乾燥機の乾燥制御方法および乾燥機
【課題】収穫時期が雨天や晴天の場合など、農作物等の収穫状態に合わせた最適な乾燥操作を実現し、品質の良い乾燥物を生産することのできる、乾燥機の乾燥制御方法を提供する。
【解決手段】熱風発生装置2および乾燥室3を併設し、熱風発生装置から乾燥室の下部に送り込まれた熱風を乾燥室内で吹き上げて、乾燥室内に並べられた材料を乾燥させる乾燥機の乾燥制御方法であって、
乾燥プログラムに従って乾燥初期、乾燥中期、乾燥後期の各工程毎に乾燥室内の乾燥温度を段階的に引き上げ操作するにあたり、乾燥後期の終了工程を除き、残りの各工程の設定時間が経過する前に、各工程における乾燥室内の相対湿度の検出値が、各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合には、その時点で乾燥室内の乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行し、乾燥後期の終了工程では、設定時間の経過により乾燥を終了させるように制御されている。
【解決手段】熱風発生装置2および乾燥室3を併設し、熱風発生装置から乾燥室の下部に送り込まれた熱風を乾燥室内で吹き上げて、乾燥室内に並べられた材料を乾燥させる乾燥機の乾燥制御方法であって、
乾燥プログラムに従って乾燥初期、乾燥中期、乾燥後期の各工程毎に乾燥室内の乾燥温度を段階的に引き上げ操作するにあたり、乾燥後期の終了工程を除き、残りの各工程の設定時間が経過する前に、各工程における乾燥室内の相対湿度の検出値が、各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合には、その時点で乾燥室内の乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行し、乾燥後期の終了工程では、設定時間の経過により乾燥を終了させるように制御されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物や海産物等の食品、加工品等の乾燥に用いる乾燥機の乾燥制御方法および乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、椎茸・野菜類の農産物や小魚等の海産物を乾燥させる食品乾燥機が知られている。一般的な食品乾燥機は、乾燥室内に多段の棚が複数列設けられており、乾燥対象の農産物等を適宜並べた乾燥用トレイ(一般に「エビラ」と称される)を乾燥室まで移動して各列の棚にそれぞれ吊り込むようになっている。そして、乾燥室に併設された熱風発生装置から送風機により乾燥室の下部に熱風が送りこまれ、下段のトレイから上段のトレイに吹き上げられた熱風は、トレイ上の材料を乾燥させながら、排気口を通して外部に排出されまたは循環口を通して熱風発生装置内に戻されるようになっている。熱風発生装置に設けられた吸気口からは新鮮な外気が送風機により熱風発生装置内に取り入れられるようになっている。
【0003】
かかる乾燥機としては、椎茸乾燥向けやトレイを多段収納できる複数の台車を用いたもの等が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。そして、上記乾燥機の乾燥作業においては、乾燥室内における乾燥物の乾燥状態を目視で確認しながら、生産者が手動でバーナーをオン・オフ操作して乾燥室内の温度を段階的に引き上げ操作したり、手動で給排気ダンパを開閉操作して乾燥室内の湿度を引下げ操作する他、タイマーにより乾燥室内の温度の引き上げ操作を自動で行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−032291号公報
【特許文献2】実公昭63−002869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の乾燥操作では、以下のような問題があった。
(1)乾燥前の収穫時期や状態によっては、乾燥対象の材料の含水量が大きく変化するため、生産者の手動によると、特に乾燥初期の操作に支障を来たし、乾燥操作に失敗する場合が多かった。例えば、生椎茸の場合、収穫時期が雨天の場合は含水量が非常に多いものとなり(これを「雨子」と呼んでいる。)、乾燥初期の操作において、晴天時に収穫された生椎茸(これを「日和子」と呼んでいる。)に合せて温度操作を行なうと、椎茸が変質してしまい(脱水不足による褐変状態となる)、著しく商品価値が低下するという問題があった。すなわち、作業者の操作判断によって椎茸等の乾物の品質が大きく左右されるという問題があった。
【0006】
(2)手動による操作では、バーナーのオン・オフによる乾燥室内の温度操作と吸気・排気ダンパの開閉による乾燥室内の湿度操作が、いずれも生産者の乾燥経験や勘に依存することが多く、乾燥物の乾燥状態を目視等で観察しながらその状況に応じてそれぞれの手動による操作が主として行なわれることから、安定した乾燥操作ができなかった。
(3)乾燥室内では、構造上、熱風の吹き出し側が先行して乾燥されるため、排気側との乾燥に差が発生し、この差を改善するため、従来では、乾燥トレイを上下入れ換えして乾燥調整し、生産者の負担となっていた。
【0007】
(4)水分の抜けにくい大柄の椎茸では、軸部に水分が残り、乾燥終了後に、小型の仕上げ乾燥機(エビラ15枚程度の乾燥機)に移して再度乾燥処理しており、作業が煩雑で、生産者の負担となっていた。
(5)一方、タイマーのプログラム制御による乾燥操作では、タイマーによる工程時間の経過を基準として乾燥操作が行われるため、乾燥材料における実際の乾燥進行とは、ずれが生じる場合があった。
(6)通常の1回の乾燥運転当りの油使用量は、30枚差し乾燥機で約70〜90リットル、60枚差し乾燥機で約100〜120リットルであり、その約2/3を乾燥前半で消費している。ところが乾燥室内に供給された熱風は、乾燥初期では100%外部に排出され、多くの熱量が排出口から機外へ捨てられている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、収穫時期が雨天や晴天の場合など、農作物等の収穫状態に合わせた最適な乾燥操作を実現し、品質の良い乾燥物を生産することのできる、乾燥機の乾燥制御方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、熱効率に優れ、省エネルギーに優れる乾燥機の乾燥制御方法および乾燥機を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、従来作業者の負担が大きかった乾燥作業において、作業負担を軽減できる乾燥機の乾燥制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の乾燥機の乾燥制御方法は、熱風発生装置および乾燥室を併設し、熱風発生装置から送風機により乾燥室の下部に送り込まれた熱風を乾燥室内で吹き上げて、乾燥室内に並べられた材料を乾燥させる乾燥機の乾燥制御方法であって、
乾燥プログラムに従って乾燥初期、乾燥中期、乾燥後期の各工程毎に乾燥室内の乾燥温度を段階的に引き上げ操作するにあたり、乾燥後期の終了工程を除き、残りの各工程の設定時間が経過する前に、各工程における乾燥室内の相対湿度の検出値が、各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合には、その時点で乾燥室内の乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行し、乾燥後期の終了工程では、設定時間の経過により乾燥を終了させるように制御されている。
【0012】
乾燥プログラムは、乾燥初期、乾燥中期、乾燥後期に至る各工程毎に、乾燥室内の乾燥温度、相対湿度、工程時間が予め設定され、タイマーで工程時間が計測されるともに、乾燥室内の温度・相対湿度が検出され、各工程時間の経過により、乾燥室内の温度が段階的に引き上げ操作される。このとき、乾燥後期の乾燥終了工程を除き、残りの各工程の設定時間が経過する前に、各工程における乾燥室内の相対湿度の検出値が、各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に早く達した場合には、工程時間の経過を待つことなく、乾燥室内の乾燥温度が引き上げ操作され、次工程に移行するように制御される。これにより、乾燥材料の乾燥進行に合った適切な温度・湿度管理が可能となり、収穫時期が雨天の場合や晴天の場合など、農産物等の収穫状況に合わせた最適な乾燥操作が可能となり、常に品質の良い乾燥物が得られる。
【0013】
工程時間の経過を待たずに次工程に移行するので、乾燥時間の短縮につながり、重油代その他の乾燥コストの低減を図ることができる。なお、乾燥室内の乾燥温度の引き上げ操作は、例えばバーナーのオン・オフ制御により行われる。
【0014】
乾燥室内の相対湿度の検出値が設定値に達することなく工程時間が経過した場合、工程時間の経過により、乾燥室内の乾燥温度が引き上げ操作され、次工程に移行する。すなわち、本発明における乾燥プログラムは、乾燥後期の乾燥終了工程を除き、残りの各工程における乾燥室内の相対湿度の検出値が、各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合あるいは工程時間が経過した場合のいずれかの条件が早く満たされた時点で次工程へ移行する制御が行なわれる。なお、工程時間(=各工程における乾燥運転時間)は、乾燥材料の種類、収穫時期や状況に合わせ、個別に、しかも乾燥不良が起きないように、余裕を持って設定される。
【0015】
そして、乾燥後期の乾燥終了工程では、設定時間の経過により乾燥を終了させるように制御される。乾燥室内の相対湿度の検出値が、同終了工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合でも早期に乾燥を終了させないのは、乾燥終了工程(最終工程)の平準化および防虫のためである。
【0016】
本発明に係る請求項2記載の乾燥機の乾燥制御方法は、各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値が、乾燥初期から乾燥後期に至る乾燥材料の減水率変化の理想曲線に基づいて決定されることを特徴とする。ここで乾燥初期から乾燥後期に至る乾燥材料の減水率変化の理想曲線は、乾燥材料の種類・乾燥前の含水率の多寡(雨天時の収穫、晴天時の収穫、その中間)に応じて、複数用意される。
【0017】
各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値が、乾燥初期から乾燥後期に至る乾燥材料の減水率変化の理想曲線に基づいて決定されることにより、乾燥材料の種類・乾燥前の含水率の多寡(雨天時の収穫や晴天時の収穫、その中間)に合わせた最適な温度・湿度管理が実現され、適切な乾燥操作を行なうことができる。
【0018】
本発明に係る請求項3記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥初期の開始工程が、初期設定時間が経過するまでは、乾燥室内の相対湿度の検出値が、同開始工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合でも、乾燥室内の乾燥温度を引き上げ操作せずかつ次工程に移行させないように制御されていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る請求項4記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥中期と乾燥後期の工程間に、熱風発生装置から乾燥室の下部に送り込まれた熱風を全部循環させる養生工程を組み入れたことを特徴とする。
【0020】
乾燥中期に至ると、乾燥室内では、構造上、熱風の吹き出し側に位置する材料が先行して乾燥され、排気側に位置する材料との乾燥状態に差が生じる。このため、従来では、乾燥トレイの上下入れ換えなどの乾燥調整操作が必要とされていた。これに対し、乾燥中期と乾燥後期の工程間に、熱風発生装置から乾燥室の下部に送り込まれた熱風を全部循環させる養生工程を組み入れることにより、熱風の吹き出し側(乾燥室下部)に位置する材料の含水率(乾燥率)と、排気側(乾燥室上部)に位置する材料の含水率(乾燥率)を互いに平準化することができる。これによって、従来のような乾燥トレイの上下入れ換えによる乾燥調整操作が必要なくなる。
【0021】
本発明に係る請求項5記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥後期の乾燥終了工程後に、乾燥室内の乾燥材料を一定時間放置する再乾燥待機工程と、同乾燥室内で再び乾燥させる再乾燥工程とを追加したことを特徴とする。
【0022】
乾燥後期に至ると、乾燥材料の中心部から表面部への水分移行がスムーズに行なわれなくなり、乾燥効率が悪くなる傾向となる。特に水分の抜けにくい大柄の椎茸では、傘部の脱水が先行し、軸部に水分が残り易い。
【0023】
そこで、乾燥材料の大半の乾燥が終了した時点で乾燥作業を一旦終了し(乾燥終了工程の完了)、その後、乾燥室内の乾燥材料を一定時間放置し、その間に乾燥材料内に残る水分を表面に拡散させて、水分の不均衡を平準化させる。そして、再乾燥工程に移行して(例えば乾燥室内の相対湿度が設定値に達した時点で再乾燥工程に移行して)、同乾燥室内で再び材料を乾燥させることにより、従来と対比すると短時間で乾燥が終了する。また、従来のように小型の仕上げ乾燥機に移しての再度の乾燥処理を行なわずにすみ、生産者の負担も軽減される。
【0024】
本発明に係る請求項6記載の乾燥機の乾燥制御方法は、再乾燥待機工程が、送風機により乾燥室内の内気を熱風発生装置との間で全部循環させることを特徴とする。
【0025】
乾燥材料内に残る水分の表面への拡散を促進させ、水分の不均衡を効率よく平準化させることができる。
【0026】
本発明に係る請求項7記載の乾燥機の乾燥制御方法は、再乾燥待機工程が、乾燥室内の相対湿度の検出値がその設定値に達した場合に、その時点で再乾燥工程に移行されるように制御することを特徴とする。
【0027】
乾燥室内で一旦乾燥を終了させた乾燥材料が、乾燥室内の湿度によって乾燥材料の水分が乾燥室内の設定湿度を越えて戻り過ぎるのを防止し、変色等の品質悪化が乾燥材料に生じるのを防ぐことができる。
【0028】
本発明に係る請求項8記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥中期以降の各工程における乾燥室内の風量を段階的に引き下げ操作することを特徴とする。
【0029】
本発明に係る請求項9記載の乾燥機の乾燥制御方法は、風量の引き下げ操作にあたり、送風機の回転数をインバーター制御することを特徴とする。
【0030】
本発明に係る請求項10記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥プログラムとして、設定された工程時間の経過よりも設定された相対湿度に検出値が早く到達した場合に乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行させる相対湿度優先コースと、設定された工程時間の経過により乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行させる工程時間優先コースが選択可能とされていることを特徴とする。
【0031】
本発明に係る請求項11記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥プログラムとして、乾燥材料の含水率の多寡に対応する複数のモードが選択可能とされていることを特徴とする。
【0032】
本発明に係る請求項12記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥初期の開始工程を除く2番目の工程以降の任意の工程から乾燥運転を開始する工程ジャンプ機能を備えたことを特徴とする。
【0033】
乾燥材料の状態を見て、本乾燥から開始したい場合や、仕上げ乾燥を再度行ないたい場合には、使い勝手を良くすることができる。
【0034】
本発明に係る請求項13記載の乾燥機は、請求項1ないし請求項10記載の乾燥制御方法によって制御される乾燥プログラムが制御装置に組み込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明に係る乾燥機の乾燥制御方法によると、乾燥材料の乾燥進行に合った適切な温度・湿度管理を可能とすると共に、収穫時期が雨天の場合や晴天の場合など、農産物等の収穫状況に合わせた最適な乾燥操作を実現し、常に品質の良い乾燥物を生産できるという優れた効果を奏する。
【0036】
また、乾燥時間の短縮によって、重油代その他の乾燥コストの低減を図れ、さらには、乾燥作業の負担軽減が図られるという優れた効果を奏することができる。
【0037】
また、本発明に係る乾燥機によると、農産物等の収穫状況に合せた最適な乾燥制御を実現することができる他、熱効率の高い乾燥制御、省エネルギー効果の高い乾燥制御を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施形態を示すもので、本発明に係る乾燥機を示す正面図、
【図2】図1に示す乾燥機の断面図、
【図3】図1に示す乾燥機の制御装置の操作パネルを示す正面図、
【図4】図3に示す操作パネルの裏面を示す図、
【図5】制御装置の構成を示す概要図
【図6】図1に示す乾燥機の乾燥プログラムと同プログラムに従う乾燥手順を示すグラフ図、
【図7】複数の水分量モード毎の減水率曲線を示すグラフ図、
【図8】第2の実施形態を示すもので、乾燥プログラムと同プログラムに従う乾燥手順を示すグラフ図である。
【図9】第3の実施形態を示すもので、本発明に係る乾燥機を示す断面図、
【図10】図9の乾燥機に使用されるプレート式熱交換器の斜視図、
【図11】第4の実施形態を示すもので、本発明に係る乾燥機を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明を実施するための第1の実施形態を図1ないし図7を参照して説明する。図1において、1は食品乾燥機である。
【0040】
まず、食品乾燥機1の構造を説明する。図1および図2に示すように、食品乾燥機(以下、「乾燥機」という)1には、熱風発生装置2および乾燥室3が併設されている。
【0041】
熱風発生装置2は、ケーシング4の下部ユニットにバーナー5を備える火炉6と、火炉6に連絡する熱交換器7が配置され、上部ユニットに送風機8が配置されている。外部には制御装置9と、熱交換器7に連通する煙突10が配置されている。かかる熱風発生装置2は、送風機8によって上部ユニットの吸気口11から内部に取り入れた作業室内の新鮮な空気を、バーナー5の火炎によって加熱された火炉6とこれに続く熱交換器7によって加熱し、乾燥した熱風を下部ユニットの熱風吹出口12から側方の乾燥室3の下部に送り込むようになっている。吸気口11には空気の吸気量を調整する吸気ダンパ13が取り付けられている。吸気ダンパ13は、制御装置9の制御部50(図5参照)からの制御信号によって開度が制御される。火炉6の外表面には、熱交換効率を高めるために、赤外線発生塗料が塗布されている。赤外線発生塗料には、シラスバルーン塗料等がある。
【0042】
乾燥室3は、箱型のケーシング14の内部に2列×多数段(例えば15段)の棚15を備え、2列×多数段の棚15に多数枚の乾燥用トレイ16を収容できるようになっている。乾燥室3の入口17には密閉扉18が設けられている。ケーシング14の下部には、底部内面との間に通風空間19を残して、多数の孔20aを形成する整流板20が設けられている。通風空間19は送り込まれた熱風を均一に混合する予圧室としての役目をし、整流板20はケーシング14の下部に送り込まれた乾燥熱風を整流し、乾燥室3内部に均一な流れとして吹き上げる役目をする。
【0043】
ケーシング14の上部天井には排気ダクト21を備える排気口22が開設されている。排気ダクト21内には風圧式の排気ダンパ23が設けられている。排気ダンパ23は吸気ダンパ13の動きに連動して開閉される。排気ダクト21には、長さ調整可能な延長ダクト24がスライド可能に設けられている。
【0044】
排気ダンパ23は、図2に示すように、排気ダクト21内において上側の軸23a回りに回動可能に支持されており、吸気ダンパ13の開度に連動して風圧力により回動される。すなわち、吸気ダンパ13の開度が100%のときは、排気風圧力により排気ダンパ23が開くように回動され、乾燥に使用された空気が排気ダクト21を介して全て室外へ排気される。吸気ダンパ13の開度が0%のときは、排気風圧が無くなり、排気ダンパ23が閉じるように回動され、排気ダクト21内が全閉され、乾燥に使用された空気が乾燥室3と熱風発生装置2の間で全部循環される。なお、排気ダクト21の全閉時には、下側のストッパー23bにより排気ダンパ23の閉状態が保持され、外気の流入および湿気の戻りが防止される。
【0045】
延長ダクト24は、乾燥機1が設置された作業室の壁Wを貫通し、室外に延びている。これにより、乾燥に用いられた空気は、排気ダクト21から延長ダクト24を介して室外へ誘導されて排気される。これにより、排気された湿潤空気が吸気口11から熱風発生装置2内へ戻ることが防止され、常に新鮮な空気が吸気口11から熱風発生装置2内へ導入される。これにより、排気湿度に影響されて乾燥品質が低下することが防止される。また、熱風発生装置2側の側壁上部には、乾燥室3内を吹き上げられた熱風を熱風発生装置2内に戻すための熱風循環口25が開設されている。
【0046】
熱風発生装置2の熱風吹出口12の近くには、乾燥室3内の乾燥温度を測定する温度センサ26が設置されている。温度センサ26には例えば乾球温度計が用いられる。乾燥室3の密閉扉18の内面で、乾燥用トレイ16の下から3段目の上側には、乾燥室3内の相対湿度を検出する相対湿度センサ27が設置されている。なお、乾球温度計の代わりに制御性の良い白金(Pt)センサを用いてよい。また、相対湿度センサ27として静電容量型湿度素子を用いた湿度センサを用いることができ、測定した相対湿度をアナログ電圧に変換して、表示部に表示させることができる。相対温度センサ27は熱風循環口25付近に配置してよい。
【0047】
乾燥室3の入口17には、密閉扉18を開いた状態およびその後に閉じた状態をそれぞれ検出するリミットスイッチ28が設けられている。また、制御装置9の内部には、制御部50からの制御信号により、図2に示す送風機8の回転数を制御するインバーター29(図3参照)が設けられている。インバーター29の制御により、乾燥中期以降の各工程で段階的に引き下げる風量が安定して得られ、安定した乾燥操作に寄与する。
【0048】
なお、乾燥室3の壁面パネルには、断熱性に優れ熱伝導率の低い硬質ウレタン注入発泡が施工されている。これにより、乾燥室3内からの室外への熱移動が最小限に抑えられ、乾燥に要する熱エネルギー消費が抑制される。
【0049】
図3は、制御装置9の操作パネル30を示している。本実施形態では、乾燥プログラムとして、複数の乾燥コースを選択し、また、生椎茸の収穫状況に対応して複数の水分量モードを選択できるようになっている。
【0050】
制御装置9の操作パネル30上には、乾燥コース設定/入力部31、乾燥温度・相対湿度表示部32、時計表示部33、乾燥工程表示部34、変更・手動設定/入力部35、自動ダンパ表示・手動設定部36、警報モニタ表示部37、運転/停止/キーロック操作部38がそれぞれ設けられている。
【0051】
乾燥コース設定/入力部31には、「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」「手動」の3つの乾燥コースが設定されている。さらに、「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」「手動」の2つの乾燥コースには、「少なめ」「やや少なめ」「やや多め」「多め」の4つの水分量モードが設定されている。作業者は釦操作により3つの乾燥コースのいずれか一を選択し、さらに前者の2つの乾燥コースに対しては、4つの水分量モードのいずれか一を選択することができる。
【0052】
「おまかせ・湿度」コースは、湿度優先のプログラムであり、乾燥初期(第1・第2工程)、乾燥中期(第3・第4工程)、養生工程(第5工程)、乾燥後期(第6・第7工程)に至る乾燥プログラムにおいて、第1工程から第6工程までは、各工程の設定時間が経過する前に、各工程における相対湿度の検出値が、各工程における相対湿度の設定値に達した場合には、その時点で乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行し、第7工程では、設定時間の経過により乾燥を終了させるように制御される。
【0053】
「おまかせ・時間」コースは、時間優先のプログラムであり、第1工程から第7工程に至るまで、各工程の設定時間の経過により、乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行するように制御される。
【0054】
「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」の各コースには、第1工程から第7工程に至る各工程の乾燥温度、相対湿度、工程時間、風量の各数値が予めマスターデータとして水分量モード毎に設定され、図5に示す制御装置9の記憶部51にそれぞれ設定入力され保存されている。乾燥プログラムの例を図6に示す。乾燥温度は、乾燥初期から乾燥後期にかけて段階的に引き上げられるように設定されている。また、相対湿度は、乾燥工程の乾燥初期から乾燥後期に至る乾燥材料の減水率変化の理想曲線(以下、「減水率曲線」という)上に沿って下げられるように設定されている。
【0055】
水分量モードは、雨天時や晴天時など、乾燥材料の収穫状況に応じて、乾燥前の材料の水分量を目視等により前述の4つのモードのいずれか一つを選択できるが、「少なめ」モードは晴天時を、「多め」モードは雨天時を、「やや少なめ」「やや多め」の各モードはそれらの中間を想定している。「おまかせ・湿度」コースの場合、図7に示すように、各モード毎に異なる減水率曲線が用意され、各モードに対応した適切な相対湿度が設定されることにより、乾燥材料の実際の水分量に対応した、より適切な温度・湿度管理が可能となり、より細やかでより適切な乾燥制御運転が可能となる。
【0056】
なお、「手動」コースは、後述する変更・手動設定/入力部35において第1工程から第7工程に至る各工程の乾燥温度、風量、吸気ダンパ開度を手動で設定することができるようになっている。
【0057】
乾燥運転途中で、乾燥室3の乾燥状態を確認するために密閉扉8を開けざるを得ない場合がある。この場合、「おまかせ・湿度」コースを選択した場合には、リミットスイッチ28からの密閉扉8の開状態の検出信号に基づき、制御部50からの制御信号により、その後の一定時間(約15分)は、次工程に移行しないように制御されるようになっている。また、密閉扉8が開状態から閉状態になった場合も、リミットスイッチ28からの検出信号に基づき、制御部50からの制御信号により、その後の一定時間(約15分)は、次工程に移行しないように制御されるようになっている。これにより、乾燥室3内の湿度状態が減水率曲線に沿うように復帰し、乾燥運転制御が安定化される。
【0058】
乾燥温度・相対湿度表示部32には、乾燥運転中の乾燥室内の乾燥温度(℃)(検出値)と、相対湿度(%)(検出値)が表示されるようになっている。これにより、乾燥運転中の乾燥室内の乾燥温度(℃)と相対湿度(%)の変化を監視することができる。
【0059】
時計表示部33には、現在の時刻が表示される他、4つのモード、すなわち「総乾燥」モードにより総乾燥時間が、「現工程残」モードにより現工程の残り時間が、「終了予定」モードにより終了予定時刻が、「総経過」モードにより乾燥運転開始から現在までの経過時間が、それぞれ表示されるようになっている。
【0060】
乾燥工程表示部34には、乾燥コース設定/入力部31によって選択されたコースおよびモードの各乾燥プログラムに従って、第1工程から第7工程に至る各工程の乾燥温度、相対湿度、工程時間が表示されるようになっている。また、第7工程が終了した後に乾燥材料を冷却運転する第8工程も表示されるようになっている。
【0061】
乾燥工程表示部34では、運転開始後消化された工程における乾燥温度、相対湿度、工程時間の各表示が、制御部からの制御信号により、消灯されるようになっている。これにより、現工程の表示を作業者が容易に認識できるようになっている。なお、乾燥工程表示部34に表示された各工程のいずれかの工程釦を押し操作することにより、後述する変更・手動設定/入力部35に該当する工程の各表示が出力され、当該変更・手動設定/入力部35において、消化された工程の各表示を把握できるようになっている。
【0062】
また、制御装置9の電源が入力された乾燥運転開始前の待機状態で、乾燥工程表示部34に表示された工程釦のうち、第2工程以降の任意の工程釦を押し操作することにより、当該工程釦からの入力信号に基づく制御部50からの制御信号により、当該任意の工程から乾燥運転が開始される工程ジャンプ機能が作動するようになっている。例えば、椎茸の状態を見て、本乾燥から開始したい場合や、仕上げ乾燥を再度行ないたい場合には、それぞれ第3工程あるいは第6工程から運転を開始することが可能である。
【0063】
変更・手動設定/入力部35では、乾燥コース設定/入力部31において選択された3つのコースのうち、「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」コースを選択した場合、各工程毎に、乾燥温度、相対湿度、工程時間、風量を、変更設定および入力することができるようになっている。なお、変更設定する工程は、乾燥工程表示部35の各工程釦の任意の工程釦を押し操作することで、特定することができる。
【0064】
また、変更・手動設定/入力部35では、乾燥コース設定/入力部31において「手動」コースを選択した場合、各工程毎に、乾燥温度、風量を、変更設定および入力することができるようになっている。なお、変更設定する工程は、乾燥工程表示部35の各工程釦の任意の工程釦を押し操作することで、特定できる。
【0065】
自動ダンパ表示・手動設定部36は、「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」の各コースが選択されている場合、各工程における吸気ダンパ13の開度が表示される。また、「手動」コースが選択されている場合、手動釦を押し操作して、閉釦と開釦をそれぞれ押し操作することにより、吸気ダンパ13の開度を全閉から全開まで任意に設定し、設定した開度を表示させることができる。
【0066】
警報モニタ表示部37では、乾燥温度、相対湿度、センサ、電源電圧、マイコンのそれぞれに異常が発生した時に表示ランプが点灯され、警報表示が出力されるようになっている。なお、「おまかせ・湿度」コースが選択された場合で、相対湿度の異常発生を示す表示ランプが点灯された場合、表示ランプからの出力信号により、制御部50からの制御信号により、現工程のダンパ開度が維持されるように制御されるようになっている。例えば、第3工程の乾燥運転中に相対湿度の異常発生を示す表示ランプが点灯した場合、運転再開する場合には、ダンパ開度70%から再始動するようになっている。
【0067】
乾燥運転中に、停電が発生しその後復電した場合には、停電時の工程から乾燥プログラムが再開されるが、その場合、一定時間(約15分間)は、停電時の工程が維持されるように制御されるようになっている。これにより、乾燥品質の低下、悪化が防止される。
【0068】
運転/停止/キーロック操作部38には、運転釦、停止釦、キーロック釦が配置されている。運転釦の押し操作により、設定された乾燥プログラムに従って乾燥運転が開始され、停止釦の押し操作により、乾燥運転が直ちに停止され、キーロック釦の押し操作により、他の釦の操作がロックされ、不用意な変更操作が防止されるようになっている。
【0069】
制御部50は、室温が−10℃〜100℃の広範囲で制御可能となっている。椎茸の生産地は山間地が多く、出荷時期は外気温度の低くなる春・秋の2シーズンとされるが、−10℃から制御可能とすることにより、外気温度が氷点下以下となる場合でも、乾燥運転を開始できるようになっている。
【0070】
操作パネル30の裏面には、図4に示すように、応用プログラム設定部39と手動操作部40が設けられている。応用プログラム設定部39では、「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」の各コースを一部又は全部変更した乾燥プログラムを、応用プログラムとして複数(図示例では「応用1」〜「応用3」の3つ)設定し、保存することができるようになっている。具体的には、図3に示す「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」の各コースが選択された場合であって、変更・手動設定/入力部35で乾燥温度、相対湿度、設定時間、風量のいずれか一又は複数のデータを変更した場合の、変更プログラムを、応用プログラムとして、「応用1」〜「応用3」の各釦を押し操作することにより、図5の記憶部51に登録し保存することができる。また、前記した「応用1」〜「応用3」の各釦の押し操作により、乾燥コース設定/入力部31が応用モード選択表示となり、表示された「応用1」〜「応用3」のいずれかの釦を押し操作することにより、対応する応用プログラムが読み出され、同プログラムに従う乾燥運転が行なわれるようになっている。
【0071】
図4に示す手動操作部40では、「手動」釦を押し操作することにより、自動プログラムから手動に切り替わり、「ダンパ開」「ダンパ閉」の各釦の押し操作によりダンパの開閉動作を、「バーナ」釦の押し操作によりバーナー5のオン・オフ動作を、それぞれ手動で行なうことができるようになっている。
【0072】
次に、上記のように構成された乾燥機1および制御装置9を用いた乾燥制御方法について、乾燥材料として生椎茸の乾燥を例にして、図6を参照しながら以下に説明する。
【0073】
制御装置9の記憶部51には、複数の乾燥コース、モードに対応して、第1工程乃至第7工程に至る各工程毎に、乾燥室内の乾燥温度(℃)、相対湿度(%)、工程時間(時間)、風量レベル(%)、吸気ダンパ開度(%)を1つの組み合わせとして、乾燥プログラムが入力、設定されている。図6に、乾燥プログラムの例を示す。
【0074】
制御装置9の電源を入れ、操作パネル30の乾燥コース設定/入力部31から、「おまかせ・湿度」コース、水分量モードを選択する。運転/停止/キーロック操作部38から「運転」釦を押圧し、乾燥運転を開始する。
【0075】
(乾燥初期)
乾燥プログラムに従い、乾燥初期(粗水切り期)段階では、吸気ダンパ開度が最大(100%)に設定され、吸気口11が全開され、熱風循環口25が全閉される。乾燥初期の第1工程(開始工程)は、乾燥温度が42℃、相対湿度が40%、工程時間が3時間、風量レベルが100%に設定されている。
【0076】
「運転」釦の押し操作により、図1のバーナー5が着火し、送風機8が駆動されると、図2に示すように、吸気口11から作業室内の空気が取り入れられ、火炉6および熱交換器7により乾燥された熱風が生成され、熱風吹出口12から乾燥室3下部に送り込まれ、整流板20を通り乾燥室3内を上に吹き上げられる。その間、トレイ16上の椎茸に熱を与えて水分を蒸発させる。吹き上げられた空気は、天井の排気口22から排気ダクト21を通り、排気ダンパ23を風圧で開かせて、作業室外へ全て排出される。その間、乾燥室3内の相対湿度検出センサ27が乾燥室3内の相対湿度を検出し、検出信号を制御装置9の制御部50へ送る。時間経過とともに、図6のグラフに示すように乾燥室3内の相対湿度は、減水率曲線に沿って低下する。
【0077】
乾燥開始後、タイマーの計測により第1工程の工程時間(3時間)に達したら、制御装置9の制御部50からの制御信号により、乾燥室3内の乾燥温度が42℃から45℃に引き上げ操作される。この場合、工程時間の経過前に、相対湿度検出センサ27による相対湿度の検出値が、減水率曲線に沿う相対湿度の設定値(40%)に早く達すると、検出信号に基づき、工程時間の経過を待つことなく、制御部50からの制御信号により、乾燥室内の乾燥温度が引き上げ操作され、第2工程に移行する。なお、乾燥室3内の相対湿度の検出値が設定値に達することなく工程時間に達した場合には、工程時間の経過を基準として、乾燥室3内の乾燥温度の引き上げ操作が行われ、第2工程に移行することになる。
【0078】
ここで、乾燥開始直後は、乾燥室内の相対湿度が図6の減水率曲線まで立ち上がるまでに時間がかかるので、工程時間の初期値(1時間)が経過するまでは、その途中で相対湿度の検出値が設定値に達しても、乾燥温度は引き上げ操作されず、かつ、第2工程へも移行されないように、制御部50からの制御信号により制御される。なお、初期時間は、乾燥材料の量の大小に応じて幅が持たされる(例えば30分から1時間30分)。
【0079】
乾燥初期の第2工程では、乾燥室3内の乾燥温度が45℃、相対湿度が28%、工程時間が3時間、風量レベルが100%、吸気ダンパ開度が100%に設定されている。タイマーの計測により第2工程の工程時間(3時間)に達したら、制御部50からの制御信号により、乾燥室3内の乾燥温度が45℃から第3工程の48℃に引き上げ操作されるが、工程時間の経過前に、相対湿度検出センサ27による相対湿度の検出値が、減水率曲線に沿う第2工程の相対湿度の設定値(28%)に早く達した場合には、検出信号に基づき、工程時間の経過を待つことなく、乾燥室内の乾燥温度が48℃に引き上げ操作され、乾燥中期の第3工程に移行する。なお、乾燥室3内の相対湿度の検出値が設定値に達することなく工程時間に達した場合には、工程時間の経過を基準として、乾燥室3内の乾燥温度が引き上げ操作され、同第3工程に移行する。
【0080】
(乾燥中期)
乾燥中期(本乾燥期)の第3工程では、乾燥室3の乾燥温度が48℃、相対湿度が20%、工程時間が4時間、風量レベルが90%、吸気ダンパ開度が70%に設定されている。吸気ダンパ13の開度は、タイマーの計測により、第2工程から第3工程への移行と同時に70%に自動的に変更されるか、相対湿度の検出により、第3工程への移行と同時に70%に自動的に変更されるようになっている。
【0081】
本工程では、タイマーの計測により工程時間(4時間)に達したら、制御部50からの制御信号により、乾燥室3内の乾燥温度が48℃から第4工程の52℃に引き上げ操作されるが、工程時間(4時間)の経過前に、相対湿度検出センサ27による相対湿度の検出値が、減水率曲線に沿う第3工程の設定値(20%)に早く達したら、検出信号に基づき、工程時間の経過を待つことなく、乾燥室内の乾燥温度が52℃に引き上げ操作され、乾燥中期の第4工程に移行する。
【0082】
第4工程では、乾燥室3の乾燥温度が52℃、相対湿度が12%、工程時間が4時間、風量レベルが80%、吸気ダンパ開度が40%に設定されている。吸気ダンパ13の開度は、タイマーの計測により、第3工程から第4工程への移行と同時に40%に自動的に変更されるか、相対湿度の検出により、第4工程への移行と同時に40%に自動的に変更されるようになっている。
【0083】
本工程では、タイマーの計測により工程時間(4時間)に達したら、制御部50からの制御信号により、乾燥室3内の乾燥温度が52℃から第5工程の57℃に引き上げ操作されるが、工程時間(4時間)の経過前に、相対湿度検出センサ27による相対湿度の検出値が、減水率曲線に沿う第4工程の相対湿度の設定値(12%)に早く達したら、検出信号に基づき、工程時間の経過を待つことなく、乾燥室内の乾燥温度が57℃に引き上げ操作され、養生工程の第5工程に移行する。
【0084】
養生工程の第5工程では、乾燥室3の乾燥温度が57℃、相対湿度が10%、工程時間が1時間、風量レベルが70%、吸気ダンパ開度が全閉(0%)に設定されている。吸気ダンパ13の開度は、タイマーの計測により、第4工程から第5工程への移行と同時に0%に自動的に変更され全閉されるか、相対湿度の検出により、第5工程への移行と同時に0%に自動的に変更され全閉されるようになっている。吸気口11が全閉されると、熱風循環口25が全開され、合わせて排気口22が排気ダンパ23により全閉される。これにより、乾燥室3内の空気が熱風発生装置2内部と乾燥室3との間で全部循環される。
【0085】
本工程では、乾燥中期以降になると、乾燥室3内では、構造上、熱風の吹き出し側の椎茸が先行して乾燥され、排気側の椎茸との間で乾燥状態に差が発生し、従来では、乾燥トレイ16の上下入れ換えなどの乾燥調整操作を行なっていたが、本工程によると、吸気ダンパ13で吸気口11を全閉して熱風循環口25を全開し、合わせて、熱風発生装置2から乾燥室3の下部に送り込まれる熱風を全部循環させることにより、熱風の吹き出し側(乾燥室3下部)に位置する椎茸と、排気側(乾燥室3上部)に位置する椎茸の、各含水量を平準化するようにしている。
【0086】
本工程では、タイマーの計測により工程時間(1時間)に達したら、制御部50からの制御信号により、乾燥後期の第6工程に移行される。また、工程時間(1時間)の経過前に、相対湿度検出センサ27による相対湿度の検出値が、減水率曲線に沿う本工程の相対湿度の設定値(10%)に早く達したら、検出信号に基づき、工程時間の経過を待つことなく、乾燥終期の第6工程に移行される。
【0087】
(乾燥後期)
乾燥後期(仕上げ乾燥期)の第6工程では、乾燥室3の乾燥温度が57℃、相対湿度が10%、工程時間が3時間、風量レベルが70%、給気ダンパ開度が10%に設定されている。吸気ダンパ13の開度は、タイマーの計測により、第5工程から第6工程への移行と同時に10%に自動的に変更されるか、相対湿度の検出により、第6工程への移行と同時に10%に自動的に変更されるようになっている。
【0088】
本工程においては、乾燥室3内のタイマーの計測により工程時間(3時間)に達したら、制御部50からの制御信号により、乾燥室3内の乾燥温度が第7工程の60℃に引き上げ操作されるが、工程時間(3時間)が経過する前に、相対湿度検出センサ27による相対湿度の検出値が、減水率曲線に沿う第6工程の相対湿度の設定値(10%)に早く達したら、検出信号に基づき、工程時間の経過を待つことなく、乾燥室内の乾燥温度を60℃に引き上げ操作され、乾燥後期の終了工程である第7工程に移行する。
【0089】
乾燥後期の乾燥終了工程である第7工程では、乾燥室3の乾燥温度が60℃、相対湿度が10%、工程時間が3時間、風量レベルが70%、給気ダンパ開度が10%に設定されている。
【0090】
本工程においては、最終工程の平準化および防虫のため、乾燥室3内のタイマーの計測により工程時間(3時間)の経過により、制御部50からの制御信号により、乾燥操作が停止され、これにより乾燥が終了される。
【0091】
本実施形態によると、乾燥後期の第7工程を除き、残りの第1から第6の各工程の設定時間の経過前に、各工程の乾燥室内の相対湿度の検出値が、椎茸の重量変化に基づく減水率曲線に沿う当該工程の相対湿度の設定値に達した時点で、次工程に移行するように制御されるから、椎茸の実際の乾燥進行に合わせた適切な温度・湿度管理が可能となると共に、乾燥時間の短縮により、重油代その他の乾燥コストの低減を図ることができる。
【0092】
また、第1工程では、工程時間の初期値(1時間)が経過するまでは、乾燥温度の引き上げ操作をせず、第2工程へも移行されないように制御したから、乾燥室内の相対湿度が図6の減水率曲線まで確実に立ち上がってから、減水率曲線に沿った乾燥運転を行なうようにすることができる。これにより、より適切な温度・湿度管理に基づく乾燥操作を行なうことができる。
【0093】
火炉6の外表面全面に遠赤外線発生塗料が塗布されているので、乾燥運転中に火炉6から発生する遠赤外線により、吸気口11から取り入れた空気との熱交換効率が向上し、バーナー5の省エネ運転が図られる。また、乾燥運転中に火炉6から発生する遠赤外線が椎茸に浸透し、かつ、共振作用により、椎茸中の水分蒸発が促進される。これにより、乾燥運転の短縮化が図られると共に、香りの良い高品質の乾燥椎茸が得られる。
【0094】
図8は、本発明の第2の実施形態を示すもので、乾燥後期の乾燥終了工程後に、乾燥プログラムのオプションとして、再乾燥待機工程(第8工程)と再乾燥工程(第9工程)を追加したものである。
【0095】
通常の乾燥プラグラムは、第1の実施形態の第1工程から第7工程で終了する。乾燥させた椎茸のうち、軸部の水分が抜け切らずに、乾燥が十分なされていないものが多数本混じる場合がある。その場合、第7工程の乾燥時間の延長で対応できる。例えば、乾燥時間を5時間延長させることができる。
【0096】
その一方で、乾燥後期に至ると、乾燥材料の中心部から表面部への水分の移行がスムーズに行なわれなくなり、乾燥効率が悪くなる傾向となる。特に水分の抜けにくい大柄の椎茸では、傘部の脱水が先行し、軸部に水分が残り易い。そこで、第2の実施形態では、乾燥物の大半の乾燥が終了した時点で乾燥を一旦終了し、その後、再乾燥待機工程(第8工程)において、乾燥室内の乾燥材料内に残る水分を表面部に拡散させて、水分の不均衡を平準化するようにする。
【0097】
再乾燥待機工程(第8工程)は、第7工程の終了後に、風量レベルが70%に設定され、給気ダンパ開度が全閉(0%)に設定され、乾燥制御が停止され、乾燥室3内で乾燥材料が3〜4時間放置される。第7工程の終了後、30分程度に1回、乾燥室3内の相対湿度をサンプリング計測し、工程時間(3〜4時間)が経過する前に、乾燥室3内の相対湿度の検出値がその設定値(60%〜70%)に達した時点で次の再乾燥工程(第9工程)に移行するように制御される。乾燥室3内の湿度によって椎茸内の水分が乾燥室3内の設定湿度を越えて戻り過ぎるのを防止するためである。
【0098】
再乾燥工程(第9工程)では、再乾燥待機工程(第8工程)において乾燥室3内の椎茸内に残る水分が表面部に拡散し、水分の平準化が進んだ後の椎茸を再度乾燥させる。再乾燥工程は、乾燥温度が60℃、相対湿度が10%、工程時間が1〜2時間、風量レベルが70%に設定される。再乾燥待機工程と再乾燥工程を組み合わせることにより、第7工程を5時間延長させて乾燥を完了していた場合に比較し、乾燥時間の延長時間が1〜2時間で済むようになった。これにより、乾燥時間、乾燥コストの大幅短縮を図れるようになった。
【0099】
また、従来のように、小型の仕上げ乾燥機に移しての再度乾燥処理を行なう必要がなく、生産者の負担が軽減されるほか、小型の仕上げ乾燥機に移す作業時間の15〜20分間程度が削減されるようになった。
【0100】
図9および図10は、本発明の第3実施形態を示すもので、乾燥室3の排気口22から排気される排気熱を回収する排熱回収器を設けたものである。なお図中、図2に示す部材と同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0101】
図9に示す乾燥機60は、乾燥室3の排気口22に取り付けられた排気ダクト21の向きが吸気口11の直上を通るように変更され、排気ダクト21の途中に吸気口11の直上に位置する排熱回収器61が設けられている。この排熱回収器61は、吸気口11の吸気ダクト62に接続され、図10に示すように、外気Inが吸気口11に向けて下向きに通過する複数の外気流通路63と、排気ダクト21の排気Exが通過する複数の排気流通路64とが、交互にアルミ箔などの熱良導電性薄板65によって区割形成されている。熱良導電性薄板65は、波形に成型されて熱交換効率の向上が図られている。排気口22から排気ダクト21内を排出される排気Exは、排気流通路64を通過して室外へ排出される。その間、吸気口11に向かう外気Inは、排熱回収器61の上面開口66から外気流通路63を通過する間、排気流通路64を通過する排気Exと熱交換され、+10〜15℃位に加温され、熱交換器7および火炉6に向かう。
【0102】
外気が+10〜15℃位に加温されるので、乾燥室3の温度を速やかに昇温させることができ、バーナー5の油消費量の削減を図ることができる。60枚差しの場合、1回の乾燥運転で油消費量が100〜120リットルであるが、約20%の油消費量を削減できる。また、バーナー5のオン・オフ制御による乾燥室3の温度制御を容易にし、特に乾燥初期の乾燥品質の向上を図ることができる。
【0103】
図11は、本発明の第4実施形態を示すもので、排気ダクト内に排気ファンを設けて、特に乾燥初期において、乾燥室3内の湿潤空気を効率的に室外へ排気するようにしたものである。なお図中、図2に示す部材と同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0104】
図11に示す乾燥機70は、排気ダクト21の延長ダクト24内に排気ファン71が設けられている。また、乾燥室3内の上部で排気口22の下部周囲に、より具体的には乾燥室3内の乾燥用トレイ16の上側で熱風発生装置2から最も遠い側壁上端の近傍に、排気口22の下部周囲の圧力を測定する圧力センサ72が配置されている。この圧力センサ72は乾燥運転時の排気口22の下部周囲の圧力を測定し、圧力センサ72からの測定値に基づき、圧力変化量が約1〜3mmAq(0.0098〜0.0294kPa)の範囲を維持するように、排気ファン71の回転数が比例制御(インバータ制御)される。
【0105】
通常、乾燥運転の前半、特に乾燥初期では乾燥室3内の上部で排気口22の下部周囲の圧力は1〜3mmAqの範囲で推移することが解かっている。乾燥初期において、乾燥室3内の湿潤空気の排気を促進させるべく排気ファン71を回転させると、下部の整流板21から乾燥室3内に吹き出される熱風が均一な流れを形成して、効率よく排気される。ところが、排気効率を上げるべく排気ファン71の回転数を上げると、排気圧力と吸気側の送風機8による送風圧力のバランスが崩れ、排気口22の下部周囲(図11の点線で囲まれるA部分)の圧力が負圧となって湿潤空気が滞留する。すなわち、当該範囲(図11のA部分)が負圧になると、排気口22の開口部分の空気が先行吸引されるため偏流が発生して、乾燥ムラの原因となる。
【0106】
そこで、乾燥室3内の上部で排気口22の下部周囲の圧力を圧力センサ72で測定し、圧力変化量が1〜3mmAqの範囲を維持するように、排気ファン71の回転数をフィードバック制御することにより、乾燥室3内の圧力が常に正圧となるように圧力調整され、各列の乾燥用トレイ16を通過した湿潤空気が均一な流れを形成しつつ排気口22に向かい、排気ダクト21を通して室外へ排気される。これにより、乾燥ムラがなくなり、乾燥初期の乾燥品質が向上し、品質のよい乾燥物を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係る乾燥制御方法および乾燥機は、農産物や海産物等の食品、葉たばこ、加工品の乾燥のほか、ドライフラワー等の工芸品向けの乾燥に利用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1,60,70 乾燥機
2 熱風発生装置
3 乾燥室
4,14 ケーシング
5 バーナー
6 火炉
7 熱交換器
8 送風機
9 制御装置
10 煙突
11 吸気口
12 熱風吹出口
13 吸気ダンパ
15 棚
16 乾燥用トレイ
17 入口
18 密閉扉
19 通風空間
20 整流板
20a 孔
21 排気ダクト
22 排気口
23 排気ダンパ
23a 軸
23b ストッパー
24 延長ダクト
25 熱風循環口
26 乾球温度計
27 相対湿度検出センサ
28 リミットスイッチ
29 インバーター
30 操作パネル
31 乾燥コース設定/入力部
32 乾燥温度・相対湿度表示部
33 時計表示部
34 乾燥工程表示部
35 変更・手動設定/入力部
36 自動ダンパ表示・手動設定部
37 警報モニタ表示部
38 運転/停止/キーロック操作部
39 応用プログラム設定部
40 手動操作部
50 制御部
51 記憶部
52 入出力部
61 排熱回収器
62 吸気ダクト
63 外気流通路
64 排気流通路
65 熱良導電性薄板
66 上面開口
71 排気ファン
72 圧力センサ
W 壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物や海産物等の食品、加工品等の乾燥に用いる乾燥機の乾燥制御方法および乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、椎茸・野菜類の農産物や小魚等の海産物を乾燥させる食品乾燥機が知られている。一般的な食品乾燥機は、乾燥室内に多段の棚が複数列設けられており、乾燥対象の農産物等を適宜並べた乾燥用トレイ(一般に「エビラ」と称される)を乾燥室まで移動して各列の棚にそれぞれ吊り込むようになっている。そして、乾燥室に併設された熱風発生装置から送風機により乾燥室の下部に熱風が送りこまれ、下段のトレイから上段のトレイに吹き上げられた熱風は、トレイ上の材料を乾燥させながら、排気口を通して外部に排出されまたは循環口を通して熱風発生装置内に戻されるようになっている。熱風発生装置に設けられた吸気口からは新鮮な外気が送風機により熱風発生装置内に取り入れられるようになっている。
【0003】
かかる乾燥機としては、椎茸乾燥向けやトレイを多段収納できる複数の台車を用いたもの等が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。そして、上記乾燥機の乾燥作業においては、乾燥室内における乾燥物の乾燥状態を目視で確認しながら、生産者が手動でバーナーをオン・オフ操作して乾燥室内の温度を段階的に引き上げ操作したり、手動で給排気ダンパを開閉操作して乾燥室内の湿度を引下げ操作する他、タイマーにより乾燥室内の温度の引き上げ操作を自動で行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−032291号公報
【特許文献2】実公昭63−002869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の乾燥操作では、以下のような問題があった。
(1)乾燥前の収穫時期や状態によっては、乾燥対象の材料の含水量が大きく変化するため、生産者の手動によると、特に乾燥初期の操作に支障を来たし、乾燥操作に失敗する場合が多かった。例えば、生椎茸の場合、収穫時期が雨天の場合は含水量が非常に多いものとなり(これを「雨子」と呼んでいる。)、乾燥初期の操作において、晴天時に収穫された生椎茸(これを「日和子」と呼んでいる。)に合せて温度操作を行なうと、椎茸が変質してしまい(脱水不足による褐変状態となる)、著しく商品価値が低下するという問題があった。すなわち、作業者の操作判断によって椎茸等の乾物の品質が大きく左右されるという問題があった。
【0006】
(2)手動による操作では、バーナーのオン・オフによる乾燥室内の温度操作と吸気・排気ダンパの開閉による乾燥室内の湿度操作が、いずれも生産者の乾燥経験や勘に依存することが多く、乾燥物の乾燥状態を目視等で観察しながらその状況に応じてそれぞれの手動による操作が主として行なわれることから、安定した乾燥操作ができなかった。
(3)乾燥室内では、構造上、熱風の吹き出し側が先行して乾燥されるため、排気側との乾燥に差が発生し、この差を改善するため、従来では、乾燥トレイを上下入れ換えして乾燥調整し、生産者の負担となっていた。
【0007】
(4)水分の抜けにくい大柄の椎茸では、軸部に水分が残り、乾燥終了後に、小型の仕上げ乾燥機(エビラ15枚程度の乾燥機)に移して再度乾燥処理しており、作業が煩雑で、生産者の負担となっていた。
(5)一方、タイマーのプログラム制御による乾燥操作では、タイマーによる工程時間の経過を基準として乾燥操作が行われるため、乾燥材料における実際の乾燥進行とは、ずれが生じる場合があった。
(6)通常の1回の乾燥運転当りの油使用量は、30枚差し乾燥機で約70〜90リットル、60枚差し乾燥機で約100〜120リットルであり、その約2/3を乾燥前半で消費している。ところが乾燥室内に供給された熱風は、乾燥初期では100%外部に排出され、多くの熱量が排出口から機外へ捨てられている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、収穫時期が雨天や晴天の場合など、農作物等の収穫状態に合わせた最適な乾燥操作を実現し、品質の良い乾燥物を生産することのできる、乾燥機の乾燥制御方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、熱効率に優れ、省エネルギーに優れる乾燥機の乾燥制御方法および乾燥機を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、従来作業者の負担が大きかった乾燥作業において、作業負担を軽減できる乾燥機の乾燥制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の乾燥機の乾燥制御方法は、熱風発生装置および乾燥室を併設し、熱風発生装置から送風機により乾燥室の下部に送り込まれた熱風を乾燥室内で吹き上げて、乾燥室内に並べられた材料を乾燥させる乾燥機の乾燥制御方法であって、
乾燥プログラムに従って乾燥初期、乾燥中期、乾燥後期の各工程毎に乾燥室内の乾燥温度を段階的に引き上げ操作するにあたり、乾燥後期の終了工程を除き、残りの各工程の設定時間が経過する前に、各工程における乾燥室内の相対湿度の検出値が、各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合には、その時点で乾燥室内の乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行し、乾燥後期の終了工程では、設定時間の経過により乾燥を終了させるように制御されている。
【0012】
乾燥プログラムは、乾燥初期、乾燥中期、乾燥後期に至る各工程毎に、乾燥室内の乾燥温度、相対湿度、工程時間が予め設定され、タイマーで工程時間が計測されるともに、乾燥室内の温度・相対湿度が検出され、各工程時間の経過により、乾燥室内の温度が段階的に引き上げ操作される。このとき、乾燥後期の乾燥終了工程を除き、残りの各工程の設定時間が経過する前に、各工程における乾燥室内の相対湿度の検出値が、各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に早く達した場合には、工程時間の経過を待つことなく、乾燥室内の乾燥温度が引き上げ操作され、次工程に移行するように制御される。これにより、乾燥材料の乾燥進行に合った適切な温度・湿度管理が可能となり、収穫時期が雨天の場合や晴天の場合など、農産物等の収穫状況に合わせた最適な乾燥操作が可能となり、常に品質の良い乾燥物が得られる。
【0013】
工程時間の経過を待たずに次工程に移行するので、乾燥時間の短縮につながり、重油代その他の乾燥コストの低減を図ることができる。なお、乾燥室内の乾燥温度の引き上げ操作は、例えばバーナーのオン・オフ制御により行われる。
【0014】
乾燥室内の相対湿度の検出値が設定値に達することなく工程時間が経過した場合、工程時間の経過により、乾燥室内の乾燥温度が引き上げ操作され、次工程に移行する。すなわち、本発明における乾燥プログラムは、乾燥後期の乾燥終了工程を除き、残りの各工程における乾燥室内の相対湿度の検出値が、各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合あるいは工程時間が経過した場合のいずれかの条件が早く満たされた時点で次工程へ移行する制御が行なわれる。なお、工程時間(=各工程における乾燥運転時間)は、乾燥材料の種類、収穫時期や状況に合わせ、個別に、しかも乾燥不良が起きないように、余裕を持って設定される。
【0015】
そして、乾燥後期の乾燥終了工程では、設定時間の経過により乾燥を終了させるように制御される。乾燥室内の相対湿度の検出値が、同終了工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合でも早期に乾燥を終了させないのは、乾燥終了工程(最終工程)の平準化および防虫のためである。
【0016】
本発明に係る請求項2記載の乾燥機の乾燥制御方法は、各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値が、乾燥初期から乾燥後期に至る乾燥材料の減水率変化の理想曲線に基づいて決定されることを特徴とする。ここで乾燥初期から乾燥後期に至る乾燥材料の減水率変化の理想曲線は、乾燥材料の種類・乾燥前の含水率の多寡(雨天時の収穫、晴天時の収穫、その中間)に応じて、複数用意される。
【0017】
各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値が、乾燥初期から乾燥後期に至る乾燥材料の減水率変化の理想曲線に基づいて決定されることにより、乾燥材料の種類・乾燥前の含水率の多寡(雨天時の収穫や晴天時の収穫、その中間)に合わせた最適な温度・湿度管理が実現され、適切な乾燥操作を行なうことができる。
【0018】
本発明に係る請求項3記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥初期の開始工程が、初期設定時間が経過するまでは、乾燥室内の相対湿度の検出値が、同開始工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合でも、乾燥室内の乾燥温度を引き上げ操作せずかつ次工程に移行させないように制御されていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る請求項4記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥中期と乾燥後期の工程間に、熱風発生装置から乾燥室の下部に送り込まれた熱風を全部循環させる養生工程を組み入れたことを特徴とする。
【0020】
乾燥中期に至ると、乾燥室内では、構造上、熱風の吹き出し側に位置する材料が先行して乾燥され、排気側に位置する材料との乾燥状態に差が生じる。このため、従来では、乾燥トレイの上下入れ換えなどの乾燥調整操作が必要とされていた。これに対し、乾燥中期と乾燥後期の工程間に、熱風発生装置から乾燥室の下部に送り込まれた熱風を全部循環させる養生工程を組み入れることにより、熱風の吹き出し側(乾燥室下部)に位置する材料の含水率(乾燥率)と、排気側(乾燥室上部)に位置する材料の含水率(乾燥率)を互いに平準化することができる。これによって、従来のような乾燥トレイの上下入れ換えによる乾燥調整操作が必要なくなる。
【0021】
本発明に係る請求項5記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥後期の乾燥終了工程後に、乾燥室内の乾燥材料を一定時間放置する再乾燥待機工程と、同乾燥室内で再び乾燥させる再乾燥工程とを追加したことを特徴とする。
【0022】
乾燥後期に至ると、乾燥材料の中心部から表面部への水分移行がスムーズに行なわれなくなり、乾燥効率が悪くなる傾向となる。特に水分の抜けにくい大柄の椎茸では、傘部の脱水が先行し、軸部に水分が残り易い。
【0023】
そこで、乾燥材料の大半の乾燥が終了した時点で乾燥作業を一旦終了し(乾燥終了工程の完了)、その後、乾燥室内の乾燥材料を一定時間放置し、その間に乾燥材料内に残る水分を表面に拡散させて、水分の不均衡を平準化させる。そして、再乾燥工程に移行して(例えば乾燥室内の相対湿度が設定値に達した時点で再乾燥工程に移行して)、同乾燥室内で再び材料を乾燥させることにより、従来と対比すると短時間で乾燥が終了する。また、従来のように小型の仕上げ乾燥機に移しての再度の乾燥処理を行なわずにすみ、生産者の負担も軽減される。
【0024】
本発明に係る請求項6記載の乾燥機の乾燥制御方法は、再乾燥待機工程が、送風機により乾燥室内の内気を熱風発生装置との間で全部循環させることを特徴とする。
【0025】
乾燥材料内に残る水分の表面への拡散を促進させ、水分の不均衡を効率よく平準化させることができる。
【0026】
本発明に係る請求項7記載の乾燥機の乾燥制御方法は、再乾燥待機工程が、乾燥室内の相対湿度の検出値がその設定値に達した場合に、その時点で再乾燥工程に移行されるように制御することを特徴とする。
【0027】
乾燥室内で一旦乾燥を終了させた乾燥材料が、乾燥室内の湿度によって乾燥材料の水分が乾燥室内の設定湿度を越えて戻り過ぎるのを防止し、変色等の品質悪化が乾燥材料に生じるのを防ぐことができる。
【0028】
本発明に係る請求項8記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥中期以降の各工程における乾燥室内の風量を段階的に引き下げ操作することを特徴とする。
【0029】
本発明に係る請求項9記載の乾燥機の乾燥制御方法は、風量の引き下げ操作にあたり、送風機の回転数をインバーター制御することを特徴とする。
【0030】
本発明に係る請求項10記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥プログラムとして、設定された工程時間の経過よりも設定された相対湿度に検出値が早く到達した場合に乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行させる相対湿度優先コースと、設定された工程時間の経過により乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行させる工程時間優先コースが選択可能とされていることを特徴とする。
【0031】
本発明に係る請求項11記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥プログラムとして、乾燥材料の含水率の多寡に対応する複数のモードが選択可能とされていることを特徴とする。
【0032】
本発明に係る請求項12記載の乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥初期の開始工程を除く2番目の工程以降の任意の工程から乾燥運転を開始する工程ジャンプ機能を備えたことを特徴とする。
【0033】
乾燥材料の状態を見て、本乾燥から開始したい場合や、仕上げ乾燥を再度行ないたい場合には、使い勝手を良くすることができる。
【0034】
本発明に係る請求項13記載の乾燥機は、請求項1ないし請求項10記載の乾燥制御方法によって制御される乾燥プログラムが制御装置に組み込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明に係る乾燥機の乾燥制御方法によると、乾燥材料の乾燥進行に合った適切な温度・湿度管理を可能とすると共に、収穫時期が雨天の場合や晴天の場合など、農産物等の収穫状況に合わせた最適な乾燥操作を実現し、常に品質の良い乾燥物を生産できるという優れた効果を奏する。
【0036】
また、乾燥時間の短縮によって、重油代その他の乾燥コストの低減を図れ、さらには、乾燥作業の負担軽減が図られるという優れた効果を奏することができる。
【0037】
また、本発明に係る乾燥機によると、農産物等の収穫状況に合せた最適な乾燥制御を実現することができる他、熱効率の高い乾燥制御、省エネルギー効果の高い乾燥制御を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施形態を示すもので、本発明に係る乾燥機を示す正面図、
【図2】図1に示す乾燥機の断面図、
【図3】図1に示す乾燥機の制御装置の操作パネルを示す正面図、
【図4】図3に示す操作パネルの裏面を示す図、
【図5】制御装置の構成を示す概要図
【図6】図1に示す乾燥機の乾燥プログラムと同プログラムに従う乾燥手順を示すグラフ図、
【図7】複数の水分量モード毎の減水率曲線を示すグラフ図、
【図8】第2の実施形態を示すもので、乾燥プログラムと同プログラムに従う乾燥手順を示すグラフ図である。
【図9】第3の実施形態を示すもので、本発明に係る乾燥機を示す断面図、
【図10】図9の乾燥機に使用されるプレート式熱交換器の斜視図、
【図11】第4の実施形態を示すもので、本発明に係る乾燥機を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明を実施するための第1の実施形態を図1ないし図7を参照して説明する。図1において、1は食品乾燥機である。
【0040】
まず、食品乾燥機1の構造を説明する。図1および図2に示すように、食品乾燥機(以下、「乾燥機」という)1には、熱風発生装置2および乾燥室3が併設されている。
【0041】
熱風発生装置2は、ケーシング4の下部ユニットにバーナー5を備える火炉6と、火炉6に連絡する熱交換器7が配置され、上部ユニットに送風機8が配置されている。外部には制御装置9と、熱交換器7に連通する煙突10が配置されている。かかる熱風発生装置2は、送風機8によって上部ユニットの吸気口11から内部に取り入れた作業室内の新鮮な空気を、バーナー5の火炎によって加熱された火炉6とこれに続く熱交換器7によって加熱し、乾燥した熱風を下部ユニットの熱風吹出口12から側方の乾燥室3の下部に送り込むようになっている。吸気口11には空気の吸気量を調整する吸気ダンパ13が取り付けられている。吸気ダンパ13は、制御装置9の制御部50(図5参照)からの制御信号によって開度が制御される。火炉6の外表面には、熱交換効率を高めるために、赤外線発生塗料が塗布されている。赤外線発生塗料には、シラスバルーン塗料等がある。
【0042】
乾燥室3は、箱型のケーシング14の内部に2列×多数段(例えば15段)の棚15を備え、2列×多数段の棚15に多数枚の乾燥用トレイ16を収容できるようになっている。乾燥室3の入口17には密閉扉18が設けられている。ケーシング14の下部には、底部内面との間に通風空間19を残して、多数の孔20aを形成する整流板20が設けられている。通風空間19は送り込まれた熱風を均一に混合する予圧室としての役目をし、整流板20はケーシング14の下部に送り込まれた乾燥熱風を整流し、乾燥室3内部に均一な流れとして吹き上げる役目をする。
【0043】
ケーシング14の上部天井には排気ダクト21を備える排気口22が開設されている。排気ダクト21内には風圧式の排気ダンパ23が設けられている。排気ダンパ23は吸気ダンパ13の動きに連動して開閉される。排気ダクト21には、長さ調整可能な延長ダクト24がスライド可能に設けられている。
【0044】
排気ダンパ23は、図2に示すように、排気ダクト21内において上側の軸23a回りに回動可能に支持されており、吸気ダンパ13の開度に連動して風圧力により回動される。すなわち、吸気ダンパ13の開度が100%のときは、排気風圧力により排気ダンパ23が開くように回動され、乾燥に使用された空気が排気ダクト21を介して全て室外へ排気される。吸気ダンパ13の開度が0%のときは、排気風圧が無くなり、排気ダンパ23が閉じるように回動され、排気ダクト21内が全閉され、乾燥に使用された空気が乾燥室3と熱風発生装置2の間で全部循環される。なお、排気ダクト21の全閉時には、下側のストッパー23bにより排気ダンパ23の閉状態が保持され、外気の流入および湿気の戻りが防止される。
【0045】
延長ダクト24は、乾燥機1が設置された作業室の壁Wを貫通し、室外に延びている。これにより、乾燥に用いられた空気は、排気ダクト21から延長ダクト24を介して室外へ誘導されて排気される。これにより、排気された湿潤空気が吸気口11から熱風発生装置2内へ戻ることが防止され、常に新鮮な空気が吸気口11から熱風発生装置2内へ導入される。これにより、排気湿度に影響されて乾燥品質が低下することが防止される。また、熱風発生装置2側の側壁上部には、乾燥室3内を吹き上げられた熱風を熱風発生装置2内に戻すための熱風循環口25が開設されている。
【0046】
熱風発生装置2の熱風吹出口12の近くには、乾燥室3内の乾燥温度を測定する温度センサ26が設置されている。温度センサ26には例えば乾球温度計が用いられる。乾燥室3の密閉扉18の内面で、乾燥用トレイ16の下から3段目の上側には、乾燥室3内の相対湿度を検出する相対湿度センサ27が設置されている。なお、乾球温度計の代わりに制御性の良い白金(Pt)センサを用いてよい。また、相対湿度センサ27として静電容量型湿度素子を用いた湿度センサを用いることができ、測定した相対湿度をアナログ電圧に変換して、表示部に表示させることができる。相対温度センサ27は熱風循環口25付近に配置してよい。
【0047】
乾燥室3の入口17には、密閉扉18を開いた状態およびその後に閉じた状態をそれぞれ検出するリミットスイッチ28が設けられている。また、制御装置9の内部には、制御部50からの制御信号により、図2に示す送風機8の回転数を制御するインバーター29(図3参照)が設けられている。インバーター29の制御により、乾燥中期以降の各工程で段階的に引き下げる風量が安定して得られ、安定した乾燥操作に寄与する。
【0048】
なお、乾燥室3の壁面パネルには、断熱性に優れ熱伝導率の低い硬質ウレタン注入発泡が施工されている。これにより、乾燥室3内からの室外への熱移動が最小限に抑えられ、乾燥に要する熱エネルギー消費が抑制される。
【0049】
図3は、制御装置9の操作パネル30を示している。本実施形態では、乾燥プログラムとして、複数の乾燥コースを選択し、また、生椎茸の収穫状況に対応して複数の水分量モードを選択できるようになっている。
【0050】
制御装置9の操作パネル30上には、乾燥コース設定/入力部31、乾燥温度・相対湿度表示部32、時計表示部33、乾燥工程表示部34、変更・手動設定/入力部35、自動ダンパ表示・手動設定部36、警報モニタ表示部37、運転/停止/キーロック操作部38がそれぞれ設けられている。
【0051】
乾燥コース設定/入力部31には、「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」「手動」の3つの乾燥コースが設定されている。さらに、「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」「手動」の2つの乾燥コースには、「少なめ」「やや少なめ」「やや多め」「多め」の4つの水分量モードが設定されている。作業者は釦操作により3つの乾燥コースのいずれか一を選択し、さらに前者の2つの乾燥コースに対しては、4つの水分量モードのいずれか一を選択することができる。
【0052】
「おまかせ・湿度」コースは、湿度優先のプログラムであり、乾燥初期(第1・第2工程)、乾燥中期(第3・第4工程)、養生工程(第5工程)、乾燥後期(第6・第7工程)に至る乾燥プログラムにおいて、第1工程から第6工程までは、各工程の設定時間が経過する前に、各工程における相対湿度の検出値が、各工程における相対湿度の設定値に達した場合には、その時点で乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行し、第7工程では、設定時間の経過により乾燥を終了させるように制御される。
【0053】
「おまかせ・時間」コースは、時間優先のプログラムであり、第1工程から第7工程に至るまで、各工程の設定時間の経過により、乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行するように制御される。
【0054】
「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」の各コースには、第1工程から第7工程に至る各工程の乾燥温度、相対湿度、工程時間、風量の各数値が予めマスターデータとして水分量モード毎に設定され、図5に示す制御装置9の記憶部51にそれぞれ設定入力され保存されている。乾燥プログラムの例を図6に示す。乾燥温度は、乾燥初期から乾燥後期にかけて段階的に引き上げられるように設定されている。また、相対湿度は、乾燥工程の乾燥初期から乾燥後期に至る乾燥材料の減水率変化の理想曲線(以下、「減水率曲線」という)上に沿って下げられるように設定されている。
【0055】
水分量モードは、雨天時や晴天時など、乾燥材料の収穫状況に応じて、乾燥前の材料の水分量を目視等により前述の4つのモードのいずれか一つを選択できるが、「少なめ」モードは晴天時を、「多め」モードは雨天時を、「やや少なめ」「やや多め」の各モードはそれらの中間を想定している。「おまかせ・湿度」コースの場合、図7に示すように、各モード毎に異なる減水率曲線が用意され、各モードに対応した適切な相対湿度が設定されることにより、乾燥材料の実際の水分量に対応した、より適切な温度・湿度管理が可能となり、より細やかでより適切な乾燥制御運転が可能となる。
【0056】
なお、「手動」コースは、後述する変更・手動設定/入力部35において第1工程から第7工程に至る各工程の乾燥温度、風量、吸気ダンパ開度を手動で設定することができるようになっている。
【0057】
乾燥運転途中で、乾燥室3の乾燥状態を確認するために密閉扉8を開けざるを得ない場合がある。この場合、「おまかせ・湿度」コースを選択した場合には、リミットスイッチ28からの密閉扉8の開状態の検出信号に基づき、制御部50からの制御信号により、その後の一定時間(約15分)は、次工程に移行しないように制御されるようになっている。また、密閉扉8が開状態から閉状態になった場合も、リミットスイッチ28からの検出信号に基づき、制御部50からの制御信号により、その後の一定時間(約15分)は、次工程に移行しないように制御されるようになっている。これにより、乾燥室3内の湿度状態が減水率曲線に沿うように復帰し、乾燥運転制御が安定化される。
【0058】
乾燥温度・相対湿度表示部32には、乾燥運転中の乾燥室内の乾燥温度(℃)(検出値)と、相対湿度(%)(検出値)が表示されるようになっている。これにより、乾燥運転中の乾燥室内の乾燥温度(℃)と相対湿度(%)の変化を監視することができる。
【0059】
時計表示部33には、現在の時刻が表示される他、4つのモード、すなわち「総乾燥」モードにより総乾燥時間が、「現工程残」モードにより現工程の残り時間が、「終了予定」モードにより終了予定時刻が、「総経過」モードにより乾燥運転開始から現在までの経過時間が、それぞれ表示されるようになっている。
【0060】
乾燥工程表示部34には、乾燥コース設定/入力部31によって選択されたコースおよびモードの各乾燥プログラムに従って、第1工程から第7工程に至る各工程の乾燥温度、相対湿度、工程時間が表示されるようになっている。また、第7工程が終了した後に乾燥材料を冷却運転する第8工程も表示されるようになっている。
【0061】
乾燥工程表示部34では、運転開始後消化された工程における乾燥温度、相対湿度、工程時間の各表示が、制御部からの制御信号により、消灯されるようになっている。これにより、現工程の表示を作業者が容易に認識できるようになっている。なお、乾燥工程表示部34に表示された各工程のいずれかの工程釦を押し操作することにより、後述する変更・手動設定/入力部35に該当する工程の各表示が出力され、当該変更・手動設定/入力部35において、消化された工程の各表示を把握できるようになっている。
【0062】
また、制御装置9の電源が入力された乾燥運転開始前の待機状態で、乾燥工程表示部34に表示された工程釦のうち、第2工程以降の任意の工程釦を押し操作することにより、当該工程釦からの入力信号に基づく制御部50からの制御信号により、当該任意の工程から乾燥運転が開始される工程ジャンプ機能が作動するようになっている。例えば、椎茸の状態を見て、本乾燥から開始したい場合や、仕上げ乾燥を再度行ないたい場合には、それぞれ第3工程あるいは第6工程から運転を開始することが可能である。
【0063】
変更・手動設定/入力部35では、乾燥コース設定/入力部31において選択された3つのコースのうち、「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」コースを選択した場合、各工程毎に、乾燥温度、相対湿度、工程時間、風量を、変更設定および入力することができるようになっている。なお、変更設定する工程は、乾燥工程表示部35の各工程釦の任意の工程釦を押し操作することで、特定することができる。
【0064】
また、変更・手動設定/入力部35では、乾燥コース設定/入力部31において「手動」コースを選択した場合、各工程毎に、乾燥温度、風量を、変更設定および入力することができるようになっている。なお、変更設定する工程は、乾燥工程表示部35の各工程釦の任意の工程釦を押し操作することで、特定できる。
【0065】
自動ダンパ表示・手動設定部36は、「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」の各コースが選択されている場合、各工程における吸気ダンパ13の開度が表示される。また、「手動」コースが選択されている場合、手動釦を押し操作して、閉釦と開釦をそれぞれ押し操作することにより、吸気ダンパ13の開度を全閉から全開まで任意に設定し、設定した開度を表示させることができる。
【0066】
警報モニタ表示部37では、乾燥温度、相対湿度、センサ、電源電圧、マイコンのそれぞれに異常が発生した時に表示ランプが点灯され、警報表示が出力されるようになっている。なお、「おまかせ・湿度」コースが選択された場合で、相対湿度の異常発生を示す表示ランプが点灯された場合、表示ランプからの出力信号により、制御部50からの制御信号により、現工程のダンパ開度が維持されるように制御されるようになっている。例えば、第3工程の乾燥運転中に相対湿度の異常発生を示す表示ランプが点灯した場合、運転再開する場合には、ダンパ開度70%から再始動するようになっている。
【0067】
乾燥運転中に、停電が発生しその後復電した場合には、停電時の工程から乾燥プログラムが再開されるが、その場合、一定時間(約15分間)は、停電時の工程が維持されるように制御されるようになっている。これにより、乾燥品質の低下、悪化が防止される。
【0068】
運転/停止/キーロック操作部38には、運転釦、停止釦、キーロック釦が配置されている。運転釦の押し操作により、設定された乾燥プログラムに従って乾燥運転が開始され、停止釦の押し操作により、乾燥運転が直ちに停止され、キーロック釦の押し操作により、他の釦の操作がロックされ、不用意な変更操作が防止されるようになっている。
【0069】
制御部50は、室温が−10℃〜100℃の広範囲で制御可能となっている。椎茸の生産地は山間地が多く、出荷時期は外気温度の低くなる春・秋の2シーズンとされるが、−10℃から制御可能とすることにより、外気温度が氷点下以下となる場合でも、乾燥運転を開始できるようになっている。
【0070】
操作パネル30の裏面には、図4に示すように、応用プログラム設定部39と手動操作部40が設けられている。応用プログラム設定部39では、「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」の各コースを一部又は全部変更した乾燥プログラムを、応用プログラムとして複数(図示例では「応用1」〜「応用3」の3つ)設定し、保存することができるようになっている。具体的には、図3に示す「おまかせ・湿度」「おまかせ・時間」の各コースが選択された場合であって、変更・手動設定/入力部35で乾燥温度、相対湿度、設定時間、風量のいずれか一又は複数のデータを変更した場合の、変更プログラムを、応用プログラムとして、「応用1」〜「応用3」の各釦を押し操作することにより、図5の記憶部51に登録し保存することができる。また、前記した「応用1」〜「応用3」の各釦の押し操作により、乾燥コース設定/入力部31が応用モード選択表示となり、表示された「応用1」〜「応用3」のいずれかの釦を押し操作することにより、対応する応用プログラムが読み出され、同プログラムに従う乾燥運転が行なわれるようになっている。
【0071】
図4に示す手動操作部40では、「手動」釦を押し操作することにより、自動プログラムから手動に切り替わり、「ダンパ開」「ダンパ閉」の各釦の押し操作によりダンパの開閉動作を、「バーナ」釦の押し操作によりバーナー5のオン・オフ動作を、それぞれ手動で行なうことができるようになっている。
【0072】
次に、上記のように構成された乾燥機1および制御装置9を用いた乾燥制御方法について、乾燥材料として生椎茸の乾燥を例にして、図6を参照しながら以下に説明する。
【0073】
制御装置9の記憶部51には、複数の乾燥コース、モードに対応して、第1工程乃至第7工程に至る各工程毎に、乾燥室内の乾燥温度(℃)、相対湿度(%)、工程時間(時間)、風量レベル(%)、吸気ダンパ開度(%)を1つの組み合わせとして、乾燥プログラムが入力、設定されている。図6に、乾燥プログラムの例を示す。
【0074】
制御装置9の電源を入れ、操作パネル30の乾燥コース設定/入力部31から、「おまかせ・湿度」コース、水分量モードを選択する。運転/停止/キーロック操作部38から「運転」釦を押圧し、乾燥運転を開始する。
【0075】
(乾燥初期)
乾燥プログラムに従い、乾燥初期(粗水切り期)段階では、吸気ダンパ開度が最大(100%)に設定され、吸気口11が全開され、熱風循環口25が全閉される。乾燥初期の第1工程(開始工程)は、乾燥温度が42℃、相対湿度が40%、工程時間が3時間、風量レベルが100%に設定されている。
【0076】
「運転」釦の押し操作により、図1のバーナー5が着火し、送風機8が駆動されると、図2に示すように、吸気口11から作業室内の空気が取り入れられ、火炉6および熱交換器7により乾燥された熱風が生成され、熱風吹出口12から乾燥室3下部に送り込まれ、整流板20を通り乾燥室3内を上に吹き上げられる。その間、トレイ16上の椎茸に熱を与えて水分を蒸発させる。吹き上げられた空気は、天井の排気口22から排気ダクト21を通り、排気ダンパ23を風圧で開かせて、作業室外へ全て排出される。その間、乾燥室3内の相対湿度検出センサ27が乾燥室3内の相対湿度を検出し、検出信号を制御装置9の制御部50へ送る。時間経過とともに、図6のグラフに示すように乾燥室3内の相対湿度は、減水率曲線に沿って低下する。
【0077】
乾燥開始後、タイマーの計測により第1工程の工程時間(3時間)に達したら、制御装置9の制御部50からの制御信号により、乾燥室3内の乾燥温度が42℃から45℃に引き上げ操作される。この場合、工程時間の経過前に、相対湿度検出センサ27による相対湿度の検出値が、減水率曲線に沿う相対湿度の設定値(40%)に早く達すると、検出信号に基づき、工程時間の経過を待つことなく、制御部50からの制御信号により、乾燥室内の乾燥温度が引き上げ操作され、第2工程に移行する。なお、乾燥室3内の相対湿度の検出値が設定値に達することなく工程時間に達した場合には、工程時間の経過を基準として、乾燥室3内の乾燥温度の引き上げ操作が行われ、第2工程に移行することになる。
【0078】
ここで、乾燥開始直後は、乾燥室内の相対湿度が図6の減水率曲線まで立ち上がるまでに時間がかかるので、工程時間の初期値(1時間)が経過するまでは、その途中で相対湿度の検出値が設定値に達しても、乾燥温度は引き上げ操作されず、かつ、第2工程へも移行されないように、制御部50からの制御信号により制御される。なお、初期時間は、乾燥材料の量の大小に応じて幅が持たされる(例えば30分から1時間30分)。
【0079】
乾燥初期の第2工程では、乾燥室3内の乾燥温度が45℃、相対湿度が28%、工程時間が3時間、風量レベルが100%、吸気ダンパ開度が100%に設定されている。タイマーの計測により第2工程の工程時間(3時間)に達したら、制御部50からの制御信号により、乾燥室3内の乾燥温度が45℃から第3工程の48℃に引き上げ操作されるが、工程時間の経過前に、相対湿度検出センサ27による相対湿度の検出値が、減水率曲線に沿う第2工程の相対湿度の設定値(28%)に早く達した場合には、検出信号に基づき、工程時間の経過を待つことなく、乾燥室内の乾燥温度が48℃に引き上げ操作され、乾燥中期の第3工程に移行する。なお、乾燥室3内の相対湿度の検出値が設定値に達することなく工程時間に達した場合には、工程時間の経過を基準として、乾燥室3内の乾燥温度が引き上げ操作され、同第3工程に移行する。
【0080】
(乾燥中期)
乾燥中期(本乾燥期)の第3工程では、乾燥室3の乾燥温度が48℃、相対湿度が20%、工程時間が4時間、風量レベルが90%、吸気ダンパ開度が70%に設定されている。吸気ダンパ13の開度は、タイマーの計測により、第2工程から第3工程への移行と同時に70%に自動的に変更されるか、相対湿度の検出により、第3工程への移行と同時に70%に自動的に変更されるようになっている。
【0081】
本工程では、タイマーの計測により工程時間(4時間)に達したら、制御部50からの制御信号により、乾燥室3内の乾燥温度が48℃から第4工程の52℃に引き上げ操作されるが、工程時間(4時間)の経過前に、相対湿度検出センサ27による相対湿度の検出値が、減水率曲線に沿う第3工程の設定値(20%)に早く達したら、検出信号に基づき、工程時間の経過を待つことなく、乾燥室内の乾燥温度が52℃に引き上げ操作され、乾燥中期の第4工程に移行する。
【0082】
第4工程では、乾燥室3の乾燥温度が52℃、相対湿度が12%、工程時間が4時間、風量レベルが80%、吸気ダンパ開度が40%に設定されている。吸気ダンパ13の開度は、タイマーの計測により、第3工程から第4工程への移行と同時に40%に自動的に変更されるか、相対湿度の検出により、第4工程への移行と同時に40%に自動的に変更されるようになっている。
【0083】
本工程では、タイマーの計測により工程時間(4時間)に達したら、制御部50からの制御信号により、乾燥室3内の乾燥温度が52℃から第5工程の57℃に引き上げ操作されるが、工程時間(4時間)の経過前に、相対湿度検出センサ27による相対湿度の検出値が、減水率曲線に沿う第4工程の相対湿度の設定値(12%)に早く達したら、検出信号に基づき、工程時間の経過を待つことなく、乾燥室内の乾燥温度が57℃に引き上げ操作され、養生工程の第5工程に移行する。
【0084】
養生工程の第5工程では、乾燥室3の乾燥温度が57℃、相対湿度が10%、工程時間が1時間、風量レベルが70%、吸気ダンパ開度が全閉(0%)に設定されている。吸気ダンパ13の開度は、タイマーの計測により、第4工程から第5工程への移行と同時に0%に自動的に変更され全閉されるか、相対湿度の検出により、第5工程への移行と同時に0%に自動的に変更され全閉されるようになっている。吸気口11が全閉されると、熱風循環口25が全開され、合わせて排気口22が排気ダンパ23により全閉される。これにより、乾燥室3内の空気が熱風発生装置2内部と乾燥室3との間で全部循環される。
【0085】
本工程では、乾燥中期以降になると、乾燥室3内では、構造上、熱風の吹き出し側の椎茸が先行して乾燥され、排気側の椎茸との間で乾燥状態に差が発生し、従来では、乾燥トレイ16の上下入れ換えなどの乾燥調整操作を行なっていたが、本工程によると、吸気ダンパ13で吸気口11を全閉して熱風循環口25を全開し、合わせて、熱風発生装置2から乾燥室3の下部に送り込まれる熱風を全部循環させることにより、熱風の吹き出し側(乾燥室3下部)に位置する椎茸と、排気側(乾燥室3上部)に位置する椎茸の、各含水量を平準化するようにしている。
【0086】
本工程では、タイマーの計測により工程時間(1時間)に達したら、制御部50からの制御信号により、乾燥後期の第6工程に移行される。また、工程時間(1時間)の経過前に、相対湿度検出センサ27による相対湿度の検出値が、減水率曲線に沿う本工程の相対湿度の設定値(10%)に早く達したら、検出信号に基づき、工程時間の経過を待つことなく、乾燥終期の第6工程に移行される。
【0087】
(乾燥後期)
乾燥後期(仕上げ乾燥期)の第6工程では、乾燥室3の乾燥温度が57℃、相対湿度が10%、工程時間が3時間、風量レベルが70%、給気ダンパ開度が10%に設定されている。吸気ダンパ13の開度は、タイマーの計測により、第5工程から第6工程への移行と同時に10%に自動的に変更されるか、相対湿度の検出により、第6工程への移行と同時に10%に自動的に変更されるようになっている。
【0088】
本工程においては、乾燥室3内のタイマーの計測により工程時間(3時間)に達したら、制御部50からの制御信号により、乾燥室3内の乾燥温度が第7工程の60℃に引き上げ操作されるが、工程時間(3時間)が経過する前に、相対湿度検出センサ27による相対湿度の検出値が、減水率曲線に沿う第6工程の相対湿度の設定値(10%)に早く達したら、検出信号に基づき、工程時間の経過を待つことなく、乾燥室内の乾燥温度を60℃に引き上げ操作され、乾燥後期の終了工程である第7工程に移行する。
【0089】
乾燥後期の乾燥終了工程である第7工程では、乾燥室3の乾燥温度が60℃、相対湿度が10%、工程時間が3時間、風量レベルが70%、給気ダンパ開度が10%に設定されている。
【0090】
本工程においては、最終工程の平準化および防虫のため、乾燥室3内のタイマーの計測により工程時間(3時間)の経過により、制御部50からの制御信号により、乾燥操作が停止され、これにより乾燥が終了される。
【0091】
本実施形態によると、乾燥後期の第7工程を除き、残りの第1から第6の各工程の設定時間の経過前に、各工程の乾燥室内の相対湿度の検出値が、椎茸の重量変化に基づく減水率曲線に沿う当該工程の相対湿度の設定値に達した時点で、次工程に移行するように制御されるから、椎茸の実際の乾燥進行に合わせた適切な温度・湿度管理が可能となると共に、乾燥時間の短縮により、重油代その他の乾燥コストの低減を図ることができる。
【0092】
また、第1工程では、工程時間の初期値(1時間)が経過するまでは、乾燥温度の引き上げ操作をせず、第2工程へも移行されないように制御したから、乾燥室内の相対湿度が図6の減水率曲線まで確実に立ち上がってから、減水率曲線に沿った乾燥運転を行なうようにすることができる。これにより、より適切な温度・湿度管理に基づく乾燥操作を行なうことができる。
【0093】
火炉6の外表面全面に遠赤外線発生塗料が塗布されているので、乾燥運転中に火炉6から発生する遠赤外線により、吸気口11から取り入れた空気との熱交換効率が向上し、バーナー5の省エネ運転が図られる。また、乾燥運転中に火炉6から発生する遠赤外線が椎茸に浸透し、かつ、共振作用により、椎茸中の水分蒸発が促進される。これにより、乾燥運転の短縮化が図られると共に、香りの良い高品質の乾燥椎茸が得られる。
【0094】
図8は、本発明の第2の実施形態を示すもので、乾燥後期の乾燥終了工程後に、乾燥プログラムのオプションとして、再乾燥待機工程(第8工程)と再乾燥工程(第9工程)を追加したものである。
【0095】
通常の乾燥プラグラムは、第1の実施形態の第1工程から第7工程で終了する。乾燥させた椎茸のうち、軸部の水分が抜け切らずに、乾燥が十分なされていないものが多数本混じる場合がある。その場合、第7工程の乾燥時間の延長で対応できる。例えば、乾燥時間を5時間延長させることができる。
【0096】
その一方で、乾燥後期に至ると、乾燥材料の中心部から表面部への水分の移行がスムーズに行なわれなくなり、乾燥効率が悪くなる傾向となる。特に水分の抜けにくい大柄の椎茸では、傘部の脱水が先行し、軸部に水分が残り易い。そこで、第2の実施形態では、乾燥物の大半の乾燥が終了した時点で乾燥を一旦終了し、その後、再乾燥待機工程(第8工程)において、乾燥室内の乾燥材料内に残る水分を表面部に拡散させて、水分の不均衡を平準化するようにする。
【0097】
再乾燥待機工程(第8工程)は、第7工程の終了後に、風量レベルが70%に設定され、給気ダンパ開度が全閉(0%)に設定され、乾燥制御が停止され、乾燥室3内で乾燥材料が3〜4時間放置される。第7工程の終了後、30分程度に1回、乾燥室3内の相対湿度をサンプリング計測し、工程時間(3〜4時間)が経過する前に、乾燥室3内の相対湿度の検出値がその設定値(60%〜70%)に達した時点で次の再乾燥工程(第9工程)に移行するように制御される。乾燥室3内の湿度によって椎茸内の水分が乾燥室3内の設定湿度を越えて戻り過ぎるのを防止するためである。
【0098】
再乾燥工程(第9工程)では、再乾燥待機工程(第8工程)において乾燥室3内の椎茸内に残る水分が表面部に拡散し、水分の平準化が進んだ後の椎茸を再度乾燥させる。再乾燥工程は、乾燥温度が60℃、相対湿度が10%、工程時間が1〜2時間、風量レベルが70%に設定される。再乾燥待機工程と再乾燥工程を組み合わせることにより、第7工程を5時間延長させて乾燥を完了していた場合に比較し、乾燥時間の延長時間が1〜2時間で済むようになった。これにより、乾燥時間、乾燥コストの大幅短縮を図れるようになった。
【0099】
また、従来のように、小型の仕上げ乾燥機に移しての再度乾燥処理を行なう必要がなく、生産者の負担が軽減されるほか、小型の仕上げ乾燥機に移す作業時間の15〜20分間程度が削減されるようになった。
【0100】
図9および図10は、本発明の第3実施形態を示すもので、乾燥室3の排気口22から排気される排気熱を回収する排熱回収器を設けたものである。なお図中、図2に示す部材と同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0101】
図9に示す乾燥機60は、乾燥室3の排気口22に取り付けられた排気ダクト21の向きが吸気口11の直上を通るように変更され、排気ダクト21の途中に吸気口11の直上に位置する排熱回収器61が設けられている。この排熱回収器61は、吸気口11の吸気ダクト62に接続され、図10に示すように、外気Inが吸気口11に向けて下向きに通過する複数の外気流通路63と、排気ダクト21の排気Exが通過する複数の排気流通路64とが、交互にアルミ箔などの熱良導電性薄板65によって区割形成されている。熱良導電性薄板65は、波形に成型されて熱交換効率の向上が図られている。排気口22から排気ダクト21内を排出される排気Exは、排気流通路64を通過して室外へ排出される。その間、吸気口11に向かう外気Inは、排熱回収器61の上面開口66から外気流通路63を通過する間、排気流通路64を通過する排気Exと熱交換され、+10〜15℃位に加温され、熱交換器7および火炉6に向かう。
【0102】
外気が+10〜15℃位に加温されるので、乾燥室3の温度を速やかに昇温させることができ、バーナー5の油消費量の削減を図ることができる。60枚差しの場合、1回の乾燥運転で油消費量が100〜120リットルであるが、約20%の油消費量を削減できる。また、バーナー5のオン・オフ制御による乾燥室3の温度制御を容易にし、特に乾燥初期の乾燥品質の向上を図ることができる。
【0103】
図11は、本発明の第4実施形態を示すもので、排気ダクト内に排気ファンを設けて、特に乾燥初期において、乾燥室3内の湿潤空気を効率的に室外へ排気するようにしたものである。なお図中、図2に示す部材と同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0104】
図11に示す乾燥機70は、排気ダクト21の延長ダクト24内に排気ファン71が設けられている。また、乾燥室3内の上部で排気口22の下部周囲に、より具体的には乾燥室3内の乾燥用トレイ16の上側で熱風発生装置2から最も遠い側壁上端の近傍に、排気口22の下部周囲の圧力を測定する圧力センサ72が配置されている。この圧力センサ72は乾燥運転時の排気口22の下部周囲の圧力を測定し、圧力センサ72からの測定値に基づき、圧力変化量が約1〜3mmAq(0.0098〜0.0294kPa)の範囲を維持するように、排気ファン71の回転数が比例制御(インバータ制御)される。
【0105】
通常、乾燥運転の前半、特に乾燥初期では乾燥室3内の上部で排気口22の下部周囲の圧力は1〜3mmAqの範囲で推移することが解かっている。乾燥初期において、乾燥室3内の湿潤空気の排気を促進させるべく排気ファン71を回転させると、下部の整流板21から乾燥室3内に吹き出される熱風が均一な流れを形成して、効率よく排気される。ところが、排気効率を上げるべく排気ファン71の回転数を上げると、排気圧力と吸気側の送風機8による送風圧力のバランスが崩れ、排気口22の下部周囲(図11の点線で囲まれるA部分)の圧力が負圧となって湿潤空気が滞留する。すなわち、当該範囲(図11のA部分)が負圧になると、排気口22の開口部分の空気が先行吸引されるため偏流が発生して、乾燥ムラの原因となる。
【0106】
そこで、乾燥室3内の上部で排気口22の下部周囲の圧力を圧力センサ72で測定し、圧力変化量が1〜3mmAqの範囲を維持するように、排気ファン71の回転数をフィードバック制御することにより、乾燥室3内の圧力が常に正圧となるように圧力調整され、各列の乾燥用トレイ16を通過した湿潤空気が均一な流れを形成しつつ排気口22に向かい、排気ダクト21を通して室外へ排気される。これにより、乾燥ムラがなくなり、乾燥初期の乾燥品質が向上し、品質のよい乾燥物を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係る乾燥制御方法および乾燥機は、農産物や海産物等の食品、葉たばこ、加工品の乾燥のほか、ドライフラワー等の工芸品向けの乾燥に利用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1,60,70 乾燥機
2 熱風発生装置
3 乾燥室
4,14 ケーシング
5 バーナー
6 火炉
7 熱交換器
8 送風機
9 制御装置
10 煙突
11 吸気口
12 熱風吹出口
13 吸気ダンパ
15 棚
16 乾燥用トレイ
17 入口
18 密閉扉
19 通風空間
20 整流板
20a 孔
21 排気ダクト
22 排気口
23 排気ダンパ
23a 軸
23b ストッパー
24 延長ダクト
25 熱風循環口
26 乾球温度計
27 相対湿度検出センサ
28 リミットスイッチ
29 インバーター
30 操作パネル
31 乾燥コース設定/入力部
32 乾燥温度・相対湿度表示部
33 時計表示部
34 乾燥工程表示部
35 変更・手動設定/入力部
36 自動ダンパ表示・手動設定部
37 警報モニタ表示部
38 運転/停止/キーロック操作部
39 応用プログラム設定部
40 手動操作部
50 制御部
51 記憶部
52 入出力部
61 排熱回収器
62 吸気ダクト
63 外気流通路
64 排気流通路
65 熱良導電性薄板
66 上面開口
71 排気ファン
72 圧力センサ
W 壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風発生装置および乾燥室を併設し、熱風発生装置から送風機により乾燥室の下部に送り込まれた熱風を乾燥室内で吹き上げて、乾燥室内に並べられた材料を乾燥させる乾燥機の乾燥制御方法において、
乾燥プログラムに従って乾燥初期、乾燥中期、乾燥後期の各工程毎に乾燥室内の乾燥温度を段階的に引き上げ操作するにあたり、乾燥後期の乾燥終了工程を除き、残りの各工程の設定時間が経過する前に、各工程における乾燥室内の相対湿度の検出値が、各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合には、その時点で乾燥室内の乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行し、乾燥後期の乾燥終了工程では、設定時間の経過により乾燥を終了させるように制御されていることを特徴とする乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項2】
各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値は、乾燥初期から乾燥後期に至る乾燥材料の減水率変化の理想曲線に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項3】
乾燥初期の開始工程は、初期設定時間が経過するまでは、乾燥室内の相対湿度の検出値が、同開始工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合でも、乾燥室内の乾燥温度を引き上げ操作せずかつ次工程に移行させないように制御されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項4】
乾燥中期と乾燥後期の工程間に、熱風発生装置から乾燥室の下部に送り込まれた熱風を全部循環させる養生工程が組み入れられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項5】
乾燥後期の乾燥終了工程後に、乾燥室内の乾燥材料を一定時間放置する再乾燥待機工程と、同乾燥室内で再び乾燥させる再乾燥工程とが追加されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項6】
再乾燥待機工程は、送風機により乾燥室内の内気が熱風発生装置との間で全部循環されることを特徴とする、請求項5記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項7】
再乾燥待機工程は、乾燥室内の相対湿度の検出値がその設定値に達した場合に、その時点で再乾燥工程に移行するように制御されていることを特徴とする、請求項5記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項8】
乾燥中期以降の各工程における乾燥室内の風量を段階的に引き下げ操作することを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の乾燥機の制御方法。
【請求項9】
乾燥室内の風量の引き下げ操作にあたり、送風機の回転数をインバーター制御することを特徴とする、請求項8に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項10】
乾燥プログラムとして、設定された工程時間の経過よりも設定された相対湿度に検出値が早く到達した場合に乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行させる相対湿度優先コースと、設定された工程時間の経過により乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行させる工程時間優先コースが選択可能とされていることを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項11】
乾燥プログラムとして、乾燥材料の含水率の多寡に対応する複数のモードが選択可能とされていることを特徴とする、請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項12】
乾燥初期の開始工程を除く2番目の工程以降の任意の工程から乾燥運転を開始する工程ジャンプ機能を備えたことを特徴とする、請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12記載の乾燥制御方法によって制御される乾燥プログラムが制御装置に組み込まれていることを特徴とする乾燥機。
【請求項1】
熱風発生装置および乾燥室を併設し、熱風発生装置から送風機により乾燥室の下部に送り込まれた熱風を乾燥室内で吹き上げて、乾燥室内に並べられた材料を乾燥させる乾燥機の乾燥制御方法において、
乾燥プログラムに従って乾燥初期、乾燥中期、乾燥後期の各工程毎に乾燥室内の乾燥温度を段階的に引き上げ操作するにあたり、乾燥後期の乾燥終了工程を除き、残りの各工程の設定時間が経過する前に、各工程における乾燥室内の相対湿度の検出値が、各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合には、その時点で乾燥室内の乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行し、乾燥後期の乾燥終了工程では、設定時間の経過により乾燥を終了させるように制御されていることを特徴とする乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項2】
各工程における乾燥室内の相対湿度の設定値は、乾燥初期から乾燥後期に至る乾燥材料の減水率変化の理想曲線に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項3】
乾燥初期の開始工程は、初期設定時間が経過するまでは、乾燥室内の相対湿度の検出値が、同開始工程における乾燥室内の相対湿度の設定値に達した場合でも、乾燥室内の乾燥温度を引き上げ操作せずかつ次工程に移行させないように制御されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項4】
乾燥中期と乾燥後期の工程間に、熱風発生装置から乾燥室の下部に送り込まれた熱風を全部循環させる養生工程が組み入れられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項5】
乾燥後期の乾燥終了工程後に、乾燥室内の乾燥材料を一定時間放置する再乾燥待機工程と、同乾燥室内で再び乾燥させる再乾燥工程とが追加されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項6】
再乾燥待機工程は、送風機により乾燥室内の内気が熱風発生装置との間で全部循環されることを特徴とする、請求項5記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項7】
再乾燥待機工程は、乾燥室内の相対湿度の検出値がその設定値に達した場合に、その時点で再乾燥工程に移行するように制御されていることを特徴とする、請求項5記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項8】
乾燥中期以降の各工程における乾燥室内の風量を段階的に引き下げ操作することを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の乾燥機の制御方法。
【請求項9】
乾燥室内の風量の引き下げ操作にあたり、送風機の回転数をインバーター制御することを特徴とする、請求項8に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項10】
乾燥プログラムとして、設定された工程時間の経過よりも設定された相対湿度に検出値が早く到達した場合に乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行させる相対湿度優先コースと、設定された工程時間の経過により乾燥温度を引き上げ操作して次工程に移行させる工程時間優先コースが選択可能とされていることを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項11】
乾燥プログラムとして、乾燥材料の含水率の多寡に対応する複数のモードが選択可能とされていることを特徴とする、請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項12】
乾燥初期の開始工程を除く2番目の工程以降の任意の工程から乾燥運転を開始する工程ジャンプ機能を備えたことを特徴とする、請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12記載の乾燥制御方法によって制御される乾燥プログラムが制御装置に組み込まれていることを特徴とする乾燥機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−185645(P2010−185645A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112226(P2009−112226)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000176051)三州産業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000176051)三州産業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
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