説明

乳化剤/解乳化剤を含む系

【課題】 金属加工用潤滑剤などの乳化油系と共に使用するために、乳化剤/解乳化剤を含む系が選ばれる。
【解決手段】 乳化剤は、ポリイソブチレン無水コハク酸などのアルキル置換コハク酸を含む。解乳化剤は、親水−親油平衡値の低い界面活性剤を含むことができる。特定の乳化剤および解乳化剤が有用であるその他の乳化油系として、掘削用流動体および接合用化学薬品などの油田で使用する化学薬品、製紙用化学薬品、エマルジョン爆薬、削岩用潤滑剤、および採掘用潤滑剤があげられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工潤滑剤などの乳化油系と共に使用するための乳化剤、解乳化剤、およびそれらの組合せに関するものである。具体的には、本発明の乳化剤には、ポリイソブチレン無水コハク酸などのアルキル置換コハク酸エステルを含むことができる。本発明の解乳化剤には、低HLB値の界面活性剤を含むことができる。
【背景技術】
【0002】
切削および工作用潤滑剤の非常に多くは、水中油型エマルジョンからなる。このような流動体中に存在する水は、コストおよび冷却効率などの面で多くの利点をもたらす。潤滑剤が効果を発揮するためには、エマルジョンが強固でなければならず、種々の(乳化剤として知られている)乳化作用のある薬剤を用いて油層と水層の分離が抑制されている。潤滑剤の処理コストを最低限に抑え、さらに潤滑剤の処理による環境に及ぼす望ましくない影響を最低限に抑えるために、潤滑剤が耐用寿命に達した時点で、油層と水層を分離させるのが望ましい。多くの場合、潤滑剤に強酸を加えた後、通常中和することによって油層と水層の分離を行う。このような酸を添加し、中和する工程は、有害危険物質の取り扱いおよび保存などのコストとして使用者の負担となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、金属加工用潤滑剤などの従来の乳化油系の前述した欠点や不都合を克服するのが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の乳化剤は、金属含有清浄剤および/またはアルキル置換コハク酸エステルを含む。解乳化剤は、低い親水−親油平衡(HLB; hydrophilic lipophilic balance)値を有する界面活性剤を含む。
【0005】
ある実施例では、乳化油系中に使われる乳化剤は、約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる。他の実施例では、乳化油系中に使われる乳化剤は、ポリイソブテニル無水コハク酸をポリアミンと反応させて得られるポリイソブテニルコハク酸イミドの無灰分散剤を含んでいる。
【0006】
別の実施例では、乳化油系中に使われる解乳化剤は、親水−親油平衡値が約5.0未満である界面活性剤を含んでいる。
【0007】
さらに別の実施例では、水中乳化油組成物が、約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含む乳化剤を含んでいる。本組成物は、さらに親水−親油平衡値が約5.0未満である界面活性剤を含む解乳化剤を含むことができる。
【0008】
それ以外の実施例では、乳化油系を分離させる方法が、約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含む乳化剤を含んでいるエマルジョンを準備するステップと、親水−親油平衡値が約5.0未満である界面活性剤を含んでいる解乳化剤をエマルジョンに添加するステップとを含んでいる。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明には、優れた効果を得るために、乳化油系中の従来の乳化剤に代わり、強固で安定なエマルジョンを形成する化学組成を用いる方法、またはそのような化学組成を用い、乳化油系中の従来の乳化剤を補強する方法が含まれる。さらに、適切な界面活性剤を添加した場合、それによってエマルジョンが「分離し」、後処理がしやすい本発明の乳化剤を設計する方法も含まれる。
【0010】
典型的な乳化剤は、その特有な化学的性質から、通常以下の2つのクラスに分類される。
【0011】
a)スルホン酸塩、フェネート、サリチル酸塩、ホスホン酸塩‐フェネート、またはカルボン酸塩などの金属清浄剤、または
b)ポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)およびその誘導体などのアルキル置換コハク酸エステル。従来から使われているPIBSA乳化剤は、少なくとも約1,350の分子量を有するポリイソブチレンから得られている。
【0012】
本明細書に記載のPIBSAの例として、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した分子量が約500から1,250の範囲あるいは約950であるポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸であるアルキル置換コハク酸エステルを使うことができる。
【0013】
乳化剤の別の例として、ポリイソブテニルコハク酸イミドの無灰分散剤があり、これはポリイソブテニル無水コハク酸をトリエチレンテトラミン(TETA)などのポリアミンと、ポリアミン1モルに対し前記PIBSAが1.3モル超で2.0モル未満のモル比で、反応、接触、または相互作用させて得られる。その他のポリアミンの例として、これらに限定されるわけではないが、炭酸水素アミノグアニジン(AGBC)、ジエチレントリアミン(DETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、高分子量のポリアミン、およびそれらの混合物を使うことができる。高分子量のポリアミンは、少量の低分子のポリアミンオリゴマー(TEPAおよびPEHAなど)を含むポリアルキレンポリアミンの混合物であるが、主として7個以上の窒素原子を有するオリゴマーと、1分子あたり2個以上の第一級アミンと、従来のポリアミン混合物より広範囲におよぶ分枝とを含む。コハク酸イミド反応ポリアミンおよびその他の試薬の別の例が、米国特許第6,548,458 B2号に記載されており、これは本明細書中にその全体が引用により包含されている。
【0014】
本明細書中で使用する解乳化用界面活性剤は、選択された特有の乳化剤と共に働くように最適化されており、低いHLB値を有するいかなる界面活性剤の中からも選ぶことができる。HLBとは、界面活性剤の水および油に対する相対的な親和性に基づき、界面活性剤の特性を表す方法である。一般に、高HLB値は水に対する親和性が高い界面活性剤を示し、低HLB値は油に対する親和性が高い界面活性剤を示す。多くの場合、2種類以上の界面活性剤を含有する混合物を使い、効果を最適化することができる。通常、比較的高いHLB値を有する界面活性剤は、切削油剤中およびその他の金属加工用に使われることが多い水エマルジョン中の油を安定させる。乳化界面活性剤の混合物、または広範な範囲の分子量を有する乳化剤の混合物からなる乳化剤がよく使われ、系の安定化がはかられる。もともと安定であるエマルジョンを解乳化すなわち分離させるためには、このような効果を得るため作られた特別な乳化剤および解乳化剤の両方を使う必要があることが本発明において発見された。
【0015】
安定なエマルジョンを分離させるためには、界面活性剤の系の有効HLB値を変化させなければならない。このような変化を起すために、非常に低いHLB値の界面活性剤を添加する。しかし、このようなHLB値を有する界面活性剤のいずれもが期待通りに働くわけではない。選択する界面活性剤どうしが相溶する必要がある。このようなエマルジョンの分離(解乳化[Demulsibility])では、エマルジョンに添加する低HLB値の界面活性剤によって、油中水型エマルジョンの形成が促進されるとも考えられる。これが原因で、乳化系がくずれ、すなわち解乳化される。明らかに、期待するような分離が生じ、かつ安定な油中水型(転相)エマルジョンが形成されないように、添加する低HLB値の界面活性剤の量と化学的性質を選択する必要がある。
【0016】
HLB値が約5.0未満、または約2.0未満、または約1.0未満である低HLB値の界面活性剤が良好な解乳化剤になることができる。PIBSA(950 MW PIB)乳化剤と共に用いた場合良好な解乳化剤となる市販の低HLB値の界面活性剤は、Pluronic L121のようなエチレンオキシド‐プロピレンオキシド共重合体である。
【0017】
解乳化用パッケージとして、複数の化合物を組合せて含むことができる。これらの化合物の組合せには、複数の界面活性剤を組み合わせることができる。さらに、複数の界面活性剤と複数の高分子量油溶性ポリマーとを組み合わせることもできる。このような油溶性ポリマーの分子量は広範囲にわたるが、約100万以上であることができる。このようなポリマーとしては、例えば、オレフィン系ポリマーがあげられ、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリイソブチレンがある。分子量が100万以上のポリイソブチレンとして、例えば少なくとも130万の分子量を有するものが種々の形態で入手できるが、油中希釈液が最も便利である。これらの例には、Paratac(Infineum Group製)、HiTEC(R)152(Ethyl Corp.製)、HiTEC(R)154(Ethyl Corp.製)、TecGARD(R)400(Ethyl Corp.製)、Functional V−172(Functional Products Inc.製)、Functional V−176(Functional Products Inc.製)が含まれる。これらの商標の高分子量ポリマー溶液は、粘着剤および曇り調節剤として市販されている。これらのポリマーは高分子量であるために、熱によるストレスや機械的ストレスが加わると剪断されやすくなる。この剪断されやすい性質は、粘着性や曇りにくさが要求される多くの適用例では欠点となるが、本発明に適用する場合は、剪断安定性は問題にはならない。したがって、剪断されやすいポリマーは、必ずしも好ましいわけではないが、本発明に用いるには適切なポリマーであるといえる。
【実施例1】
【0018】
水溶性基剤を、以下の材料を接触させることによって調製した。

100ナフテン油 82.5%
トール油Westvaco M−28B 2.3%
トリプロピレングリコールメチルエーテル(異性体混合物) 1.1%
水道水、米国ヴァージニア州リッチモンド(Richmond, VA) 0.5%
KOH 45% 1.3%
Lubrizol Syn−ester Gy−241 1.6%
950MWポリイソブチレン由来ポリイソブテニルコハク酸
イミドの無灰分散剤:ポリイソブテニル無水コハク酸を
ポリアミンと反応させて得られる 12.9%
AMP−95(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)1.5%
NP−9(p−ノニルフェノール) 0.6%

本濃縮物10%に水道水90%を加え、安定なエマルジョンを得た。次に、本エマルジョンに解乳化剤Sanyo LB 1800X(ポリオキシプロピレンブチルエーテル)を加えると、油溶性部分と水溶性部分からなる2層に分かれた。水層は混濁していた。
【実施例2】
【0019】
水溶性基剤を、以下の材料を接触させることによって調製した。

100ナフテン油 82.5%
トール油Westvaco M−28B 2.3%
トリプロピレングリコールメチルエーテル(異性体混合物) 1.1%
水道水、米国ヴァージニア州リッチモンド(Richmond, VA) 0.5%
KOH 45% 1.3%
Lubrizol Syn−ester Gy−241 1.6%
950MWポリイソブチレン由来ポリイソブテニルコハク酸
イミドの無灰分散剤:ポリイソブテニル無水コハク酸を
ポリアミンと反応させて得られる 12.9%
AMP−95(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール) 1.5%
NP−9(p−ノニルフェノール) 0.6%

本濃縮物10%に水道水90%を加え、安定なエマルジョンを得た。次に、本エマルジョンに、HiTEC(R) 152ポリイソブチレン系粘着剤50部とPluronic L−121の10%水溶液50部とからなる混合物を含む解乳化剤を加えると、油溶性部分と水溶性部分からなる2層に分かれた。水層は混濁していた。
【実施例3】
【0020】
水溶性基剤を、以下の材料を接触させることによって調製した。

100ナフテン油 84.1%
トール油Westvaco M−28B 2.3%
トリプロピレングリコールメチルエーテル(異性体混合物) 1.1%
水道水、米国ヴァージニア州リッチモンド(Richmond, VA) 0.5%
KOH 45% 1.3%
950MWポリイソブチレン由来ポリイソブテニルコハク酸
イミドの無灰分散剤:ポリイソブテニル無水コハク酸を
ポリアミンと反応させて得られる 12.9%
AMP−95(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)1.5%
NP−9(p−ノニルフェノール) 0.6%

本濃縮物10%に水道水90%を加え、安定なエマルジョンを得た。次に、本エマルジョンに、HiTEC(R) 152ポリイソブチレン系粘着剤50部とPluronic L−121の10%水溶液50部とからなる混合物を含む解乳化剤を加えると、油溶性部分と水溶性部分からなる2層に分かれた。水層は混濁していた。
【実施例4】
【0021】
水溶性基剤を、以下の材料を接触させることによって調製した。

100ナフテン油 84.1%
トール油Westvaco M−28B 2.3%
トリプロピレングリコールメチルエーテル(異性体混合物) 1.1%
水道水、米国ヴァージニア州リッチモンド(Richmond, VA) 0.5%
KOH 45% 1.3%
950MWポリイソブチレン由来ポリイソブテニルコハク酸
イミドの無灰分散剤:ポリイソブテニル無水コハク酸を
ポリアミンと反応させて得られる 12.9%
AMP−95(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)1.5%
NP−9(p−ノニルフェノール) 0.6%

本濃縮物10%に水道水90%を加え、安定なエマルジョンを得た。次に、本エマルジョンに解乳化剤Sanyo LB 1800X(ポリオキシプロピレンブチルエーテル)を加えると、油溶性部分と水溶性部分からなる2層に分かれた。水層は混濁していた。
【実施例5】
【0022】
水溶性基剤を、以下の材料を接触させることによって調製した。

100ナフテン油 84.0%
トール油Westvaco M−28B 2.3%
トリプロピレングリコールメチルエーテル(異性体混合物)1.1%
水道水、米国ヴァージニア州リッチモンド(Richmond, VA) 0.5%
KOH 45% 1.3%
Lubrizol Syn−ester Gy−241 1.6%
950MWポリイソブチレン由来ポリイソブテニルコハク酸
イミドの無灰性分散剤:ポリイソブテニル無水コハク酸を
ポリアミンと反応させて得られる 12.9%
NP−9(p−ノニルフェノール) 0.6%

本濃縮物10%に水道水90%を加え、安定なエマルジョンを得た。次に、本エマルジョンに解乳化剤Sanyo LB 1800X(ポリオキシプロピレンブチルエーテル)を加えると、油溶性部分と水溶性部分からなる2層に分かれた。水層は混濁していた。
【実施例6】
【0023】
水溶性基剤を、以下の材料を接触させることによって調製した。

100ナフテン油 84.0%
トール油Westvaco M−28B 2.3%
トリプロピレングリコールメチルエーテル(異性体混合物) 1.1%
水道水、米国ヴァージニア州リッチモンド(Richmond, VA) 0.5%
KOH 45% 1.3%
Lubrizol Syn−ester Gy−241 1.6%
950MWポリイソブチレン由来ポリイソブテニルコハク酸
イミドの無灰分散剤:ポリイソブテニル無水コハク酸を
ポリアミンと反応させて得られる 12.9%
NP−9(p−ノニルフェノール) 0.6%

本濃縮物10%に水道水90%を加え、安定なエマルジョンを得た。次に、本エマルジョンに、HiTEC(R) 152ポリイソブチレン系粘着剤50部とPluronic L−121の10%水溶液50部とからなる混合物を含む解乳化剤を加えると、油溶性部分と水溶性部分からなる2層に分かれた。水層は混濁していた。
【0024】
上記の実施例は金属加工用潤滑剤として作られている。「金属加工用潤滑剤」という用語は、本明細書では、切削および工作機械と関連して用いられる流動体(fluid)を意味する。金属加工用流動体は、水を含有しない油、可溶性油またはエマルジョン、半合成流動体、および合成流動体をはじめとする様々な流動体を含むことができる。エマルジョン型の流動体は、しばしば可溶性油および半合成流動体と呼ばれる。本明細書中の金属加工用流動体は、冷却剤、成形油、処理用流動体、および保存剤を含むいくつかの種類に分類される。金属加工用流動体の目的も多岐にわたるであろう。該流動体は機械の動きを滑らかにする、切削機械の溝から金属の削り屑を取り除く、被加工部品や切削機械の腐食を防止する、熱などを除去することができる。金属加工用流動体中に存在する水は、熱を除去する利点があり、コストの軽減に役立つことが多い。
【0025】
適用する用途によって、金属加工用流動体中に以下に示す化学薬品を含有することができる:乳化剤、カップリング剤、極圧(EP; extreme pressure)添加剤、磨耗防止剤、酸化防止剤、pH緩衝剤、油(ナフテン系、パラフィン系、またはその他)、水(水道水、蒸留水、脱イオン水、処理水など)、殺生物剤(殺菌剤および殺真菌剤)、泡抑制剤、防錆防腐食剤、および作業環境におけるミストの飛散を低下させるためのポリマー。必須条件ではないが、通常、比較的薄い色に着色した金属加工用流動体が望ましいことがある。これは主として、切削や研磨する時に、被加工部品がよく見えるようにするためである。また、これも必須条件ではないが、作業環境を快適に保つために、金属加工用流動体から強烈な化学臭が放出されないことが望まれる。
【0026】
さらに、これ以外の種類の乳化油系に対しても、本明細書に記載の乳化剤、解乳化剤、および方法は有用である。これらの別の乳化系として、特に掘削用流動体および接合(cementing)用化学薬品などの油田で使用する化学薬品、製紙用化学薬品(すなわち紙の製造に使用される化学薬品)、エマルジョン爆薬、削岩用潤滑剤、および採掘用潤滑剤などがあげられる。以上の例やその他の乳化油系においては、それぞれ、乳化剤を選択し、エマルジョンを分離させるために特定の解乳化剤と共に使用する。エマルジョンはそれらの系に適したものが使われる。このようにして種々のエマルジョンの廃棄処理が向上し得る。
【0027】
本明細書に記載のPIBSA乳化剤の特定の利点は、具体的には、約500から約1,250の分子量を有するポリイソブチレンから得られるPIBSAの分子量が比較的低いので、同じ金属加工装置系の一部として別の潤滑剤も使われる場合に、金属加工用流動体が別の潤滑剤と本来的に相溶性であるという利点を含む。例えば金属加工用潤滑剤の例では、金属加工用流動体を使用している金属加工装置系に同時に使うことができるその他の油として、切削油、油を基剤とする油圧油、摺動面潤滑油、および工業用ギア油があげられる。これらは、しばしば「トランプ(tramp)」油と呼ばれる。というのは、金属加工用潤滑剤を汚染し得るからである。しかし、いわゆるトランプオイルの多くが、金属加工用流動体を汚染する場合、この流動体との相溶性に問題があることになり、金属加工用流動体の廃棄が必要になることがある。しかし、金属加工用流動体が本明細書に記載の乳化系を利用するならば、これらの他の油もこの金属加工用流動体と同種の化学薬品を含有するように、これらの他の油を選択することができる。ただし、これらの他の油中のコハク酸イミド分散剤などのこの種の化学薬品は、乳化剤としてではなく、清浄を保つ、溶解を促進する、またはスラッジおよび沈殿物を抑制するなどの別の特性を付与するために含まれている。市販のこれらの工業用潤滑剤の中には、本明細書に記載の低分子量ポリイソブチレンをはじめとして、PIBSA成分を使用しているものがある。例えば、低分子量ポリイソブチレンから得られたPIBSAを含むギア用分散剤を対象にした特許、米国特許第5,612,295号を参照されたい。この特許は、本明細書中にその全体が引用により包含されている。低分子量ポリイソブチレンから得られたPIBSAを含む乳化剤を有する金属加工用潤滑剤を使えば、この金属加工用潤滑剤は、トランプ油などの金属加工装置系に関連して使われるその他の工業用流動体と相溶であり得る。そのため、トランプ油が金属加工用潤滑剤を傷めたり、汚染し不利益をもたらしたりすることが軽減される。
【0028】
本発明は、実用にあたって形態を様々に変更することができる。したがって、これまでの記載内容は、本発明を本明細書中の上記の実施例に限定するためのものではなく、また限定するものであってはならない。本発明の意図するところは、特許請求の範囲に記載の内容、および特許法上、それらの均等物と認められるものに及ぶ。
【0029】
実施形態はいずれも、一般に利用されることを目的に開示したのではなく、また修正形態または変更形態はいずれも、発明の範囲を文字通り逸脱しているかのごとく見える場合であっても、均等論の下、発明の一部とみなされる。
【0030】
本発明の特徴及び態様を示せば以下のとおりである。
1.乳化油系において使用する乳化剤であって、約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含む乳化剤。
2.ポリイソブチレン無水コハク酸が約950の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られる、上記1に記載の乳化剤。
3.乳化油系が金属加工用潤滑剤である、上記1に記載の乳化剤。
4.乳化油系において使用する乳化剤であって、ポリイソブテニル無水コハク酸をポリアミンと反応させて得られるポリイソブテニルコハク酸イミドの無灰分散剤を含む乳化剤。
5.ポリアミンがトリエチレンテトラミンである、上記4に記載の乳化剤。
6.ポリイソブテニル無水コハク酸のトリエチレンテトラミンに対するモル比が約2.0から約1.3である、上記5に記載の乳化剤。
7.ポリイソブチレン無水コハク酸が約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られる、上記4に記載の乳化剤。
8.ポリイソブチレン無水コハク酸が約950の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られる、上記7に記載の乳化剤。
9.乳化油系が金属加工用潤滑剤である、上記4に記載の乳化剤。
10.乳化油系において使用する解乳化剤であって、約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含む解乳化剤。
11.界面活性剤がエチレンオキシド‐ポリエチレンオキシド共重合体を含む、上記10に記載の解乳化剤。
12.親水−親油平衡値が約2.0未満である、上記10に記載の解乳化剤。
13.親水−親油平衡値が約1.0未満である、上記10に記載の解乳化剤。
14.乳化油系が金属加工用潤滑剤であるである、上記10に記載の解乳化剤。
15.乳化油系を分離させる方法であって、
約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含む乳化剤を含んでいるエマルジョンを形成するステップと、
約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含んでいる解乳化剤をエマルジョンに添加するステップと
を含んでいる方法。
16.ポリイソブチレン無水コハク酸が約950の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られる、上記15に記載の方法。
17.界面活性剤がエチレンオキシド‐プロピレンオキシド共重合体を含む、上記15に記載の方法。
18.前記界面活性剤の親水−親油平衡値が約2.0未満である、上記15に記載の方法。
19.前記界面活性剤の親水−親油平衡値が約1.0未満である、上記15に記載の方法。
20.乳化油系が金属加工用潤滑剤であるである、上記15に記載の方法。
21.約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる乳化剤を含む水中乳化油組成物。
22.ポリイソブチレン無水コハク酸が約950の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られる、上記21に記載の水中乳化油組成物。
23.ポリイソブテニル無水コハク酸をポリアミンと反応させて得られるポリイソブテニルコハク酸イミドの無灰分散剤を含んでいる乳化剤を含む水中乳化油組成物。
24.ポリアミンがトリエチレンテトラミンである、上記23に記載の組成物。
25.ポリイソブテニル無水コハク酸のトリエチレンテトラミンに対するモル比が約2.0から約1.3である、上記24に記載の組成物。
26.ポリイソブチレン無水コハク酸が約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られる、上記23に記載の組成物。
27.ポリイソブチレン無水コハク酸が約950の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られる、上記26に記載の組成物。
28.約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含んでいる解乳化剤をさらに含む、上記23に記載の組成物。
29.約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含んでいる解乳化剤をさらに含む、上記21に記載の組成物。
30.界面活性剤がエチレンオキシド‐プロピレンオキシド共重合体を含む、上記29に記載の組成物。
31.親水−親油平衡値が約2.0未満である、上記29に記載の組成物。
32.親水−親油平衡値が約1.0未満である、上記29に記載の組成物。
33.約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる乳化剤を含む金属加工用潤滑剤。
34.約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含んでいる解乳化剤をさらに含む、上記33に記載の金属加工用潤滑剤。
35.約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる乳化剤を含む油田掘削泥水。
36.約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含んでいる解乳化剤をさらに含む、上記35に記載の油田掘削泥水。
37.約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる乳化剤を含む製紙用化学薬品。
38.約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含んでいる解乳化剤をさらに含む、上記37に記載の製紙用化学薬品。
39.約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる乳化剤を含むエマルジョン爆薬。
40.約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含んでいる解乳化剤をさらに含む、上記39に記載のエマルジョン爆薬。
41.約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる乳化剤を含む削岩用潤滑剤。
42.約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含んでいる解乳化剤をさらに含む、上記41に記載の削岩用潤滑剤。
43.約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる乳化剤を含む採掘用潤滑剤。
44.約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含んでいる解乳化剤をさらに含む、上記43に記載の採掘用潤滑剤。
45.金属加工系を潤滑する方法であって、
約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる乳化剤を含む金属加工用潤滑剤を準備するステップと、
金属加工用潤滑剤を金属加工系表面と接触させるステップと
を含む方法。
46.約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含んでいる解乳化剤を準備するステップと、解乳化剤を金属加工用潤滑剤に添加するステップとをさらに含む、上記45に記載の方法。
47.ポリイソブテニル無水コハク酸をポリアミンと反応させて得られるポリイソブテニルコハク酸イミドの無灰分散剤を含んでいる乳化剤を含み、さらにエチレンプロピレンオキシド共重合体と少なくとも100万の数平均分子量を有する高分子量油溶性ポリマーとを含んでいる界面活性剤パッケージを含んでいる解乳化剤を含む水中乳化油組成物。
48.ポリイソブテニル無水コハク酸をポリアミンと反応させて得られるポリイソブテニルコハク酸イミドの無灰分散剤を含んでいる乳化剤を含み、さらにエチレンプロピレンオキシド共重合体と少なくとも130万の数平均分子量を有する高分子量油溶性ポリイソブチレンとを含んでいる界面活性剤パッケージを含んでいる解乳化剤を含む水中乳化油組成物。
49.ポリイソブテニル無水コハク酸をポリアミンと反応させて得られるポリイソブテニルコハク酸イミドの無灰分散剤を含んでいる乳化剤を含み、さらにエチレンプロピレンオキシド共重合体と油溶性の曇り除去剤とを含んでいる界面活性剤パッケージを含んでいる解乳化剤を含む水中乳化油組成物。
50.ポリイソブテニル無水コハク酸をポリアミンと反応させて得られるポリイソブテニルコハク酸イミドの無灰分散剤を含んでいる乳化剤を含み、さらにエチレンプロピレンオキシド共重合体と油溶性の粘着剤とを含んでいる界面活性剤パッケージを含んでいる解乳化剤を含む水中乳化油組成物。
51.乳化油系であって、乳化剤が約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含む乳化剤と、
切削油、油圧油、ギア油、および摺動面潤滑油からなるグループから選ばれた少なくもと1つの追加の油と
を含む金属加工装置系であって、
少なくもと1つの追加の油が、ポリイソブテニル無水コハク酸をポリアミンと反応させて得られるポリイソブテニルコハク酸イミドの無灰分散剤を含んでいる添加剤を含み、ポリイソブテニル無水コハク酸が約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られる系。
52.約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含んでいる解乳化剤をさらに含む、上記51に記載の系。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化油系において使用する乳化剤であって、約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含む乳化剤。
【請求項2】
ポリイソブチレン無水コハク酸が約950の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られる、請求項1に記載の乳化剤。
【請求項3】
乳化油系を分離させる方法であって、
約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含む乳化剤を含んでいるエマルジョンを形成するステップと、
約5.0未満の親水−親油平衡値を有する界面活性剤を含んでいる解乳化剤をエマルジョンに添加するステップと
を含んでいる方法。
【請求項4】
約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる乳化剤を含む水中乳化油組成物。
【請求項5】
約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる乳化剤を含む油田掘削泥水。
【請求項6】
約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる乳化剤を含むエマルジョン爆薬。
【請求項7】
金属加工系を潤滑する方法であって、
約500から約1,250の平均分子量を有するポリイソブチレンから得られるポリイソブチレン無水コハク酸を含んでいる乳化剤を含む金属加工用潤滑剤を準備するステップと、
金属加工用潤滑剤を金属加工系表面と接触させるステップと
を含む方法。

【公開番号】特開2006−7212(P2006−7212A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173897(P2005−173897)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】