説明

乳白色/透明の切り換えが可能な複層ガラス

【課題】透明/乳白色の切り換えが容易であって断熱効果の優れた複層ガラスを提供すること。
【解決手段】2枚のガラス板、その2枚のガラス板の間に空間部を保持するためのスペーサー、そのスペーサーの内部に収納された乾燥剤およびシール剤より形成された複層ガラスであって、一方のガラス板の内側には、電圧の負荷時には乳白色に着色し、また電圧の無負荷時には透明となる液晶フィルムが装着され、他方のガラス板の内側には透明断熱フィルムが装着されていることを特徴とする、乳白色/透明の切り換えが可能な複層ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳白色/透明の切り換えが可能な複層ガラスに関する。更に詳しくは、断熱性が極めて高く、乳白色と透明の切り換えが簡単に可能であり、その上全体の厚みが小さい複層ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー資源の有効利用が注目されており、複層ガラスも建築物、保温、保冷容器などにおける省エネルギー対策の1つとして注目されている。現在製造されている複層ガラスは、2枚のガラス板により形成された空間がシール剤によって密封され、密封された空間は乾燥空気を封入したり、シリカゲルなどの乾燥剤を用いて乾燥状態を保持するように構成されている。
【0003】
最近、複層ガラスの省エネルギー効果を向上させるために、複層ガラスと透明断熱フィルムとを組合せて使用することも提案されている。一方、複層ガラスの空間の間隔(厚み)は、通常6mm以上であり、一枚のガラスの厚みは、一般には約3mmであるので複層ガラス全体の厚みは少なくとも12mmとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−169733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複層ガラスは、通常サッシ枠に挿入した形態で使用される。複層ガラスの厚みが厚いと、サッシ枠も含めて扉全体の重さが大きくなる。従って複層ガラスの厚みを小さくし、全体の重さを軽くする努力が払われてきた。その1つとして、ガラスの厚みを最近では2.7mmとしたものが使用されているが、機械的強度の点からガラスの厚みはこれが限界と云われている。
【0006】
一方、空間の間隔を薄くすることは、断熱機能を低下させることや間隔を保持するスペーサーの構造の問題から前述したように6mmの間隔を少なくとも必要としていた。スペーサーは、従来使用されている構造は、その内に乾燥剤を保持するスペーサーを有し且つ二枚のガラスの間隔を一定巾に堅持するために、断熱形状が□の字形であって、密封された空間側に空気が流通しうるスリットを有するものが使用されていた。しかしこのような断面形状のスペーサーを使用する限り、ガラス間隔を6mm以下とすることは困難であった。
【0007】
本発明者は、複層ガラスのスペーサーの構造について種々研究を進めた結果、特定形状の構造のスペーサーは、スペーサー材の一方の厚みを薄くでき、しかも乾燥剤を収納する空間を保持できることを見出し先に提案した(特許文献1参照)。
【0008】
すなわち、本発明者が特許文献1により提案した複層ガラスは少なくとも2枚のガラス板、2枚のガラス板の間に空間部を保持するためのスペーサー、スペーサーの内部に収納された乾燥剤およびシール剤より形成された複層ガラスであって、(i)スペーサーは板状の成形体より形成され、(ii)スペーサーは、ガラス板の間に設置した場合、少なくとも一方のガラス面には実質的に線もしくは点接触し、(iii)スペーサーは乾燥剤をその内部に収納しうる形状を有し、且つ(iv)スペーサーはその内部と2枚のガラス板の間の空間部と気体が流通しうる連通路を有している、ことを特徴とする複層ガラスである。
【0009】
この複層ガラスは、2枚のガラスの間隔を極めて小さくでき全体の厚みを薄くできる複層ガラスであって、例えば2枚のガラスの間隔は1.7〜5mm、好ましくは2〜4mm、全体の厚みは7.1〜11mmであって、従来品と比べると大変薄いものであり、従来の単層ガラス用のサッシ枠をそのまま使用できる利点を有している。
【0010】
本発明者は前記薄型の複層ガラスの改良、殊に新しい機能が付与された複層ガラスについて研究を進めた。
通常ガラス窓は透明であって室の内外から互いに見通しできることが1つの利点である。しかし場合によっては見通しを遮断するか或いは見にくくすることが望まれることがある。このような手段としては、カーテン、レースカーテンまたはブラインドを窓の内側に設置して、それらを開閉する方法が一般的である。しかしこれらの手段は窓の内側に特別のレールや枠を取り付けることが必要となり、構造も複雑となる。窓の構造や場所によっては、カーテンやブラインドを設置できない場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、通常は透明な複層ガラス窓であって、窓の内側にカーテンやブラインドを設置しなくとも窓の透明ガラスを半透明の乳白色に容易に切り換えることができる断熱性の高い複層ガラスの開発について研究を進めた。その結果、電圧の負荷或いは無負荷によって乳白色/透明になる液晶フィルムを利用し、この液晶フィルムを複層ガラスの一方のガラスの内側に貼り付けた複層ガラスは構造もシンプルであり、乳白色/透明の切り換えが極めて容易であることが見出された。この液晶フィルムによる乳白色は、光は透過するものの、丁度スリガラス様の半透明ガラスとなり、室の内外から互いの細かな様子を明確に判別することはできないものである。
【0012】
かくして本発明によれば、2枚のガラス板、その2枚のガラス板の間に空間部を保持するためのスペーサー、そのスペーサーの内部に収納された乾燥剤およびシール剤より形成された複層ガラスであって、一方のガラス板の内側には、電圧の負荷時には乳白色に着色しまた電圧の無負荷時には透明となる液晶フィルムが装着され、他方のガラス板の内側には透明断熱フィルムが装着されていることを特徴とする、乳白色/透明の切り換えが可能な複層ガラスが提供される。
【0013】
本発明の前記複層ガラスは、前記スペーサーが(i)板状の成形体より形成され、(ii)2枚のガラス板の間に設置した場合少なくとも一方のガラス面には実質的に線もしくは点接触し、(iii)乾燥剤をその内部に収納しうる形状を有し、且つ(iv)その内部と2枚のガラス板との間の空間部と気体が流通しうる連通路を有している、ものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の複層ガラスは、電圧の負荷或いは無負荷(つまり電源スイッチのONまたはOFF)によって、容易にガラス窓を透明/乳白色に切り換えることができ、しかも断熱性にも優れかつ全体の厚みを薄くすることが可能となる。
【0015】
従って、カーテンやブラインドを併設する必要がなく、透明の窓ガラスを半透明の乳白色へ容易に切り換えることができ、その構造が大変シンプルであり、液晶フィルムの使用によってエネルギコストも僅かである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の複層ガラスの周囲における断面構造の一例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の複層ガラスについて図1によりさらに詳しく説明する。
【0018】
本発明に使用されている複層ガラスは2枚のガラス板、2枚のガラス板の間に空間部を保持するためのスペーサー、スペーサーの内部に収納された乾燥剤およびシール剤より形成された複層ガラスであって、(i)スペーサーは板状の成形体より形成され、(ii)スペーサーは、ガラス板の間に設置した場合、少なくとも一方のガラス面には実質的に線もしくは点接触し、(iii)スペーサーは乾燥剤をその内部に収納しうる形状を有し、且つ(iv)スペーサーはその内部と2枚のガラス板の間の空間部と気体が流通しうる連通路を有している複層ガラスであって、2枚のガラス板のうち一方のガラス板の内側には、液晶フィルム9が装着され、他方のガラス板の内側には透明断熱フィルムが装着されていることを特徴としている。
【0019】
この複層ガラスにおけるスペーサーは、2枚のガラス板の間に設置した場合、少なくとも一方のガラス面には実質的に線接触または点接触している。この接触の状態を図1により説明する。図1は複層ガラスの周囲における断面構造の一例を示したものである。図1において、2つのガラス板2,2’はスペーサー1によって空間が形成されている。このスペーサー1は、1つのガラス板2には線で接触し、他のガラス板2’には面で接触している。この図1の場合、ガラス板2とスペーサー1との接触している点は、図面上スペーサー1の右端部であり、両面接着テープ5を介して接触した構造である。この両面接着テープ5は複層ガラスの組立て加工を容易にし、且つシール性を向上させるために使用されるものであり、必ずしも必要なものではない。
【0020】
図1において、スペーサー1はガラス板2’とは面で接触しており、両面接着テープ6を介して結合している。この両面接着テープ6は複層ガラスを組立てる場合、スペーサー1をガラス板の所定の位置に固定化するために利用され、またシール効果も併せて有している。すなわち、ガラス板のスペーサー1を固定化する位置に予め両面接着テープ6を貼っておき、その上にスペーサー1を貼ることによってスペーサー1を所定の位置に固定化することが容易に可能となる。
【0021】
図1において、スペーサー1は、2つのガラス板の間に設置されることによって、2つのガラスの間隔を一定に固定化し保持すると共に、乾燥剤を収納する空間7を形成する機能を有している。この空間7は、乾燥剤粒子を収納し且つその粒子がガラス板によって粉砕化されない間隔を有し、また必要な量の乾燥剤を収納しうる空間容積を必要としている。図1の空間7中には乾燥剤粒子は図示されてはいないが、大略乾燥剤粒子は、空間7の2つのガラス板の間に形成される間隔(正確にはさらにスペーサーの厚みを引いた厚み)より粒径が小さいものが適当である。具体的には、乾燥剤の平均粒径は1〜4mm、好ましくは1〜3.5mmの範囲のものが適当である。乾燥剤の粒径が前記範囲よりも小さいと、スペーサー1内に乾燥剤を充填する加工が面倒であるばかりでなく、スペーサー1の外部(ガラス板の空間部)へ乾燥剤が漏れることになり望ましくない。一方、乾燥剤粒子が前記範囲よりも大きくなると、スペーサーによって形成される間隔を大きくする必要があるばかりでなく、空間7内に収納された乾燥剤粒子が2つのガラス板によって粉砕される恐れがあるので望ましくない。乾燥剤としては、例えばモレキュラーシーブ、シリカゲル、炭酸カルシウムなどが使用できる。
【0022】
図1におけるスペーサー1の内側に貼り付けられた両面接着テープ4は、複層ガラスにおいて、その組立て作業性、乾燥剤の充填および組立てられた複層ガラスの性能保持の点で、極めて優れた機能を果たしている。すなわち、複層ガラスは、その全厚みを薄くするために特定形状の薄いスペーサーが使用され、そのためスペーサーによって形成された空間7は小さく且つスペーサー自体は開放された形状をしている。従って、空間7に乾燥剤粒子を充分に収納する作業は極めて困難である。ところが、使用されるスペーサーの空間7を形成する面(つまり1つのガラス板と面接触するスペーサーの反対面)に両面接着テープ4を予め貼っておき、得られた両面接着テープ4が付着したスペーサー1を乾燥剤粒子と接触させると、乾燥剤粒子はスペーサー1の内側の両面接着テープ4の表面面状に均一に付着することになる。この乾燥剤粒子のスペーサーの内側への充填付着方法は極めて簡単でありまた面状に多量付着させることが可能になる。
【0023】
かくして、内側に乾燥剤粒子を面状に付着させたスペーサーはガラス板の面に両面接着テープ6を介して固定化し、その上に他のガラス板を合わせればよい。このようにスペーサーの内側に貼り付けられた両面接着テープ4は、それを使用することによって、本発明の薄形の複層ガラスの組立て並びに乾燥剤の収納の作業性を容易に可能にしたものである。
【0024】
従って、スペーサーの内部に設けられる図1において示した両面接着テープ4は必ずしもテープである必要はなく、それと同様の機能を有する限り、他のものであってもよい。すなわち、スペーサーの内部に接着剤の薄層が形成されていてもよい。一方、図1の両面接着テープ5は、前述したように、スペーサー1とガラス板2とを線または点接着する部分に介在することができるが、好ましくは図1に示されるように、空間7を形成する部分まで拡張して使用することができる。そうすることによって空間7に収納された乾燥剤粒子が接着機能によって所定の個所に固定され、複層ガラスの震動によって乾燥剤の移動が両面接着テープ4と共に防止できる。
【0025】
スペーサーの形状は板状の成形体であり、2つのガラス板の間に設置した場合、少なくとも一方のガラス面には実質的に線もしくは点接触する構造のものであり、好ましくは他方のガラス面には面接触するものである。かかるスペーサーの厚みは、通常0.3〜0.7mm、好ましくは0.4〜0.6mmが適当であるが、この厚みは材質および形状によって若干変更することができるし、厚さは必ずしも均一である必要はない。スペーサーの材質としては、金属(例えばアルミ、ステンレス)または樹脂であることができる。金属の場合、ロール・フォーミング法やプレス法によって所望の形状に作ることができる。
【0026】
スペーサーの断面形状は図1に示した形状であってもよく、さらに別の断面形状であってもよい。スペーサーは2つのガラス板の間に形成される密閉空間と気体が流通しうる連通路を有している。例えば図1のスペーサー1の場合、左側のスペーサー端部はガラス板2と接触しておらず、狭い間隔で隔てられている。この間隔は気体が流通できればよく、乾燥剤粒子が通過できない間隔であるべきである。また、連通路はスペーサー内に小孔を設けたものでもよい。前述したように、気体の流通する連通路は、乾燥剤粒子が通過しない大きさであることが必要である。
【0027】
本発明の複層ガラスは、2枚のガラス板の間にスペーサーおよび乾燥剤を前述したように配置すると共に、複層ガラスにおいて通常使用されるシール剤により、内部の気体を乾燥状態に保持する。シール剤は一般に使用されているようにスペーサーの外側において2枚のガラス板の間に充填され、図1においてはシール剤3として示されている。このシール剤としては、複層ガラスに通常使用されているものを利用することができる。シール剤としては、ポリ(イソブチレン)系、ポリサルフイド系、シリコーン系、ポリウレタン系のものが代表的な例として挙げられる。これらは水蒸気透過率が低く、接着力が長時間維持され、また引張り方向に対する追従性に優れているので好ましい。
【0028】
本発明の複層ガラスにおいて、一方のガラス板の内側には液晶フィルム9が装着され、他方のガラス板の内側には、透明断熱フィルム10が装着されている。前記液晶フィルム9は電圧の負荷或いは無負荷により、透明/乳白色へガラスの光透過面が変化するものである。液晶フィルム9はガラス板の内側に接着剤によって貼り付けられるが図1にはその接着剤は示されていない。また液晶フィルム9は電圧を負荷するための2本の電線がフィルムの端部に接続されているが、図1にはこの2本の電線は省略されている。液晶フィルム9には負荷される電圧は、1.5v〜100v、好ましくは3v〜12vであるのが好ましい。電圧の負荷或いは無負荷により、透明/乳白色へ切り換えられる液晶フィルムは市販されているのでそれをそのまま使用することができる。このフィルムは30〜200μmの暑さのものを使用することができる。
【0029】
また、複層ガラスの片面のガラス板の内側に透明断熱フィルムを10が装着されている。かくして複層ガラスの断熱機能を一層強化することができる。すなわち、複層ガラスは空間部の厚さが薄いのでその断面効果の不足を補うために透明断熱フィルム10の装着は大変効果を有する。透明断熱フィルム10は、それ自体市販されており、それをそのまま利用することができる。
透明断熱フィルム10はガラス板に装着する場合、接着剤が使用されるが、接着剤は図1には示されていない。透明断熱フィルム10は通常50〜200μmの厚さを有している。
【0030】
本発明の複層ガラスは、全体厚さが薄くしかもそれ自体断熱効果および結露防止効果を有している。例えば厚さが2.7〜3mmの2枚のガラスを使用し空間の厚み2mmの複層ガラスとすることにより、全体の厚みが7.4〜8mmの薄型複層ガラスとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の複層ガラスは、通常は複層ガラスを用いた透明の窓や間仕切りの窓として使用しながら、必要に応じて容易に窓を乳白色に転換できるので、一般家居の窓のみならず、商業施設の窓、室内インテリア材料、装飾材料などに広く活用することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 スペーサー
2 ガラス板
2’ガラス板
3 シール剤
4 両面接着テープ
5 両面接着テープ
6 両面接着テープ
7 乾燥剤収納空間
8 乾燥剤
9 液晶フィルム
10 透明断熱フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のガラス板、その2枚のガラス板の間に空間部を保持するためのスペーサー、そのスペーサーの内部に収納された乾燥剤およびシール剤より形成された複層ガラスであって、一方のガラス板の内側には、電圧の負荷時には乳白色に着色し、また電圧の無負荷時には透明となる液晶フィルムが装着され、他方のガラス板の内側には透明断熱フィルムが装着されていることを特徴とする、乳白色/透明の切り換えが可能な複層ガラス。
【請求項2】
前記スペーサーは、(i)板状の成形体より形成され、(ii)2枚のガラス板の間に設置した場合、少なくとも一方のガラス面には実質的に線もしくは点接触し、(iii)乾燥剤をその内部に収納しうる形状を有し、且つ(iv)その内部と2枚のガラス板との間の空間部と気体が流通しうる連通路を有している、請求項1記載の複層ガラス。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−30980(P2012−30980A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169118(P2010−169118)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(594203944)有限会社アイ・デイ (9)
【Fターム(参考)】