説明

乾燥方法及び乾燥システム

【課題】高温の放熱を可能とするCOを冷媒とするヒートポンプ装置を乾燥機の温風発生装置として適用するに当り、ヒートポンプの熱バランスを常に良好に保持し、乾燥用空気の温度を精度良く制御する乾燥システムを実現する。
【解決手段】被乾燥物cを乾燥するための乾燥室1にCOを冷媒としたヒートポンプ装置を構成する加熱器(ガスクーラ)23でCO冷媒を超臨界状態で運転させることにより加熱した乾燥用空気を導入するようにした乾燥方法において、加熱器23に流入するCO冷媒の一部を該加熱器の上流側で分岐流路31に必要放熱量に相当する流量だけ分岐させ、分岐したCO冷媒を熱交換器39で外気oと熱交換させて外気に放熱することにより、乾燥室1に供給する乾燥用空気を精度良く設定温度に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COを冷媒とするヒートポンプを被乾燥物、特に衣類等の乾燥機の温風発生装置として用いるとともに、乾燥用空気の加熱温度を精度良く制御することができる乾燥方法及び乾燥システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温風を用いた乾燥機は、クリーニングの乾燥工程、食品の製造プロセス、木材の乾燥工程、塗装やコーティングの乾燥工程など多岐に亘って用いられている。温風の発生源としては、ガスや重油などの燃料を用いたものや、電気ヒータが用いられている。
しかしながらガスや重油などの燃料や電気ヒータを使った場合、一度乾燥に供された熱はすべて外部に排出されて再利用されることがないため、熱効率が悪く、経済的でない。またガスや重油を使用する場合は、排ガスが発生して環境を悪化させる問題がある。
【0003】
そのため特許文献1(特開平7−178289号公報)には、衣類乾燥機において、ヒートポンプ装置を衣類乾燥の熱源として用い、乾燥用空気を循環させ再利用することにより、外部に放出される熱量を回収し、エネルギーの有効利用を図るとともに、低電力でかつ高除湿率を狙った衣類乾燥機が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された乾燥機は、乾燥機から取り出した乾燥用空気を再び乾燥機に戻す循環流路を形成し、該循環流路にヒートポンプ装置を構成する吸熱器(蒸発器)と放熱器(ガスクーラ)を介在させ、該吸熱器で乾燥用空気から熱を奪って除湿させた後、該乾燥用空気を放熱器で加熱して再び乾燥機に戻すようにしている。
【0005】
しかし放熱器から乾燥用空気に放出される熱量は、吸熱器で乾燥用空気から奪う熱量に加えて、圧縮機が消費する電力にほぼ相当する分だけ多くなるため、乾燥用空気をそのまま循環し乾燥が進行するにつれ、乾燥用空気全体のもつ熱量が増え、その圧力が高くなる。また、吸熱器で乾燥用空気から奪う熱量と、放熱器から乾燥用空気に放出される熱量とのバランスが取れなくなり、効率的な運転が困難となる。
【0006】
従ってヒートポンプ装置を効率的に安全に運転するためには、乾燥用空気の持つ熱量の一部を外部へ排出しつつ乾燥を行なわなくてはならない。特許文献1では、放熱器から出た高温低湿の乾燥用空気の一部を外部へ排出することで、外部に最小限の水分しか漏らさずに熱を逃がすことで、安全で安定したヒートポンプ装置の運転を実現している。
【0007】
しかしながら特許文献1の構成では、放熱器で加熱した高温低湿の乾燥用空気の一部を衣類に当てる前に外部へ排出するために、結果的には、省エネ性を損ねているという問題がある。
そのため特許文献2(特開2004−239549号公報)では、ヒートポンプ装置の冷媒の熱の一部を放熱器通過後に吸熱器までの間で外部に放出する熱バランス手段(具体的には、冷媒と外気とを熱交換して冷媒の保有熱を放出する。)を設けることによって、特許文献1のように放熱器から熱を得て高温となった乾燥用空気の一部を衣類に当てる前に外部に排出することをなくし、放熱量を最小にしている。
【0008】
また特許文献2では、CO冷媒を超臨界状態で運転することにより、放熱器の冷媒温度を上昇させ、これによって乾燥用空気を高温に加熱することができる利点もある。
特許文献2に開示されているように、COを熱媒とするヒートポンプは、自然の熱媒体であるCOを用いることにより安全であるとともに、高圧が超臨界状態となるため凝縮過程が存在せず、高圧側の熱交換器(ガスクーラ)により90℃程度の高温水が容易に取り出せることから、現在ヒートポンプ式給湯機として普及がなされてきている。
【0009】
【特許文献1】特開平7−178289号公報
【特許文献2】特開2004−239549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献2では、ヒートポンプ装置の冷媒の熱の一部を放熱器通過後に吸熱器までの間で外部に放出する熱バランス手段(具体的には、特許文献2の図1に示す実施例1では、冷媒と外気とを熱交換して冷媒の保有熱を放出している。)を設けることによって、冷媒の保有熱の一部を放出しているが、特許文献2に添付された図5に示すように、放熱器通過後の冷媒の保有熱は、30℃前後であり、外気と熱交換しても外気の温度とさほど変わらないため、熱交換率は低く、冷媒の放熱量を増加させることができない。
【0011】
また特許文献2の図2に示す実施例2では、水タンク内に冷媒配管を配置させて冷媒の保有熱を冷却水に放熱しているが、かかる構成では、水タンクや給水管、排水管を必要とし、大掛かりな装置構成となってしまう問題点がある。
【0012】
また特許文献2に開示された手段では、冷媒放熱量の制御は、前記実施例1では、熱交換器での外気の送風量を送風ファンの出力を変えて制御したり、前記実施例2では、水タンク内に供給する冷却水の量や温度を変えることにより行なうものであるが、いずれも冷媒の放熱量を正確に制御することは困難であり、従って乾燥用空気の加熱温度を精度良く制御することができないという問題点がある。
【0013】
特に衣類は、コートや、スーツ、ワイシャツ、下着など大きさ、重量が異なる種々雑多な衣類が混ざっており、これらを大量に短時間で効率良く乾燥処理する場合は、乾燥用空気の温度を精度良く調整することが重要な要件となるが、前述のように従来方式ではかかる要件を満足することは困難である。
【0014】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、高温の放熱を可能とするCOを冷媒とするヒートポンプ装置を乾燥機の温風発生装置として適用するに当り、ヒートポンプ内に蓄積する熱の外部への放出を簡単な構成で可能とし、かつ放熱量を正確に制御可能にし、もってヒートポンプの熱バランスを常に良好に保持し、乾燥用空気の温度を精度良く制御することができる乾燥システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するため、本発明の乾燥方法は、
被乾燥物を乾燥するための乾燥室にCOを冷媒としたヒートポンプ装置を構成するガスクーラでCO冷媒を超臨界状態で運転させることにより加熱した乾燥用空気を該乾燥室に導入するようにした乾燥方法において、
前記ガスクーラに流入するCO冷媒の一部を該ガスクーラの上流側で必要放熱量に相当する流量だけ分岐させ、
分岐したCO冷媒を外気と熱交換させて外気に放熱し、
その後分岐したCO冷媒を前記ガスクーラの下流側冷媒流路に戻すことにより、
前記乾燥室に供給する乾燥用空気を設定温度に保持するようにしたことを特徴とする。
【0016】
本発明方法では、ガスクーラで超臨界状態のCO冷媒を乾燥用空気と熱交換させるため、高温の乾燥空気を製造可能であり、またガスクーラに流入するCO冷媒の一部を該ガスクーラの上流側で必要放熱量に相当する流量だけ分岐して外気と熱交換することにより、冷媒の放熱量を正確に設定することができる。
このように外気との熱交換器における冷媒の放熱量を正確に設定できるので、ヒートポンプ装置の熱バランスを常に良好に保持することができ、このため乾燥用空気の加熱温度を精度良く制御することができる。
【0017】
また本発明方法においては、ガスクーラ上流側の高温高圧ガス状態のCO冷媒を外気との熱交換器に導入するため、冷媒と外気との温度差を大きく取ることができ、そのため冷媒と外気との熱交換率が良く、外気への放熱量が増大する。そのため放熱量の調整が容易になる。
【0018】
本発明において、被乾燥物を搬送装置で移動させながら乾燥室内への搬入、該乾燥室内での乾燥処理及び該乾燥室からの搬送を行なう連続搬送乾燥方式や、被乾燥物を乾燥室に収容した後乾燥室を閉鎖して被乾燥物を乾燥し、乾燥処理後乾燥室から被乾燥物を搬出するようにした、いわゆるバッチ乾燥方式にも適用可能である。
【0019】
例えば連続搬送乾燥方式の場合、被乾燥物が衣類である場合、衣類を搬送装置に取り付けたハンガーに掛けた状態で搬送しながら連続的に乾燥することができるし、食品や木材の場合であれば、ベルトコンベア等に載置したまま連続的に乾燥室内に搬入搬出してもよい。またバッチ乾燥方式の場合、被乾燥物を台車等で入口から乾燥室内に搬入し、搬入後入口を閉鎖して乾燥する。
【0020】
前記連続搬送乾燥方式の場合、被乾燥物の搬入部付近から乾燥室内の低温高湿の空気を取り出し、前記ガスクーラで加熱した乾燥用空気を前記搬出部付近から乾燥室内に供給するようにして被乾燥物の搬送方向と逆方向に乾燥用空気流を形成すれば、被乾燥物に対する乾燥用空気の接触度が向上し、乾燥効率が良くなる。
また前記バッチ乾燥方式の場合、乾燥時間の経過とともにCO冷媒の分岐流量を増大させることにより、乾燥用空気の温度を低下させるようにすれば、乾燥に要する熱エネルギを節約することができる。
【0021】
また本発明では、乾燥室から室内空気の一部を導出し該導出空気をガスクーラの温熱で加熱し、その後乾燥室内に戻す空気循環流路を形成してもよく、その場合好ましくは、該循環流路に介設した蒸発器と導出空気とを熱交換し、該蒸発器の冷熱によって前記導出空気を冷却して除湿した後で、該循環流路の蒸発器下流側に介設したガスクーラの温熱によって導出空気を加熱するようにするとよい。
こうすれば、1基のヒートポンプ装置により除湿と加熱の両方に対応できるため、COPが格段に向上する。
また乾燥用空気の循環流路を形成すれば、乾燥用空気が外部に漏れないので、熱放出による熱ロスを防ぐことができ、またヒートポンプ装置の熱効率を向上させることができるとともに、導出空気を一旦除湿した後加熱するので、相対湿度を格段に低下することができる。
【0022】
前記連続搬送乾燥方式に乾燥用空気の循環流路を組み合わせた実施形態では、被乾燥物の搬入位置付近の乾燥室から低温高湿度の室内空気の一部を導出し、該導出空気をガスクーラで加熱した後、被乾燥物の搬出位置付近の乾燥室内の高温低湿度空気中に戻す循環流路を形成すれば、乾燥室内に被乾燥物の入口から出口に向かって被乾燥物の搬送経路に沿って低温高湿度から徐々に高温低湿度になる雰囲気を形成することができるため、効率的な乾燥を行なうことができるとともに、乾燥時間や乾燥能力を適宜調整することができる。
【0023】
また本発明方法は、外気をガスクーラの温熱で加熱した後乾燥室内に導入する方式、即ち空気循環方式でないものにも適用することができる。この場合ヒートポンプ装置を構成する蒸発器と乾燥室内からの排出された空気を熱交換し、該蒸発器の冷熱で該排出空気を冷却し除湿した後外部に排出すると、ヒートポンプ装置の熱効率を向上できるとともに、周囲環境を悪化させないで済む。
【0024】
また外気を乾燥室からの導出空気と熱交換して予熱した後、ガスクーラの温熱で加熱するとともに、外気と熱交換後の前記導出空気を蒸発器の冷熱で冷却し除湿するようにすれば、乾燥室から導出した乾燥用空気の保有熱をより有効に利用することができる。
また外気を蒸発器の冷熱で冷却して除湿した後、乾燥室から導出した空気と熱交換して予熱し、その後該導出空気を外部へ排気するとともに、予熱した外気をガスクーラの温熱で加熱した後乾燥室内に導入するようにすれば、高温低湿度の乾燥用空気を得ることができる。
【0025】
また前述のように乾燥室に乾燥用空気の閉ループ循環流路を形成する場合、ガスクーラ上流側で分岐したCO冷媒と外気との熱交換(冷媒の放熱)のみならず、蒸発器に流入するCO冷媒の一部を該蒸発器の上流側で必要吸熱量に相当する流量だけ分岐し、その後膨張機構を通して低圧とした後、外気と熱交換して外気から吸熱し(冷媒の吸熱)、その後前記蒸発器の下流側冷媒流路に戻すようにすれば、前記放熱操作及び吸熱操作を併用して前記ヒートポンプ装置の熱バランスをさらに良好に調整することができる。
【0026】
この場合、蒸発器の上流側(ガスクーラ下流側)の高温高圧の冷媒を膨張機構を通すことによって低圧とし、外気との熱交換器で蒸発して外気から蒸発熱を奪うため、外気からの熱吸収効率が格段に向上する。
これによって乾燥室に供給する乾燥用空気の温度をさらに精度良く制御することができる。
【0027】
次に本発明の乾燥システムは、
被乾燥物を乾燥する乾燥室と、COを冷媒とし、該CO冷媒が圧縮機、ガスクーラ、膨張機構及び蒸発器の順に循環するヒートポンプ装置とを備え、
前記乾燥室に導入する乾燥用空気をCO冷媒を超臨界状態で運転する前記ガスクーラで加熱するように構成した衣類の乾燥システムにおいて、
CO冷媒と外気とを熱交換する熱交換器と、
流量調整弁が介設され前記ガスクーラに流入するCO冷媒の一部を該ガスクーラの上流側で分岐して前記熱交換器に導く分岐流路と、
前記熱交換器で熱交換されたCO冷媒を前記ガスクーラの下流側冷媒流路に戻す戻り流路とを備え、
前記分岐流路に流れるCO冷媒量を調節することにより、前記乾燥室に供給する乾燥用空気の温度を設定温度に保持するようにしたことを特徴とする。
【0028】
本発明の乾燥システムでは、分岐流路に介設された流量調整弁を調整することによってガスクーラの上流側でCO冷媒の一部を必要放熱量に相当する流量だけ外気との熱交換器に導入することができる。これによって該熱交換器における冷媒の放熱量を正確に設定できるので、ヒートポンプ装置の熱バランスを常に良好に保持することができ、このため乾燥用空気の加熱温度を精度良く制御することができる。
【0029】
本発明システムにおいて、乾燥室から室内空気の一部を導出し該導出空気を前記乾燥室内に戻す循環流路を形成した場合には、
ヒートポンプ装置を構成して該循環流路に介設され前記導出空気から吸熱して除湿する蒸発器と、
前記循環流路に該蒸発器より下流側に介設された前記ガスクーラと、
第2の流量調整弁が介設され前記蒸発器に流入するCO冷媒の一部を該蒸発器の上流側で前記熱交換器に導く第2の分岐流路と、
前記第2の分岐流路において前記熱交換器の上流側に介設された膨張機構と、
前記熱交換器で熱交換されたCO冷媒を前記蒸発器の下流側冷媒流路に戻す第2の戻り流路とを備えるようにするとよい。
【0030】
このように構成すれば、蒸発器の上流側でCO冷媒の一部を必要吸熱量に相当する流量だけ前記熱交換器に導入することができる。
かかる構成で、前記分岐流路又は第2の分岐流路に流れるCO冷媒量を調節することにより、乾燥室に供給する乾燥用空気の温度をさらに正確に設定温度に保持することができる。
【0031】
これによってCO冷媒と外気との熱交換による冷媒の放熱量と吸熱量とを正確に設定できるので、ヒートポンプの熱バランスを常に所望の状態に保持することができ、これによって乾燥用空気の加熱温度を一層正確に設定値に制御することができる。
なお前記熱交換器は1台で吸熱用と放熱用とを兼用してもよいし、あるいは吸熱用と放熱用とを別個に設けてもよいが、1個のもので兼用したほうが装置構成を簡素化できる。
【0032】
また本発明システムにおいて、被乾燥物を前記乾燥室内に連続的に搬入し、被乾燥物を前記乾燥室内で移動させながら前記乾燥室から搬出する搬送装置を設けて、被乾燥物を乾燥室に連続的に搬送しながら乾燥すれば、乾燥効率が向上する。例えば被乾燥物が衣類であれば、衣類を搬送装置に固定した複数のハンガーに掛けた状態で連続的に乾燥室に搬送することができる。被乾燥物が材木、食品等であれば、これらをベルトコンベア等に載置した状態で乾燥室内に搬送すればよい。
【0033】
また好ましくは、ガスクーラの温熱で加熱された乾燥用空気の温度を検知するセンサと、該センサの温度検出値に基づいて前記流量調整弁又は前記第2の流量調整弁の開度を調整するコントローラとを備えるようにすれば、乾燥室に供給管する乾燥用空気の温度をさらに正確に制御することができる。
【0034】
また前記連続乾燥方式の場合、被乾燥物の搬入位置付近の乾燥室から低温高湿度の室内空気の一部を導出し該導出空気を被乾燥物の搬出位置付近の乾燥室内の高温低湿度空気中に戻す循環流路を形成すれば、乾燥室内に被乾燥物の入口から出口に向かって被乾燥物の搬送路に沿って低温高湿度から徐々に高温低湿度に移行する雰囲気を形成することができるため、効率的な乾燥を行なうことができるとともに、乾燥時間や乾燥能力を適宜調整することができる。
【0035】
またガスクーラの内部において、超臨界状態においてCO冷媒の分配の偏りが生じ難いという性質を生かし、超臨界状態のCO冷媒と乾燥用空気とが互いに対向流となるように両者の流路を形成するとともに、両者の流路を交互に分散配置すれば、ガスクーラ内でCO冷媒による均一な温度分布を形成できるとともに、CO冷媒と乾燥用空気との接触面積を増加させ、熱交換効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の乾燥方法によれば、ガスクーラに流入するCO冷媒の一部を該ガスクーラの上流側で必要放熱量に相当する流量だけ分岐させ、分岐したCO冷媒を外気と熱交換させて外気に放熱することにより、該放熱量を精度良く設定することができ、これによってヒートポンプ装置の熱バランスを常に良好に保持することができるとともに、乾燥室に供給する乾燥用空気を精度良く設定温度に保持することができる。
またガスクーラ上流側の高温高圧液状の冷媒を外気と熱交換させるため、両者の温度差を大きく採ることができ、熱交換効率の良い放熱を行なうことができる。
【0037】
従って特許文献2のように給水タンク等の大掛かりな装置を用いることなく、放熱量を増大させることができる。
特に大きさの異なる種々雑多な衣類を大量に乾燥する場合、乾燥処理を効率良く行なうためには、乾燥用空気の加熱温度を精度良く保持することが極めて重要であり、本発明をかかる場合に適用して好適である。
【0038】
また好ましくは、被乾燥物を搬送装置で連続的に乾燥室内に搬入し被乾燥物を乾燥室内で移動させながら乾燥した後、被乾燥物を該搬送装置で乾燥室から搬出させるとともに、被乾燥物の搬入位置付近の乾燥室から低温高湿度の室内空気の一部を導出し、該導出空気を被乾燥物の搬出位置付近の前記乾燥室内の高温低湿度空気中に戻す循環流路を形成するようにすれば、乾燥用空気が外部に漏れないので、熱放出による熱ロスを防ぐことができ、ヒートポンプ装置のCOPを向上させることができる。
また乾燥室内に被乾燥物の入口から出口に向かって低温高湿度から徐々に高温低湿度になる雰囲気を形成することができるため、乾燥時間や乾燥能力を適宜調整できて、計画的かつ効率的な乾燥を行なうことができる。
【0039】
また外気を乾燥用空気として導入する場合、外気を乾燥室から導出する空気と熱交換して予熱した後、ガスクーラの温熱で加熱するとともに、外気と熱交換した前記導出空気を蒸発器の冷熱で冷却し除湿した後外部へ排出するようにすれば、乾燥室から導出した乾燥用空気の保有熱をより有効に利用することができる。
また外気を蒸発器の冷熱で冷却して除湿した後、前記乾燥室から導出した空気と熱交換して予熱し、その後該導出空気を外部へ排気するとともに、予熱した外気をガスクーラの温熱で加熱した後前記乾燥室内に導入するようにすれば、高温低湿度の乾燥用空気を得ることができる。
【0040】
また乾燥室内の空気を導出して加熱した後乾燥室に戻す乾燥用空気の循環流路を形成する場合、ガスクーラ上流側で分岐したCO冷媒と外気との熱交換(冷媒の放熱)のみならず、蒸発器に流入するCO冷媒の一部を該蒸発器の上流側で必要吸熱量に相当する流量だけ分岐し,その後膨張機構を通して低圧とした後、外気と熱交換(冷媒の吸熱)することにより、前記放熱操作及び吸熱操作を併用して前記ヒートポンプ装置の熱バランスを調整するため、ヒートポンプ装置の熱バランス及び乾燥用空気の加熱温度をさらに精度良く制御することができる。
【0041】
この場合、蒸発器の上流側(ガスクーラ下流側)の高温高圧液状の冷媒を膨張機構を通すことによって低圧とし、外気との熱交換器で蒸発して外気から蒸発熱を奪うため、熱吸収効率が格段に向上し、外気との間接的熱交換という簡単な方法で十分な吸熱量を得ることができる。
【0042】
また本発明の乾燥システムによれば、CO冷媒と外気とを熱交換する熱交換器と、流量調整弁が介設され前記ガスクーラに流入するCO冷媒の一部を該ガスクーラの上流側で分岐して前記熱交換器に導く分岐流路と、前記熱交換器で熱交換されたCO冷媒を前記ガスクーラの下流側冷媒流路に戻す戻り流路とを備え、流量調整弁によって分岐流路に流れるCO冷媒量を必要放熱量に相当する流量に調節することにより、冷媒放熱量を正確に設定できるので、ヒートポンプ装置の熱バランスを常に良好に保持することができるとともに、乾燥室に供給する乾燥用空気の温度を設定温度に精度良く保持することができる。
【0043】
また乾燥室内の空気を導出し該導出空気をガスクーラで加熱した後乾燥室に供給する乾燥用空気の循環流路(閉ループ)を形成した場合は、ヒートポンプ装置を構成して該循環流路に介設され前記導出空気から吸熱して除湿する蒸発器と、前記循環流路に該蒸発器より下流側に介設された前記ガスクーラと、第2の流量調整弁が介設され前記蒸発器に流入するCO冷媒の一部を該蒸発器の上流側で前記熱交換器に導く第2の分岐流路と、前記第2の分岐流路において前記熱交換器の上流側に介設された膨張機構と、前記熱交換器で熱交換されたCO冷媒を前記蒸発器の下流側冷媒流路に戻す第2の戻り流路とを備え、前記分岐流路又は前記第2の分岐流路に流れるCO冷媒量を調節することにより、CO冷媒の放熱量又は吸熱量を正確に設定できる。
【0044】
これによってヒートポンプの熱バランスを常に所望の状態に保持することができるとともに、乾燥用空気の加熱温度を一層正確に設定値に制御することができる。
またガスクーラ上流側の高温状態の冷媒と外気とを熱交換させているので、外気との温度差を大きく取ることができ、あるいは蒸発器上流側の高温高圧液状の冷媒を膨張機構を通して低圧にし、低圧状態の冷媒を外気との熱交換器に導入し蒸発させてその蒸発潜熱を外気から奪っているので、放熱又は吸熱に際して熱交換率が良く、放熱量又は吸熱量ともに増大させることができる。従って熱交換器の装置構成が簡素化できる。
【0045】
また好ましくは、ガスクーラの内部において、超臨界状態においてCO冷媒の分配の偏りが生じ難いという性質を生かし、超臨界状態のCO冷媒と乾燥用空気とが互いに対向流となるように両者の流路を形成するとともに、両者の流路を交互に分散配置すれば、ガスクーラ内でCO冷媒による均一な温度分布を形成できるとともに、CO冷媒と乾燥用空気との接触面積を増加させ、熱交換効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
図1は、本発明の乾燥システムの第1実施例の全体構成図、図2は、前記第1実施例の制御系を示すブロック線図、図3は、第1実施例のように乾燥用空気循環方式であって連続搬送乾燥方式の乾燥システムに本発明を適用した模式図、図4は、別な変形例(外気導入方式であって連続搬送乾燥方式)に本発明を適用した模式図である。
【0047】
図5は、さらに別な変形例(乾燥用空気循環方式であってバッチ乾燥方式)に本発明を適用した模式図、図6は、さらに別な変形例(外気導入方式であってバッチ乾燥方式)に本発明を適用した模式図、図7は、本発明の第2実施例による乾燥システムの全体構成図、図8は、本発明の第3実施例の全体構成図、図9は、前記第3実施例の一部を構成する温風発生器(ガスクーラ)の斜視図、図10は、図8の温風発生器におけるCO熱媒及び乾燥用空気の温度曲線を示す線図、図11は、前記第3実施例におけるヒートポンプ装置のモリエル線図、図12は、本発明の第4実施例の全体構成図である。
【実施例1】
【0048】
第1実施例を示す図1において、本実施例では、乾燥室1は、入口1a及び出口1bが開放されて、搬送装置に搬送された衣類cが連続的に搬入され、乾燥室1内で移動しながら乾燥され、そのまま乾燥室1外に搬出される方式のものである。本実施例において、搬送装置は、チェーン状のコンベア2と、該コンベア2に間隔をおいて取り付けられた複数のハンガー3で構成されている。
乾燥室1の下部には、乾燥室1内の空気を除湿及び加熱するヒートポンプ装置が収容された機械室10が設置されている。
【0049】
機械室10において、乾燥室1の入口1a近傍に設けられた空気取入口1cから乾燥室1内の空気を取入れ、乾燥室1の出口1b近傍に設けられた空気供給口1dに乾燥用空気を供給する循環流路11が配設されている。
循環流路11には、上流側から、フィルタ12、矢印b方向の空気流れを形成する送風ファン13、除湿器(蒸発器)26、加熱器(ガスクーラ)23、及び送風ファン14が介設されている。また加熱器23の下流側の空気流路に温度センサ15が配設されている。
【0050】
ヒートポンプ装置20は、CO冷媒が循環する循環流路21に、圧縮機22、加熱器(ガスクーラ)23、膨張弁25、及び除湿器(蒸発器)26が介設されて構成されている。
また循環流路21の加熱器23の上流側では、循環流路21から分岐流路31が分岐しており、分岐流路31には流量調整弁35が介設され、切替弁37を経て熱交換器39に接続され、その後戻り流路33を経て循環流路21に接続される。
【0051】
また循環流路21から分岐流路32が分岐し、分岐流路32には流量調整弁36が介設され、切替弁37、膨張弁38を経て、熱交換器39に接続され、その後戻り流路34を経て、除湿器26の下流側で循環流路21に接続される。熱交換器39は、機械室10の外側に設置され、熱交換器39の内部に配設された冷媒管路に外気oを当てるための送風ファン40が設けられている。
【0052】
かかる構成の乾燥システムにおいて、圧縮機22により吸入されたCO冷媒を圧縮して高温高圧ガスとなったCO冷媒を加熱器(ガスクーラ)23に送る。CO冷媒は、加熱器23で循環流路11を流れる空気と熱交換して空気を加熱し、CO冷媒は冷却され、膨張弁25を経て低圧となり、除湿器26で蒸発して空気から蒸発潜熱を奪い、CO冷媒は低圧ガスとなる。空気は冷却されて除湿される。
【0053】
除湿器26を出た低圧ガス状のCO冷媒は、圧縮機22に吸入されてヒートポンプサイクルをなす。
また乾燥室1内入口1a近傍の空気取入口1cから送風ファン13及び14によって取り出された低温多湿の空気(35℃、80%RH)は、フィルタ12で塵埃を取り除かれ、その後除湿器26に送られる。除湿器26で空気を露点温度以下に冷却して除湿する。空気から除湿された排水wは、排水管路26aから排水される。
【0054】
除湿器26を出た低温高湿の空気(15℃、95%RH)は、加熱器23で加熱され、絶対湿度を変えずに加熱して相対湿度を下げ、高温低湿となり(60℃、8.2RH)、送風ファン14を経て、乾燥室1の出口1b近傍に開口した空気供給口1dから乾燥室1に戻される。
【0055】
このような運転を行なっているときに、圧縮機22が消費する電力に相当する分の熱量がCO冷媒に徐々に蓄積され、CO冷媒が高温高圧となり、より高温高圧となった冷媒を圧縮するため、圧縮機22の駆動モータ負荷が増え、過負荷状態となる。
そのため加熱器23の出口空気温度が高くなったときは、その温度をセンサ15により検知して、放熱すべき熱量に相当する流量のCO冷媒を分岐流路31に流す。分岐流路31に流す冷媒流量は、流量調整弁35で調整する。
【0056】
分岐流路31を流れるCO冷媒は、切替弁37を経て熱交換器39に送られる。熱交換器39で外気と熱交換され、熱を放出する。熱交換器39で外気に放熱したCO冷媒は、戻り流路33を経て循環流路21に戻る。
一方加熱器23の出口空気温度を温度センサ15で検知して、設定温度より低い場合は、循環流路21から分岐流路32に一部のCO冷媒を分岐させる。分岐流路32に流す冷媒の流量は、流量調整弁36によって必要吸熱量に相当する流量に調整する。
【0057】
かかる制御を行なうのが図2に示されたコントローラ41である。コントローラ41において、温度センサ15の検出値が差動増幅器43で参照電圧発生器42から発信される設定値と比較され、設定値に対する検出値の大小を判定回路44で判定し、検出値>設定値のときは、スイッチ45を経て流量調整弁35のバルブ駆動部35aを作動させ、検出値<設定値のときは、スイッチ45を経て流量調整弁36のバルブ駆動部36aを作動させる。
【0058】
分岐流路32を流れるCO冷媒は、切替弁37及び膨張弁38を経て熱交換器39に送られる。切替弁37では、分岐流路31又は32のどちらか一方から冷媒を流すように切り替えられる。CO冷媒は、膨張弁38を通ることによって低圧となり、熱交換器39で蒸発して外気oから蒸発潜熱を吸収する。
外気oから吸熱した冷媒は、戻り流路34を経て圧縮機22の上流側循環流路21に戻される。
【0059】
このように操作することにより、CO冷媒の高温高圧化を防ぎ、ヒートポンプ装置20の熱バランスを正常な状態に保持できるとともに、加熱器23の出口空気温度を設定値に保持することができ、乾燥室1に供給する乾燥用空気の温度を設定値に保持することができる。
コートから下着まで重量、大きさが種々雑多な衣類を乾燥する場合、乾燥室内の温度を設定値に制御することは困難である。本発明によれば、かかる場合でも乾燥室内の空気を精度良く設定値に保持することができる。
【0060】
このように第1実施例によれば、加熱器23の上流側の外気との温度差のある高温の冷媒を一部分岐流路31に取り出し、外気oとの温度差を増大させて熱交換器38で外気oと熱交換させ、あるいは加熱器23を経た後の高圧液状態の冷媒を一部分岐流路32に取り出し、膨張弁38を経て低圧状態とした後で熱交換器39に送ることにより、熱交換器39で蒸発させて外気oから蒸発潜熱を奪うようにしてため、外気oとの良好な熱交換率を得ることができる。
【0061】
従って熱交換器39も冷媒と外気とを間接接触させるだけの簡単な構成のもので済み、特許文献2のような給水タンクを用いる必要がない。
また流量調整弁35又は36によって必要放熱量又は必要吸熱量に相当する分の冷媒量を分岐させるようにしているため、放熱量又は吸熱量を正確に制御することができる。
【0062】
また乾燥室1内の空気を循環する閉回路の循環流路11を構成するため、加熱乾燥時の給排気が不要になるとともに、加熱器23で超臨界状態のCO冷媒を乾燥用空気と熱交換させるため、高温の乾燥空気を製造可能であり、1基のヒートポンプ装置20により除湿と加熱の両方に対応できるため、COPが格段に向上する。
また衣類cをコンベア2に搬送させながらハンガー3に吊られた状態で連続的に乾燥できるため、バッチ式等と比べ搬入、搬出の手間が省ける。
【0063】
さらにヒータ、蒸気等を使用しないので、周囲をクリーンな環境の保持できて、安全であるとともに、乾燥用空気の温度コントロールが木目細かくできるため、衣類などにやさしい温風を供給することができる。
特に本実施例では、乾燥室1の入口1a付近の低温高湿な空気を取り込み、乾燥室1の出口1b付近に高温低湿な空気を供給しているため、衣類cの搬送方向に対して逆方向の空気流を形成するため、衣類cと空気流との接触度が良く、乾燥効率が向上する。また乾燥室1内を入口から出口に向かって衣類cの搬送路に沿って低温高湿な雰囲気から徐々に高温低湿な雰囲気に移行する雰囲気を形成することができるため、乾燥効率を向上できるとともに、乾燥能率及び乾燥時間の調節をも可能とする。
【0064】
また本実施例において、乾燥時間の経過とともにCO冷媒の分岐流路31を流れる流量を増大させ、CO冷媒の放熱量を増大させるようにし、これによって加熱器23下流側の空気の温度を低下させるようにすれば、乾燥に要する熱エネルギを節約することができる。
【0065】
図3から図6は、本発明が適用可能な乾燥システムの種々の変形例を示す模式図である。図3は、前記第1実施例と同様に、衣類cをコンベア2で搬送しながら連続的に乾燥を行う連続搬送乾燥方式であって、かつ乾燥室2内の空気を取り出し、除湿及び加熱した後乾燥室1内に戻す空気循環方式(閉ループ)を採用した例である。
図4は、図3と同じ連続搬送乾燥方式であるが、乾燥室1から取り出した空気を除湿器26で冷却し除湿した後外部に排出し、一方外部から外気oを導入して加熱器23で加熱した後乾燥室1に供給する非循環方式のものである。
【0066】
図5は、乾燥室1が扉1eによって開閉可能な構造になっており、扉1eを開けて衣類cをハンガー3に吊り下げた状態の台車4を乾燥室1内に収容した後、扉1eを閉めて閉鎖し、この状態で衣類cの乾燥を行なう、いわゆるバッチ乾燥方式であり、乾燥室1内の空気を閉ループで循環させる点は図3と同様である。
図6は、乾燥用空気を図4と同一の外気導入方式で行い、衣類cの乾燥は、図5と同一のバッチ乾燥方式を採用している。本発明は、図3から6のいずれの方式にも適用可能である。
【実施例2】
【0067】
次に本発明の第2実施例を図7に基づいて説明する。本実施例は、CO2を冷媒とするヒートポンプ装置により冷却又は加熱されたブラインにより乾燥室の乾燥用空気を冷却又は加熱する方式とした実施例である。図7において、乾燥室1、乾燥用空気の循環流路11に配設された各機器類は、図1に示す第1実施例と同一であるので、図1と同一番号を付して、それら機器の説明を省略する。また制御系も図2に示す第1実施例の制御系と同一である。
【0068】
ヒートポンプ装置80は、CO2冷媒の循環ライン90に、圧縮機81、ガスクーラ82、膨張機83、及びブラインクーラ84が介設されて構成されている。
【0069】
ブラインクーラ84と除湿器26間には、ブラインポンプ101を介設したブライン循環ライン100が設けられ、ブラインクーラ84で冷却したブラインを除湿器26に供給している。またガスクーラ82と加熱器23間にもブラインポンプ111を介設したブライン循環ライン110が設けられ、ガスクーラ82で加熱したブラインを加熱器23に供給している。
【0070】
またブライン循環ライン100には、流量調整弁104を介設した分岐ライン102及び戻りライン103が設けられ、分岐ライン102では切替弁105が介設され、切替弁105でブライン循環ライン110から分岐した分岐ライン112と切替可能に接続されている。また戻りライン103には切替弁106が介設され、切替弁106で循環ライン110に戻る戻りライン114が切替可能に接続されている。
【0071】
分岐ライン102は、放熱コイル及び採熱コイルを具備する熱交換器39に接続され、熱交換器39では分岐ライン102から流れる低温ブラインを採熱コイルを通して外気oと熱交換して加温し、分岐ライン112から流れる高温ブラインを放熱コイルを通して外気oと熱交換して冷却する。熱交換器39で加温されたブラインは戻りライン103を通ってブライン循環ライン100に戻り、熱交換器39で冷却されたブラインは戻りライン114を通ってブライン循環ライン110に戻る。なお循環ライン100と戻り管103との合流部には膨張タンク107を設け、循環ライン110と戻り管114との合流部には膨張タンク115を設けている。
【0072】
本実施例において乾燥室1から出た低温多湿の空気は、フィルタ12で塵埃を取り除いた後、除湿器26に送られる。ブラインクーラ84で冷却されたブラインが除湿器26に供給されて、循環流路11を通る低温多湿空気を露点温度以下に冷却して除湿する。ガスクーラ82で加温されたブラインが加熱器23に供給されて、除湿器26から出た高温低湿の空気を加熱して、絶対湿度を変えずに相対湿度を下げ、高温低湿の乾燥用空気をつくり乾燥室1に送る。加熱器23の下流側には温度センサ15が設けられ、乾燥用空気の温度を検出し、コントローラ41では該検出値が設定値に制御されるように、流量調整弁104又は113の開度を調節する。
【0073】
流量調整弁104又は113からブラインの一部が熱交換器39に供給され、外気oとの熱交換により加熱又は冷却されてブライン循環ライン100又は110に戻ることにより、循環ライン100又は110を流れるブラインの温度が調節され、それによって乾燥用空気の温度が設定値に調節される。なおブラインには、ポリプロピレングリコールや水を使用し、これらに防錆剤を混入するとよい。
【0074】
かかる構成の第2実施例によれば、分岐ライン102及び112に流れるブライン流量を調整することによって、除湿器26での吸熱量及び加熱器23での放熱量を正確に設定することができるため、乾燥室1に戻す乾燥用空気の温度及び相対湿度を正確に制御することができる点、その他前述の第1実施例と同様の作用効果を得ることができる。
さらに本実施例では、さらにヒートポンプ装置80と除湿器26又は加熱器23との間にブライン循環ライン100又は110を介設することにより、除湿器26及び加熱器23にCO2冷媒が導入されていないので、除湿器26及び加熱器23の内部で熱交換部に破損が生じたとしても、CO2冷媒が空気循環流路11や乾燥室1に放出して酸欠等の問題が発生することがないという長所がある。
【実施例3】
【0075】
次に本発明の第2実施例を図8〜11により説明する。本実施例は、外気oを乾燥システムに導入し加熱して乾燥用空気をつくり、それを乾燥室61に供給するとともに、乾燥室61で乾燥に供した空気を外部へ排気する非循環方式の実施例である。
図8において、CO冷媒が循環する循環流路51に、圧縮機52、温風発生器(ガスクーラ)53、膨張弁54及び除湿器(蒸発器)55が介設されてなるヒートポンプ装置50が設けられている。
【0076】
衣類等を乾燥するための乾燥室61には温風発生器(ガスクーラ)53で加熱された温風(乾燥用空気)hが供給され、乾燥室61内で乾燥に供された乾燥後空気dは、除湿器55で冷却され除湿された後の外気oと予熱器62で熱交換される。
また温風発生器53に上流側には、流量調整弁75を介して外気との熱交換器78に至る分岐流路71が設けられ、分岐流路71に流入した冷媒の一部は熱交換器78で外気と熱交換した後、戻り流路73を経て温風発生器53の下流側で冷媒循環流路51に合流する。
【0077】
また膨張弁54の上流側で冷媒循環流路51から分岐する分岐流路72が設けられ、分岐流路72に流入した冷媒の一部は、流量調整弁77を経て熱交換器78に至り、熱交換器78で外気と熱交換した後、戻り管路74を経て圧縮機52上流側の冷媒循環流路51に合流する構成となっている。このようなヒートポンプ装置の構成は、前記第1実施例と同一である。
【0078】
かかる乾燥システムにおいて、循環流路51を循環するCO冷媒は、圧縮機52で圧縮されて高温高圧ガスとなった後、温風発生器(ガスクーラ)53において冷却され、その後膨張弁54を通過して低温低圧液となり、除湿器(蒸発器)55において、除湿器55に導入される外気oから蒸発潜熱を奪って蒸発する。
【0079】
一方外気oは、除湿器55で蒸発潜熱を奪われて冷却され、露点温度以下となって除湿され、その後予熱器62に導入される。予熱器62で外気oは乾燥室61で被乾燥物の乾燥に供された後の空気dと熱交換により、空気dの残熱で予熱され、その後温風発生器53でCO冷媒の保有熱で加熱されて、乾燥室61に乾燥用空気hとして供給される。なお予熱器62で熱交換後の乾燥後空気dは、排気eとして外部へ排気される。
【0080】
図9は、温風発生器53の拡大斜視図である。図9において、冷媒配管51は、温風発生器53の一方の側壁53a近傍で複数の支管に分割され、該支管51aは温風発生器53の内部で互いに平行に複数段(例えば20段)に配置されている。温風発生器53の内部では、支管51aを流れるCO冷媒が予熱後の外気oと対向流をなすように配置されている。
【0081】
即ち本実施例では、支管51aは、冷媒配管51から上下に20段に分岐した後、温風発生器53の内部で互いに平行に配置され、側壁53aの対面側の側壁53bで矢印f側に曲折されて折り返し、その後側面53aに至って同じように矢印f側に曲折されて折り返すように配設されている。温風発生器53の前面53cに至るまで矢印f方向に曲折され、温風発生器53の外部に出て再び冷媒配管51に合流する。このようにして支管51aは、温風発生器53の内部で矢印f方向に20列に渡って蛇行配置される。
【0082】
そのため冷媒の流れは、温風hの流れ方向gに対してその対向流となるf方向に向かう。温風発生器53の外部で冷媒配管51に合流したCO冷媒は、その後膨張弁54に向って流れる。
図10は、温風発生器53におけるCO熱媒r及び外気oの温度曲線を示し、図11は、本実施例のヒートポンプ装置のモリエル線図を示す。なお図11中、kは臨界点、mは飽和液線、jは飽和蒸気線、sは飽和蒸気領域を示す。
【0083】
本実施例の場合、図11の冷却工程Bにおいて、CO冷媒rは、超臨界状態をなしており、105℃で温風発生器53に流入し、外気oと熱交換して、温風発生器53の出口で39℃となる。一方外気oは25℃で温風発生器53に流入し、温風発生器53の出口で80℃に昇温される。このときの外気oの流量は、2102m/hであり、熱交換量は37kwとなる。
CO冷媒rは、蒸発工程Dにおいて、飽和蒸気領域sのときは、温度10.0℃を維持し、過熱領域で15.0℃となる。
【0084】
このように第3実施例によれば、本乾燥システムに導入される外気oがまず除湿器(蒸発器)55で除湿されるため、温風発生器53には乾燥した空気を供給することができる。また除湿器55で除湿された外気oは、温風発生器53に導入される前に予熱器62で乾燥に供された後の空気dと熱交換され、同空気dの残熱で予熱されるため、温風発生器53に比較的高温の乾燥用空気を送り込むことができ、除湿器55での除湿処理工程と組み合わされることにより、乾燥システム全体の熱効率を大幅に向上させることができる。
【0085】
また第3実施例によれば、CO冷媒を使用しているために、超臨界状態での運転が容易であり、そのため高温度の取り出しが可能となり、超臨界状態では、冷媒の分配の偏りが生じ難いことを利用して、温風発生器53の内部において、CO冷媒を超臨界状態として、CO冷媒配管を多数段に分岐させ、CO冷媒を均一流のままこれら分岐管に分配し、また外気oと対向流となるように配置するとともに、多数回曲折蛇行させて外気oとの接触面積を増加させている。
従ってCO冷媒と外気oとの熱伝達率を飛躍的に増大することができ、これによって乾燥システム全体の熱効率を飛躍的に向上することができる。
【実施例4】
【0086】
次に本発明の第4実施例を図12に基づいて説明する。図12において、ヒートポンプ装置50の構成は図8に示す第3実施例と同一であり、CO冷媒が冷媒循環流路51を、圧縮機52→温風発生器(ガスクーラ)53→膨張弁54→排熱回収蒸発器55の順に循環してヒートポンプサイクルを構成し、かつ温風発生器53で加熱昇温された温風(乾燥用空気)hが乾燥室61に供給されて被乾燥物を乾燥し、乾燥後の空気dが予熱器62に導入されて、温風発生器53に導入される前工程で外気oを予熱する構成は、前記第2実施例と同一である。
【0087】
本第4実施例が第3実施例と異なる点は、乾燥後空気dが予熱器62に導入されて外気oと熱交換して外気oを予熱した後、排熱回収蒸発器55に導入され、蒸発器55でCO冷媒が蒸発するに要する蒸発潜熱の熱源を供給した後、系外に排気eとして排気される点である。
【0088】
従って第4実施例によれば、乾燥後空気dの保有する熱源をCO冷媒の蒸発熱源として有効に利用することができ、これによって本乾燥システム全体の熱効率をさらに向上され、高効率の空気加熱運転を達成できるという長所がある。
また第4実施例においては、温風発生器53は、前記第3実施例の図9に図示された温風発生器53の構造と同様の構成を有しているので、温風発生器53の内部で超臨界状態を呈することによるCO冷媒の配管内での分散効果、及び温風発生器53内でのCO冷媒配管の分岐と蛇行、及びCO冷媒の乾燥用空気に対する対向流の形成によって得られる熱伝達効果の向上及び乾燥システム全体における熱効率の向上に関し、第3実施例と同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、CO冷媒を超臨界状態で運転するヒートポンプ装置を適用することにより、高温の乾燥用空気を乾燥室に供給できるとともに、乾燥用空気の温度を精度良く制御することができるため、被乾燥物として、特に大きさ、重量が異なる種々雑多な衣類を乾燥する場合おいても、乾燥用空気を正確に設定温度に制御できるので、これら衣類を大量に短時間で効率良く乾燥処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の乾燥システムの第1実施例の全体構成図である。
【図2】前記第1実施例の制御系を示すブロック線図である。
【図3】乾燥用空気循環方式でかつ連続搬送乾燥方式の乾燥システムに本発明を適用した模式図である。
【図4】別な変形例(外気導入方式でかつ連続搬送乾燥方式)に本発明を適用した模式図である。
【図5】さらに別な変形例(乾燥用空気循環方式でかつバッチ乾燥方式)に本発明を適用した模式図である。
【図6】さらに別な変形例(外気導入方式でかつバッチ乾燥方式)に本発明を適用した模式図である。
【図7】本発明の第2実施例による乾燥システムの全体構成図である。
【図8】本発明の第3実施例による乾燥システムの全体構成図である。
【図9】前記第3実施例の一部を構成する温風発生器(ガスクーラ)の斜視図である。
【図10】図8の温風発生器53におけるCO熱媒及び乾燥用空気の温度曲線を示す線図である。
【図11】前記第3実施例におけるヒートポンプ装置のモリエル線図である。
【図12】本発明の第4実施例の全体構成図である。
【符号の説明】
【0091】
1 乾燥室
1c 空気取り入れ口
1d 空気供給口
2 コンベア(搬送装置)
11 空気循環流路
13,14 送風ファン
15 温度センサ
20,80 ヒートポンプ装置
21,51 冷媒循環流路
22,52 圧縮機
23,53 加熱器(ガスクーラ)
25,54 膨張弁
26,55 除湿器(蒸発器)
31,32 分岐流路
33,34 戻り流路
35,36,104,113 流量調整弁
38 膨張弁
39 熱交換器
41 コントローラ
62 予熱器
82 ガスクーラ
83 膨張機
84 ブラインクーラ
c 被乾燥物
o 外気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物を乾燥するための乾燥室にCOを冷媒としたヒートポンプ装置を構成するガスクーラでCO冷媒を超臨界状態で運転させることにより加熱した乾燥用空気を導入するようにした乾燥方法において、
前記ガスクーラに流入するCO冷媒の一部を該ガスクーラの上流側で必要放熱量に相当する流量だけ分岐させ、
分岐したCO冷媒を外気と熱交換させて外気に放熱し、
その後分岐したCO冷媒を前記ガスクーラの下流側冷媒流路に戻すことにより、
前記乾燥室に供給する乾燥用空気を設定温度に保持するようにしたことを特徴とする乾燥方法。
【請求項2】
複数の被乾燥物を搬送装置で移動させながら前記乾燥室内への搬入、該乾燥室内での乾燥及び該乾燥室からの搬出を行なうとともに、
被乾燥物の前記搬入部付近から前記乾燥室内の低温高湿の空気を取り出し、前記ガスクーラで加熱した乾燥用空気を前記搬出部付近から前記乾燥室内に供給するようにして被乾燥物の搬送方向と逆方向に乾燥用空気流を形成することを特徴とする請求項1記載の乾燥方法。
【請求項3】
被乾燥物を前記乾燥室に収容した後前記乾燥室を閉鎖して被乾燥物を乾燥し、その後前記乾燥室から被乾燥物を搬出するとともに、
乾燥時間の経過とともにCO冷媒の分岐流量を増大させることにより、乾燥用空気の温度を低下させることを特徴とする請求項1記載の乾燥方法。
【請求項4】
前記乾燥室から導出した空気を前記ヒートポンプ装置を構成する蒸発器で冷却し除湿し、
その後該除湿空気を前記ガスクーラの温熱で加熱した後前記乾燥室に戻す空気循環流を形成することを特徴とする請求項1記載の乾燥方法。
【請求項5】
外気を前記ガスクーラの温熱で加熱した後前記乾燥室に供給するとともに、
前記乾燥室から導出した室内空気を前記ヒートポンプ装置を構成する蒸発器で冷却し除湿した後外部へ排出することを特徴とする請求項1記載の乾燥方法。
【請求項6】
被乾燥物の搬入位置付近の前記乾燥室から低温高湿度の室内空気の一部を導出し、該導出空気を前記ガスクーラの温熱で加熱した後、被乾燥物の搬出位置付近の前記乾燥室内の高温低湿度空気中に戻すようにし、
前記乾燥室内で搬入位置から搬出位置に向かって低温高湿から高温低湿に徐々に移行する雰囲気を形成することを特徴とする請求項4記載の乾燥方法。
【請求項7】
前記蒸発器に流入するCO冷媒の一部を該蒸発器の上流側で必要吸熱量に相当する流量だけ分岐し,
その後膨張機構を通して低圧とした後、外気と熱交換して外気から吸熱し、その後前記蒸発器の下流側冷媒流路に戻すようにし、
前記放熱操作及び吸熱操作を併用して前記ヒートポンプ装置の熱バランスを調整することを特徴とする請求項4記載の乾燥方法。
【請求項8】
外気を前記導出空気と熱交換して予熱した後、前記ガスクーラの温熱で加熱し、外気と熱交換した前記導出空気を前記蒸発器の冷熱で冷却し除湿した後外部へ排出することを特徴とする請求項5記載の乾燥方法。
【請求項9】
外気を前記蒸発器の冷熱で冷却して除湿した後、前記乾燥室から導出した空気と熱交換して予熱し、
その後該導出空気を外部へ排気するとともに、予熱した前記外気を前記ガスクーラの温熱で加熱した後前記乾燥室内に導入することを特徴とする請求項5記載の乾燥方法。
【請求項10】
被乾燥物を乾燥する乾燥室と、
COを冷媒とし該CO冷媒が圧縮機、ガスクーラ、膨張機構及び蒸発器の順に循環するヒートポンプ装置とを備え、
前記乾燥室に導入する乾燥用空気をCO冷媒を超臨界状態で運転する前記ガスクーラで加熱するように構成した衣類の乾燥システムにおいて、
CO冷媒と外気とを熱交換する熱交換器と、
流量調整弁が介設され前記ガスクーラに流入するCO冷媒の一部を該ガスクーラの上流側で分岐して前記熱交換器に導く分岐流路と、
前記熱交換器で熱交換されたCO冷媒を前記ガスクーラの下流側冷媒流路に戻す戻り流路とを備え、
前記分岐流路に流れるCO冷媒量を調節することにより、前記乾燥室に供給する乾燥用空気の温度を設定温度に保持するようにしたことを特徴とする乾燥システム。
【請求項11】
前記乾燥室から室内空気の一部を導出し該導出空気を前記乾燥室内に戻す循環流路と、
前記ヒートポンプ装置を構成して該循環流路に介設され前記導出空気から吸熱して除湿する蒸発器と、
前記循環流路に該蒸発器より下流側に介設された前記ガスクーラと、
第2の流量調整弁が介設され前記蒸発器に流入するCO冷媒の一部を該蒸発器の上流側で前記熱交換器に導く第2の分岐流路と、
前記第2の分岐流路において前記熱交換器の上流側に介設された膨張機構と、
前記熱交換器で熱交換されたCO冷媒を前記蒸発器の下流側冷媒流路に戻す第2の戻り流路とを備え、
前記分岐流路又は前記第2の分岐流路に流れるCO冷媒量を調節することにより、前記乾燥室に供給する乾燥用空気の温度を設定温度に保持するように構成したことを特徴とする請求項10記載の乾燥システム。
【請求項12】
前記ガスクーラの温熱で加熱された乾燥用空気の温度を検知するセンサと、
該センサの温度検出値に基づいて前記流量調整弁又は前記第2の流量調整弁の開度を調整するコントローラとを備えたことを特徴とする請求項10又は11のいずれか記載の乾燥システム。
【請求項13】
前記循環流路が、被乾燥物の搬入位置付近の前記乾燥室から低温高湿度の室内空気の一部を導出し該導出空気を被乾燥物の搬出位置付近の前記乾燥室内の高温低湿度空気中に戻す循環流路であって、
前記乾燥室内で搬入位置から搬出位置に向かって低温高湿から高温低湿に徐々に移行する雰囲気を形成するように構成したことを特徴とする請求項11記載の乾燥システム。
【請求項14】
前記ガスクーラの内部において、超臨界状態のCO冷媒と乾燥用空気とが互いに対向流となるように両者の流路を形成するとともに、両者の流路を交互に分散配置したことを特徴とする請求項10記載の乾燥システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−303756(P2007−303756A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133506(P2006−133506)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】