説明

乳化化粧料

【課題】多量にセラミドを配合しても経時的に安定な乳化物を得ること。
【解決手段】次の成分(a)〜(f);
(a)セラミド 0.7〜1.5重量%
(b)ポリオキシエチレン水素添加ステロール 0.5〜2.0重量%
(c)水添ナタネ油アルコール 0.5〜2.0重量%
(d)油
(e)ブチレングリコール 2.5〜3.5重量%
(f)水
を含有し20℃で流動性のある水中油型乳化化粧料を得ること。好ましくは成分(e)ブチレングリコールと水を予め混合する。さらには、水/(ブチレングリコール+水)(重量比)が0.3〜0.4であり、予め混合する成分(e)ブチレングリコールと水との合計が4.6〜5.3重量%であると、さらに経時安定性に優れる水中油型乳化化粧料を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミドを0.7〜1.5重量%と多量に含有するにもかかわらず、経時安定性に優れた水中油型乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミドは皮膚の角層の細胞間脂質に含有され、皮膚バリア能に寄与しているといわれているが、セラミドは一般に化粧品基材への溶解性が悪いため結晶物として分散していることが多く、セラミドを化粧料などの皮膚外用剤中に含有させるために、種々の化合物を組み合わせてその結晶化を抑制したり、溶解性を向上する試みが為されている。例えば、セラミド、コレステロール、及びリン脂質からなる複合物を多価アルコールを含有する水相と混合する方法(例えば、特許文献1を参照)や、セラミドとリン脂質を1:2〜1:100の割合で多価アルコール中に溶解させた後に水相に分散させる方法(例えば、特許文献2を参照)などが知られている。また、セラミド及び炭素数12〜32の脂肪酸を含む油性基材に、ノニオン性の界面活性剤を添加し、これをアルキルメチルタウリン塩又はアシルグルタミン酸塩で乳化する方法(例えば、特許文献3を参照)なども知られている。さらに、セラミド、脂肪族アルコール、及びポリグリセリン脂肪酸エステルを多価アルコールを含有する水性媒体で分散させることにより、液晶構造を有した分散物が得られること(例えば、特許文献4,特許文献5を参照)が知られている。しかし、このような液晶分散物は、セラミドの吸収性は好ましいが、製剤系の安定性、特に液晶部分への水の侵入による液晶構造の崩壊などを起こしやすいという心配がある。このように、セラミドを皮膚外用剤中に安定に配合させる工夫が種々行われてきているが、未だ十分とは言えないのが現状である。
【0003】
セラミドとポリオキシエチレン水素添加ステロール、水添ナタネ油アルコール、及びブチレングリコールを含有する皮膚外用剤は知られていないし、該成分を組み合わせて使用することによりセラミド含有製剤系の安定性が向上することも知られていなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−229811号公報
【特許文献2】特開平11−130651号公報
【特許文献3】特開2004−161655号公報
【特許文献4】特開2004−331595号公報
【特許文献5】特開2004−331594号公報
【特許文献6】特開2006−111620号公報
【特許文献7】特開2004−269502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セラミドは保湿効果が非常に高いため化粧料に配合することが求められているが、結晶性が高く皮膚外用剤などへの配合が困難であるため、セラミドを1重量%前後のように多量に配合する場合では結晶析出等、経時安定性が十分ではなかった。これまでは、セラミドを多量に、安定に含有する水中油型乳化化粧料を得ることは困難であった。
【0006】
このため、セラミドを多量に配合しても経時安定性に優れた水中油型乳化化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情に鑑み、本発明者等は鋭意検討した結果、
次の成分(a)〜(f);
(a)セラミド 0.7〜1.5重量%
(b)ポリオキシエチレン水素添加ステロール 0.5〜2.0重量%
(c)水添ナタネ油アルコール 0.5〜2.0重量%
(d)油
(e)ブチレングリコール 2.5〜3.5重量%
(f)水
を含有することを特徴とする20℃で流動性のある水中油型乳化化粧料が、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水中油型乳化化粧料は、セラミドを多量に含有するにもかかわらず、経時安定性に優れた水中油型乳化化粧料である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の成分(a)であるセラミドは天然型、擬似型、及びこれらの混合物であってもよい。本発明に使用されるセラミドとは、スフィンゴシンのアミノ基に長鎖脂肪酸がアミド結合した化合物の総称で、スフィンゴシンの構造及び長鎖脂肪酸の構造の違いによりセラミド1〜6が知られている。本発明においてはセラミド構造を有していれば何れのセラミドでも使用できるが、その中でも、セラミド2(N−アシルスフィンゴシン)又はセラミド3(N−アシルジヒドロスフィンゴシン)が好ましい。セラミド2としては、高砂香料工業よりCERAMIDE TIC−001 (N)が市販されており、このものを購入して使用することができる。セラミド3は、スフィンゴシンのヒドロキシ体であるフィトスフィンゴシンのN−アシル化体であり、植物セラミドとしても知られており、米糠に含有されているスフィンゴ糖脂質であるセレブロシドを加水分解しても得ることができる。セラミド3は、コスモファーム社より市販されており、このものを購入して使用することができる。
【0010】
本発明の成分(b)はポリオキシエチレン水素添加ステロールである。好ましくは平均付加モル数は25である。例えばNIKKOL BPSH−25(日光ケミカルズ(株)製)が使用できる。
【0011】
本発明に用いられる成分(c)水添ナタネ油アルコールはナタネ油を還元して得たアルコールであり主としてステアリルアルコール、アラキルアルコール及びベヘニルアルコールからなる。例えばアルコールNo.20−B(高級アルコール工業製)が使用できる。
【0012】
本発明に用いられる成分(d)油は、通常の化粧料に用いられる油のうち20℃で流動性があれば、即ち液状であれば何れのものも用いることができる。例えば炭化水素、エステル、トリグリセライド等である。具体的には、アボカド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、キョウニン油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、メドウフォーム油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、綿実油、ヤシ油、ヒマシ油、液状ラノリン、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、アジピン酸2−ヘキシルデシル、モノイソステアリン酸アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、2−エチルヘキサン酸セチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸グリセライド、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセライド、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、エチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、エチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。好ましくは水添ポリデセン、イソノナン酸イソトリデシル、(イソステアリン酸/ベヘン酸)グリセリン/ポリグリセリル−6)エステルズ等である。
【0013】
本発明に用いられる成分(e)ブチレングリコールは、一般には保湿剤として配合される。1,3−ブチレングリコールがある。
【0014】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(a)セラミドの含有量は、0.7〜1.5重量%が好ましい。成分(a)セラミドの含有量がこの範囲であると、より乳化力と経時安定性に優れる水中油型乳化化粧料を得ることができる。0.7重量%未満でも問題なく調製できるが、本発明を用いず公知の方法によっても可能である。1.5重量%を超えると経時安定性が不十分である。
【0015】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(b)ポリオキシエチレン水素添加ステロールの含有量は、0.5〜2.0重量%である。0.5重量%未満もしくは2.0重量%を超えると良い乳化粒子が得られない。さらには、成分(b)ポリオキシエチレン水素添加ステロールの含有量が0.7〜1.5重量%がより好ましい。0.7〜1.5重量%であると、乳化性及び経時安定性がさらに優れる水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0016】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(c)水添ナタネ油アルコールの含有量は、0.5〜2.0重量%である。0.5重量%未満もしくは2.0重量%を超えると良い乳化粒子が得られない。さらには、成分(c)水添ナタネ油アルコールの含有量が0.7〜1.5重量%がより好ましい。0.7〜1.5重量%であると、経時安定性にさらに優れる水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0017】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(d)油の含有量は、乳化物が調製できれば特に限定されないが好ましくは10〜40重量%であり、さらに好ましくは15〜30重量%である。成分(d)油の含有量が10〜40重量%であると、20℃で流動性を有することができる。10重量%未満ではセラミドの結晶析出が起こる場合があり、40重量%を超えると安定性は問題ないが滑らかでないクリーム状になる場合があり好ましくない。
【0018】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(e)ブチレングリコールの含有量は、2.5〜3.5重量%である。この範囲であると、乳化性及び経時安定性に優れる水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0019】
成分(e)ブチレングリコールを水と予め混合すると、さらに安定な水中油型乳化化粧料を得ることができる。この場合、水/(ブチレングリコール+水)(重量比)が0.3〜0.4の範囲が好ましく、成分(e)ブチレングリコールと水との合計は4.6〜5.3重量%である。
【0020】
本発明に用いられる成分(f)水は、水中油型乳化化粧料の外相を形成する成分である。本発明の水中油型乳化化粧料における成分(f)水の含有量は乳化物が調製できれば特に限定されないが、好ましくは60〜85重量%である。
【0021】
本発明の調製方法は従来から知られている方法で乳化ができれば特に限定されないが、好ましくはゲル乳化法である。具体的には成分(b)ポリオキシエチレン水素添加ステロール及び成分(e)ブチレングリコールからなる溶液に、成分(a)セラミド、成分(c)水添ナタネ油アルコール、及び成分(d)油からなる溶液を徐々に加えゲルを形成した後、成分(f)水を加えて乳化する方法である。この際に、前述のように成分(e)ブチレングリコールを水と予め混合するとさらに安定な乳化物が得られる。
【0022】
本発明の水中油型乳化化粧料には、上記必須成分の他に、通常の化粧料に用いられる成分として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、水性成分、水溶性高分子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粉体、香料、防腐剤、着色剤、美容成分等を本発明の効果を損なわない範囲にて含有することができる。
【0023】
本発明の水中油型乳化化粧料は、美容液、乳液、パック、整髪料、日焼け止め料等の基礎化粧料、ファンデーション、下地料、コンシーラー、マスカラ等のメイクアップ化粧料に適用可能である。尚、本発明の効果が顕著に発揮される化粧料としては、更に、本発明の水中油型乳化化粧料の形態としては、乳液状である。
【0024】
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0025】
表1〜6に示す処方より実施例と比較例とを、それぞれ調製し、乳化性と経時安定性とについて評価した。以下、表中の数値は重量%を示す。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
【表6】

【0032】
(製造方法)
(1)油相(O):成分(a)、成分(c)、及び成分(d)を混合して約80℃に加温した溶液を、成分(b)及び成分(e)を混合して約80℃に加温した溶液に徐々に添加してゲルを形成する。
(2)水相(W):成分(f)にキサンタンガムを分散した後、ペンチレングリコールを添加して約80℃に加温する。
(3)油相(O)に水相(W)を添加して乳化し、その後30℃まで冷却し乳化物を調製した。
【0033】
〔評価方法1:「初期乳化粒子径」〕
前記実施例及び比較例の乳化物を調製し、調製直後の乳化粒子の状態を顕微鏡にて、以下の判定基準により判定した。
判定基準:
[外観の状態] :[判 定]
乳化粒子径が1ミクロン以下で大きさが均一である : ◎
乳化粒子径の大部分が1ミクロン以下であるが、1ミクロンより大きい乳化粒子が若干混在している(使用性に問題無し) : ○
乳化粒子径が1ミクロンより大きく不均一である : △
乳化せず分離している : ×
〔評価方法2:「経時安定性」〕
前記実施例及び比較例の乳化物を、40℃の恒温槽に3か月保管し、3か月後の状態を顕微鏡にて、以下の判定基準により判定した。
判定基準:
[外観の状態] :[判 定]
3か月で変化無し : ◎
3か月で若干乳化粒子径が大きくなっている(使用性に問題無し) : ○
3か月で乳化粒子径が2倍以上になっている : △
3か月で乳化粒子が壊れて分離している : ×
【0034】
表1中の実施例1〜12、表2中の比較例1〜6に示すように、成分(b)ポリオキシエチレン水素添加ステロール、成分(c)水添ナタネ油アルコール、及び成分(e)ブチレングリコールの配合量が、本願発明の範囲内である場合には乳化性及び経時安定性が良好であった。
【0035】
表3中の処方により、界面活性剤の種類を変えて乳化を行った結果、実施例13、及び比較例7〜12を比較すると、界面活性剤が本発明の成分(b)ポリオキシエチレン水素添加ステロールの場合にのみ、乳化性及び経時安定性がともに良好であった。
【0036】
表4中の処方により、高級アルコールの種類を変えて乳化を行った結果、高級アルコールが本発明の成分(c)水添ナタネ油アルコールの場合にのみ、乳化性及び経時安定性がともに良好であった。
【0037】
表5中の処方により、多価アルコールの種類を変えて乳化を行った結果、多価アルコールが本発明の成分(e)ブチレングリコールの場合にのみ、乳化性及び経時安定性がともに良好であった。
【0038】
表6中に示す処方のように、成分(e)ブチレングリコールと水とを予め混合する場合において、成分(e)ブチレングリコールと水との混合比を変えて乳化を行った。予め混合した成分(e)ブチレングリコールと水との水/(ブチレングリコール+水)(重量比)が0.3〜0.4の範囲であると、予め混合していない場合に比べ経時安定性が優れていた。
【0039】
以下の実施例25〜27に関し、前述のゲル乳化法で調製を行った。具体的には、イ)を混合して約80℃に加温した溶液に、ロ)を混合して約80℃に加温した溶液を徐々に添加してゲルを形成する。ハ)を約80℃に加温する。ゲルにハ)を添加して乳化し、その後30℃まで冷却し、乳化物を得た。
【0040】
(実施例25)
【表7】

【0041】
(実施例26)
【表8】

【0042】
(実施例27)
【表9】

【0043】
実施例25〜実施例27についても乳化性及び経時安定性の良い乳化物が得られた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(f);
(a)セラミド 0.7〜1.5重量%
(b)ポリオキシエチレン水素添加ステロール 0.5〜2.0重量%
(c)水添ナタネ油アルコール 0.5〜2.0重量%
(d)油
(e)ブチレングリコール 2.5〜3.5重量%
(f)水
を含有することを特徴とする20℃で流動性のある水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
ゲル乳化法で調製された請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
成分(e)ブチレングリコールと水を予め混合することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
成分(e)ブチレングリコールを水と予め混合することを特徴とし、水/(ブチレングリコール+水)(重量比)が0.3〜0.4であり、予め混合する成分(e)ブチレングリコールと水との合計は4.6〜5.3重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。


【公開番号】特開2011−213651(P2011−213651A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82862(P2010−82862)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】