説明

乾燥機の蒸発負荷制御システム

【課題】より確実に、乾燥機より排出される乾燥物の含水率の均一化を図る。
【解決手段】被乾燥物を加熱し、含有する水分を蒸発させる乾燥機2の蒸発負荷制御システムにおいて、蒸発させた水分3の排出経路13の途中に、蒸発水分量のセンサ10を設け、蒸発水分量により加熱量を制御する制御部8を設けた乾燥機の蒸発負荷制御システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物等の被乾燥物を加熱し含有する水分を蒸発させる乾燥機の蒸発負荷制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種バイオマスや廃棄物、汚泥等の被乾燥物は、多量の水分を含有しているため、乾燥機を用いて加熱による乾燥処理が実施される場合がある。従来の乾燥機としては、例えば、被乾燥物を収容する中空のケーシングおよび被乾燥物を攪拌する中空の攪拌羽根の内部に加熱媒体としての蒸気を導入する間接加熱型蒸気式乾燥機が知られている。この間接加熱型蒸気式乾燥機においては、被乾燥物の乾燥機内滞留量や蒸気(燃料)消費量を減らしたり、被乾燥物の乾燥後の含水率を所望の含水率にしたりするために、様々な制御を行っている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の乾燥機の蒸発負荷制御方法においては、蒸気入口側に圧力調整弁を設けると共に、蒸気入口側において被乾燥物の供給水分量を計測し、この計測量に基づいて圧力調整弁の制御を行い、蒸発負荷制御を行っている。被乾燥物の供給水分量は、被乾燥物を連続的に計量器及び水分測定器によって測定することによって計量する。
また、特許文献2に記載の乾燥機の蒸発負荷制御方法においては、計量器および水分測定器を用いて乾燥機出口の乾燥物に含有する水分量を測定し、この水分量を制御要素として圧力調整弁の制御を行い、蒸気圧を乾燥負荷に応じた蒸気圧の目標値に一定に維持する蒸発負荷制御を行っている。これにより、乾燥機伝熱面の温度制御が行われるとともに供給熱量も制御できるので、被乾燥物の乾燥後の含有率の均一化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−161384号公報
【特許文献2】特公平7−57359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の乾燥機の蒸発負荷制御方法においては、被乾燥物の投入による負荷変動を把握することは可能であるものの、被乾燥物の粘性・蒸発特性等の性状や、投入後の被乾燥物の攪拌効果、伝熱面への付着などに起因する乾燥能力の変化に対応することができないという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の乾燥機の蒸発負荷制御方法においては、乾燥後における被乾燥物の水分量の測定は、連続的な測定が困難(粉粒状の低含水率領域においては含水率測定の連続計測は困難)であるとともに、応答性、操作性等の点で問題であり、未だ実用化に至っていない。
【0007】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、より確実に、乾燥機より排出される乾燥物の含水率の均一化を図ることを可能とする乾燥機の蒸発負荷制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムは、被乾燥物を加熱し、含有する水分を蒸発させる乾燥機の蒸発負荷制御システムにおいて、前記蒸発させた水分の排出経路の途中に、蒸発水分量のセンサを設け、前記蒸発水分量により加熱量を制御する制御部を設けたことを特徴とする。
【0009】
この発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムによれば、制御要素として用いる蒸発水分量を被乾燥物から蒸発させた水分から計測し、この制御要素を用いて加熱量の制御を行うため、より確実に乾燥機より排出される乾燥物の含水率を均一化するこができる。
【0010】
また、本発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムは、前記排出経路に設けられて、蒸発させた水分を凝縮させる凝縮器の後に前記センサを設けることが好ましい。
【0011】
この発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムによれば、凝縮器から排出される水量により蒸発水分量を測定すればよいため、精度よく測定できると共に、センサをより簡素なものとすることができる。
【0012】
また、本発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムは、前記排出経路に設けられて、蒸発させた水分のドレントラップの後に前記センサを設けることが好ましい。
【0013】
この発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムによれば、ドレントラップから排出される水量により蒸発水分量を測定すればよいため、精度よく測定できると共に、センサをより簡素なものとすることができる。
【0014】
また、本発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムは、前記排出経路に設けられて、蒸発させた水分に水噴射する工程の後に前記センサを設けるとともに、前記水噴射する工程の前に給水流量の第二センサを設け、給水流量との流量差により補正して加熱量を制御する構成としてもよい。
【0015】
この発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムによれば、センサを蒸発させた水分に水噴射する装置、例えばスクラバーと組み合わせることで、センサをより簡素なものとすることができる。
【0016】
また、本発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムは、前記センサは蒸発させた水分の流量と湿度とを測定する構成としてもよい。
【0017】
この発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムによれば、蒸発させた水分を直接測定するため、応答よく蒸発水分量を計測することができる。
【0018】
また、本発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムは、前記被乾燥物を蒸気により間接加熱する乾燥機であり、前記乾燥機の被乾燥物入口側に圧力調整弁を設けると共に、前記被乾燥物の流量計及び濃度計を設けることで供給水分量を計測し、前記加熱量の制御は、前記蒸発水分量と前記供給水分量により圧力調整弁を調整することで行うことが好ましい。
【0019】
この発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムによれば、蒸発水分量に加え、供給水分量を測定するため、より精度の高い制御が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る乾燥機の蒸発負荷制御システムによれば、制御要素として用いる蒸発水分量を被乾燥物から蒸発させた水分から計測し、この制御要素を用いて加熱量の制御を行うため、より確実に乾燥機より排出される乾燥物の含水率を均一化するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一実施形態の乾燥機の蒸発負荷制御システムの制御系統構成図である。
【図2】本発明の第一実施形態の別形態の乾燥機の蒸発負荷制御システムの制御系統構成図である。
【図3】本発明の第二実施形態の乾燥機の蒸発負荷制御システムの制御系統構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態による乾燥機の蒸発負荷制御システムのシステム構成を説明するための図である。図1に示すように、乾燥機のシステム構成は、汚泥等の被乾燥物を供給するための供給ポンプ1と、被乾燥物を乾燥する乾燥機2と、被乾燥物が加熱され、含有する水分が蒸発することにより発生した乾燥排ガス3(蒸発させた水分)が導入されるドレントラップ4と、乾燥機2に蒸気を供給するための蒸気ボイラ5とを主な構成要素として備えている。乾燥排ガス3は、その途中にドレントラップ4が設けられた排出経路13を介して排出される。
【0023】
乾燥機2は、被乾燥物を蒸気により間接加熱して含有する水分を蒸発させる乾燥機であり、被乾燥物を収容する中空のケーシングおよび被乾燥物を攪拌する中空の攪拌羽根の内部に加熱媒体としての蒸気を導入する間接加熱型蒸気式乾燥機が用いられる。
供給ポンプ1と乾燥機2との間のラインであって、乾燥機2の被乾燥物入口側には、被乾燥物の流量を計測する流量計6と、被乾燥物の濃度を計測する汚泥濃度計7が設けられている。汚泥濃度計7は、マイクロ波汚泥濃度計であり、固形物濃度が0〜35%の範囲であれば連続計測が可能である。これら流量計6と汚泥濃度計7の測定結果は演算器8(制御部)に送信される。演算器8は、設定器14に入力された目標値を元に、制御信号を演算するものである。
【0024】
ドレントラップ4は、乾燥排ガス3を凝縮するもので、ドレントラップ4の出口は、ドレン、つまり、乾燥排ガス3の凝縮水を収容するドレンポット9と接続されている。ドレントラップ4とドレンポット9との間の排出経路13には、ドレン流量計10(センサ)が設けられている。ドレン流量計10の測定結果は演算器8に送信される。
【0025】
蒸気ボイラ5から供給される蒸気の圧力は、乾燥機2の被乾燥物入口側に設けられた圧力調整弁11によって調整される。圧力調整弁11は圧力制御装置12によって作動され、加熱量が制御される。
【0026】
次に、上記のような系統構成による制御システムによる加熱量の制御方法について説明する。
まず、乾燥機2に汚泥などの被乾燥物が収容されている状態で蒸気ボイラ5から乾燥機2に加熱源である蒸気が圧力調整弁11を介して供給される。被乾燥物は供給ポンプ1によって乾燥機2内に供給されるが、そのライン中の流量計6及び濃度計7によって、流量及び濃度が連続的に計測され、その計測値がそれぞれ演算器8に入力される。これら被乾燥物の流量及び濃度により供給水分量が算出され、制御要素の一つとされる。
【0027】
また、被乾燥物が加熱されることによって発生する乾燥排ガス3は、排出経路13を介してドレントラップ4において凝縮され、次いで凝縮水はドレンポット9に流入する。この際、ドレン流量計10によって凝縮水の流量が計測され、その計測値が演算器8に入力される。凝縮水の流量は、蒸発水分量と等しいとみなすことができ、蒸発水分量は制御要素の一つとされる。
【0028】
演算器8ではこれら供給水分量と蒸発水分量を制御要素として、設定器14から入力される目標値をもとに弁開度を求め、この開度制御信号を圧力制御装置12に与えて蒸気ボイラ5から乾燥機2へ供給される蒸気圧力を制御する。目標値は乾燥後の被処理物の含水率であり、この目標値をもとに蒸発負荷制御を行う所謂カスケード制御により、蒸発負荷制御を行う。
【0029】
上記実施形態によれば、被乾燥物の供給水分量と、蒸発水分量を制御要素として乾燥機の加熱媒体として投入する蒸気圧の目標値に一定に維持すべく圧力調節弁の開度が調節されると、乾燥機伝熱面の温度制御が行われるとともに、供給熱量も制御されるので、乾燥機出口乾燥物に含有する水分または汚泥濃度を設定値(例えば、乾燥物含水率30%)において均一化を図ることが可能となる。
【0030】
また、蒸発水分量は被乾燥物の含水率変化量であり、制御要素として用いる蒸発水分量を被乾燥物から蒸発させた水分から計測するため、より簡素な方法で、かつ確実に蒸発水分量を測定することができ、被乾燥物の含水率を高精度に制御できる。また、ドレントラップ4から排出される水量により蒸発水分量を測定するため、精度よく測定できる。
【0031】
さらに、圧力調整弁11が、蒸気圧を乾燥負荷(投入する被乾燥物の量の変動、含水率等の性状の変動)に応じた蒸気圧の目標値の一定に維持され、乾燥機伝熱面の温度制御が行われると共に、供給熱量も制御できることにより、蒸気消費量が安定し、過剰な蒸気消費量の抑制が図れるため、燃費の低減を図ることができる。つまり、必要以上の過乾燥状態を抑制することができる。
【0032】
なお、上記実施形態においては、蒸発させた水分を凝縮させるのに、ドレントラップ4を用いたが、これに限ることはなく、図2に示すように、コンデンサ等の凝縮器4Aを用いて蒸発させた水分を凝縮させる構成としてもよい。
【0033】
(第二実施形態)
図3は、第二実施形態による乾燥機のシステム構成を説明するための図である。図3に示すように、乾燥機のシステム構成は、排出経路13Bにスクラバー15が設けられている。スクラバー15は、被乾燥物から蒸発した水分に含まれる埃等の飛散物を除去するためのものである。スクラバー15の上部には冷却水供給管16に連通して散水管17が設けられており、下部には排水管18が設けられている。
【0034】
冷却水供給管16より供給され、散水管17によって散水される冷却水は、給水流量計20によって計測され、その流量F1は、演算器8Bに送られる。また、排水管18には、排水流量計19が設けられており、この排水流量計19によって計測された排出水流量F2は、演算器8Bに送られる。
【0035】
上記のような第二実施形態に係る系統構成による制御システムは、制御要素として、6及び7によって計測される供給水分量と、以下に記す計算方法によって算出される蒸発水分量を制御要素として、蒸気ボイラ5から乾燥機2へ供給される蒸気圧力を制御する。
乾燥機2から排出される乾燥排ガス3(F3)は、排出水流量F2と冷却水の流量F1の差分量として算出することができため、蒸発水分量は、F2−F1で算出することができる。この計算式に基づき、演算器8Bは、排水流量計19によって計測された排出水流量F2と、冷却水の流量F1から蒸発水分量を算出する。
蒸発水分量と供給水分量を用いた蒸気圧力の制御方法は第一実施形態と同様である。
【0036】
上記実施形態によれば、既存のスクラバー15に冷却水の流量F1の制御装置、及び
排水管18に設けられた排水流量計19を組み合わせることで、蒸発水分量を計測するセンサとすることができるため、その構成をより簡素なものとすることができる。
【0037】
(その他の実施形態)
蒸発水分量を計測する手段として、乾燥機2とドレントラップ4(または凝縮器4A)とを接続する排出経路13に蒸発させた水分の流量を計測する流量計と、湿度を計測する湿度計を設ける構成としてもよい。この構成によれば、蒸発させた水分を直接測定するため、応答よく蒸発水分量を計測することができる。
【0038】
また、第一実施形態に対して更に排出経路13に圧力計を設けることによって、乾燥排ガス3の蒸気圧力を測定し、この蒸気圧力を制御要素として加える構成としてもよい。これにより、さらに蒸発負荷制御を精度よく実施することが可能となる。
【0039】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記各実施形態では、乾燥機により汚泥を被乾燥物として水分を除去する場合について述べたが、本発明は、水分を含有する他の被乾燥物であってもよい。
また、センサの構成についても、例えば、乾燥機における被乾燥物の出口側の水分量を計測可能なセンサを設けて、更に精度よく含水率の制御をさせる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
2 乾燥機
3 乾燥排ガス(蒸発させた水分)
4 ドレントラップ
4A 凝縮器
6 流量計
7 濃度計
8 演算器(制御部)
10 ドレン流量計(センサ)
11 圧力調整弁
13 排出経路
15 スクラバー(水噴射する工程)
19 排水流量計(センサ)
20 給水流量計(第二センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物を加熱し、含有する水分を蒸発させる乾燥機の蒸発負荷制御システムにおいて、
前記蒸発させた水分の排出経路の途中に、蒸発水分量のセンサを設け、
前記蒸発水分量により加熱量を制御する制御部を設けた乾燥機の蒸発負荷制御システム。
【請求項2】
前記排出経路に設けられて、蒸発させた水分を凝縮させる凝縮器の後に前記センサを設けた請求項1に記載の乾燥機の蒸発負荷制御システム。
【請求項3】
前記排出経路に設けられて、蒸発させた水分のドレントラップの後に前記センサを設けた請求項1に記載の乾燥機の蒸発負荷制御システム。
【請求項4】
前記排出経路に設けられて、蒸発させた水分に水噴射する工程の後に前記センサを設けるとともに、前記水噴射する工程の前に給水流量の第二センサを設け、給水流量との流量差により補正して加熱量を制御する請求項1に記載の乾燥機の蒸発負荷制御システム。
【請求項5】
前記センサは蒸発させた水分の流量と湿度とを測定するものである請求項1に記載の乾燥機の蒸発負荷制御システム。
【請求項6】
前記加熱機は、前記被乾燥物を蒸気により間接加熱する乾燥機であり、
前記乾燥機の被乾燥物入口側に圧力調整弁を設けると共に、
前記被乾燥物の流量計及び濃度計を設けることで供給水分量を計測し、
前記加熱量の制御は、前記蒸発水分量と前記供給水分量により圧力調整弁を調整することで行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の乾燥機の蒸発負荷制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−163257(P2012−163257A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23993(P2011−23993)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】