説明

乳化組成物

【課題】α−ゲルが関与する乳化組成物において、塩類を配合しなくても、乳化組成物の粘度が経時で減少することがなく、経時安定性に極めて優れた新規な乳化組成物及び乳化化粧料を提供すること。
【解決手段】下記(A)〜(E)成分を含有し、かつ、(B)成分の配合量が(C)成分の配合量に対してモル比で1〜14倍であることを特徴とする乳化組成物。
(A)成分:高級脂肪族アルコール
(B)成分:陰イオン性界面活性剤
(C)成分:陽イオン性界面活性剤
(D)成分:水
(E)成分:油分

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳化化粧料等に用いる乳化組成物に関する。さらに詳しくは、α−ゲルが関与する乳化組成物において、塩類を配合しなくても、乳化組成物の粘度が経時で減少することがない乳化組成物及び乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、α−ゲルが関与する乳化組成物やゲル組成物においては、その経時安定性が重要な要素の一つであるが、経時にて乳化組成物の粘度が減少する傾向が観察される。
【0003】
例えば、特許文献1は本願出願人による発明であり、高級アルコールと長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤と水からなるα−ゲルを用いたゲル状組成物及びクリーム組成物が開示されている。そして、当該組成物の経時での粘度安定性は、アスコルビン酸−2−グルコシドによる塩類を配合する技術が確立されている。
【0004】
また、特許文献2は本願出願人による発明であり、平均アルキル鎖長18以上の高級アルコールと長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤と水からなるα−ゲルを用いた特定のクリーム組成物が開示されている。当該クリーム組成物の特徴として、さらに分子量400以下の極性油分が必須成分として配合されており、当該組成物においては、分子量400以下の極性油分が経時での粘度安定性に関与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−132808号公報
【特許文献2】特開2008−44866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特定成分からなるα−ゲルが関与する乳化組成物において、アスコルビン酸−2−グルコシド等による塩類をあえて配合しなくても、乳化組成物の粘度が経時で減少することがない新規な粘度の安定化方法を提供するものであって、経時にてその粘度が減少することがない、経時安定性に極めて優れた新規な乳化組成物及び乳化化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、下記(A)〜(E)成分を含有し、かつ、(B)成分の配合量が(C)成分の配合量に対してモル比で1〜15倍であることを特徴とする乳化組成物を提供するものである。
(A)成分:高級脂肪族アルコール
(B)成分:陰イオン性界面活性剤
(C)成分:陽イオン性界面活性剤
(D)成分:水
(E)成分:油分
【0008】
また、本発明は、前記(B)成分が、下記一般式(I)で表される長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤であることを特徴とする上記の乳化組成物を提供するものである。
[化1]
1CO−a−(CH2nSO31 (I)
〔式(I)中、R1CO−は平均炭素原子数10〜22の飽和または不飽和の脂肪酸残基(アシル基)を示し;aは−O−または−NR2−(ただし、R2は水素原子、または炭素原子数1〜3のアルキル基を示す)を示し;M1は水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウムまたは有機アミン類を示し;nは1〜3の整数を示す〕
【0009】
さらに、本発明は、前記(B)成分が、N−ステアロイル−N−メチルタウリン塩であることを特徴とする上記の乳化組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記(B)成分が、N−アシル−L−グルタミン酸塩であることを特徴とする上記の乳化組成物を提供するものである。
【0011】
さらに、本発明は、前記(C)成分の陽イオン性界面活性剤が、ジアルキル型4級アンモニウム塩及び/又はモノアルキル型4級アンモニウム塩であることを特徴とする上記の乳化組成物を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記乳化組成物のpHが3〜11であることを特徴とする上記の乳化組成物を提供するものである。
【0013】
さらに、本発明は、前記乳化組成物が乳化化粧料であることを特徴とする上記の乳化組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、α−ゲルが関与する特定成分の乳化組成物において、アスコルビン酸−2−グルコシド等による塩類を配合しなくても、陽イオン性化合物を用いることにより、乳化組成物の粘度が経時で減少することがない、経時安定性に極めて優れた新規な乳化組成物及び乳化化粧料を提供することが出来る。
また、経時粘度の安定化剤として配合する陽イオン性化合物の配合量も、アスコルビン酸−2−グルコシド等による塩類よりも少量の配合量で効果を発揮するという効果を有する。
さらに、本発明による粘度が経時で減少することがない顕著な経時安定性は、当該組成物のpHの影響を受けることなく、広いpH範囲にわたって発揮される優れた効果でもある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を詳述する。
【0016】
<(A)成分:高級脂肪族アルコール>
本発明において、(A)成分の高級脂肪族アルコールは、後述する(B)成分の陰イオン性界面活性剤と(D)成分の水と共に、α−ゲルを構成する成分である。
そして、本発明の乳化組成物とは、α−ゲルを形成し、これを外相として(E)成分の油分を内相とする水中油型乳化組成物であり、クリーム、乳液等に好適に利用される乳化組成物である。
【0017】
本発明に用いる高級脂肪族アルコールは、化粧品の分野において用いられ得るものであれば特に限定されない。例えば、飽和直鎖一価アルコールとしては、ドデカノール(=ラウリルアルコール)、トリデカノール、テトラデカノール(=ミリスチルアルコール)、ペンタデカノール、ヘキサデカノール(=セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(=ステアリルアルコール)、ノナデカノール、イコサノール(=アラキルアルコール)、ヘンイコサノール、ドコサノール(=ベヘニルアルコール)、トリコサノール、テトラコサノール(=カルナービルアルコール)、ペンタコサノール、ヘキサコサノール(=セリルアルコール)等が挙げられる。不飽和一価アルコールとしてはエライジルアルコール等が挙げられる。
本発明では経時安定性の点から飽和直鎖一価アルコールが好ましい。
(A)成分は1種または2種以上を用いることができる。本発明では2種以上の脂肪族アルコールの混合物を用いるのが好ましく、さらに好ましくは、その混合物の融点が60℃以上となるような組合せである。この融点が60℃未満であると、処方によっては系の温度安定性が低下し、クリーミングを起こす場合がある。本発明では、例えばステアリルアルコールとベヘニルアルコールの組合せが好ましい。
【0018】
また、高級脂肪族アルコールは、算術平均により得られる平均アルキル鎖長が18以上であることが望ましい。平均鎖長が18未満である場合には、本発明の乳化組成物の融点が低くなり、高温安定性が十分でない場合がある。なお平均アルキル鎖長の好適上限値は特に限定されるものではないが、アルキル鎖22程度とするのが好ましい。
【0019】
<配合量>
本発明において、高級脂肪族アルコールの配合量は、乳化組成物全量に対して、好ましくは、0.1〜20質量%、さらに好ましくは1.0〜10質量%である。
なお(A)成分は1種または2種以上を併用して用いることが可能である。
【0020】
<(B)成分:陰イオン性界面活性剤>
本発明において、(B)成分の陰イオン性界面活性剤は、上記(A)成分の高級脂肪族アルコールと、後述する(D)成分の水と共に、α−ゲルを構成する成分である。
【0021】
本発明に用いる陰イオン性界面活性剤は、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE−ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE−ラウリル硫酸ナトリウム等);N−アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリルメチルタウリンナトリウム等);リン酸エステル塩(POE−オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE−ステアリルエーテルリン酸等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N−アシルグルタミン酸塩(例えば、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム等);POE−アルキルエーテルカルボン酸;POE−アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α−オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N−パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0022】
本発明において特に好ましくは、下記一般式(I)で表される長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤である。
[化2]
1CO−a−(CH2nSO31 (I)
【0023】
一般式(I)中、R1CO−は平均炭素原子数10〜22の飽和または不飽和の脂肪酸残基(アシル基)を表す。R1COとして、C1123CO、C1225CO、C1327CO、C1429CO、C1531CO、C1633CO、C1735CO、ココヤシ脂肪酸残基、パームヤシ脂肪酸残基等が例示される。なお、R1COは、安全性等の点から、その平均炭素原子数が12〜22のものがより好ましい。
【0024】
aは−O−または−NR−(ただし、Rは水素原子、または炭素原子数1〜3のアルキル基を示す)を表す。これらは電子供与性基である。aとしては、−O−、−NH−、−N(CH3)−が好ましい。
【0025】
1は水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウムまたは有機アミン類を表す。M1として、例えばリチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、タウリンナトリウム、N−メチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0026】
nは1〜3の整数を表す。
【0027】
上記一般式(I)中、aが−O−を示す化合物、すなわち長鎖アシルイセチオン酸塩型陰イオン性界面活性剤としては、ココイルイセチオン酸塩、ステアロイルイセチオン酸塩、ラウリルイセチオン酸塩、ミリストイルイセチオン酸塩等が例示される。
【0028】
上記一般式(I)中、aが−NH−を示す化合物、すなわち長鎖アシルタウリン塩型陰イオン性界面活性剤としては、N−ラウロイルタウリン塩、N−ココイル−N−エタノールタウリン塩、N−ミリストイルタウリン塩、N−ステアロイルタウリン塩等が例示される。
【0029】
上記一般式(I)中、aが−N(CH3)−を示す化合物、すなわち長鎖アシルメチルタウリン塩型陰イオン性界面活性剤としては、N−ラウロイル−N−メチルタウリン塩、N−パルミトイル−N−メチルタウリン塩、N−ステアロイル−N−メチルタウリン塩、N−ココイル−N−メチルタウリン塩等が例示される。
【0030】
具体的な長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤として特に好ましいものは、N−ステアロイル−N−メチルタウリン塩である。さらに具体的には、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムが好ましい。
【0031】
一方、長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤ではないが、本発明においては(B)成分として具体的にN−アシル−L−グルタミン酸塩も特に好ましい。さらに具体的には、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウムが好ましい。
【0032】
<配合量>
本発明において、陰イオン性界面活性剤の配合量は、乳化組成物全量に対して、好ましくは、0.01質量%〜2.0質量%である。さらに好ましくは0.1〜1.5質量%である。
なお(B)成分は1種または2種以上を併用して用いることも可能である。
また本発明においては、(B)成分の配合量が(C)成分の配合量に対してモル比で1〜15倍でなければならない。好ましくは、(B)成分の配合量/(C)成分の配合量がモル比で1〜6倍である。
【0033】
<(C)成分:陽イオン性界面活性剤>
本発明において、陽イオン性界面活性剤は、本発明の乳化組成物の経時による粘度の減少を抑制するために配合される成分であり、減粘抑制剤として機能する。
【0034】
本発明に用いる陽イオン性界面活性剤は、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等);アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等);塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ポリ(N,N’−ジメチル−3,5−メチレンピペリジニウム);アルキル四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキルイソキノリニウム塩;ジアルキルモリホニウム塩;POE−アルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0035】
特に好ましくは、ジアルキル型4級アンモニウム塩、モノアルキル型4級アンモニウム塩である。さらに具体的には、ジアルキル型4級アンモニウム塩としては塩化ジステアリルジメチルアンモニウムが最も好ましい。また、モノアルキル型4級アンモニウム塩としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム液が最も好ましい。具体的には、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムが挙げられ、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが最も好ましい。
【0036】
<配合量>
本発明において、陽イオン性界面活性剤の配合量は、乳化組成物全量に対して、好ましくは、0.01〜1.2質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
この配合量は、特許文献1にて減粘抑制剤として機能する塩類のアスコルビン酸−2−グルコシドを2〜5質量%と多量に配合する必要があるのに対し、(C)成分は極めて僅かな配合量で足り、この点にも本願発明の進歩性が存在する。
なお(C)成分は1種または2種以上を併用して用いることも可能である。
また本発明においては、上述したように、上記(B)成分の配合量が(C)成分の配合量に対してモル比で1〜15倍でなければならない。好ましくは、(C)成分がジアルキル型4級アンモニウム塩の場合は(B)成分の配合量/(C)成分の配合量がモル比で1〜6倍であり、また、(C)成分がモノアルキル型4級アンモニウム塩の場合は(B)成分の配合量/(C)成分の配合量がモル比で1〜4倍である。
【0037】
<(D)成分:水>
本発明に用いる水は、本発明において、(A)成分の高級脂肪族アルコールと(B)成分の陰イオン性界面活性剤と共にα−ゲルを構成する成分である。本発明の乳化組成物
では外相の水相を構成し、水中油型乳化組成物の水成分となるものである。
【0038】
本発明においては、水((D)成分)との共存下において(B)成分が(A)成分とともに、ラメラ状の2分子膜からなる会合体を形成しており、いわゆるα−ゲルの状態をとっている。α−ゲルは、高級脂肪族アルコール及び陰イオン性界面活性剤を高温下で溶解し、水と混合した後に冷却するか、高級脂肪族アルコールを高温で融解し、陰イオン性界面活性剤を溶解した水と混合した後に冷却することで得られる白色、高粘度のゲルである。そして、本発明の乳化組成物は、当該α−ゲルと(E)成分の油分とを混合し、常法により水中油型乳化組成物を製造できる。
【0039】
本発明に用いるα−ゲル及び本発明の乳化組成物は融点が60℃以上であることを要し、65℃以上であるのが好ましい。クリーム組成物、特に化粧料として用いられるクリーム組成物は、低温から高温まで状態が変化しないことが求められ、特に高温側について安定性が維持できることが必要である。本発明を構成するα−ゲルは融点を有し、融点以上の温度では低粘度化が起こり、長期間保存すると、ついには比重の異なる成分が完全に分離する。α−ゲルの融点は高級アルコールの種類および高級アルコールと界面活性剤のモル比に依存して変化することは、福島正二著「セチルアルコールの物理化学」(フレグランスジャーナル社、1992年)に記載されている。
【0040】
すなわち、高級脂肪族アルコールと陰イオン性界面活性剤および水から形成されるα−ゲルは、その構成成分である高級脂肪族アルコールおよび界面活性剤の単独の融点を示すことが普通である。高級脂肪族アルコール/陰イオン性界面活性剤比が小さいときには、高級脂肪族アルコール比の増加にしたがってα−ゲルの融点は徐々に高温側に変化し、高級脂肪族アルコール/陰イオン性界面活性剤比が3:1に達すると融点が変化しなくなることが知られている。
【0041】
融点の測定にはDSC(示差走査熱量計)を用いることができる。特許文献1の図6には、DSCを用いて、ベヘニルアルコールとN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムのモル比を変化させたときのα−ゲルサンプルの融点、転移点を測定した結果が示されている。同図中、横軸は高級アルコール/N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム(SMT)のモル比を示し、縦軸は温度(℃)を示す。同図から明らかなように、高級アルコール、界面活性剤の両者および水を混合して得られる試料の吸熱ピークは、それぞれを単独に水に溶解または分散させた試料で得られる吸熱ピークよりも高温側に単一のピークを示しているが、高級アルコール比が小さい(高級アルコールが少ない)場合は会合体の吸熱ピークの温度は低く、その温度は高級アルコール比の増大とともに上昇し、モル比で3:1の組成のとき会合体構造が完成され、10:1に達するまで融点に変化はなく、10:1を超えて高級アルコール比が増加し、高級アルコールが過剰(α−ゲルの形成に関与しない)になると過剰な高級アルコールのピークが出現する。このとき過剰な高級アルコールはα−ゲル中に微細な結晶として分散しており、粘度の維持に有効な役割を担うことが知られている。しかし、非常に過剰な状態においては、高級アルコールが水和結晶として成長し、α−ゲル系を破壊するため望ましくない。
【0042】
以上の知見から、本発明に用いるα−ゲル及びそれを外相に用いた本発明の乳化組成物における(A)成分:(B)成分の望ましいモル比は3:1以上、すなわち(A)/(B)のモル比が3以上であることが好ましく、さらに好ましくは4:1以上、特に好ましくは4:1〜10:1である。上記モル比が3:1未満ではα−ゲルの融点が十分に上昇しておらず、高温安定性が十分でない。一方、10:1を超える共存する高級アルコールの結晶が成長し、α−ゲルが不安定化するおそれがあり、望ましくない。
【0043】
<配合量>
本発明において、水の配合量は、乳化組成物全量に対して1質量%以上でよい。好ましくは30〜90質量%、さらに好ましく50〜90質量%配合される。
【0044】
<(E)成分:油分>
本発明に用いる油分は、水中油型乳化組成物を構成する内相の油分である。本発明の乳化組成物は、α−ゲル組成物の構成成分に(E)成分の油分を加えることにより調製することができる。
この場合の調製法としては、(A)成分と(B)成分を高温で溶解し、(D)成分と混合した後に冷却し、次いで(C)成分を配合し、次に(E)成分を配合する方法;(A)成分を高温で溶解し、これを(B)成分を(D)成分に溶解した水溶液と混合した後に冷却し、次いで(C)成分を配合し、次に(E)成分を配合する方法;(A)成分、(C)成分、(E)成分を高温で融解し、これを(B)成分を(D)成分に溶解した水溶液と混合した後に冷却する方法;(A)成分、(E)成分を高温で融解し、これを(B)成分及び(C)成分を(D)成分に溶解した水溶液と混合した後に冷却する方法;(A)成分、(B)成分、(C)成分、(E)成分を高温で融解し、これを(D)成分と混合した後に冷却する方法する等が挙げられるが、これら方法に限定されるものではない。
【0045】
本発明に用いる油分は特に限定されないが、一般に化粧品に用いられているものの中から安定性を損なわない範囲で選択することができる。望ましい油分としては、炭化水素油分、エステル油などの極性油、シリコーン油、液体油脂等が好ましい。
【0046】
炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソパラフィン、セレシン等が使用できる。
【0047】
シリコーン油としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン;3次元網目構造を形成しているシリコ−ン樹脂、シリコーンゴムなどが例示される。
【0048】
エステル油などの極性油としては、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、エチルヘキサン酸セチル、ホホバ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、トリイソステアリン、ジイソステアリン酸グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、パルミチン酸イソプロピル、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が使用できる。
【0049】
液体油脂としては、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ヒマワリ油、アルモンド油、ナタネ油、ゴマ油、大豆油、落花生油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等がある。
【0050】
<配合量>
本発明において、油分の配合量としては特に限定されるものではないが、乳化組成物全量に対し5〜30質量%程度配合するのが好ましい。5質量%未満では乳化組成物としての皮膚に対する有用性を十分に発揮できないおそれがあり、一方、30質量%超では油粒子の合一などによる不安定化が懸念されるとともに、油っぽい使用感となりがちである。
なお、(E)成分は1種または2種以上を併用して用いることも可能である。
【0051】
<本発明の乳化組成物の粘度の減少防止と水の分離>
本発明の乳化組成物は、経時によりその粘度が減少することを防止できる。さらに、水の分離がなく良好な安定性を示す。これは以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、α−ゲル中において、水は2種類の場所に存在することが可能である。まず第1に、α−ゲルは2分子膜の親水基間に水を取り込むことができる。2分子膜の親水基間の距離は数1〜数10nm程度である。この親水基間の水は平衡的に取り込まれた水と考えられ、長期保存によっても分離する可能性がない水である。第2に、α−ゲルのマトリックス中に水を保持することができる。α−ゲルは細かなマトリックスを形成しており、マトリックス中に水をプールして抱え込むことが可能である。このマトリックスは共存成分などにより状態が変化すると考えられ、条件によっては水が分離され、不安定化を引き起こす可能性があると考えられている。
【0052】
本発明の乳化組成物は、通常化粧品に用いられる各種成分を本発明の乳化組成物の安定性を損なわない範囲で配合することができる。これらの成分としては一価アルコール、多価アルコール、水溶性高分子、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、香料、色素、粉末等を挙げることができるが、これら例示に限定されるものではない。
【0053】
本発明の乳化組成物は、水中油型乳化組成物として、常法により、例えば、乳液、保湿クリーム、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、エッセンス等のスキンケア化粧料;ヘアクリーム等のヘアケア化粧料:サンスクリーン等の日焼け止め化粧料;ボディクリーム等のボデイケア化粧料;クリーム状ファンデーション等のメーキャップ化粧料;リンス等の洗浄料等に好適に製造される。
【実施例】
【0054】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
[状態]
各試料の状態を目視により観察した。
【0056】
[粘度及びpH]
乳化組成物の粘度は、B型粘度計(ローター番号3番、ローター回転数12rpm)を用い、30℃における粘度を測定した。
乳化組成物のpHは、pH試験機(HORIBA pH METER F-13)を用いて測定した。
【0057】
[経時による粘度安定性試験]
実施例、比較例で得た試料(水中油型乳化組成物の乳液及びクリーム)を用いて、−5℃、0℃、RT、37℃、50℃、にて、製造後1日、製造後1ヶ月保存後の粘度変化(B型粘度計、30℃)を測定した。
【0058】
<安定性の判断基準>
(1ヶ月保存後の粘度変化)
○:保存後の試料の粘度を、調製直後の試料の粘度で除した値が、0.9以上1.1未満
△:保存後の試料の粘度を、調製直後の試料の粘度で除した値が、0.7以上0.9未満、または1.1以上1.3未満
×:保存後の試料の粘度を、調製直後の試料の粘度で除した値が、0.7未満、または1.3超
なお、上記基準の○、△は製品の粘度として合格とし、×は不合格とした。
【0059】
<経時による粘度安定性試験>
「表1」〜「表6」に示す処方で水中油型乳化組成物の乳液又はクリームを製造し、各温度に放置して、経時での粘度変化を検討した。
【0060】
「試験1:塩(アスコルビン酸グルコシド、塩化ナトリウム)の有無による粘度の影響」
α−ゲルの粘度低下に効果があるとされる(特許文献1)アスコルビン酸グルコシドや塩化ナトリウムを配合することによって乳液の粘度の影響を検討した。
<試料の調整方法>
表1の処方に従い、下記のように乳液を製造した。
1:成分1〜8を加熱混合し、80℃±2℃で溶解させる。
2:成分9〜11を室温で湿潤させる。
3:成分12〜16を90〜95℃で溶解させる。
4:1及び2を攪拌混合する。
5:更に攪拌しながら4に3を添加混合させる。
6:更に攪拌しながら5に成分17及び成分18を添加混合させる。
【0061】
乳液(水中油型乳化組成物)
【表1】

【0062】
<表1の結果と考察>
アスコルビン−2−グルコシド(処方内では塩類のカリウム塩となっている)や塩化ナトリウムのような塩を配合することによって粘度低下は抑制されるが(比較例1−1、比較例1−2)、これらの塩を無配合のもの(比較例1−3)は粘度低下が起こった。
したがって、高級脂肪族アルコールとN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム等の陰イオン界面活性剤とを配合したα−ゲルにおいては、アスコルビン−2−グルコシドや塩化ナトリウムのような塩類を無配合の系では粘度低下が起きてしまう。
【0063】
「試験2A及び2B:カチオン性界面活性剤の添加に伴う粘度の影響」
<試料の調整方法>
表2Aの処方に従い、下記のように乳液を製造した。
1:成分1〜7を加熱混合し、80℃±2℃で溶解させる。
2:成分8〜10を室温で湿潤させる。
3:成分11〜15及び成分16を90〜95℃で溶解させる。
4:1及び2を攪拌混合する。
5:更に攪拌しながらを4に3を添加混合させる。




【0064】
乳液(水中油型乳化組成物)
【表2A】

【0065】
<試料の調整方法>
表2Bの処方に従い、下記のように乳液を製造した。
1:成分1〜8を加熱混合し、80℃±2℃で溶解させる。
2:成分9〜11を室温で湿潤させる。
3:成分12〜16を90〜95℃で溶解させる。
4:1及び2を攪拌混合する。
5:更に攪拌しながらを4に3を添加混合させる。















【0066】
乳液(水中油型乳化組成物)
【表2B】

【0067】
<表2A及び2Bの結果と考察>
表2Aにおいて、比較例2A−1では、(C)成分の塩化ジステアリルジメチルアンモニウムが無配合のために粘度低下が起こった。しかしながら、(C)成分の塩化ジステアリルジメチルアンモニウムを配合した実施例2A−1では粘度低下が抑制された。
表2Bにおいて、比較例2B−1では、(C)成分の塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが無配合のために粘度低下が起こった。しかしながら、(C)成分の塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムを配合した実施例2B−1、2B−2では粘度低下が抑制された。
【0068】
「試験3〜5:カチオン性界面活性剤の添加(濃度)に伴う粘度の影響」
<試料の調整方法>
表3の処方に従い、下記のように乳液を製造した。
1:成分1〜7を加熱混合し、80℃±2℃で溶解させる。
2:成分8〜10を室温で湿潤させる。
3:成分11〜16を90〜95℃で溶解させる。
4:1及び2を攪拌混合する。
5:更に攪拌しながら4に3を添加混合させる。






【0069】
乳液(水中油型乳化組成物)
【表3】

【0070】
<試料の調整方法>
表4の処方に従い、下記のようにクリームを製造した。
1:成分1〜8を加熱混合し、80℃±2℃で溶解させる。
2:成分9及び10を室温で湿潤させる。
3:成分11〜17を90〜95℃で溶解させる。
4:1及び2を攪拌混合する。
5:更に攪拌しながら4に3を添加混合させる。














【0071】
クリーム(水中油型乳化組成物)
【表4】

【0072】
<試料の調整方法:(B)成分にN−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウムを使用した場合の実施例>
表5の処方に従い、下記のように乳液を製造した。
1:成分1〜7を加熱混合し、80℃±2℃で溶解させる。
2:成分8〜10を室温で湿潤させる。
3:成分11〜20を90〜95℃で溶解させる。
4:1及び2を攪拌混合する。
5:更に攪拌しながら4に3を添加混合させる。
6:更に攪拌しながら5に成分21を添加混合させる。










【0073】
乳液(水中油型乳化組成物)
【表5】

【0074】
<表3、表4、表5の結果と考察>
上記結果から、(B)成分の配合量が(C)成分の配合量に対してモル比で1〜15倍において、本願乳化組成物の粘度低下が抑制された。
【0075】
「試験6.乳化組成物のpHによる粘度に対する影響」
<pHによる粘度安定性試験>
「表6」に示す処方で水中油型乳化組成物の乳液を製造し、各pHにおける粘度変化を検討した。
【0076】
<試料の調整方法>
表6の処方に従い、下記のように乳液を製造した。
1:成分1〜7を加熱混合し、80℃±2℃で溶解させる。
2:成分8〜10を室温で湿潤させる。
3:成分11〜16を90〜95℃で溶解させる。
4:1及び2を攪拌混合する。
5:更に攪拌しながら4に3を添加混合させる。
6:更に攪拌しながら5に成分17を添加混合させる。
【0077】
乳液(水中油型乳化組成物)
【表6】

【0078】
<表6の結果と考察>
本願の乳化組成物の系では、pH3〜11の範囲に変化させても、粘度低下抑制の効果に変化はなかった。したがって、本願発明は、pH変化による粘度の安定性も極めて満足するものである。
【0079】
以下の本発明のその他の処方例を示す。いずれの処方例も粘度の経時安定性と使用性に優れた乳液又はクリームである。
〔処方例1:乳液〕
配合成分 質量%
1.精製水(D成分) 残量
2.EDTA-2Na・2H2O 0.1
3.クエン酸 0.01
4.クエン酸ナトリウム 0.09
5.N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.2
(B成分、B成分/C成分のモル比:5.8)
6.塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(C成分) 0.047
7.ステアリルアルコール(A成分) 0.3
8.ベヘニルアルコール(A成分) 1.1
9.テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(E成分) 1.0
10.ジメチコン(E成分) 3.0
11.水添ポリデセン(E成分) 1.0
12.エタノール 4.0
13.キサンタンガム 0.1
<製造方法>
1:成分1〜5を加熱混合し、80℃±2℃で溶解させる。
2:成分6〜11を90〜95℃で溶解させる。
3:成分12〜13を室温で湿潤させる。
4:1及び2を攪拌混合する。
5:更に攪拌しながら3を添加混合させる。
【0080】
〔処方例2:クリーム〕
配合成分 質量%
1.精製水(D成分) 残量
2.EDTA-2Na・2H2O 0.1
3.グリセリン 7.0
4.ジプロピレングリコール 7.0
5.ブチレングリコール 3.0
6.トラネキサム酸 2.0
7.クエン酸 0.25
8.クエン酸ナトリウム 0.1
9.N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 1.2
(B成分、B成分/C成分のモル比:4.4)
10.塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(C成分) 0.37
11.ステアリルアルコール(A成分) 0.9
12.ベヘニルアルコール(A成分) 3.3
13.テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(E成分) 1.0
14.ジメチコン(E成分) 3.0
15.水添ポリデセン(E成分) 3.0
16.ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)(E成分)
0.1
17.防腐剤 適量
<製造方法>
1:成分1〜9を加熱混合し、80℃±2℃で溶解させる。
2:成分10〜16を90〜95℃で溶解させる。
3:1及び2を攪拌混合する。
4:更に攪拌しながら17を添加混合させる。
【0081】
〔処方例3:乳液〕
配合成分 質量%
1.精製水(D成分) 残量
2.EDTA-2Na・2H2O 0.1
3.クエン酸 0.01
4.クエン酸ナトリウム 0.09
5.N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.2
(B成分、B成分/C成分のモル比:5.8)
6.塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(C成分) 0.047
7.ラウリルアルコール(A成分) 0.3
8.ミリスチルアルコール(A成分) 1.1
9.テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(E成分) 1.0
10.ジメチコン(E成分) 3.0
11.水添ポリデセン(E成分) 1.0
12.エタノール 4.0
13.キサンタンガム 0.1
<製造方法>
1:成分1〜5を加熱混合し、80℃±2℃で溶解させる。
2:成分6〜11を90〜95℃で溶解させる。
3:成分12、13を室温で湿潤させる。
4:1及び2を攪拌混合する。
5:更に攪拌しながら3を添加混合させる。
【0082】
〔処方例4:乳液〕
配合成分 質量%
1.精製水(D成分) 残量
2.EDTA-2Na・2H2O 0.1
3.クエン酸 0.01
4.クエン酸ナトリウム 0.09
5.N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.2
(B成分、B成分/C成分のモル比:5.8)
6.塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(C成分) 0.047
7.バチルアルコール(A成分) 0.3
8.ステアリルアルコール(A成分) 1.1
9.テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(E成分) 1.0
10.ジメチコン(E成分) 3.0
11.水添ポリデセン(E成分) 1.0
12.エタノール 4.0
13.キサンタンガム 0.1
<製造方法>
1:成分1〜5を加熱混合し、80℃±2℃で溶解させる。
2:成分6〜11を90〜95℃で溶解させる。
3:成分12、13を室温で湿潤させる。
4:1及び2を攪拌混合する。
5:更に攪拌しながら3を添加混合させる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、α−ゲルが関与する特定成分の乳化組成物において、アスコルビン酸−2−グルコシド等による塩類を配合しなくても、陽イオン性界面活性剤を用いることにより、乳化組成物の粘度が経時で減少することがなく、経時安定性に極めて優れた新規な乳化組成物及び乳化化粧料を提供することが可能となる。
乳化組成物の経時安定性は極めて重要な要素である。したがって、特定成分からなるα−ゲルが関与する乳化組成物において、経時にて減粘せず、また、その効果がpHの影響を受けることなく広いpH範囲にわたって発揮される経時安定性に優れた本発明は、乳化組成物又は乳化化粧料として、産業上の利用可能性が極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(E)成分を含有し、かつ、(B)成分の配合量が(C)成分の配合量に対してモル比で1〜15倍であることを特徴とする乳化組成物。
(A)成分:高級脂肪族アルコール
(B)成分:陰イオン性界面活性剤
(C)成分:陽イオン性界面活性剤
(D)成分:水
(E)成分:油分
【請求項2】
前記(B)成分が、下記一般式(I)で表される長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の乳化組成物。
1CO−a−(CH2nSO31 (I)
〔式(I)中、R1CO−は平均炭素原子数10〜22の飽和または不飽和の脂肪酸残基(アシル基)を示し;aは−O−または−NR2−(ただし、R2は水素原子、または炭素原子数1〜3のアルキル基を示す)を示し;M1は水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウムまたは有機アミン類を示し;nは1〜3の整数を示す〕
【請求項3】
前記(B)成分が、N−ステアロイル−N−メチルタウリン塩であることを特徴とする請求項1又は2記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、N−アシル−L−グルタミン酸塩であることを特徴とする請求項1記載の乳化組成物。
【請求項5】
前記(C)成分の陽イオン性界面活性剤が、ジアルキル型4級アンモニウム塩及び/又はモノアルキル型4級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項6】
前記乳化組成物のpHが3〜11であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の乳化組成物。
【請求項7】
前記乳化組成物が乳化化粧料であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の乳化組成物。

【公開番号】特開2011−213702(P2011−213702A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102220(P2010−102220)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【特許番号】特許第4767352号(P4767352)
【特許公報発行日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】