはいずれかに、該検知電極と電気的に絶縁されたシールド部をさらに備えてもよい。
【0014】
前記シールド部は、前記検知電極と同電位が与えられてもよい。
【0015】
前記検出回路は、あらかじめ前記座席に人体が着座していないときの静電容量値を記憶する記憶手段を備え、前記人体が着座した場合に該記憶手段に記憶された静電容量値からの増加量を検出値として検出結果を出力するとよい。
【0016】
前記検出回路は、各検知電極とそれぞれ一対一で接続され、各検知電極により検知された静電容量を電圧に変換するC−V変換型の複数の静電容量検知回路を有するとよい。
【0017】
前記検出回路は、各検知電極により検知された静電容量を電圧に変換するC−V変換型の静電容量検知回路を有し、前記静電容量検知回路は、スイッチ手段を介して各検知電極に接続されるとよい。
【0018】
前記検知電極のうち、一の検知電極をシールド駆動するシールド駆動回路をさらに備えてもよい。
【0019】
前記検出回路は、静電容量を検知する検知電極を前記静電容量検知回路に接続するとともに、他の検知電極を前記シールド駆動回路に接続するように前記スイッチ手段を制御するとよい。
【0020】
また、前記検出回路は、差動動作型の静電容量検知回路を有し、各検知電極の近傍に該検知電極とは逆相の前記静電容量検知回路の入力端子に接続された補助電極が配置されてもよい。
【0021】
本発明にかかる乗員姿勢検知方法は、車両の座席の上方の車室天井部に、前記座席に着座した人体の頭部と前記車室天井部との間の静電容量を検知可能となるように2つ配置された検知電極によって、前記座席に着座した人体の頭部と前記車室天井部との間の静電容量を検知し、検知された静電容量を示す各検知電極からの検知信号に基づいて、前記人体の頭部の位置を検出し、検出された前記頭部の位置を基準として、前記人体の着座姿勢を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、安価に構成可能でコストの削減を図ることができる乗員姿勢検知装置および乗員姿勢検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の全体構成の一例を示す説明図である。
【図2】同乗員姿勢検知装置の検知電極の一例を示す説明図である。
【図3】同乗員姿勢検知装置の前後方向の判定動作の一例を説明するための説明図である。
【図4】同乗員姿勢検知装置の前後方向の判定動作の一例を説明するための説明図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の静電容量検知回路の一例を示すブロック図である。
【図6】同乗員姿勢検知装置の回路部の動作波形の一例を示す動作波形図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の一部構成の他の例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の一部構成の他の例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、添付の図面を参照して、この発明にかかる乗員姿勢検知装置および乗員姿勢検知方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の全体構成の一例を示す説明図、図2は同乗員姿勢検知装置の検知電極の一例を示す説明図、図3は同乗員姿勢検知装置の前後方向の判定動作の一例を説明するための説明図である。また、図4は、同乗員姿勢検知装置の前後方向の判定動作の一例を説明するための説明図、図5は本発明の一実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の静電容量検知回路の一例を示すブロック図である。
【0026】
さらに、図6は、同乗員姿勢検知装置の回路部の動作波形の一例を示す動作波形図である。図7は本発明の一実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の一部構成の他の例を示す説明図、図8は本発明の一実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の一部構成の他の例を説明するための説明図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100は、例えば車両1の座席40の上方にある車室天井部2に、座席40に着座した乗員(人体)48の頭部49の位置を検知可能となるように配置された2つの検知電極(第1検知電極11,第2検知電極12)を有する静電容量センサ部10と、この静電容量センサ部10からの出力を用いて、座席40に着座した乗員48の頭部49の位置に基づく着座姿勢を判定する回路部20とを備えて構成されている。
【0028】
静電容量センサ部10の各検知電極11,12は、本例では、例えば第1検知電極11が座席40に着座した乗員48の頭部49と座席40前方の車室天井部2との間の静電容量を検知可能となるように、第2検知電極12が同じく乗員48の頭部49と座席40直上の車室天井部2との間の静電容量を検知可能となるように、車室天井部2の内部あるいは車室内側表面に配置されている。
【0029】
このように構成された静電容量センサ部10は、乗員48の頭部49と車室天井部2(具体的には第1および第2検知電極11,12)との間の静電容量を検知する。より具体的には、この静電容量センサ部10は、乗員48の頭部49の頭頂部と検知電極11,12との間の静電容量を検知する。
【0030】
なお、静電容量センサ部10は、例えば部品のモジュール化を促進するために、図示しない基板の一方の面側に、上述したように第1および第2検知電極11,12が形成されて車室天井部2に配置されてもよく、回路部20は、この基板の同一面あるいは他方の面側に実装されたうえで配置されていてもよい。また、配置の態様によっては、各部が別体に配置されていてもよい。
【0031】
静電容量センサ部10が上述したように基板に形成された場合は、この基板としては、例えばフレキシブルプリント基板、リジッド基板あるいはリジッドフレキシブル基板などを用いることができる。また、各検知電極11,12は、例えば基板がフレキシブルプリント基板からなる場合は、次のようなものからなる。
【0032】
すなわち、各検知電極11,12は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)あるいはエポキシ樹脂などの絶縁体からなるベース材上にパターン形成された銅、銅合金またはアルミニウムなどの金属材からなる。その他、各検知電極11,12は、メンブレン回路に形成されたり、導電性粘着材やその他の導体金属からなるものであったりしてもよい。
【0033】
また、本例では各検知電極11,12は、例えばそれぞれ切替スイッチSW1,SW2を介して回路部20の静電容量検知回路21と接続されるとともに、これら各切替スイッチSW1,SW2を介してシールド駆動回路23と接続されている。なお、図示は省略するが、上記シールド駆動回路23は、回路部20内に備えられていてもよい。
【0034】
一方、回路部20は、例えば検知電極11,12により検知された静電容量を示す検知信号に基づいて、それぞれの静電容量値を検出する静電容量検知回路21と、この静電容量検知回路21からのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器22と、このA/D変換器22によりディジタル信号化された情報に基づき、乗員姿勢検知装置100の各種動作制御や演算処理などを司るとともに、乗員48の着座姿勢を判定し、この判定した着座姿勢に関する情報(姿勢情報)を、例えば車両1に搭載された図示しないECU(電子制御ユニット)に対して出力するCPU29とを備えて構成されている。
【0035】
CPU29は、情報の一時記憶領域として利用されるRAMや、情報を一時的あるいは恒久的に格納可能なROM等を備えて構成されている。ECUは、例えば車両1に搭載されたエアバッグの展開を制御(すなわち、エアバッグの開く方向や膨張率などを制御)する機能を備え、本例の乗員姿勢検知装置100からの姿勢情報をも参照して、エアバッグの展開を制御可能に構成されている。
【0036】
上記各切替スイッチSW1,SW2は、例えばマルチプレクサ、アナログスイッチ、FETあるいはリレー等のユニットからなり、この回路部20のCPU29は、各切替スイッチSW1,SW2の切り替え動作を切替制御信号を出力して制御する。具体的には、本例の乗員姿勢検知装置100では、次のような切替制御が行われる。
【0037】
すなわち、CPU29からの切替制御信号により、例えば切替スイッチSW1が第1検知電極11と静電容量検知回路21とが接続されるように切り替えられた場合、切替スイッチSW2は第2検知電極12がシールド駆動回路23と接続されるように切り替えられる。
【0038】
また、例えば切替スイッチSW2が第2検知電極12と静電容量検知回路21とが接続されるように切り替えられた場合は、切替スイッチSW1は第1検知電極11がシールド駆動回路23と接続されるように切り替えられる。このように、CPU29は、各検知電極11,12と静電容量検知回路21とが択一的に接続されたとき(順番に切り替えて接続されたとき)の、それぞれにて検出された静電容量値に基づいて、乗員48の着座姿勢を判定する。
【0039】
なお、シールド駆動回路23は、接続された検知電極に対して、静電容量検知回路21により与えられている電位と同等の電位を与えるように構成されている。これにより、各検知電極11,12同士の静電容量結合を防止して、各検知電極11,12ごとに高精度な静電容量の検知を行うことが可能となる。
【0040】
また、シールド駆動回路23は、例えば各検知電極11,12に与えられる電位より高い入力インピーダンスで1倍のアンプ(バッファ)を通して生成された電位を与えてもよいし、後述するように静電容量検知回路21が差動動作型である場合は、オペアンプの非反転入力部分を接続して同等の電位を与えてもよい。
【0041】
各検知電極11,12は、図2に示すように、例えばそれぞれ矩形状に形成されており、その裏面側(検出範囲側とは反対側)に各検知電極11,12と電気的に接続され、裏面側の検知を抑制するためのシールド部18や、各検知電極11,12の周囲に同様の効果をもたらすシールド部19が形成された構成であってもよい。
【0042】
これらシールド部18,19には、例えば各検知電極11,12と同電位が与えられており、このようなシールド部18,19を備えれば、さらに精度よく車室天井部2と頭部49(具体的には頭頂部)との間の静電容量を検知することが可能となる。
【0043】
この乗員姿勢検知装置100は、乗員48が各検知電極11,12と比較して、非常に大きい体積および誘電率を有しているために、ほぼグランド(GND)とみなすことができる原理を利用して、回路部20を各検知電極11,12とグランド(例えば、乗員48)との間の静電容量を用いて乗員48の着座姿勢を判定することができる構成を採用している。
【0044】
したがって、このような構成の乗員姿勢検知装置100によれば、従来例として説明した頭部位置検出システムなどのように、信号の送受信が必要な検知方式のものと比較して、非常にシンプルな構成で精度の高いシステムを安価に構築することができる。よって、本実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100は、安価に構成可能でコストの削減を図ることが可能となる。
【0045】
この乗員姿勢検知装置100は、例えば図3に示すように、座席40の前方に配置された第1検知電極11により検知された静電容量(検出値1)と、座席40の直上に配置された第2検知電極12により検知された静電容量(検出値2)とを用いて、これら検出値の比(例えば、検出値1/(検出値1+検出値2))を演算し、頭部49の位置を判定して姿勢を検知する。
【0046】
これによれば、例えばダッシュボード3に搭載されたエアバッグ展開範囲4を、乗員48の頭部49の前後方向の位置に基づく姿勢情報によって、適宜調整して制御することができる。具体的には、図4に示すように動作する。なお、図4におけるグラフの(1),(2)は、それぞれ第1および第2検知電極11,12と対応している。
【0047】
図4(a)に示すように、例えば乗員48が座席40に対して車両1の前方寄りに着座している場合と、座席40に対して通常の姿勢で着座している場合(すなわち、座席40の直上に配置された第2検知電極12の直下近傍に居る場合)とでは、乗員48が左右方向(X方向)に傾いたとしても、検出値に次のような違いが出る。
【0048】
すなわち、いずれの場合でも、前方寄りに着座しているときは第1検知電極11の(1)の検出値ΔCが所定のしきい値よりも大きな検出値の範囲α内に収まり、通常姿勢で着座しているときは第2検知電極12の(2)の検出値ΔCが所定のしきい値よりも小さな検出値の範囲β内に収まる。
【0049】
なお、乗員姿勢検知装置100で検出される検出値ΔCは、図4(b)に示すように、座席40に着座した乗員48の頭部49が左右方向(例えば、X方向)に振れた場合、乗員48の頭部49の左右方向(X方向)の位置と、第1および第2検知電極11,12の検出値ΔCに基づき算出される補正値(規格化検出値(前後))との関係は、前後方向の位置の違いによる検出値のずれがあっても近似的に表わされる。
【0050】
このように、上述した規格化検出値(前後)は、頭部49の左右方向の位置の違いによる影響が少ない。このため、乗員48の左右方向のずれによりほとんど違いが出ず、第1検知電極11の(1)の検出値ΔCと第2検知電極12の(2)の検出値ΔCとによって、乗員48の前後方向(Y方向)の姿勢を検知することが可能となる。
【0051】
また、乗員48の頭部49が第1および第2検知電極11,12の中間位置下方近傍にあるときは、検出値ΔCは第1検知電極11の(1)の検出値ΔCと第2検知電極12の(2)の検出値ΔCとの中間値の範囲γ内に収まる。したがって、2つの検知電極11,12を用いたシンプルな構成で、乗員48の着座姿勢を検知することができる。
【0052】
このように、各検知電極11,12から乗員48の頭部49までの距離は、各検出値ΔCを用いて求めることができるので、周知の距離演算法などを用いて頭部49の前後方向の位置を正確に算出することができる。ここで、この検出値ΔCは、例えば頭部49の大きさに変化があったとしても前後方向においてはほとんど影響がないため、上述した方式で頭部49の位置を判定することが可能である。
【0053】
なお、本実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100は、第1および第2検知電極11,12を切替スイッチSW1,SW2を介して1つの静電容量検知回路21に接続し、CPU29からの切替制御により切替スイッチSW1,SW2を切り替えて、各検知電極11,12にて検知された静電容量値を用いて乗員48の着座姿勢を判定したが、例えば各検知電極11,12に対してそれぞれ接続される静電容量検知回路21を具備するように構成してもよい。ただし、この場合は、一の検知電極により静電容量の検知中(測定中)に、他の検知電極の電位が変化するとその影響を受けてしまうため、各静電容量検知回路21は同期させる必要がある。
【0054】
ここで、静電容量検知回路21は、図5に示すように、各検知電極11,12と頭部49との間の静電容量に応じてデューティー比が変化するパルス信号を生成するとともに平滑化して検知信号を出力する。すなわち、静電容量Cに応じてデューティー比が変化するものであり、例えば一定周期のトリガ信号TGを出力するトリガ信号発生回路101と、入力端に接続された静電容量Cの大きさによってデューティー比が変化するパルス信号Poを出力するタイマー回路102と、このパルス信号Poを平滑化するローパスフィルタ(LPF)103とを備えて構成されている。
【0055】
タイマー回路102は、例えば2つの比較器201,202と、これら比較器201,202の出力がそれぞれリセット端子Rおよびセット端子Sに入力されるRSフリップフロップ回路(以下、「RS−FF」と呼ぶ。)203と、このRS−FF203の出力DISをLPF103に出力するバッファ204と、RS−FF203の出力DISでオン/オフさせるトランジスタ205とを備えて構成されている。
【0056】
比較器202は、トリガ信号発生回路101から出力される図6に示すようなトリガ信号TGを、抵抗R1,R2,R3によって分割された所定のしきい値Vth2と比較して、トリガ信号TGに同期したセットパルスを出力する。このセットパルスは、RS−FF203のQ出力をセットする。
【0057】
このQ出力は、ディスチャージ信号DISとしてトランジスタ205をオフ状態にし、検知電極11(12)およびグランドの間を、これら検知電極の対接地静電容量Cおよび入力端と電源ラインとの間に接続された抵抗R4による時定数で決まる速度で充電する。これにより、入力信号Vinの電位が静電容量Cによって決まる速度で上昇する。
【0058】
入力信号Vinが、抵抗R1,R2,R3で決まる所定のしきい値Vth1を超えたら、比較器201の出力が反転してRS−FF203の出力を反転させる。この結果、トランジスタ205がオン状態となって、検知電極11(12)に蓄積された電荷がトランジスタ205を介して放電される。
【0059】
したがって、このタイマー回路102は、図6に示すように、検知電極11(12)および接近した人体48の頭部49との間の静電容量Cに基づくデューティー比で発振するパルス信号Poを出力する。LPF103は、この出力を平滑化することにより、図6に示すような直流の検知電極Voutを出力する。なお、この図6中において、実線で示す波形と点線で示す波形は、前者が後者よりも静電容量が小さいことを示しており、例えば後者が物体接近状態を示している。
【0060】
なお、上述した実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100において、検知された静電容量に基づき人体48の頭部49の位置を用いて着座姿勢を判定する回路部20の構成として、静電容量検知回路21が抵抗とコンデンサにより出力パルスのデューティー比が変化する静電容量C(Capacitance)を電圧V(Voltage)に変換するC−V変換型の周知のタイマーICを利用するものを用いて説明したが、これに限定されるものではない。
【0061】
すなわち、例えば正弦波を印加して静電容量値による電圧変化あるいは電流値から直接インピーダンスを測定する方式、測定する静電容量を含めて発振回路を構成して発振周波数を測定する方式、RC充放電回路を構成して充放電時間を測定する方式、既知の電圧で充電した電荷を既知の容量に移動してその電圧を測定する方式、または未知の容量に既知の電圧で充電し、その電荷を既知容量に移動させることを複数回行い、既知容量が所定電圧に充電されるまでの回数を測定する方式などがあり、検出した静電容量値にしきい値を設け、または静電容量の信号波形を解析して該当する静電容量波形になったときにトリガとするなどの処理を行うことでスイッチとして機能させたりしてもよい。
【0062】
また、本実施形態では静電容量検知回路21がC−V変換型により静電容量を電圧に変換して静電容量を検出することを前提としたが、電気的にあるいはソフトウェアとして扱いやすいデータに変換できる構成でもよく、例えばパルス幅に変換したり直接ディジタル値に変換したりしてもよい。
【0063】
さらに、本実施形態では静電容量検知回路21がC−V変換型のものを用いて説明したが、例えば次のようなものであってもよい。図7は、本発明の一実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の一部構成の他の例を示す説明図である。図7に示すように、この例の静電容量検知回路21は、差動動作型に構成されている。
【0064】
これにより、いわゆるコモンモードノイズを除去しつつ回路内の温度特性などをキャンセルすることができる。ここでは、上述した既知の電圧で充電した電荷を既知の容量に移動してその電圧を測定する方式を採用した差動動作型の回路例を説明する。
【0065】
まず、例えば差動増幅器28のプラス側入力端に第1検知電極11を接続し、マイナス側入力端に第2検知電極12を接続して、検知電極11の静電容量C1から検知電極12の静電容量C2を減算して、その出力値をコンパレータなどでしきい値と比較して頭部49の位置を検出するようにしてもよい。なお、プラス側入力端とマイナス側入力端に接続する検知電極の構成を変えてもよい。
【0066】
このような静電容量検知回路21の動作の一例としては、例えばスイッチS1がオープン(OFF)で、スイッチS2が接地(GND)され、スイッチS3がクローズ(ON)となっているときに、スイッチS3をオープン(OFF)にし、スイッチS2をVrに切り替え、スイッチS1をオペアンプの反転入力に接続すると、静電容量C1とCfにC1Vrが充電され、静電容量C2とCfにC2Vrが充電される。
【0067】
そして、スイッチS1をオープン(OFF)およびスイッチS2を接地(GND)した後に、スイッチS1を接地(GND)したときの電圧Vを測定する。このときの電圧は、例えばV/Vr={(Cf+C1)/Cf}−{(Cf+C2)/Cf}となり、静電容量C1と静電容量C2の割合に応じた電圧が出力されることとなる。これにより、同様に頭部49の位置を検出することができる。
【0068】
なお、車両1の車室天井部2の内部や座席40には、金属の部材が用いられている場合が多く、座席40を動かして乗員48が姿勢変化させたりすると各検知電極11,12と乗員48との位置関係が変化し、このような外部環境変化による静電容量値を検出してしまい誤動作に繋がってしまう場合がある。
【0069】
このような影響を極力受けないようにするために、図示は省略するが、上述したシールド部18,19とともに、上記静電容量変化を抑制する補助電極(シールド電極)を、各検知電極11,12の近傍位置に設けるようにしてもよい。
【0070】
この場合、各シールド電極には、それぞれ第1および第2検知電極11,12と同等の電位が与えられていればよい。同等の電位は、上記シールド駆動回路23のときと同様に、例えば各検知電極11,12に加えられる電位から高い入力インピーダンスで1倍のアンプ(バッファ)を通して生成するようにしてもよいし、図7に示した静電容量検知回路21の場合では、オペアンプの非反転入力の部分をシールド電極に接続して与えるようにしてもよい。
【0071】
図8は、本発明の一実施形態にかかる乗員姿勢検知装置の一部構成の他の例を説明するための説明図である。なお、以降において、既に説明した部分と重複する箇所には同一の符号を付して説明を割愛する。
【0072】
図8に示すように、ここでは、第1検知電極11が座席40の側方の車室天井部2(図示せず)に配置されている点が、先の例と相違している。このように構成することにより、サイドエアバッグ47の展開範囲(図示せず)を、乗員48の頭部49の左右方向(X方向)の位置に基づく姿勢情報によって、同様に適宜調整して制御することができる。
【0073】
なお、上述した実施形態においては、検出値を静電容量値としたが、座席40に乗員48が着座していないときの静電容量を初期容量として測定しておき、その初期容量からの増加分を検出値として扱うようにしてもよい。以上述べたように、本実施形態にかかる乗員姿勢検知装置100は、各検知電極11,12を有する静電容量センサ部10と回路部20という非常にシンプルで安価な構成によって、乗員48の姿勢(着座姿勢)を検知し、その姿勢情報をエアバッグの展開制御などに利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1 車両
2 車室天井部
10 静電容量センサ部
11 第1検知電極
12 第2検知電極
18 シールド部
19 シールド部
20 回路部
21 静電容量検知回路
22 A/D変換器
23 シールド駆動回路
29 CPU
40 座席
47 サイドエアバッグ
48 乗員(人体)
49 頭部
100 乗員姿勢検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の座席の上方の車室天井部に、前記座席に着座した人体の頭部と前記車室天井部との間の静電容量を検知可能となるように2つ配置され、前記座席に着座した人体の頭部と前記車室天井部との間の静電容量を検知する検知電極と、
前記検知電極とそれぞれ接続され、各検知電極からの検知信号に基づいて前記人体の頭部の位置を検出する検出回路と、
前記検出回路からの検出結果に応じて、前記人体の着座姿勢を判定する姿勢判定回路とを備えた
ことを特徴とする乗員姿勢検知装置。
【請求項2】
前記検知電極の一方は、前記座席に着座した人体の頭部と前記座席前方の車室天井部との間の静電容量を検知可能となるように、他方は、前記座席に着座した人体の頭部と前記座席直上の車室天井部との間の静電容量を検知可能となるように配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の乗員姿勢検知装置。
【請求項3】
前記検知電極の一方は、前記座席に着座した人体の頭部と前記座席側方の車室天井部との間の静電容量を検知可能となるように、他方は、前記座席に着座した人体の頭部と前記座席直上の車室天井部との間の静電容量を検知可能となるように配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の乗員姿勢検知装置。
【請求項4】
前記姿勢判定回路は、判定した前記人体の着座姿勢に関する情報を、前記車両に搭載されたエアバッグの展開を制御する機能を含むECUに出力する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の乗員姿勢検知装置。
【請求項5】
前記検知電極の裏面側および周囲の両方またはいずれかに、該検知電極と電気的に絶縁されたシールド部をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の乗員姿勢検知装置。
【請求項6】
前記シールド部は、前記検知電極と同電位が与えられている
ことを特徴とする請求項5記載の乗員姿勢検知装置。
【請求項7】
前記検出回路は、あらかじめ前記座席に人体が着座していないときの静電容量値を記憶する記憶手段を備え、
前記人体が着座した場合に該記憶手段に記憶された静電容量値からの増加量を検出値として検出結果を出力する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の乗員姿勢検知装置。
【請求項8】
前記検出回路は、各検知電極とそれぞれ一対一で接続され、各検知電極により検知された静電容量を電圧に変換するC−V変換型の複数の静電容量検知回路を有する
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の乗員姿勢検知装置。
【請求項9】
前記検出回路は、各検知電極により検知された静電容量を電圧に変換するC−V変換型の静電容量検知回路を有し、
前記静電容量検知回路は、スイッチ手段を介して各検知電極に接続されている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の乗員姿勢検知装置。
【請求項10】
前記検知電極のうち、一の検知電極をシールド駆動するシールド駆動回路をさらに備えたことを特徴とする請求項9記載の乗員姿勢検知装置。
【請求項11】
前記検出回路は、静電容量を検知する検知電極を前記静電容量検知回路に接続するとともに、他の検知電極を前記シールド駆動回路に接続するように前記スイッチ手段を制御することを徴とする請求項10記載の乗員姿勢検知装置。
【請求項12】
前記検出回路は、差動動作型の静電容量検知回路を有し、
各検知電極の近傍に該検知電極とは逆相の前記静電容量検知回路の入力端子に接続された補助電極が配置されている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の乗員姿勢検知装置。
【請求項13】
車両の座席の上方の車室天井部に、前記座席に着座した人体の頭部と前記車室天井部との間の静電容量を検知可能となるように2つ配置された検知電極によって、前記座席に着座した人体の頭部と前記車室天井部との間の静電容量を検知し、
検知された静電容量を示す各検知電極からの検知信号に基づいて、前記人体の頭部の位置を検出し、
検出された前記頭部の位置を基準として、前記人体の着座姿勢を判定する
ことを特徴とする乗員姿勢検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−175443(P2010−175443A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19764(P2009−19764)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】